(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ペルチェ素子制御回路が、ケース内の温度を検出する温度センサを備え、検出された温度が設定された温度範囲より高い場合には、ペルチェ素子が前記ケース内を冷却するように電流を制御することを特徴とする請求項1又は2記載の発振器。
ペルチェ素子制御回路が、検出された温度が予め設定された温度範囲より低い場合には、ペルチェ素子がケース内を加熱するように電流を制御することを特徴とする請求項3記載の発振器。
ペルチェ素子制御回路が、設定された温度範囲及び検出温度に対応して電流を制御する制御データを記憶しており、検出温度に対応する制御データに基づいて電流を制御することを特徴とする請求項3又は4記載の発振器。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、恒温槽を備え、周囲の温度変化があっても出力周波数の変化を小さくする恒温槽付水晶発振器(OCXO;Oven-Controlled Crystal Oscillator)がある。
通常、OCXOは、水晶振動子の温度変化による周波数変化が最低となる零温度係数(ZTC:Zero-Temperature Coefficient)点で動作するよう、恒温槽の温度を制御している。ZTC点(ZTC温度)では、周波数−温度特性が安定して温度が変化してもそれによる周波数変化は微小である。
【0003】
そして、従来は、ZTC温度が、設定された使用環境温度の上限温度よりも10℃ほど高い温度の水晶振動子を用い、当該ZTC温度付近となるよう恒温槽を制御するようになっている。
例えば、使用環境温度が−20℃〜70℃の場合、ZTC温度が80℃〜90℃の水晶振動子を使用して、恒温槽でZTC温度となるよう80℃〜90℃に制御している。
【0004】
また、OCXOでは、水晶振動子や電子部品が基板に形成された端子パターンや配線パターンに半田付けによって接続固定されている。
【0005】
[関連技術]
尚、発振器に関する技術としては、特開2004−48686号公報「高安定圧電発振器」(東洋通信機株式会社、特許文献1)、特開2000−183649号公報「高安定圧電発振器」(東洋通信機株式会社、特許文献2)がある。
【0006】
特許文献1には、OCXOのケース(第1の恒温槽)をOCXOの外側に設けられた第2の恒温槽より低い温度に設定し、ペルチェ素子で第2の恒温槽を加熱すると共に、第1の恒温槽を冷却して第2の恒温槽より低い温度となるよう制御し、第1の恒温槽の熱を第2の恒温槽に移動させる圧電発振器が記載されている。
また、特許文献2には、OCXOの恒温槽の温度を環境温度よりも低く制御する圧電発振器が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のOCXOでは、電源オン/オフを行う度に周囲環境温度から恒温槽の制御温度までの温度変化が生じ、電源オン/オフを繰り返す使用環境においては、ヒートサイクルによって実装半田に歪が集中し、半田にクラックが生じ、長期信頼性が十分ではないという問題点があった。
【0009】
例えば、使用環境温度が−20℃の場合は、電源オン/オフの度に−20℃〜90℃の温度変化が起こり、110℃の温度差(ΔT)が生じて半田にストレスがかかりやすい。
【0010】
尚、特許文献1には、ペルチェ素子を用いて、単に第1の恒温槽を冷やして第2の恒温槽を加熱することが記載されているが、環境温度に応じて第2の恒温槽の冷却又は加熱を行って、OCXOの使用環境を適切に制御するものではない。
【0011】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、ヒートサイクルに伴う温度変化を低減して半田クラックの発生を抑え、長期信頼性を向上させることができると共に、安定した出力周波数を得ることができる発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、温槽付水晶発振器を備えた発振器であって、電流に応じて加熱又は冷却を行うペルチェ素子と、基板上に設けられ、ペルチェ素子を制御するペルチェ素子制御回路と、恒温槽付水晶発振器と、ペルチェ素子と、ペルチェ素子制御回路とを密閉封入するケースとを備え、ペルチェ素子が、恒温槽付水晶発振器と基板との間に挟まれて搭載され、恒温槽付水晶発振器が、零温度係数点が45℃〜55℃の水晶振動子と、恒温槽の温度を当該水晶振動子の零温度係数点となるよう制御する温度制御回路とを備え、ペルチェ素子制御回路が、ケース内の温度を、水晶振動子の零温度係数点より10℃〜25℃の範囲で低い温度とするようペルチェ素子の電流を制御することを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記発振器において、ペルチェ素子制御回路が、ケース内の温度を、25℃〜35℃の範囲で制御することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記発振器において、ペルチェ素子制御回路が、ケース内の温度を検出する温度センサを備え、検出された温度が設定された温度範囲より高い場合には、ペルチェ素子が前記ケース内を冷却するように電流を制御することを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記発振器において、ペルチェ素子制御回路が、検出された温度が予め設定された温度範囲より低い場合には、ペルチェ素子がケース内を加熱するように電流を制御することを特徴としている。
【0016】
また、本発明は、上記発振器において、ペルチェ素子制御回路が、設定された温度範囲及び検出温度に対応して電流を制御する制御データを記憶しており、検出温度に対応する制御データに基づいて電流を制御することを特徴としている。
【0017】
また、本発明は、上記発振器において、ケース内を真空又は真空に近い状態とすることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温槽付水晶発振器を備えた発振器であって、電流に応じて加熱又は冷却を行うペルチェ素子と、基板上に設けられ、ペルチェ素子を制御するペルチェ素子制御回路と、恒温槽付水晶発振器と、ペルチェ素子と、ペルチェ素子制御回路とを密閉封入するケースとを備え、ペルチェ素子が、恒温槽付水晶発振器と基板との間に挟まれて搭載され、恒温槽付水晶発振器が、零温度係数点が45℃〜55℃の水晶振動子と、恒温槽の温度を当該水晶振動子の零温度係数点となるよう制御する温度制御回路とを備え、ペルチェ素子制御回路が、ケース内の温度を、水晶振動子の零温度係数点より10℃〜25℃の範囲で低い温度とするようペルチェ素子の電流を制御する発振器としているので、OCXOの動作温度を低くすることにより、ヒートサイクルの温度差を低減して、実装半田にクラックを生じにくくして長期信頼性を向上させることができ、また、OCXOの周囲に相当するケース内の温度をOCXOの目標温度より10℃〜25℃の範囲とすることにより、OCXOの温度制御を効率的且つ精度良く行なって、出力周波数の温度周波数特性を良好にすることができる効果がある。
【0019】
また、本発明によれば、ペルチェ素子制御回路が、ケース内の温度を検出する温度センサを備え、検出された温度が設定された温度範囲より高い場合には、ペルチェ素子が前記ケース内を冷却するように電流を制御する上記発振器としているので、OCXOの周囲に相当するケース内の温度が高い場合には、ケース内を冷却してOCXOの温度制御を安定させることができる効果がある。
【0020】
また、本発明によれば、ペルチェ素子制御回路が、検出された温度が予め設定された温度範囲より低い場合には、ペルチェ素子がケース内を加熱するように電流を制御する上記発振器としているので、OCXOの周囲に相当するケース内の温度が低い場合には、ケース内を加熱してOCXOの温度制御を効率的に行うことができる効果がある。
【0021】
また、本発明によれば、ペルチェ素子制御回路が、設定された温度範囲及び検出温度に対応して電流を制御する制御データを記憶しており、検出温度に対応する制御データに基づいて電流を制御する上記発振器としているので、搭載される水晶発振器に応じて制御データを書き換えることができ、零温度係数点が異なる種々の水晶振動子に適用可能とすることができる効果がある。
【0022】
また、ケース内を真空又は真空に近い状態とする上記発振器としているので、外部環境の温度がOCXOに与える影響を小さくして、出力周波数を一層安定させることができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る発振器は、密閉ケース内に、ZTC温度が45℃〜55℃の水晶振動子を使用したOCXOと、ケース内の温度を調節するペルチェ素子と、ペルチェ素子の制御を行うペルチェ素子制御回路を搭載した基板とを備え、ペルチェ素子がOCXOと基板との間に密着して設けられ、OCXOがオーブンを水晶振動子のZTC温度に制御すると共に、ペルチェ素子制御回路が、ケース内の温度がZTC温度より10℃〜20℃程度低い25℃〜35℃となるようペルチェ素子を制御するものであり、OCXOの動作温度を低くすることにより電源のオン/オフによって生じる温度差を低減して半田クラックの発生を防ぎ、耐ヒートサイクル性能を向上させることができ、また、周囲の環境温度に関わらず、OCXOの恒温槽制御を効率的且つ精度良く行って出力周波数を一層安定させることができ、更に、温度上昇が問題となるようなデバイスや装置にも適用可能とすることができるものである。
【0025】
[本実施の形態に係る発振器の構成:
図1]
本発明の実施の形態に係る発振器の構成について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る発振器の構成を示す概略断面説明図である。
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る発振器(本発振器)は、蓋7によって密閉された外ケース6の内部に、OCXO1と、ペルチェ素子3と、ペルチェ素子温度制御回路基板4とを備えたものであり、ペルチェ素子3は、OCXO1とペルチェ素子温度制御回路基板4との間に挟まれた状態で搭載されている。
【0026】
OCXO1は、ピン及び半田によってペルチェ素子温度制御回路基板4に固定されている。
ペルチェ素子温度制御回路基板4は、当該基板4に半田5によって固定されたピン8によって、外ケース6を密封する蓋7に固定されている。
【0027】
OCXO1は、密閉された恒温槽(オーブン)に相当する内ケース2を備え、内ケース2の内部に、一般のOCXOと同様に、水晶振動子、発振回路、発熱体、温度センサ、温度制御回路等が設けられている。
本発振器の特徴として、OCXO1の水晶振動子は、ZTC温度が45℃〜55℃の特性を備えたものとしている。つまり、本発振器では、ZTC温度が従来に比べて約35℃低い水晶振動子を搭載しており、ヒートサイクルの温度差を低減して、半田クラックの発生を防ぐものである。OCXO1の水晶振動子の特性については後述する。
そして、本発振器では、OCXO1の温度制御回路は、内ケース2(恒温槽)内の温度が水晶振動子のZTC温度付近となるよう発熱体を制御する。
【0028】
ペルチェ素子3は、2つの異種金属(又は半導体)を電気的に直列に接続して電流を流すと接合部分に吸熱及び発熱が発生する現象を利用した素子であり、発熱量又は吸熱量は電流に比例し、電流の向きを逆にすると熱の発生と吸熱が逆になるものである。
本発振器のペルチェ素子3は、OCXO1とペルチェ素子温度制御回路基板4との間に密着して設けられており、ペルチェ素子温度制御回路基板4側を冷却する場合には、OCXO1側に熱を放出して、OCXO1を効率的に加熱できるものである。
【0029】
ペルチェ素子温度制御回路基板4は、ペルチェ素子制御回路を搭載する基板である。
ペルチェ素子制御回路は、ペルチェ素子3を流れる電流を制御することにより、ペルチェ素子3の吸熱又は発熱を制御して、外ケース6内を特定の温度範囲となるよう制御するものである。
【0030】
本発振器の特徴として、ペルチェ素子制御回路は、外ケース6内部の温度を水晶振動子のZTC温度より10℃以上低い温度に制御する。このように外ケース6の内部の温度をOCXO1の恒温槽より10℃以上低くすることにより、OCXO1における恒温槽の温度制御を安定して精度良く行うことができるものである。尚、外ケース6内部の温度は、通常、ZTC温度より25℃以上低くすることはない。
【0031】
例えば、OCXO1の水晶振動子のZTC温度が50℃であれば、ペルチェ素子制御回路は外ケース6内部の温度を30℃程度(30℃±α℃)となるよう、ペルチェ素子3の電流の大きさや向きを制御する。温度範囲の幅(αの値)は、発振器の用途や要求される特性等に応じて適宜設定され、例えば、1〜2℃とする。
【0032】
更に、外ケース6内の空間を真空若しくは真空に近い状態としてもよく、これにより、外ケース6の外部環境温度の影響をOCXO1に一層伝えにくくして、温度周波数特性を更に良好にすることができるものである。
【0033】
[ペルチェ素子制御回路:
図2]
ここで、ペルチェ素子制御回路について
図2を用いて説明する。
図2は、ペルチェ素子温度制御回路基板4に搭載されたペルチェ素子制御回路の模式説明図である。
図2に示すように、ペルチェ素子制御回路は、ペルチェ素子温度制御回路基板4上に搭載され、温度センサ41と、制御部42とを備えている。
ペルチェ素子3は、ペルチェ素子温度制御回路基板4及びOCXO1と熱的に結合している。
【0034】
温度センサ41は、周囲の温度を検出して、温度データを制御部42に出力する。尚、温度センサ41を搭載する場所は、ペルチェ素子3の発熱/吸熱の影響を直接受ける場所ではなく、できるだけ外ケース6内の空間温度を正確にモニタできる場所が望ましい。
【0035】
制御部42は、マイコン等で構成され、ペルチェ素子3を流れる電流を制御して、外ケース6内が所望の温度範囲となるようペルチェ素子3のペルチェ素子温度制御回路基板4側を加熱又は冷却する。
すなわち、制御部42は、予め設定された設定温度範囲と、温度センサ41から入力された温度データに基づいて、ペルチェ素子3を流れる電流の方向及び大きさを制御するものである。例えば、制御部42は、電流の向きを切り替えるスイッチや配線上の抵抗値を制御することにより、電流を制御する。
【0036】
そして、例えば、制御部42は、入力される温度データに対応するスイッチや抵抗値の制御データを設定温度範囲に応じて予め記憶しておき、入力された温度データに対応する制御データに基づいて電流を制御する。
具体的には、温度データが、設定された温度範囲の下限よりも低い場合(又は下限以下の場合)には、制御部42は、ペルチェ素子3のペルチェ素子温度制御回路基板4側を加熱するようにペルチェ素子3の電流を制御し、温度範囲の上限よりも高い場合(又は上限以上の場合)には、制御部42は、ペルチェ素子温度制御回路基板4側を冷却するように制御する。
【0037】
尚、構成を単純にしたい場合には、制御部42は、単に、温度データが温度範囲の上限よりも高い場合に、ペルチェ素子温度制御回路基板4側を冷却するように制御するようにしてもよい。OCXO1の周囲の温度が高くなって、OCXO1の温度制御が不安定になるのを防ぐことができるものである。
【0038】
設定温度範囲は、上述したように、OCXO1の水晶振動子のZTC温度よりも10℃以上低い温度であり、制御部42に予め設定される。
尚、温度センサ41はペルチェ素子温度制御回路基板4上に設けられているため、外ケース6内部の温度を正確に検出しない場合もある。そのため、予め実験的に外ケース6内の空間の温度と温度センサ41の温度データとの相関(補正値)を求めておき、温度データを補正した値を電流制御に用いることも可能である。
【0039】
[ATカット水晶振動子の温度特性例:
図3]
ここで、OCXO1の水晶振動子に用いられるATカット水晶振動子の温度特性について
図3を用いて説明する。
図3は、ATカット水晶振動子の温度特性例を示す説明図である。
図3において点線で示した特性は、従来の発振器で用いられる水晶振動子のものであり、ZTC温度は80℃〜90℃である。3本の特性は、それぞれ、ZTC温度が80℃、85℃、90℃の水晶振動子の特性を表している。
上述したように、従来は、使用環境温度(例えば−20℃〜70℃)の上限よりもZTC温度が高い水晶振動子を用い、恒温槽によってZTC温度となるよう温度制御を行っていた。
【0040】
本発振器のOCXO1に用いられる水晶振動子は、
図3において実線で示される特性であり、ZTC温度は45℃〜55℃である。3本の特性は、それぞれ、ZTC温度が45℃、50℃、55℃の水晶振動子の特性を表している。
本発振器で用いられるZTC温度が45℃〜55℃の水晶振動子の特性は、ZTC温度が80℃〜90℃の水晶振動子の特性に比べて、周波数変化が緩やかになっており、恒温槽を同じ温度幅で制御した場合には、従来よりも良好な周波数温度特性が得られるものである。
【0041】
そして、ZTC温度が従来に比べて約35℃低い水晶振動子を用いることにより、電源のオン/オフに伴う温度差を小さくすることができ、ヒートサイクルによる熱応力を緩和して、半田5にクラックが生じるまでの時間を長くして、発振器の寿命を長くでき、長期信頼性を向上できるものである。
【0042】
例えば、使用環境温度が−20℃の場合、ZTC温度が90℃の水晶振動子を用いた場合、温度差(ΔT)は110℃であるが、ZTC温度が50℃の水晶振動子を用いると、ΔT=70℃となり、ヒートサイクルが加わる温度幅を約36%削減できるものである。
【0043】
更に、本発振器では、ペルチェ素子3及びペルチェ素子制御回路を備えることにより、水晶振動子のZTC温度に応じて、OCXO1の周囲環境となる外ケース6の内部の温度を、OCXO1において安定した恒温槽制御を行うことができる温度範囲(ZTC温度より10℃〜20℃低い温度範囲)に加熱又は冷却して制御することで、出力周波数を一層安定させることができるものである。
【0044】
[ペルチェ素子制御回路の処理:
図4]
次に、ペルチェ素子制御回路の制御部42の処理について
図4を用いて説明する。
図4は、ペルチェ素子制御回路の制御部の処理を示すフローチャートである。
図4に示すように、ペルチェ素子制御回路の制御部42は、外ケース6内部の温度範囲が設定されると、記憶しておく(100)。ここでは、設定された温度範囲をT1(℃)以上T2(℃)未満としており(T1≦t<T2,tは検出温度)、OCXO1に用いられる水晶振動子のZTC温度より10℃以上低い温度範囲である。
例えば、ZTC温度が50℃、制御温度幅(α)が1℃の場合には、ケース内の温度範囲は50±1℃で49℃以上51℃未満となる。
【0045】
そして、制御部42は、温度センサ41から検出温度データ(t)が入力されると(102)、検出温度データを設定された温度範囲と比較する(104)。
検出温度が温度範囲の下限値よりも低い場合(t<T1の場合)には、制御部42は、ペルチェ素子温度制御回路基板4側を加熱するよう、ペルチェ素子3の電流を制御し、処理102に移行する。このとき、検出温度データ(t)と設定温度範囲の下限値(T1)との差に応じて電流の大きさを制御してもよい。差が大きい場合には、発熱量を大きくするよう、電流値を大きくする。
【0046】
また、処理104で検出温度データが温度範囲内であれば(T1≦t<T2の場合)、制御部42は、そのまま処理102に移行する。
また、処理104で、検出温度データが温度範囲の上限値以上であれば(t≧T2の場合)、制御部42は、ペルチェ素子温度制御回路基板4側を冷却するようペルチェ素子3の電流を制御する。ここでも、検出温度データ(t)と設定温度範囲の上限値(T2)との差に応じて電流の大きさを制御してもよい。差が大きい場合には、吸熱量を大きくするよう、発熱の場合とは逆向きの電流値を大きくする。
このようにしてペルチェ素子制御回路の制御部42における処理が行われるものである。
【0047】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る発振器によれば、密閉された外ケース6内に、ZTC温度が45℃〜55℃の水晶振動を搭載したOCXO1と、外ケース6内を加熱又は冷却するペルチェ素子3と、ペルチェ素子3の動作を制御するペルチェ素子制御回路を搭載したペルチェ素子温度制御回路基板4とを備え、ペルチェ素子がOCXO1とペルチェ素子温度制御回路基板4との間に密着して挟まれて搭載され、OCXO1が恒温槽の温度を水晶振動子のZTC温度に制御すると共に、ペルチェ素子制御回路が、ケース内の温度を25℃〜35℃で当該水晶振動子のZTC温度より10℃以上低い温度とするようペルチェ素子3を流れる電流を制御する発振器としているので、ヒートサイクルによって加わる温度変化の幅を低減して、半田5にクラックが生じにくくし、長期信頼性を向上させることができると共に、OCXO1の周囲に相当する外ケース6内の温度を、OCXO1の恒温槽の目標温度であるZTC温度より10℃以上低くなるようペルチェ素子3で加熱又は冷却して制御することにより、OCXO1の温度制御を効率的且つ精度良く行うことができるようにして、出力周波数を安定させることができる効果がある。
【0048】
また、本発振器によれば、従来に比べて低温で動作するため、発振器からの放熱量を少なくすることができ、温度上昇が問題となってしまうデバイスや装置にも適用可能として発振器の用途を拡大することができる効果がある。
【0049】
更に、本発振器によれば、外ケース6内を真空又は真空に近い状態にしているので、外部環境温度のOCXO1に対する影響を一層小さくすることができ、更に出力周波数を安定させることができる効果がある。
【0050】
また、本発振器によれば、ペルチェ素子制御回路の制御部42が、検出された温度に対応付けて、外ケース6内を設定された温度範囲とするよう電流を制御する制御データを記憶しておき、入力された温度データに応じた制御データに従って制御を行うようにしているので、水晶振動子のZTC温度に応じて、外ケース6内の温度範囲と検出温度と制御データの組み合わせを設定して記憶しておけば、上記実施の形態と同様の構成及び動作により高安定な発振器を実現でき、ZTC温度の異なる種々の水晶振動子を搭載可能として、用途や目的に応じた発振器を提供することができる効果がある。