(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717460
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】含フッ素イオン液体型合成潤滑油
(51)【国際特許分類】
C10M 105/72 20060101AFI20150423BHJP
C10M 105/70 20060101ALN20150423BHJP
C10N 30/02 20060101ALN20150423BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20150423BHJP
C10N 30/08 20060101ALN20150423BHJP
C10N 40/02 20060101ALN20150423BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20150423BHJP
【FI】
C10M105/72
!C10M105/70
C10N30:02
C10N30:06
C10N30:08
C10N40:02
C10N40:04
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-26051(P2011-26051)
(22)【出願日】2011年2月9日
(65)【公開番号】特開2012-162693(P2012-162693A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000135265
【氏名又は名称】株式会社ネオス
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保 信二
(72)【発明者】
【氏名】向 恭平
(72)【発明者】
【氏名】河内 仁
【審査官】
岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第07687513(US,B1)
【文献】
中国特許出願公開第101591296(CN,A)
【文献】
特開2007−120653(JP,A)
【文献】
Zhuo Zeng et.al.,"Polyfluoroalkyl, Polyethylene Glycol, 1,4-Bismethylenebenzene, or 1,4-Bismethylene-2,3,5,6-Tetrafluorobenzene Bridged Functionalized Dicationic Ionic Liquids: Synthesis and Properies as High Temperature Lubricants",Chem. Mater. 2008, 20, 2719-2726,2008年 3月20日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00−80/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン液体から構成される含フッ素イオン液体型潤滑油であって、前記イオン液体が下記式(1)
【化1】
(式中、Rfは
【化2】
(式中、nは3〜7の整数を表す)
で表される炭素数4〜8のペルフルオロアルキル
基を示す。Aは
炭素数1〜2のアルキレン基を示
す。Q
+は有機カチオンを表し、X
−は分子内にフッ素原子を有するアニオンを表す。)
で表さ
れ、
前記有機カチオンが下記式(3)
【化3】
(式中、R1及び/又はR3は上記Rf−Aで表される基であり、
置換基R1〜R5の残りの基は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1〜18の直鎖又は分岐のアルキル基を示す。)
で表されるイミダゾリウムカチオンであり、
分子内にフッ素原子を有する前記アニオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンであることを特徴とする、含フッ素イオン液体型潤滑油
(ただし1−(3,4,5,6−ペルフルオロヘキシル)3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミドは除く)。
【請求項2】
前記イオン液体が1−メチル−3−(1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチル)イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドであることを特徴とする、請求項1に記載の含フッ素イオン液体型潤滑油。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の含フッ素イオン液体型潤滑油を含むことを特徴とする潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、従来のイオン液体型潤滑油よりも高い耐熱性と、高い潤滑性能を有する含フッ素イオン液体型潤滑油に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械装置、動力伝達装置、モーター、グリースなどに用いられる潤滑油としてはシリコーンオイル、合成炭化水素、エステル油などの中から所望の物性に近い基油を選定し、あるいは必要に応じて組み合わせて使用されている。場合によってはその他の成分を添加することで要求性能を満たす潤滑油組成物として使用されている。これらの潤滑油基油には、高温での使用の際には、基油自身の安定性、引火や燃焼の懸念があった。設備や装置の進歩に伴い、潤滑油には過酷な状態での使用に対して信頼性の向上が要求されており、より優れた耐熱性、耐酸化性、潤滑性を有する潤滑油基油が求められている。このような問題に対して、イオン液体を含有することを特徴とする合成潤滑油を用いる方法が知られている。(特許文献1、2)
【0003】
イオン液体は塩でありながら、常温で液体であり、且つ蒸気圧が極めて低い、難燃性である等の特徴から、様々な分野で応用が検討されている物質である。高い耐熱性、高い比熱容量などの特徴を活かし、潤滑剤の分野でも応用検討が積極的になされている。しかし、従来のイオン液体の中には、吸湿性を示すものや、場合によっては水に対して溶解性を示すものもあり、潤滑油として用いる場合、その用途によっては適さない可能性があった。また、前述のように、設備や装置の高性能化や高効率化に伴い、潤滑油の、より一層の信頼性の向上が恒常的に望まれており、長期間の使用における揮発損失や熱分解の問題の改善や従来よりも高い潤滑性能を有する潤滑油基油の開発が課題であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−286858号公報
【特許文献2】特開2009−57541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
すなわち本発明は、前述の潤滑剤用途でイオン液体を活用する際の問題点を解決し、従来のものよりも、高い耐熱性と潤滑性を有するイオン液体型潤滑油基油を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、従来より潤滑剤への適用が検討されていたイオン液体において、フッ素基を導入したカチオンを用いることにより、従来のイオン液体型潤滑油よりも耐熱性、潤滑特性を向上させることが出来ることを見出した。すなわち、本発明は下記項1〜5の含フッ素イオン液体型潤滑油及び潤滑油組成物を提供するものである。
項1.
イオン液体から構成される含フッ素イオン液体型潤滑油であって、前記イオン液体が下記式(1)
【0007】
【化1】
【0008】
(式中、Rfはポリフルオロアルキル基、ポリフルオロポリエーテル基を示す。Aは単結合もしくは2価の有機基を示し、有機基は必要に応じて酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでもよい。Q
+は有機カチオンを表し、X
−は分子内にフッ素原子を有するアニオンを表す。)
で表されることを特徴とする、含フッ素イオン液体型潤滑油
項2.
Rfが下記式(2)
【0009】
【化2】
【0010】
(式中nは0〜7の整数を表す)
で表される炭素数1〜8の直鎖状のペルフルオロアルキル基であることを特徴とする、項1に記載の含フッ素イオン液体型潤滑油。
項3.
イオン液体を構成するカチオンが下記式(3)
【0011】
【化3】
【0012】
(式中、R
1及び/又はR
3は下記一般式(4)で表される基である。
【0013】
【化4】
【0014】
(式中Rfはポリフルオロアルキル基、ポリフルオロポリエーテル基を示す。Aは単結合もしくは2価の有機基を示し、有機基は必要に応じて酸素原子、窒素原子または硫黄原子を含んでもよい。)。
置換基R
1〜R
5の残りの基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基を示し、これらの置換基は必要に応じて酸素、窒素、硫黄を含んでもよい。)
で表されるイミダゾリウムカチオンであることを特徴とする項1又は2に記載の含フッ素イオン液体型潤滑油。
項4.
分子内にフッ素原子を有する前記アニオンがビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の含フッ素イオン液体型潤滑油。
項5.
項1〜4のいずれかに記載の含フッ素イオン液体型潤滑油を含むことを特徴とする潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0015】
本発明の含フッ素イオン液体型潤滑油は、イオン液体の有機カチオン部分にポリフルオロアルキル基またはポリフルオロポリエーテル基を有しており、同一炭素数の炭化水素基を有するイオン液体と比較した場合、耐熱性、摩擦特性に関して優れている。耐熱性や摩擦特性は、設備や装置の高性能化や高効率化に伴って潤滑油に求められるている性能であり、本発明の成果は、より優れた耐熱性や摩擦特性を有する潤滑油および潤滑油基油として利用が出来る。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の含フッ素イオン液体型潤滑油について詳述する。
【0017】
本発明の含フッ素イオン液体型潤滑油は下記一般式(1)
【0019】
(式中、Rfはポリフルオロアルキル基、ポリフルオロポリエーテル基を示す。Aは単結合もしくは2価の有機基を示し、有機基は必要に応じて酸素原子や窒素原子や硫黄原子を含んでもよい。Q
+は有機カチオンを表し、X
−は分子内にフッ素原子を有するアニオンを表す。)
で表されることを特徴とする。
【0020】
一般式(1)において、Rfはポリフルオロアルキル基、ポリフルオロポリエーテル基を示す。ポリフルオロアルキル基の炭素数は、1〜10、好ましくは2〜9、より好ましくは4〜8であり、直鎖であっても分岐を有していてもよい。Rfは直鎖のポリフルオロアルキル基が好ましい。ポリフルオロアルキル基は、アルキル基の少なくとも2個の水素原子がフッ素原子で置換された基を意味し、フッ素置換基の数は特に限定されないが全ての水素原子がフッ素原子で置換されたペルフルオロアルキル基が好ましい。Rfとしては具体的に、炭素数1〜8の直鎖状ペルフルオロアルキル基、炭素数3〜9の分岐状ペルフルオロアルケニル基、平均分子量1000以下のペルフルオロポリエーテル基などが挙げられる。
ペルフルオロポリエーテル基としては、
CF3-CF2-CF2-O-[CF(CF3)-CF2-O]n-CF(CF3)-
CF3-CF2-CF2-O-(CF2-CF2-CF2-O)n-CF2-CF2-
CF3-O-(CF2-CF2-O)m-(CF2-O-)n-CF2-
(n,mは、ペルフルオロポリエーテル基の平均分子量が1000以下になる0以上の整数を表す。)が挙げられる。
【0021】
好ましいRfとしては炭素数1〜8の直鎖状ペルフルオロアルキル基が挙げられる。このようなペルフルオロアルキル基としては、特に限定されないが、たとえば下記一般式(2)で表されるペルフルオロアルキル基が挙げられる。
【0023】
(式中nは0〜7の整数を表す)
一般式(1)において、Aは単結合もしくは2価の有機基を示す。2価の有機基としては、具体的に、炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキレン基が挙げられ、必要に応じて、
酸素原子、窒素原子、硫黄原子を含んでもよい。具体的には、−CH
2−、−CH
2CH
2−、−CH
2CH(CH
3)−、−CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2−、−OCH
2CH
2−、−CH
2CH
2O−、−OCH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2O−、−OCH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2O−、−SCH
2CH
2−、−CH
2CH
2S−、−SCH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2S−、−SCH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2S−、−NHCH
2CH
2−、−CH
2CH
2NH−、−NHCH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2NH−、−NHCH
2CH
2CH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH
2CH
2NH−などが挙げられる。
【0024】
好ましいAとしては、工業的な原料の入手の容易さの点からも、炭素数1〜2のアルキレン基が好ましい。
【0025】
一般式(1)においてQ
+ は有機カチオンを表す。有機カチオンとしては具体的に、脂肪族アンモニウムカチオン、飽和環式アンモニウムカチオン、芳香族アンモニウムカチオン、第四級ホスホニウムカチオンが示される。好ましい有機カチオンとしては、イミダゾリウムカチオンやピリジニウムカチオン等の芳香族アンモニウムカチオンが挙げられ、特に好ましい有機カチオンとしてはイミダゾリウムカチオンが挙げられる。イオン液体のカチオン(Rf−A−Q
+)は下記式(3)のイミダゾリウムカチオンが好ましい。
【0027】
(式中、R
1及び/又はR
3は下記一般式(4)で表される基である。
【0029】
(式中Rf、Aは一般式(1)におけるRf、Aと同義である)。
【0030】
置換基R
1〜R
5の残りの基は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜18の直鎖または分岐のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アシル基を示し、これらの置換基は必要に応じて酸素、窒素、硫黄を含んでもよい。)
【0031】
上記式(3)で表されるイミダゾリウムカチオンは合成の容易さの観点から1,3位の2置換イミダゾリウムカチオン、1,2,3位の3置換イミダゾリウムカチオンが好ましく用いられる。1,2,3位の置換基、好ましくは1,3位の置換基のうち、少なくとも一つがポリフルオロアルキル基またはポリフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【0032】
一般式(1)においてX
−は分子内にフッ素原子を有するアニオンを表す。分子内にフッ素原子を有するアニオンとしては、具体的にペルフルオロアルカンスルホネートアニオン(Rf
1−SO
3−)、やビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン({Rf
1−SO
2}
2N
−)、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン({F−SO
2}
2N
−)、六フッ化リンアニオン(PF
6)、四フッ化ホウ素アニオン(BF
4)などの含フッ素アニオンが挙げられる。Rf
1は炭素数1〜10の直鎖又は分岐を有するペルフルオロアルキル基が挙げられ、具体的にはCF
3−(CF
2)
m−(mは0〜9の整数を示す)で表される基が挙げられる。
【0033】
好ましいアニオンとしては、ビス(パーフルオロアルカンスルホニル)イミドアニオン挙げられ、特に好ましいアニオンとしてはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンが挙げられる。
【0034】
本発明におけるイオン液体の合成方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を用いて製造することが出来る。例えば、一般的なアルキル化反応やアニオン交換反応などを適用することが出来る。
【0035】
イオン液体において、カチオン、アニオンは、1種のみを用いてもよく、2種以上のカチオン/アニオンを混合して用いてもよい。
【0036】
本発明の内容を以下の実施例により説明するが、本発明の内容は実施例に限定されることは意図しない。
【実施例】
【0037】
合成実施例1
攪拌機、温度計、還流冷却機及び滴下漏斗を備えたフラスコにHFE−7100(住友3M製)30ml、ピリジン0.95g(0.012mol)及び1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−1−n−オクタノール(東京化成、試薬)3.64g(0.01mol)を0℃で攪拌しながら、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(東京化成、試薬)33.86g(0.12mol)を除々に滴下し、更に攪拌を3〜4時間実施した後、反応混合物を水100ml中に滴下した。
【0038】
分離した下層を2〜3回水洗し、無水硫酸ナトリウムで脱水後、ロータリーエバポレーターを用いて、HFE−7100を留去することで、淡黄色液体である1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル−1−トリフルオロメタンスルホネートを4.47g(9mmol、収率90%)得た。
【0039】
攪拌機、温度計、還流冷却機及び滴下漏斗を備えたフラスコに1−メチルイミダゾール(東京化成、試薬)0.89g(10.8mmol)、アセトニトリル30mlを40〜50℃に加温し、攪拌しながら、合成した1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロオクチル−1−トリフルオロメタンスルホネート4.47g(9mmol)を滴下した。更に40〜50℃で3〜4時間攪拌を継続させ、反応混合物を水50ml中に滴下した。分離した下層を5〜10回蒸留水洗し、1−メチル−3−(1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチル)イミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホネート、4.74g(8.2mmol、収率91%)を得た。
【0040】
合成実施例2
次いで、1−メチル−3−(1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチル)イミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホネート、4.74g(8.2mmol)をメタノール溶媒中、室温にてビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム、2.47g(8.6mmol)と塩交換反応させ、得られた反応液を蒸留水で5〜10回水洗し、その後、分離した下層から水分を減圧除去することによって、目的物である1−メチル−3−(1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−n−オクチル)イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、5.28g(7.4mmol、収率90%)を得た。
【0041】
合成比較例1
合成実施例1に示した、1H,1H,2H,2H−トリデカフルオロ−1−n−オクタノールの代わりにn−オクタノールを用いる以外は合成実施例1と同様にして、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホネートを収率91%で得た。その後、合成実施例2と同様にして、1−メチル−3−n−オクチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを収率90%で得た。
【0042】
合成比較例2
合成実施例1において、1−メチル−3−(1H,1H,2H,2H―トリデカフルオロ−n−オクチル)イミダゾリウム・トリフルオロメタンスルホネートの代わりに、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・クロライドを用いる以外は同様にして、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを収率91%で得た。
【0043】
実施例1
合成実施例2で合成した、1−メチル−3−(1H,1H,2H,2H―トリデカフルオロ−n−オクチル)イミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いて、摩擦係数測定、耐熱性測定、融点測定、粘度測定を行い、潤滑油基油としての性能を評価した。
【0044】
摩擦係数測定は新東科学社製 HEIDON−14DRH広域摩擦磨耗試験機を用い、測定温度20℃、荷重200gで、50rpmと100rpmの2条件にて測定を行った。測定基材としてはアルミニウムを用いた。
【0045】
耐熱性測定はエスアイアイナノテクノロジー社製 TG/DTA6200を用いて、150ml/分の空気気流下、10℃/分の昇温速度にて、5%重量減少温度を測定することで評価した。
【0046】
融点はエスアイアイナノテクノロジー社製 DSC6200を用いて、10℃/分の速度で室温から−60℃までの測定により評価した。
【0047】
粘度測定は、ブルックフィールド社製 DV−ultraを用いて30℃における粘度測定を実施した。評価結果を表1に示す。
【0048】
比較例1
合成比較例1で合成した、1−メチルー3−n−オクチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いて、実施例1と同様に、摩擦係数測定、耐熱性測定、融点測定、粘度測定を行い、潤滑油基油としての性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0049】
比較例2
合成比較例2で合成した、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドを用いて、実施例1と同様に、摩擦係数測定、耐熱性測定、融点測定、粘度測定を行い、潤滑油基油としての性能を評価した。評価結果を表1に示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1の結果から、イミダゾリウムカチオンの置換基に直鎖状ペルフルオロアルキル基を導入した場合、同炭素数の炭化水素基が導入されたものよりも耐熱性が優れていることが判る。また、フッ素基の導入により、同炭素数の炭化水素基が導入されたものよりも低い摩擦係数を示す。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明による含フッ素イオン液体型潤滑油は、イオン液体の有機カチオン部分にポリフルオロアルキル基を有しており、同一炭素数の炭化水素基を有するイオン液体と比較した場合、耐熱性、摩擦特性に優れている。耐熱性や摩擦特性は、産業上の設備、装置の高性能化や高効率化に伴って潤滑油に要求される性能であり、本発明の成果は、より優れた耐熱性や摩擦特性を有する潤滑油および潤滑油基油として有用である。