(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0003】
本開示は、トナー組成物において使用するのに適した樹脂を調製するプロセス、これらのプロセスによって製造されるトナーを提供する。トナーは、乳化凝集のような化学プロセスによって製造されてもよく、アモルファス樹脂、結晶性樹脂および/または生物由来のラテックス樹脂(場合により、ワックスおよび着色剤を含む)が、凝集剤存在下で凝集し、その後、この凝集物を安定化させ、この凝集物を融着または融合し、トナーの大きさの粒子が得られる。
【0004】
不飽和ポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよく、また、トナー粒子を作成する際にこの樹脂を用いてもよい。ラテックス樹脂は、結晶性、アモルファス、またはこれらの混合物であってもよい。また、本開示のトナー粒子は、コア−シェル構造を有していてもよい。
【0005】
トナーを作成するために本明細書で使用されるアモルファス樹脂は、生物由来の樹脂であってもよい。生物由来の樹脂または生成物は、本明細書で使用される場合、いくつかの実施形態では、全体またはかなりの部分が、米国環境行政局によって規定されているような、生体産物または再生可能な国内の農業用材料(植物、動物または海洋材料を含む)、および/または森林材料で構成されていてもよい、商業的および/または産業的な生成物を含む(食品または餌以外)。
【0006】
本開示は、生物由来のポリエステルのOH末端が、生物由来の多官能の酸(いくつかの実施形態では、クエン酸(CA)および/または無水クエン酸)で修飾され、それによって、酸で官能基化されたポリエステル(時に、本明細書でいくつかの実施形態では、「酸性化された」樹脂と呼ばれる)を与え、この物質をEAトナー製造のために簡単に乳化させることができるような樹脂組成物を提供する。クエン酸は、発酵によって商業的に作られる多官能モノマーであり、したがって、無水トリメリット酸の継続使用可能な代替物である。クエン酸と、本明細書に記載される生物由来の樹脂との反応は、クエン酸に由来する3個のカルボン酸基の1個だけがポリエステルのOH鎖末端と反応するように制御されてもよい。したがって、CAの残った2個のカルボン酸基を利用し、ポリエステルエマルションを安定化し、最終的にはEAプロセスで反応してトナー粒子を作成することができる。樹脂とクエン酸との反応時間および反応温度に依存して、得られる生物由来のポリカルボン酸樹脂は、末端が官能基化されていてもよく、鎖が伸長されていてもよく、および/または架橋されていてもよい。また、得られたポリカルボン酸樹脂を、トナー粒子を作成するために利用される他の樹脂と反応させる際に、架橋剤および/または鎖伸長剤として用いてもよい。
【0007】
本開示にしたがって利用される樹脂としては、生物由来のアモルファス樹脂が挙げられる。本明細書で使用される場合、生物由来の樹脂は、石油化学物質の代わりに、植物由来の原料のような生体源(いくつかの実施形態では、植物油)から誘導される樹脂または樹脂配合物である。環境への影響が少ない再生可能なポリマーの場合、このポリマーの主な利点は、限りある石油化学資源への依存を減らすことであり、これらのポリマーが、大気から炭素を捕まえることである。生物由来の樹脂としては、いくつかの実施形態では、例えば、樹脂の少なくとも一部分が天然の生体材料(例えば、動物、植物、これらの組み合わせ)などから誘導された樹脂が挙げられる。
【0008】
生物由来の樹脂としては、天然トリグリセリド植物油(例えば、菜種油、大豆油、ヒマワリ油)またはフェノール系植物油(例えば、カシューナッツ殻液(CNSL)、これらの組み合わせ)などを挙げることができる。適切な生物由来のアモルファス樹脂としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリイソブチレート、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0009】
利用可能な生物由来のアモルファスポリマー樹脂の例としては、大豆油、D−イソソルビド、および/またはアミノ酸(例えば、L−チロシン、グルタミン酸)の脂肪族ダイマー酸またはジオールを含むモノマーから誘導されるポリエステルが挙げられる。
【0010】
また、利用可能な、適切な生物由来のポリマー樹脂としては、脂肪族ダイマー酸またはジオール、D−イソソルビド、ナフタレンジカルボキシレート、ジカルボン酸(例えば、アゼライン酸、シクロヘキサン二酸)およびこれらの組み合わせ、場合により、エチレングリコールを含むモノマーから誘導されるポリエステルが挙げられる。いくつかの実施形態では、適切な生物由来のポリマー樹脂は、D−イソソルビド、ジメチルナフタレン 2,6−ジカルボキシレート、シクロヘキサン−1,4−ジカルボン酸、ダイマー酸に基づくもの(例えば、Cognis Corp.製のEMPOL 1061(登録商標)、EMPOL 1062(登録商標)、EMPOL 1012(登録商標)、EMPOL 1016(登録商標)、または、Croda Ltd.製のPRIPOL 1009(登録商標)、PRIPOL 1012(登録商標)、PRIPOL 1013(登録商標))、ダイマージオールに基づくもの(例えば、Cognis Corp.製のSOVERMOL 908、またはCroda Ltd.製のPRIPOL 2033)、およびこれらの組み合わせであってもよい。
【0011】
いくつかの実施形態では、適切な生物由来のアモルファス樹脂は、ガラス転移温度が約40℃〜約90℃、または約45℃〜約75℃であってもよく、重量平均分子量(Mw)が約1,500〜約100,000、いくつかの実施形態では、約2,000〜約90,000であってもよく、数平均分子量(Mn)が約1,000〜約50,000、または約2,000〜約25,000であってもよく、分子量分布(Mw/Mn)が約1〜約20、または約2〜約15であってもよく、炭素/酸素比は、約2〜約6、いくつかの実施形態では、約3〜約5であってもよい。混合した樹脂は、溶融粘度が約10〜約100,000Pa*S、または約50〜約10,000Pa*Sであってもよい。
【0012】
生物由来のアモルファス樹脂は、例えば、トナー成分の約10〜約90重量%、または約20〜約80重量%の量で存在していてもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂は、粒径が、直径で約40nm〜約800nm、または約75nm〜約225nmであってもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂は、樹脂の末端にヒドロキシル基を有していてもよい。いくつかの実施形態では、これらのヒドロキシル基を酸基(カルボン酸基を含む)などに変換することが望ましい場合がある。
【0015】
いくつかの実施形態では、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂の末端にあるヒドロキシル基を、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と生物由来の多官能の酸と反応させることによってカルボン酸基に変換してもよい。このような酸としては、例えば、クエン酸、無水クエン酸、これらの組み合わせなどが挙げられる。生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と反応する酸の量は、生物由来のアモルファスポリエステル樹脂、ヒドロキシル基をカルボン酸基にする望ましい変換率などによって変わるだろう。
【0016】
生物由来のアモルファスポリエステル樹脂に加えられる酸の量は、樹脂の固形分の約0.1重量%〜約20重量%、約0.5重量%〜約10重量%、または約1重量%〜約7.5重量%であってもよい。クエン酸を生物由来のアモルファスポリエステル樹脂と反応させてもよい。クエン酸は、市販されており、比較的安価なため、ポリエステル樹脂を官能基化するための生物由来酸として用いてもよい。Aspergillus nigerの培養物にグルコースまたはショ糖を含有する培地(コーンスティープリカー、糖蜜および/または加水分解したトウモロコシデンプンのような供給源から得られるもの)を供給して発酵させることによって、クエン酸を製造してもよい。
【0017】
CAの構造は、2個の反応性一級酸基と、反応性が低い三級カルボン酸基と、立体的に嵩高い三級ヒドロキシル基とを示す。いくつかの実施形態では、CAのカルボン酸基のうち1個だけがポリエステル鎖末端と反応し、したがって、残りの2個のカルボン酸がそのまま残る場合がある。得られた酸性化した生物由来のアモルファス樹脂を用いてラテックスを作成し、これを用いてトナーを作成し、これらのさらなるカルボン酸は、EAプロセスの前に、ラテックス粒子の水中での化学的安定性および機械的安定性を高め、最終的なポリマー生成物に重合後の反応(特定的には、Al
2(SO
4)
3のようなカチオン種との凝集反応)のための部位を与えるために利用されるだろう。また、CAは、153℃の融点より高い温度で反応性無水物中間体を形成し、さらに、ポリエステル鎖に由来するOH基と簡単に反応してエステル結合を形成するだろう。また、CAは、非対称な環状酸無水物を形成してもよく、その後に、CAまたはポリマー鎖が分解することなく、約170℃で生物由来のポリマー樹脂のOH末端基をエステル化してもよい。
【0018】
クエン酸のような生物由来の酸を、生物由来のアモルファス樹脂の鎖末端を保護するか、または酸で官能基化するために用いる場合、反応温度は、約150℃〜約170℃、または約155℃〜約165℃であってもよく、その結果、イソソルビドまたは別のジオールは、生物由来の酸とのエステル化の際にまだ反応性のままである場合がある。この反応は、約30分〜約480分、または約60分〜約180分行われてもよい。
【0019】
鎖の伸長、架橋、または分岐が望ましい場合、1つの生物由来の多官能の酸(いくつかの実施形態では、CA)が、2個、または3個のポリエステルヒドロキシル末端基と確実に反応するように、系からもっと多くの水を蒸発させるべきである。
【0020】
いくつかの実施形態では、生物由来の酸と反応して得られた酸性化した生物由来のアモルファス樹脂は、酸価(時には、本明細書でいくつかの実施形態では、酸の数と呼ばれる)は、樹脂の約2mg KOH/g〜約200mg KOH/g、約5mg KOH/g〜約50mg KOH/g、または約10mg KOH/g〜約30mg KOH/gであってもよい。
【0021】
酸性化した生物由来のアモルファス樹脂の重量平均分子量(Mw)は、鎖の伸長度、架橋度、分岐度などによって、約2,000ダルトン〜約150,000ダルトン、約2,500ダルトン〜約100,000ダルトン、または約3,000ダルトン〜約50,000ダルトンであってもよい。
【0022】
生物由来のアモルファス樹脂と、クエン酸のような生物由来の多官能の酸とを反応させて酸性化した樹脂を製造することによって、樹脂のレオロジー特性を変えることが可能となる。これらの変えられたレオロジー特性は、酸性化した樹脂を含むトナーの性質(画像の融合、画像の光沢、画像書類の熱オフセット、画像書類の冷オフセット、これらの組み合わせなどを含む)に影響を与えることがある。コアに利用される樹脂は、生物由来のアモルファス樹脂を、場合により、結晶性樹脂と組み合わせて含み、溶融粘度は、約140℃で約10〜約1,000,000Pa*S、または約50〜約100,000Pa*Sであってもよい。
【0023】
生物由来の多官能の酸と、生物由来のアモルファス樹脂とのエステル化および/または架橋は、例えば、反応温度、反応時間、減圧の適用、生物由来の酸および他のモノマーを加える順序、配合物に加えられる生物由来の酸の量、およびこれらの組み合わせのような上述の種々の反応パラメータに影響されることがある。
【0024】
樹脂は、縮重合方法または乳化重合方法によって作られてもよい。
【0025】
上の生物由来の樹脂を単独で用いてもよく、トナーを作成するのに適した任意の他の樹脂とともに用いてもよい。
【0026】
樹脂は、アモルファス樹脂、結晶性樹脂、および/またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0027】
樹脂は、任意要素の触媒存在下、ジオールと二塩基酸との反応によって作られるポリエステル樹脂であってもよい。
【0028】
利用可能なアモルファス樹脂の例としては、アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、分岐したアルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、アルカリスルホン酸化ポリイミド樹脂、分岐したアルカリスルホン酸化ポリイミド樹脂が挙げられる。アルカリスルホン酸化ポリエステル樹脂、いくつかの実施形態では、例えば、コポリ(エチレン−テレフタレート)−コポリ(エチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロピレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(ジエチレン−テレフタレート)−コポリ(ジエチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロピレン−ジエチレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−ジエチレン−5−スルホイソフタレート)、コポリ(プロピレン−ブチレン−テレフタレート)−コポリ(プロピレン−ブチレン−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(プロポキシル化ビスフェノール−A−フマレート)−コポリ(プロポキシル化ビスフェノールA−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(エトキシル化ビスフェノール−A−フマレート)−コポリ(エトキシル化ビスフェノール−A−5−スルホ−イソフタレート)、コポリ(エトキシル化ビスフェノール−A−マレエート)−コポリ(エトキシル化ビスフェノール−A−5−スルホ−イソフタレート)の金属塩またはアルカリ塩が有用な場合があり、アルカリ金属は、例えば、ナトリウムイオン、リチウムイオンまたはカリウムイオンである。
【0029】
いくつかの実施形態では、樹脂は、架橋可能な樹脂であってもよい。架橋可能な樹脂は、C=C結合のような架橋可能な1個以上の基を含む樹脂である。樹脂は、例えば、開始剤を用いた遊離ラジカル重合によって架橋されてもよい。
【0030】
不飽和アモルファスポリエステル樹脂をラテックス樹脂として利用してもよい。例示的な不飽和アモルファスポリエステル樹脂としては、限定されないが、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−フマレート)、ポリ(1,2−プロピレン フマレート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−マレエート)、ポリ(1,2−プロピレン マレエート)、ポリ(プロポキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(ブチルオキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(コ−プロポキシル化ビスフェノール コ−エトキシル化ビスフェノール コ−イタコネート)、ポリ(1,2−プロピレンイタコネート)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
適切なアモルファス樹脂としては、アルコキシル化ビスフェノールAフマレート/テレフタレート系ポリエステル樹脂およびコポリエステル樹脂を挙げることができる。適切なポリエステル樹脂は、以下の式(I)を有するポリ(プロポキシル化ビスフェノールA コ−フマレート)樹脂のようなアモルファスポリエステルであってもよく、
【化1】
(I)
式中、mは、約5〜約1000であってもよい。
【0032】
ラテックス樹脂として利用可能な直鎖プロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂の例は、商品名SPARIIでResana S/A Industrias Quimicas(サンパウロ、ブラジル)から入手可能である。利用可能であり、市販されている他のプロポキシル化ビスフェノールAフマレート樹脂としては、花王株式会社(日本)製のGTUFおよびFPESL−2、Reichhold(リサーチトライアングルパーク、ノースカロライナ)製のEM181635などが挙げられる。
【0033】
結晶性樹脂は、例えば、トナー成分の約1〜約85重量%、約2〜約50重量%、または約5〜約15重量%の量で存在していてもよい。結晶性樹脂は、種々の融点を有していてもよく、例えば、融点が約30℃〜約120℃、約50℃〜約90℃、または約60℃〜約80℃であってもよい。結晶性樹脂は、数平均分子量(M
n)が約1,000〜約50,000、または約2,000〜約25,000であってもよく、重量平均分子量(M
w)が約2,000〜約100,000、または約3,000〜約80,000であってもよい。結晶性樹脂の分子量分布(M
w/M
n)は、例えば、約2〜約6、または約3〜約4であってもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、適切な結晶性樹脂としては、以下の式を有する、エチレングリコールと、ドデカン二酸およびフマル酸コモノマーの混合物とから作られる樹脂を挙げることができ、
【化2】
(II)
式中、bは、約5〜約2000であり、dは、約5〜約2000である。
【0035】
トナー組成物を作成するために、上述の樹脂を利用してもよい。1種類、2種類、またはそれ以上の樹脂を用いてもよい。2種類以上の樹脂を用いる場合、樹脂は、任意の適切な比率(例えば、重量比)、例えば、約1%(第1の樹脂)/99%(第2の樹脂)〜約99%(第1の樹脂)/1%(第2の樹脂)、または約4%(第1の樹脂)/96%(第2の樹脂)〜約96%(第1の樹脂)/4%(第2の樹脂)であってもよい。樹脂が、結晶性樹脂と、生物由来のアモルファス樹脂とを含む場合、これらの樹脂の重量比は、1%(結晶性樹脂):99%(生物由来のアモルファス樹脂)〜約10%(結晶性樹脂):90%(生物由来のアモルファス樹脂)であってもよい。
【0036】
上述の樹脂から作られた、得られたラテックスを、当業者の常識の範囲内にある任意の方法によってトナーを作成するために利用してもよい。ラテックスエマルションを、着色剤(場合により、分散物の状態の着色剤)と、他の添加物と接触させ、適切なプロセス(いくつかの実施形態では、乳化凝集、融着プロセス)によって、超低融点トナーを作ってもよい。
【0037】
トナー組成物を作成するために利用される着色剤、ワックス、他の添加剤は、界面活性剤を含む分散物の状態であってもよい。さらに、トナー粒子は、樹脂およびトナーの他の成分を、1つ以上の界面活性剤に入れ、エマルションを生成させ、トナー粒子が凝集し、融着し、場合により、これを洗浄し、乾燥させ、回収するような乳化凝集方法によって作られてもよい。
【0038】
1種類、2種類またはそれ以上の界面活性剤を用いてもよい。界面活性剤は、イオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤から選択されてもよい。アニオン系界面活性剤およびカチオン系界面活性剤は、用語「イオン系界面活性剤」に包含される。アニオン系界面活性剤および非イオン系界面活性剤を用いることにより、凝集剤存在下での凝集プロセスを安定化させることができ、用いなければ、凝集物が不安定化となるおそれがある。
【0039】
界面活性剤を固体として、または溶液として約5重量%〜約100重量%(純粋な界面活性剤)の濃度で、いくつかの実施形態では、約10重量%〜約95重量%の濃度で加えてもよい。
【0040】
着色剤は、顔料、染料、これらの組み合わせ、カーボンブラック、マグネタイト、ブラック、シアン、マゼンタ、イエロー、レッド、グリーン、ブルー、ブラウン、これらの組み合わせが、トナーに望ましい色を付与するのに十分な量で含まれていてもよい。
【0041】
場合により、トナー粒子を作るときに、ワックスを樹脂および着色剤と組み合わせてもよい。ワックスは、ワックス分散物の状態で与えられてもよく、1種類のワックスを含んでいても、2種類以上の異なるワックスの混合物を含んでいてもよい。
【0042】
ワックスが含まれる場合、ワックスは、トナー粒子の約1重量%〜約25重量%、または約5重量%〜約20重量%の量で存在していてもよい。
【0043】
トナー粒子は、当業者の常識の範囲内にある任意の方法によって調製されてもよい。いくつかの実施形態では、トナー組成物およびトナー粒子は、小さな粒径の樹脂粒子を適切なトナー粒子径になるまで凝集させ、次いで、最終的なトナー粒子の形状および形態が得られるまで融着する、凝集および融着プロセスによって調製されてもよい。
【0044】
トナー組成物は、乳化凝集プロセス(例えば、任意要素の着色剤と、任意要素のワックスと、任意要素の凝集剤と、任意の他の望ましい添加剤または必要な添加剤と、上述の樹脂を含むエマルションとの混合物を、場合により、上述のような界面活性剤中で凝集させ、次いでこの凝集混合物を融着させることを含むプロセス)によって調製されてもよい。混合物は、着色剤と、場合によりワックスまたは他の材料(場合により、界面活性剤を含む分散剤であってもよい)とをエマルションに加えることによって調製されてもよく、樹脂を含む2つ以上のエマルションの混合物であってもよい。例えば、トナーを調製するための乳化/凝集/融着プロセスは、本明細書で上に引用した特許および刊行物の開示内容で示されている。
【0045】
樹脂、着色剤、ワックス、凝集剤、添加剤などを含む、得られた混合物のpHは、酸によって約2〜約5に調節されてもよい。
【0047】
上述の混合物を調製した後、凝集剤を混合物に加えてもよい。任意の適切な凝集剤を利用し、トナーを作成してもよい。適切な凝集剤としては、例えば、二価カチオン材料または多価カチオン材料の水溶液が挙げられる。凝集剤は、例えば、ポリアルミニウムハロゲン化物、例えば、ポリアルミニウムクロリド(PAC)または対応する臭化物、フッ化物またはヨウ化物、ポリアルミニウムシリケート、例えば、ポリアルミニウムスルホシリケート(PASS)、塩化アルミニウム、亜硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、シュウ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸マグネシウム、亜硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸亜鉛、亜硝酸亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、臭化マグネシウム、塩化銅、硫酸銅を含む水溶性金属塩、およびこれらの組み合わせであってもよい。いくつかの実施形態では、樹脂のガラス転移温度(Tg)よりも低い温度で、凝集剤を混合物に加えてもよい。
【0048】
凝集剤を、トナーを作成するために利用される混合物に、混合物中の樹脂の約0.1〜約10重量%、約0.2〜約8重量%、または約0.5〜約5重量%の量で加えてもよい。この量は、凝集させるのに十分な量の薬剤を与えるはずである。
【0049】
粒子を、所定の望ましい粒径が得られるまで凝集させてもよい。
【0050】
凝集剤を加えた後に、粒子の成長および成形は、任意の適切な条件下で行われてもよい。別個の凝集段階および融着段階では、凝集プロセスは、剪断条件下、高温、例えば、約40℃〜約90℃、または約45℃〜約80℃で行われてもよく、この温度は、トナー粒子を作成するのに利用される樹脂のガラス転移温度よりも低い温度であってもよい。
【0051】
トナー粒子の望ましい最終粒径に到達したら、塩基を用いて混合物のpHを約3〜約10、または約5〜約9の値になるまで調節してもよい。pHを調節することによって、トナーの成長を凍結させてもよい。トナーの成長を止めるために利用される塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、これらの組み合わせなどといった、アルカリ金属水酸化物のような任意の適切な塩基を挙げることができる。
【0052】
凝集した後で融着する前に、樹脂コーティングを凝集粒子に塗布し、粒子の上にシェルを作成してもよい。上述の任意の樹脂をシェルとして利用してもよい。
【0053】
望ましい粒径になるまで凝集させ、任意要素の任意のシェルを塗布した後、次いで、粒子を望ましい最終形状になるまで融着させてもよく、融着は、例えば、混合物を、約45℃〜約100℃、または約55℃〜約99℃の温度(この温度は、トナー粒子を作成するために利用される樹脂のガラス転移温度であってもよく、ガラス転移温度より高い温度であってもよい)まで加熱し、および/または撹拌を遅くすることによって達成されてもよい。
【0054】
融着は、約0.01〜約9時間、または約0.1〜約4時間かけて行われてもよい。
【0055】
凝集および/または融着の後、混合物を、室温(例えば、約20℃〜約25℃)まで冷却してもよい。冷却した後、トナー粒子を、場合により、水で洗浄し、次いで乾燥させてもよい。
【0056】
トナー粒子は、所望な場合、または必要な場合、他の任意要素の添加剤も含んでいてもよい。
【0057】
また、流動補助添加剤を含む配合の後に、トナー粒子に外部添加剤粒子をブレンドしてもよく、この場合、添加剤は、トナー粒子表面に存在していてもよい。
【0058】
このトナー粒子を現像剤組成物に配合してもよい。
【0059】
本開示のトナーを、電子写真式画像形成方法で利用してもよい。
【0060】
1リットルのParr反応器に、メカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、約219.26グラムの2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル(NDC)、約215グラムのD−イソソルビド(IS)、約81.97グラムのジプロピレングリコール(DPG)を入れた後、約0.625グラムのブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標)4100、Arkemaから市販)を入れた。この反応器内を窒素で覆い、撹拌しながら温度をゆっくりと約210℃まで上げた。
【0061】
収集フラスコにメタノールを連続的に集めつつ、この反応混合物を窒素下で一晩維持した。約66mlのメタノールが蒸留された。この反応器を開放し、このプレポリマー混合物に、約49.94グラムの1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA)、約58.37グラムのダイマー二酸(PRIPOL(登録商標)1012としてCrodaから市販)を加えた。反応混合物の温度を約190℃まで下げ、窒素下で一晩撹拌を続けた後、温度を約205℃まで上げた。温度が205℃に到達したら、約40分間、低減圧状態にした(>10Torr)。減圧を高減圧状態(<0.1Torr)に変えた。この間に、グリコールが留去され(約40グラム)、低分子量ポリマーが生成した。約2日間の間に、この高減圧を約4時間の間隔を空けて、3回繰り返した。軟化点が約119℃に達したら、温度を約195℃まで下げ、内容物をポリテトラフルオロエチレン皿に取り出した。この樹脂の酸価は、約0.92mg KOH/gであった。
【0062】
1リットルのParr反応器に、メカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、約146.11グラムの比較例1の樹脂(酸価は約0.92mg KOH/g)、約1.47グラムのクエン酸を入れた。この反応器内を窒素で覆い、温度をゆっくりと約170℃まで上げ、約2.5時間保持した。ポリマー溶融物を最初の2.5時間の間に、1時間時点、1.75時間時点、2.5時間時点に3回サンプリングした(A、B、C)。このポリマー溶融物を低減圧下でさらに1時間処理し、このときにサンプルDを採取した(反応開始から合計で3.5時間)。最後に、減圧を高減圧状態(<0.1Torr)に変え、1時間(1個のサンプルEをこのときに採取し(反応開始から合計で4.5時間))経過した後、反応器から取り出し、冷却した。この酸性化した樹脂の酸価は、約4.61mg KOH/gであった。
【0063】
実施例1と同じプロセスにしたがい、但し、約100.86グラムの比較例1の樹脂(酸価は約0.92mg KOH/g)、約2.02グラムのクエン酸(約2重量%)を合わせ、酸性化した樹脂を作成した。このポリマー溶融物を最初の2.5時間の間に、1時間時点、1.75時間時点、2.5時間時点に3回サンプリングした(A、B、C)。このポリマー溶融物を低減圧下でさらに1時間処理し、このときにサンプルDを採取した(反応開始から合計で3.5時間)。最後に、減圧を高減圧状態に変え、2時間(2個のサンプルE、Fをこのときに採取し(反応開始から合計で5.5時間))経過した後、反応器から取り出し、冷却した。この酸性化した樹脂の酸価は、約6.77mg KOH/gであった。
【0064】
約10.09グラムの実施例1の酸性化した樹脂を、約100.9グラムのジクロロメタンが入った500ミリリットルビーカーに秤量した。混合物を、室温で約300rpmで撹拌し、樹脂をジクロロメタンに溶解させた。
【0065】
約0.07グラムの炭酸水素ナトリウム、約0.43グラムのDOWFAX(商標) 2A1(Dow Chemical Company製のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(固形分が約46.75wt%))を、約57.33グラムの脱イオン水が入った500ミリリットルのPyrexガラスビーカーに秤量した。IKA ULTRA TURRAX T18ホモジナイザを約5,000rpmで操作し、この水溶液を均質化した。
【0066】
次いで、上述の樹脂溶液を、混合物が均質な状態であり続けるように、上述の水溶液にゆっくりと注いだ。ホモジナイザの速度を約8,000rpmまで上げ、約30分間均質化した。均質化を終了したら、このガラス反応器と内容物を加熱マントルに入れ、蒸留機器に接続した。この混合物を約260rpmで撹拌し、混合物の温度を、約1℃/分の速度で約50℃まで上げ、混合物からジクロロメタンを留去した。約50℃で約180分間、混合物を撹拌し続け、次いで、約2℃/分で室温まで冷却した。
【0067】
生成物を25ミクロンのふるいでふるい分けした。得られた樹脂エマルションは、水中に固形分を約25重量%含んでおり、Nanotrac Particle Size Analyzerを用い、動的光散乱によって決定すると、平均粒径は約913nmであった。
【0068】
約9.93グラムの実施例2の酸性化した樹脂を、約99.3グラムのジクロロメタンが入った500ミリリットルビーカーに秤量した。混合物を、室温で約300rpmで撹拌し、樹脂をジクロロメタンに溶解させた。次いで、約0.10グラムの炭酸水素ナトリウム、約0.42グラムのDOWFAX(商標) 2A1(Dow Chemical Company製のアルキルジフェニルオキシドジスルホネート(固形分が約46.75wt%))を、約56.42グラムの脱イオン水が入った500ミリリットルのPyrexガラスビーカーに秤量した。IKA ULTRA TURRAX T18ホモジナイザを約5,000rpmで操作し、この水溶液を均質化した。
【0069】
次いで、上述の樹脂溶液を、混合物が均質な状態であり続けるように、上述の水溶液にゆっくりと注いだ。ホモジナイザの速度を約8,000rpmまで上げ、約30分間均質化した。均質化を終了したら、このガラス反応器と内容物を加熱マントルに入れ、蒸留機器に接続した。この混合物を約250rpmで撹拌し、混合物の温度を、約1℃/分の速度で約50℃まで上げ、混合物からジクロロメタンを留去した。約50℃で約180分間、混合物を撹拌し続け、次いで、約2℃/分で室温まで冷却した。
【0070】
生成物を25ミクロンのふるいでふるい分けした。得られた樹脂エマルションは、水中に固形分を約25重量%含んでおり、平均粒径は約762nmであった。
【0071】
以下の表1は、比較例1の生物由来の樹脂、実施例1および2の複数のサンプルをクエン酸(CA)で処理する前および処理した後の、重量平均分子量、数平均分子量、ガラス転移開始温度(Tg(on))、軟化点(Ts)、酸価(AV)をまとめたものである。
【表1】
【0072】
表1から明らかなように、未処理の出発原料である樹脂(比較例1)と比較すると、Mwおよび/またはMnが顕著に増加することなく、クエン酸を酸官能性向上剤として用いた。反応時間、温度、減圧度を制御することによって、分岐および/架橋がまったく起こらないか、起こったとしても最低限であるように、CAの反応性を制御した。
【0073】
1リットルのParr反応器に、メカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、約231グラムの2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、約248グラムのD−イソソルビド、約86グラムのダイマージオール(SOVERMOL 908としてCognis Corporationから市販)を入れた後、約0.631グラムのブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標) 4100、Arkemaから市販)を入れた。この反応器内を窒素で覆い、撹拌しながら温度をゆっくりと約205℃まで上げた。収集フラスコにメタノールを連続的に集めつつ、この反応混合物を窒素下、約195℃に一晩維持した。約49mlのメタノールが蒸留された。
【0074】
次の日に、反応器を開放し、このプレポリマー混合物に、約66.5グラムのクエン酸(CA)を加えた。反応混合物の温度を約200℃まで上げ、設定温度の200℃に達するまで窒素下で撹拌した。次いで、約64分間、低減圧状態にした。減圧を高減圧状態に変えた。この間に、低分子量ポリマーが生成した。約93分間、高減圧状態にし、さらなる23グラムの蒸留物を集めた。軟化点が約108.5℃に達したら、温度を約195℃まで下げ、生成物をポリテトラフルオロエチレン皿に取り出した。
【0075】
実施例5の樹脂を以下のものと比較した。Mwが約4243ダルトンであり、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルと、D−イソソルビド、コハク酸、アゼライン酸とのコモノマーを含む、低軟化点(Ts)の生物由来の樹脂(以下「Low Tg Biobased Resin」と称する);Mwが約63,400ダルトンであり、アルコキシル化ビスフェノールAと、テレフタル酸、トリメリット酸、ドデセニルコハク酸とのコモノマーを含む、高分子量アモルファス樹脂(以下、「High MW Amorphous Resin」と称する);Mwが約16,100であり、アルコキシル化ビスフェノールAと、テレフタル酸、フマル酸、ドデセニルコハク酸とのコモノマーを含む、低分子量アモルファス樹脂(以下「Low MW Amorphous Resin」と称する);Advanced Image Resources製の市販の生物由来の樹脂BIOREZ 64−113。結果を以下の表2にまとめている。
【表2】
Ts=軟化点
Mw=重量平均分子量
Tg(on)=ガラス転移開始温度
AV=酸価
C/O=炭素/酸素比
【0076】
また、上の樹脂を、プロポキシル化ビスフェノールAポリエステル系樹脂(生物由来ではないコントロール1)とも比較した。この結果も、
図1にプロットしている。
図1からわかるように、実施例5の樹脂は、特に、60℃から140℃で、低Tsの生物由来の樹脂よりも大きな粘度曲線を有していた。実施例5の樹脂の分子量は、表2に示されるように、低Tsの生物由来の樹脂よりも小さいが、この樹脂は、重合反応初期に鎖伸長剤/架橋剤としてクエン酸を加えたときに、クエン酸の架橋性によって、高いレオロジー値を示していた。処理温度および減圧度を操作することによって、High MW Amorphous Resinのレオロジー値に匹敵するような、もっと高温に関連するレオロジー値を得ることができた。
図1から明らかなように、生物由来ではないコントロールは、実施例5と非常によく似ていた。
【0077】
2リットルのBuchi反応器に、メカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、約527.36グラムの2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、約113.9グラムのD−イソソルビド、約158.09グラムのアゼライン酸(AzA)、約396グラムのプロピレングリコール(PG)を入れた後、約1.5グラムのブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標)4100、Arkemaから市販)を入れた。この反応器内を窒素で覆い、撹拌しながら温度をゆっくりと約210℃まで上げた。収集フラスコに水およびメタノールを連続的に集めつつ、この反応混合物を窒素下、約210℃に一晩維持した。この時点で、約115グラムの蒸留物が集められた。
【0078】
次の日に、反応混合物の温度を約215℃まで上げ、設定温度に達するまで窒素下で撹拌した。次いで、約15分間、低減圧状態にした。次いで、減圧を高減圧状態に変えた。この間に、低分子量ポリマーが生成した。軟化点が約116.8℃になるまで、約6時間、高減圧状態にした。さらに重合するのを防ぐために、反応物を約165℃で一晩放置し、その後、この反応器に約14グラムのクエン酸(約1.5重量%)を加えた。次いで、温度を約185℃まで上げ、15分間、低減圧状態にした。反応混合物を約2時間、高減圧状態にし、その後、ポリテトラフルオロエチレン皿に取り出した。この樹脂の最終的な軟化点は、約117.4℃であり、酸価は、約12.77mg KOH/gであった。
【0079】
1リットルのParr反応器に、メカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、酸価が約12.77mg KOH/gの実施例6の樹脂370グラムを入れた。反応器の温度を約200℃までゆっくりと上げ、この温度で約2.5時間維持した。約20分間、低減圧状態にした後、軟化点が約121℃になるまで、約2.5時間、高減圧状態にした。ポリマー溶融物を減圧下でさらに5時間処理し、クエン酸とポリマー鎖とを架橋し、さらに反応させることができるようにした。この時点で、樹脂を反応器から取り出し、冷却できるようにした。得られた樹脂の酸価は、約8.36mg KOH/gであった。
【0080】
1リットルのParr反応器に、メカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、約263.68グラムの2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、約56.95グラムのD−イソソルビド、約79.05グラムのアゼライン酸、約198グラムのプロピレングリコールを入れ、次いで、約0.75グラムのブチルスズ酸触媒(FASCAT(登録商標) 4100、Arkemaから市販)を入れた。この反応器内を窒素で覆い、撹拌しながら温度をゆっくりと約190℃まで上げた。収集フラスコに水およびメタノールを連続的に集めつつ、この反応混合物を窒素下、約190℃に一晩維持した。この時点で、約77グラムの蒸留物が集められた。
【0081】
次の日に、反応混合物の温度を約205℃まで上げ、設定温度に達するまで窒素下で撹拌した。次いで、約15分間、低減圧状態にした。次いで、減圧を高減圧状態に変えると、低分子量ポリマーが生成し始めた。軟化点が約110〜約115℃に達するまで、約9時間、高減圧状態にした。さらに重合するのを防ぐために、反応物を約160℃で一晩放置した。次の日に、温度を約200℃まで上げ、約3.5時間、高減圧状態にした。次いで、温度を約185℃まで下げ、反応器に約6グラムのクエン酸(約1.5重量%)を加え、窒素で覆いつつ、約100分間反応させた後、ポリテトラフルオロエチレン皿に取り出した。この樹脂の最終的な軟化点は、約123.9℃であり、酸価は、9.34mg KOH/gであった。
【0082】
図2および
図3は、それぞれ、市販のLow MW Amorphous ResinおよびHigh MW Amorphous Resinと比較した、実施例6および実施例7の樹脂のレオロジープロフィールを記載している。
図2および
図3からわかるように、高温範囲(>130℃)で、実施例6の樹脂は、Low MW Amorphous Resinと同様の粘度を有しており、一方、実施例7の樹脂は、High MW Amorphous Resinと同様の粘度を有していた。Low MW Amorphous Resinの分子量は63,400であり、実施例7の樹脂の分子量は8600であるが、粘度という観点では、これらは、高温の粘度範囲では非常に似ていた。したがって、
図2および
図3から、クエン酸を加えると、CAモノマーを加えた後にどれほど長く樹脂を処理するかによって、樹脂に酸官能基を付与するだけではなく、粘度も制御される(分岐および/または架橋によって)ことが示された。
【0083】
樹脂をクエン酸の代わりに、約5グラムの無水トリメリット酸(TMA)で処理しなかった場合の比較例の樹脂を製造した。1リットルのParr反応器に、メカニカルスターラー、底部ドレイン弁、蒸留装置を取り付け、2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチル、D−イソソルビド(IS、0.11当量)、アゼライン酸およびプロピレングリコールを入れた後、約0.75グラムのFASCAT 4100触媒を入れた。この反応器内を窒素で覆い、撹拌しながら温度をゆっくりと約190℃まで上げた。収集フラスコに水およびメタノールを連続的に集めつつ、この反応混合物を窒素下、約190℃に一晩維持した。約77グラムの蒸留物が集められた。
【0084】
次の日に、反応混合物を約205℃まで上げ、設定温度に達するまで窒素下で撹拌した。次いで、約15分間、低減圧状態にした。減圧を高減圧状態に変えた。この間に、低分子量ポリマーが生成した。軟化点が約110〜115℃に達するまで、約9時間、高減圧状態にした。ポリマーがさらに重合しないように、反応物を約160℃で一晩放置した。次の日に、温度を約200℃まで上げ、約3.5時間、高減圧状態にした。次いで、温度を約185℃まで下げ、反応器に約5.2グラムの無水トリメリット酸を加え、窒素で覆いながら約100分間反応させ、その後に、ポリテトラフルオロエチレン皿に取り出した。この樹脂の最終的な軟化点は、約119.7℃であり、酸価は、約9.5mg KOH/gであった。
【0085】
以下の表3は、無水トリメリット酸(TMA)の代わりにクエン酸(CA)で処理した生物由来の樹脂の材料および性質を示す。
【表3】