(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717515
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20150423BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20150423BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20150423BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20150423BHJP
B41J 2/19 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
B41J2/165 211
B41J2/165 505
B41J2/17 203
B41J2/175 115
B41J2/175 121
B41J2/175 167
B41J2/175 301
B41J2/175 305
B41J2/175 501
B41J2/175 503
B41J2/18
B41J2/19
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-86664(P2011-86664)
(22)【出願日】2011年4月8日
(65)【公開番号】特開2012-218303(P2012-218303A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】395003187
【氏名又は名称】株式会社セイコーアイ・インフォテック
(74)【代理人】
【識別番号】100154863
【弁理士】
【氏名又は名称】久原 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100123685
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 信行
(72)【発明者】
【氏名】緑川 雄
【審査官】
小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−049535(JP,A)
【文献】
特開2011−000831(JP,A)
【文献】
特開2005−161637(JP,A)
【文献】
特開2010−264678(JP,A)
【文献】
特開2008−200903(JP,A)
【文献】
特開2010−184384(JP,A)
【文献】
特開2011−051241(JP,A)
【文献】
特開2008−110588(JP,A)
【文献】
特開2004−188410(JP,A)
【文献】
特開2006−264170(JP,A)
【文献】
特開2008−254196(JP,A)
【文献】
特開2011−005782(JP,A)
【文献】
特開2005−067134(JP,A)
【文献】
特開2004−181952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01−2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メインタンクからのインクを吐出させるインクジェットヘッドと、
前記インクジェトヘッドを搭載し主走査方向に移動するキャリッジと、
前記インクジェットヘッドに前記インクを供給する第1の連通口と前記メインタンクから前記インクが供給される第2の連通口と前記第1の連通口よりも高い位置に設けられた第3の連通口を備え前記メインタンクから前記インクジェットヘッドまでの経路の途中に配置されたサブタンクと、
前記メインタンクから前記サブタンクに前記インクを供給するインク供給ポンプと、
前記第3の連通口に接続され、前記サブタンク内の空気圧を一定圧に調整するための加圧ポンプおよび減圧ポンプと、
前記空気圧を検出する検出手段と、
前記インクジェットヘッドのインク吐出口を密閉するキャップと、
前記キャップが前記インク吐出口を密閉している場合に前記インク吐出口から前記インクを吸引する吸引手段と、
を有し、
前記検出手段で検出した前記空気圧に基づいて前記サブタンクの前記空気圧を可変し、前記インクジェットヘッドにおける背圧を+100mmAq以下から−300mmAq以上の範囲内に維持させることを特徴とするインクジェット記録装置において、
前記サブタンクは、前記第1の連通口と前記第2の連通口と前記第3の連通口の夫々の間に介在し、少なくとも前記第1の連通口を有する空間と前記第2の連通口を有する空間と前記第3の連通口を有する空間とに仕切る多孔質部材の壁を有し、
前記インクジェットヘッドへのインク充填時には、前記インク供給ポンプで前記メインタンクから前記サブタンクに前記インクを供給すると共に前記インクジェットヘッドに前記インクを供給することに加え、前記インク吐出口を前記キャップで密閉し、前記吸引手段によって前記インク吐出口に連通している径路を負圧にし、前記インクジェットヘッドへのインク導入を加速させることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
前記サブタンクに接続され、前記空気圧と同圧の空気を一定量貯留するエアバッファを備え、前記エアバッファに前記加圧ポンプおよび前記減圧ポンプが接続されていることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記インクジェットヘッドと前記サブタンクを複数対有し、前記サブタンクの内の少なくとも2つが同一の前記エアバッファに接続されていることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録装置。
【請求項4】
前記サブタンクは前記第2の連通口より低い高さに位置する第4の連通口を有し、
前記インクジェット記録装置は、前記メインタンクと前記サブタンクとを繋ぎ前記メインタンクに前記サブタンク内の前記インクを排出可能せしめるインク循環チューブと、前記サブタンクから前記メインタンクへ前記インク循環チューブを介して前記インクを移動させるインク循環ポンプと、前記メインタンクと前記サブタンク間の前記インクの移動を遮断可能にするバルブ機構と、を備え、前記第4の連通口は、前記サブタンクの前記第1の連通口を有する空間に設けられ、前記循環チューブに接続され、前記インクを前記第4の連通口から前記バルブ機構を介して逆流させずに前記メインタンクに移動させることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【請求項5】
前記多孔質部材の壁は重力方向が下面となる窪部が形成され、該窪部内の前記インクの液面の位置に基づいて前記サブタンク内の前記インクの残量を検出する検出手段を有する請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項6】
前記サブタンクは、前記インクジェットヘッドに一定の温度に維持された前記インクを供給するための加熱および保温が可能なヒータを有することを特徴とする請求項1から請求項5の何れか1項に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録装置、特にインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来は特開2003−182104号公報に示されるように、作画のためにインクを吐出するインクジェットヘッドとインクジェットヘッドより高い位置にサブタンクを設け、サブタンク内を強制的に減圧ポンプにより減圧するとともに、スピードコントローラを設け、圧力センサでサブタンクの圧力を感知し、所定圧力値を超えた場合には、スピードコントローラにより外気を導入してサブタンク内を所定圧力に保つシステムが開示されていた。また、インクジェットプリンタでは、インク色毎にインクジェットヘッドが備わるため、サブタンクはインク色毎に持っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−182104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし従来の技術では、作画可能な状態を維持するために圧力調整ポンプを減圧側にしか調整できないため、個々のサブタンクをインクジェットヘッドより高い位置に配置する必要があり、装置の設計的な制約になってしまい、インクジェットヘッドを保持するキャリッジを偏重化させてしまい、キャリッジを支持しキャリッジを主走査方向に可動にするY軸レールの剛性UPにつながり、装置の重量化、巨大化せざるを得ない事態にしてしまうことに繋がる。また、従来の技術においては、充填作業に正圧ポンプを用いるため、サブタンクに溜まったインクをヘッドに初期充填するためには、サブタンク内を正圧ポンプにより加圧させてヘッド先端よりインクを吐出させていた。しかし、インクのような粘性の液体がインクジェットヘッドの持つ直径が数10μmのインク吐出口を通過するにはかなりの抵抗となりサブタンクからインクジェットヘッドまでのインクの流速が低下するために、サブタンクからインクジェットヘッドのインク吐出口にあるフィルターや、屈曲した流路、その他の流路にトラップされた気泡は、インクと共にインクジェットヘッド外に放出されること無くヘッド内に滞留し、時にインクを吐出させるためにインクに吐出エネルギーを与えるインク圧力室内に溜まり、インクの吐出不良を起こさせてしまうという問題を引き起こす原因になる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のインクジェット記録装置は、上述課題を解決するため、メインタンクからのインクを吐出させるインクジェットヘッドと、前記インクジェトヘッドを搭載し主走査方向に移動するキャリッジと、前記インクジェットヘッドに前記インクを供給する第1の連通口と前記メインタンクから前記インクが供給される第2の連通口と前記第1の連通口よりも高い位置に設けられた第3の連通口を備え前記メインタンクから前記インクジェット
ヘッドまでの経路の途中に配置されたサブタンクと、
前記メインタンクから前記サブタンクに前記インクを供給するインク供給ポンプと、前記第3の連通口に接続され、前記サブタンク内の空気圧を一定圧に調整するための加圧ポンプおよび減圧ポンプと、前記空気圧を検出する検出手段と、前記インクジェットヘッドのインク吐出口を密閉するキャップと、前記キャップが前記インク吐出口を密閉している場合に前記インク吐出口から前記インクを吸引する吸引手段と、を有し、前記検出手段で検出した前記空気圧に基づいて前記サブタンクの前記空気圧を可変し、前記インクジェットヘッドにおける背圧を+100mmAq以下から−300mmAq以上の範囲内に維持させることを特徴とするインクジェット記録装置において、
前記サブタンクは、前記第1の連通口と前記第2の連通口と前記第3の連通口の夫々の間に介在し、少なくとも前記第1の連通口を有する空間と前記第2の連通口を有する空間と前記第3の連通口を有する空間とに仕切る多孔質部材の壁を有し、前記インクジェットヘッドへのインク充填時には、
前記インク供給ポンプで前記メインタンクから前記サブタンク
に前記インクを供給すると共に前記インクジェットヘッドに前記インクを供給することに加え、前記インク吐出口を前記キャップで密閉し、前記吸引手段によって前記インク吐出口に連通している径路を負圧にし、前記インクジェットヘッドへのインク導入を加速させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、サブタンクを負圧に調整することと正圧に調整することが出来るようにすることにより、インクジェットヘッドよりも低い位置にもサブタンクを配置することが出来るようになり、キャリッジの偏重の防止することができ、サブタンク配置の自由度を上げることが出来る。
【0007】
さらに、サブタンクからインクジェットヘッドに至るまでの経路の隅々にインクを行き渡らせることができ、気泡の滞留を防止することが出来る。
【0008】
さらに圧力調整チューブの加圧ポンプおよび減圧ポンプとサブタンクとの間に位置し、サブタンクの空気圧と同圧の空気を一定量貯留できるエアバッファを備えることにより、サブタンク内でインク消費やインク供給の際のサブタンク内でのインク高さの変化による急激な背圧を緩和させることが出来、常に安定した印字を続けることが可能になる。
【0009】
さらに、複数の色のインクを吐出するインクジェット記録装置において、全色または任意の色のエアバッファを連通させることにより、減圧ポンプ、加圧ポンプ、外気連通バルブを兼用化させることができ、流路の簡略化、コストダウン化を実現できる。
【0010】
インクジェットヘッドのメンテナンスには、吸引機構によるインク吸引動作と加圧ポンプによる吐き出し動作のいずれかを選択的に行えるようにしたので、インクジェットヘッド信頼性を向上させることが出来る。
【0011】
さらに、サブタンクの第2の連通口より低い高さに第4の連通口を設け、メインタンクとサブタンクとを繋ぎメインタンクに排出可能せしめるインク循環チューブを有しインク循環チューブの経路の中間、または端部にメインタンクからサブタンクへインクを供給するためのインク循環ポンプ、インク循環チューブにメインタンクとサブタンクとのインクの連通と遮断を可能にするバルブ機構を設けたことにより、定期的にインクに循環させることにより分散している顔料等の沈降を防止することが出来る。
【0012】
さらに、サブタンクには、第1の連通口と第2の連通口と第3の連通口の間に介在し、少なくとも第1の連通口を有する空間と第2第3の連通口を有する空間とに仕切る、毛細管効果を有する多孔質の壁を有しており、インク供給チューブから供給されるインクとともに送られてくる気泡を多孔質の壁に滞留させることにより、インクジェットへの流入を防止することが出来る。
【0013】
さらにサブタンクには、多孔質の壁に窪部が備わり、その窪部のインクの液面の位置を検出することでインクの残量を検知する手段を有しており、窪部の周囲の多孔質の壁によってヘッドとともに主走査方向に移動したときに振動で起こる液面の高さの変動を防止して正確にサブタンク内のインク残量を検出する構成にしてもよい。
【0014】
さらにサブタンクには、インクジェットヘッドに一定の温度に維持されたインクを供給するための加熱、および保温が可能なヒータ機能を有しており温度依存性のあるインクも常に同一条件でインクをインクジェットヘッドに供給することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明のインクジェット記録装置の全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る記録装置のインク、エアの流路系のブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る別形態の記録装置のインク、エアの流路系のブロック図である。
【
図4】本発明の実施形態のインク吸引構造のブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る別形態のブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態の記録装置にエアバッファを用いた場合のブロック図である。
【
図7】本発明の実施形態の記録装置に各インク色に対応した各サブタンクに対してエアバッファを共通化したときのブロック図である。
【
図8】本発明の実施形態のサブタンクの概略図である。
【
図9】本発明の実施形態のサブタンクの循環径路を持つ場合の概略図である。
【
図10】本発明の実施形態のサブタンク内のインク残量検出方法を示す第1例の図である。
【
図11】本発明の実施形態のサブタンク内のインク残量検出方法を示す第2例の図である。
【
図12】本発明の実施形態のサブタンク内のインク残量検出方法を示す第3例の図である。
【
図13】本発明の実施形態のサブタンクのインク加熱構造を示す概略図である。
【
図14】本発明の実施形態の循環径路を持つ記録装置のインク、エアの流路系のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
先ず記録装置の全体について
図1を用いて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る記録装置の構成を示す斜視図である。インクジェット記録装置9は、
図1に示すように、破線で示されたシート状あるいは板状の記録媒体8を搬送し、インクジェット方式によって、記録媒体8の表面に画像データに応じた画像や文字などを記録する。記録媒体8は、紙、布、ポリエステルやPVCなどの合成樹脂製のシートなどである。
【0017】
インクジェット記録装置9は、モータの回転駆動を受けて回転する搬送ローラと、この搬送ローラを加圧するローラの加圧ローラユニット11を備えている。この搬送ローラと加圧するローラとの間に記録媒体8を挟み込み、これらローラの回転によって搬送される。
【0018】
この加圧ローラユニット11の搬送方向下流には、記録媒体8を支持するプラテン6が設けられている。このプラテン6は、キャリッジ1に搭載されたインクジェットヘッドによって記録媒体8に印字記録する箇所となっている。キャリッジ1は直線状のYレール4に沿って往復走査する。また、このプラテン6の下には、このプラテン6を加熱するためのヒータが設けられている。このヒータによって、プラテン6が加熱され、さらに記録媒体8が加熱され、記録媒体8に吐出されたインクの定着を促進する。さらに、プラテン6の下流にはペーパガイド7が設けられ、記録媒体8はこのペーパガイド7に沿って搬送され出力される事になる。ケーブルベア2は、その内部にインクを供給するインクの供給チューブ、加圧チューブ、減圧チューブ等が含まれており、キャリッジが主走査方向に移動する際に上述のチューブを滑らかに屈曲させながら移動することができるようになっている。キャップ機構5は、待機時にインクジェットヘッドの乾燥を防止するため、またインクジェットヘッドにインクを充填するときのインクの吸い上げ、インクジェットヘッド内部に異物や気泡が入ってしまったときのインクの吸い出しができるように、後述のキャップ50、吸引ポンプ51、エア導入バルブ機構53等を備え、記録媒体の搬送経路外に配置されている。インクボックス3には着脱可能なインクカートリッジが収納される。
【0019】
また、インクの粘度、インク吐出口の径にもよるが、インクジェットヘッド14にかかる背圧を一定の適当な値に維持することが必要であり、例えば+100mmAq以下から−300mmAq以上の範囲内、好ましくは−50mmAq以下から−100mmAq以上の範囲内に維持することで、インクジェットヘッド14は良好なメニスカスが形成でき、インク吐出の不良を防止できる。
【0020】
次にインク供給系について
図1、
図2、
図3に基づいて説明する。
図2は、本発明の実施形態のインク供給系とエアによる圧力調整系をブロック図で示したものであり、これはインク、エアの流路系のブロック図である。
【0021】
インクジェット記録装置9には、記録媒体8にインク吐出面を対峙させてインク滴を吐出して記録を行うインクジェットヘッド14と、インクジェットヘッド14へインクを供給するサブタンク20とを収容するキャリッジ1と、このキャリッジ1に連結する搬送ベルト(図示せず)と、この搬送ベルトを移動させる駆動プーリ(図示せず)と従動プーリ(図示せず)と、この駆動プーリを回転駆動させる駆動モータ(図示せず)と、記録媒体8の搬送方向(副走査方向)に直交する方向(主走査方向)へキャリッジ1の走査を案内するガイドレール15、さらにガイドレール15を全長に渡って支持するYレール4が備わっている。Yレール4は、アルミの押し出し材または、板金の角材などにより生成され、キャリッジ1の主走査方向への走行時の振動による記録媒体8とインクジェット14間距離の変動や、キャリッジ1の重みによる記録媒体8とインクジェット14間距離の変動を極力抑制できる様な剛性が確保されている。
【0022】
また、インクジェットヘッド14に供給するインクはインクカートリッジ30に蓄えられている。インクカートリッジ30は交換可能なカートリッジ式のインク容器で、インクのメインタンクであり、
図1に示すインクボックス3に収納されインクがなくなると交換する。
【0023】
サブタンク20は第2の連通口42が備え、第2の連通口42とインクカートリッジ30間をインク供給チューブ16が連結している。インクカートリッジ30内のインクはインク供給チューブ16を介してサブタンク20に供給される。キャリッジ1上に配置されており、インクカートリッジ30からサブタンク20へインクが供給され、サブタンク20からインクジェットヘッド14へインクを供給している。サブタンク20については後述する。
【0024】
さらに、インク供給チューブ16の経路の中間にはインクカートリッジ30からサブタンク20へインクを供給するためのインク供給ポンプ31が設けられサブタンク20のインクが所定量以下になった時には、インク供給ポンプ31を駆動してインクを供給させる。インク供給ポンプ31はインク供給チューブ16の端部に配置してもよい。サブタンク20とインクジェットヘッド14はヘッドチューブ21で接続されている。インク供給ポンプ31はフイゴ型のダイヤフラムポンプやピストンポンプや動作時はチューブを扱いて液体を移動させ停止時はチューブを閉塞するチューブポンプなどがある。また、ポンプによっては、逆流防止のための電磁バルブ32が必要である。
【0025】
また、サブタンク20には、ヘッドチューブ21がつながる第1の連通口41よりも重力方向に高い位置に第3の連通口12、13がエア供給口、またはエア吸引口として設けられ、各々の口にはそれぞれ圧力調整チューブ17、18が繋がっている。
【0026】
さらに圧力調整チューブ17、18の他端には加圧ポンプ33及び減圧ポンプ35が設けられている。加圧ポンプ33と減圧ポンプ35の位置は、圧力調整チューブ17、18の端部で無く中間でも良い。さらに圧力調整チューブ17、18上の加圧ポンプ33、減圧ポンプ35とサブタンク20との間には、少なくても1個の圧力調整用の圧力センサ19が付いており、サブタンク20内の気圧が設定値よりも高い時には減圧ポンプ35を稼動させ、逆に気圧が設定値よりも低いときには加圧ポンプ33を稼動させ、常にインクジェットヘッド14のインク安定吐出に必要な背圧を維持できるようになっている。
【0027】
さらに加圧ポンプ33、減圧ポンプ35にはダイヤフラムポンプやピストンポンプが利用されるが、ポンプの構造によっては逆流防止や、停止時にサブタンク20内の気圧を保持するために電磁バルブ34、36が必要である。動作時はチューブを扱いて気体を移動させ、停止時はチューブを閉塞するチューブポンプを利用することもできる。
【0028】
以上が本発明のインク供給系の構造であり、インクジェットヘッド14、サブタンク20、インクカートリッジ30およびインク供給チューブ16、圧力調整チューブ17、18、さらにその各チューブに接続されるポンプ、電磁バルブ、圧力センサは、インクの色毎に設けられている。
【0029】
図2は用紙搬送方向が水平方行の場合であり、
図3は用紙搬送走行が垂直方向の場合である。従来例では、サブタンク内の圧力調整に使用されるのは減圧ポンプのみであるため、必ずインクジェットヘッドとサブタンクの位置関係はサブタンクが一定距離以上上位に配置されないと成り立たない構造であったが、本実施形態ではサブタンク20には加圧、減圧両方が可能になっているためサブタンク20の配置位置に自由度が出来ている。
【0030】
また、
図6に示すように、サブタンク20と加圧ポンプ33および減圧ポンプ35の間にエアバッファ37を設けても良い。エアバッファ37はサブタンク内20の急激な圧力変動を緩和させる働きがある。キャリッジ1上の載せられるサブタンク20の容積にはキャリッジ1の駆動条件や装置の外形により制限を受け大きな容積を取るのは困難になる。またサブタンク20内のインクは、インクカートリッジ30のインクが切れてからどのくらい印字できるかを決める要因になるため、印刷装置の使いやすさを考えると出来るだけサブタンク20内に大量のインクを抱えた方が有利になる。このような諸事情からエアの占める体積が減るとインクの増減に因る体積変動がサブタンク20内の圧力変動に大きく効くため頻繁に加圧ポンプ33と減圧ポンプ35が入れ替わり作動し追従しきれずサブタンク内の圧力変動が大きくなってしまうことがあるが、上述のようにエアバッファ37を設けるとインクの変動体積に対してエアの占める体積は大きいため圧力変動を小さく抑えることが可能になる。また、エアバッファ37とサブタンク20内の空気圧は等しく維持することが可能なので
図6に示すようにサブタンク20とエアバッファ37を結ぶ圧力調整チューブ10は1本にすることができる。したがってエアバッファ37をキャリッジ1外の本体固定側に設置するようにすればケーブルベア2内に搭載させるチューブの数を減らすことができる、さらにサブタンク20に設ける第3の連通口の数を減らすことができるためケーブルベア2の小型化、サブタンク20の小型化を実現することができる。
【0031】
また、
図6においては、エアバッファ37を1つの色に対して1つのエアバッファ37でつなぐ図としているが、別に色毎に限ったものではない。
図7に示すように複数の色を共通のエアバッファ37でつないでもかまわない。
図7では、4個のインクジェットヘッド14a、14b、14c、14dと対になるサブタンク20a、20b、20c、20dとを共通のエアバッファ37に圧力調整チューブ10a、10b、10c、10dを用いて連結させることにより圧力調整機構の簡略化を実現している。すなわち共通のエアバッファ37に加圧ポンプ33と減圧ポンプ35の組み合わせが少なくとも1組あればインクジェットヘッド14a、14b、14c、14dの背圧は等しく維持することができるので加圧ポンプと減圧ポンプの数を減らすことが可能になる。さらに、エアバッファ内の圧力を圧力センサ19で検出させれば圧力センサ19の数も減らすことが可能である。また、サブタンク20a、20b、20c、20dは夫々インク供給チューブ16a、16b、16c、16dを介してインクカートリッジ30a、30b、30c、30dに接続され、インク供給ポンプ31a、31b、31c、31dを駆動することで夫々の色のインクが供給される。
【0032】
次に、サブタンク20について説明する。
図8は、本発明の記録装置のサブタンクの垂直方向に割った時の断面図である。サブタンク20の働きは、インク供給チューブ16内のインクがキャリッジ1の主走査方向の動きにあわせて変形を繰り返したときに発生するインクの圧力変動をインクジェットヘッド14に伝えることを防止し、またサブタンク20の移動に伴い内部のインクが動くことによる圧力変動も防止し、サブタンク20内で作られた安定した圧力をインクジェットヘッド14に掛けるためのものでる。サブタンク20は、インクを一時的に貯蔵する為に、大まかに言うと外枠20a、断面方向を覆う側板20bから構成される。これら外枠20aと側板20bの部品構成は、さまざまな構造と加工方法が考えられる。例えば、外枠20aと両側板20bのうちの一方とをアルミダイキャストや一体プラスチック成形で構成し、他一枚の側板20bを後からねじ止めや溶着等で密閉構造を作り上げる方法、外枠20aをアルミまたプラの押し出し材で構成し、両側板20bをねじ止めや溶着して密閉構造を作り上げるなど方法は1つに限るものではない。本実施例では、
図13に示すように、外枠20aをアルミの押し出し材とし、両サイドをアルミの側板20bで挟み込む構成にした。フレーム24は、外枠20aの内壁に固定されおり、フレーム24には、外枠20aに沿ってねじ穴が設けてあり、
図13で示すようにねじ25により側板20bを外枠20aの両面を挟み込むよう締め付けることが出来る。このとき外枠20aと両面に取り付ける側板20bの間には、図示しないゴムなどのパッキンを挟み込むことにより、サブタンク20内部の密閉性が確保されるようになっている。本実施例では約120mlの密閉空間が得られるように作られている。このサブタンク20には、インクジェットヘッド14に連通する第1の連通口41を有しヘッドチューブ21へと繋がり他端にはインクジェットヘッド14のインク供給口に繋がっている。また、インク供給チューブ16と連通しインク供給口となる第2の連通口42が設けられている。この第2の連通口42は供給時の泡立ちを防ぐためサブタンク20内部の底面に近いところにあることが望ましく、設計上天上部に第2の連通口42を設けるならば、サブタンク20内に管を伸ばして底面近くでインクを垂らす構造が望ましい。さらに、サブタンク20には第3の連通口12、13が1つまたは複数設けられている。エアバッファ37が設けられているときは、第3の連通口12、13は接続され1つでエアバッファ37につながりエアバッファ37がないときはそれらの少なくても1つは加圧ポンプ33に繋がり、他は減圧ポンプ35に繋がる。またサブタンク20に向かう端部と逆の端部に三又等のジョイント(図示せず)を設け圧力調整チューブ17、18に分岐しても第3の連通口12、13を1つにすることができる。
【0033】
次に、サブタンク内部に含まれる部材について説明する。サブタンク内部20には第1の連通口41と第2の連通口42と第3の連通口12、13の間に介在し、少なくとも第1の連通口41を有する空間45と第2の連通口42、第3の連通口12、13の各連通口を有する空間とに仕切る毛細管効果を有する多孔質部材26が存在する。これは供給チューブ16から排出される泡や気泡がインクジェットヘッド14につながる第1の連通口41に流入するのを防ぐとともに、主走査方向にキャリッジ1が移動したときにサブタンク20内のインクの液面がゆれサブタンク20内に圧力変動が起こり第1の連通口41に伝わることを防いでいる。
【0034】
また、このサブタンク20には
図8に示す通り、インクの残量を検出する機構が設けられている。この残量検出方法は少なくとも多孔質部材26に下方を含む少なくとも2方を囲まれた空間の液面を見る事を特徴としている。この目的は、前述のキャリッジ1の主走査方向への移動時起きる液面の変動を極力押さえできるだけ正確にインク残量を検出するためである。
【0035】
検出方法としては、
図8や
図10(a)、
図10(b)に示すフロート22がインク100の液面とともに上下するのをマイクロスイッチ23などで検出する方法。また、
図11(a)、
図11(b)に示すようにフロート22の内部に磁石27を埋め込み、その磁石の変動を磁気センサ28で検出する方法。さらには、
図12のようにフロート22を用いずに直接インク100の液面の高さをフォトインタラプタ29で読み取るなどの方法がある。検出方法はこれに限ったものでは無く、多孔質部材26で囲まれた空間のインクの液面を検出できる方法であれば対応可能であることはいうまでも無い。
【0036】
さらにサブタンク20には、
図9に示すように第4の連通口44を設け循環チューブ40を伝ってインクカートリッジ30へと戻す構造をとることも出来る。また、
図14に示すように、この循環チューブ40の他端または経路上には循環ポンプ38が設けられサブタンク20のインクは第4の連通口44を介してインクカートリッジ30へと戻すことが可能になっている。この機構はインク中に分散している顔料などの粒子が沈殿してしまうようなインクの場合に有効で、たとえば待機中にキャリッジ1が停止しているときに循環ポンプ38を駆動させサブタンク20内のインクをインクカートリッジ30に回収すること、さらに供給ポンプ31を駆動させインクをインクカートリッジ30とサブタンク20との間で循環させインクの沈降を防止させることが出来る。循環ポンプ38にはダイヤフラムポンプやピストンポンプが利用されるが、ポンプの構造によっては逆流防止のための電磁弁39が必要になる。
【0037】
さらに
図13では、サブタンク20の外周に、ヒータ43が設けられサブタンク内のインク温度を一定の温度範囲に調整している。この目的は、高粘度のインクの時に有効でインクの温度を上げることによりヘッドに供給するインクの粘度を一定の範囲に調整することより、インクの吐出安定性を確保することや吐出するためのインクジェットヘッド14の駆動方法の簡略化、広い外部環境への対応性を広げる効果がある。
図13のように外部にヒータを設ける場合には熱伝導性のよいアルミやステンレスなどの金属の材質をサブタンク20の外壁20a、20bの材質に選んだ方が良いのは言うまでも無い。
【0038】
さらに
図4、
図5および
図6に示す様に、インクジェットヘッド14が待機状態、あるいはメンテナンス状態の時にインクジェットヘッド14のインク吐出口の乾燥防止、異物の侵入防止のために密閉が可能なキャップ機構5を有しており、キャップ機構5には廃液チューブ54を介してインク吐出口からインクを吸引し廃液タンク52に送る吸引ポンプ51と、バルブチューブ55を介して密閉状態から解除させることができるエア導入バルブ機構53を有するメンテナンスユニットを設けている。また、キャップ機構5はインクジェットヘッド14のインク吐出口を密閉するキャップ50を備え、キャップ50は図示しない昇降機構によって上下に移動し密閉及びその解除ができる。インクをインクジェットヘッド14に充填するときには、まず吸引ポンプ51も稼動させインクジェットヘッド14、サブタンク20、インク供給チューブ16内を負圧にさせる。さらにインク供給ポンプ31を稼動させサブタンク20にインクを供給させることによりインクの流れを加速させる。インクの流れを加速させることによりインク供給経路内に滞留しがちな気泡を一緒に流しインクジェットヘッド14より排出させることが目的である。インク充填時には、インクジェットヘッド14からサブタンク20、あるいはそれよりも上流の連通した部分を負圧にして、インクジェットヘッド14からサブタンク20またはさらに上流までの領域を真空またはそれに近い状態、例えば30kPa以下、にさせてからインク充填を開始できるようにした。
【0039】
次にサブタンク20内に設けたインク残量検出方法によりサブタンク20内に一定量のインクが溜まった時点で、インク供給ポンプ31および吸引ポンプ51を停止させインク充填を完成させる。従来例で示しているインク供給システムの場合、サブタンク内にインクをためてサブタンクにエアで加圧することによりヘッド内にインクを送り出している。しかし、この場合サブタンクからインクジェットヘッドのインク吐出口にあるフィルターや、屈曲した流路、その他の流路にトラップされた気泡は、インクと共にインクジェットヘッド外に放出されること無くヘッド内に滞留し、時にインクを吐出させるためにインクに吐出エネルギーを与えるインク圧力室内に留まりインクの吐出不良を起こさせてしまう、または停滞している気泡が流路を塞ぎインクが流れなくなるという問題を引き起こす原因になる。
【0040】
本発明では、インクジェットヘッド14のメンテナンスでインクジェット14よりインクを排出させる場合には、インク供給ポンプ31によりインクを吐き出すか、吸引ポンプ51でインクを吸いだすのか、両者を同時に行うのかを選択できるようにした。すなわち、インクジェットヘッド14にゴミつまり防止や図示しないワイプ動作時すなわち通常のクリーニング時には供給ポンプ31によりインクを加圧させインクを押し出すことによりクリーニングを完成させる。しかし、メディア8のジャムを起こしてメディア8とインクジェットヘッド14とを激しく接触させてしまった場合などには、インクジェットヘッド14内にエアが混入してしまい吐出不良が起こってしまうことがある。このような場合にはインクジェットヘッド14のノズル側から吸引ポンプ51により吸引を行いインクジェットヘッド14内の気圧を下げてインクに流速を持たせてエアを巻き込みながらインクジェットヘッド14外に排出させるのである。このように供給ポンプ31と吸引ポンプ51をクリーニングモードにより使い分けることにより効果的にインクジェットヘッド14のクリーニングを完成させることができる。エア導入バルブ53は、インクを吸いだした後にキャップ50内に残るインクを排出させるために必要でこのバルブが無いとキャップ機構5はいつまでも、ヘッドからインクを吸い続けてしまい、インク吸引後にノズルのメニスカス形成が出来なくなってしまう。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、サブタンクを有するインクジェットプリンタなどの記録装置に利用できる。
【符号の説明】
【0042】
1 キャリッジ
5 キャップ機構
14 インクジェットヘッド
16 供給チューブ
17 加圧チューブ
18 減圧チューブ
19 圧力センサ
20 サブタンク
22 フロート
23 マイクロスイッチ
26 多孔質部材
27 磁石
28 磁気センサ
29 フォトインタラプタ
30 インクカートリッジ
31 供給ポンプ
33 加圧ポンプ
35 減圧ポンプ
38 循環ポンプ
32、34、36、39 電磁バルブ
50 キャップ
51 吸引ポンプ
53 エア導入バルブ機構