【課題を解決するための手段】
【0009】
(第一の発明)
本願では、第一の発明として、以下のような杭吊り具を提供する。
すなわち、杭(中杭11,下杭11,または上杭12)を吊るための杭吊り具であって、 その杭(11,12)の上端面へ固定されて当該杭(11,12)の外周よりも突出するフランジを形成するフランジ板(36,46)と、 前記杭(11,12)の外径を内径とした円筒形状をなすとともに吊り用の掛かり部(吊り環固定部32,45)を備えた二種類の吊り具本体(30,40)と、を備える。
その二種類の吊り具本体(30,40)は、前記杭(11,12)の上端付近へ固定されて前記フランジ板(36,46)のフランジに当接することで当該杭(11,12)を吊り下げ可能とするものであり、中杭(11)または下杭(11)に用いる中・下杭吊り具本体(30)と、上杭(12)、中杭(11)または下杭(11)のいずれに用いることもできる上乃至下杭兼用吊り具本体(40)という二種類である。
中・下杭吊り具本体(30)は、杭穴(10)において上端に位置する上杭(12)以外の中・下杭(11)に用いる円筒形状をなす。
上乃至下杭兼用吊り具本体(40)は、平面形状が周方向で複数の円弧枠に分割され、隣り合う円弧枠同士の少なくとも一カ所を開閉可能な連結部(43,44)とし、その連結部(43,44)以外で隣り合う円弧枠同士をヒンジ(42)にて連結する。
【0010】
(用語説明)
「フランジ板(36,46)」について、杭(11,12)の上端面へ固定する手段は、たとえば、杭(11,12)の上端面に設けられた雌ネジ部に対して螺合するボルトを用いることが一般的である。しかし、杭(11,12)の上端面への固定および取り外しが可能であれば、他の固定手段や締結手段であってもよい。
「フランジ」とは、他の部位よりも外径が大きくなるように形成された部位であり、連続している突縁状(突条)のものの他、他の請求項にて特定する不連続の複数の突起でもよい。
代表的な上乃至下杭兼用吊り具本体(40)は、前記の「円弧枠」が半円筒形をなす片半円枠のペアとし、その片半円枠における端部に設けたヒンジ(42)と、そのヒンジ(42)の反対端に位置する連結部(43,44)とによって平面形状が開閉自在な円筒形をなしたものである。
【0011】
(作用)
下杭(11)を吊るには、まず、その下杭(11)の上端から、中・下杭吊り具本体(30)を挿入させる。挿入後、下杭(11)の上端面にフランジ板(36)を固定する。これによって、中・下杭吊り具本体(30)が下杭(11)の上端側から抜けることはなくなる。フランジに当接するからである。 その状態で、吊り用の掛かり部(32)を利用して(別途用意したワイヤを掛けるなどして)下杭(11)を吊り上げ、杭穴(10)へ下杭(11)を移動させ、挿入する。
その下杭(11)の杭穴(10)への挿入が済んだら、別の手段にてその下杭(11)を保持し、フランジ板(36)を外す。そして、中・下杭吊り具本体(30)を抜き取り、次の中杭(11)の吊り作業に、フランジ板(36)および中・下杭吊り具本体(30)を用いる。
【0012】
杭穴(10)に対して最も上に位置することとなる上杭(12)に対しては、上乃至下杭兼用吊り具本体(40)のヒンジ(42)を用いて円弧枠を開き、上杭(12)の上端付近に巻き付け、連結部(43,44)を固定する。その後、フランジ板(36,45)を固定するのが一般的である。しかし、上乃至下杭兼用吊り具本体(40)は、フランジ板(36,45)を上杭(12)に固定した後に、上杭(12)に対して固定することも可能である。連結部(43,44)を開閉させることができるからである。
【0013】
二種類の吊り具本体(30,40)を、杭の種類(上杭、中杭、下杭)によって使い分けることができる。そのため、吊り具本体(30,40)のひとつひとつは、消耗しにくくなる。
中・下杭吊り具本体(30)は、上杭(12)以外の全てで使えるが、構造が単純なので安価に製造できる上に壊れにくく、消耗しにくい。
上乃至下杭兼用吊り具本体(40)は、全ての杭(11,12)で使えるが、上杭(12)のみで用いることとすれば、使用回数を減らすことができるので、消耗しにくくすることができる。
【0014】
(第一の発明のバリエーション)
第一の発明におけるフランジ板(36,46)は、複数の突起(ストッパ48)によってフランジを形成することとしてもよい。
複数の突起(ストッパ48)によってフランジを形成したフランジ板(36,46)は、杭(11,12)を吊った状態において、杭(11,12)の軸周りに回動させるような作業をするのに適している。
【0015】
(第二の発明)
本願では、第二の発明として、 杭(11,12)の外径を内径とした円筒形状をなすとともに吊り用の掛かり部(吊り環固定部32,45)を備えた二種類の吊り具本体(30,40)を用いて前記杭を吊るための杭吊り方法を提供する。
前記二種類の吊り具本体(30,40)は、杭穴(10)において上端に位置する上杭以外の中・下杭に用いる円筒形状の中・下杭吊り具本体(30)と、 平面形状が周方向で複数の円弧枠に分割され、隣り合う円弧枠同士の少なくとも一カ所を開閉可能な連結部(43,44)とし、その連結部(43,44)以外で隣り合う円弧枠同士をヒンジ(42)にて連結するものとして形成した上乃至下杭兼用吊り具本体(40)、とする。
そして、杭吊り方法は、二種類の吊り具本体(30,40)のいずれかを選択する選択手順と、 その選択手順にて選択された吊り具本体(30,40)を前記の杭(11,12)に挿入する吊り具本体挿入手順と、前記杭の上端に
対して当該杭の外周よりも突出するフランジを形成したフランジ板を杭の上端面に固定する
フランジ板固定手順と、 前記の掛かり部(32,45)を用いて前記杭(11,12)を吊る杭吊り手順と、 その杭吊り手順にて杭(11,12)を所定の場所へ移動させる移動手順と、 その移動手順によって移動した所定の場所にて前記フランジ板(36,46)を前記杭(11,12)から外すフランジ板取り外し手順と、 前記吊り具本体(30,40)を前記杭(11,12)から外す吊り具本体取り外し手順と、を実行する。
【0016】
(第二の発明のバリエーション1)
第二の発明は、上乃至下杭兼用吊り具本体(40)を選択した場合においては、前記の吊り具本体挿入手順と前記の
フランジ板固定手順とを入れ替えてもよい。
【0017】
(第二の発明のバリエーション2)
第二の発明は、上乃至下杭兼用吊り具本体(40)を選択した場合においては、前記のフランジ板取り外し手順と前記の吊り具本体取り外し手順とを入れ替えてもよい。