(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
図1は、照明器具(スポットライト)を示す斜視図であり、
図2は
図1のA−A断面図である。
【0010】
図1に示すように、LED照明器具11は、上部をダクトレール(ライティングレール)に取り付けられる電源部8と、電源部8から伸び、内部に電源部8から引き出されるハーネスが通されるアーム9と、アーム9で電源部8と物理的に接続され、本体を上下左右に可動する灯具12とから構成される。
【0011】
灯具12は、ハーネスが接続されて電源部8から供給される電力によって点灯するLED光源部3を有する発光部1と、発光部1のLED光源部3が点灯することにより発する熱を外部に放熱する放熱部10から構成される。
【0012】
図2に示すように、LED照明器具11の発光部1は、本体2の内部にLED光源部3、スペーサ4、レンズ形成部5、固定用バネ6が収納されている。
【0013】
以下、LED照明器具11を構成する灯具12の発光部1について図に基づいて説明する。
図3は、灯具の発光部1の分解斜視図である。
図4は、灯具の発光部1の正面図及び断面図である。
図4の(a)は
図1のX方向矢視である。
図4の(b)は
図4の(a)のB−B断面図である。
【0014】
図2に示すように発光部1は、円筒状の本体2と、本体2の底面に取付けられたLED光源部3と、レンズ焦点距離調整用のスペーサ4a、スペーサ4bにより構成されるスペーサ4と、スペーサ4により「焦点距離」を調整することができるレンズ形成部5と、レンズ形成部5及びスペーサ4を本体2に固定する固定用バネ6とから構成されている。
【0015】
(焦点距離)
ここで「焦点距離」とは、言い換えれば、LED3a(発光ダイオード)とレンズ形成部5との距離である。
図1〜
図4を参照して「焦点距離」を具体的に説明する。LED光源部3(LED実装基板)は、実装面3b−1となる一方の面に少なくとも一つのLED3aが実装され、本体2に取り付けられる。レンズ形成部5は、各LED3aに対応する複数のレンズ5−1(
図1〜
図4の例では4つ)が形成された板状の板状体である。レンズ形成部5は、各レンズ5−1が対応するLED3aに対向するように、LED光源部3(LED実装基板)の実装面3b−1に対向して本体2に配置される。
図2に示すように、スペーサ4a,4bは、LED光源部3の実装面3b−1の側においてレンズ形成部5と共に実装面3b−1の法線方向(
図2のY方向、以下、法線Y方向という)に積層して本体2に配置される。そしてスペーサ4a,4bは、積層された配置状態で法線Y方向に略均一な厚さta,tbを有し、実装面3b−1に対向して配置されるレンズ形成部5を、厚さta,tbによって、後述する
図5、
図6のように、レンズ形成部5の積層の順番に応じて法線Y方向において位置決めする。以上のような、LED照明器具11の構成において、LED3aとレンズ5−1との距離が「焦点距離」ある。また、レンズ5−1はレンズ形成部5に形成されており、LED3aは基板3bに固定的に実装されているので、「焦点距離」とは、LED3aが実装された基板3bと、基板3bに対向して配置されるレンズ形成部5との法線Y方向の距離である。
【0016】
本体2は、LED光源部3からの発熱を放熱するためにアルミダイカスト等の熱伝導率の高い材料で形成されている。また、レンズ形成部5の回転を防止するために、本体2の内部側面の中心線に沿った位置に、左右対称にスリット2aが設けられている。スリット2aは、レンズ形成部5に設けられた突起部5a−1を円周方向で回転を拘束することにより、レンズ形成部5の回転を防止する。
【0017】
LED光源部3は、LED3aと、LED3aが実装される基板3bとから構成される。LED光源部3は、本体2の底面(放熱部側)に設置される。
【0018】
スペーサ4を構成する二つのスペーサ4a、スペーサ4bは円環状になっており、厚さは同じ(ta=tb)となっている。つまり、スペーサ4aとスペーサ4bは同一形状である。
【0019】
レンズ形成部5は、アクリルやポリカーボネートなどの透明樹脂で形成されている。LED光源部3の基板3bに実装された各LED3aに対応する位置に、同じ数だけのレンズ5−1(焦点)が形成されている。レンズ形成部5は、対応するLED3aに対応するレンズ5−1(焦点)がずれないように、本体2に設けられたスリット2aに沿うような突起部5a−1が設けられている。突起部5a−1により、本体2にレンズ形成部5を固定し押さえることで、レンズ5−1(焦点)の位置が本体2の内部において円周方向にずれるのを防止できる。
【0020】
またスリット2aと突起部5a−1の位置を非対称とすることでレンズの表裏を逆に挿入することを防止することができる。例えば、
図3に示すように、円周方向の角度で0度と180度の位置に左右対称に突起部5a−1を設けるのではなく、円周方向の角度で0度の位置の突起部5a−1と、120度の位置の突起部5a−2とを設けてもよい。この場合、レンズ形成部5の表裏を逆に挿入しようとすると突起部5a−1、5a−2がスリット2aに入らないため、レンズ形成部5の表裏を逆に取り付けることを防止することができる。また、レンズ形成部5の端部等の焦点距離の調整に影響がない場所に、レンズ形成部5の表裏の表示をすることで、使用者に注意を促してもよい。また、レンズ形成部5の表と裏で焦点距離が異なることを利用して、あえてレンズ形成部5の表裏を逆に設置してもよい。こうすることで、配光パターンを増やすことができる。このように、レンズの表と裏を逆に設置した場合、レンズの狭角を広角に変えることができる。
【0021】
固定用バネ6は、1本のステンレスなどの金属を円形状に曲げるとともに、両端を一定の間隔を開けて内側に向けて折り曲げて形成される。固定用バネ6は、ステンレスなどのバネ鋼で形成されており、円形状で本体2に設けられた溝2bにはまり込み、レンズ形成部5やスペーサ4を固定している。
【0022】
次に、スペーサ4とレンズ形成部5との位置関係(前述の焦点距離)について説明する。
図5の(イ)、(ロ)、(ハ)は、スペーサが2個の場合のレンズ形成部5の位置を調整した状態を示す断面図(レンズ配置図)である。
【0023】
レンズ形成部5及びスペーサ4の取り付け順序を変えることにより、距離a、距離b、距離cのように焦点距離を変えることができる。焦点距離を変えることで、LED光源部3から発光された光を、それぞれ所望の配光に変えることができる。
図5において、スペーサ4a、スペーサ4bの厚さta,tbを同じ長さである距離dとすると、
(イ)の距離aに対して、
(ロ)では、距離b=距離a+距離d、
(ハ)では、距離c=距離a+2×距離d
となる。このように、レンズ形成部5及びスペーサ4の取り付ける順序を変えることで3パターンの焦点距離を実現できる。
【0024】
LED光源部3からの発光光は、レンズ形成部5の焦点までの距離が短くなっても長くなっても配光特性は広角となるので、レンズ形成部5が近い場合に焦点が合って狭角となるように設計すると良い。その場合、レンズ形成部5がLED3aから最も近いとき、焦点が合って狭角となる。一般的に、スポットライトにおいては、配光特性(1/2ビーム角)が10度〜40度の範囲とすることが多い。そのため、例えばLED3aとレンズ形成部5の距離が距離aのとき、1/2ビーム角を10度に設定し、次に、配光特性が最も広角となる、例えば、1/2ビーム角が40°となるように、スペーサ4の厚さ(距離b+距離c)を決定する。その後、配光特性が中角となる、例えば1/2ビーム角が20°のときのスペーサ4aの厚さ(距離b)を決定する。
【0025】
図6は厚さの違うスペーサが2個の場合のレンズ位置を調整した状態を示す断面図(レンズ配置図)である。スペーサ4aとスペーサ4bの厚さが同じ場合は
図5で説明した通りであるが、スペーサ4aとスペーサ4bは同じでもよいし、異なる厚さでもよい。スペーサ4aとスペーサ4bの厚さが異なる場合、スペーサ4aと4bの順番を入れ替えることで、焦点距離を代えるパターンが一つ増える。このため、所望の配光パターンを増やすことができる。
【0026】
また、スペーサ4の数量(分割数)は、2個とは限らず、1個でもよいし、複数個あっても構わない。3つ以上の複数のスペーサを使用して、さらにスペーサの厚さを変えることで、少ないスペーサの数で所望の配光パターンを大幅に増やすことができる。
【0027】
なお、スペーサ4の説明において、前述したように、スペーサ4a、スペーサ4bの厚さを変えた場合、例えばスペーサ4a、スペーサ4bの厚さをそれぞれ距離d、距離e(仮に長さは距離d>距離e)とする。この場合、
図5において、(イ)、(ハ)では、スペーサ4aとスペーサ4bの順序をかえても焦点距離は同じである(距離a,距離cに変化はない)。しかし、(ロ)に関しては、スペーサ4a、スペーサ4bの並びを変えると距離bが異なる。すなわち(ロ)において、左側からスペーサ4b、レンズ形成部5、スペーサ4aと積層する場合と、スペーサ4a、レンズ形成部5、スペーサ4bと積層する場合とでは、距離bが異なる。よって、焦点距離のパターンが、スペーサ4a、スペーサ4bの厚さが同一の場合に比べ一つ増える。
【0028】
このとき、例えばLED3aとレンズ形成部5との距離が距離aのとき、1/2ビーム角が10度となるように設定し、それに合わせてLED3aとレンズ形成部5との距離が距離b2のとき1/2ビーム角が20度、距離b1のとき1/2ビーム角が30度、距離cのとき1/2ビーム角が40度になるようにスペーサ4a、スペーサ4bの厚さを決定する。このようにスペーサの厚さも設計のパラメータに加えることで、配光特性の設計の幅を広げることができる。
【0029】
なお、本実施の形態1では、本体の形状が円筒形状の場合について説明したが、本体の形状が四角柱形状などであっても構わない。
【0030】
次に、本実施の形態の他の発光部1について説明する。
図7は、本実施の形態1の他の灯具12を示す断面図(レンズ配置図)である。発光部1は、スペーサを1個で構成し、この1個のスペーサでレンズ位置を調整する。
【0031】
スペーサ4が2つのスペーサ4a、スペーサ4bから構成される場合についてはすでに説明したが、焦点距離の調整が2パターンでよい場合は、スペーサ4を2つに分ける必要はなく、1つのスペーサ4としてもよい。
【0032】
図7に示すように、一つのスペーサ4を使用し、レンズ形成部5との順番を入れ替えることで簡単に2種類の配光を得ることも出来る。使用者が必要とする配光のパターンが2種類で済む場合、発光部1を構成する必要な部品点数を減らすこともできるので、スペーサ4の使用する数を1つだけで済ませることも有効である。
【0033】
図8を用いて実施の形態1の別の例として、発光部1のLED光源部3がLED3aを基板3bに2個実装した例について説明する。
図8は、本実施の形態の他の発光部1の一部を示す斜視図である。
図8はLED3aを基板3bに2個実装した状態である。
図2に示す構成に対して、LED光源部3とレンズ形成部5とが異なる。
【0034】
実施の形態1の別の実施の形態として、発光部1のLED光源部3がLED3aを基板3bに1個実装した例について説明する。
図9は、本実施の形態1の他の発光部1の一部を示す斜視図である。
図9はLED3aを基板3bに1個実装した状態である。
図2に示す構成に対して、LED光源部3とレンズ形成部5とが異なる。
【0035】
本実施の形態1において、LED光源部3は、4個のLED3aを基板3bに実装することによって構成されているが、前述の本実施の形態の別の実施の形態の例に示すとおり、LED3aを実装する位置及び数量は、これに限られるわけではなく、LED3aが1個以上であればよい。また、LED3aを基板3b上にどのように実装しても構わない。LED3aを基板3b上に実装する位置及び数量をどのように変更しても、その実装する位置及び数量に対応したレンズ形成部5の形状とスペーサ4の厚さによって、あらゆるLED光源部3に対応することができる。
【0036】
実施の形態1における、スペーサ4は、組み立て前に、各スペーサとレンズ形成部5との積層の順序が決められて組み立てられる。あるいは、使用状態にあるときに、別の配光特性を得るために、組み立て完成状態から分解され、再度、各スペーサとレンズ形成部5との積層の順序が決められて組み立てられる。このように、LED照明器具11は、組み立て完成状態から分解し、再度、組み立てる際に、各スペーサ(一つでもよい)と、レンズ形成部5との法線Y方向における積層順序の入れ替えが可能である。
【0037】
実施の形態2.
本実施の形態2は、実施の形態1に示すスペーサ4の代わりに、レンズ収納用カセット7を用いたものである。以下、実施の形態1と異なる箇所についてのみ説明する。
【0038】
図10は、照明器具の灯具部を示す正面図及び断面図である。
図10の(b)は
図10の(a)のC−C断面図である。
図11は、
図10の照明器具の灯具部を示す分解斜視図である。
図12はレンズとC字形状のレンズ収納用カセットを示す斜視図である。
図13は、
図10の照明器具のレンズをC字形状のレンズ収納用カセット2個で挟んだ状態を示す斜視図である。
【0039】
レンズ収納用カセット7(レンズ部ホルダ)は、レンズを収納できるスリット(収納部)が複数設けられている。レンズ収納用カセット7は、いずれかのスリットにレンズ形成部5が挿入されることで、所望の配光を得ることができる。レンズ形成部5を例えばスリット7−3から他のスリット7−1に変えて収納すると、変えた後のレンズ形成部5の収納位置が変える前のレンズ形成部5の収納位置から、レンズ形成部5の板厚方向にスライドする。つまり、レンズ形成部5をスリット7−3からスリット7−1に変えると、スリット7−3の収納状態に対して、スリット7−1の収納状態は、スリット7−3の収納状態におけるレンズ形成部5の板厚方向にスライドした状態である。レンズ収納用カセット7は、レンズ形成部を所定のスリットに収納した状態で、収納したレンズ形成部5が実装面3b−1に対向し、かつ、レンズ5−1が対応するLED3aに対向するように本体2に配置される。
【0040】
また、スリットの幅を変えて、表裏を逆に設置することで、焦点距離を変えるパターンを増やし、設定可能な配光パターンの数を増やすこともできる。このレンズ収納用カセット7を使うことにより、実施の形態1でスペーサ4aとスペーサ4bとの2部品から構成されていたスペーサ4が、ユニットとして1部品にまとまる。このため、部品の欠品などを防ぐことが出来、また、灯具12の取り付け取り、取り外しのときの作業性も向上する。
【0041】
また、レンズ収納用カセット7は、
図11に示すような円筒形状のものだけでなく、
図12に示すような円筒の上部をカットしたC字形状のユニットを使ってもよい。また、
図13に示すようなレンズ形成部5を上下から挟むように固定できる半円形状のユニット二つを組み合わせて使ってもよい。これらの場合も、スリットの幅を変えて、表裏を逆に設置することで、焦点距離を変えるパターンを増やし、設定可能な配光パターンの数を増やすことができる。