特許第5717467号(P5717467)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717467
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】支承装置
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/90 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   E04B2/90
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2011-43724(P2011-43724)
(22)【出願日】2011年3月1日
(65)【公開番号】特開2012-180667(P2012-180667A)
(43)【公開日】2012年9月20日
【審査請求日】2013年10月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(72)【発明者】
【氏名】田中 紳一郎
(72)【発明者】
【氏名】林 哲也
【審査官】 土屋 真理子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−286755(JP,A)
【文献】 特開2004−052484(JP,A)
【文献】 特開2001−164684(JP,A)
【文献】 実開平1−61312(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/36
2/56−2/70
2/88−2/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方部材で他方部材を可動支持する支承装置であって、
一方部材に固定する第1固定部材と、
他方部材に固定する第2固定部材と、
前記第1固定部材と前記第2固定部材とを接続する接続部材とで構成し、
該接続部材を、前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方に対して垂直に配置するとともに、柱状に形成し、
前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方の固定部材を、前記接続部材に対して軸方向にスライド可能に構成し、
前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方の固定部材に、前記接続部材の面内方向の移動を許容する移動機構と、前記接続部材の軸方向に対する回転を許容する回転機構とを備え
前記第1固定部材を、所定間隔を隔てて平行に配置した2つの支承部材で構成するとともに、前記第2固定部材を、2つの前記支承部材の間に配置する可動部材とし、
前記接続部材の両端部分を前記支承部材に固定した
支承装置。
【請求項2】
前記第1固定部材及び前記第2固定部材にウェブ部材を備えるとともに、
前記第2固定部材の前記ウェブ部材を、前記第1固定部材の前記ウェブ部材に対して平行に配置し、
前記移動機構を、
第2固定部材の前記ウェブ部材に形成し、前記接続部材の貫通を許容するとともに、面内方向の移動をガイドする長孔状のガイド溝で構成した
請求項に記載の支承装置。
【請求項3】
前記接続部材と前記ガイド溝との間に、
前記接続部材との回転によって生じる摩擦を低減する回転摩擦低減手段と、
前記ガイド溝とのスライド移動によって生じる摩擦を低減するスライド摩擦低減手段とを備えた摩擦低減部材を介在させた
請求項に記載の支承装置。
【請求項4】
前記スライド摩擦低減手段を、第1スライド摩擦低減手段とし、
前記ガイド溝における前記第1スライド摩擦低減手段に対向する対向部に第2スライド摩擦低減手段を備えるとともに、
前記接続部材の表面に、摩擦低減処理を施した
請求項に記載の支承装置。
【請求項5】
前記接続部材を、円柱状に形成し、該円柱状の外周面で前記回転機構を構成した
請求項1乃至4のうちいずれかに記載の支承装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、一方部材で他方部材を可動支持する支承装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、スラブと壁、柱と壁、壁と壁、あるいは柱と柱のように二部材を接続したり、一方部材で他方部材を支持する構造物が多く存在している。このように、二部材を接続したり支持すると、風や振動等の外力に対して、二部材の挙動や変形が異なることがある。
【0003】
さらに、これら二部材をたとえば相対移動しないように剛結すると、挙動や変形が異なることによって、各部材には応力が発生する。したがって、これらの応力に対する部材強度を確保するために、例えば、部材厚を厚くしたり、部材断面を大きくしたり、高強度材料を使用することで対応する必要があった。この場合、部材の重量増や高コスト化となり、昨今の軽量化や低コスト化の要望に応えることができなかった。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1では、スラブに対して、PCカーテンウォールを接続する構造において、PCカーテンウォールのスラブに対する離間方向への相対移動を許容する長孔を有する接続部材が提案されている。この接続部材によって、スラブに対するPCカーテンウォールの離間方向への相対移動や変形によって生じる応力の発生を低減できるため、PCカーテンウォールの部材厚を薄くすることができるとされている。
【0005】
しかし、上記接続部材では、スラブに対するPCカーテンウォールの離間方向への相対移動や変形を許容できるものの、スラブに対するPCカーテンウォールの捩れ方向の相対移動や変形、PCカーテンウォールの撓み等の三次元的なさまざまな方向の相対移動や変形に対応することができない。したがって、PCカーテンウォールの部材厚を十分に薄くしたり、材料強度の低い部材を用いることができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−164684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明では、三次元的に可動支持できる支承装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、一方部材で他方部材を可動支持する支承装置であって、一方部材に固定する第1固定部材と、他方部材に固定する第2固定部材と、前記第1固定部材と前記第2固定部材とを接続する接続部材とで構成し、該接続部材を、前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方に対して垂直に配置するとともに、柱状に形成し、前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方の固定部材を、前記接続部材に対して軸方向にスライド可能に構成し、前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方の固定部材に、前記接続部材の面内方向の移動を許容する移動機構と、前記接続部材の軸方向に対する回転を許容する回転機構とを備え、前記第1固定部材を、所定間隔を隔てて平行に配置した2つの支承部材で構成するとともに、前記第2固定部材を、2つの前記支承部材の間に配置する可動部材とし、前記接続部材の両端部分を前記支承部材に固定したことを特徴とする。
【0009】
上記一方部材及び上記他方部材は、スラブと壁、柱と壁、壁と壁、あるいは柱と柱等の組み合わせとすることができる。
上記柱状は、円柱状や、断面矩形状の角柱状で構成することができる。
上記回転機構は、円柱状の接続部材においては側周面、角柱状においては一部に円柱部分を備え、その円柱部分等によって構成することができる。
【0010】
この発明の構成により、一方部材で他方部材を三次元的に可動支持することができる。
【0011】
詳しくは、第1固定部材と第2固定部材とを接続部材で接続し、第1固定部材及び第2固定部材のうち少なくとも一方の固定部材に、前記接続部材の面内方向の移動を許容する移動機構を備えたことにより、他方の固定部材を、接続部材を介して、移動機構を備えた一方の固定部材の面内方向において相対移動することができる。
【0012】
また、前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方に対して垂直に配置するとともに、前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方の固定部材を、前記接続部材に対して軸方向にスライド可能に構成することによって、少なくとも一方の固定部材を、接続部材を介して、接続部材の配置方向において相対移動することができる。
【0013】
さらには、前記第1固定部材及び前記第2固定部材のうち少なくとも一方の固定部材に、前記接続部材の軸方向に対する回転を許容する回転機構を備えたため、少なくとも一方の固定部材を、接続部材を介して、接続部材の軸方向に対して相対回転することができる。
【0014】
このように、第1固定部材と第2固定部材とは、接続部材を介して、移動機構を備えた一方の固定部材の面内方向、及び接続部材の配置方向における相対移動、並びに接続部材の軸方向に対して相対回転することができる。したがって、第1固定部材に固定された一方部材によって、第2固定部材に固定された他方部材を三次元的に可動支持することができる。
【0015】
また、前記第1固定部材を、所定間隔を隔てて平行に配置した2つの支承部材で構成するとともに、前記第2固定部材を、2つの前記支承部材の間に配置する可動部材とし、前記接続部材の両端部分を前記支承部材に固定することにより、2つの支承部材の所定間隔の範囲において、可動部材を三次元的に可動支持することができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記第1固定部材及び前記第2固定部材にウェブ部材を備えるとともに、前記第2固定部材の前記ウェブ部材を、前記第1固定部材の前記ウェブ部材に対して平行に配置し、前記移動機構を、第2固定部材の前記ウェブ部材に形成し、前記接続部材の貫通を許容するとともに、面内方向の移動をガイドする長孔状のガイド溝で構成することができる。
【0017】
この発明の構成により、簡単な構造で、面内方向の移動を許容する移動機構を構成することができる。したがって、複雑な構造の移動機構を備えた場合と比較して、耐久性のある移動機構を構成できる。また、長孔状のガイド溝で構成するため、他部材で構成する移動機構を備える場合と比較して、支承装置の軽量化を図ることができる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記接続部材と前記ガイド溝との間に、前記接続部材との回転によって生じる摩擦を低減する回転摩擦低減手段と、前記ガイド溝とのスライド移動によって生じる摩擦を低減するスライド摩擦低減手段とを備えた摩擦低減部材を介在させることができる。
【0019】
上述の前記接続部材と前記ガイド溝との間におけるガイド溝とのスライド移動によって生じる摩擦は、ガイド溝における面内方向あるいは面外方向のスライド移動によって生じる摩擦を含む概念とすることができる。
この発明の構成により、スムーズな三次元的な可動を実現することができる。したがって、スムーズな三次元的可動支持を可能とする支承装置を構成することができる。
【0020】
またこの発明の態様として、前記スライド摩擦低減手段を、第1スライド摩擦低減手段とし、前記ガイド溝における前記第1スライド摩擦低減手段に対向する対向部に第2スライド摩擦低減手段を備えるとともに、前記接続部材の表面に、摩擦低減処理を施すことができる。
この発明の構成により、スムーズな軸方向の可動を実現することができる。したがって、さらに可動性の高い支承装置を構成することができる。
【0021】
またこの発明の態様として、前記接続部材を、円柱状に形成し、該円柱状の外周面で前記回転機構を構成することができる。
この発明の構成により、複雑な構成を備えずとも、少なくとも一方の固定部材を、接続部材を介して、接続部材の軸方向に対してスムーズに相対回転することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、三次元的に可動支持できる支承装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】支承装置の斜視図。
図2】支承装置のA−A断面図。
図3】支承装置のB−B断面図。
図4図3における要部拡大図。
図5】支承装置のC−C断面図。
図6】支承装置の分解斜視図。
図7】ベアリングホルダについての説明図。
図8】第2の実施例における支承装置の斜視図。
図9】第2の実施例における支承装置のA−A断面図。
図10】第2の実施例における支承装置のB−B断面図。
図11】第2の実施例における図3における要部拡大図。
図12】第2の実施例における支承装置のC−C断面図。
図13】第2の実施例における支承装置の分解斜視図。
図14】第2の実施例におけるベアリングホルダ及びピン固定材についての説明図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の一実施形態を以下図面と共に説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は支承装置1の斜視図を示し、図2は支承装置1のA−A断面図を示し、図3は支承装置1のB−B断面図を示し、図4図3における要部拡大図を示し、図5は支承装置1のC−C断面図を示している。
【0026】
また、図6は支承装置1の分解斜視図を示し、図7はベアリングホルダ43についての説明図を示している。なお、図7(a)はベアリングホルダ43の斜視図を示し、図7(b)はベアリングホルダ43の分解斜視図を示している。
【0027】
支承装置1は、支承部10、可動部20、接続ピン30、及びベアリング機構部40とで構成している。
支承部10は、垂直方向のフランジ部材11aと、水平方向のウェブ部材11bとで、側面視倒位のT字状に形成された支承部材11と、後述する接続ピン30の上下端を固定するピン固定材12とで構成し、高さ方向Hにおいて所定間隔を隔てて2つずつ設けている。
【0028】
なお、支承部材11のウェブ部材11bには、接続ピン30の挿通を許容するとともに、接続ピン30の配置誤差等の誤差を吸収することのできる貫通長孔13を、ウェブ部材11bにおいて、その長さ方向に備えている。この長さ方向を奥行き方向Xとする。
【0029】
また、ピン固定材12には、後述する接続ピン30の固定端部32の挿入を許容する挿入孔14を備え、図示省略する螺合手段によって、支承部材11のウェブ部材11bに対する位置を固定することができる。このピン固定材12により、接続ピン30を支承部材11に対して固定することができる。
このような支承部材11は、図3において二点鎖線で示す壁部材200に対してフランジ部材11aでボルト固定する。
【0030】
可動部20は、垂直方向のフランジ部材21aと、水平方向のウェブ部材21bとで、側面視倒位のT字状に形成された可動部材21と、後述するベアリング機構部40の一部を構成するスライドプレート42の嵌合を許容するスライドスリット22を、ウェブ部材21bにおいて、その長さ方向に備えている。この長さ方向を幅方向Yとする。
【0031】
なお、ウェブ部材11bの長さ方向である奥行き方向Xと、ウェブ部材21bの長さ方向である幅方向Yとが、平面視直交するように、可動部材21を2つの支承部材11の間に配置し、図2において二点鎖線で示す壁部材201に対してフランジ部材21aでボルト固定する。
【0032】
接続ピン30は、円柱状のピンであり、高さ方向Hの中央部分の本体円柱部31と、本体円柱部31の両端に配置し、本体円柱部31よりわずかに小径な固定端部32とで構成している。なお、本体円柱部31の表面は磨き処理や硬質クロムメッキ等により、摩擦係数の低い低摩擦表面となっている。
【0033】
接続ピン30に対する可動部20のベアリング効果を奏するためのベアリング機構部40は、2つのガイドプレート41と、2本のスライドプレート42と、ベアリングホルダ43とで構成している。
【0034】
ガイドプレート41は、平面視正方形の薄板状であり、平面視中央に、本体円柱部31の貫通を許容する平面視円形の貫通孔41aを備えるとともに、図示省略する螺合手段により、ベアリングホルダ43に固定する構造である。
【0035】
なお、ガイドプレート41のベアリングホルダ43に対向する面には、フッ素樹脂コーティング41bを施している。また、ガイドプレート41における奥行き方向Xの長さは、図4に示すように、後述するスライドスリット22に嵌合するスライドプレート42の両側を跨ぐ長さに形成している。
【0036】
スライドプレート42は、上述のスライドスリット22の幅方向Yの側面に嵌合する倒位の凹型断面であるC型部材で構成し、スライドウェブ面42aが間隔を隔てて対向するようにスライドスリット22の両側面に嵌合している。
【0037】
ベアリングホルダ43は、高さ方向Hにおける2つのガイドプレート41の間、そして、奥行き方向Xにおける2本のスライドプレート42のスライドウェブ面42aの間に配置され、ガイドプレート41の貫通孔41aに対応する平面視中央に、本体円柱部31の貫通を許容する貫通孔44を備えるとともに、スライドプレート42のスライドウェブ面42aに対向する側面にベアリングプレート45を装着している。
【0038】
詳しくは、図7(b)に示すように、ベアリングホルダ43における、スライドプレート42のスライドウェブ面42aに対向する側の側面43aには、フッ素樹脂製のベアリングプレート45の装着を許容する装着溝43bを備え、装着溝43bに嵌め込んでベアリングプレート45を装着している。
【0039】
また、図7(a)に示すように、貫通孔44の内側面に、円柱リング状のベアリングリング46を装着している。
詳しくは、図7(b)に示すように、ベアリングリング46は、本体円柱部31の外径と略同じ内径を有するとともに、少なくとも内周面がフッ素樹脂製である。
【0040】
そして、貫通孔44に内側面に、径外側向きに広がる装着溝44aを形成し、装着溝44aにベアリングリング46を装着している。
なお、ベアリングリング46には、高さ方向Hに対して所定角度で交差する方向のスリット46aを備えており、ベアリングリング46をスリット46aで小径化して、ベアリングホルダ43の装着溝44aにベアリングリング46を装着することができる。
【0041】
このように構成されたベアリング機構部40は、貫通孔44の装着溝44aにベアリングリング46を装着した状態で本体円柱部31を貫通させ、スライドスリット22の両側面に嵌合させたスライドプレート42の対向するスライドウェブ面42aの間に、側面43aの装着溝43bに嵌め込まれたベアリングプレート45がスライドウェブ面42aに対向させ、密着するようにベアリングホルダ43を嵌め込む。
【0042】
そして、そのベアリングホルダ43の上下からガイドプレート41で挟み込んで、ベアリングホルダ43のスライドスリット22に対する高さ方向Hの位置を固定している。したがって、ベアリングプレート45とスライドウェブ面42aとの間にわずかな隙間を設けてもよい。
【0043】
このように、ベアリング機構部40を構成しているため、ベアリング機構部40において、接続ピン30とベアリングホルダ43との境界部分においてはベアリングリング46が介在し、ベアリングホルダ43とスライドスリット22との間には、スライドプレート42を介してベアリングプレート45が介在し、それぞれ摺動する。
さらには、スライドスリット22に対するベアリングホルダ43の高さ方向Hの位置を、挟みこんで固定するガイドプレート41によって拘束している。
【0044】
換言すると、スライドスリット22とベアリングホルダ43、あるいは、接続ピン30とベアリングホルダ43との可動部分には、ベアリングプレート45やベアリングリング46のようなフッ素樹脂製であり、すべり性の高い部材が介在している。したがって、スムーズな摺動を実現することができる。
【0045】
このような構成の支承装置1は、三次元的な可動状態で可動部20を支承部10で支持することができる。
詳しくは、両端を支承部10に固定された接続ピン30に対して、可動部20は、ベアリング機構部40を介して、回転自在、且つ高さ方向Hに移動することができる。このとき、接続ピン30の表面に対して、ベアリングホルダ43の貫通孔44に装着したベアリングリング46が作用するため、回転方向R(図5参照)且つ高さ方向Hの移動を、スムーズに実現することができる。
【0046】
さらには、両端を支承部10に固定された接続ピン30に対して、可動部20は、ベアリング機構部40を介して、幅方向Yに移動することができる。このとき、接続ピン30に装着されたベアリングホルダ43の側面43aに装着したベアリングプレート45と、スライドスリット22の両側に装着したスライドプレート42のスライドウェブ面42aとが摺動するため、幅方向Yの移動をスムーズに実現することができる。
【0047】
このように、支承部10に対する可動部20の高さ方向H及び回転方向Rの移動において接続ピン30とベアリングリング46とが摺動し、支承部10に対する可動部20の幅方向Yの移動においてスライドウェブ面42aとベアリングプレート45とが摺動するため、支承部10に対して、可動部20は高さ方向H、幅方向Y及び回転方向Rにスムーズ移動することができる。換言すると、支承部10は、高さ方向H、幅方向Y及び回転方向Rにおいてスムーズ移動可能に可動部20を支持することができる。
【0048】
したがって、フランジ部材11aを固定した壁部材200に対して、フランジ部材21aを固定した壁部材201を移動可能(高さ方向H及び幅方向Y)及び回転可能(回転方向R)に支持することができる。このため、壁部材200,201に作用する負荷を低減することができる。
【0049】
詳しくは、壁部材200と壁部材201とを、例えば、移動可能(高さ方向Hあるいは幅方向Y)あるいは回転可能(回転方向R)のいずれかのみで支持した場合、風圧等により、可動できない方向の変形が生じた場合、その方向の応力が壁部材200,201に作用することとなる。そのため、その応力に耐えるだけの剛性を壁部材200,201に備える必要があり、意匠性を損なっていた。
【0050】
特に、壁面の多くをガラス面で構成するガラス張りの構造物の場合、上述のような応力を、ガラス面を補剛する窓枠に作用させるため、窓枠の支持点数や剛性を多く必要とし、意匠上の制約となっていた。
【0051】
これに対し、移動可能(高さ方向H及び幅方向Y)及び回転可能(回転方向R)に支持することができる支承装置1を用いることにより、壁部材200,201に作用する負荷を低減することができる。
【0052】
したがって、壁部材200,201の部材厚を厚くしたり、部材断面を大きくしたり、高強度材料を使用することなく、作用する応力に抗することができる。よって、昨今の軽量化や低コスト化の要望に応えることができるとともに、上述のようなガラス張りの構造物の場合であっても、意匠上の自由度を向上することができる。
【0053】
なお、上述の説明においては、支承部材11の長さ方向(奥行き方向X)と可動部材21の長さ方向(幅方向Y)が平面視直交するよう配置したが、支承部材11の長さ方向と可動部材21の長さ方向が平面視鈍角又は鋭角に交差、あるいは同じ方向となるように配置してもよい。
【実施例2】
【0054】
続いて、異なる形状の接続ピン130を用いた支承装置100について説明する。
図8は支承装置100の斜視図を示し、図9は支承装置100のA−A断面図を示し、図10は支承装置100のB−B断面図を示し、図11図10における要部拡大図を示し、図12は支承装置100のC−C断面図を示している。
【0055】
また、図13は支承装置100の分解斜視図を示し、図14はベアリングホルダ143及びピン固定材112についての説明図を示している。なお、図14(a)はベアリングホルダ143の斜視図を示し、図14(b)はベアリングホルダ143の分解斜視図を示し、図14(c)はピン固定材112の斜視図を示し、図14(b)はピン固定材112の分解斜視図を示している。
【0056】
支承装置100は、支承部110、可動部120、接続ピン130、及びベアリング機構部140とで構成している。
支承部110は、支承部材111と、後述する接続ピン130の上下端を固定するピン固定材112とで構成し、高さ方向Hにおいて所定間隔を隔てて2つずつ設けている。
【0057】
なお、支承部材111、支承部材111を構成するフランジ部材111a及び部材111b、並びに貫通長孔113は、上述の実施例1における支承部材11、フランジ部材11a、部材11b、及び貫通長孔13と同じ構成であるため詳細な説明を省略する。
【0058】
支承部110のピン固定材112には、後述する接続ピン130の固定端部133の挿入を許容する挿入孔114を備え、図示省略する螺合手段によって、支承部材111のウェブ部材111bに対する位置を固定することができる。このピン固定材112により、接続ピン130を支承部材111に対して固定することができる。また、挿入孔114の内面には、実施例1において、ベアリングホルダ43の貫通孔144に装着するベアリングリング46に対応するベアリングリング112aを装着している(図14(c)参照)。
【0059】
詳しくは、ベアリングリング112aは、後述する接続ピン130の固定端部133の外径と略同じ内径を有するとともに、少なくとも内周面がフッ素樹脂製であり、ベアリングリング112aには、高さ方向Hに対して所定角度で交差する方向のスリット112bを備えている。
【0060】
そして、図14(d)に示すように、ピン固定材112における挿入孔114には、フッ素樹脂製のベアリングリング112aの装着を許容する装着溝114aを備え、ベアリングリング112aをスリット112bで小径化して、挿入孔114の装着溝114aにベアリングリング112aを装着する。
【0061】
可動部120、並びに可動部120を構成する可動部材121、フランジ部材121a、ウェブ部材121b、及びスライドスリット122は、上述の実施例1における可動部20、可動部材21、フランジ部材21a、ウェブ部材21b、及びスライドスリット22と同じ構成であるため詳細な説明を省略する。
【0062】
接続ピン130は、矩形断面の角形柱状のピンであり、高さ方向Hの中央部分の本体矩形柱部131と、本体矩形柱部131の両端に配置し、支承部材111の貫通長孔113に遊嵌する円柱状部132と、円柱状部132より上下方向外側の端部において、円柱状部132より小径に形成し、ピン固定材112の挿入孔114に嵌合する固定端部133とで構成している。なお、本体矩形柱部131において後述するスライドプレート142に対向する対向側面131a、並びに円柱状部132及び固定端部133の外側面は磨き処理や硬質クロムメッキ等により、摩擦係数の低い低摩擦表面となっている。
【0063】
接続ピン130に対する可動部120のベアリング効果を奏するためのベアリング機構部140は、2つのガイドプレート141と、2本のスライドプレート142と、ベアリングホルダ143とで構成している。なお、スライドプレート142は、上述の実施例1におけるスライドプレート42と同じ構成であるため詳細な説明を省略する。
【0064】
ガイドプレート141は、平面視正方形の薄板状であり、平面視中央に、本体矩形柱部131の貫通を許容する平面視矩形の貫通孔141aを備えるとともに、図示省略する螺合手段により、ベアリングホルダ143に固定する構造である。なお、ガイドプレート141における貫通孔141a以外の構成については、上述の実施例1のガイドプレート41における貫通孔41a以外の構成と同じ構成であるため詳細な説明を省略する。
【0065】
ベアリングホルダ143は、高さ方向Hにおける2つのガイドプレート141の間、そして、奥行き方向Xにおける2本のスライドプレート142のスライドウェブ面142aの間に配置され、ガイドプレート141の貫通孔141aに対応する平面視中央に、本体矩形柱部131の貫通を許容する面視矩形の貫通孔144を備えている。
【0066】
さらに、ベアリングホルダ143は、スライドプレート142のスライドウェブ面142aに対向する側面143a、及び貫通孔144において本体矩形柱部131の対向側面131aに対向する内側面144aにベアリングプレート145を装着している。
【0067】
詳しくは、図14(b)に示すように、ベアリングホルダ143における、スライドプレート142のスライドウェブ面142aに対向する側の側面143aや、貫通孔144における接続ピン130の対向側面131aに対向する内側面144aには、フッ素樹脂製のベアリングプレート145の装着を許容する装着溝145aを備え、装着溝145aに嵌め込んでベアリングプレート145を装着している。
【0068】
このように構成されたベアリング機構部140は、貫通孔144の装着溝145aにベアリングプレート145を装着した状態で、貫通孔144に本体矩形柱部131を貫通させ、スライドスリット122の両側面に嵌合させたスライドプレート142の対向するスライドウェブ面142aの間に、側面143aの装着溝143bに嵌め込まれたベアリングプレート145がスライドウェブ面142aに対向するとともに、密着するようにベアリングホルダ143を嵌め込む。
【0069】
そして、そのベアリングホルダ143の上下からガイドプレート141で挟み込んで、ベアリングホルダ143のスライドスリット122に対する高さ方向Hの位置を固定している。したがって、ベアリングプレート145とスライドウェブ面142aとの間にわずかな隙間を設けてもよい。
【0070】
このように、ベアリング機構部140を構成しているため、ベアリング機構部140において、接続ピン130とベアリングホルダ143との境界部分においてはベアリングプレート145が介在し、ベアリングホルダ143とスライドスリット122との間には、スライドプレート142を介してベアリングプレート145が介在し、それぞれ摺動する。
【0071】
さらには、スライドスリット122に対するベアリングホルダ143の高さ方向Hの位置を、挟みこんで固定するガイドプレート141によって拘束している。
また、接続ピン130の固定端部133とピン固定材112の挿入孔114の間には、ベアリングリング112aが介在し、回転方向の摺動を許容している。
【0072】
換言すると、スライドスリット122とベアリングホルダ143、接続ピン130とベアリングホルダ143、及び接続ピン130とピン固定材112との可動部分には、ベアリングプレート145やベアリングリング112aのようなフッ素樹脂製であり、すべり性の高い部材が介在している。したがって、スムーズな摺動を実現することができる。
【0073】
このような構成の支承装置100は、三次元的な可動状態で可動部120を支承部110で支持することができる。
詳しくは、両端を支承部110に固定された接続ピン130に対して、可動部120は、ベアリング機構部140を介して、高さ方向Hに移動することができる。このとき、接続ピン130における対向側面131aに対して、ベアリングホルダ143の貫通孔144に装着したベアリングプレート145が作用するため、高さ方向Hの移動を、スムーズに実現することができる。
【0074】
さらには、両端を支承部110に固定された接続ピン130に対して、可動部120は、ベアリング機構部140を介して、幅方向Yに移動することができる。このとき、接続ピン130に装着されたベアリングホルダ143の側面143aに装着したベアリングプレート145と、スライドスリット122の両側に装着したスライドプレート142のスライドウェブ面142aとが摺動するため、幅方向Yの移動をスムーズに実現することができる。
【0075】
また、接続ピン130の両端である固定端部133を、ピン固定材112の挿入孔114に対して、ベアリングリング112aを介して挿入しているため、接続ピン130は、ピン固定材112を介して支承部材111に対して、回転方向Rの回転がスムーズに実現することができる。
【0076】
このように、支承部110に対する可動部120の高さ方向Hの移動において接続ピン130の対向側面131aとベアリングプレート145とが摺動し、支承部110に対する可動部120の幅方向Yの移動においてスライドウェブ面142aとベアリングプレート145とが摺動し、さらには、接続ピン130の両端の固定端部133とピン固定材112のベアリングリング112aとが回転方向Rに摺動するため、支承部110に対して、可動部120は高さ方向H、幅方向Y及び回転方向Rにスムーズ移動することができる。換言すると、支承部110は、高さ方向H、幅方向Y及び回転方向Rにおいてスムーズ移動可能に可動部120を支持することができる。
【0077】
したがって、フランジ部材111aを固定した壁部材200に対して、フランジ部材121aを固定した壁部材201を移動可能(高さ方向H及び幅方向Y)及び回転可能(回転方向R)に支持することができる。このため、上述の実施例1の支承装置1と同様のメカニズムにより、壁部材200,201に作用する負荷を低減することができる。
【0078】
以上、本発明の構成と、前述の実施態様との対応において、本実施形態の一方部材は、壁部材200に対応し、
以下同様に、
第1固定部材は、支承部10,110に対応し、
他方部材は、壁部材201に対応し、
第2固定部材は、可動部20,120に対応し、
接続部材は、接続ピン30,130に対応し、
可動部材は、可動部材21,121に対応し、
軸方向は、高さ方向Hに対応し、
軸方向に対する回転可能は、回転方向Rに対応し、
面内方向は、幅方向Yに対応し、
移動機構及びガイド溝は、スライドスリット22,122に対応し、
回転機構は、本体円柱部31の外周面に対するベアリングリング46を介したベアリングホルダ43の貫通孔44、及び固定端部133の外周面に対するベアリングリング112aを介したピン固定材112の貫通孔114に対応し、
回転摩擦低減手段は、ベアリングリング46,112aに対応し、
スライド摩擦低減手段及び第1スライド摩擦低減手段は、ベアリングプレート45,145あるいはベアリングリング46,112aに対応し、
第2スライド摩擦低減手段は、スライドプレート42,142に対応し、
摩擦低減処理は、磨き処理や硬質クロムメッキ、あるいはフッ素樹脂コーティングとするも、上記実施形態に限定するものではない。
【0079】
例えば、支承部10,110を固定し、可動部20,120を支持したが、可動部20,120を固定して、支承部10,110を支持してもよい。
また、上述の説明では、支承部10,110を壁部材200に、可動部20,120を壁部材201に固定し、壁部材200で壁部材201を支持したが、支承部10,110や可動部20,120を壁部材のみならず柱部材、梁部材あるいはスラブ部材に固定して支持してもよい。
【0080】
さらには、支承部10,110のウェブ部材11b,111bに対して接続ピン30,130を垂直方向に固定し、可動部20,120を奥行き方向Xに移動可能に支持したが、ウェブ部材11bに対して傾斜させて固定し、支承部10,110に対して接続ピン30,130の配置方向に移動可能に支持してもよい。
【符号の説明】
【0081】
1,100…支承装置
10,110…支持部
11,111…支承部材
20,120…可動部
21,121…可動部材
22,122…スライドスリット
30,130…接続ピン
31…本体円柱部
42,142…スライドプレート
43…ベアリングホルダ
44,114…貫通孔
45,145…ベアリングプレート
46,112a…ベアリングリング
112…ピン固定材
133…固定端部
200,201…壁部材
H…高さ方向
R…回転方向
Y…幅方向
図1
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