(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ダイカスト金型のキャビティと真空装置とを繋ぐ経路上に設けられて、前記キャビティに充填される金属溶湯の前記真空装置側への流入を阻止する真空ダイカスト鋳造装置のバルブ装置であって、
前記キャビティから吸引された流体が通流する流路と、
前記流路外に位置して前記真空装置側への前記流体の流入を許可する初期位置と、前記流路を横断して前記真空装置側への前記流体の流入を阻止する被駆動位置との間で進退移動可能に設けられた閉鎖バルブと、
前記閉鎖バルブを、前記被駆動位置に向けて付勢する圧縮流体を供給するポンプと、
前記流路における前記閉鎖バルブよりも前記キャビティ側に流入した前記金属溶湯により、前記閉鎖バルブへの前記圧縮流体の供給を遮断する初期位置から、前記閉鎖バルブへの前記圧縮流体の供給を許可する被駆動位置に移動させられる作動部材と、を備え、
前記作動部材は、前記流路に連通するシリンダ室内で進退移動可能に設けられているとともに、前記シリンダ室の内径に整合する外径を有する柱状の部材であり、
前記作動部材の軸方向における途中位置には、前記シリンダ室の内径よりも小径の小径部が設けられており、
前記シリンダ室は、前記ポンプから前記閉鎖バルブに圧縮流体を供給する供給流路上に設けられており、
前記シリンダ室から見て前記ポンプ側の供給流路と、前記シリンダ室から見て前記閉鎖バルブ側の供給流路は、前記被駆動位置に配置された前記作動部材の小径部と整合する位置で、前記シリンダ室に接続していることを特徴とする真空ダイカスト鋳造装置のバルブ装置。
【背景技術】
【0002】
ダイカスト鋳造法は、薄肉で精密な鋳物製品を大量に生産する方法として知られており、ダイカスト金型に形成されたキャビティに、高速・高圧で金属溶湯を充填する鋳造技術である。このダイカスト鋳造法では、キャビティ内に金属溶湯を充填する際に、キャビティ75内にあらかじめ存在したガス(空気など)が金属溶湯に巻き込まれて、鋳物製品に鋳巣などを生じることがある。かかる場合、鋳造製品の強度が低下するため、鋳造製品の品質が低下してしまう。
そこで、従来より、ガスが金属溶湯に巻き込まれることを防止するために、真空ポンプ等でキャビティ内のガスを外部に排出させながら、金属溶湯をキャビティ内に充填するようにした鋳造方法(真空ダイカスト鋳造法)が知られている。そして、この真空ダイカスト鋳造法は、真空ダイカスト鋳造装置を用いて行われる。
【0003】
図4は、従来の真空ダイカスト鋳造装置におけるバルブ装置100a(「真空バルブ」や「ガス抜き装置」とも称される装置)である。
バルブ装置100aは、固定部11aと可動部12aとの間に形成される溶湯通路77aを有しており、図示しない真空装置によりキャビティから吸引されたガスが、この溶湯通路77aを通って排気流路45aから排出されるようになっている。
【0004】
ここで、溶湯通路77aには、キャビティを満たしたのちの金属溶湯も、ガスの他に流入するので、バルブ装置100aは、流入した金属溶湯が真空装置側に排出されないようにするための閉鎖バルブ30と、この閉鎖バルブ30を駆動するための駆動機構(作動ピストン20a、レバー5、バネ受け6、コイルバネ7)と、を備えている。
【0005】
バルブ装置100aでは、溶湯通路77aと排気流路45aとが、閉鎖バルブ30を収容するシリンダ室35を介して接続されており、シリンダ室35内において閉鎖バルブ30は、弁体部31aを弁座16aから離間させた初期位置と、弁体部31aを弁座16aに着座させた被駆動位置と、の間で進退移動可能に設けられている。
この閉鎖バルブ30の図中右側には、固定部11a内で支点cで回動可能に支持されたレバー5が嵌合しており、閉鎖バルブ30は、このレバー5にバネ受け6を介して作用するコイルバネ7の付勢力により、弁体部31aを弁座16aから離間させた初期位置に保持されるようになっている。
【0006】
溶湯通路77aにおけるシリンダ室35よりも上流側には、この溶湯通路77aに連通してシリンダ室25aが設けられており、このシリンダ室25a内では、作動ピストン20aが進退移動可能に収容されている。
この作動ピストン20aの図中右側の一端は、前記したレバー5に当接しており、溶湯通路77aに流入した金属溶湯が、図中左側のピストン頭頂面21aに衝突して、作動ピストン20aが図中右側に押し込まれると、閉鎖バルブ30が、この作動ピストン20aの移動に連動して図中右側に押し込まれるようになっている。
そうすると、閉鎖バルブ30の弁体部31aが弁座16aに着座して、溶湯通路77aと排気流路45との連通が遮断されるので、溶湯通路77aに流入した金属溶湯が、排気流路45を通って真空装置側に排出されないようになる。
【0007】
このような機械式のレバーによる閉鎖バルブの閉止機構を備えた真空ダイカスト鋳造装置(減圧鋳造システム)のバルブ装置が、例えば特許文献1に開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本実施形態に係るバルブ装置100が装着された真空ダイカスト鋳造装置200を示す構成図である。
真空ダイカスト鋳造装置200は、内部にキャビティ75が形成されたダイカスト金型65と、このダイカスト金型65を保持するホルダ60と、ダイカスト金型65のキャビティ75内に金属溶湯Mを充填する加圧充填装置70と、キャビティ75内に金属溶湯Mを充填する際にキャビティ75内のガスを吸引する真空装置40と、キャビティ75と真空装置40とを繋ぐ経路上に設けられたバルブ装置100と、を備えて構成される。
【0015】
真空ダイカスト鋳造装置200では、鋳造製品に鋳巣などが生じることを防止するために、真空装置40を用いてダイカスト金型65のキャビティ75内のガス(空気など)を外部に排出させながら、キャビティ75内への金属溶湯Mの充填が行われるようになっている。この真空ダイカスト鋳造装置200においてバルブ装置100は、キャビティ75内を満たしたのちの金属溶湯Mが真空装置40側に流入することを防止するために設けられている。
【0016】
以下、真空ダイカスト鋳造装置200の各部の構成を説明する。
ダイカスト金型65は、固定金型66と、この固定金型66に対して接離可能に設けられた可動金型67とを備えて構成される。
固定金型66と可動金型67の互いの合わせ面(パーティング面)Ptには、それぞれ溝68、溝69が設けられており、固定金型66と可動金型67とが接合された際に、これら溝68、溝69により、鋳造製品の形状に対応したキャビティ75が形成されるようになっている。
【0017】
ホルダ60は、固定ホルダ61と、この固定ホルダ61に対して接離可能に設けられた可動ホルダ62と、を備えて構成される。
固定ホルダ61と可動ホルダ62の互いの合わせ面(パーティング面)Ptには、ダイカスト金型65を保持するための凹部63、64が設けられており、この凹部63、64には、固定金型66と可動金型67とが、それぞれ保持されている。
固定金型66と可動金型67は、それぞれ固定ホルダ61と可動金型67に一体に組み付けられており、可動ホルダ62が固定ホルダ61から離れる方向(
図1において左方向)に移動すると、可動ホルダ62で保持された可動金型67が、固定ホルダ61で保持された固定金型66から、合わせ面Ptを境にして分離するようになっている。
【0018】
固定ホルダ61と可動ホルダ62の合わせ面Ptには、キャビティ75内に金属溶湯Mを供給するための溶湯通路74と、主としてキャビティ75内のガスを排出させるための溶湯通路76と、が形成されている。
溶湯通路74は、ダイカスト金型65の下部から、合わせ面Ptに沿って直線状に下方に延びており、キャビティ75と加圧充填装置70とを連通させている。
溶湯通路76は、ダイカスト金型65の上部から、合わせ面Ptに沿って直線状に上方に延びており、キャビティ75とバルブ装置100の溶湯通路77とを連通させている。
【0019】
加圧充填装置70は、固定ホルダ61の下部に設けられており、合わせ面Ptの直交方向に延びるスリーブ71と、スリーブ71内で水平方向に摺動移動可能に設けられたプランジャ72と、を備えて構成される。
スリーブ71の一端側は、固定ホルダ61の外部に突出しており、この突出した部分の上側の側面には、アルミニウム合金の金属溶湯Mを注入するための給湯穴73が形成されている。
スリーブ71内に注入された金属溶湯Mは、プランジャ72が可動ホルダ62側(図中左側)に押し込まれると、溶湯通路74内に押し出されるようになっており、この際に、プランジャ72により加圧された金属溶湯Mが、高速・高圧で溶湯通路74内に流入するようになっている。
【0020】
真空装置40は、ダイカスト金型65のキャビティ75内のガスを吸引するために、真空タンク42と真空ポンプ41とを備えており、流路44を介してバルブ装置100に接続されている。流路44には、流路44内のガスの流れを遮断するための弁43が設けられており、真空ポンプ41の駆動時に弁43が開かれると、キャビティ75内のガスが、前記した溶湯通路76と、バルブ装置100と、流路44とを介して、真空装置40側に吸引されるようになっている。
【0021】
バルブ装置100は、ダイカスト金型65のキャビティ75と真空装置40とを繋ぐ経路上に設けられており、固定部11と、この固定部11に対して接離可能に設けられた可動部12とを備えて構成される。
バルブ装置100は、ホルダ60の上部において、固定ホルダ61と可動ホルダ62とに跨って設けられている。固定部11と可動部12は、それぞれ固定ホルダ61と可動ホルダ62に固定されており、可動ホルダ62を固定ホルダ61から分離させると、可動部12と固定部11は、合わせ面Ptを境にして分離するようになっている。
【0022】
以下、バルブ装置100について詳しく説明する。
図2は、バルブ装置100の断面図であり、作動ピストン20と閉鎖バルブ30とが、それぞれ初期位置に配置された状態であって、閉鎖バルブ30が、真空装置40側へのガス(流体)の流入を許可する位置に配置されている状態を示す図である。
図3は、バルブ装置100の断面図であり、作動ピストン20と閉鎖バルブ30とが、それぞれ被駆動位置に配置された状態であって、閉鎖バルブ30が、真空装置40側へのガス(流体)の流入を阻止する位置に配置されている状態を示す図である。
【0023】
バルブ装置100では、固定部11と可動部12の対向面に、それぞれ溝771、772が形成されており、固定部11と可動部12とが接合された際に、これら溝771、772により、溶湯通路77が形成されるようになっている。
溶湯通路77は、固定部11と可動部12の合わせ面Ptに沿って、バルブ装置100内を上下方向に延びており、この溶湯通路77の上流側(キャビティ75側)には、作動ピストン20を収容するシリンダ室25が、溶湯通路77に連通して設けられている。
また、溶湯通路77の下流側(真空装置40側)には、閉鎖バルブ30を収容するシリンダ室35が、溶湯通路77に連通して設けられている。
【0024】
シリンダ室25、35は、それぞれ、固定部11を合わせ面Pt(
図1参照)の略直交方向に貫通して形成されており、これらシリンダ室25、35内では、作動ピストン20と閉鎖バルブ30とが、それぞれ軸線X1、X2方向に進退移動可能に設けられている。
【0025】
シリンダ室25、35の内径は、長手方向における途中位置を境にして異なっており、可動部12側(図中左側)に小径部25A、35Aが、可動部12とは反対側(図中右側)に大径部25B、35Bが、それぞれ位置している。そして、大径部25B、35Bの図中右側の開口は、裏蓋14、15により封止されている。
【0026】
シリンダ室25の大径部25Bは、固定部11内に設けた流路91、92と、前記したシリンダ室35の大径部35Bとを介して、ポンプ90に接続されており、この大径部25B内は、ポンプ90からの圧縮空気が供給されるエア室95となっている。
また、シリンダ室35の大径部35Bは、固定部11内に設けた流路81、82と、前記したシリンダ室25の小径部25Aとを介して、ポンプ80に接続されている。この大径部35B内は、後記する閉鎖バルブ30のフランジ部32により二つに区画されており、小径部35A側が、ポンプ90からの圧縮空気が通過するエア室93、裏蓋15側が、ポンプ80からの圧縮空気が供給されるエア室83となっている。
【0027】
作動ピストン20は、小径部25Aの内径と整合する外径の軸部23と、大径部25Bの内径と整合する外径のフランジ部22と、フランジ部22を挟んで軸部23とは反対側に位置する当接部26と、を有しており、当接部26の外径は、軸部23の外径よりも大きく、かつフランジ部22の外径よりも小さい径に設定されている。
作動ピストン20は、フランジ部22を、小径部25Aと大径部25Bとの間の段部18に当接させた初期位置(
図2参照)と、当接部26の当接面26Aを裏蓋14に当接させた被駆動位置(
図3参照)との間で、進退移動可能に設けられている。
【0028】
軸部23の溶湯通路77側(図中左側)の先端面21は、合わせ面Ptに対して略平行な平坦面となっており、溶湯通路77内に流入した金属溶湯Mが衝突する衝突面となっている。
実施の形態では、溶湯通路77のシリンダ室25よりも上流側に、湾曲部77Aが設けられており、溶湯通路77内に流入した金属溶湯Mが、可動部12側を迂回したのち、軸線X1の軸方向から作動ピストン20の先端面21に衝突するようになっている。
そのため、キャビティ75側から流入した金属溶湯Mが先端面21に衝突すると、作動ピストン20は、衝突力(付勢力)で図中右側に押し込まれて、当接部26の当接面26Aを裏蓋14に当接させた被駆動位置まで移動させられるようになっている。
【0029】
作動ピストン20の軸部23では、長手方向における途中位置に、当該軸部23よりも小径の小径溝部24が設けられており、この小径溝部24は、軸線X1周りの周方向の全周に亘って設けられている。
軸線X1の軸方向における小径溝部24の両側には、Oリング27が外嵌して取り付けられる凹溝23aが設けられている。
Oリング27は、ポンプ80からの圧縮空気がシリンダ室25に漏出しないようにするために設けられている。
【0030】
実施の形態では、流路81と流路82とが、軸線X1の直交方向から小径部25Aに接続されており、流路81と流路82との連通と遮断が、軸部23に設けた小径溝部24により行われるようになっている。
そのため、この小径溝部24は、作動ピストン20が初期位置(
図2参照)に配置されているときに流路81、82に重ならない位置であって、被駆動位置(
図3参照)まで移動させられた際に、流路81、82に重なる位置(整合する位置)に設けられている。
【0031】
フランジ部22の裏蓋14側の面22Bは、ポンプ90からエア室95内に供給される圧縮空気の受圧面となっており、バルブ装置100内に流入した金属溶湯Mにより作動ピストン20が図中右側に移動させられるまでの間は、作動ピストン20は、エア室95内に供給される圧縮空気により、フランジ部22を段部18に当接させた初期位置に保持されるようになっている。
【0032】
閉鎖バルブ30は、小径部35Aの内径と整合する外径の軸部34と、大径部35Bの内径と整合する外径のフランジ部32と、フランジ部32を挟んで軸部34とは反対側に位置する当接部36と、を有しており、当接部36の外径は、軸部34の外径と略同じで、かつフランジ部32の外径よりも小さい径に設定されている。
【0033】
シリンダ室35内において閉鎖バルブ30は、軸部34に設けた弁体部31を溶湯通路77の外部に位置させた初期位置(
図2参照)と、弁体部31を溶湯通路77内に突出させた被駆動位置(
図3参照)との間で、進退移動可能に設けられている。
【0034】
軸部34の長手方向における途中位置には、小径部33が設けられており、軸部34における小径部33よりも先端側が、溶湯通路77を閉止するための弁体部31となっている。
小径部33は、軸部34の肉抜きのために設けられており、この小径部33が設けられることで、閉鎖バルブ30の質量を低減させて、閉鎖バルブ30のシリンダ室35内の進退移動を容易にしている。
【0035】
弁体部31の溶湯通路77との対向面には、溶湯通路77側に突出する凸部31Aが設けられている。そして、可動部12のシリンダ室35と対向する部位には、弁体部31の凸部31Aが接離する弁座16が設けられており、この弁座16は、凸部31Aの形状に対応した形状に形成されている。
実施の形態では、軸線X2の軸方向において弁座16は、溶湯通路77(溝772)の表面から、固定部11から離れる側(図中左側)に相当程度へこんだ位置に形成されており、弁体部31が弁座16に当接したときに、弁体部31の側面31Bで溶湯通路77が塞がれるようになっている。
【0036】
実施の形態では、流路91と流路92とが、軸線X2の直交方向から大径部35Bに接続されており、流路91と流路92との連通と遮断が、フランジ部32により行われるようになっている。
そのため、これら流路91、92は、閉鎖バルブ30が初期位置(
図2参照)に配置されているときにフランジ部32と重ならない位置であって、被駆動位置(
図3参照)まで移動させられた際に、流路81、82に重なる位置(整合する位置)に設けられている。
【0037】
フランジ部32の裏蓋15側の面32Bは、エア室83内に供給される圧縮空気の受圧面となっており、反対側の面32Aは、エア室93内を通過する圧縮空気の受圧面となっている。
【0038】
エア室93内への圧縮空気の供給は、閉鎖バルブ30が初期位置(
図2参照)に配置されているときに行われるようになっており、この状態において閉鎖バルブ30は、エア室95内に供給される圧縮空気により、当接部36の当接面36Aを裏蓋15に当接させて、反対側の弁体部31を溶湯通路77の外部に位置させた初期位置(
図3参照)に保持されるようになっている。
【0039】
また、エア室83内への圧縮空気の供給は、バルブ装置100内に流入した金属溶湯Mにより作動ピストン20が図中右側に移動させられて、流路81と流路82とが作動ピストン20の小径溝部24を介して連通すると行われるようになっており、閉鎖バルブ30は、エア室83内に圧縮空気が供給されると、図中左側に押されて、弁体部31を弁座16に当接させた被駆動位置まで移動させられるようになっている。
【0040】
この状態において弁体部31は、溶湯通路77を横切って、その側面31Bで溶湯通路77を塞いでおり、溶湯通路77のシリンダ室25よりも下流側に流入した金属溶湯Mは、この弁体部31により、排気流路45側の下流への流入が阻止されるようになっている。
【0041】
固定部11における上部側(シリンダ室35よりも下流側)では、可動部12との対向面に凹部19が設けられており、この凹部19には、排気アタッチメント13が着脱自在に設けられている。
排気アタッチメント13は、溶湯通路77と流路44とを連通させる排気流路45をその内部に有しており、排気流路45は、溶湯通路77におけるシリンダ室35よりも真空装置40側で溶湯通路77に接続されている。
【0042】
実施の形態では、排気流路45を、シリンダ室35ではなく、溶湯通路77におけるシリンダ室35よりも下流側に接続したので、仮に閉鎖バルブ30(弁体部31)による溶湯通路77の閉鎖に失敗しても、金属溶湯Mがシリンダ室35の奥側(図中右側)に大きく流入しないようになっている。
【0043】
排気流路45は、溶湯通路77との接続部451と、流路44との接続部452と、これら接続部451、452を連通させる連通部453とを備えて構成される。
排気アタッチメント13において接続部451は、溶湯通路77の延長上に位置しており、排気アタッチメント13の可動部12側の表面13aに開口して設けられている。
接続部452は、排気アタッチメント13の内部を、溶湯通路77と略並行に延びており、排気アタッチメント13内を合わせ面Ptの略直交方向に延びる連通部453を介して、接続部451に接続されている。
【0044】
断面視において排気流路45(451、452、453)は、途中で折れ曲がった形状に形成されており、仮に弁体部31による溶湯通路77の閉鎖が僅かに遅れて、シリンダ室35の下流側に金属溶湯Mが流入しても、流入した金属溶湯Mが、速やかに流路44内に流入しないようなっている。
また、金属溶湯Mが排気流路45内に流入してその内部で固まったとしても、排気アタッチメント13が固定部11の凹部19に対して着脱自在となっているので、排気アタッチメント13を交換するだけで、次回以降の鋳造に対応できるようになっている。
【0045】
次に、本実施形態にかかるバルブ装置100の動作を説明する。
真空ダイカスト鋳造装置200による鋳造製品の作製を行うにあたり、ダイカスト金型65のキャビティ75内のガスを真空装置40により吸引できるようにするために、バルブ装置100の閉鎖バルブ30が、弁体部31を溶湯通路77の外部に位置させた初期位置に配置される(
図2参照)。
【0046】
この状態では、閉鎖バルブ30の弁体部31が、シリンダ室35内に位置しており、溶湯通路77と排気流路45とが連通しているので、キャビティ75(
図1参照)内のガスが、溶湯通路76、77と流路44を介して、真空装置40側に吸引されるようになっている。
【0047】
さらに、閉鎖バルブ30がこの初期位置に配置されている際には、流路91と流路92とがエア室93を介して連通しており、ポンプ90からの圧縮空気が、エア室95内に供給されるようになっている。
そのため、作動ピストン20は、フランジ部22の受圧面22Bに作用する圧縮空気により、図中左方向に付勢されており、フランジ部22を段部18に当接させた初期位置に保持されている。
【0048】
なお、作動ピストン20が初期位置に配置されているときには、流路81と流路82との連通が、作動ピストン20の軸部23により遮断されている。そのため、ポンプ80からの圧縮空気が、閉鎖バルブ30のエア室83に供給されないようになっている。
【0049】
このように、閉鎖バルブ30と作動ピストン20とが、
図2に示す初期位置配置された状態で、真空装置40によるキャビティ75内のガスの吸引が開始されると、このガスの吸引に続いて、加圧充填装置70(
図1参照)による金属溶湯Mの射出が開始される。
そうすると、金属溶湯Mは、溶湯通路74を介してキャビティ75に供給されて、キャビティ75内に充填される。そして、キャビティ75内が金属溶湯Mで満たされると、金属溶湯Mが、溶湯通路76を通ってバルブ装置100の溶湯通路77内に流入することになる。
【0050】
バルブ装置100の溶湯通路77に流入した金属溶湯Mは、溶湯通路77に設けられた湾曲部77Aによりその進行方向が変えられて、軸線X1の軸方向から作動ピストン20の先端面21に衝突する。
そうすると、作動ピストン20は、金属溶湯Mの衝突力により図中右方向に押し込まれて、当接面26Aを裏蓋14に当接させた被駆動位置(
図3参照)まで移動させられることになる。
なお、エア室95に供給される圧縮空気の圧力は、先端面21に対するガスの衝突による加圧では押し込まれず、金属溶湯Mの衝突による大きな圧力が加わると、作動ピストン20が図中右方向へ押し込まれるような値に調整されている。
【0051】
作動ピストン20が、
図3に示す被駆動位置まで移動させられると、小径溝部24が流路81、82に重なる位置(整合する位置)に配置される。そうすると、流路81と流路82とが、作動ピストン20の小径溝部24を介して互いに連通し、ポンプ80からの圧縮空気が、エア室83内に供給される。
【0052】
エア室83内に供給された圧縮空気は、閉鎖バルブ30の受圧面32Bに作用して、閉鎖バルブ30を図中左方向に移動させる。これにより、閉鎖バルブ30は、その先端の弁体部31を可動部12の弁座16に当接させた被駆動位置まで移動させられる(
図3参照)。
【0053】
そうすると、閉鎖バルブ30の弁体部31が、溶湯通路77を横断して、その側面31Bで溶湯通路77を塞ぐので、溶湯通路77と排気流路45との連通が遮断される。
そのため、作動ピストン20を図中右方向に移動させたのち、溶湯通路77内を図中上側に移動する金属溶湯Mは、閉鎖バルブ30の弁体部31の側面31Bによって、排気流路45側への移動が阻止されることになる。
よって、金属溶湯Mが、排気流路45と流路44を通って真空装置40側に引き込まれることが防止される。
【0054】
さらに、閉鎖バルブ30が被駆動位置に配置されると、フランジ部32により流路91と流路92との連通が遮断されて、ポンプ90から供給される圧縮空気の作動ピストン20側のエア室95内への供給が遮断される。
これにより、閉鎖バルブ30が被駆動位置に配置されたのちに、作動ピストン20が初期位置(
図2参照)に戻されることがないようにされている。
【0055】
このように、このバルブ装置100では、作動ピストン20が金属溶湯Mにより被駆動位置まで移動させられると、閉鎖バルブ30が、ポンプ80からの圧縮空気により被駆動位置まで移動させられるようになっている。
そのため、従来のバルブ装置のように、閉鎖バルブを移動させるために、作動ピストンが受けた金属溶湯Mの衝突力(付勢力)を閉鎖バルブに伝達するための部品(レバーやバネなど)を設ける必要がないようになっている。
【0056】
以上の通り、実施形態では、ダイカスト金型65のキャビティ75と真空装置40とを繋ぐ経路上に設けられて、キャビティ75に充填される金属溶湯Mの真空装置40側への流入を阻止する真空ダイカスト鋳造装置200のバルブ装置10であって、
キャビティ75から吸引されたガス(流体)が通流する溶湯通路77と、
溶湯通路77外に位置して真空装置40側への流体の流入を許可する初期位置(
図2参照)と、溶湯通路77を横断して真空装置40側への流体の流入を阻止する被駆動位置(
図3参照)との間で進退移動可能に設けられた閉鎖バルブ30と、
閉鎖バルブ30を、被駆動位置に向けて付勢する圧縮流体を供給するポンプ80と、
溶湯通路77における閉鎖バルブ30よりもキャビティ75側(上流側)に流入した金属溶湯Mにより、閉鎖バルブ30への圧縮流体の供給を遮断する初期位置(
図2参照)から、閉鎖バルブ30への圧縮流体の供給を許可する被駆動位置(
図3参照)に移動させられる作動ピストン20(作動部材)と、を備える構成とした。
【0057】
このように構成すると、作動ピストン20が、バルブ装置100の溶湯通路77内に流入した金属溶湯Mにより被駆動位置(
図3参照)まで移動させられると、閉鎖バルブ30が、ポンプ80からの圧縮流体により被駆動位置(
図3参照)まで移動させられて、溶湯通路77と、その下流側(真空装置40側)の排気流路45との連通が遮断される。
これにより、ダイカスト金型65内に金属溶湯Mを充填する際には、キャビティ75内のガスを真空装置40側に流入させ、キャビティ75を満たした金属溶湯Mが作動ピストン20を被駆動位置に移動させたのちは、金属溶湯Mを真空装置40側に流入させないバルブ装置10となる。
さらに、作動ピストン20の被駆動位置への移動に連動して供給される圧縮空気により、閉鎖バルブ30が被駆動位置に移動させられるようになっており、従来のバルブ装置のように、閉鎖バルブを移動させるために、作動ピストンが受けた金属溶湯Mの衝突力(付勢力)を閉鎖バルブに伝達するための部品(レバーやバネなど)を設ける必要がない。
よって、バルブ装置における部品点数が、従来よりも少なくなるので、バルブ装置100の作製コストの低減が可能になる。
【0058】
特に、キャビティ75内に高速・高圧で充填される金属溶湯Mは、バルブ装置100の作動ピストン20に衝突した際に作動ピストン20側に大きな衝撃力を与えるため、従来のバルブ装置の場合には、上記した衝突力(付勢力)を伝達するための部品(レバーやバネなど)が破損し易いという問題があった。
実施の形態にかかるバルブ装置100では、金属溶湯Mの衝突力(付勢力)を作動ピストン20側に伝達するための部品(レバーやバネ)を採用していないので、従来のバルブ装置において発生していた金属溶湯Mの衝突力(付勢力)に起因する故障の発生を抑制できる。
これにより、バルブ装置100の故障頻度を低減させることができるので、真空ダイカスト鋳造装置200の稼働率を向上させることができる。
【0059】
さらに、実施形態では、閉鎖バルブ30の駆動のために、電気を用いる機構(電気的な機構)を利用していないので、ダイカスト金型65から鋳造製品を取り出したのち、水を用いてバルブ装置100を冷却しても、例えば電気配線の短絡のような水に起因する故障が発生することがない。
これにより、安価な水を利用して、バルブ装置100を冷却することができるので、ランニングコストの低減が可能になる。
また、バルブ装置100において、防水対策を施す必要がないので、その分だけコストを低減する効果も期待することができる。
【0060】
さらに、ダイカスト金型65は、固定金型66と固定金型66に対して接離可能に設けられた可動金型67を備えており、
バルブ装置100は、固定金型66側に取り付けられる固定部11と、可動金型67側に取り付けられる可動部12とを備えるとともに、可動金型67の固定金型66に対する接離に連動して、可動部12が固定部11に対して接離するように構成されており、
溶湯通路77は、可動部12と固定部11の合わせ面Ptに沿って形成されており、
閉鎖バルブ30は、合わせ面Ptの略直交方向に延びるシリンダ室35内で進退移動可能に設けられた柱状の部材であり、被駆動位置に配置された閉鎖バルブ30は、その弁体部31を、シリンダ室35から突出させると共に溶湯通路77を横断させた位置に配置させて、弁体部31の外周30Bで溶湯通路77と排気流路45との連通を遮断する構成とした。
【0061】
このように構成すると、溶湯通路77のシリンダ室25よりも下流側に流入した金属溶湯Mの流れが、閉鎖バルブ30の側面31Bで確実に止められることになる。
また、弁体部31がシリンダ室35から突出してその外周30Bで溶湯通路77を遮断するようにしたので、閉鎖バルブ30による金属溶湯Mの真空装置40側への流入阻止に失敗した場合であっても、シリンダ室35内に金属溶湯Mが大きく流入することを好適に防止できる。
よって、シリンダ室35内に金属溶湯Mが付着して、閉鎖バルブ30の動作を悪化させる故障の発生を防止することができる。
【0062】
また、実施形態では、作動ピストン20は、合わせ面Ptの略直交方向に延びるシリンダ室25内で進退移動可能に設けられており、シリンダ室25の小径部25Aの内径に整合する外径の軸部23を有する柱状の部材であって、作動ピストン20の軸方向における途中位置には、シリンダ室25の内径よりも小径の小径溝部24が設けられており、シリンダ室25の小径部25Aは、ポンプ80から閉鎖バルブ30に圧縮空気を供給する流路81と82との間に設けられており、流路81と流路82は、被駆動位置に配置された作動ピストン20の小径溝部24と整合する位置で、シリンダ室25の小径部25Aに接続している構成とした。
【0063】
このように構成すると、作動ピストン20が被駆動位置に移動させられると、流路81と流路82とが小径部25Aを介して連通して、閉鎖バルブ30が、ポンプ80からの圧縮空気により被駆動位置に向けて移動させることになる。
よって、従来のバルブ装置のように、閉鎖バルブを移動させるために、作動ピストンが受けた金属溶湯Mの衝突力(付勢力)を閉鎖バルブに伝達するための部品(レバーやバネなど)を設ける必要がなく、金属溶湯の衝突力を受ける部品が、作動ピストン20のみとなるので、金属溶湯Mの衝突力(付勢力)に起因する故障の発生を従来のバルブ装置よりも抑制できる。
【0064】
また、実施形態では、作動ピストン20を被駆動位置に向けて付勢する圧縮空気を供給するポンプ90をさらに備え、閉鎖バルブ30は、初期位置において、ポンプ90から作動ピストン20への圧縮空気の供給を許可し、被駆動位置において、ポンプ90から作動ピストン20への圧縮空気の供給を遮断する構成とした。
【0065】
このように構成すると、閉鎖バルブ30が初期位置に位置している間は、作動ピストン20が圧縮空気により初期位置に保持され、閉鎖バルブ30が被駆動位置に移動させられると、作動ピストン20を初期位置に戻そうとする圧縮空気の圧力が作動ピストン20に作用しなくなる。
よって、圧縮空気を用いて、作動ピストン20と閉鎖バルブ30とを連動させることができ、バルブ装置100を簡便に動作させることができる。
【0066】
また、ポンプ90から作動ピストン20に供給する圧縮空気の圧力を調整できるので、キャビティ75内への金属溶湯の注入圧力に応じて、作動ピストン20が被駆動位置に向けて移動させられるときの圧力を調整できる。
例えば、キャビティ75内に低速・低圧で金属溶湯を充填する捨て打ちの際には、このときの金属溶湯の圧力に応じて、ポンプ90から作動ピストン20に供給する圧縮空気の圧力を調整することで、捨て打ち時の金属溶湯が真空装置40側に流入することを好適に防止できる。
【0067】
さらに、実施形態では、閉鎖バルブ30は、合わせ面Ptの略直交方向に延びるシリンダ室35内で進退移動可能に設けられており、閉鎖バルブ30のフランジ部32は、シリンダ室35の大径部35Bの内径に整合する外径を有するとともに、閉鎖バルブ30の軸方向における途中位置に大径部35Bの内径よりも小径の軸部34を有し、大径部35Bは、ポンプ90から作動ピストン20に圧縮空気を供給する流路上に備えられており、大径部35Bから見てポンプ90側の流路91と、大径部35Bから見て作動ピストン20側の流路92は、初期位置に配置された閉鎖バルブ30の小径部(軸部34)と整合する位置で、大径部35Bに接続している構成とした。
【0068】
このように構成すると、閉鎖バルブ30が初期位置にある間は、作動ピストン20をポンプ90からの圧縮空気で初期位置に保持させると共に、閉鎖バルブ30が被駆動位置に配置されたのちに、作動ピストン20が初期位置(
図2参照)に戻されることがないようにすることができる。
【0069】
さらに、溶湯通路77のシリンダ室35よりも下流側は、排気流路45を介して、真空装置40側の流路44に接続されており、この排気流路45は、固定部11から分離可能とされた排気アタッチメント13に設けられている構成とした。
【0070】
このように構成すると、閉鎖バルブ30による金属溶湯Mの真空装置40側への流入阻止に失敗して、金属溶湯Mが排気流路45内に流入してその内部で固まったとしても、排気アタッチメント13を交換するだけで、次回以降の鋳造に対応できる。
【0071】
なお、実施の形態で用いた用語「真空」は、通常10kPa以下に減圧することをいい、鋳造技術の慣用語としての「真空」をいう。
また、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内でなしうるさまざまな変更、改良が含まれる。
例えば、実施の形態では、金属溶湯Mがアルミニウム合金からなる金属溶湯である場合を例示したが、例えばマグネシウム合金や亜鉛合金などのように、真空ダイカスト鋳造法に用いられる他の金属溶湯であっても良い。
【0072】
さらに、本実施形態では、圧縮空気を供給するためのポンプを各弁ごとに個別に用意したが、ポンプを1台として共用することもできる。
さらにまた、本実施形態では、圧縮空気を利用したが、スプールタイプのバルブを作動させるために一般的に用いられる流体なら、オイル、水等でも良く、金型を冷却するための冷却水の一部を流用することも可能である。