(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717627
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ガスタービンに用いられる翼ならびにこのような翼を鋳造技術により製造するための方法
(51)【国際特許分類】
F01D 5/18 20060101AFI20150423BHJP
B22C 9/04 20060101ALI20150423BHJP
B22C 9/24 20060101ALI20150423BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20150423BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
F01D5/18
B22C9/04 D
B22C9/24 C
F01D25/00 X
F02C7/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-512916(P2011-512916)
(86)(22)【出願日】2009年5月20日
(65)【公表番号】特表2011-522991(P2011-522991A)
(43)【公表日】2011年8月4日
(86)【国際出願番号】EP2009056150
(87)【国際公開番号】WO2009150019
(87)【国際公開日】20091217
【審査請求日】2012年4月23日
(31)【優先権主張番号】00898/08
(32)【優先日】2008年6月12日
(33)【優先権主張国】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】503416353
【氏名又は名称】アルストム テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(74)【代理人】
【識別番号】100061815
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100112793
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳大
(74)【代理人】
【識別番号】100128679
【弁理士】
【氏名又は名称】星 公弘
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100156812
【弁理士】
【氏名又は名称】篠 良一
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】ホセ アングイソラ マクフィート
(72)【発明者】
【氏名】イェルク クリュッケルス
(72)【発明者】
【氏名】ローラント デュッカースホフ
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン ケネス ウォードル
【審査官】
寺町 健司
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2006/0292005(US,A1)
【文献】
独国特許出願公開第10129975(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/18
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
B22C 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービンに用いられる翼(10)であって、当該翼(10)が、前縁(11)と後縁(12)とを有していて、さらに内部に、内側の表面(19,20)により画定された、冷却空気を導通させるための内室(16)を有しており、該内室(16)が、前記内側の表面(19,20)の間に延びる少なくとも1つのウェブ(29)によって複数の部分室に分割されており、後縁(12)の範囲に、当該翼(10)の壁(15)と冷却空気との間の熱伝達を改善するために、前記壁(15)に冷却の改善のために一体成形された多数のタービュレータもしくはピン(18)が分配されて配置されており、該タービュレータもしくはピン(18)が、前記内側の表面(19,20)を起点として前記内室(16)に突入している形式の、ガスタービンに用いられる翼(10)を鋳造技術により製造するための方法であって、第1のステップで、翼(10)の内室(16)を空いた状態に保持する鋳造コア(21)を成形するためのコア型(23)を用意し、第2のステップで、前記コア型(23)によって鋳造コア(21)を製造し、第3のステップで、前記コア型(23)から鋳造コア(21)を型抜きし、第4のステップで、鋳造コア(21)を用いて翼(10)を鋳造して、翼を製造する方法において、第1のステップで用意された前記コア型(23)が、2つの型半部(23a,23b)を有していて、両型半部(23a,23b)が、翼(10)の前記少なくとも1つのウェブ(29)を形成するための少なくとも1つのウェブエレメント(30)を有しており、両型半部(23a,23b)を型抜き時に第1の方向で互いに引き離し、ただし該第1の方向に沿って前記少なくとも1つのウェブエレメント(30)が延びており、両型半部(23a,23b)に後縁範囲において、前記タービュレータもしくはピン(18)を形成するために設けられた少なくとも1つの型インサート(27,28)が配置されており、該型インサート(27,28)が、翼(10)に前記タービュレータもしくはピン(18)を形成するための切欠き(22)の構成にとって役立つ型エレメント(26)を備えており、第3のステップで、両型半部(23a,23b)を第1の方向で引き離した後に、前記型インサート(27,28)を、前記第1の方向から偏倚した第2の方向で、成形された鋳造コア(21)から引き抜き、該第2の方向に沿って前記タービュレータもしくはピン(18)が、前記内室(16)に突入していることを特徴とする、翼を鋳造技術により製造するための方法。
【請求項2】
第2の方向が、前記タービュレータもしくはピン(18)に所属する前記内側の表面(19,20)に垂直に起立している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
両型半部(23a,23b)に複数の型インサート(27,28)が配置されており、該型インサート(27,28)を、成形された鋳造コア(21)の型抜き時に、前記第1の方向から偏倚した種々異なる方向で引き抜く、請求項1または2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、ガスタービンの技術分野に関連する。本発明は、請求項1の上位概念部に記載の形式のガスタービンに用いられる翼、すなわち当該翼が、前縁と後縁とを有していて、さらに内部に、内側の表面により画定された、冷却空気を導通させるための内室を有しており、後縁の範囲に、当該翼の壁と冷却空気との間の熱伝達を改善するために、前記壁に冷却の改善のために一体成形された多数の手段が分配されて配置されており、該手段が、前記内側の表面を起点として前記内室に突入している形式のものに関する。さらに、本発明は、このような形式の翼を鋳造技術的に製造するための方法、すなわち第1のステップで、翼の内室を空いた状態に保持する鋳造コアを成形するためのコア型を用意し、第2のステップで、前記コア型によって鋳造コアを製造し、第3のステップで、前記コア型から鋳造コアを型抜きし、第4のステップで、鋳造コアを用いて翼を鋳造して、翼を製造する方法に関する。
【0002】
背景技術
回転翼もしくは動翼としてロータに取り付けられているか、または案内翼もしくは静翼として、ロータを取り囲むハウジングに取り付けられているガスタービンの翼は、燃焼器から到来した高温ガスにより負荷され、このときに熱負荷にさらされる。熱効率を改善してゆく過程で、これらの翼の周囲を流れる高温ガス流のタービン流入温度は、ますます高くなりつつある。それゆえに、これらの翼が内部および/または外部で冷却されなければならないことは回避され得ない。この場合、冷却媒体、特に冷却空気が、有利には翼根元を介して翼ブレードの中空の内部へ導入され、そしてこの翼ブレードの内部で翼を、対流式に適用された冷却方法を介して、または選択的にインピンジメント冷却により冷却し、次いで冷却媒体は高温ガス流中へ吹き出され、これにより場合によっては翼の外側において「フィルム冷却」が実行される。冷却媒体は、翼の内部を通ってたいてい、つづら折り状に連なった複数の冷却通路内を流れる。これらの冷却通路は半径方向で翼ブレードを貫いて延びている。
【0003】
このような翼を鋳造技術により製造する場合、鋳造コアが形成されなければならない。この鋳造コアは翼の鋳造時に、複数の冷却通路や別の個別要素を備えた翼の内側の中空室を形成しかつ空いた状態に保持する。鋳造コアを製造するためには、2つの型半部から構成されたコア型が使用される。両型半部は完成した鋳造コアの型抜き時に特定の方向で互いに引き離される(たとえば米国特許出願公開第5716192号明細書参照)。両型半部が互いに引き離されなければならない方向が特定されていることに基づき、鋳造コアの設計には制限が加えられ、ひいては完成した翼の内室のデザインにも制限が加えられる。このような制限は、たとえば国際公開第03/042503号パンフレットに開示されているように、とりわけ内室の複雑な形状においては重要となる。同国際公開パンフレットに記載の種々の冷却回路と、多数のピンおよびタービュレータ(Turbulator)とから成る翼内室を形成するためには、複数の鋳造コアが製造されて、互いに組み合わされる。このことは、極めて手間のかかる製造方法を招く。
【0004】
発明の開示
本発明は、上記不都合を回避するための手段を提供しようとするものである。したがって、本発明の課題は、鋳造コアが原因で生ぜしめられた特定の制限を克服して内部冷却に関して改善されていると同時に、僅かな過剰手間をかけるだけで製造され得るような翼を提供することである。さらに、本発明の課題は、このような翼を製造するための方法を提供することである。
【0005】
この課題は、請求項1の特徴部に記載の特徴、すなわち前記手段が、所定の角度範囲内で自由に選択可能である所定の方向で前記内室に突入して延びていること、ならびに請求項3の特徴部に記載の特徴、すなわち第1のステップで用意された前記コア型が、2つの型半部を有していて、両型半部を型抜き時に第1の方向で互いに引き離し、ただし両型半部に後縁範囲において、前記手段を形成するために設けられた少なくとも1つの型インサートが配置されており、第3のステップで、両型半部を第1の方向で引き離した後に、前記型インサートを、前記第1の方向から偏倚した第2の方向で、成形された鋳造コアから引き抜くことにより解決される。本発明にとって重要となるのは、後縁の範囲に当該翼の壁と冷却空気との間の熱伝達を改善するために前記壁に一体成形されたタービュレータ(Turbulator)もしくはピンが、所定の角度範囲内で自由に選択可能である所定の方向で前記内室に突入して延びていることである。
【0006】
冷却の点で見ると、本発明の1実施態様に記載されているように、タービュレータもしくはピンが、対応する内側の表面にほぼ垂直に位置している方向で前記内室に突入して延びていると特に有利である。
【0007】
翼を鋳造技術により製造するための本発明による方法は、第1のステップで、翼の内室を空いた状態に保持する鋳造コアを成形するためのコア型を用意し、第2のステップで、前記コア型によって鋳造コアを製造し、第3のステップで、前記コア型から鋳造コアを型抜きし、第4のステップで、鋳造コアを用いて翼を鋳造して、翼を製造する方法において、第1のステップで用意された前記コア型が、2つの型半部を有していて、両型半部を型抜き時に第1の方向で互いに引き離し、ただし両型半部に後縁範囲において、前記タービュレータもしくはピンを形成するために設けられた少なくとも1つの型インサートが配置されており、第3のステップで、両型半部を第1の方向で引き離した後に、前記型インサートを、前記第1の方向から偏倚した第2の方向で、成形された鋳造コアから引き抜くことにより特徴付けられている。
【0008】
第2の方向が、前記タービュレータもしくはピンに所属する内側の表面に垂直に位置していることにより、本発明による方法の1実施態様が特徴付けられている。
【0009】
本発明による方法のさらに別の実施態様では、前記型半部に複数の型インサートが配置されており、該型インサートを、成形された鋳造コアの型抜き時に、第1の方向とは異なる種々異なる方向で引き抜く。
【0010】
以下に、本発明の実施形態を図面につき詳しく説明する。本発明を直接理解するために重要ではない構成要素は全て省略されている。同一の構成要素は、全ての図面において同じ符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】後縁の範囲に、壁表面に対して垂直に内室へ突出したタービュレータもしくはピンを備えた本発明による翼の1実施形態を示す横断面図である。
【
図2】
図1に示した翼を鋳造技術により製造するための鋳造コアの断面図である。
【
図3】
図2に示した鋳造コアの製造時におけるコア型の型半部と関連した問題を示すための概略図である。
【
図4】
図3に示したコア型に結びつけられた制限を克服するための型インサートを備えた、本発明の枠内で変えられたコア型を示す、
図3と比較可能な概略図である。
【
図5】
図4に示した型インサートの1つを示す概略図である。
【0012】
本発明を実施するための形態
図1には、本発明によるガスタービン翼の1実施形態が横断面図で簡略的に図示されている。翼10は、前縁11と後縁12と(凸面状の)吸込み側13と(凹面状の)圧送側14とを備えた翼形状(プロフィール)を有している。翼10は壁15を有しており、この壁15は中空の内室16を取り囲んでいる。この内室16は冷却空気を案内するために使用される。この冷却空気は、とりわけ後縁12に設けられた冷却空気出口17から外空間へ流出することができる。内室16は1つまたは複数のウェブ29によって複数の部分室に分割されていてよい。
【0013】
翼10を鋳造技術により製造する際に、内室16およびこの内室16内に配置された個別要素およびエレメントを形成するためには、鋳造コア21(
図2)が必要とされる。まず最初にこの鋳造コア21が製作されなければならない。鋳造コア21を形成するためには、一般に
図3に示したようなコア型23が使用される。コア型23は分離平面25に沿って分離可能な2つの型半部23a,23bから構成されている。両型半部23a,23bは型抜きの際に、
図3に矢印により示した方向で互いに引き離される。型抜きの際に両型半部23a,23bが互いに引き離されなければならない方向(型抜き方向)が規定されていることに基づき、間接的に鋳造コア21を介して、翼10の内室16に位置する特定のエレメントの向きも規定されている。すなわち、ウェブ29は翼10の内室16において必然的に型抜き方向に延びている。なぜならば、このようにしてのみ、型半部23a,23bに設けられた相応するウェブエレメント30を、完成した鋳造コアから引き抜くことができるからである。
【0014】
ところで、本発明によれば、翼10の後縁範囲において内室16に付加的なエレメント18が配置もしくは一体成形される。これらのエレメント18は、(円形の)ピンまたは(リブ形の)タービュレータとして形成されていてよい。これらのエレメント18は、内室16内を流れる冷却空気と壁15との間の熱伝達を改善する。エレメント18が壁15を起点として内室16に突入する方向は、
図3の型抜き方向とは無関係に所定の角度範囲内で選択可能であることが望ましい。すなわち、エレメント18の向きは、ウェブ29の向きとは異なっていてよい。特にエレメント18は流れ技術的な理由から、これらのエレメント18の起点となる壁15の内側の表面19;20に垂直に起立していることが望ましい(
図1に描き込んだ直角を表す印参照)。
【0015】
図1に示したエレメント18を、
図1に図示した向きで実現し得るようにするためには、鋳造コア21が、相応して成形されかつ方向付けられた複数の切欠き22を有していなければならない(
図2)。
図3に示した2つの半部から成るコア型23においては、両型半部23a,23bに、切欠き22を形成するために、相応する型エレメント26が配置されていなければならない。しかし、
図3を見れば一目瞭然であるように、このように型抜き方向から偏倚した方向に向けられた型エレメント26が存在していると、型抜きの際に、形成された切欠き22を損傷または破壊することなしに、または型エレメント26を破折することなしに、両型半部23a,23bを型抜き方向に互いに引き離すことはもはや不可能となる。
【0016】
それにもかかわらず、鋳造コア21のための製造プロセス内で、型抜き方向とは異なった方向に向けられたこのようなエレメント18を簡単に、かつ損傷の危険なしに製作し得るようにするためには、
図4および
図5に示したように、エレメント18を配置したい範囲のために別個の型インサート27,28が設けられる。これらの型インサート27,28は切欠き22の形成を受け持ち、型半部23a,23bとは別個に引き抜かれるようになっている。
【0017】
図4に示したコア型配置構成を用いて鋳造コア21を製造する場合、型抜き時にまず両型半部23a,23bが型抜き方向(
図4で見て上下に向かって垂直な方向)で互いに引き離される。型インサート27,28はこの段階では鋳造コア21に留まっている。型半部23a,23bが取り除かれると、型インサート27,28は鋳造コア21から、エレメント18の向きに相当する方向(
図4の斜め矢印)に引き抜かれ得る。こうして、汎用の鋳造方法の枠内で翼10の内室16内に、コア型の(主)型抜き方向とは異なる向きの、冷却のために最適化されたエレメント18を簡単に形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0018】
10 翼(ガスタービン)
11 前縁
12 後縁
13 吸込み側
14 圧送側
15 壁
16 内室
17 冷却空気出口
18 タービュレータ(ピン)
19,20 内側の表面
21 鋳造コア
22 切欠き
23 コア型
24 中空室
25 分離平面
26 型エレメント
27,28 型インサート
29 ウェブ
30 ウェブエレメント