(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717587
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】高周波モジュール
(51)【国際特許分類】
H04B 1/40 20150101AFI20150423BHJP
【FI】
H04B1/40
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-179179(P2011-179179)
(22)【出願日】2011年8月18日
(65)【公開番号】特開2013-42432(P2013-42432A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】501398606
【氏名又は名称】富士通コンポーネント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】梯 達也
【審査官】
佐藤 敬介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−109189(JP,A)
【文献】
特開2005−117000(JP,A)
【文献】
特開2003−046357(JP,A)
【文献】
特開2001−308655(JP,A)
【文献】
特開2008−205346(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0022653(US,A1)
【文献】
特開2007−251508(JP,A)
【文献】
特開2011−013877(JP,A)
【文献】
特開2007−180086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナに接続されるアンテナ端子と、
前記アンテナ端子に接続されるフィルタ回路と、
前記フィルタ回路に接続されるマッチング回路と、
所定の電圧を出力するレギュレータ部と、
前記アンテナ端子と前記フィルタ回路とを接続するノードに一方が接続され、前記レギュレータ部の出力に他方が接続されるアイソレーション部と、
を有し、
前記レギュレータ部は、ESD保護機能を有するものであって、
前記アイソレーション部はインダクタまたは抵抗を有するものであることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項2】
前記アンテナ端子と前記フィルタ回路との間には、他のマッチング回路が設けられており、前記アイソレーション部の一方は、前記他のマッチング回路と前記フィルタ回路とを接続するノードに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項3】
前記アンテナ端子と前記フィルタ回路との間には、他のマッチング回路が設けられており、前記アイソレーション部の一方は、前記アンテナ端子と前記他のマッチング回路とを接続するノードに接続されていることを特徴とする請求項1に記載の高周波モジュール。
【請求項4】
アンテナに接続されるアンテナ端子と、
前記アンテナ端子に接続されるフィルタ回路と、
前記フィルタ回路に接続されるマッチング回路と、
所定の電圧を出力するレギュレータ部と、
前記アンテナ端子、前記フィルタ回路、前記レギュレータ部の各々の出力と接続されるアイソレーション部と、
を有し、
前記レギュレータ部は、ESD保護機能を有するものであって、
前記アイソレーション部は、前記アンテナ端子と前記レギュレータ部の出力との間において直列に接続されるインダクタまたは抵抗と、キャパシタとを有しており、
前記アイソレーション部は、前記アンテナ端子と接続される側に前記キャパシタが設けられており、前記レギュレータ部の出力と接続される側に、前記インダクタまたは抵抗が設けられており、前記フィルタ回路は、前記インダクタまたは抵抗と、前記キャパシタとの間のノードに接続されるものであることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項5】
アンテナに接続されるアンテナ端子と、
前記アンテナ端子に接続されるフィルタ回路と、
前記フィルタ回路に接続されるマッチング回路と、
所定の電圧を出力するレギュレータ部と、
前記アンテナ端子、前記フィルタ回路、前記レギュレータ部の各々の出力と接続されるアイソレーション部と、
を有し、
前記レギュレータ部は、ESD保護機能を有するものであって、
前記アイソレーション部は、インダクタまたは抵抗と、第1のキャパシタと、第2のキャパシタとを有しており、
前記アイソレーション部は、前記アンテナ端子と接続される側に前記第1のキャパシタが設けられており、前記レギュレータ部の出力と接続される側に、前記インダクタまたは抵抗が設けられており、前記フィルタ回路と接続される側に、前記第2のキャパシタが設けられていることを特徴とする高周波モジュール。
【請求項6】
前記アンテナ端子と前記アイソレーション部との間には、他のマッチング回路が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の高周波モジュール。
【請求項7】
前記アイソレーション部と前記フィルタ回路との間には、他のマッチング回路が設けられていることを特徴とする請求項4または5に記載の高周波モジュール。
【請求項8】
前記レギュレータ部は、定電圧素子を含むものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の高周波モジュール。
【請求項9】
前記レギュレータ部は、ツェナーダイオードを含むものであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の高周波モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
静電気は電子機器に様々な悪影響を与えることが知られている。特に、携帯電話等の移動体通信機は静電気の影響を受けやすく、例えば、数十kVの静電気がアンテナを介して移動体通信機の内部回路に入り込むと、内部回路が破壊され所望の特性が得られなくなる場合がある。
【0003】
このため、特許文献1では、送信回路からアンテナに繋がる経路と接地との間に、λ/4のマイクロストリップラインと可変コンデンサを接続した構成のものが開示されている。マイクロストリップラインと可変コンデンサの並列回路は直流に対してはインピーダンスが略0なので、静電気の直流成分は並列回路を通って接地側に流れる。
【0004】
また、特許文献2には、インダクタとキャパシタからなるハイパスフィルタをアンテナ接続端子に接続した構成の静電気保護回路が開示されている。このハイパスフィルタは、後段の回路が処理する信号の周波数よりも低い周波数の交流成分及び直流成分の通過を阻止する。これにより、アンテナを介し侵入した静電気を接地側へ流すことができる。
【0005】
一方、近年高周波モジュールは、フィルタ機能だけでなく、後段の信号処理回路やレギュレータ等の回路機能が取り込まれたものが増加しているが、高周波モジュールはアンテナ端子を有するため、高いESD(Electro Static Discharge)耐圧が求められている。このため、特許文献3には、アンテナ端子と後段の信号処理回路に接続された端子との間に、ハイパスフィルタ及び直列共振回路からなる静電気保護回路を有する回路モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−112850号公報
【特許文献2】特開2001−127663号公報
【特許文献3】特開2005−167639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されている静電気保護回路では、所定の遮断周波数において十分な減衰量が得られないため、十分な静電気保護電圧を得ることができず、また、電力損失も大きくなってしまう。
【0008】
また、特許文献3に記載されている静電気保護回路では、上記課題は、解消されるものの、部品点数が多くなり高コストなものとなってしまい、また、ESD耐圧もそれ程高くはない。
【0009】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、部品点数が少なく、ESD耐圧の高い高周波モジュールを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、アンテナに接続されるアンテナ端子と、前記アンテナ端子に接続されるフィルタ回路と、前記フィルタ回路に接続されるマッチング回路と、所定の電圧を出力するレギュレータ部と、前記アンテナ端子と前記フィルタ回路とを接続するノードに一方が接続され、前記レギュレータ部の出力に他方が接続されるアイソレーション部と、を有し、前記レギュレータ部は、ESD保護機能を有するものであって、前記アイソレーション部はインダクタまたは抵抗を有するものであることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記アンテナ端子と前記フィルタ回路との間には、他のマッチング回路が設けられており、前記アイソレーション部の一方は、前記他のマッチング回路と前記フィルタ回路とを接続するノードに接続されていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、前記アンテナ端子と前記フィルタ回路との間には、他のマッチング回路が設けられており、前記アイソレーション部の一方は、前記アンテナ端子と前記他のマッチング回路とを接続するノードに接続されていることを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、アンテナに接続されるアンテナ端子と、前記アンテナ端子に接続されるフィルタ回路と、前記フィルタ回路に接続されるマッチング回路と、所定の電圧を出力するレギュレータ部と、前記アンテナ端子、前記フィルタ回路、前記レギュレータ部の各々の出力と接続されるアイソレーション部と、を有し、前記レギュレータ部は、ESD保護機能を有するものであって、前記アイソレーション部は、前記アンテナ端子と前記レギュレータ部の出力との間において直列に接続されるインダクタまたは抵抗と、キャパシタとを有しており、前記アイソレーション部は、前記アンテナ端子と接続される側に前記キャパシタが設けられており、前記レギュレータ部の出力と接続される側に、前記インダクタまたは抵抗が設けられており、前記フィルタ回路は、前記インダクタまたは抵抗と、前記キャパシタとの間のノードに接続されるものであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、アンテナに接続されるアンテナ端子と、前記アンテナ端子に接続されるフィルタ回路と、前記フィルタ回路に接続されるマッチング回路と、所定の電圧を出力するレギュレータ部と、前記アンテナ端子、前記フィルタ回路、前記レギュレータ部の各々の出力と接続されるアイソレーション部と、を有し、前記レギュレータ部は、ESD保護機能を有するものであって、前記アイソレーション部は、インダクタまたは抵抗と、第1のキャパシタと、第2のキャパシタとを有しており、前記アイソレーション部は、前記アンテナ端子と接続される側に前記第1のキャパシタが設けられており、前記レギュレータ部の出力と接続される側に、前記インダクタまたは抵抗が設けられており、前記フィルタ回路と接続される側に、前記第2のキャパシタが設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記アンテナ端子と前記アイソレーション部との間には、他のマッチング回路が設けられていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、前記アイソレーション部と前記フィルタ回路との間には、他のマッチング回路が設けられていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、前記レギュレータ部は、定電圧素子を含むものであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、前記レギュレータ部は、ツェナーダイオードを含むものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、部品点数が少なく、ESD耐圧の高い高周波モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1の実施の形態における高周波モジュールの構造図
【
図2】第1の実施の形態における他の高周波モジュールの構造図(1)
【
図3】第1の実施の形態における他の高周波モジュールの構造図(2)
【
図4】第2の実施の形態における高周波モジュールの構造図
【
図5】第2の実施の形態における他の高周波モジュールの構造図(1)
【
図6】第2の実施の形態における他の高周波モジュールの構造図(2)
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明を実施するための形態について、以下に説明する。尚、同じ部材等については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0022】
〔第1の実施の形態〕
第1の実施の形態における高周波モジュールについて、
図1に基づき説明する。本実施の形態における高周波モジュール10は、プリント基板等の回路基板上に形成されており、アンテナ50と接続されるアンテナ端子11、アンテナ端子11に接続されるフィルタ回路部21、フィルタ回路部21に接続されるマッチング回路部22、マッチング回路22に接続されるLSI(Large Scale Integration)23、レギュレータ部30、アイソレーション部40とを有している。
【0023】
レギュレータ部30は、LDO(Low Drop Out)レギュレータにより形成されており、入力端子31より入力した電圧を所定の電圧に変換して出力端子32より出力するものであり、トランジスタ33、コンパレータ34、電圧を分圧するための抵抗35a及び35b、定電圧素子となるツェナーダイオード36を有している。レギュレータ30は、ツェナーダイオード36によるESD保護機能を有しているが、他のESD保護機能を有する素子等、例えば、他の定電圧素子等を用いてもよい。
【0024】
アイソレーション部40は、高周波的にアイソレーションを確保するためのものであり、本実施の形態では、アイソレーション部40は、インダクタにより形成されており、一方がアンテナ端子11とフィルタ回路部21とを接続するノードに接続されており、他方がレギュレータ部30の出力と接続されている。尚、インダクタとしては、コイル、フェライトビーズ等を用いることができる。また、アイソレーション部40は抵抗で形成することも可能であり、この場合、チップ抵抗等を用いることができる。
【0025】
本実施の形態では、アイソレーション部40の一方が、アンテナ端子11とフィルタ回路部21とを接続するノードに接続されているため、アンテナ端子11より静電気が侵入したとしても、アイソレーション部40及びレギュレータ部30を介して接地に流すことができる。即ち、本実施の形態では、レギュレータ部30では、ツェナーダイオード36を有しているが、ツェナー電圧を超える電圧がツェナーダイオード36にかかると接地に電流が流れ、ツェナー電圧が保たれる。このため、静電気は、ESD耐圧が高くないフィルタ回路部21に流れることはなく、静電気より保護することができる。よって、本実施の形態における高周波モジュールにおけるESD耐圧を高くすることができる。
【0026】
また、本実施の形態では、アイソレーション部40は、1つのインダクタ等により形成されているため、静電気保護のために部品点数を少なくすることができ、高いESD耐圧を有する高周波モジュールを低コストで得ることができる。
【0027】
尚、本実施の形態では、レギュレータ部30に定電圧素子であるツェナーダイオード36が設けられている場合について説明したが、レギュレータ部30がESD保護機能を有しているものであれば、同様の効果を得ることができる。
【0028】
更に、
図2に示すように、本実施の形態における高周波モジュール10aは、アンテナ端子11とフィルタ回路部21との間に、他のマッチング回路部26を設け、アイソレーション部40の一方が、他のマッチング回路26とフィルタ回路部21とを接続するノードに接続されるものであってもよい。また、
図3に示すように、本実施の形態における高周波モジュール10bは、アンテナ端子11とフィルタ回路部21との間に、他のマッチング回路部26を設け、アイソレーション部40の一方が、アンテナ端子11と他のマッチング回路26とを接続するノードに接続されるものであってもよい。
【0029】
〔第2の実施の形態〕
次に、第2の実施の形態における高周波モジュールについて、
図4に基づき説明する。本実施の形態における高周波モジュール110は、プリント基板等の回路基板上に形成されており、アンテナ50と接続されるアンテナ端子11、アイソレーション部140等を介しアンテナ端子11に接続されるフィルタ回路部21、フィルタ回路部21に接続されるマッチング回路部22、マッチング回路22に接続されるLSI23、レギュレータ部30、アイソレーション部140とを有している。
【0030】
アイソレーション部140は、高周波的にアイソレーションを確保するためのものであり、本実施の形態では、アイソレーション部140は、インダクタ141と第1のキャパシタ142と第2のキャパシタ143とを有している。アイソレーション部140における各々の端子は、アンテナ端子11、フィルタ回路部21、レギュレータ部30の出力と接続されている。具体的には、アイソレーション部140は、アンテナ端子11とフィルタ回路部21との間において、直列に接続される第1のキャパシタ142と第2のキャパシタ143とを有しており、インダクタ141の一方が、第1のキャパシタ142と第2のキャパシタ143との間に接続されており、他方がレギュレータ部30の出力と接続されている。
【0031】
このため、アンテナ端子11とレギュレータ部30の出力の間においては、第1のキャパシタ142とインダクタ141とが直列に接続されている。よって、アンテナ端子11より静電気が侵入したとしても、アイソレーション部140及びレギュレータ部30を介して接地に流すことができる。このため、アイソレーション部140は、第2のキャパシタ143を形成することなく、第1のキャパシタ142とインダクタ141により形成されたものであってもよい。
【0032】
尚、本実施の形態では、アイソレーション部140において、第1のキャパシタ142及び第2のキャパシタ143が設けられているため、フィルタ回路部21及びマッチング回路部22にDCバイアスが印加されることなく、静電気による電流を接地に流すことができる。例えば、表面弾性波素子等のDC重畳により特性変化が大きい素子を使用した場合、第1のキャパシタ142等によりDC成分を阻止することができる。
【0033】
また、アイソレーション部140におけるインダクタとしては、コイル、フェライトビーズ等を用いることができる。また、アイソレーション部140は、インダクタに代えて抵抗を用いることも可能であり、この場合、チップ抵抗等を用いることができる。
【0034】
また、
図5に示すように、本実施の形態における高周波モジュール110aは、アンテナ端子11とアイソレーション部140との間に、他のマッチング回路部26を設けた構造のものであってもよい。また、
図6に示すように、本実施の形態における高周波モジュール110bは、アイソレーション部140とフィルタ回路部21との間に、他のマッチング回路部26を設けた構造のものであってもよい。
【0035】
尚、上記以外の内容については、第1の実施の形態と同様である。
【0036】
以上、本発明の実施に係る形態について説明したが、上記内容は、発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0037】
10 高周波モジュール
11 アンテナ端子
21 フィルタ回路部
22 マッチング回路部
23 LSI
30 レギュレータ部
31 入力端子
32 出力端子
33 トランジスタ
34 コンパレータ
35a、35b 抵抗
36 ツェナーダイオード
40 アイソレーション部
50 アンテナ