特許第5717517号(P5717517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 鹿島建設株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5717517-切断装置を備えたシールド掘進機 図000002
  • 特許5717517-切断装置を備えたシールド掘進機 図000003
  • 特許5717517-切断装置を備えたシールド掘進機 図000004
  • 特許5717517-切断装置を備えたシールド掘進機 図000005
  • 特許5717517-切断装置を備えたシールド掘進機 図000006
  • 特許5717517-切断装置を備えたシールド掘進機 図000007
  • 特許5717517-切断装置を備えたシールド掘進機 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717517
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】切断装置を備えたシールド掘進機
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/087 20060101AFI20150423BHJP
   E21D 9/08 20060101ALI20150423BHJP
   E21D 9/06 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   E21D9/087 A
   E21D9/08 Z
   E21D9/06 301Z
【請求項の数】8
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-88045(P2011-88045)
(22)【出願日】2011年4月12日
(65)【公開番号】特開2012-219549(P2012-219549A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2013年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】吉迫 和生
(72)【発明者】
【氏名】露木 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】横澤 隆司
【審査官】 ▲高▼橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−250295(JP,A)
【文献】 特開2008−063780(JP,A)
【文献】 特開2010−133145(JP,A)
【文献】 特開平11−294076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/00 − 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
掘削ビットがカッタ面板に取り付けられ、前記カッタ面板を回転させることによって地盤の掘削を行うシールド掘進機であって、
前記カッタ面板に取り付けられ、前記カッタ面板の回転によって前記地盤中に埋設する難掘削性地中埋設物を切断する切断刃と、
前記切断刃を防護する防護ガイドと、を備え、
前記切断刃は、前記防護ガイドの内側に配設され
前記難掘削性地中埋設物は、ドレーン材であり、
前記切断刃は、扁平形状とされ、先端部分の刃部に囲まれた平坦面を有すると共に、前記平坦面が前記カッタ面板における回転方向に沿うように前記カッタ面板に取り付けられている、ことを特徴とする切断装置を備えたシールド掘進機。
【請求項2】
前記切断刃の前記先端部分は、尖った形状を有する、請求項1に記載の切断装置を備えたシールド掘進機。
【請求項3】
前記掘削ビットの掘削によって生じた土砂を掻き出すツールビットが前記カッタ面板に取り付けられており、
前記切断刃は、前記カッタ面板の回転方向に対して同心状に配置されているとともに、前記カッタ面板の回転方向に見て、前記ツールビットの裏側に配置され、
前記ツールビットは、前記カッタ面板の回転方向において、前記切断刃よりも前方側に配置されている、請求項2に記載の切断装置を備えたシールド掘進機。
【請求項4】
前記切断刃の刃先が、前記防護ガイドの最前面よりも後方に配置されており、
前記難掘削性地中埋設物が埋設された位置に到達した際に、前記切断刃の刃先が前記防護ガイドの最前面よりも前方に突出するように前記切断刃を送り出す送出機構が設けられている請求項1〜3のうちいずれか1項に記載の切断装置を備えたシールド掘進機。
【請求項5】
前記切断刃に対して縦振動を付与する振動体が設けられている請求項1〜請求項4のうちのいずれか1項に記載の切断装置を備えたシールド掘進機。
【請求項6】
掘削ビットがカッタ面板に取り付けられ、前記カッタ面板を回転させることによって地盤の掘削を行うシールド掘進機であって、
前記カッタ面板に取り付けられ、前記カッタ面板の回転によって前記地盤中に埋設する難掘削性地中埋設物を切断する切断刃と、
前記切断刃を防護する防護ガイドと、を備え、
前記切断刃は、前記防護ガイドの内側に配設され、
前記切断刃に対してたわみ振動を付与する振動体が設けられていることを特徴とする切断装置を備えたシールド掘進機。
【請求項7】
前記振動が高周波振動によって与えられる請求項5または請求項6に記載の切断装置を備えたシールド掘進機。
【請求項8】
前記振動が超音波振動によって与えられる請求項5または請求項6に記載の切断装置を備えたシールド掘進機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断装置を備えたシールド掘進機に係り、特に、地中におけるドレーンを好適に切断することができる切断装置を備えたシールド掘進機に関する。
【背景技術】
【0002】
シールド掘進機によって地中を掘削する際、地盤改良等のために設けたドレーン材が地中に埋設されたままの状態となっていることがある。このようなドレーン材は、地中における土砂や礫と異なり、柔らかいものであることが多い。シールド掘進機では、カッタビットを取り付けたカッタ面板を回転させて地中の掘進を進めるが、柔らかいドレーン材を切断する際には、カッタビットにドレーン材が絡みついてしまい、ドレーン材を良好に切断することは難しかった。
【0003】
この問題に対して、従来、ドレーン材切断カッタを備えるシールド掘進機が開示されている(たとえば、特許文献1参照)。このシールド掘進機においては、面板の外周に沿ってドレーン材切断カッタを取り付けておき、面板の外周面に沿ってドレーン材を切断して、掘進を進めるというものである。
【0004】
さらに、上記特許文献1には、従来のシールド掘進機として、メインカッタ(カッタ面板)の前面の複数箇所において、鋭利な棒状カッタを取り付けたシールド掘進機が開示されている。このシールド掘進機では、掘進を行う際にコピーカッタのように前方に突出させ、メインカッタの前面で掘削と同時に棒状カッタによってドレーン材を切断するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−93384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された他のシールド掘進機では、ドレーン材を切断する際に、ドレーン材切断カッタを露出した状態で面板の前方に進出させている。このため、ドレーン材切断カッタが地中の礫などに当たることがあり、ドレーン材切断カッタ(切断刃)が損傷してしまう可能性があるという問題があった。
【0007】
また、上記特許文献1に従来技術として開示されたシールド掘進機では、メインカッタとともに棒状カッタを回転させることによりドレーン材などの難掘削性地中埋設物を切断している。しかし、ドレーン材を切断する際には、やはり棒状カッタを露出した状態で前方に進出させるので、棒状カッタが地中の礫などに当たることがあり、棒状カッタ(切断刃)が損傷してしまう可能性があるという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、切断刃の損傷を防止しながら、地中に埋設されたドレーン材などの難掘削性地中埋設物を好適に切断し、掘進を続けることができる切断装置を備えたシールド掘進機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した本発明に係るシールド掘進機は、掘削ビットがカッタ面板に取り付けられ、カッタ面板を回転させることによって地盤の掘削を行うシールド掘進機であって、カッタ面板に取り付けられ、カッタ面板の回転によって地盤中に埋設する難掘削性地中埋設物を切断する切断刃と、切断刃を防護する防護ガイドと、を備え、切断刃は、防護ガイドの内側に配設され、難掘削性地中埋設物は、ドレーン材であり、切断刃は、扁平形状とされ、先端部分の刃部に囲まれた平坦面を有すると共に、平坦面がカッタ面板における回転方向に沿うようにカッタ面板に取り付けられている、ことを特徴としている。
【0010】
本発明に係る切断装置を備えたシールド掘進機においては、カッタ面板の回転によって地盤中に埋設する難掘削性地中埋設物を切断する切断刃を備えている。このため、カッタ面板を回転させることにより、難掘削性地中埋設物を切断することができるので、掘進を円滑に進めることができる。ところで、切断刃は、難掘削性地中埋設物を切断する必要性から、薄刃とすることが求められるため、カッタ面板の回転に伴って地中の礫等との接触によって破損する可能性が高くなる。この点、本実施形態では、切断刃を防護する防護ガイドを備えている。この防護ガイドを備えることにより、切断刃の破損を好適に防止することができる。さらには、振動体が防護ガイドの内側に配置されていることにより、切断刃による難掘削性地中埋設物の切断を行っている最中においても、振動体の損傷を好適に防止することができる。
【0011】
ここで、切断刃の先端部分は、尖った形状を有する態様とすることができる。
【0012】
このような切断刃によれば、難掘削性地中埋設物を切断する際に、難掘削性地中埋設物に対して差し込むことができる。
【0013】
また、掘削ビットの掘削によって生じた土砂を掻き出すツールビットがカッタ面板に取り付けられており、切断刃は、カッタ面板の回転方向に対して同心状に配置されているとともに、カッタ面板の回転方向に見て、ツールビットの裏側に配置され、ツールビットは、カッタ面板の回転方向において、切断刃よりも前方側に配置されている態様とすることができる。
【0014】
このように、切断刃は、カッタ面板の回転方向に対して同心状に配置されているとともに、カッタ面板の回転方向に見て、ツールビットの裏側に配置されていることにより、難掘削性地中埋設物を切断する際以外の掘削を行う際に、切断刃をツールビットによって好適に保護することができる。
【0015】
また、切断刃の刃先が、防護ガイドの最前面よりも後方に配置されており、難掘削性地中埋設物が埋設された位置に到達した際に、切断刃の刃先が防護ガイドの最前面よりも前方に突出するように切断刃を送り出す送出機構が設けられている態様とすることができる。
【0016】
このような送り出し機構が設けられていることにより、難掘削性地中埋設物が埋設された位置に到達する以前では、切断刃の刃先が、防護ガイドの最前面よりも後方に配置されており、難掘削性地中埋設物が埋設された位置に到達したときに切断刃を送り出すことができる。このため、難掘削性地中埋設物が埋設された位置以外の位置における切断刃の破損をさらに好適に防止することができる。
【0017】
また、切断刃に対して縦振動を付与する振動体が設けられている態様とすることできる。
【0018】
このように、切断刃に対して縦振動を付与する振動体が設けられていることにより、難掘削性地中埋設物をさらに好適に切断することができる。
【0019】
また、本発明に係るシールド掘進機は、掘削ビットがカッタ面板に取り付けられ、カッタ面板を回転させることによって地盤の掘削を行うシールド掘進機であって、カッタ面板に取り付けられ、カッタ面板の回転によって地盤中に埋設する難掘削性地中埋設物を切断する切断刃と、切断刃を防護する防護ガイドと、を備え、切断刃は、防護ガイドの内側に配設され、切断刃に対してたわみ振動を付与する振動体が設けられていることを特徴とする。
【0020】
このように、切断刃に対してたわみ振動を付与する振動体が設けられていることにより、難掘削性地中埋設物をさらに好適に切断することができる。
【0021】
また、振動が高周波振動によって与えられる態様とすることができ、振動が超音波振動によって与えられる態様とすることができる。
【0022】
このように、振動として高周波振動、特に超音波振動を付与することにより、難掘削性地中埋設物の切断を良好に行うことができる。ここでの高周波振動とは、たとえば10kHz以上の周波数を有する振動とすることができる。また、16kHzまたは20kHz以上の周波数を有する超音波振動を付与した場合には、切断刃を振動させる際の音の発生を抑制することができるため、騒音防止に寄与することができる。
【0023】
なお、送出機構がセンターホールジャッキである態様としてもよい。このように、送出機構がセンターホールジャッキであることにより、切断刃の送り出しを容易に行うことができる。また、切断刃に対して振動を付与する振動体が設けられている場合には、振動体をセンターホールジャッキのセンターホール部に収容することができるので、装置全体のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
また、難掘削性地中埋設物がドレーン材である態様とすることができる。このように、難掘削性地中埋設物としては、ドレーン材を対象とすることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る切断装置を備えたシールド掘進機によれば、切断刃の損傷を防止しながら、地中に埋設されたドレーン材などの難掘削性地中埋設物を好適に切断し、掘進を続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の要部側断面図である。
図2】本発明の実施形態に係るシールド掘進機の正面図である。
図3図2のIII-III線断面図である。
図4】(a)は、切断刃の正面図、(b)は、他の切断刃の正面図、(c)は、さらに他の切断刃の正面図である。
図5】シールド掘進機による掘進工程を示す工程図である。
図6図5に続く工程を示す工程図である。
図7】(a)は、他の例に係る切断刃および振動子をカッタ面板の周方向から見た側面図、(b)は、カッタ面板の径方向から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各実施形態において、同一の機能を有する部分については同一の符号を付し、重複する説明は省略することがある。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係るシールド掘進機の要部側断面図である。図1に示すように、本実施形態に係るシールド掘進機Mは、泥土圧式シールド掘進機であり、カッタ面板1を備えている。カッタ面板1の背面側には、チャンバCが形成されており、チャンバCの後方には隔壁2が設けられている。隔壁2には、隔壁2を貫通し、後方からチャンバCまで連通するスクリューコンベア3が設けられている。
【0029】
図2に示すように、カッタ面板1は、外周リング10および6本のカッタスポーク11(11A〜11F)を備えており、第1カッタスポーク11Aおよび第4カッタスポーク11Dには、掘削ビットであるツールビット12および本発明の切断装置となるカッティングブレード13が取り付けられている。また、第2カッタスポーク11B、第3カッタスポーク11C、第5カッタスポーク11E、および第6カッタスポーク11Fには、それぞれツールビット12および先行ビット14が取り付けられている。
【0030】
さらに、カッタスポーク11の最外周に設けられた外周リング10には、特殊先行ビット15が取り付けられており、第6カッタスポーク11Fには、カッタ面板1の半径方向に進退するコピーカッタ16が設けられている。さらに、カッタ面板1の表面側中央位置には、センターカッタ17が設けられており、センターカッタ17の後方には、加泥口18が形成されている。
【0031】
隔壁2の前方におけるチャンバCは、カッタ面板1の背面と隔壁2との間に形成されており、外周にスキンプレート21が配設されて形成されている。さらに、隔壁2には、カッタ面板1を回転させるカッタ駆動モータが設けられており、カッタ面板1における加泥口18は、スイベルジョイント22によって隔壁2に接続されている。
【0032】
スクリューコンベア3は、チャンバCに溜まった土砂をシールド掘進機Mにおける後方まで搬送する。その他、シールド掘進機Mには、図示しないシールドジャッキやエレクタ、さらには、シールド掘進機Mの進行方向を変えるための中折れジャッキなどが設けられている。
【0033】
カッティングブレード13は、図3に示すように、切断刃31を備えている。切断刃31は、図4(a)に示すように、先端が尖った形状をなしており、略三角形状とされた先端部分の全周にわたって刃部が形成されている。切断刃31における平坦面は、カッタ面板1における回転方向に沿って配置されている、このため、カッタ面板1を回転させると、切断刃31における側面の刃部が先頭となって移動する。
【0034】
また、切断刃としては、図4(b)に示すように、先端が矩形をなすものであったり、図4(c)に示すように、先端が先鋭部を有する曲線状であったりする態様とすることもできる。図4(a)(c)に示すように、先端が尖った形状とされている場合には、ペーパードレーンなどのドレーン材を切断する際に、ドレーン材に対して差し込むことができるので、より好適である。
【0035】
また、図3に示すように、切断刃31の後端部は振動子32に取り付けられている。振動子32は、ホルダ33に形成された貫通孔に挿入されてホルダ33に収容されており、振動子32が作動することにより、振動子32および切断刃が、ホルダ33に対して相対的に振動を行う。振動子32は、たとえば超音波などの高周波振動によって縦振動を発生させるものであり、振動子32によって切断刃31が超音波振動などの高周波振動を行う。また、ホルダ33における振動子32が貫通する貫通孔には、Oリング33Aが設けられており、ホルダ33内に対する浸水を防止している。
【0036】
ホルダ33は、センターホールジャッキ34におけるロッド部材34Aに取り付けられており、ロッド部材34Aは、センターホールシリンダ34Bに対して相対的に移動可能とされている。さらに、センターホールジャッキ34におけるセンターホールシリンダ34Bは、カッタスポーク11に形成された凹部に収容されてカッタスポーク11に固定されている。カッタスポーク11の表面側には、切断刃31を囲むように、中空の筒状をなす防護ガイド35が取り付けられている。センターホールジャッキ34を作動させることにより、ロッド部材34Aがセンターホールシリンダ34Bに対して相対的に前後進し、ロッド部材34Aの移動に伴って、振動子32および切断刃31がカッタスポーク11に対して相対的に前後進する。
【0037】
センターホールジャッキ34におけるロッド部材34Aを最も先端側まで前進させると、図3に仮想線で示すように、切断刃31の先端部が防護ガイド35よりも突出する位置まで進出する。このとき、振動子32については、防護ガイド35の内側に配置された状態となっている。
【0038】
図3においては、ツールビット12および先行ビット14を破線で示し、カッタ面板1が回転する際におけるツールビット12および先行ビット14と切断刃13の刃先との位置関係を示している。切断刃13が最も先端側まで前進した場合、切断刃13の刃先は先行ビット14、および先行ビット14の後方に位置するツールビット12の各々の刃先よりも突出した状態となる。
【0039】
また、ロッド部材34Aをもっとも後退させた状態では、ホルダ33の先端面がカッタスポーク11のカッタフェイスと面一となり、切断刃31がカッタフェイスから突出した状態となる。このとき、切断刃31は、防護ガイド35に収容された状態となっている。また、センターホールジャッキ34におけるロッド部材34Aとセンターホールシリンダ34Bとの間にも、Oリング34Cが設けられており、センターホールジャッキ34内に対する浸水を防止している。
【0040】
ここで、縦振動を発生する振動子32内における縦振動の波長を第1波長λ1として、切断刃31の全長は、第1波長のλ1の1/2の整数倍とされている。振動子32における切断刃31と接続されている側の端部の振幅は最大となっており、切断刃31における振動子32と接続されている側の端部の振幅も最大となっている。切断刃31においては、振動子32と接続されている側端部からの距離が第1波長λ1の1/4の整数倍(ただし、整数は奇数)となる位置では振幅が最小となる。
【0041】
したがって、切断刃31の全長を(λ×1/2)・n1(ただし、n1は奇数)に設計することにより、端部での振幅を最大にすることができるとともに、長さ方向の中央位置での振幅を最小とすることができる。また、長手方向の(λ×1/4)・n2(ただし、n2は奇数)の位置の把持することにより、切断刃31の振動の影響を効果的に抑制することができる。Oリング33Aが切断刃の長手方向(λ×1/4)・n2(ただし、n2は奇数)の位置に配置することにより、振動によるOリング33Aの止水効果の低減を抑制することができる。
【0042】
次に、本実施形態に係るシールド掘進機Mによる掘削作業の手順について説明する。本実施形態に係るシールド掘進機Mでは、シールド掘進機Mによる掘進計画を行い、図5(a)に示すように、ドレーン材が埋設された位置以外の位置でシールド掘進機Mが地中を掘削している間は、図3に示すように、切断刃31をカッタスポーク11の防護ガイド35に収容した状態でカッタ面板1を回転させて掘進を行う。このときには、地盤は、主に図2に示す先行ビット14や特殊先行ビット15によって先行掘削される。また、シールド掘進機Mによる掘進が進んだ後方には、セグメントSが組み立てられる。
【0043】
先行ビット14等は、堅い礫等が含まれる地盤についても破砕などしながら掘進するため、円滑に掘進を進めることができる。掘削された土砂は、ツールビット12等によって掻き取られてチャンバC内に送り込まれる。この間、カッティングブレード13における切断刃31は、防護ガイド35内に収容されているため、岩盤などとの接触による折損が防止されている。
【0044】
さらに、防護ガイド35は、カッタ面板1の回転方向に対して同心状に配置されているとともに、カッタ面板1の回転方向に見て、ツールビット12の裏側に配置されている。このため、カッタ面板1の回転によって生じる土砂はツールビット12によって排除されることとなるので、防護ガイド35に到達する土砂の量を少なくすることができる。したがって、カッティングブレード13における切断刃31の折損をさらに好適に防止することができる。
【0045】
こうして掘進を進めていくと、図5(b)に示すように、地盤に埋設されたドレーン材としてのペーパードレーンPDが埋設された位置にシールド掘進機Mの前方に到達することがある。ペーパードレーンPDの存在は、シールド掘進機Mの掘進を計画する際に、予め入手しておくことができる。ペーパードレーンPDが埋設された位置にシールド掘進機Mが到達した場合、シールド掘進機Mにおいては、図3に破線で示すように、本発明の送出機構であるセンターホールジャッキ34によって切断刃31を前方に送り出し、切断刃31の刃先が防護ガイド35の最前面よりも前方に突出するようにする。
【0046】
それから、図6(a)に示すように、そのままシールド掘進機Mにより、図1に示すカッタ面板1を回転させながら掘進を行う。カッタ面板1を回転させると、図3に示す防護ガイド35よりも前方に突出した切断刃31の刃先部分によって、ペーパードレーンPDを切断する。ペーパードレーンPDは、柔軟性を有していることから、先行ビット14で掘削または切断しようとしても、先行ビット14に絡みついてしまい、切断が困難となることがあった。この点、ペーパードレーンPDについて、薄刃の切断刃31を用いて切断することにより、ペーパードレーンPDを確実に切断することができる。また、振動子32は、防護ガイド35の内側に配置された状態となっている。このため、防護ガイド35によって振動子2の損傷を好適に防止することができる。
【0047】
ここで、本実施形態に係るシールド掘進機Mにおいては、切断刃31を前方に送り出すにあたり、センターホールジャッキ34を用いている。センターホールジャッキ34を用いることにより、切断刃31を円滑に前方に送り出すことができる。また、センターホールジャッキ34によって切断刃31を送り出していることにより、切断刃31に対する縦振動の付与をスムーズに行うことができる。
【0048】
また、ペーパードレーンPDを切断するにあたり、カッティングブレード13では、振動子32によって切断刃31に対して縦振動を付与している。切断刃31に縦振動が付与されていることにより、切断刃31におけるペーパードレーンPDの切断性能を高めることができ、より確実にペーパードレーンPDを切断することができる。
【0049】
こうして、ペーパードレーンPDを切断したら、図6(b)に示すように、シールド掘進機Mによる掘進を進行する。このとき、ペーパードレーンPDは切断された状態にあるので、センターホールジャッキ34によって切断刃31を後退させ、切断刃31を防護ガイド35の内側に収容する。その後は、ペーパードレーンPD等がない地中の掘削を進行する。
【0050】
このように、本実施形態に係るシールド掘進機Mにおいては、カッタ面板1の回転によって地盤中に埋設するペーパードレーンPDを切断する切断刃31を備えている。このため、カッタ面板1を回転させることにより、ペーパードレーンPDを切断することができるので、掘進を円滑に進めることができる。
【0051】
また、ペーパードレーンPDが埋設された位置以外の位置の掘削を行う際には、防護ガイド35によって切断刃31を防護している。ペーパードレーンPDが柔らかいことから、ペーパードレーンPDを切断するための切断刃31を薄刃とすることが求められるが、防護ガイド35によって切断刃31を防護することにより、切断刃31が薄刃であっても、切断刃31の破損を好適に防止することができる。また、防護ガイド35によって切断刃31を防護することにより、切断刃31として軽量のものを用いることができる。このため、切断刃31に縦振動を付与する振動子32についても、出力の大きくない小型のもので済ませることができる。
【0052】
さらに、上記実施形態においては、ペーパードレーンPDが埋設された位置に到達した際に、切断刃31の刃先が防護ガイド35の最前面よりも前方に突出するように切断刃31を送り出すセンターホールジャッキ34が設けられている。このため、ペーパードレーンPDが埋設された位置に到達する以前では、切断刃31を引き込んでおき、ペーパードレーンPDが埋設された位置に到達したときに切断刃31を送り出すことができる。したがって、ペーパードレーンPDが埋設された位置以外の位置における切断刃31の破損をさらに好適に防止することができる。
【0053】
また、カッティングブレード13は、切断刃31に縦振動を付与する振動子32を備えている。振動子32を備えることにより、切断刃31でペーパードレーンPDを切断する際に、切断刃31に対して縦振動を付与することができる。したがって、ペーパードレーンPDをさらに好適に切断することができる。しかもここで付与される振動が超音波振動とされている。このため、ペーパードレーンPDを好適に切断することができるとともに、騒音の発生を抑制することができる。
【0054】
さらに、切断刃31は、カッタ面板1の回転方向に対して同心状に配置されているとともに、カッタ面板1の回転方向に見て、ツールビット12の裏側に配置されている。このため、ペーパードレーンPDを切断する際以外の掘削を行う際に、切断刃31をツールビット12によって好適に保護することができる。
【0055】
また、ここでは、切断刃31は、縦振動のみが付与される態様とされているが、縦振動に代えてたわみ振動が付与される態様とすることもできる。たとえば、図7(a)(b)に示すように、切断刃31の後端部には、第1振動体32a,第2振動体32bが取り付けられている。
【0056】
第1振動体32aおよび第2振動体32bは、それぞれ切断刃31における左右位置に縦振動を付与する。ここで、第1振動体32aおよび第2振動体32bから切断刃31に対して位相差のある振動を付与することにより、切断波31に対して左右方向にたわみ振動BWを付与することができる。
【0057】
たとえば、位相差を半サイクルに設定した場合の挙動について説明すると、左側に位置する第1振動体32aが最も縮んだときに、右側に位置する第2振動体32bは最も伸びた状態となる。そのとき、切断刃31の先端は左側に振れる。このようにして、左右方向のたわみ振動BWを付与することができる。第1振動体32aおよび第2振動体32bを用いた場合、両者の位相差が半サイクルの時に振幅が最大となるが、位相差を調整することにより、振幅を調整することができる。また、たわみ振動BWの振動方向を切断刃31における平坦面と同一方向、ここでは、カッタ面板1の回転方向と同一とすることにより、切断性能を向上させることができる。また、第1振動体32aおよび第2振動体32bを同位相で振動させることにより、縦振動LWを付与することもできる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。たとえば、上記実施形態では、難掘削性地中埋設物としてペーパードレーンPDを想定しているが、プラスチックボードや、合成樹脂、ポリプロピレンなどの樹脂あるいはこれらの複合材などからなるドレーン材を対象とすることもできるし、他の埋設物などを対象とすることもできる。
【0059】
また、上記実施形態では、振動子32として超音波振動子を用いているが、超音波より周波数が小さい高周波振動子を用いることもできる。シールド掘進機の掘削対象となる土砂や礫と混在するドレーン材を切断するためには、高周波振動子の周波数は、10kHz以上程度とすることが好適である。このように、高周波振動を付与することにより、土砂や礫による抵抗を緩和することができる。
【0060】
さらに、上記実施形態では、切断波31に対して縦振動を付与する態様並びに縦振動およびたわみ振動付与する態様について説明している。これに対して、たわみ振動のみを付与できる態様とすることもできる。あるいは、縦振動とたわみ振動とを同時に付与できる態様とすることもできる。
【符号の説明】
【0061】
1…カッタ面板
2…隔壁
3…スクリューコンベア
10…外周リング
11(11A〜11F)…カッタスポーク
12…ツールビット
13…カッティングブレード
14…先行ビット
15…特殊先行ビット
16…コピーカッタ
17…センターカッタ
21…スキンプレート
22…スイベルジョイント
31…切断刃
32…振動子
33…ホルダ
33A…Oリング
34…センターホールジャッキ
34A…ロッド部材
34B…センターホールシリンダ
34C…Oリング
35…防護ガイド
C…チャンバ
M…シールド掘進機
PD…ペーパードレーン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7