(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。以下の説明は本発明を具体化した一例であって、本発明を限定するものではなく、本発明の趣旨に沿って各種改変できることは勿論である。なお、本明細書中では、キャリア11の進行方向を左右方向、キャリア11の進行方向に垂直な方向を上下方向と記載する。
【0012】
(第1実施形態)
図1乃至7は本発明の第1の実施形態に係る基板搬送装置及び真空処理装置について説明した図であり、
図1は真空処理装置の概略構成図、
図2はプロセスチャンバの概略構成図(搬送方向の断面図)、
図3は
図2のI−I断面図、
図4は
図2のII−II断面図、
図5は
図3のH部分の拡大説明図、
図6は真空隔壁の斜視図と断面図、
図7は真空処理装置の他の構成例である。なお、図面の煩雑化を防ぐため一部を除いて省略されている。
【0013】
図1に示す真空処理装置Sは、ロードチャンバLL、アンロードチャンバUL、コーナーチャンバC、プロセスチャンバS1やその他の処理室として機能する複数のチャンバがゲートバルブ(GV)を介して無端状に連結されたインライン型の成膜装置である。基板は基板カセットに搭載された状態でロードチャンバLLに装填され、カセット間移載ロボットによって基板カセットに移載される。そして、基板はロボットRBTによって後述するキャリア11に移載され、キャリア11に搭載された状態で基板搬送路(搬送路)に沿って搬送され各チャンバ内で所定の処理が施される。所定の真空処理が施された基板はアンロードチャンバULから排出される。
【0014】
図2〜4にプロセスチャンバS1の概略図を示す。
図2は隣り合う2つのプロセスチャンバS1(S1a,S1bとする)について側方から拡大した図であり、
図3は
図2のI−I断面の概略図、
図4は
図2のII−II断面の概略図である。
それぞれのプロセスチャンバS1は、内部を真空排気できる略直方体状の容器であり、ステンレス又はアルミニウム合金から構成されている。隣り合うチャンバとはGVを介して連結されている。プロセスチャンバS1には、スパッタリング処理をするためのプロセスユニットと、基板搬送路10に沿ってキャリア11を搬送する基板搬送装置と、内部を真空排気する不図示の真空ポンプを有している。
【0015】
基板13は、基板搬送装置によって前工程側(上流側)から搬送され、ターゲットTGの前面に停止若しくは通過する。このときターゲットTGからスパッタされた成膜物質が基板13上に堆積される。成膜された基板13は後工程(下流側)に搬送されることを一連のサイクルとしている。形成されるスパッタ物質の種類と数に応じて多数のターゲットTG若しくは複数のプロセスチャンバS1が設けられる。なお、
図2に示したゲートバルブ(GV)を介して連結された2つのプロセスチャンバS1の上流側にロードロックチャンバLLを接続し、下流側にアンロードチャンバULを接続すると、直線状に連結されたインライン式成膜装置を構成することができる。
【0016】
基板搬送装置は、いわゆる縦型搬送装置であり、キャリア11を垂直姿勢で搬送することができる。基板搬送装置によって、インライン式成膜装置を構成する各プロセスチャンバS1を貫通して設けられた基板搬送路10に沿って基板13を移送できるように構成されている。基板搬送路10は、プロセスチャンバS1側に配設されたリニアモータステータ(以下、駆動磁石とする)21と、駆動磁石21を励起制御するドライバ29と、キャリア11を移動可能に支持する複数のガイド23を有している。
【0017】
また、プロセスチャンバS1の側壁には基板搬送路10に沿って略矩形状の開口部35aが形成されており、この開口部35aに後述する真空隔壁35が気密に取り付けられている。真空隔壁35の内側はプロセスチャンバS1内と同じく真空排気可能である。本実施形態では、キャリア11を垂直姿勢で搬送する基板搬送装置を例に説明するが、水平姿勢で基板13を搬送する基板搬送装置にも本発明を適用できることはもちろんである。
【0018】
ガイド23は回転自在なコロ(ベアリングに支持されたローラ)であり、キャリア11の自重を受ける第1ガイド23aと、キャリア11が駆動磁石21から受ける水平方向の引力や斥力を受ける第2ガイド23bとからなる。キャリア11は回転自在なガイド23によって支持されることで、駆動磁石21の磁力に応じて基板搬送路10に沿ってスムーズに移動することができる。なお、駆動磁石21は真空隔壁35の大気側(大気圧雰囲気側)に、ガイド23は真空隔壁35の真空側(真空雰囲気側)に配置される。駆動磁石21と真空隔壁35については後述する。
【0019】
キャリア11は、基板13を搭載した状態でチャンバS1内の基板搬送路10に沿って周回して移動可能な部材であり、駆動磁石21から推進力を得る機構部と、基板13を支持できるホルダ部と、ガイド23に当接するとともに機構部とホルダ部が取り付けられるスライダーとを有している。機構部は、基板搬送路10に沿って設けられた駆動磁石21と磁気カップリングを形成する永久磁石12を有して構成されている。永久磁石12はホルダ13の移動方向に対して交互に異なる磁極が現われるように複数の磁石要素から構成されている。ホルダ部は基板13を支持する基板取り付け部としての開口11aが形成された略矩形の板状部材である。開口11aの周囲には基板13を支持するための屈曲形状の板ばねである基板支持爪(不図示)が設けられている。本実施形態において用いられるキャリア11は1つの開口11aを有するため基板13を1枚搭載することができ、開口11aを複数形成すれば複数の基板13を搭載することができる。
【0020】
本実施形態において基板13は矩形状の板状部材を例にして記載するが、キャリア11のホルダ部を交換することにより、磁気ディスクや光ディスクなどの記憶メディアに用いられる円盤状部材、種々の形状のガラス基板、アルミニウム若しくはアルミニウム合金などの金属基板、シリコン基板、樹脂基板などにも本発明の基板搬送装置で搬送できることはもちろんである。
【0021】
プロセスユニットは、キャリア11に保持された基板13に対向するプロセスチャンバS1の壁面に設けられたカソード25、プロセスガス(放電ガス)をカソード25の周囲に導入するガス導入装置、カソードに電力を供給する電源(いずれも不図示)を備えている。なお、カソード25は、基板13の両側に同時に成膜処理を行うためプロセスチャンバS1の両側の壁面に設けられており、それぞれに成膜材料であるターゲットを配置できる。
【0022】
駆動磁石21について説明する。
駆動磁石21は、複数のステータ要素27と駆動磁石ヨーク28を備えている。また、上述したように真空隔壁35の大気側に位置している。ステータ要素27は、固定子鉄心としてのステータティース31に電磁コイル33(巻き線)が巻きつけられており、電磁コイル33に電力を供給することで磁界を発生するように構成されている。ドライバ29によってそれぞれのステータ要素27の電磁コイル33に電力が供給されるタイミングが制御されている。
図4に示すように、それぞれのステータ要素27は真空隔壁35を挟んでホルダ11の永久磁石12と対向する位置に配置され、永久磁石12を構成する磁石要素と磁気カップリングを形成できるように、磁石要素が並んだ間隔とほぼ同じ間隔でホルダ11の進行方向に沿って固定子ヨーク28に取り付けられている。
【0023】
固定子ヨーク28は、各ステータ要素27を固定するとともに磁気回路を形成できるようにステータティース31と同様に透磁率の高いケイ素鋼板などから構成されている。本実施形態での固定ヨーク28の形状は細長い矩形状であるが、1つのプロセスチャンバS1に取り付けられるステータ要素27を支持できる形状であればよいものとする。駆動磁石21のプロセスチャンバS1に対する位置は固定子ヨーク28の取り付け位置によって決定される。そのため、固定子ヨーク28には不図示の取り付け冶具を介してプロセスチャンバS側に取り付けられている。
【0024】
ドライバ29は、各ステータ要素27の励起を制御する装置であり、各ステータ要素27の電磁コイル33に電力を供給する電源、各ドライバ29を制御する制御コンピュータ(いずれも不図示)に接続されている。なお、キャリア11の位置を検知するエンコーダユニットをドライバ29に接続して、キャリア11の位置情報に基づいて駆動磁石21(各ステータ要素27)の励起タイミングなどを制御してキャリア11の搬送位置を制御するように構成してもよい。各ドライバ29と制御コンピュータを合わせて制御装置とする。
【0025】
ドライバ29によって所定のタイミングで各ステータ要素27(駆動磁石21)を励起して、駆動磁石21から生じた磁力をキャリア11の永久磁石12に及ぼしてキャリア11を移動制御することができる。また、永久磁石12と駆動磁石21の間に設けられた真空隔壁35によって駆動磁石21を大気側に配置し、永久磁石12を真空側に配置している。そのため、駆動磁石21からの発熱をガスを介して放熱できるとともに各ステータ要素27からドライバ29への配線を通すための真空用のフィードスルーを必要としない。
【0026】
図5は、
図3のH部分の拡大図である。
図3に示すように、真空隔壁35はプロセスチャンバS1の開口部35aに外側から嵌め込むように取り付けられている。真空隔壁35の縁部分とプロセスチャンバS1との間にはOリング(シール部材)35bが介装され、真空隔壁35の取り付け部分(フランジ部37)の気密を保っている。ホルダ11の進行方向に垂直な断面における真空隔壁35の断面形状(
図2でいうI−I断面の形状)は、真空側に凸に張り出した曲面形状をなしている。曲面形状は概R形(円弧状や楕円の弧状)のように湾曲した形状である。
【0027】
真空隔壁35の断面形状が真空側に凸、すなわち、プロセスチャンバS1の内側に向かって張り出しており、特に、キャリア11の進行方向に垂直な断面が概R形状(円弧状や楕円の弧状)に構成されているため、大気圧差圧が真空隔壁35に及ぼす荷重の応力緩和が可能になる。真空隔壁35に負荷される荷重が真空隔壁35のR部分よって分散されるためである。そのため、真空隔壁35を平板で構成した場合と比して真空隔壁35の肉厚を大幅に薄くすることが可能になる。また、永久磁石12表面形状および駆動磁石21(ステータ要素27)表面形状が、真空隔壁35の断面形状と揃えられて形成されることで永久磁石12と駆動磁石21の距離を縮めている。なお、真空隔壁35の断面形状と揃えられるのは永久磁石12と駆動磁石21の一方のみであってもある程度の効果が認められる。
【0028】
図6(a)に真空隔壁35の斜視図、
図6(b)に
図6(a)のIII−III断面図を示す。
図6(a)の斜視図は真空隔壁35を大気側から見た様子である。真空隔壁35は、略矩形状のフランジ部37とフランジ部37と一体に形成された隔壁部39とからなり、隔壁部39はさらに、永久磁石12と駆動磁石21の間に配置される湾曲部39aと略半円板状(半楕円形状)の側壁部39bとから構成されている。真空隔壁35の材質としては非磁性材料が適しており、本実施形態においてはステンレス(SUS304)が用いられている。
【0029】
本実施形態おいては、
図6(b)からわかるように湾曲部39aの断面形状は楕円形状であり、内面の寸法は幅(w)150mm、高さ(h)60mmであり、厚さ(t)1.67mmの寸法に形成されている。側壁部39bは、真空排気によっても変形しない十分な強度を得るために厚さ10mmで形成されている。なお、大気側で対向する一対の側壁部39bの内面間距離は350mmである。また、フランジ部47は、取り付け作業や真空排気によっても変形しない十分な強度を得るために厚さ15mm、長辺側の幅及び短辺側の幅とも25mmとされている。
【0030】
隔壁部39を湾曲形状とすることで真空排気の差圧による隔壁部39のたわみ量を減少させることができ、湾曲部39aの厚さ(t)を薄く形成することができる。大気圧による荷重を湾曲した湾曲部39aによって分散するためである。従って、真空隔壁35を用いることにより、従来の平板状の隔壁(
図15参照)を用いるよりも永久磁石12と駆動磁石21との距離(d)を縮めることができる。この空間距離(d)は、モータの効率に対して指数的に関与するものであり、結果として、大幅なモータ効率改善を図ることが可能になる。なお、本実施形態の真空隔壁35と平板状の隔壁の厚さ(t)の比較結果を
図14の説明として後述する。
【0031】
本実施形態おいては、湾曲部39aの断面形状は幅(w)方向に長い楕円形状として形成した例を示したが、高さ(h)方向に長い楕円形状、若しくは、半円形状として形成してもよいことはもちろんである。なお、強度の観点からは半円形状(w/2=h)が好ましく、楕円形状よりもさらに厚さ(t)を薄く形成することができる。
【0032】
また、
図7は本実施形態の変形例(他の構成例)である。この構成例は、駆動磁石21(ステータティース31)の先端の形状を真空隔壁断面形状に揃えて概R形状(または楕円形状)に構成しているのみでなく、さらに電磁コイル34(巻き線)の巻回される形状(巻き線の線形状)も、真空隔壁35の断面形状に揃えて巻回されている。電磁コイル34の形状と、ステータティース31の形状が揃えられて、かつ近づけられているため、電源から電磁コイル34に供給された電力により発生した磁場をより効率的に、ステータティース31の先端に伝達可能に構成されている。そのため、モータ効率をさらに向上させることが可能になる。さらに、真空隔壁35の真空側表面はフラット(平滑)であるため、永久磁石12の上下方向の寸法が制限されない。
【0033】
(第2実施形態)
図8,9に基づいて本発明の第2実施形態を説明する。
第1実施形態の構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。
本実施形態と上述した第1の実施形態との主な違いは基板搬送装置の構成にあり、具体的には、本実施形態に係る基板搬送装置は第1の実施形態に比べて、駆動磁石、永久磁石、真空隔壁の構成に違いを有している。
【0034】
図8に示した断面図は、
図3のH部分において、基板搬送装置として本実施形態に係る基板搬送装置を取り付けた場合の拡大図である。
本実施形態に係る基板搬送装置も縦型搬送装置であり、キャリア11を垂直姿勢で各プロセスチャンバS1を貫通して設けられた基板搬送路40に沿って基板13を移送できる。基板搬送路40は、プロセスチャンバS1側に配設された駆動磁石41と、駆動磁石41を励起制御するドライバ29と、キャリア11を移動可能に支持する複数のガイド23を有している。また、プロセスチャンバS1の側壁には基板搬送路40に沿って略矩形状の開口部35aが形成されており、この開口部35aに真空隔壁45が気密に取り付けられている。真空隔壁45の内側はプロセスチャンバS1内と同じく真空排気可能である。
【0035】
ここで、駆動磁石41、永久磁石42、真空隔壁45について説明する。
駆動磁石41は、基板搬送路40の主要な構成要素の一つであり、複数のステータ要素46と駆動磁石ヨーク28を備えている。また、上述したように真空隔壁55の大気側に位置している。ステータ要素46は、固定子鉄心としてのステータティース43に電磁コイル33が巻きつけられて電力を供給することで磁界を発生するように構成されており、ドライバ29によってそれぞれのステータ要素46に電力が供給されるタイミングが制御されている。それぞれのステータ要素46は真空隔壁45を挟んでホルダ11の永久磁石42と対向する位置に配置され、永久磁石42を構成する磁石要素と磁気カップリングを形成できるように、磁石要素が並んだ間隔の整数倍の間隔でホルダ11の進行方向に沿って固定子ヨーク28に取り付けられている。
【0036】
駆動磁石41と永久磁石42は、第1の実施形態に係る駆動磁石21と永久磁石12と形状が異なっている。永久磁石42は、真空隔壁45(駆動磁石41)側に凸に張り出した断面形状を有し、一方、駆動磁石41(各ステータ要素46)は、真空隔壁45(永久磁石42)側に凹な断面形状を有している。そして、真空隔壁45の断面形状は、大気側に凸、すなわち、プロセスチャンバS1の外側に向かって張り出しており、かつ、キャリア11の進行方向に垂直な断面が概R形状(または円弧状、楕円の円弧状)に形成されている。第1の実施形態に係る真空隔壁35と同様、大気圧差圧が真空隔壁45に及ぼす荷重の応力緩和が可能になる。真空隔壁を平板で構成した場合と比して真空隔壁45の肉厚を大幅に薄くすることが可能になる。また、永久磁石42表面形状および駆動磁石41(ステータ要素46)表面形状が、真空隔壁45の断面形状と揃えられた形状に形成されている。
【0037】
図9(a)に真空隔壁45の斜視図、
図9(b)に
図9(a)のIV−IV断面図を示す。
図9(a)の斜視図は真空隔壁45を大気側から見た様子である。真空隔壁45は、略矩形状のフランジ部47とフランジ部47と一体に形成された隔壁部49とからなり、隔壁部49はさらに、永久磁石42と駆動磁石41の間に配置される湾曲部49aと湾曲部49aと上下方向で連結される第1側壁部49bと湾曲部49aと左右方向で連結される第2側壁部49cとから構成されている。真空隔壁45の材質としては非磁性材料が適しており、本実施形態においてはステンレス(SUS304)が用いられている。
【0038】
本実施形態おいては、
図9(b)からわかるように湾曲部49aの断面形状は楕円形状(楕円の円弧状)であり、内面での幅(w*)150mm、高さ(h*)60mmであり、厚さ(t*)1.185mmの寸法に形成されている。第1側壁部49bは、真空排気によっても変形しない十分な強度を得るために厚さ10mmで形成されている。なお、大気側で対向する一対の第1側壁部49bの内面間距離は350mmである。第2側壁部49cは、真空排気によっても変形しない十分な強度を得るために厚さ10mmで形成されている。また、フランジ部47は、取り付け作業や真空排気によっても変形しない十分な強度を得るために厚さ15mm、長辺側の幅及び短辺側の幅とも25mmとされている。
【0039】
真空隔壁45を湾曲形状とすることで、真空排気の差圧による隔壁部49のたわみ量を減少させることができるため湾曲部49aの厚さ(t*)を薄く形成することができる。大気圧による荷重を湾曲した隔壁部49(湾曲部49a)によって分散するためである。従って、真空隔壁45を用いることにより、従来の平板状の隔壁(
図15参照)を用いるよりも永久磁石42と駆動磁石41との距離(d)を縮めることができる。この空間距離(d)は、モータの効率に対して指数的に関与するものであり、結果として、大幅なモータ効率改善を図ることが可能になる。
【0040】
なお、本実施形態の真空隔壁45と平板状の真空隔壁135(
図15参照)の厚さを比較した例を
図14の説明として後述する。
図15に示した真空処理装置では、フラット表面の真空隔壁135に併せて、永久磁石112とステータ要素127の真空隔壁135の先端が矩形状に形成されている。ステータ要素127はステータティース141に電磁コイル133が巻回されて構成されている。
【0041】
本実施形態おいては、湾曲部49aの断面形状は幅(w*)方向に長い楕円形状として形成した例を示したが、高さ(h*)方向に長い楕円形状、若しくは、半円形状として形成してもよいことはもちろんである。なお、強度の観点からは半円形状(w*/2=h*)が好ましく、楕円形状よりもさらに厚さ(t*)を薄く形成することができる。
【0042】
また、本実施形態の電磁コイル33は、直線上にステータティース43に巻回されているが、
図10に示した電磁コイル332のように、電磁コイルの巻き線の線形状を真空隔壁45の断面形状に揃えて巻回してもよい。
図7の構成と同様に、電磁コイルの形状と、ステータティース43の形状が揃えられて、かつ近づけられているためモータ効率をさらに向上させることが可能になる。
【0043】
(第3の実施形態)
図11,12に基づいて本発明の第3の実施形態について説明する。
第1実施形態の構成要素と同一の構成要素については同一の参照番号を付して説明を省略する。本実施形態と上述した第1の実施形態との主な違いは基板搬送装置の構成にあり、具体的には、本実施形態の基板搬送装置は第1の実施形態に比べて、駆動磁石、永久磁石、真空隔壁の構成に違いを有している。
【0044】
図11に示した断面図は、
図3のH部分において、基板搬送装置として本実施形態に係る基板搬送装置を取り付けた場合の拡大図である。
本実施形態に係る基板搬送装置も縦型搬送装置であり、キャリア11を垂直姿勢で各プロセスチャンバS1を貫通して設けられた基板搬送路50に沿って基板13を移送できる。基板搬送路50は、プロセスチャンバS1側に配設された駆動磁石54と、駆動磁石54を励起制御するドライバ29と、キャリア11を移動可能に支持する複数のガイド23を有している。また、プロセスチャンバS1の側壁には基板搬送路50に沿って略矩形状の開口部35aが形成されており、この開口部35aに真空隔壁55が気密に取り付けられている。真空隔壁55の内側はプロセスチャンバS1内と同じく真空排気可能である。
【0045】
駆動磁石54と永久磁石52は、第1の実施形態に係る駆動磁石21と永久磁石12とは形状が異なっている。本実施形態に係る真空隔壁55は、永久磁石52に対向する表面(真空側表面)は凹凸のないフラット(平滑)な形状(平滑面)であり、駆動磁石54が配置される側の表面(大気側表面)には複数のリブ61(変形防止部)が一体に形成されている。真空隔壁55の真空側表面はフラット(平滑面)であるため、永久磁石52の真空隔壁55側の先端は真空隔壁55に対して同じ距離(等距離)を保つように矩形状の断面に形成されている。真空隔壁55の大気側表面に設けられたリブ61は、真空隔壁55のたわみ(変形)を抑えるための略板状部材であり、固定子ヨーク28に取り付けられた複数のステータ要素56の間に挿入されるように配置される。
【0046】
ステータ要素56は、固定子鉄心としてのステータティース51に電磁コイル53(巻き線)が巻きつけられて構成されており、ドライバ29によって制御されている。各ステータ要素56は真空隔壁55を挟んでホルダ11の永久磁石52と対向する位置に配置され、永久磁石52を構成する磁石要素と磁気カップリングを形成できるように、磁石要素が並んだ間隔の整数倍の間隔でホルダ11の進行方向に沿って固定子ヨーク28に取り付けられている。
【0047】
真空隔壁55(隔壁部59)の大気側表面であってもリブ61が上下方向に設けられていない部分はフラットである。そのため、真空隔壁55の大気側表面と対向する各ステータ要素56の先端も真空隔壁55に対して等距離を保つように矩形状の断面に形成されている。すなわち、各ステータ要素56と永久磁石52の形状は
図15に示したフラットな真空隔壁135に用いられる構成と近似している。
【0048】
図12(a)に真空隔壁55の斜視図、
図12(b)に
図12(a)のV−V断面図を示す。
図12(a)の斜視図は真空隔壁55を大気側から見た様子であり、第1の実施形態についてのIII−III断面図(
図6(a))と対応する断面図である。真空隔壁55は、略矩形状のフランジ部57とフランジ部57と一体に形成された隔壁部59とからなる。隔壁部59はさらに、永久磁石52と駆動磁石54の間に配置される上板部59aと、上板部59aの縁部分で気密に連結される側壁部(59b,59c)とから構成されている。上板部59aはリブ61を有している。そして本実施形態の側壁部(59b,59c)は、上板部59aと水平方向(キャリアの進行方向)で連結される第1側壁部59b、上板部59aと上下方向(キャリアの進行方向と直交する方向)で連結される第2側壁部59cとからなる。第1側壁部59bと第2側壁部59cはそれぞれ1組ずつで構成され、上板部59aとフランジ部57とを気密に連結されるため、これら4つの側壁部59b,59cは略管状に組み合わされている。真空隔壁55の材質としては非磁性材料が適しており、本実施形態においてはステンレス(SUS304)が用いられている。
【0049】
本実施形態おいては、
図12(b)からわかるように上板部59aは、両面ともフラット(平滑)な板状の部材(以下、平板部分という)に複数の変形防止部材としてのリブ61が一体に形成された形状である。平板部分の逆側(大気圧雰囲気側)の面に断面矩形状の棒状部材であるリブ61が複数、上下方向(キャリア11の進行方向に対して垂直に交わる方向)に設けられたものである。リブ61は対向する第2側壁部59cの間に架け渡され、連結するように形成されているが、上板部59aの大気圧雰囲気側と第2側壁部59cとは一体に形成されている。
【0050】
上板部59aは、内面で幅(w**)150mm、高さ(h**)60mmであり、厚さ(t**)0.45mmの寸法に形成されている。各リブ61は、真空排気によっても上板部59aの平板部分の変形を抑える強度があり、長さ(w**方向の寸法)60mm、高さ(h**方向の寸法)18mm、厚さ(キャリア11進行方向の寸法)4mm、ピッチ(リブ61間の距離)24mmである。側壁部59b,59cは、真空排気によっても変形しない十分な強度を得るためにいずれもとも厚さ10mmで形成されている。なお、キャリア11の進行方向で対向する一対の側壁部59bの内面間距離は350mmである。また、フランジ部57は、真空排気によっても変形しない十分な強度を得るために厚さ15mm、長辺側の幅及び短辺側の幅とも25mmとされている。
【0051】
大気圧差圧が真空隔壁55に負荷されると、リブ61が上板部59aの平板部分に負荷される荷重を緩和するため、上板部59aのたわみを抑えることができる。真空隔壁の上板部を単純な平板で構成した場合と比して真空隔壁55の上板部59aの肉厚を大幅に薄くすることが可能になる。また、永久磁石52表面形状および駆動磁石54(ステータ要素56)表面形状が、真空隔壁55の断面形状と揃えられた形状に形成されている。従って、真空隔壁55を用いることにより、従来の平板状の隔壁(
図15参照)を用いるよりも永久磁石52と駆動磁石54との距離(d)を縮めることができる。
【0052】
この空間距離(d)は、モータの効率に対して指数的に関与するものであり、結果として、大幅なモータ効率改善を図ることが可能になる。本実施形態おいては、リブ61は隣り合うステータ要素56の隙間に全て挿入されるように形成されているが、たわみ量の大きい中心部分にのみリブ61を形成する構成でもよいことはもちろんである。すなわち、真空排気によっても上板部59aの変形を所定値以内に抑える強度があればよいものとする。
【0053】
また、
図13は本実施形態の変形例(他の構成例)であり、ステータ要素62に本実施例との際がある。具体的には、本実施形態のリブ61とステータティース51と電磁コイル53(巻き線)の配置を見なおしたものである。なお、
図13はステータ要素の部分を拡大した概略説明図であり、
図3のII−II断面に相当する。
【0054】
ステータ要素62は、ステータティース51の固定子ヨーク28側に電磁コイル53を巻回して、ステータティース51の真空隔壁55側には電磁コイル53が巻回されていない。そして、電磁コイル33が巻回されていない部分にリブ61が差し込まれるように配置されている。すなわち、電磁コイル53は上板部59aと離間する部分のステータティース51にのみ巻かれ、リブ61は、隣り合う電磁コイル62の電磁コイル53が巻かれていない部分のステータティース51(
図13中の領域A)の間に差し込まれるように配置される。
【0055】
このような構成とすることで、狭いスペースにおいても、リブ61の厚さ(キャリア11進行方向の寸法)と高さ(h**方向の寸法)を確保することができる。特に、永久磁石52の磁石素子の間隔を狭める場合には、ステータ要素62の間隔も狭める必要があるため本構成は効果的である。永久磁石52の磁石素子の間隔を狭めることでキャリア11進行方向に対する磁石の数量を増大させることができるため、本実施形態の効果を失うことなく、基板搬送装置の高出力化・小型化を図ることができる。
【0056】
図14は、真空隔壁の肉厚を示す比較図であり、上述した各実施形態に係る真空隔壁35、45,55と
図15に示す平板状の真空隔壁135の必要な厚さ(肉厚)を示している。
図14はシミュレーションによる解析結果の一例である。まず、シミュレーションモデルについて記載する。このシミュレーションでは、真空隔壁35,45は半円形状断面とした。半円形状断面とは、真空隔壁35ではw/2=h=75mm、真空隔壁45ではw*/2=h*=75mmの寸法の断面形状である。各真空隔壁(35,45,55,135)とも水平方向と上下方向のそれぞれの中心でカットした1/4のモデルで解析を行った。
【0057】
大気面荷重は均一とし、大気側から真空−大気差圧荷重(98.067
N/m
2)が真空隔壁の大気側の内壁面全てに均一に荷重されるものとした。真空隔壁(35,45,55,135)の材質は全てSUS304(弾性係数E=1.9×10^11
N/m
2)とした。フランジ部(37,47,57,137)の外面部分が固定(拘束)される条件とした。外面部分とは開口部35aと接する面の逆側の件であり、
図5中の符号Qで示す面である。なお、各実施形態ともフランジ部(37,47,57,137)の寸法は同一であり長辺側の幅及び短辺側の幅とも25mm、厚さは15mmである。
【0058】
そして、永久磁石12,42,112と対向する真空隔壁(35,45,55,135)の面の中心部分でのたわみ最大変位量(最大たわみ量)が0.01mmとなる厚さ(t,t*,t**)を真空隔壁35,45,55,135のそれぞれについて解析した。真空隔壁(35,45,55,135)の面の中心部分とは、湾曲部39a,49a,上板部59aの上下方向と左右方向の中心部分とした。また、最大たわみ量とは、真空隔壁35,45,55,135に真空−大気圧差圧が荷重されたときに真空隔壁135(湾曲部39a,49a)の中心部分が真空側に変形する際のh(h*,h**)方向の変位量をいうものとする。
【0059】
シミュレーションの結果、フラット(平面状)の断面形状を有する真空隔壁135(
図15参照)ではたわみ量が0.01mmになるときの板厚は10.0mmであったのに対し、第1実施形態の真空隔壁35(
図6(a))では0.348mmとなり、第2実施形態の真空隔壁45(
図9(a))では0.45mm、第3実施形態の真空隔壁55(
図12(a))では0.45mmとなった。すなわち、本シミュレーションの結果としては、平面状の真空隔壁135では10mm程度の板厚を必要とするのに対して、第1〜3の実施形態の構成では湾曲部39a,49aおよび上板部59aの板厚を1mm以下にできるという結果を示している。
【0060】
真空隔壁35,45,55を用いることで、ステータティース31,43,51先端と永久磁石12,42,52表面との空間距離(d)を平面状の真空隔壁135を用いた場合と比べて大幅に縮めることが可能になる。真空隔壁35,45,55,135と大気側のステータティース31,43,51の先端との空隙を0.5mm、真空隔壁35,45,55,135と真空内の永久磁石12,42,52,112の表面との空隙を1.0mmとすると、真空隔壁35,45,55の空間距離(d)は真空隔壁135に比べて、1/5以下にすることができる。この空間距離(d)は、モータの効率に対して指数的に関与するものであり、結果として大幅なモータ効率改善を図ることが可能になる。
【0061】
以上の説明から、本発明により、真空隔壁35,45,55が受ける大気差圧による応力を緩和することにより、真空隔壁35,45,55の湾曲部39a,49aおよび上板部59aの肉厚を薄くすることが可能になり、駆動磁石21,41,54表面と永久磁石12,42,52表面の空隙を狭めることが可能になる。従って、モータ効率の向上が図れることにより、駆動源の小型化、駆動配線の小型化、電流の削減による安全対策のコスト比率削減が行え、ユーザにとって、コスト低減、省スペースかつ、安全な装置を提供することが可能になる。
【0062】
さらに、真空隔壁45(第2の実施形態)では、真空隔壁35(第1の実施形態)のように真空内部側に湾曲部49aが張り出す構造ではないため、プロセスチャンバS1の外壁をよりキャリア11に近づけることが可能になり、プロセスチャンバS1の真空内部空間を減少させることが可能になる。それにより、第2の実施形態に係る真空処理装置は、第1の実施形態に比べてプロセスチャンバS1の小型化、排気系(真空ポンプなど)の小型化が図れ、真空処理装置全体の小型化が図れる。さらに、上述したシミュレーション結果(
図14参照)でも明らかなように、第2の実施形態に係る真空処理装置は、モータ効率改善の点でも、より良好な結果が得られる。
【0063】
また、真空隔壁35,45,55を筒状ではなく、該半割り構造にしていることにより、ステータ要素27,46からの大気中への放熱を効率的に行うことが可能になるため、コイル抵抗を下げることが可能になり、さらなる効率向上を図ることが可能になる。