特許第5717577号(P5717577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5717577ウェブとマーキング材料の当接予熱を用いてウェブにマーキング材料を定着させる定着装置とウェブにマーキング材料を定着させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717577
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ウェブとマーキング材料の当接予熱を用いてウェブにマーキング材料を定着させる定着装置とウェブにマーキング材料を定着させる方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   G03G15/20 510
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-167694(P2011-167694)
(22)【出願日】2011年7月29日
(65)【公開番号】特開2012-42945(P2012-42945A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2014年7月28日
(31)【優先権主張番号】12/855,036
(32)【優先日】2010年8月12日
(33)【優先権主張国】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アンソニー・エス・コンデロ
(72)【発明者】
【氏名】デイル・アール・マシュテア
【審査官】 國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−189673(JP,A)
【文献】 特開2008−089807(JP,A)
【文献】 特開平07−160137(JP,A)
【文献】 特開平08−044232(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブにマーキング材料を定着させる定着装置であって、
被加熱外面を含む第1のロールと、
マーキング材料を付着させる連続ウェブに対する定着ニップを前記第1のロールの前記被加熱外面と共に形成する第2のロールと、
定着ニップに進入する前にウェブに当接させるよう配置した第3のロールと、
前記第3のロールに接続した調整機構で、前記定着ニップから上流の前記第1のロールの前記被加熱外面に当接するウェブの巻き付け長さを可変するよう前記第3のロールを移動させ、前記定着ニップに進入する前に前記被加熱外面に当接させることで前記ウェブとマーキング材料の予熱を制御するよう作動可能とした調整機構とを備え、
前記第1のロールと前記第2のロールは、前記予熱されたマーキング材料への接触により前記予熱されたウェブとマーキング材料に対し前記定着ニップにおいて熱と圧力を印加し、前記マーキング材料を前記予熱されたウェブに定着させるよう作動可能とし
前記調整機構は、さらに、前記ウェブが前記第1のロールの前記被加熱外面から離間する分離点が固定されるように、前記第3のロールを直線路に沿って並進させるように作動可能とし、前記ウェブが前記定着ニップから上流の第1のロールの外面から、(iii)前記定着ニップに向かっては前記ウェブ内の張力量を低減させ、あるいは(iv)前記定着ニップから離れては前記ウェブ内の張力量を増大させる、
定着装置。
【請求項2】
前記第1のロールの前記被加熱外面は陽極処理アルミニウムを備える、請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第2のロールは高分子化合物を含む外面を備える、請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記調整機構は、前記第3のロールを実質円形路に沿って、(i)第1の方向に回動させ、前記第1のロールの外面に当接する前記ウェブの巻き付け長さを増大させ、前記ウェブとマーキング材料の予熱を増大させ、あるいは、前記第3のロールを実質円形路に沿って、(ii)前記第1の方向とは反対の第2の方向に回動させ、前記巻き付け長さを低減し、前記ウェブとマーキング材料の予熱を低減するよう作動可能とした、請求項1に記載の定着装置。
【請求項5】
記第1のロールは、前記被加熱外面のための少なくとも一つの内部加熱要素を含み、
前記第1のロールは、陽極処理されたアルミニウム外面を備え、
前記第2のロールは、高分子化合物を含む外面を備える、
請求項4に記載の定着装置。
【請求項6】
ウェブにマーキング材料を定着させる方法であって、
連続ウェブにマーキング材料を塗布する工程と、
第1のロールの被加熱外面と第2のロールとにより形成される定着ニップに対しウェブを給送する工程と、
第3のロールに接続した調整機構を用い、前記定着ニップから上流に前記ウェブがその上を同伴する前記第3のロールを位置決めする工程と、
前記調整機構を用いて前記第3のロールを移動させて前記定着ニップから上流の前記第1のロールの前記被加熱外面に当接する前記ウェブの巻き付け長さを可変し、前記定着ニップに進入する前の前記第1のロールの前記被加熱外面との当接による前記ウェブとマーキング材料の予熱を制御する工程と、
前記調整機構を用いて、前記ウェブが前記第1のロールの前記被加熱外面から離間する分離点が固定されるように、前記第3のロールを直線路に沿って並進させて、前記ウェブ内の張力量を制御する工程と、
前記第1のロールと前記第2のロールとを用い、前記定着ニップにおいて前記予熱されたウェブと前記予熱されたマーキング材料とに対し熱と圧力を印加し、該マーキング材料を該予熱されたウェブに定着させる工程であって、前記マーキング材料は、前記定着ニップに進入する前の前記ウェブ上に配置されている間は予熱される工程とを含む、方法。
【請求項7】
前記ウェブとマーキング材料は、前記定着ニップに進入する前に前記第1のロールの外面に当接させることで被選択温度まで予熱し、前記ウェブ上の前記マーキング材料の光沢を制御する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ウェブとマーキング材料は、定着ニップに進入する前に前記ウェブの種別に基づき前記第1のロールの外面に当接させることで被選択温度まで予熱する、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
印刷工程では、マーキング材料を下地上に塗布して画像を形成する。画像は熱と加圧の組み合わせにさらされ、マーキング材料を下地に定着させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
異種ウェブに対しマーキング材料の可調整当接予熱を提供することのできるウェブに対し、マーキング材料を定着させる定着装置や印刷装置や定着方法を提供することが望ましい筈である。
【課題を解決するための手段】
【0003】
ウェブにマーキング材料を定着させる定着装置と印刷装置とウェブにマーキング材料を定着させる方法とが、提供される。定着装置の例示実施形態は、被加熱外面を含む第1のロールと、マーキング材料を付着させる連続ウェブを受容する第1のロールの外面と共に定着ニップを形成する第2のロールと、定着ニップに進入する前にウェブに当接させるよう配置した第3のロールと、第3のロールに接続した調整機構で、定着ニップから上流の前記第1のロールの外面に当接するウェブの巻き付け長さを可変するよう第3のロールを移動させ、定着ニップに進入する前に外面に当接させることでウェブとマーキング材料の予熱を制御するよう作動可能な調整機構とを備える。第1のロールと第2のロールは、予熱されたウェブとマーキング材料に対し定着ニップにおいて熱と圧力を印加し、ウェブにマーキング材料を定着させるよう作動可能である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】ウェブとマーキング材料とを予熱する定着装置の例示実施形態を含む印刷装置を示す。
図2】ニップ手前側張力付勢ロールの移動によるウェブ内張力の調整を示す図1に示した定着装置の一部を示す。
図3】ニップ手前側張力付勢ロールの移動による定着ロールに対するウェブのニップ手前側接触角の調整を示す図2に示した定着装置の一部を示す。
図4図4Aは、異なる定着ロール用温度の定着ロール上のウェブの巻き付け角との相関関係で決まるモデル化されたウェブ予熱温度を示すプロットを示す。図4Bは、図4Aに示したモデル化に用いた定着装置の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
開示された実施形態は、ウェブにマーキング材料を定着させる定着装置を含む。定着装置の例示実施形態は、被加熱外面を含む第1のロールと、マーキング材料を付着させた連続ウェブを受容する第1のロールの外面と共に定着ニップを形成する第2のロールと、定着ニップに進入するに先立ちウェブに当接させるよう配置した第3のロールと、第3のロールに接続した調整機構とを含む。調整機構は、定着ニップから上流の第1のロールの外面に当接するウェブの巻き付け長さを可変するよう第3のロールを移動させ、定着ニップに進入する前に外面に当接させることでウェブとマーキング材料の予熱を制御するよう作動可能である。第1のロールと第2のロールは、予熱されたウェブとマーキング材料に対し定着ニップにおいて熱と圧力を印加し、ウェブにマーキング材料を定着させるよう作動可能である。
【0006】
開示された実施形態はさらに、印刷装置を含む。印刷装置の例示実施形態は、連続ウェブにマーキング材料を塗布するマーキング装置と、マーキング装置の下流にあってウェブにマーキング材料を定着する定着装置とを備える。定着装置は、被加熱外面を含む第1のロールと、ウェブを受容する第1のロールの外面と共に定着ニップを形成する第2のロールと、定着ニップに進入する前にウェブに当接するよう配置した第3のロールと、第3のロールに接続した調整機構とを備える。調整機構は、定着ニップから上流の第1のロールの外面に当接するウェブの巻き付け長さを可変するよう第3のロールを移動させ、定着ニップに進入する前に外面に当接させることでウェブとマーキング材料の予熱を制御するよう作動可能である。第1のロールと第2のロールは、予熱されたウェブとマーキング材料に対し定着ニップにおいて熱と圧力を印加し、ウェブにマーキング材料を定着させるよう作動可能である。
【0007】
開示された実施形態はさらに、ウェブにマーキング材料を定着させる方法を含む。方法の例示実施形態は、連続ウェブにマーキング材料を塗布する工程と、第1のロールの被加熱外面と第2のロールとにより形成される定着ニップに対しウェブを給送する工程と、第3のロールに接続した調整機構を用い、定着ニップから上流にウェブがその上を同伴する第3のロールを位置決めする工程で、調整機構が第3のロールを移動させて定着ニップから上流の第1のロールの外面に当接するウェブの巻き付け長さを可変し、定着ニップに進入する前に第1のロールの外面との当接によるウェブとマーキング材料の予熱を制御する工程と、第1のロールと第2のロールとを用い、予熱されたウェブとマーキング材料に対し定着ニップにおいて熱と圧力を印加し、予熱されたウェブにマーキング材料を定着させる工程とを含む。
【0008】
印刷工程は、乾燥トナー材料を用いて用紙等の下地に画像を形成することができる。この種の印刷工程では、トナー画像は定着ニップにおいて熱エネルギーと圧力とを画像に印加することで下地に対し定着させることができる。閃光灯等の輻射加熱装置や輻射式加熱器または高温空気送風装置等の対流加熱装置を含む非接触加熱装置を用い、定着ニップに進入する前に下地を加熱することができる。閃光加熱システムは頻繁な置き換えと経費のかかる濾過システムとを必要とすることがあり、輻射加熱は被覆下地に対し障害を引き起こすことがあり、露出ランプは火災の危険を課すことがある点が、指摘されてきた。対流加熱システムは、下地に対するより低い伝熱効率の欠点を有することがある。
【0009】
これらおよび他の考察に照らし、ウェブにマーキング材料を定着させる定着装置が提供される。定着装置は、印加する熱エネルギーと圧力の使用によりニップにおいてウェブに対しマーキング材料を最終的に定着させる前に、ウェブとマーキング材料の当接予熱を利用する。定着ニップに進入する前に予熱によりマーキング材料/下地温度を増大させることで、定着ニップはそこで低温と低圧および/またはより短い滞留時間とを含むより低水準の処理条件で作動させることができる。
【0010】
図1は、連続ウェブ上に画像を形成する印刷装置100の例示実施形態を示す。本願明細書に使用する「印刷装置」には、印刷機や複写機やファクシミリ機や多機能機等もしくはこの種装置の一部等の下地上に画像を形成する様々な種類の装置を包含させることができる。実施形態では、印刷装置100は静電写真印刷工程において用いることができる。印刷装置100は、ウェブ給送装置120とマーキング装置140と定着装置160とを含んでいる。ウェブ102のロールは、供給スプール104上に配設される。ウェブ102は供給スプール104からウェブ給送装置120へ給送され、マーキング装置140へ前進し、マーキング材料をウェブ102の表面106に付着させ、続いて定着装置160へ前進し、表面106にマーキング材料を定着させる。定着装置160を通って前進した後、印刷されたウェブ102は収集スプール108上に収集される。
【0011】
ウェブ給送装置120は、ウェブ102内に制御された逆張力、すなわち制動動作を生み出す逆張力付勢ロール122,124を備える。整列配置ロール126(ロールは1個だけ図示)が、ウェブ102を一側へ軸方向付勢している。駆動ロール130は、ウェブ102内の所望の張力量と印刷装置100を通るウェブ102の所望速度とを維持するのに用いられる。空転ロール128が、ウェブ102を支持している。
【0012】
図示のマーキング装置140は、ウェブ102の処理方向に沿って直列配置したマーキングステーション142,144,146,148を含んでいる。マーキングステーション142,144,146,148には、それぞれ例えばブラックとシアンとマゼンタとイエローのマーキング材料供給源を含めることができる。ウェブ102の表面104にマーキング材料を塗布し、カラー画像150を形成することができる。マーキング装置140は、単色画像を生成することもできる。マーキング材料はトナーを含み、また担体と1以上の添加剤を含み、所望特性のマーキング材料を提供することができる。
【0013】
定着装置160は、ウェブ102を支持する空転ロール162を含んでいる。定着ロール164と加圧ロール166は、印刷期間中にそこを通ってウェブ102が前進する定着ニップ169を形成している。通常、定着ロール164は駆動ロールである。定着ロール164と加圧ロール166は、ニップにおいてウェブ102に対し十分な熱エネルギーと圧力とを印加し、ウェブ102に対し画像150を定着あるいは融着させる。
【0014】
ニップ手前側張力付勢ロール168が、定着ロール164と加圧ロール166のすぐ上流に配置してある。ニップ手前側張力付勢ロール168は通常、筒状構成を有しており、硬質ロールとすることができる。ニップ手前側張力付勢ロール168には、調整機構170が接続してある。この調整機構170は、ニップ手前側張力付勢ロール168を定着ニップ169に対し調整可能に移動させるよう作動可能である。例えば、ニップ手前側張力付勢ロール168はアーム等に装着することができ、調整機構170にはアームに接続された機構を含めることができる。調整機構170は、その方向を制御するコントローラ(図示せず)に接続することができる。
【0015】
定着装置160はさらに、ニップ奥方側張力付勢ロール172を含む。図示の如く、ニップ奥方側張力付勢ロール172は172’に示す如くウェブ102内の張力量を可変するよう調整可能に可動としてある。定着装置160内には、さらに副駆動ロール174が配設してある。副駆動ロール174の回動速度は、ニップ手前側張力付勢ロール168の位置に依存する。
【0016】
図2図3は、調整機構170(図示せず)を用いたニップ手前側張力付勢ロール168の位置の例示可調整範囲を示す。図2に示す如く、ニップ手前側張力付勢ロール168は定着ロール164と加圧ロール166とにより形成される定着装置169に対し近接離間のいずれもできるよう矢印Tで示す如く選択的に並進させることができる。ニップ手前側張力付勢ロール168は、定着ニップ169に対し両方向に直線的に移動させ、ウェブ102内の張力量を可変することができる。ニップ手前側張力付勢ロール168を定着ニップ169に向け168−T2で示す位置まで移動させると、ウェブ102は102−T2で示す位置まで移動する。このニップ手前側張力付勢ロール168の並進移動は、ウェブ102内の張力を低減し、すなわちウェブ102の弛みを増大させる。ニップ手前側張力付勢ロール168を定着ニップ169から168−T3で示す位置まで移動離間させると、ウェブ102は102−T3で示す位置まで移動する。このニップ手前側張力付勢ロール168の並進移動はウェブ102内の張力を増大させ、すなわちウェブ102の弛みを低減する。ニップ手前側張力付勢ロール168は通常、例えばほぼ50mmからほぼ250mmまでの距離に亙りを移動させ、ウェブ102内の張力を調整することができる。
【0017】
定着装置160内のロールを、このロールがウェブ102の巻き付け位置の直前(すなわち、ニップ手前側張力付勢ロール168)で張力付勢ロールとして機能するよう構成することで、連続ウェブ102に対するマーキング材料の所望の定着をもたらすのに有効なロールの間隔や数を定着装置160内で最小化することができる。
【0018】
図2に示す如く、ウェブ102はニップ手前側張力付勢ロール168の3箇所の図示した位置のそれぞれで巻き付け長さL1に亙り定着ロール164の外面165に当接する。巻き付け長さL1は、定着ニップ169の入口端に始まり、ウェブ102が外面165から離間する箇所の分離点SP1まで外面165周りを時計回りに移動するウェブ102が当接する外面165周りの円弧の長さに対応する。ウェブ102とマーキング材料150は、定着ニップ169で定着ロール164と加圧ロール166が印加する圧力とは対照的に、巻き付け長さL1に沿ってより低圧にさらされる。定着ロール164上のウェブ102の巻き付け長さは、印刷装置100に使用するウェブ102の種別に相関させて設定することができる。例えば、用紙ウェブ102では、巻き付け長さは、用紙が被覆紙であろうと非被覆紙であろうと、また包装用やラベル用であろうと、軽量級から重量級までの範囲に亙ることのある用紙重量に基づき、異なる長さに設定することができる。ウェブ102の巻き付け長さL1は、ニップ手前側張力付勢ロール168を位置168−T2まで移動させて張力を低減し、あるいは位置168−T3まで移動させて張力を増大させるときに、実質一定に保たれる。
【0019】
図3に示す如く、定着ロール164の外面165に当接するウェブ102の巻き付け長さを変えられるよう、ニップ手前側張力付勢ロール168は矢印Rで示す如く調整機構(図示せず)により回動可能としてある。ニップ手前側張力付勢ロール168の回動は、例えば実質円形路に沿ったものとすることができる。図示の如く、ニップ手前側張力付勢ロール168を168−L2で示す位置まで反時計回りに回動させ、102−L2で示すウェブの巻き付け長さをL1からL2に減少させることができ、そのことでウェブ102の分離点はSP1からSP2へ反時計回りに移動する。別の選択肢として、ニップ手前側張力付勢ロール168を168−L3で示す位置へ時計回りに回動させ、102−L3で示すウェブの巻き付け長さをL1からL3へ増大させることができ、そのことでウェブ102の分離点はSP1からSP3へ時計回りに移動する。
【0020】
ウェブ102の巻き付け長さを設定すると、ニップ手前側張力付勢ロール168を位置決めしウェブ102内の張力を所望レベルに調整することができる。ニップ手前側張力付勢ロール168を動かすことによるウェブ102内張力の調整は、ウェブ102の巻き付けが形成する低圧ニップ、あるいは定着ロール164と加圧ロール166とが形成する比較的高圧の定着ニップ169のいずれにおいても、定着ロール164からウェブ102とマーキング材料160への総エネルギー転送に実質影響を及ぼさない。
【0021】
定着ロール164は、内部加熱および/または外部加熱することができる。例えば、定着ロール164には、外面165を所望温度に加熱する少なくとも一軸方向に延びるランプ等の少なくとも1つの内部加熱素子167を含めることができる。実施形態では、外面165は金属材料やセラミック材料等の比較的硬質の材料で構成することができる。例えば、定着ロール164はアルミニウム製コアで構成することができ、外面165は陽極処理アルミニウム(アルマイト)で構成することができる。ウェブ102は、ウェブ102の巻き付け長さL1が画成する低圧ニップ内と定着ロール164と加圧ロール166とにより形成されるより高圧の定着ニップ169内とに同時に存在するが、硬質の外面165はこれら2つのニップ間のウェブ102の相対的な動きを最小化し、これらニップ間の歪を実質取り除くのに有効である。その結果、2つのニップ内に存在するウェブの相対的な動きが引き起こす伸長や皺寄りおよび/または画像の汚れを含むウェブの障害を、最小化することができる。加えて、外面165からのウェブ102の剥離は、ウェブ102内の張力によって定着ニップ169の出口端から能動的に引っ張られるウェブ102により改善される。
【0022】
加圧ロール166は、例えば変形しないコアとこのコアを被覆して外面173を形成する変形可能な少なくとも一層の高分子材料で構成することができる。例えば、可変形材料はシリコンゴム等のエラストマー性材料とすることができる。他の実施形態では、加圧ロール166はコアを被覆するポリウレタン等のより硬質でより変形しにくい高分子材料で構成することができる。より硬質の高分子材料には、例えばほぼ1mmからほぼ7mmの全肉厚を持たせることができる。より硬質の高分子材料を、単一層として、あるいは2以上の層として塗布することができる。多層構成の異なる層には、互いに異なる組成と特性、例えば異なる弾性係数を持たせることができる。
【0023】
ウェブ102の連続給送を用いる印刷装置100にあっては、通常走行するウェブ102の種別が印刷期間中に不意に変更されることはない。定着ロール164は、印刷装置100内で使用することのできる異なる種別のウェブ102に対しほぼ同一の速度で定着ロール164を走行させることが望ましい。高速の印刷速度は、全ての種別のウェブ102に対し印刷装置100内で用いることができる。定着ロール164上のウェブ102の巻き付け長さは、ウェブ102の選択された巻き付け長さをもたらす選択された位置にニップ手前側張力付勢ロール168を配置することで各異なる種別のウェブ102ごとに調整することができる。例えば、重量のあるウェブ102については、巻き付け長さを巻き付け長さL3(図3)まで増大させることができ、ニップ手前側張力付勢ロール168はウェブ102内に所望の張力を供給するよう配置することができる。軽量のウェブ102については、巻き付け長さは巻き付け長さL2(図3)まで低減することができ、ニップ手前側張力付勢ロール168はウェブ102内に所望の張力を供給するよう配置することができる。
【0024】
定着ロール164上のウェブ102の巻き付け長さを増大させることで、定着ニップ169へ前進する前にウェブ102が定着ロール164の外面165に当接する時間量(滞留時間)は増大する。滞留時間を増大させることで、ウェブ102が定着ニップ169へ前進する前に定着ロール164の被加熱外面165からウェブ102とマーキング材料150へ伝わる熱エネルギー量は増大する。定着ニップ169に進入する前にウェブ102とマーキング材料を予熱することで、予熱を用いない場合に比べ、定着ニップ169をより低い温度と圧力および/または小さな滞留時間(すなわち、より高速の処理速度)で動作させることができる。ウェブ102に対するマーキング材料150のある程度の量の定着あるいは融着は、到達温度に応じて予熱期間中に行なうことができる。マーキング材料の定着すなわち耐久性は、ウェブ102が定着ニップ169に通過し終えた後で達成される。
【0025】
実施形態では、定着ロール164の外面165上のウェブ102の巻き付け長さを可変し、マーキング材料が到達する温度を制御することで、画像の光沢を制御することができる。一般に、巻き付け長さを増大させることで光沢は増す。
【0026】
ウェブ102は、これを定着ロール164へ前進させる前に能動的に加熱することもでき、あるいはそうしないこともできる。ウェブ102をこのように能動的に加熱しない場合、ウェブ102とマーキング材料150は通常、定着ロール164への到達時にほぼ印刷装置100の周囲の空腔温度となる。定着ロール164の外面165は通常、異種のウェブ102上にマーキング材料を定着させるのにほぼ50℃からほぼ200℃の温度に加熱することができる。定着ニップ169に印加される圧力は、通常ほぼ50psiからほぼ750psiとすることができる。外面165のこれらの温度では、ウェブ102とマーキング材料150とが外面165との当接により予熱される温度は、定着ロール164の温度とウェブ102の巻き付け長さとを制御することで、ほぼ100℃、すなわち標準状態における水の沸点未満のように、ほぼ125℃未満に保つことができる。マーキング材料150を100℃超まで加熱しない場合、媒体に対する損害(発泡)および/または画像に対する損害(例えば、吹消えや氷柱)を含む印刷媒体に含まれる水の蒸発が引き起こす問題を、定着装置160内で回避することができる。
【0027】
図4Aは、定着ロールの外面温度60℃、80℃、100℃、120℃について被加熱ロール上のウェブの巻き付け角の相関関係で決まるモデル化されたウェブ予熱温度を示すプロットを図示したものである。図4Bは、ニップすなわちNを形成する定着ロールすなわちFRと加圧ロールすなわちPRとを含むモデル化に用いた定着装置の構成を示す。ウェブは、巻き付け角すなわちαに亙り定着ロールFRに当接する。図示の如く、巻き付け角αは、ニップNの入口端に始まり、外面に沿って外面からウェブWの分離点まで時計回りに移動する定着ロールFRの外面にウェブWが当接する円弧の角度である。このモデルでは、下記の値を用いた。すなわち、定着ロール直径:162mm、定着ロール速度:1m/s、表面間での伝熱抵抗:0.0001mK/W、加圧ロール温度:50℃、ウェブ種別:90g/m非被覆紙である。
【0028】
図4Aに示す如く、所与の定着ロール温度では、ウェブの巻き付け角を増大させることでウェブの予熱温度は増大する。巻き付け角の増大により、より低い定着ロール温度を用い、所望のウェブ予熱温度を達成することができる。例えば、80℃のウェブ予熱温度は、120℃のより高い定着温度やほぼ3°のより小さな巻き付け角ではなく、100℃の定着ロール温度とほぼ6°の巻き付け角により達成することができる。
【0029】
図4Aに示す如く、所与の定着ロールと加圧ロールとウェブ種別とマーキング材料については、異なる定着ロール温度に関するウェブ予熱温度対巻き付け角(あるいは巻き付け長さ)を示すプロットを、モデル化によるかあるいは実験を通ずるかのいずれがで生成し、ニップ手前側張力付勢ロールの所定のあるいは制御された配置を可能にし、所望の巻き付け長さを提供することができる。
【0030】
定着装置160では、定着ニップ169にて印加される比較的低温/高圧の使用と組み合わせたウェブ102の当接予熱の使用が、トナーを閾値温度を上回る温度まで加熱し、続いて低融点を有するトナーを再加熱して変更(低下)する融点を有するものとして特徴付けられる低融点や超低融点のトナー材料の使用を促すことができる。これらの特性を有する例示超低融点トナーは、結晶質ポリエステル材料等の結晶質高分子材料や非晶質ポリエステル材料等の非晶質高分子材料で構成され、ただし非晶質材料は結晶質材料の融点(Tm)とは別個のガラス転移温度(Tg)を有する。これらのトナーにあっては、結晶質高分子材料がトナーに対し低融点を分与する。トナーの加熱により、結晶質材料を非晶質材料に可塑化させ、非晶質材料のTgを抑制し、結晶質材料のTmは実質排除される。定着装置に使用することのできる代替可能な融点特性を有する例示トナーは、米国特許第7,402,371号と第7,494,757号と第7,547,499号に開示されており、そのそれぞれは参照によりその全体を本願明細書に組み込むものとする。
【0031】
この種の温度可変溶融特性を有するトナーを定着装置160内で使用し、定着工程におけるウェブ102とマーキング材料の伝導性予熱の有効性をさらに向上させることができる。これらのトナーは、定着ニップ169においてトナーを定着させる前にその融点の低減を経ることができる。非晶質高分子材料は、ウェブ102とマーキング材料は、定着ロール164を用いてウェブ当接域にて予熱することでトナーを閾値温度を上回る温度に加熱して可塑化でき、そのことでトナーの融点は下がる。ウェブ102が定着ニップ169へ前進するのに合わせ、被加熱定着ロール164を用いてウェブ102とトナーとに追加の熱エネルギーが印加される。この予熱によりトナー融点を低下させることで、温度と圧力および/または滞留時間の処理条件を定着ニップ169内で低減させることができる。
図1
図2
図3
図4