特許第5717719号(P5717719)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5717719アミン末端テレキリックポリマーおよびその前駆体、並びにそれらを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717719
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】アミン末端テレキリックポリマーおよびその前駆体、並びにそれらを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 8/30 20060101AFI20150423BHJP
   C08C 19/22 20060101ALI20150423BHJP
   C08F 10/10 20060101ALI20150423BHJP
   C10M 177/00 20060101ALI20150423BHJP
   C10M 133/44 20060101ALI20150423BHJP
   C10M 135/02 20060101ALI20150423BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 70/00 20060101ALN20150423BHJP
【FI】
   C08F8/30
   C08C19/22
   C08F10/10
   C10M177/00
   C10M133/44
   C10M135/02
   C10N30:04
   C10N40:25
   C10N70:00
【請求項の数】49
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2012-503502(P2012-503502)
(86)(22)【出願日】2010年3月23日
(65)【公表番号】特表2012-524822(P2012-524822A)
(43)【公表日】2012年10月18日
(86)【国際出願番号】US2010028305
(87)【国際公開番号】WO2010117619
(87)【国際公開日】20101014
【審査請求日】2013年3月19日
(31)【優先権主張番号】12/415,829
(32)【優先日】2009年3月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598037547
【氏名又は名称】シェブロン・オロナイト・カンパニー・エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】504239353
【氏名又は名称】ザ・ユニバーシティー・オブ・サザン・ミシシッピ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロブソン・エフ・ストーリー
(72)【発明者】
【氏名】ケイシー・ディー・ストークス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ジェー・ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】ネメジオ・マルティネス−カストロ
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−008890(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/060333(WO,A1)
【文献】 特表2007−524722(JP,A)
【文献】 特開2007−182573(JP,A)
【文献】 特開昭62−241992(JP,A)
【文献】 特表2005−527661(JP,A)
【文献】 特開平07−292038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 8/00 − 8/50
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式Iで表されるテレキリックポリマーを製造するための下記の工程を含む方法:
【化1】

式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
mは2乃至20の整数であり;
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNであり;そして
R’は一価のポリオレフィン基である;
a)ポリオレフィンを、ルイス酸もしくは複数のルイス酸の混合物の存在下でイオン化して、炭素カチオン末端ポリオレフィンを生成させる工程;そして
b)工程(a)の炭素カチオン末端ポリオレフィンを下記式IIのN−置換ピロールと反応させる工程。
【化2】
【請求項2】
およびRがいずれも水素原子である請求項1の方法。
【請求項3】
mが2乃至6である請求項1の方法。
【請求項4】
mが2乃至3である請求項1の方法。
【請求項5】
が−Cl、−Br、−CN、もしくは−Nである請求項1の方法。
【請求項6】
式IIのN−置換ピロールが下記で表される請求項1の方法。
【化3】
【請求項7】
式Iのテレキリックポリマーが下記で表される請求項1の方法。
【化4】
【請求項8】
式Iのテレキリックポリマーが下記で表される請求項1の方法。
【化5】
【請求項9】
R’がポリイソブチル基である請求項1の方法。
【請求項10】
下記式のテレキリックポリマーを製造するための下記の工程を含む方法:
【化6】

式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
は−(CR−Rで表され、式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、アリール、アラルキル、もしくはアルカリール基であり、Rは原子価がrである脂肪族もしくは芳香族の基であり;
R”は二価のポリオレフィン基であり
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNであり;そして
mは2乃至20の整数であり;
rは1乃至8の整数である
a)ポリオレフィンを、ルイス酸もしくは複数のルイス酸の混合物の存在下でイオン化して、炭素カチオン末端ポリオレフィンを生成させる工程;そして
b)工程(a)の炭素カチオン末端ポリオレフィンを下記式IIのN−置換ピロールと反応させる工程。
【化7】
【請求項11】
R”がポリイソブチレン基である請求項10の方法。
【請求項12】
rが2である請求項10の方法。
【請求項13】
イオン化ポリオレフィンが準リビング炭素カチオンポリオレフィンであり、上記方法を準リビング炭素カチオン重合条件下で実施する請求項1の方法。
【請求項14】
準リビング炭素カチオンポリオレフィンが、電子供与体、共通イオン塩、もしくは共通イオン塩前駆体の存在下で、ルイス酸とモノマーとを開始剤に加えることにより製造される請求項13の方法。
【請求項15】
ルイス酸が四ハロゲン化チタンもしくは三ハロゲン化ホウ素である請求項14の方法。
【請求項16】
モノマーがイソブチレンである請求項14の方法。
【請求項17】
下記式IIIのテレキリックポリマーを製造するための下記の工程を含む方法:
【化8】

a)ポリオレフィンを、ルイス酸もしくは複数のルイス酸の混合物の存在下でイオン化して、炭素カチオン末端ポリオレフィンを生成させる工程;
b)工程(a)の炭素カチオン末端ポリオレフィンを下記式IIのN−置換ピロールと反応させ、
【化9】

下記式Iのテレキリックポリマーを生成させる工程;そして
【化10】

c)工程(b)の式Iのテレキリックポリマーを一もしくは複数の試薬と反応させて式IIIの化合物を生成させる工程;
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
R’は一価のポリオレフィン基であり;
mは2乃至20の整数であり;そして
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNであり;
は、−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、−OR、ポリエーテル基、ポリエーテルアミノ、もしくは−COORであって;
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、もしくはアリールであり;
そして
は水素原子、アルキル、アリール、アルカリール、もしくはアラルキルである。
【請求項18】
が−NRである請求項17の方法。
【請求項19】
が水素原子であって、Rがアリールである請求項18の方法。
【請求項20】
−NRが−NHである請求項18の方法。
【請求項21】
上記試薬が求核剤もしくは還元剤である請求項17の方法。
【請求項22】
下記式の化合物を製造するための下記の工程を含む方法:
【化11】

a)ポリオレフィンを、ルイス酸もしくは複数のルイス酸の混合物の存在下でイオン化して、炭素カチオン末端ポリオレフィンを生成させる工程;
b)工程(a)の炭素カチオン末端ポリオレフィンを下記式IIのN−置換ピロールと反応させ、
【化12】

下記式のテレキリックポリマーを生成させる工程;そして
【化13】

c)工程(b)のテレキリックポリマーを一もしくは複数の試薬と反応させて下記式の化合物を生成させる工程;
【化14】

式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
は−(CR−Rで表され、式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、アリール、アラルキル、もしくはアルカリール基であり、Rは原子価がrである脂肪族もしくは芳香族の基であり;
R”は二価のポリオレフィン基であり
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNであり;
は、−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、−OR、ポリエーテル基、ポリエーテルアミノ、もしくは−COORであって;
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、もしくはアリールであり;
そして
は水素原子、アルキル、アリール、アルカリール、もしくはアラルキルであり;
mは2乃至20の整数であり;そして
rは1乃至8の整数である。
【請求項23】
R”がポリイソブチレン基である請求項22の方法。
【請求項24】
rが2である請求項22の方法。
【請求項25】
請求項の方法で製造された生成物。
【請求項26】
が、−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、ポリエーテル基、もしくはポリエーテルアミノである請求項17の方法で製造された生成物。
【請求項27】
式IVの化合物:
【化15】

式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
R’は一価のポリオレフィン基である;
mは2乃至20の整数であり;そして
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、−SCN、−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、ポリエーテル基、もしくはポリエーテルアミノであって;
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、もしくはアリールであり;
そして
は水素原子、アリール、アルカリール、もしくはアラルキルである。
【請求項28】
上記の化合物が下記式VIの化合物である請求項27の化合物:
【化16】

式中、
nは0乃至2000の整数である。
【請求項29】
およびRがいずれも水素原子である請求項28の化合物。
【請求項30】
mが2乃至6である請求項28の化合物。
【請求項31】
mが2乃至3である請求項28の化合物。
【請求項32】
nが2乃至1000である請求項28の化合物。
【請求項33】
が−Br、−CN、−N、もしくは−NRである請求項28の化合物。
【請求項34】
が水素原子であって、Rがアリールである請求項33の化合物。
【請求項35】
−NRが−NHである請求項33の化合物。
【請求項36】
下記式Vの化合物:
【化17】

式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
−(CR−Rで表され、式中、RおよびRはそれぞれ独立に水素原子、アルキル、アリール、アラルキル、もしくはアルカリール基であり、Rは原子価がrである脂肪族もしくは芳香族の基であって、rは1乃至8であり;
R”は二価のポリオレフィン基であり;
mは2乃至20の整数であり;そして
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、−SCN、−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、ポリエーテル基、もしくはポリエーテルアミノであって;
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、もしくはアリールであり;
そして
は水素原子、アリール、アルカリール、もしくはアラルキルである。
【請求項37】
上記化合物が式VIIである請求項36の化合物:
【化18】

式中、
nは、rの鎖状部分毎に独立に、0乃至2000の整数である。
【請求項38】
およびRがいずれも水素原子である請求項37の化合物。
【請求項39】
mが2乃至6である請求項37の化合物。
【請求項40】
mが2乃至3である請求項37の化合物。
【請求項41】
nが2乃至1000である請求項37の化合物。
【請求項42】
が−Br、−CN、−N、もしくは−NRである請求項37の化合物。
【請求項43】
が水素原子であって、そしてRがアリールである請求項42の化合物。
【請求項44】
−NRが−NHである請求項42の化合物。
【請求項45】
rが2乃至4である請求項37の化合物。
【請求項46】
相対的に多量の潤滑粘度の油および相対的に少量の請求項27の化合物を含む潤滑油組
成物。
【請求項47】
相対的に多量の潤滑粘度の油および相対的に少量の請求項36の化合物を含む潤滑油組
成物。
【請求項48】
20乃至60質量%の請求項27の化合物および80乃至40質量%の有機希釈剤を含
む濃縮物。
【請求項49】
20乃至60質量%の請求項36の化合物および80乃至40質量%の有機希釈剤を含
む濃縮物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リビング重合条件下で適切なモノマーをカチオン重合することによりテレキリックポリマーを製造し、さらにその重合をN−置換ピロールでクエンチするための方法を提供する。上記N−置換基は、塩基性アミンを誘導できる官能基を含む。これらの官能基N−置換ピロールを含むポリマーは、ブロックコポリマーおよび架橋ネットワークポリマーにおける軟質部分として、並びに燃料添加剤および/または潤滑添加剤として用いることができる。例えば、燃料組成物もしくは潤滑油組成物において、上記の添加剤は特に清浄剤−分散剤として有用である。本発明はまた、炭素カチオン重合により製造されるポリイソブチルN−置換ピロールも提供する。
【背景技術】
【0002】
炭素−炭素間二重結合を含むほとんど全てのモノマーはラジカル重合するが、イオン重合は高度に選択的である。これには、部分的に生長種の安定性が関係している。カチオン重合にはカルベニウムイオンが関係し、実質的にアルコキシ、フェニル、ビニル、および1,1−ジアルキルのような電子放出性置換基を伴うモノマーに限られている。一方、アニオン重合にはカルボアニオンが関係し、ニトリル、カルボキシル、フェニル、およびビニルのような電子吸引性基を有するモノマーを必要とする。
【0003】
カルボアニオンは8個一組の原子価となる電子を全て維持しており、カルボアニオンと比較すると、カルベニウムイオンは二個の電子が不足していて安定性が大幅に低く、それゆえカチオン重合の制御には特別な系が必要とされる。カルベニウムイオンの不安定性もしくは高い反応性は、二分子鎖のモノマーへの転移、β−プロトンの排除、およびカルベニウムイオンの再配置のような望ましくない(いずれもカチオン重合を制御する際の制約になる)副反応を助長する。一般に、これらの反応を抑制するため低温が必要である。これに加えて、生長中心の安定化(特に、対イオンと溶媒系の適切な選択)、イオン対の解離および望ましくないプロトン性開始を抑制するための添加剤の使用、並びにヘテロ原子求核剤(例えば、アルコールもしくはアミン)によるカルベニウムの不活性化を防止するための高純度試薬の使用のような点についても考慮することが必要とされる場合がある。ただし、系を慎重に選択するならば、カチオン重合はリビング性を示すことができる。
【0004】
これらのリビングカチオン系では、狭い分子量分布、並びに正確に制御された分子量、微小構造、および末端基の機能を伴うように管理されたポリマーが生じるようカチオン重合を制御することができる。制御されたカチオン重合は、連鎖末端の終止が可逆的であり(準リビング条件)かつ連鎖転移および水による開始のような望ましくない反応が抑制されている条件下において達成できるとみなされている。リビングおよび準リビング重合の優れた利点は、リビング連鎖末端と適切なクエンチング試薬との反応により、ポリマーをその場のワンポット(one-pot in situ)で官能基化し、それによりテレキリックポリマーを直接合成できる可能性にある。歴史的にテレキリックポリマーの合成は、多くの場合、連鎖末端を望ましい官能基に変換するため、一つもしくはそれ以上の重合後の反応を必要としていた。例えば、非特許文献1では、以下の順序による末端基の変換を用いて一級アミン末端ポリイソブチレンを合成している:
【0005】
1)カリウムtert−ブトキシドを用いて塩化tert−アルキルをエキソオレフィンに、
2)ヒドロホウ素化/酸化を用いてエキソオレフィンを一級アルコールに、
3)塩化トシルを用いて一級アルコールを一級トシレートに、
4)フタル酸イミドカリウムを用いて一級トシレートを一級フタル酸イミドに、そして最後に
5)ヒドラジンを用いて一級フタル酸イミドを一級アミンに変換する。
【0006】
さらに近年になって、非特許文献2では、イソブチレンのリビング重合を1−(3−ブロモプロピル)−4−(1−フェニルビニル)ベンゼンでクエンチし、次に生成物に対して一連の重合後の反応を実施し、アミン末端PIBを得ている。しかし、結果として得られる末端基の構造は、複雑で嵩高く、そこに開示される内容とは大きく異なっており、末端基の官能基化が定量的な値よりも少なかった。油および燃料の添加剤ポリマーの商業的な官能基化も、複雑な多段階の方法である。例えば、ポリイソブチレン起源の油分散剤は、一般には、第一にイソブチレン(IB)を重合してオレフィン末端ポリイソブチレン(PIB)を生成し、PIBをマレイン酸無水物と反応させてPIB−コハク酸無水物(PIBSA)を生成し、さらにPIBSAをポリアミンと反応させてPIB−コハク酸イミドアミンを製造している。全体として分散剤は三つの合成段階を必要とし、各段階は独立した反応条件を必要とし、示される収率は100%未満である。ここで反応中に官能基化する商業的な手段があれば、油および燃料の添加剤の生成に伴う時間、労力、および全ての経費を軽減できるであろう。
【0007】
リビング重合は、重合の間に終止と連鎖転移とを排除しながら生長が進行し、それにより追加のモノマーが系に供給されると、いつでも、さらに該モノマーを加える能力を(実質的には不明確であるが)維持しているポリマーを生じる任意の重合を意味する。この説明は、実際の系よりも厳密である場合が多く、ここでは準リビング炭素カチオン重合(QLCCP)によって近似されている。QLCCPは、モノマーが消費されるまでの有効寿命の間に不可逆的な連鎖破壊機構が存在しない場合に進行する連鎖成長重合を含む。
【0008】
炭素カチオンリビング重合とQLCCPとの出現により、これらのリビングポリマーを官能基化することが試みられるようになった。これらの試みの成功の程度は、重合するモノマーの種類に直結していた。イソブチルビニルエーテルのような相対的に反応性が高い炭素カチオンモノマーについて、単なるワンポット(もしくは反応中)での鎖末端の官能基化は、イオン性求核クエンチング試薬、すなわちメタノール、アルキルリチウム等(例、非特許文献3を参照)を用いて起こすことができる。しかし、鎖末端の官能基化は、これらの試薬をイソブチレンのような相対的に反応性が低いモノマーのリビング重合に加えても、起きる訳ではない(例、非特許文献4および5を参照)。重合の最後におけるこれらの試薬の添加は、結果として、望ましい求核性置換が起きるよりも、触媒が消費され、ポリイソブチレン(PIB)にtert−アルキル塩化連鎖末端が生成される。これは、IBのQLCCPが、これらの重合系において本質的に可逆的な終止機構の直接的な結果として、どのようにでも三級塩化末端基を生成することからみて、当然の結果を示している。受け入れられている原理的説明は、準リビングPIBが主に休眠中の(可逆的末端)鎖からなることである。従って、大部分の添加試薬、特に強力な求核剤はルイス酸開始助剤をクエンチし、それにより、三級塩化連鎖末端のみを生じる。三級塩化物基は、一般に脱離生成物が代わりに得られるため、求核性置換反応では有用ではない。三級塩化物基は、環境上の理由およびそれらの存在がすすおよび他のエンジン汚染物質の制御の有効性を低下させる可能性があることから、潤滑油および燃料のための分散剤/清浄剤としても望ましくない場合が多い。加えて、三級塩化物基は分解してHClを遊離する傾向があり、HClはエンジン内の金属表面に対して腐食性である。
【0009】
以上述べた一般的な原則に対して最も注目すべき例外は、アリルトリメチルシラン(ATMS)を過剰にリビングポリイソブチレンに添加した場合には、ルイス酸とは反応せず、むしろPIB鎖末端によりアルキル化され、それによりその反応中にアリル性末端基を伴うリビングPIBが得られるとの発見(特許文献1)である。関連する特許文献2は、クエンチング剤として偽ハロゲン化アルキルシリルの使用、それにより化学物質の選択を加えることを示している。しかし、分散剤および/または清浄剤として使用するために、カチオン性ポリマーをその場で適切な窒素化合物で官能基化することは除外されていた。ATMSでの成功に基づき、フォースト、外は、2−置換フラン誘導体を研究し、準リビングPIB連鎖末端との定量的反応は、四塩化チタン(TiCl)とBCl補助開始系との双方によって達成できることを発見した(非特許文献6および7)。同様に、特許文献3においてアイバンは、5乃至7員のヘテロ環並びに任意に置換された部分を含む任意の芳香族環が求電子性の芳香族置換により、QLCPのPIBをクエンチかつ有効に官能基化するために用いられることを前提として、準リビングPIBをフラン誘導体とチオフェン誘導体でクエンチすることを開示している。我々は、芳香族環、環の置換基、並びに環における置換基の位置に特別な事情があることを発見した。芳香族環もしくは置換基、例えば、ある種の求核剤断片(例えば、−OH、−NH)を含む置換基を不正確に選択すると、触媒が不活性化され、PIB鎖末端が変化せずに三級塩化末端基のみを伴い、もしくは、ある種の環境において準リビングポリマーと結合する可能性がある。特許文献4は、リビング重合条件下で適切なモノマーをカチオン重合し、引き続き重合をN−置換ピロールでクエンチすることにより、単分散テレキリックポリマーを高収量で製造できることを開示している。その結果として得られるテレキリックポリマーは、5員芳香族ピロール環における6個一組の芳香族電子を構成する孤立電子対を有する三級窒素原子を含む。しかし、後者の特許には、塩基性窒素を含む官能基に容易に変換されるN−置換ピロールのN−置換基に含まれる官能基についての開示が見られない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4758631号明細書
【特許文献2】米国特許第5580935号明細書
【特許文献3】国際公開第99/09074号
【特許文献4】米国特許第6969744号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】ケネディ、外(パーセック、ブイ;グハニヨギ、エス・シー;ケネディ、ジェイ・ピー;ポリマー誌、1983年、9、27〜32頁)
【非特許文献2】バインダー、外(メイクル、ディー;クンズ、エム・ジェイ;バインダー、ダブリュー・エイチ;ACS部門、ポリマー・ケミストリー、ポリマー・プリプレス、2003年、44(2)、858〜859頁)
【非特許文献3】サワモト、エム;エノキ、ティー;ヒガシムラ、ティー;マクロモレキュルズ、1987年、20、1〜6頁
【非特許文献4】アイバン、ビー;ケネディ、ジェイ・ピー;ジャーナル・オブ・ポリマー・サイエンス:パートA:ポリマー・ケミストリー、1990年、28、89〜104頁
【非特許文献5】フォーダー、ゼットエス;ハッジキリアコウ、エス;リー、ディー;フォースト、アール;ACS部門、ポリマー・ケミストリー、ポリマー・プリプレス、1994年、35(2)、492〜493頁
【非特許文献6】マクロモレキュールズ、1999年、32、6393頁
【非特許文献7】ジャーナル・オブ・マクロモレキュール、サイエンス・ピュアー・アプライド・ケミストリー、2000年、A37、1333頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本明細書では、リビング重合条件下での適切なモノマーのカチオン重合およびN−置換ピロールによる重合のクエンチングによりテレキリックポリマーを製造するための方法を開示する。上記のN−置換基は、塩基性アミンを誘導できる官能基を含む。特に、本明細書に記載する方法は、官能基化したN−置換ピロールを炭素カチオン生長中心に反応および共有結合させることによるリビングもしくは準リビングポリマー生成物の官能基化に関する。驚くべきことに、クエンチング剤としてリビングポリマーもしくは準リビングポリマー系に対して使用する官能基化N−置換ピロールは、単一の末端N−置換ピロール基を有する単官能ポリマーを多量に製造できることが判明した。これに加えて、二官能および多官能末端N−置換ピロール基は、リビングポリマーの機能および微細構造に基づいて生成することができることも判明した。この方法は、実質的にEAS結合なしで、ある態様では製造される全ポリマーに基づきEAS結合が10質量%未満で、実施することができる。N−置換ピロールのN−置換基は、触媒系とは錯体化せず、次に塩基性アミンを導入するための反応が容易な官能基で置換することができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従って、本明細書は式Iで表されるテレキリックポリマーを製造するための下記の工程を含む方法を開示する:
【0014】
【化1】
【0015】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
mは2乃至20の整数であり;
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNであり;そして
R’は一価のポリオレフィン基である;
a)ポリオレフィンを、ルイス酸もしくはルイス酸の混合物の存在下でイオン化して、炭素カチオン末端ポリオレフィンを生成させる工程;そして
b)工程(a)の炭素カチオン末端ポリオレフィンを式IIのN−置換ピロールと反応させる工程。
【0016】
【化2】
【0017】
ある態様では、RおよびRは、Zに隣接する炭素が少なくとも一つの水素原子を有するように選択される。ある態様では、RおよびRは、Zに隣接する炭素が−CH−基となるように選択される。ある態様では、RおよびRが−(CR)−単位毎に、水素原子である。ある態様では、mが2乃至6の整数であって、RおよびRが−(CR)−単位毎に水素原子である。
【0018】
ある態様では、Zが−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNである。ある態様では、Zが−Cl、−Br、−I、−CN、もしくは−Nである。ある態様では、Zが−Br、−CN、もしくは−Nである。
【0019】
本明細書に記載する方法は、N−置換ピロール結合を経てポリマーに結合している−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNを伴うテレキリックポリマーの製造および合成に使用することができる。従って、本明細書で提供する方法の別の面は、この方法により製造される生成物に関する。この方法は、さらに、Zを変形、置き換え、もしくは反応させることを目的に、例えば式IIIの化合物を創出するように、以上の結果として製造された生成物に一つもしくは複数の試薬を接触させる工程を含むことができる:
【0020】
【化3】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
R’は一価のポリオレフィン基であり;
mは2乃至20の整数であり;そして
は−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、−OR、ポリエーテル基、ポリエーテルアミノ、もしくは−COORであって;
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、もしくはアリールであり;そして
は水素原子、アルキル、アリール、アルカリール、もしくはアラルキルである。
【0021】
ある態様では、上記工程をさらに実施する前に、Zをハロゲン化物もしくは偽ハロゲン化物に置き換えることができる。
【0022】
一つの態様では、試薬が、例えばアミン、アミド、イミド等の求核剤であって、その場合、Zは置き換えられて、テレキリックポリマーに窒素基が導入される。別の態様では、試薬がZ、例えば−Nもしくは−CNを還元できる還元剤であって、テレキリックポリマーに塩基性窒素基を提供する。例えば、上記試薬は、反応条件下で使用する水素化剤であってもよい。ある態様では、本明細書に記載する方法に従い製造される生成物を、そのように製造された生成物を一つもしくは複数の試薬に接触させる次の工程に従って製造される生成物を含めて、ここに提供する。
【0023】
三級塩化鎖末端を有する適切な準リビングポリマー生成物は、様々な方法で予め製造しておくことができる。ある態様では、これらの準リビングポリマー生成物をその場で製造し、それにより、ワンポットの官能基化反応に導くことができる。ある態様では、準リビングポリマーは、ルイス酸および溶媒の存在下、かつ適切な準リビング重合反応条件下で、少なくとも一つのカチオン重合性モノマーを開始剤と接触させることにより製造できる。適切なカチオン重合性モノマーは、準リビングポリマー生成物がホモポリマーとなるような単一のモノマーであってもよく;あるいは、準リビングポリマー生成物がコポリマーとなるように少なくとも二種のカチオン性モノマーから選択される。ある態様では、少なくとも一種のカチオン重合性モノマーが、イソブチレン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ベータ−ピネン、イソプレン、ブタジエン、並びにスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、p−アセトキシスチレン、および類似のスチレン様モノマーからなる群より選ばれる。ある態様では、ルイス酸がTiClである。ある態様では、準リビングポリマーは、次に、約98%のモノマーの変換の後、かつ望ましくない副反応を導く可能性がある重大な経時変化の前、式IのN−置換ピロールでクエンチされる。開始剤は、その名称が意味する通り、適切な生長中心でカチオン重合を開始させる。従って、開始剤は、そのような生長中心を一つ有する単官能、二つの生長中心を有する二官能、あるいは多官能のいずれでも可能である。多官能ならば、星状ポリマーの生成を導くことができる。ある態様では、開始剤は単官能もしくは二官能である。
【0024】
単官能開始剤は、これらに限定されるものではないが、2−クロロ−2−フェニルプロパン;2−アセトキシ−2−フェニルプロパン;2−プロピオニルオキシ−2−フェニルプロパン、2−メトキシ−2−フェニルプロパン、2−エトキシ−2−フェニルプロパン、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−アセトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−プロピオニルオキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−メトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−エトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、および機能的に類似の化合物を含む。ある態様では、単官能開始剤は2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンである。ある態様では、単一のモノマー、例えばイソブチレンを用いる場合には、単官能開始剤が2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンである。
【0025】
二官能開始剤は、これらに限定されるものではないが、1,3−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(1−アセトキシ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(1−プロピオニルオキシ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(1−メトキシ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(1−エトキシ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ジ(1−アセトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ジ(1−プロピオニルオキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ジ(1−メトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ジ(1−エトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、2,6−ジクロロ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、2,6−ジアセトキシ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、2,6−ジプロピオニルオキシ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、2,6−ジメトキシ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、2,6−ジエトキシ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、および機能的に類似の化合物を含む。ある態様では、二官能開始剤は1,3−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼンもしくは2,6−ジクロロ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタンである。ある態様では、単一のモノマー、例えばイソブチレンを用いる場合には、二官能開始剤が1,3−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼンもしくは2,6−ジクロロ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタンである。
【0026】
ある態様では、本明細書に開示された方法に従い製造される生成物の種類は、Mw/Mnが1.5未満、あるいは別の態様では約1.2未満の狭い分子量分布を有することで特徴づけることができる。
【0027】
以上に記載した方法は、N−置換ピロール結合を介してポリマーに結合している塩基性窒素もしくは酸素を含む末端基を伴うテレキリックポリマーの製造および合成のために使用することができる。従って、ここで提供するものは、ここに記載する方法で製造される生成物である。
【0028】
ある態様では、ここに式IVの化合物を提供する:
【0029】
【化4】
【0030】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
R’は一価のポリオレフィン基であり;
mは2乃至20の整数であり;そして
は、上記のように定義したZもしくはZである。
【0031】
ある態様では、式IVのRおよびRは、Zに隣接する炭素が少なくとも一つの水素原子を持つように選択される。ある態様では、式IVのRおよびRは、Zに隣接する炭素が−CH−基となるように選択される。ある態様では、RおよびRは、−(CR)−単位毎に、水素原子である。ある態様では、mが2乃至4の整数であり、RおよびRが−(CR)−単位毎に、水素原子である。
【0032】
ある態様では、nは約2乃至1000の整数である。ある態様では、nは3乃至500である。ある態様では、nは4乃至260である。ある態様では、燃料添加剤において使用する化合物はnが4乃至約20であり、分散剤および潤滑添加剤として使用する化合物はnが6乃至約50であり、そして粘度指数向上剤として使用する場合はnが一般に140乃至約260である。
【0033】
ある態様では、ZはBr、CN、およびN;もしくはNRであって、RおよびRは独立に、水素原子、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキルからな群より選ばれ;あるいはORであって、Rは水素原子、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキルからなる群より選ばれ;あるいはポリアミノである。
【0034】
本発明は、さらにガソリンもしくはディーゼルの領域内に沸点を有する主要量の炭化水素および堆積制御に有効な量の式IVに従う化合物を含む燃料組成物を提供する。
【0035】
ここに記載する化合物は、別の観点で式Vの化合物である:
【0036】
【化5】
【0037】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
は官能数がrである単官能もしくは多官能の炭素カチオン開始剤残基であって、rは1乃至8であり;
R”は二価のポリオレフィン基であり;
mは2乃至20の整数であり;そして
は、上記のように定義したZもしくはZである。
【0038】
ある態様では、RおよびRは、Zに隣接する炭素が少なくとも一つの水素原子を持つように選択される。ある態様では、RおよびRは、Zに隣接する炭素が−CH−基となるように選択される。ある態様では、RおよびRは、−(CR)−単位毎に水素原子である。ある態様では、mは2乃至4の整数であり、RおよびRは、−(CR)−単位毎に水素原子である。
【0039】
ある態様では、nは、rの鎖状単位毎に独立に、約1乃至1000の整数である。ある態様では、nは、rの鎖状単位毎に独立に、2乃至500の整数である。ある態様では、nは、rの鎖状単位毎に独立に、2乃至100の整数である。
【0040】
ある態様では、Zは、Br、CN、N;もしくはNRであって、RおよびRは独立に、水素原子、アルキル、アリール、アルカリール、アラルキル;もしくはORであって、Rは水素原子、アルキル、アリール、アルカリール、およびアラルキルからなる群より選択される。
【発明の効果】
【0041】
式IVおよび式VのポリイソブチルN−置換ピロール化合物は、一般には、ピロールの2位および/または3位でN−置換ピロールに結合しているPIB基を有する混合物である。N−置換ピロールにおける置換基中のZの存在は、生成物分布において3位の異性体が多数となる傾向を示す。2位の異性体と比較して3位の異性体が相対的に多数であることは、反応条件並びにZの実体およびピロールの1位の置換基におけるその配置に基づいている。ある態様では、3位の異性体の留分が0.65以上である。ある態様では、3位の異性体の留分が0.7以上である。これに加えて、適切な分離技術、例えばクロマトグラフィー、ゾーン電気泳動その他を使用することにより、生成物をさらに精製することもできる。従って、実質的に3−ポリイソブチルN−置換ピロールを生成させることができる。以上で使用したように、「実質的に」との用語は、ある態様では特定の異性体を75%よりも多く、あるいは別の態様では90%よりも多く有することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】1−(2−クロロエチル)ピロールで準リビングPIBをクエンチすることによって製造される一級塩化末端基を伴う単官能PIBのH NMRスペクトルを示す。生成物は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて、相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。1.6−2.1領域の拡大図では、1.96および1.68ppmにおける特徴的なピークの欠如が示すように、三級塩化末端基の完全な消失を示している。
図2】1−(2−クロロエチル)ピロールで準リビングPIBをクエンチすることによって製造される一級塩化末端基を伴う単官能PIBの13C NMRスペクトルを示す。生成物は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。
図3】準リビングPIBの1−(2−クロロエチル)ピロールとの反応生成物の部分的H NMRスペクトルを、時間の関数として示す。
図4】PIBの1−(2−クロロエチル)ピロールとの反応前(点線)および反応後(実線)におけるGPCによるトレースの結果を示す。
図5】1−(2−ブロモエチル)ピロールで準リビングPIBをクエンチすることによって製造される単官能PIB一級臭化末端基を伴う単官能PIBのH NMRスペクトルを示す。生成物は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて、相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。1.6−2.1領域の拡大は、1.96および1.68ppmにおける特徴的ピークの欠如が示すように、三級塩化末端基の完全な消失を示している。
図6】1−(2−ブロモエチル)ピロールで準リビングPIBをクエンチすることによって製造される単官能PIB一級臭化末端基を伴う単官能PIBの13C NMRスペクトルを示す。生成物は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて、相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。
図7】準リビングPIBと1−(2−ブロモエチル)ピロールとの反応生成物の部分的H NMRスペクトルを、時間の関数として示す。
図8】PIBの1−(2−ブロモエチル)ピロールとの反応前(点線)および反応後(実線)におけるGPCによるトレースの結果を示す。
図9】1−(2−クロロエチル)ピロールで準リビングPIBをクエンチすることにより製造される一級塩化末端基を伴う二官能PIBのH NMRスペクトルを示す。末端基は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて、相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。1.6−2.2領域の拡大は、1.96および1.68ppmにおける特徴的ピークの欠如が示すように、三級塩化末端基の完全な消失を示している。
図10】二官能PIBの1−(2−クロロエチル)ピロールとの反応後のGPCによるトレースの結果を示す。
図11】1−(2−ブロモエチル)ピロールで準リビングPIBをクエンチすることによって製造される二官能PIB一級臭化末端基を伴う単官能PIBのH NMRスペクトルを示す。末端基は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて、相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。1.6−2.2領域の拡大は、1.96および1.68ppmにおける特徴的ピークの欠如が示すように、三級塩化末端基の完全な消失を示している。
図12】二官能PIBの1−(2−ブロモエチル)ピロールとの反応後のGPCによるトレースの結果を示す。
図13】単官能準リビングPIBの1−(3−ブロモプロピル)ピロールとの反応生成物の部分的H NMRスペクトルを、時間の関数として示す。
図14】1−(3−ブロモプロピル)ピロールで準リビングPIBをクエンチすることにより製造される一級臭化末端基を伴う二官能PIBのH NMRスペクトルを示す。生成物は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて、相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。
図15】二官能準リビングPIBの1−(3−ブロモプロピル)ピロールとの反応生成物の部分的H NMRスペクトルを、時間の関数として示す。
図16】重合後にアジドイオンによる塩化物の置換によって得られた単官能1−(2−アジドエチル)ピロール−PIB(2および3異性体の混合物)のH NMRスペクトルを示す。
図17】単官能準リビングPIBの1−(2−シアノエチル)ピロールとの反応生成物の部分的H NMRスペクトルを、時間の関数として示す。
図18】1−(2−シアノエチル)ピロールで準リビングPIBをクエンチすることにより製造される一級シアン化末端基を伴う単官能PIBのH NMRスペクトルを示す。生成物は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて、相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。1.6−2.2領域の拡大は、クエンチングの前後における三級塩化末端基の完全な消失を示す。
図19】二官能準リビングPIBの1−(2−シアノエチル)ピロールとの反応生成物の部分的H NMRスペクトルを、時間の関数として示す。
図20】二官能PIBの1−(2−シアノエチル)ピロールとの反応前(点線)および反応後(実線)のGPCによるトレースの結果を示す。
図21】TiClの存在下で三級塩化末端PIBと1−(2−アジドエチル)ピロールとの反応により製造される一級シアン化末端基を伴う二官能PIBのH NMRスペクトルを示す。生成物は、それぞれピロール環の3位および2位におけるPIBについて、相対的に多量の異性体と相対的に少量の異性体との混合物である。
図22】二官能PIBの1−(2−アジドエチル)ピロールとの反応前(点線)および反応後(実線)のGPCによるトレースの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本明細書で使用する場合、下記の用語は下記の意味を有する。
【0044】
「テレキリックポリマー」との用語は、一つ以上の末端基を有し、その末端基が別の分子と反応する、もしくは機能を発揮する能力があるポリマーを意味する。分子当たり一つの反応性末端基を有するポリマーは、単官能であると呼ばれる。分子当たり二つの反応性鎖末端を有するポリマーは、二官能であると呼ばれる。分子当たり二つよりも多い反応性鎖末端を有するポリマーは、多官能であると呼ばれる。
【0045】
「アルキル」は、一価の約1乃至約20の炭素の飽和炭化水素鎖もしくは基を意味する。ある態様では、アルキル基は約1乃至約15の炭素を含む。ある態様では、アルキル基は約1乃至約10の炭素を含む。ある態様では、アルキル基は約1乃至約8の炭素を含む。ある態様では、アルキル基は約1乃至約6の炭素を含む。ある態様では、アルキル基は約1乃至約3の炭素を含む。ある態様では、アルキル基は1乃至2の炭素を含む。ある態様では、アルキル基は一級である。ある態様では、アルキル基は二級である。ある態様では、アルキル基は三級である。ある態様では、アルキルはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、もしくはイソヘキシルである。ある態様では、アルキルはメチル、エチル、n−プロピル、もしくはイソプロピルである。ある態様では、アルキルはメチルである。ある態様では、アルキルはtert−ブチルである。ある態様では、アルキル基は炭化水素直鎖である。ある態様では、アルキル基は分岐炭化水素鎖である。ある態様では、アルキル基は環状である。
【0046】
「アルコキシ」との用語は、アルキル−O−の基を意味する。アルコキシ基は、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、tert−ブトキシ、sec−ブトキシ、n−ペントキシ、n−ヘキソキシ、1,2−ジメチルブトキシ、その他を含む。
【0047】
「アルケニル」との用語は、ある態様では2乃至20の炭素原子を有する一価の分岐もしくは非分岐不飽和炭化水素基を意味する。他の態様では、アルケニル基は2乃至約10の炭素原子を有する。他の態様では、アルケニル基は2乃至6の炭素原子を有する。アルケニル基は、ある態様では少なくとも一つ、別の態様では1乃至2のビニル不飽和位置を有する。ある態様では、アルケニル基はエテニル(−CH=CH)、n−プロペニル(−CHCH=CH)、イソプロペニル(−C(CH)=CH)、その他である。
【0048】
ここで使用する場合、「アリール」は6乃至約30の炭素を含む一価の単環式もしくは多環式芳香族基を意味する。ある態様では、アリールは単環式である。ある態様では、アリールは約6乃至約15の炭素を含む。ある態様では、アリールは約6乃至約10の炭素を含む。ある態様では、アリールはフルオレニル、フェニル、ナフチルもしくはアンスリルである。ある態様では、アリールはフェニルである。ある態様では、アリールは置換されている。
【0049】
アリール置換基の定義によって別に強制される場合を除き、上記のようなアリール基は、任意に、アルキル、アルコキシ、アシル、アルキルスルファニル、アルキルスルホニル、アルキルスルフェニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アミノカルボニルアミノ、ハロゲン、シアノ、ニトロその他からなる群より選ばれる1乃至5の置換基、ある態様では1乃至3の置換基によって置換することができる。
【0050】
「EAS結合」は二つの炭素カチオン末端ポリオレフィン鎖による単一のN−置換ピロールの環状アルキル化を意味する。
【0051】
「ヘテロアリール」との用語は、少なくとも一つの環に5乃至15の炭素原子と酸素、窒素、および硫黄からなる群より選ばれる1乃至4のヘテロ原子とを含む一価の単環式もしくは多環式芳香族基を意味する。ある態様では、ヘテロアリールは5乃至約10の環構成原子を含む。ある態様では、ヘテロアリールは5もしくは6の環構成原子を含む。ある態様では、ヘテロアリールは単環式である。ある態様では、ヘテロ原子はN、O、もしくはSである。ある態様では、ヘテロアリールは一つのヘテロ原子を含む。ある態様では、ヘテロアリールは1乃至3のN原子を含む。ある態様では、ヘテロアリールは一つのOもしくはS原子および一つもしくは二つのN原子を含む。「ヘテロアリール」の例は、限定されるものではないが、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、インダゾール、その他を含む。
【0052】
「ハロゲン化」との用語は、一価のフッ化、塩化、臭化、ヨウ化、もしくはアスタチン化基を意味する。
【0053】
「ポリオレフィン基」はポリオレフィン置換基を意味する。ある態様では、ポリオレフィン基はポリイソブチル基もしくはポリイソブチレン基である。
【0054】
「イソブチレン」はイソブテンを意味する。また、「ポリイソブチレン」はポリイソブテンを意味する。
【0055】
「ポリイソブチル基」は少なくとも二つのイソブチレンモノマー単位を含む一価のポリオレフィン基を意味する。ある態様では、ポリイソブチル基は下記で表される。
【0056】
【化6】
【0057】
式中、
RはHもしくは1乃至約10の炭素のアルキルであり、nは約10乃至約2000の整数である。
別の態様では、nは約10乃至約1000である。別の態様では、nは約10乃至約500である。別の態様では、nは約10乃至約250である。別の態様では、nは約10乃至約100である。別の態様では、nは約10乃至約50である。
【0058】
「ポリイソブチレン基」は少なくとも二つのイソブチレンモノマー単位を含む二価のポリオレフィン基である。ある態様では、ポリイソブチレン基は下記で表される。
【0059】
【化7】
【0060】
式中、
nは約10乃至約2000の整数である。
別の態様では、nは約10乃至約1000である。別の態様では、nは約10乃至約500である。別の態様では、nは約10乃至約250である。別の態様では、nは約10乃至約100である。別の態様では、nは約10乃至約50である。
【0061】
ある態様では、ここに式Iのテレキリックポリマーを製造するための下記の工程を含む方法を提供する:
【0062】
【化8】
【0063】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
mは2乃至20の整数であり;
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNであり;そして
R’は一価のポリオレフィン基である;
a)ポリオレフィンを、ルイス酸もしくはルイス酸の混合物の存在下でイオン化して、炭素カチオン末端ポリオレフィンを生成させる工程;
b)工程(a)の炭素カチオン末端ポリオレフィンを式IIのN−置換ピロールと反応させる工程。
【0064】
【化9】
【0065】
ある態様では、Zに隣接する−C(R)−基のRもしくはRの少なくとも一つは水素原子である。ある態様では、Zに隣接する−(CR)−基は、−CH−である。
【0066】
ある態様では、RおよびRがいずれも水素原子である。
【0067】
ある態様では、mが2乃至6である。ある態様では、mが2乃至4である。ある態様では、mが2乃至3である。ある態様では、mが2である。
【0068】
ある態様では、Zが−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNである。ある態様では、Zが−Cl、−Br、−I、−CN、もしくは−Nである。ある態様では、Zが−Cl、−Br、−CN、もしくは−Nである。ある態様では、Zが−Br、−CN、もしくは−Nである。ある態様では、Zが−Clもしくは−Brである。ある態様では、Zが−Brである。
【0069】
ある態様では、mが2乃至6であり、RおよびRがいずれも水素原子である。
【0070】
ある態様では、mが2乃至4であり;Zが−Cl、−Br、−CN、もしくは−Nであり;RおよびRがいずれも水素原子である。ある態様では、式IIのN−置換ピロールが下記で表される。
【0071】
【化10】
【0072】
ある態様では、式Iのテレキリックポリマーが下記で表される。
【0073】
【化11】
【0074】
ある態様では、式Iのテレキリックポリマーが下記で表される。
【0075】
【化12】
【0076】
ある態様では、R’がポリイソブチル基である。
【0077】
ある態様では、式Iのテレキリックポリマーが下記で表される。
【0078】
【化13】
【0079】
式中、
R”は二価のポリオレフィン基であり、Rは官能基の数がrである単官能もしくは多官能の炭素カチオン開始剤残基であって、rは1乃至8の整数である。
【0080】
ある態様では、式Iのテレキリックポリマーが下記で表される。
【0081】
【化14】
【0082】
ある態様では、式Iのテレキリックポリマーが下記で表される。
【0083】
【化15】
【0084】
ある態様では、式Iのテレキリックポリマーが下記で表される。
【0085】
【化16】
【0086】
ある態様では、R”がポリイソブチレン基である。
【0087】
ある態様では、rが2乃至3である。
【0088】
ある態様では、rが2である。
【0089】
ある態様では、Rが下記で表される。
【0090】
【化17】
【0091】
式中、
はHもしくはアルキルである。
ある態様では、Rがtert−ブチルである。
【0092】
ある態様では、Rが下記で表される。
【0093】
【化18】
【0094】
ある態様では、Rが下記で表される。
【0095】
【化19】
【0096】
ある態様では、Rが下記で表される。
【0097】
【化20】
【0098】
リビング重合はこの技術において公知であり、様々な系を採用して実施でき、それらの系のいくつかは、米国特許第5350819号、同第5169914号、および同第4910321号の各明細書に記載がある。ここで使用する場合、リビング炭素カチオン重合系は、連鎖転移および終止の割合がゼロもしくはゼロと区別がつかない程度のカチオン性開始に基づく理想的なリビング重合、並びに可逆的終止が操作可能であるが、連鎖転移および不可逆的終止の割合がゼロもしくはゼロと区別がつかない程度の準リビング重合を含むことができる。リビング炭素カチオン重合について、この技術で開示される適切な系は、例えば:tert−アルキルハロゲン化物(またはエーテルもしくはエステル)/BCl;tert−アルキルハロゲン化物(またはエーテルもしくはエステル)/TiCl;クミルハロゲン化物(またはエーテルもしくはエステル)/BCl;クミルハロゲン化物(またはエーテルもしくはエステル)/TiCl;tert−アルキルハロゲン化物/BCl/2,6−ジメチルピリジン(2,6−DMP)(または2,4−ジメチルピリジンもしくは2,6−ジ−tert−ブチルピリジン);tert−アルキルハロゲン化物/TiCl/2,6−DMP(または2,4−DMPもしくは2,6−ジ−tert−ブチルピリジン);クミルハロゲン化物/BCl/2,6−DMP(または2,4−DMPもしくは2,6−ジ−tert−ブチルピリジン);クミルハロゲン化物/TiCl/2,6−DMP(または2,4−DMPもしくは2,6−ジ−tert−ブチルピリジン);CHSOH/SnCl+n−BuNClである。
【0099】
ある態様では、適切な系は、ヘキサン/MeCl/TiCl/2,6−DMP/−70℃;MeCl/BCl/2,6−DMP/−40℃;1,2−EtCl/BCl/2,6−DMP/−10℃である。ある態様では、適切な系はモノマーとしてイソブチレンを用い、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン(TMPCl)で、または5−tert−ブチル−1,3−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン(bDCC)もしくは2,6−ジクロロ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタンによって開始される系である。準リビングカチオン重合における重要な観点は、生長中心が転移および終止反応が抑制される程度に充分に低反応性であるが、適切なカチオン性モノマーによる生長が抑制される程度には非反応性ではない反応系の使用である。これは、炭素カチオン中心の安定性を、適切な対イオン錯体、溶媒の極性、重合温度、他の添加剤等と適切に対応させることによって実現が容易になる。
【0100】
リビング重合を実施できる典型的ないくつかの条件は、イソブチレンを代表例とすると、下記を含む:
(1)三級アルキルハロゲン化物、三級アラルキルハロゲン化物、三級アルキルエーテル、三級アラルキルエーテル、三級アルキルエステル、三級アラルキルエステル、その他を含む開始剤;
(2)ルイス酸開始助剤であって、一般にはチタン、ホウ素、スズ、もしくはアルミニウムのハロゲン化物を含む;
(3)任意に、プロトン・スカベンジャー、プロトン捕捉剤および/または電子供与体および/または共通イオン塩および/または共通イオン塩前駆体;
(4)溶媒もしくは補助溶剤系であって、その比誘電率は公知のカチオン重合系に従うルイス酸およびモノマーの選択を考慮して決定する;および
(5)モノマー。
【0101】
リビング炭素カチオン重合のための開始剤化合物は、この技術において公知である。用いられる開始剤化合物の種類は、一般式(X−CR−Rで表され、式中、RおよびRは独立に水素原子、アルキル、アリール、アラルキル、もしくはアルカリール基からなる群より選ばれる一価の基であって、同一でも異なっていてもよく、Xはアシルオキシ、アルコキシ、ヒドロキシ、もしくはハロゲンである。ある態様では、RおよびRは、いずれもメチルである。Rは脂肪族もしくは芳香族の原子価がrである多価の基であって、rは1乃至8の整数である。ある態様では、R、R、およびRは1乃至20の炭素原子を含む炭化水素基である。ある態様では、R、R、およびRは1乃至8の炭素原子を含む炭化水素基である。ある態様では、Xはハロゲンである。別の態様では、Xは塩素である。ある態様では、Rはアリールもしくはアルカリールである。ある態様では、Rは1,4−フェニレンである。ある態様では、Rは5−tert−ブチル−1,3−フェニレンである。ある態様では、Rはネオペンチレンである。ある態様では、Rは環の1位、3位、および5位に結合している(X−CR)基を伴う三価のベンゼン環である。ある態様では、R、R、およびRの構造は、モノマーから誘導される成長種(例、ポリスチレンにおける1−フェニルエチル誘導体もしくはポリイソブチレンにおける2,4,4−トリメチルペンチル誘導体)を擬態するように選択される。
【0102】
適切な化合物は、例えば、これらに限定されるものではないが、2−クロロ−2−フェニルプロパン;2−アセトキシ−2−フェニルプロパン;2−プロピオニルオキシ−2−フェニルプロパン、2−メトキシ−2−フェニルプロパン、2−エトキシ−2−フェニルプロパン、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−アセトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−プロピオニルオキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−メトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、2−エトキシ−2,4,4−トリメチルペンタン、1,3−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(1−アセトキシ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(1−プロピオニルオキシ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(1−メトキシ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,3−ジ(1−エトキシ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン、1,4−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ジ(1−アセトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ジ(1−プロピオニルオキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ジ(1−メトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,4−ジ(1−エトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、2,6−ジクロロ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、2,6−ジアセトキシ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、2,6−ジプロピオニルオキシ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、2,6−ジメトキシ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、2,6−ジエトキシ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタン、1,3,5−トリ(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3,5−トリ(1−アセトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3,5−トリ(1−プロピオニルオキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、1,3,5−トリ(1−メトキシ−1−メチルエチル)ベンゼン、および類似の化合物を含む。
【0103】
他の適切な例は、米国特許第4946899号明細書に記載されており、その記載の全てを参照のため本明細書の記載とする。ある態様では、開始剤は、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタン(TMPCl)、1,4−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン(DCC)、1,3,5−トリ(1−クロロ−1−メチルエチル)ベンゼン(TCC)、1,3−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼン(bDCC)、もしくは2,6−ジクロロ−2,4,4,6−テトラメチルヘプタンである。
【0104】
ここで使用する「炭素カチオン開始剤残基」との用語は、多価の基(−CR−Rを意味し、r、R、R、およびRは、以上で定義した通りである。rが1である場合、炭素カチオン開始剤残基は「一価の炭素カチオン開始剤残基」である。rが1よりも大きい場合、炭素カチオン残基は「多価の炭素カチオン開始剤残基」である。
【0105】
ルイス酸の選択は、ここに記載する方法の目的のための触媒として最適である。ある場合には、このようなルイス酸を開始助剤とも称し、双方の名称をここで使用する。そのような化合物は、これらに限定されるものではないが、ハロゲン化チタンおよびハロゲン化ホウ素を含む。ある態様では、ルイス酸が四塩化チタン、三塩化ホウ素、三塩化アルミニウム、四塩化スズ、二塩化亜鉛、二塩化エチルアルミニウムその他を含む。ある態様では、ルイス酸がハロゲン化チタンである。別の態様では、ルイス酸が四塩化チタンである。ある態様では、特定のモノマーに対してルイス酸の強度およびその濃度を調整しなければならない。ある態様では、スチレンモノマーおよびイソブチレンモノマーに対して、比較的強いルイス酸、例えばTiCl、BCl、もしくはSnClを使用する。ある態様では、ヨウ素もしくはハロゲン化亜鉛を用いてビニルエーテルを重合できる。ルイス酸は、不安定な配位子を含み、それにより排他的に強力に結合する配位子、例えばフッ素イオンを含まないように、選択される。加えて、これらのルイス酸の強度は、求核性添加剤を用いて調整できる。
【0106】
開始剤系に存在するルイス酸の量は、様々な範囲に変更できる。ある態様では、ルイス酸の濃度は、存在する電子供与体もしくは塩の濃度を超える値である。ルイス酸の濃度は、生成されるポリマー(例、PIB)を沈澱させる程度に高い値になってはならない。
【0107】
さらに、電子供与体、プロトン捕捉剤、プロトン・スカベンジャー、共通イオン塩、および/または共通イオン塩前駆体は、ポリマーの生成において任意に存在できる。これらの添加剤については、従来の重合系をリビングおよび/または準リビングカチオン重合系に変換し;それにより、狭い分子量分布を伴う制御された構造を有するポリマーが製造される。ここで任意に使用される電子供与体は、特定の化合物もしくは化合物の分類に特に制限されるものではなく、これらに限定されるものでもないが、ピリジンおよびn−アルキルアミン、非プロトン性アミド、スルホキシド、エステル、金属原子に結合している酸素原子を有する金属化合物、その他を含む。特に、ピリジン化合物として、例えば2,6−ジ−tert−ブチルピリジン(DtBP)、2,6−ジメチルピリジン(2,6−DMP)、2,4−ジメチルピリジン(2,4−DMP)、2,4,6−トリメチルピリジン、2−メチルピリジン、ピリジン;N,N−ジメチルアニリン;アミド化合物として、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド;スルホキシド化合物としては、例えばジメチルスルホキシド;エーテル化合物としては、例えばジエチルエーテル;エステル化合物としては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル;リン酸化合物としては、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル、ヘキサメチルリン酸トリアミド;そして酸素含有金属化合物として、例えばテトライソプロピルチタネートを挙げることができる。プロトン・スカベンジャーは、米国特許第5350819号明細書に定義されている。電子供与体は、欧州特許出願公開第0341012号明細書で定義されている。これらの文献は、いずれも参考のため、本願明細書の記載とする。共通イオン塩および/または共通イオン塩前駆体は、任意にリビング添加において追加することができる。一般に、これらの塩は、イオン強度を増加し、遊離のイオンを抑制し、配位子交換と有利に反応を進めるために用いられる。ある態様では、共通イオン塩前駆体は、四級アンモニウム塩、例えばn−BuNClである。他の適切な塩は米国特許第5225492号明細書に開示されており、その記載は全て、参考のため本明細書の記載とする。
【0108】
本明細書に記載する方法は、炭化水素モノマー、すなわち水素原子および炭素原子のみを含む化合物、特にオレフィンおよびジオレフィン、一般に2乃至約20、ある態様では約4乃至8の炭素原子を含むものの重合に適している。この方法は上記のようなモノマーの重合に用いることができ、様々であるが均一な分子量、例えば約300乃至10万を超えるg/モルのポリマーを製造できる。そのようなポリマーは、約100乃至1万g/モルの分子量を有する低分子量の液体もしくは粘性ポリマー、あるいは約1万乃至10万g/モルもしくはそれよりも多い分子量を有する固体状のろうから、可塑性もしくは弾性の物質まで可能である。適切なモノマー物質は、イソブチレン、スチレン、ベータ−ピネン、イソプレン、ブタジエン、前述した種類の置換化合物その他のような化合物を含む。ある態様では、モノマーはイソブチレン、2−メチル−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、ベータ−ピネン、もしくはスチレンである。ある態様では、モノマーがイソブチレンである。モノマーの混合物も使用できる。
【0109】
溶媒は、それらの極性により、成長種の交換のイオン化平衡および速度に影響する。極性は、それらの比誘電率から推定できる。ある態様では、低い比誘電率を有する溶媒が、そのイオン対が比較的解離しないことを理由に使用される。適切な溶媒は、これらに限定されるものではないが、重合温度で使用するため適度に低い凝固点を有する低沸点アルカンおよびアルキルモノもしくはポリハロゲン化物を含む。具体例となる溶媒は、これらに限定されるものではないが、アルカン(一般にC乃至C10アルカンであって、直鎖アルカン、例えばプロパン、直鎖ブタン、直鎖ペンタン、直鎖ヘキサン、直鎖ヘプタン、直鎖オクタン、直鎖ノナン、および直鎖デカン、並びに分岐アルカン、例えばイソブタン、イソペンタン、イソヘキサン、3−メチルペンタン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタンその他を含む)、アルケンおよびハロゲン化アルケニル(例えば、塩化ビニル)、二硫化炭素、クロロホルム、塩化エチル、塩化n−ブチル、塩化メチレン、塩化メチル、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、二酸化硫黄、酢酸無水物、四塩化炭素、アセトニトリル、ネオペンタン、ベンゼン、トルエン、メチルシクロヘキサン、クロロベンゼン、1,1−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエテン、1,2−ジクロロエテン、塩化n−プロピル、塩化イソプロピル、1,2−ジクロロプロパン、もしくは1,3−ジクロロプロパンを含み、カチオン重合において有用な代表的な液体希釈剤もしくは溶媒のいくつかの名称も挙げることができる。混合溶媒(例えば、以上に列挙したものの組み合わせ)も使用できる。
【0110】
ある態様では、重合媒体は実質的に、本明細書に記載する方法で使用するために意図的に添加する開始剤(もしくは開始剤の混合物)以外には、モノマーを重合開始する機能を有する物質を含まない。ある態様では、重合媒体は実質的に、望ましくないカチオン重合の開始剤もしくは促進剤(すなわち、偶発性の開始剤)、例えば、水、アルコール、カルボン酸および酸無水物、ブレンステッド酸、エーテル、もしくはそれらの混合物を含まない。除外すべきアルコールは、1乃至30の炭素原子を含む直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族、芳香族、もしくは脂肪族/芳香族混合アルコールである。同様に、除外すべきカルボン酸、酸無水物および/またはエーテル開始剤は、約1乃至約30の炭素原子を含むハロゲン置換もしくは未置換の直鎖もしくは分岐鎖の脂肪族、芳香族もしくは脂肪族/芳香族混合酸およびエーテルである。
【0111】
ある態様では、重合反応媒体は、水の含有量が約20質量ppm(100万当たりの質量部)未満、そしてメルカプタンの含有量が5質量ppm未満である。水およびメルカプタンのいずれも、ルイス酸触媒に対する活性抑制剤および/または偶発性の開始剤として機能する可能性がある。供給されるオレフィンを従来からの方法で(例、分子ふるいおよび苛性洗浄を使用して)処理し、メルカプタンおよび水の濃度を減少させ、(必要ならば)ジエンを除去し、上記の望ましい水準を達成することができる。
【0112】
重合反応は、一括処理でも、準連続もしくは連続操作でも実施でき、連続操作では成分が連続的な流れで反応器まで配送される。適切な反応器系は、限定されるものではないが、連続攪拌タンク反応器系もしくは押し出し流れ反応器を含み、連続攪拌タンク反応器系では、ポリマーのスラリーもしくは溶液の溢流が、そこからポリマーを回収のために取り出される。ある態様では、反応器の内容物が、攪拌もしくは振盪され、その中の触媒の分布が均一になる。ある態様では、反応の形式は一括処理である;ただし、理論的には押し出し流れ反応器が処理として有利である可能性がある。
【0113】
ポリマーの分子量は、大抵のリビング重合におけるように、モノマーと開始剤との濃度の比率を変更することによって、調整することができる。例えば、米国特許第5350819号、同第5169914号、および同第4910321号の各明細書を参照すること。これらは、参考のため本明細書の記載とする。ポリマー分子量を、目的として選択されたポリマー分子量の定義される限度内になるように制御することは、ポリマーを潤滑油中で分散剤として使用することを意図している場合に、特に重要である。
【0114】
触媒の量はオレフィンモノマーの変換速度に影響し、そのため反応時間の関数としてのポリマーの収量にも影響する。多量のルイス酸触媒は、一般には、早い変換と高い収量との結果を生じる。電子供与体種が存在しない場合、強いルイス酸触媒は、ポリマーの機能を低下させる異性化を導く可能性があり、望ましくない連鎖転移を生じる可能性もある。
【0115】
以上の観点および反応媒体中に存在している可能性がある試薬によって、ルイス酸が多少でも強力に錯体化するとの事実からみて、触媒は、反応を妥当な速度かつ制御された方法で進行させることを可能にするために充分な量で使用しなければならない。ある態様では、触媒濃度は、触媒と開始剤化合物との間の定量的錯体形成におおよそ対応する。ある態様では、触媒は、ルイス酸対開始剤における当量の官能基のモル比で3:1よりも多く使用する。ある態様では、上記比が4:1よりも多い。他の態様では、上記比が6:1よりも多い。ある態様では、比の範囲が3:1乃至30:1である。他の態様では、比の範囲が4:1乃至20:1である。別の態様では、比の範囲が6:1乃至10:1である。
【0116】
イソブチレンがモノマーである場合、BClルイス酸はTiClルイス酸と比較して、一般に比較的遅い生長速度と比較的遅いクエンチング速度になる。これは、BCl系における低いイオン化平衡によるものであって、BCl系は、ここに記載する方法でクエンチング剤として使用する官能基化N−置換ピロールとの反応に利用される反応性カルベニウムイオンを低濃度で生成する。TiCl触媒を使用すると、この系に伴うより大きなイオン化平衡によって、生長速度が速くなり、クエンチング速度がより急速になるように促進される。
【0117】
重合を実施する温度は、高い温度では官能基化の程度が低下する傾向があるため、重要である。これに加えて、リビングもしくは準リビング系によっては、余りにも高い反応温度がカチオン重合のリビング特性を消滅もしくは排除する可能性がある。通常の重合温度の範囲は、約−100℃乃至+10℃である。ある態様では、重合は−10℃以下の温度で実施される。ある態様では、温度は−30℃以下である。ある態様では、温度は約−80℃乃至約−50℃である。ある態様では、温度は約−60℃である。液相反応混合物温度は、従来の手段によって調節する。
【0118】
平均重合時間は、約2乃至約1000分間の範囲で可能である。ある態様では、重合時間は約5乃至約120分間である。ある態様では、重合時間は約10乃至約60分間である。ある態様では、重合時間は約20乃至約30分間である。ある態様では、重合はモノマー変換が80%を超えるために適切な時間で実施される。他の態様では、重合はモノマー変換が90%を超えるために適切な時間で実施される。ある態様では、重合はモノマー変換が98%を超えるために適切な時間で実施される。ある態様では、重合は実質的に定量的にモノマーが変換されるために適切な時間、ただし実質的な経時劣化が起こらない範囲で実施される。経時劣化は、リビング炭素カチオン重合をエンドキャップするまでクエンチし、これによりN−置換ピロールで得られるポリマーを官能基化する前に、鎖末端の異性体化、プロトン除外、あるいは他の終止もしくは不活性化の事態が起きることによって特徴づけられる。
【0119】
他の方法を、他の予め製造されるポリマーの製造に使用でき、そのようなポリマーも、ここに記載するN−置換ピロール類による官能基化に適している。適切な予め製造されるポリマーは、イニファー技術(後述する)により、末端リビングおよび準リビング重合生成物から製造されるものである。具体的には、従来の重合を行ってから追加の塩化水素化工程を行うか、あるいは他の重合技術を、最終生成物が鎖末端、例えば適切なルイス酸触媒でイオン化すること、それによりここに記載しているN−置換ピロール類で適切に官能基化することが可能である三級塩化物を有するポリマー骨格である限り、採用して実施できる。末端三級ハロゲン化基を有するポリマーを得る方法は、開始剤−転移剤の系、いわゆるイニファー(inifer:「ini」tiator−trans「fer」機能より)の使用を含む。これらのイニファーおよびそれから製造されるテレキリックポリマーの種類に関する用途の詳細な検討内容は、米国特許第4316673号および同第4342849号の各明細書に記載があり、これらの開示内容は参考のため本明細書の記載とする。そのような三級ハロゲン化(一般には三級塩素)末端を有するポリイソブチレンは、適切な触媒もしくはルイス酸およびN−置換ピロールクエンチング剤と組み合わせて、ここに記載する方法により官能基化ポリマーを製造できる。
【0120】
これらの予め製造された末端ハロゲン化ポリマーは、リビング重合系に存在する開始剤およびモノマーの代わりであると考えることができ、末端基の機能の観点でモノマーのリビング重合により製造されるポリマーと同等であると扱われる。一般には、これらのハロゲン化ポリマーは、リビング重合添加においてモノマーおよび開始剤を加える場合と全く同じ方法で、選択された溶媒中にポリマーを溶解することにより、触媒系に加える。触媒成分の化学量論は、予め製造されたポリマーが開始剤の代わりであること、すなわち一つのハロゲン化末端が一つの開始剤部分と同等であることを仮定して、計算される。全ての成分を加え、N−置換ピロールクエンチング剤およびルイス酸を導入する前に、望ましい温度で平衡させる。ある態様では、官能基化N−置換ピロールクエンチング剤を加え、次がルイス酸である。ある態様では、ルイス酸を加え、次が官能基化N−置換ピロールクエンチング剤である。ある態様では、官能基化N−置換ピロールクエンチング剤およびルイス酸を同時に加える。ある態様では、官能基化N−置換ピロールクエンチング剤および/またはルイス酸を、反応に加える前、最初に溶媒もしくは混合溶媒中に溶解することができる。官能基化は、ここに記載する方法に従って進行する。
【0121】
準リビング炭素カチオンポリマーの三級塩化鎖末端をエンドキャップするために適した官能基化N−置換ピロール類は、「柔らかい」求核剤と呼ばれ、これは、それらが準リビングポリマー炭素カチオンによる求電子性芳香族置換(EAS)には充分に反応するが、ルイス酸と錯体形成もしくはルイス酸を分解するには求核性が不充分であることを意味する。ある態様では、官能基化N−置換ピロール類が、ピロールよりも求核性ではなく、かつ触媒錯体を不活性化しない成分によって置き換えられる。ピロール窒素原子の孤立電子対は、5員の芳香族ピロール環における6個一組の芳香族電子に参加している。この構造は、窒素のルイス酸との錯体生成を著しく減少させ、芳香族環の求核性の性質を増加させ、それによりカルベニウムイオンと高い反応性を有する柔らかい求核剤を生成させる。
【0122】
本発明が提供するある態様では、官能基化N−置換ピロール類は、実質的にモノ置換のみを受ける。すなわち、官能基化N−置換ピロールクエンチング剤が一つの準リビング炭素カチオンポリマーによって環において置換された後は、第二の置換を受けることがない。官能基化N−置換ピロールにおける第二の置換は、「EAS結合」と呼ばれる。
【0123】
ある態様では、N−置換ピロールは式IIの化合物である:
【0124】
【化21】
【0125】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子および1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
mは2乃至20の整数であり;そして
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNである。
【0126】
ある態様では、Zは−F、−Cl、−Br、−I、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、もしくは−SCNである。
【0127】
理論として制限するものではないが、ピロールの1位(ピロールの窒素原子上)におけるZ−含有置換基の位置は、反応の結果に影響する。他の種類の置換では、異なる結果が導かれる。例えば、米国特許第6969744号明細書に開示されているように、未置換ピロールによる準リビングPIBのクエンチングは、単一のPIB鎖に結合したピロール残基を含む生成物分子および二つのPIB鎖に結合(すなわち、EAS結合)したピロール残基を含む生成物分子からなる二方式のポリマー生成物を生じる。別の例としては、米国特許出願公開第2006/0041081号明細書が、2,5−ジ置換ピロール類による準リビングPIBのクエンチングは、主にエキソオレフィンPIBを生じることを開示している。
【0128】
ここに記載する方法で使用するために適した官能基化N−置換ピロール化合物を製造するための化学的方法は、この技術で良く知られており;例えば、置換ピロール類の合成、反応性、および物理的性質、48巻、1〜2部、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(1992年)を参照でき、その全てを参照のため本明細書の記載とする。多くの場合、望ましい官能基化N−置換ピロールは、異なる前駆体N−置換ピロールから簡単な求核性置換によって容易に製造できる。限定的でない例としては、N−(ブロモアルキル)ピロールを、臭化物基を除き、それをアジド基で置き換えるために、適切な条件下でアジ化ナトリウムと反応させることができる。
【0129】
N−置換基で官能基化され、適切に使用できるN−置換ピロール類の具体的な例は、これらに限定されるものではないが:N−(ハロアルキル)ピロール類、例、N−(2−フルオロエチル)ピロール、N−(3−フルオロプロピル)ピロール、N−(4−フルオロブチル)ピロール、N−(6−フルオロヘキシル)ピロール、N−(8−フルオロオクチル)ピロール、N−(2−フルオロ−1−プロピル)ピロール、N−(1−フルオロ−2−プロピル)ピロール、N−(2−クロロエチル)ピロール、N−(3−クロロプロピル)ピロール、N−(4−クロロブチル)ピロール、N−(6−クロロヘキシル)ピロール、N−(8−クロロオクチル)ピロール、N−(2−クロロ−1−プロピル)ピロール、N−(1−クロロ−2−プロピル)ピロール、N−(2−ブロモエチル)ピロール、N−(3−ブロモプロピル)ピロール、N−(4−ブロモブチル)ピロール、N−(6−ブロモヘキシル)ピロール、N−(8−ブロモオクチル)ピロール、N−(2−ブロモ−1−プロピル)ピロール、N−(1−ブロモ−2−プロピル)ピロール、N−(2−ヨードエチル)ピロール、N−(3−ヨードプロピル)ピロール、N−(4−ヨードブチル)ピロール、N−(6−ヨードヘキシル)ピロール、N−(8−ヨードオクチル)ピロール、N−(2−ヨード−1−プロピル)ピロール、N−(1−ヨード−2−プロピル)ピロール;N−(シアノアルキル)ピロール類、例、N−(2−シアノエチル)ピロール、N−(3−シアノプロピル)ピロール、N−(4−シアノブチル)ピロール、N−(6−シアノヘキシル)ピロール、N−(8−シアノオクチル)ピロール、N−(2−シアノ−1−プロピル)ピロール、N−(1−シアノ−2−プロピル)ピロール;N−(アジドアルキル)ピロール類、例、N−(2−アジドエチル)ピロール、N−(3−アジドプロピル)ピロール、N−(4−アジドブチル)ピロール、N−(6−アジドヘキシル)ピロール、N−(8−アジドオクチル)ピロール、N−(2−アジド−1−プロピル)ピロール、N−(1−アジド−2−プロピル)ピロール;N−(イソシアナトアルキル)ピロール類、例、N−(2−イソシアナトエチル)ピロール、N−(3−イソシアナトプロピル)ピロール、N−(4−イソシアナトブチル)ピロール、N−(6−イソシアナトヘキシル)ピロール、N−(8−イソシアナトオクチル)ピロール、N−(2−イソシアナト−1−プロピル)ピロール、N−(1−イソシアナト−2−プロピル)ピロール;N−(イソチオシアナトアルキル)ピロール類、N−(シアナトアルキル)ピロール類、その他を含む。
【0130】
リビングポリマーもしくは末端がtert−アルキルハロゲン化物であるポリマーを、官能基化N−置換ピロールと結合させるための技術は、当業者に知られている代表的な条件であって、これらに限定されるものではないが、例えば、官能基化N−置換ピロールを溶媒中に懸濁し、その後、そのままの、懸濁した、あるいは溶解したリビングポリマーと結合させる。官能基化N−置換ピロールを、そのまま直接、そのままの、懸濁した、もしくは溶解したリビングポリマーに加えて、それにより重合をクエンチしてもよい。官能基化N−置換ピロールによるクエンチングは、官能基化N−置換ピロールをリビングもしくは準リビングポリマーの炭素カチオン中心に共有結合させ、それによりリビングポリマーを官能基化する。ポリマー中の官能基化N−置換ピロールの官能基の数は、リビングポリマーもしくは末端がtert−アルキルハロゲン化物であるポリマーが生成するように、使用する開始剤中の開始部分の数によって決定される。例えば、2−クロロ−2,4,4−トリメチルペンタンからのイソブチレンの開始は、一つの生長中心およびそれによるポリマー当たり一つの官能基を伴うポリマーを導く。これに対して、1,3−ジ(1−クロロ−1−メチルエチル)−5−tert−ブチルベンゼンは、二つの官能基を伴うポリマーを製造するであろう。ある態様では、官能基化N−置換ピロール−官能基化カチオン性ポリマーは、ほぼ単分散であって、実質的にEAS結合ポリマーを有していない。
【0131】
本発明が提供するある態様では、ポリマーが少なくとも一つの末端N−置換ピロール部分を有し、これらの官能基化ポリマーは任意の適切なカチオン重合性モノマーから誘導できる。従って、官能基化ポリマーは、実質的に同じ繰り返しモノマー単位を有するホモポリマー、あるいは二つ以上の異なる繰り返し単位を有するコポリマーのいずれでもよい。特に、AB型ブロックコポリマーおよびABA型トリブロックコポリマーを製造できる。官能基化ポリマーは、開始剤の選択に基づいて様々な炭化水素先端基を含むこともできる。開始剤は、成長連鎖末端に類似する、例えば、ポリスチレンに対して1−フェニルエチル誘導体もしくはポリイソブチレンに対して2,4,4−トリメチルペンチル誘導体であるか、あるいは、いくつかの望ましい基、例えばアルキル、クミル、エステル、シリル等を分け与えてもよい。これに加えて、多官能開始剤を用いることにより、いわゆる星状ポリマーを製造できる。従って、官能基化ポリマーの例は、単官能ポリマーについては(開始剤残基)−(ポリオレフィン)−(官能基化N−置換ピロール)で、多官能開始剤については(開始剤残基)−[(ポリオレフィン)−(官能基化N−置換ピロール)]で表すことができ、ここでrは開始剤の官能基数と等しい。加えて、カップリング剤を用いて、複数のポリマー鎖を連絡することもできる。以上で説明したように、「開始剤残基」は、多価の基(−CR−Rを示し、R、R、R、およびrは以上で定義した通りである。「ポリオレフィン」は少なくとも一つのカチオン重合性モノマーからのポリマー断片を表し;それゆえ、官能基化N−置換ピロールポリマーは、ホモポリマー、ランダムもしくはブロックコポリマー等のいずれでもよく、(ポリオレフィン)および(官能基化N−置換ピロール)は、独立に選択されるため、それぞれについて、同じでも異なっていてもよい。
【0132】
ある態様では、クエンチング反応において、当量の連鎖末端当たり一当量との少ない官能基化N−置換ピロールであっても、官能基化の実施には充分である。より多くの量の官能基化N−置換ピロールも、もちろん利用できる。ある態様では、官能基化N−置換ピロール対連鎖末端の比の範囲が、連鎖末端当たり1乃至20当量であり;ある態様では、それが連鎖末端当たり1乃至5当量であり、ある態様では、それが連鎖末端当たり1乃至2当量である。(連鎖末端は、開始剤分子当たりの開始部分の数を確認し、その数に存在する開始剤分子の数を掛けることによって決定される。)一般には、反応は様々な温度において、迅速かつ定量的である。官能基化N−置換ピロールはそのまま添加することができ、ある態様では重合のために選択した溶媒中でピロールの溶液として添加する。添加は単独かつ迅速でよく、あるいはより遅くなるように制御された調節された添加であってもよい。追加のルイス酸触媒、プロトン捕捉剤、および/または電子供与体、もしくはそれらの任意の組み合わせは、前述したリビング重合系の代表的な成分であって、官能基化N−置換ピロールの添加の前、同時、もしくはそれに引き続いて加えることができる。ある態様では、ルイス酸はN−置換ピロールと不可逆的に反応しない。
【0133】
リビングポリマーが官能基化N−置換ピロールと反応すると、その生成物はその状態で使用することができ、ある態様ではそれを公知の化学物質で修飾して別の生成物を得る。
【0134】
ある態様では、生成物を一つもしくは複数の試薬と反応させて、式IIIの化合物を生成させる:
【0135】
【化22】
【0136】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
R’は一価のポリオレフィン基であり;
mは2乃至20の整数であり;そして
は−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、−OR、ポリエーテル基、ポリエーテルアミノ、もしくは−COORであって;
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、もしくはアリールであり;そして
は水素原子、アルキル、アリール、アルカリール、もしくはアラルキルである。
【0137】
ある態様では、Zは−NRである。別の態様では、RおよびRの少なくとも一つが水素原子である。別の態様では、Rが水素原子であって、そしてRがアリールである。別の態様では、−NRが下記で表される。
【0138】
【化23】
【0139】
別の態様では、−NRは−NHである。
【0140】
ある態様では、試薬が求核剤もしくは還元剤である。ある態様では、試薬が求核剤である。ある態様では、試薬がNaNもしくはアニリンである。ある態様では、試薬が還元剤である。ある態様では、試薬が水素、パラジウム、および炭素である。ある態様では、試薬がボランである。
【0141】
ある態様では、式IIIの化合物が下記で表される:
【0142】
【化24】
【0143】
式中、
R”は二価のポリオレフィン基であり、
は官能基の数がrである単官能もしくは多官能の炭素カチオン開始剤残基であって、rは1乃至8の整数である。
【0144】
ある態様では、R’はポリイソブチレン基である。
【0145】
ある態様では、rは2乃至3である。ある態様では、rが2である。
【0146】
ある態様では、Rは下記で表される:
【0147】
【化25】
【0148】
式中、
はHもしくはアルキルである。
ある態様では、Rはtert−ブチルである。
【0149】
ある態様では、Rは下記で表される。
【0150】
【化26】
【0151】
ある態様では、Rは下記で表される。
【0152】
【化27】
【0153】
ある態様では、Rは下記で表される。
【0154】
【化28】
【0155】
ある態様では、Rは水素原子である。
【0156】
ある態様では、Rはアルキルではない。
【0157】
実施可能な様々な修飾反応の限定的でない例は、以下の通りである。Zは離脱基として求核性試薬によって除かれ、これにより求核性試薬とZが以前結合していた炭素との間に共有結合を形成することができる。あるいは、不飽和含有基が求核剤との付加反応を受けて、それにより求核剤とZの原子の一つとの間に共有結合を形成することができる;この場合、Zはポリマーから除かれず、むしろ求核剤をポリマーに結合させる連結部分として機能する。これに加えて、Zは還元され、酸化され、水素化され、および/または加水分解されることもできる;例えば、−Nもしくは−CNは、水素化物含有還元剤もしくは他の還元剤、あるいは触媒水素化によって還元され、一級アミンを生成できる。それにより、一級アミンは、それぞれ本来の数の炭素原子、もしくは本来の数に一つ加えた炭素原子を含む炭化水素鎖によってピロール環に結合する。これらの処理は、新たな官能基をポリマー連鎖末端に結合できる一般的な方法を表している。ある態様では、Zはハロゲン化物もしくは偽ハロゲン化物によって除かれる。ある態様では、Zはアンモニア、一級アミン、もしくは二級アミンで置き換えられて、ポリマー連鎖末端に塩基性アミン機能を生じることができる。これらの修飾反応は、リビングポリマーを官能基化N−置換ピロールと反応させるために使用する同じ反応器で実施することができ、あるいは、それらを別の反応器で実施することもできる;すなわち、修飾の前に官能基化N−置換ピロール含有ポリマーを分離することは任意である。
【0158】
リビングポリマーを官能基化N−置換ピロールでクエンチング(および任意にその場での修飾反応を実施)後、生成物は一般には、当業者に知られている通常の最終工程の対象になる。これらの工程は一般には、プロトン性化合物、例えば水、アルコール、アンモニア、アミン、もしくはそれらの混合物を接触させることによるルイス酸触媒の不活性化、苛性/HO洗浄および/または酸/HO洗浄による触媒残渣の抽出、炭化水素/水相分離工程(ここで不活性化および抽出されたルイス酸触媒は水相中に分離される)、および中和された触媒の残存量を除くための水洗工程を含む。ポリマー生成物は一般には、次に脱ブタン塔で分離して、未反応の揮発性モノマー、例えば、イソブチレンを除去し、次にさらに分離して軽質末端ポリマー(例、C24炭素ポリマー)を除去する。除去処理されたポリマー生成物は一般には、次に窒素で乾燥する。
【0159】
ここで提供される生成物の種類は、狭い分子量分布(Mw/Mn)を持つ。ある態様では、分子量分布が約4未満である。ある態様では、分子量分布が約2.5未満である。別の態様では、分子量分布が1.75未満である。さらに別の態様では、分子量分布が1.5未満である。他の態様では、分子量分布が1.2未満である。ある態様では、その範囲が1.01乃至1.4である。同様に、上記の方法は、既に利用されている商業的に実現可能な手段よりも、官能基化の程度がより大きなポリマーを製造する。ある態様では、官能基化の程度が約70%以上である。ある態様では、官能基化の程度が80%以上である。別の態様では、官能基化の程度が90%以上である。さらに別の態様では、官能基化の程度が98%以上である。官能基化の程度はプロトンNMRで決定される。
【0160】
ここに記載する新規な官能基化N−置換ピロールポリマーは、これまでに記載した任意のカチオン重合性モノマーから誘導される末端置換ポリマーを含む。ある態様では、官能基化ポリマーは、ポリマー鎖当たり少なくとも4のモノマー単位を含み、より一般的には、少なくとも350〜100000g/モル以上に至るまでの数平均分子量で特徴づけられるであろう。分子量の範囲は、特定のポリマーについて決定することができる。ある態様では、官能基化ポリマーの範囲は、潤滑油添加剤として使用するためには100000g/モル以下であり;粘度向上剤として使用するためには20000乃至100000g/モル、分散剤および清浄剤として使用するためには500乃至20000g/モルの特定範囲内である。低分子量ポリマーは潤滑油添加剤としての分散剤の製造に有用であり、低分子量機能性N−置換ピロールポリマーが特に有用である。ある態様では、清浄剤および分散剤として官能基化されたポリマーは、約500乃至5000g/モルの平均分子量を有する。ある態様では、清浄剤および分散剤として官能基化されたポリマーは、500乃至3000g/モルの平均分子量を有する。ある態様では、清浄剤および分散剤として官能基化されたポリマーは、700乃至2000g/モルの平均分子量を有する。さらに別の態様では、清浄剤および分散剤として官能基化されたポリマーは、700乃至1500g/モルの平均分子量を有する。二官能末端官能基化ポリマーはブロックコポリマーのブロック断片として、例えば熱可塑性エラストマーにおける軟質部分として有用であり、二官能および多官能末端官能基化ポリマーは、架橋ネットワークポリマーにおける鎖要素として有用である。これらの用途では、分子量の範囲は、ある態様では500乃至20000g/モルである。ある態様では、分子量の範囲は500乃至5000g/モルである。ある態様では、分子量の範囲は700乃至3000g/モルである。ある態様では、以上に列挙した分子量は、多角レーザー光散乱検出器を取り付けたサイズ排除クロマトグラフィーで測定された数平均分子量である。ここに記載するポリマーの製造を、ある方法および条件下で実施して、様々な分子量のポリマーを得ることできる。ポリマーは分子量の範囲に基づき、適宜特徴づけることができる。低分子量(<5000g/モル)、中分子量(5000乃至30000g/モル)、および高分子量(30000乃至100000g/モル)のポリマーとコポリマーとを製造できる。
【0161】
本発明の態様では、式VIのテレキリックポリマーである:
【0162】
【化29】
【0163】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子もしくは1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
mは2乃至20の整数であり;
nは0乃至2000の整数であり;そして
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、−SCN、−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、−OR、ポリエーテル基、ポリエーテルアミノ、もしくは−COORであって;
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、もしくはアリールであり;そして
は水素原子、アリール、アルカリール、もしくはアラルキルである。
【0164】
ある態様では、Zに隣接する−C(R)−基のRもしくはRの少なくとも一つは水素原子である。ある態様では、Zに隣接する−(CR)−基は−CH−である。ある態様では、RおよびRがいずれも水素原子である。
【0165】
ある態様では、mが2乃至6である。ある態様では、mが2乃至4である。ある態様では、mが2乃至3である。ある態様では、mが2である。
【0166】
ある態様では、nが2乃至1000である。ある態様では、nが3乃至500である。ある態様では、nが4乃至260である。ある態様では、nが4乃至20である。ある態様では、nが6乃至50である。ある態様では、nが140乃至260である。
【0167】
ある態様では、Zが−Br、−CN、−N、もしくは−NRである。
【0168】
ある態様では、Zが−NRである。ある態様では、RおよびRの少なくとも一つが水素原子である。ある態様では、Rが水素原子であり、Rがアリールである。ある態様では、−NRが下記で表される。
【0169】
【化30】
【0170】
ある態様では、−NRが−NHである。
【0171】
ある態様では、mが2乃至4であり、Zが−Br、−CN、−N、もしくは−NRであり、RおよびRがいずれも水素原子である。
【0172】
ある態様では、Rは水素原子である。
【0173】
本発明のある態様は、式VIIのテレキリックポリマーである:
【0174】
【化31】
【0175】
式中、
およびRは、−(CR)−単位毎に独立に、水素原子および1乃至6の炭素原子のアルキルであり;
は官能基の数がrである多官能炭素カチオン開始剤残基であって、rは1乃至8であり;
mは2乃至20の整数であり;
nは、rの鎖状部分毎に独立に、0乃至2000の整数であり;そして
は−F、−Cl、−Br、−I、−At、−CN、−NC、−N、−NCO、−OCN、−NCS、−SCN、−NR、−N[(R)(COR)]、−N[(COR)(COR)]、ポリアミノ、ポリアミドアミノ、ポリアミノアミド、−OR、ポリエーテル基、ポリエーテルアミノ、もしくは−COORであって;
およびRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル、もしくはアリールであり;そして
は水素原子、アリール、アルカリール、もしくはアラルキルである。
【0176】
ある態様では、Zに隣接する−C(R)−基のRもしくはRの少なくとも一つは水素原子である。ある態様では、Zに隣接する−(CR)−基は−CH−である。ある態様では、RおよびRがいずれも水素原子である。
【0177】
ある態様では、mが2乃至6である。ある態様では、mが2乃至4である。ある態様では、mが2乃至3である。ある態様では、mが2である。
【0178】
ある態様では、nは、rの鎖状部分毎に独立に、2乃至1000である。ある態様では、nが3乃至500である。ある態様では、nが4乃至260である。ある態様では、nが4乃至20である。ある態様では、nが6乃至50である。ある態様では、nが140乃至260である。
【0179】
ある態様では、Zが−Br、−CN、−N、もしくは−NRである。
【0180】
ある態様では、Zが−NRである。ある態様では、RおよびRの少なくとも一つが水素原子である。ある態様では、Rが水素原子であり、Rがアリールである。ある態様では、−NRが下記で表される。
【0181】
【化32】
【0182】
ある態様では、−NRが−NHである。
【0183】
ある態様では、mが2乃至4であり、Zが−Br、−CN、−N、もしくは−NRであり、RおよびRがいずれも水素原子である。
【0184】
ある態様では、rが2乃至4である。ある態様では、rが2乃至3である。ある態様では、rが2である。
【0185】
ある態様では、Rは水素原子である。
【0186】
式IVの化合物は一般には、ピロールの2位および3位においてN−置換ピロールに結合しているポリイソブチル基を有する混合物である。同様に、式Vの化合物は一般には、ピロールの2位および3位においてN−置換ピロール部分に結合しているポリイソブチレン基を有する混合物である。
【0187】
[燃料組成物および濃縮物]
本明細書に記載した化合物、特に式IVで表される化合物は、ガソリンもしくはディーゼルの領域において沸点を有する炭化水素留出燃料における添加剤として有用である。ある態様では、式IVの化合物は低い分子量を有する。ある態様では、nは2乃至20から選択される。望ましい清浄性および分散性を達成するために必要な添加剤の適切な濃度は、使用する燃料の種類、他の清浄剤、分散剤、および他の添加剤等の存在に基づいて変化する。最善の結果を達成するために、ある態様では添加剤の濃度が約25乃至7500質量ppmであり、別の態様では約25乃至2500質量ppmである。
【0188】
添加剤は、約150°F乃至400°F(もしくは65℃乃至200℃)の範囲において沸点を有する不活性で安定な親油性有機溶媒を用いて、濃縮物として処方することができる。ある態様では、脂肪族もしくは芳香族炭化水素溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、または高沸点芳香族もしくは芳香族シンナーを用いる。約3乃至8の炭素原子の脂肪族アルコール、例えばイソプロパノール、イソブチルカルビノール、n−ブタノールその他を炭化水素溶媒と組み合わせても、清浄剤−分散剤系の添加剤への使用に適している。濃縮物について、ある態様では、存在する添加剤の量は、約10質量%から一般に約70質量%を超えない量になるであろう。ある態様では、添加剤の量は約10乃至50質量%になるであろう。別の態様では、添加剤の量は約20乃至40質量%になるであろう。
【0189】
ガソリン燃料では、他の燃料添加剤は、ここに記載する添加剤と共に用いることができ、例えば、t−ブチルメチルエーテルのような酸素添加剤、メチルシクロペンタジエニルマンガントリカルボニルのようなアンチノック剤、および炭化水素アミン、炭化水素ポリ(オキシアルキレン)アミン、炭化水素ポリ(オキシアルキレン)アミノカルバメート、コハク酸イミド、もしくはマンニッヒ塩基のような他の分散剤/清浄剤を含む。加えて、酸化防止剤、金属不活性化剤、および抗乳化剤が存在してもよい。
【0190】
ディーゼル燃料では、他の良く知られている添加剤を使用することができ、それらは、例えば、流動点降下剤、流動性向上剤、セタン価改善剤その他を含む。
【0191】
燃料溶解性の非揮発性キャリヤー液もしくは油も、ここに記載する官能基化ポリマーと共に用いることができる。キャリヤー液は、化学的に不活性な炭化水素溶解性液体ビヒクルであって、燃料添加剤の非揮発性残渣(NVR)もしくは溶媒を含まない液体留分を実質的に増加させるが、オクタン価要求値の増加に極端に寄与する訳ではない。キャリヤー液は、天然もしくは合成油、例えば、鉱物油、精製石油、水素化及び非水素化ポリ(α−オレフィン)、および合成ポリオキシアルキレンから誘導される油(そのようなキャリヤー液は、例えば米国特許第4191537号明細書に記載)を含む合成ポリアルカンおよびアルケン、並びにポリエステル(例えば、米国特許第3756793号、同第5004478号、欧州特許出願公開第0356726号(1990年3月7日公開)、および同第0382159号(1990年8月16公開)の各明細書に記載されるもの)であってもよい。これらのキャリヤー液は、ここに記載する燃料添加剤に対してキャリヤーとして機能し、堆積物の除去および阻止を補助すると信じられている。キャリヤー液は、ここに記載する官能基化ポリマーと組み合わせて使用しても、相乗的に堆積物を制御する性質を示すことができる。
【0192】
ある態様では、キャリヤー液は炭化水素燃料の約25乃至7500質量ppmの範囲の量で用いられる。ある態様では、キャリヤー液は燃料の約25乃至2500ppmの範囲の量で用いられる。ある態様では、キャリヤー液対堆積物制御添加剤の比が約0.5:1乃至10:1の範囲になるであろう。別の態様では、キャリヤー液対堆積物制御添加剤の比が約0.5:1乃至4:1の範囲になるであろう。さらに別の態様では、キャリヤー液対堆積物制御添加剤の比が約0.5:1乃至2:1の範囲になるであろう。燃料濃縮物に用いられる場合、キャリヤー液は、一般に約20乃至60質量%、ある態様では約30乃至50質量%の範囲の量で存在するであろう。
【0193】
[潤滑油組成物および濃縮物]
本明細書に記載した化合物、特に式IVで表される化合物は、潤滑油における清浄および分散添加剤として有用である。一般に、クランクケース油で用いられる場合、そのような化合物は全組成物の約1乃至約10質量%(活量基準で)、例えば約5質量%未満(活量基準で)の量で用いることができる。活量基準とは、組成物の残りに対して相対的に添加剤の量を決定する場合、ポリコハク酸イミドの活性成分のみを考慮することを示す。希釈剤および他の任意の不活性成分、例えば、未反応のポリオレフィンは除かれる。他に示されることがなければ、潤滑油および最終組成物もしくは濃縮物を記述する際に、活性成分の量は化合物に関するものを意図している。
【0194】
本明細書に記載した化合物と共に用いる潤滑油は、潤滑粘度の鉱物もしくは合成油であることができ、ある態様では内燃機関のクランクケースでの使用に適している。クランクケース潤滑油は一般には、0°F(−17.8℃)で約1300cSt乃至210°F(99℃)で22.7cStの粘度を有している。有用な鉱物油は、パラフィン系、ナフテン系、および潤滑油組成物での使用に適した他の油を含む。合成油は、炭化水素合成油と合成エステルとの双方を含む。有用な合成炭化水素油は、適切な粘度を有するアルファ・オレフィン類のポリマー、例えば1−デセントリマーのようなC乃至C12のアルファ・オレフィン類の水素化液状オリゴマーを含む。同様に、適度な粘度のアルキルベンゼン類、例えばジドデシルベンゼンを使用することができる。有用な合成エステルは、モノカルボン酸およびポリカルボン酸の双方と、モノヒドロキシアルカノールおよびポリオールとのエステルを含む。例としては、アジピン酸ジドデシル、ペンタエリスリトールテトラカプロエート、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジラウリルその他がある。モノおよびジカルボン酸とモノおよびジヒドロキシアルカノールとの混合物から製造される複合エステルも用いることができる。炭化水素油と合成油との配合も有用である。例えば、10乃至25質量%の水素化1−デセントリマーを75乃至90質量%の150SUS(100°F)鉱物油と配合したものは、優れた潤滑油のベースになる。
【0195】
組成物中に存在できる他の添加剤は、清浄剤(過塩基性および非過塩基性)、錆止め剤、消泡剤、金属不活性化剤、流動点降下剤、酸化防止剤、抗摩耗剤、ジチオリン酸亜鉛、および様々な他の良く知られている添加剤を含む。
【0196】
下記の添加剤成分は、本発明に好ましく用いることができる成分のいくつかの例である。これらの添加剤の例は本発明を説明するために提供されるが、添加剤を限定することを意図するものではない。
【0197】
1.金属清浄剤
上記の過塩基性カルシウムフェネート清浄剤に加えて、本発明で用いることができる他の清浄剤は、アルキルもしくはアルケニル芳香族スルホネート、ホウ素化スルホネート、硫化もしくは非硫化の多ヒドロキシアルキルもしくはアルケニル芳香族化合物の金属塩、アルキルもしくはアルケニルヒドロキシ芳香族スルホネート、硫化もしくは非硫化のアルキルもしくはアルケニルナフテネート、アルカン酸の金属塩、アルキルもしくはアルケニル多酸の金属塩、およびそれらの化学的および物理的混合物を含む。
【0198】
2.抗摩耗剤
その名称が包含するように、これらの添加剤は金属製部品を動かすことによる摩耗を軽減する。そのような添加剤の例は、限定されるものではないが、潤滑油組成物の0.08質量%以下であるホスフェート、カルバメート、エステル、およびモリブデン錯体を含む。
【0199】
3.錆止め剤(抗錆剤)
(a)非イオン性ポリオキシエチレン界面活性剤:
ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、およびポリエチレングリコールモノオレエート。
(b)他の化合物:
ステアリン酸および他の脂肪酸、ジカルボン酸、金属石鹸、脂肪酸アミン塩、重質スルホン酸の金属塩、多価アルコールの部分的カルボン酸エステル、およびリン酸エステル。
【0200】
4.抗乳化剤
アルキルフェノールおよびエチレンオキシドの付加生成物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、およびポリオキシエチレンソルビタンエステル。
【0201】
5.摩擦調整剤
脂肪族アルコール、脂肪酸、アミン、ホウ素化エステル、他のエステル、ホスフェート、ホスフィット、およびホスホネート、ただしエトキシ化アミンを除く。
【0202】
6.多機能添加剤
硫化オキシモリブデンジチオカルバメート、硫化オキシモリブデン有機ジチオホスフェート、オキシモリブデンモノグリセリド、オキシモリブデンジエチレートアミド、アミン−モリブデン錯体化合物、および硫黄−含有モリブデン錯体化合物。
【0203】
7.粘度指数向上剤
ポリメタクリレート型ポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、スチレン−イソプレンコポリマー、水和スチレン−イソプレンコポリマー、ポリイソブチレン、および分散剤型粘度指数向上剤。
【0204】
8.流動点降下剤
ポリメチルメタクリレート。
【0205】
9.消泡剤
アルキルメタクリレートポリマーおよびジメチルシリコーンポリマー。
【0206】
10.金属不活性化剤
ジサリチリデンプロピレンジアミン、トリアゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、およびメルカプトベンズイミダゾール。
【0207】
11.分散剤
アルケニルコハク酸イミド、他の有機化合物で修飾されたアルケニルコハク酸イミド、エチレンカーボネートもしくはホウ酸による後処理で修飾されたアルケニルコハク酸イミド、ペンタエリスリトール、フェネート−サリチレート、それらの後処理した類似物、ホウ酸のアルカリ金属塩もしくはホウ酸のアルカリ金属、アルカリ土類金属との混合塩、水和ホウ酸アルカリ金属塩の分散物、ホウ酸アルカリ土類金属塩の分散物、ポリアミド無灰分散剤その他、もしくはそのような分散剤の混合物。
【0208】
12.酸化防止剤
酸化防止剤は、鉱物油が使用中に劣化する傾向を低減する。この劣化は、例えば金属表面上のスラッジおよびワニス様堆積物のような酸化生成物および粘度の増加によって確認される。本発明において有用な酸化防止剤の例は、これらに限定されるものではないが、フェノール型(フェノール性)酸化防止剤、例えば4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデン−ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−ノニルフェノール)、2,2’−イソブチリデン−ビス(4,6−ジメチルフェノール)、2,2’−5−メチレン−ビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−l−ジメチルアミノ−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−4−(N,N’−ジメチルアミノメチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−10−ブチルベンジル)スルフィド、およびビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)を含む。ジフェニルアミン型酸化防止剤は、限定されるものではないが、アルキル化ジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン、およびアルキル化−アルファ−ナフチルアミンを含む。他の種類の酸化防止剤は、金属ジチオカルバメート(例、ジチオカルバミン酸亜鉛)および15−メチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)を含む。
【0209】
本明細書に記載した化合物およびここに記載したように製造された化合物は、作動液、舶用クランクケース潤滑油その他における分散剤および清浄剤として用いられることも意図されている。ある態様では、ここに記載した化合物を0.1乃至5質量%(活性ポリマー基準)で液に添加し、別の態様では0.5乃至5質量%(活性ポリマー基準)で添加する。ここに記載した化合物は添加剤濃縮物においても用いることができ、添加剤濃縮物は、ある態様では、90乃至10%(例、20乃至60質量%)の有機液体希釈剤と10乃至90質量%(例、乾量基準で80乃至40質量%)のここに記載する化合物とを含む。一般に濃縮物は、それらの輸送および保存における取り扱いを容易にするために充分な希釈剤を含む。濃縮物のための適切な希釈剤は、任意の不活性希釈剤を含む。ある態様では、希釈剤は、濃縮物が潤滑油と容易に混合されて潤滑油組成物が製造できるような潤滑粘度の油である。希釈剤として用いることができる適切な潤滑油は、(潤滑粘度の油を使用することができるが)一般には0°F(−17.8℃)で約1300cSt乃至210°F(99℃)で22.7cStの範囲に粘度を有する。
【実施例】
【0210】
本発明の内容は下記の各例においてさらに説明するが、それらは本発明の範囲を制限するものではない。
【0211】
[実施例1]
1−(2−クロロエチル)ピロール(PyCl)で準リビングPIBをその場でクエンチすることによる単官能一級塩化末端PIBの合成
以下の操作を、乾燥窒素雰囲気下、−70℃に設定され恒温に制御されたヘキサン/ヘプタン冷浴を取り付けたグローブボックス内で実施した。テフロンで裏打ちされたキャップを取り付けた75mLの培養管中に、10mL(−70℃)のCHCl、15mL(−70℃)のn−ヘキサン、および0.029mL(室温、0.027g、0.25ミリモル)の2,6−ルチジンを加えた。この混合物を−70℃に冷却し、次に6.67mL(−70℃、4.7g、83ミリモル)のIBを反応器に加えた。周期的に渦を巻くように攪拌しながら10分間で平衡に達した後、0.605mL(室温、0.53g、3.6ミリモル)のTMPClを反応器に移した。周期的に渦を巻くように攪拌しながら5分間で平衡に達した後、1.175mL(2.03g、10.7ミリモル)のTiClを反応器に移し、重合を開始した。初期の試薬濃度は、以下のように定めた:
[TMPCl]=0.11M;
[IB]=2.5M;
[26Lut]=7.5×10−3M;
[TiCl]=0.32M。
【0212】
この重合は、40分間進行させた。次に、0.82mL(0.93g、7.2ミリモル)(2×TMPCl)の1−(2−クロロエチル)ピロール(PyCl)(TCIから商業的に入手、CaHで吸引蒸留したもの)を、60/40のHex/MeCl中の溶液として重合系に加えた。PyClは準リビング連鎖末端と、60分間反応させた。反応は5mLの予め冷蔵しておいたメタノールを加えてクエンチし、引き続き、ポリマーを一度にメタノール中に投下して過剰のPyClを除去した。
【0213】
その結果として生じたポリマーのH NMR分析は、定量的な末端官能基化および少量の2−PIB−1−(2−クロロエチル)ピロールを伴う主に3−PIB−1−(2−クロロエチル)ピロールの生成を示した。三級塩化末端基の定量的変換は、1.96ppmおよび1.68ppmにおける特徴的ピークの消失によって示された。等しい面積からなる二つの三重項が、3.70および4.11ppmを中心に出現した。これらは3−PIB異性体の塩素および窒素原子に、それぞれ結合しているメチレン基を表している。2−PIB異性体について有意に弱いが、類似のシグナルが3.72および4.27を中心として観察された。6.05、6.41、および6.59ppmを中心とする新たな三つの多重項は、3−PIB異性体の三個のピロール環のプロトンに割り当てられ;5.90、6.35および6.51ppmを中心とする三個の有意に弱い多重項は、2−PIB異性体のピロール環のプロトンに割り当てられた。1.65および1.73ppmにおけるピークは、それぞれ3−および2−PIB異性体におけるPIB鎖の最も遠いメチレン単位に割り当てられた。
【0214】
[実施例2]
1−(2−ブロモエチル)ピロール(PyBr)で準リビングPIBをその場でクエンチする反応による単官能一級臭化末端PIBの合成
以下の操作を、乾燥窒素雰囲気下、−70℃に設定され恒温に制御されたヘキサン/ヘプタン冷浴を取り付けたグローブボックス内で実施した。テフロンで裏打ちされたキャップを取り付けた75mLの培養管中に、10mL(−70℃)のCHCl、15mL(−70℃)のn−ヘキサン、および0.029mL(室温、0.027g、0.25ミリモル)の2,6−ルチジンを加えた。この混合物を−70℃に冷却し、次に6.67mL(−70℃、4.7g、83ミリモル)のIBを反応器に加えた。10分間で平衡に達した後、周期的に渦を巻くように攪拌しながら、0.605mL(室温、0.53g、3.6ミリモル)のTMPClを反応器に移した。周期的に渦を巻くように攪拌しながら5分間で平衡に達した後、1.175mL(2.03g、10.7ミリモル)のTiClを反応器に移し、重合を開始した。初期の試薬濃度は以下のように定めた:
[TMPCl]=0.11M;
[IB]=2.6M;
[26Lut]=7.4×10−3M;
[TiCl]=0.32M。
【0215】
重合は、30分間進行させた。次に、0.89mL(1.3g、7.4ミリモル)(2×TMPCl)の1−(2−ブロモエチル)ピロール(PyBr)(TCIから商業的に入手、CaHで吸引蒸留したもの)を、60/40のHex/MeCl中の溶液として重合系に加えた。PyBrは準リビング連鎖末端と、60分間反応させた。反応は5mLの予め冷蔵しておいたメタノールを加えてクエンチし、引き続き、ポリマーを一度にメタノール中に投下して過剰のPyBrを除去した.
【0216】
上記の操作の結果として生じたポリマーのH NMR分析は、定量的な末端官能基化および少量の2−PIB−1−(2−ブロモエチル)ピロールを伴う主に3−PIB−1−(2−ブロモエチル)ピロールの生成を示した。三級塩化末端基の定量的変換は、1.96ppmおよび1.68ppmにおける特徴的ピークの消失によって示された。等しい面積からなる二つの三重項が、3.52および4.19ppmを中心に出現した。これらは3−PIB異性体の臭素および窒素原子に、それぞれ結合しているメチレン基を表している。2−PIB異性体についてメチレンのシグナルは、上記実施例1における一級塩化機能的ポリマーと比較すると、ここでは比較的強く現れた。これは、PyBrに関するEAS反応が、PyClクエンチャーに関する場合と比較して、3位への指向がより弱い可能性があることを示唆している。2−PIB異性体に関して、窒素に隣接するメチレンのプロトンは4.31を中心に出現し、一方、臭素に隣接するものは、3−PIB異性体のものに、ほぼ完全に巻き込まれている。ピロール環のプロトンおよびPIBの最も遠いメチレンのプロトンに関するシグナルは、実施例1においてPyClクエンチャーで得られた生成物について観察されたものと実質的に同じパターンを示した。
【0217】
[実施例3]
1−(2−クロロエチル)ピロールで準リビングPIBをその場でクエンチする反応による単官能一級塩化末端PIBの合成
TMPClを開始剤とするIBの準リビング重合を、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、100mLのCHCl、150mLのn−ヘキサン、および0.116mL(0.107g、3.7×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡にさせ、次に16.1mL(11.2g、0.74M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡に到達した後、1.26mL(1.10g、0.027M)のTMPClを反応器に加えた。重合を開始させるため、2.45mL(4.24g、0.083M)のTiClを反応器に加えた。反応は10分間進行させ、次に1.72mLのPyCl(1.94g、15.0ミリモル)を10mLのヘキサン/CHCl(60/40、v/v、70℃)中に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyClの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyCl]=0.053M;
[CE]=0.026M;
[TiCl]=0.079M。
【0218】
PyClを、リビング連鎖末端と20分間反応させた。最後に過剰量の予め冷蔵しておいたメタノールを加えて、反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め;溶液を水で洗浄し、MgSOで乾燥し、回転式蒸発器で濃縮した。ポリマーを、最後に室温で吸引乾燥した。
【0219】
図1は、準リビングPIBおよび1−(2−クロロエチル)ピロールの反応生成物のH NMRスペクトルを示す。スペクトルは、求電子性の芳香族置換による定量的な末端官能基化を示す。定量的置換は、1.96ppm(PIB−CH−C(CH−ClのCHのH)および1.68ppm(PIB−CH−C(CH−ClのCHのH)におけるPIB三級塩化末端基を伴う共鳴の欠如によって示される。ピロール環の3位における置換の結果である生成物(多い方の異性体)によって、1.65、3.69、4.11、6.05、6.40、および6.56ppmにおいて、新たな共鳴の組み合わせが出現している。2位における置換(少ない方の異性体)も、1.73、3.73、4.27、5.90、6.07、および6.59ppmにおける共鳴によって現れている。
【0220】
図2は、生成物の13C NMRスペクトルを示す。末端基の官能基化は、図2に示されるピークの指定によって指摘されている通り、71.9および35.2ppmにおける共鳴であって、それぞれ末端三級塩化物基に隣接する四級および対をなすジメチルが結合した炭素を表すものの消失、並びにスペクトルの芳香族および脂肪族の双方の領域における新たなピークの出現により確認された。
【0221】
PyClを用いるクエンチング反応を20分間実施したが、完全な官能基化のために実際に必要な時間は3.5分未満である。図3は、PIB三級塩化物基による共鳴が、3.5分後に完全に消失していることを示している。
【0222】
エンドキャップする前後においてPIBについてのGPCのトレースは実質的に同じであって、カップリング反応もしくはポリマーの劣化のいずれも存在しないことを示していた(図4)。
【0223】
[実施例4]
1−(2−ブロモエチル)ピロールで準リビングPIBをその場でクエンチすることによる単官能一級臭化末端PIBの合成
TMPClを開始剤とするIBの準リビング重合を、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、72mLのCHCl、108mLのn−ヘキサン、および0.116mL(0.107g、5.1×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に9.60mL(6.70g、0.62M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、1.26mL(1.10g、0.038M)のTMPClを反応器に加えた。重合を開始させるため、2.44mL(4.22g、0.115M)のTiClを反応器に加えた。反応は10分間進行させ、次に1.852mLのPyBr(2.70g、15.5ミリモル)を10mLのヘキサン/CHCl(60/40、v/v、70℃)中に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyBrの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyBr]=0.076M;
[CE]=0.036M;
[TiCl]=0.108M。
【0224】
PyBrは、リビング連鎖末端と20分間反応させた。最後に過剰量の予め冷蔵しておいたメタノールを加えて、反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め;溶液を水で洗浄し、MgSOで乾燥し、回転式蒸発器で濃縮した。ポリマーを、最後に室温で吸引乾燥した。
【0225】
図5は、準リビングPIBおよび1−(2−ブロモエチル)ピロールの反応生成物のH NMRスペクトルを示す。スペクトルは、求電子性の芳香族置換による定量的な末端官能基化を示す。定量的置換は、1.96ppm(PIB−CH−C(CH−ClのCHのH)および1.68ppm(PIB−CH−C(CH−ClのCHのH)におけるPIB三級塩化末端基を伴う共鳴の欠如によって示される。ピロール環の3位における置換の結果である生成物(多い方の異性体)によって、1.65、3.53、4.18、6.05、6.40、および6.56ppmにおいて、新たな共鳴の組み合わせが出現している。2位における置換(少ない方の異性体)も、1.73、3.58、4.31、5.90、6.07、および6.59ppmにおける共鳴によって現れている。
【0226】
図6は、生成物の13C NMRスペクトルを示す。末端基の官能基化は、図6に示されるピークの指定によって指摘されている通り、71.9および35.2ppmにおける共鳴であって、それぞれ末端三級塩化物基に隣接する四級および対をなすジメチルが結合した炭素を表すものの消失、およびスペクトルの芳香族および脂肪族の双方の領域における新たなピークの出現によって確認された。
【0227】
PyBrを用いるキャッピング反応を20分間実施したが、完全な官能基化のために実際に必要である時間は3.0分未満である。図7は、PIB三級塩化物基による共鳴が、3.0分後に完全に消失していることを示している。
【0228】
エンドキャップする前後においてPIBについてのGPCのトレースは実質的に同じであって、カップリング反応もしくはポリマーの劣化のいずれも存在しないことを示していた(図8)。
【0229】
[実施例5]
bDCCで開始された準リビングPIBを1−(2−クロロエチル)ピロールでその場でクエンチすることによる二官能一級塩化末端PIBの合成
t−Bu−m−DCCを開始剤とするIBの準リビング重合を、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、72mLのCHCl、108mLのn−ヘキサン、および0.116mL(0.107g、5.3×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に5.7mL(4.0g、0.38M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、0.7182g(0.013)のbDCCを反応器に加えた。重合を開始させるため、1.64mL(2.84g、0.080M)のTiClを反応器に加えた。反応は26分間進行させ、次に1.157mLのPyCl(1.31g、10.1ミリモル)を10mLのヘキサン/CHCl(60/40、v/v、70℃)中に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyClの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyCl]=0.051M;
[CE]=0.025M;
[TiCl]=0.075M。
【0230】
PyClを、30分間リビング連鎖末端と反応させた。最後に、予め冷蔵しておいたメタノールを加えて反応をクエンチした。引き続き、過剰の1−(2−クロロエチル)ピロールを除去するため、ポリマーを一度にメタノール中に投下した。
【0231】
図9は、二官能準リビングPIBおよび1−(2−クロロエチル)ピロールの反応生成物のH NMRスペクトルを示す。ピロール部分の連鎖末端への付加は、1.96ppmおよび1.68ppmにおけるPIB三級塩化末端基を伴う共鳴の欠如によって示される。ピロール環の3位における置換の結果である生成物(多い方の異性体)によって、1.65、3.69、4.11、6.05、6.40、および6.56ppmにおいて、新たな共鳴の組み合わせが出現している。2位における置換(少ない方の異性体)も、1.73、3.73、4.27、5.90、6.07、および6.59ppmにおける共鳴によって、現れている。
【0232】
最終的なPIBのSEC分析により、カップリング反応もしくはポリマーの劣化のいずれも存在しないこと(図10)を確認した。
【0233】
bDCCからの芳香族開始剤残基は、H NMRによる末端基の官能基化の定量のため内部参照を提供した。このように様々な末端基の共鳴領域が集積され、図9における芳香族プロトン(m)を集積した領域と比較した。第1表に示されるように、それらの結果は、実質的に連鎖末端の定量的官能基化を示していた。例えば、塩化物基(g+a)およびピロール環の窒素(h+b)に隣接するメチレンのプロトンの集積は、百分率で101%の末端基の官能基化を明らかにした。様々なピロール環の水素原子の集積は、90〜92%の末端基の官能基化を明らかにした。bプロトン(3異性体の−CH−CH−ClのClに結合しているCHのH)の集積は、3異性体の画分[b/(h+b)]を0.73として明らかにし;同様に、3異性体のH2プロトン(e)の集積は、3異性体の画分[e/(k+e)]を0.73として明らかにした。
【0234】
【表1】
【0235】
[実施例6]
bDCCで開始された準リビングPIBを1−(2−ブロモエチル)ピロールでその場でクエンチすることによる二官能一級臭化末端PIBの合成
bDCCを開始剤とするIBの準リビング重合は、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、72mLのCHCl、108mLのn−ヘキサン、および0.116mL(0.107g、5.3×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に5.7mL(4.0g、0.38M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、0.718g(0.013M)のbDCCを反応器に加えた。重合を開始させるため、1.64mL(2.84g、0.080M)のTiClを反応器に加えた。反応は26分間進行させ、次に1.24mLのPyBr(1.81g、10.4ミリモル)を10mLのヘキサン/CHCl(60/40、v/v、70℃)中に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyBrの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyBr]=0.052M;
[CE]=0.025M;
[TiCl]=0.075M。
【0236】
PyBrは、30分間リビング連鎖末端と反応させた。最後に、予め冷蔵しておいたメタノールを加えて反応をクエンチした。引き続き、過剰の1−(2−ブロモエチル)ピロールを除去するため、ポリマーを一度にメタノール中にて沈澱させた。
【0237】
図11は、二官能準リビングPIBおよび1−(2−ブロモエチル)ピロールの反応生成物のH NMRスペクトルを示す。ピロール部分の連鎖末端への付加は、1.96ppmおよび1.68ppmにおけるPIB三級塩化末端基を伴う共鳴の欠如によって示される。ピロール環の3位における置換の結果である生成物(多い方の異性体)によって、1.65、3.53、4.18、6.05、6.40、および6.56ppmにおいて、新たな共鳴の組み合わせが出現している。2位における置換(少ない方の異性体)も、1.73、3.58、4.31、5.90、6.07、および6.59ppmにおける共鳴によって、現れている。
【0238】
最終的なPIBのSEC分析により、カップリング反応もしくはポリマーの劣化のいずれも存在しないこと(図12)を確認した。
【0239】
bDCCからの芳香族開始剤残基は、H NMRによる末端基の官能基化の定量のため内部参照を提供した。このように様々な末端基の共鳴領域が集積され、図11における芳香族プロトン(m)の集積した領域と比較した。第2表に示されているように、それらの結果、実質的に連鎖末端の定量的官能基化を示していた。例えば、臭化物基(h+b)およびピロール環の窒素(g+a)に隣接するメチレンのプロトンの集積は、百分率で101%の末端基の官能基化を明らかにした。様々なピロール環の水素原子の集積は、90〜93%の末端基の官能基化を明らかにした。bプロトン(3異性体の−CH−CH−ClのClに結合しているCHのH)の集積は、3異性体の画分[b/(h+b)]を0.73として明らかにし;同様に、3異性体(e)のH2プロトンの集積は、3異性体の画分[e/(k+e)]を0.72として明らかにした。
【0240】
【表2】
【0241】
[実施例7]
1−(2−ブロモエチル)ピロールで準リビングPIBをその場でクエンチすることによる単官能一級臭化末端PIBの規模拡大
TMPClを開始剤とするIBの準リビング重合を、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、680mLのCHCl、1020mLのn−ヘキサン、および0.667mL(0.614g、3.2×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に96mL(67g、0.66M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、4.95mL(4.33g、0.016M)のTMPClを反応器に加えた。重合を開始させるため、9.58mL(16.6g、0.048M)のTiClを反応器に加えた。反応は25分間進行させ、次に7.24mLのPyBr(10.6g、60.7ミリモル)を15mLのヘキサンおよび10mLのCHClの混合物中に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyBrの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyBr]=0.033M;
[CE]=0.016M;
[TiCl]=0.047M。
【0242】
PyBrは、30分間リビング連鎖末端と反応させた。最後に過剰量の予め冷蔵しておいたメタノールを加えて、反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、その結果得られた溶液を分離用漏斗中メタノールで洗浄した。次に、ポリマーを一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。膨潤した沈澱物をヘキサン中に再溶解させ、その結果得られた溶液を分離漏斗中、水で洗浄し、MgSOで乾燥した。乾燥した溶液は、シリカゲルのカラムに通した。ポリマーから、回転式蒸発器を用いる蒸留および室温の吸引オーブン中における仕上げの吸引乾燥によって、ヘキサンを除去した。
【0243】
その結果として生じたポリマーのH NMR分析は、定量的な末端官能基化および少量の2−PIB−1−(2−ブロモエチル)ピロールを伴う主に3−PIB−1−(2−ブロモエチル)ピロールの生成を示した。
【0244】
最終的な生成物のGPC分析から、カップリング反応もしくはポリマーの劣化のいずれも存在しないことを確認した。
【0245】
[実施例8]
1−(3−ブロモプロピル)ピロール(PyBrP)で準リビングPIBをその場でクエンチすることによる単官能一級臭化末端PIBの合成
N−(3−ブロモプロピル)ピロール(PyBrP)は、DMSO中、1,3−ジブロモプロパンによるピロリルナトリウム塩のN−アルキル化によって合成し、分留によって精製した。
【0246】
TMPClを開始剤とするIBの準リビング重合を、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、108mLのCHCl、72mLのn−ヘキサン、および0.07mL(64mg、3.1×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に9.6mL(6.7g、0.62M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、1.26mL(1.10g、0.038M)のTMPClを反応器に加えた。重合を開始させるため、2.44mL(4.22g、0.12M)のTiClを反応器に加えた。反応は10分間進行させ、次に2.00mLのPyBrP(2.72g、14.5ミリモル)を15mLのヘキサンおよび10mLのCHClの混合物中に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyBrPの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyBrP]=0.066M;
[CE]=0.034M;
[TiCl]=0.101M。
【0247】
PyBrPは、リビング連鎖末端と60分間反応させた。最後に過剰量の予め冷蔵しておいたメタノールを加えて、反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め;溶液を水で洗浄し、MgSOで乾燥し、回転式蒸発器で濃縮した。ポリマーを、最後に室温で吸引乾燥した。
【0248】
その結果として生じたポリマーのH NMR分析は、定量的な末端官能基化および少量の2−PIB−1−(3−ブロモプロピル)ピロールを伴う主に3−PIB−1−(3−ブロモプロピル)ピロールの生成を示した。三級塩化末端基の定量的変換は、1.96ppmおよび1.68ppmにおける特徴的ピークの消失によって示された。3−PIB異性体のトリメチレン鎖のメチレン単位を表す等しい面積からなる三個の多重項は、3.29(三重項、−CH−CH−CH−BrのBrに結合しているCHのH)、2.21(多重項、−CH−CH−CH−Brの中間のCHのH)、および3.99ppm(三重項、−CH−CH−CH−BrのBrから最も遠いCHのH)を中心に観察された。2−PIB異性体に関して、より弱い類似のシグナルが3.50、2.35、および4.13ppmを中心に観察された。3−PIB異性体のピロール環のプロトンは多重項として6.02、6.38、および6.55ppmで観察され、2−PIB異性体のものは5.88、6.05および6.59ppmで観察された。1.65および1.73ppmにおける一重項は、それぞれ、3−および2−PIB異性体におけるPIB鎖の最も遠いメチレン単位に割り当てられた。
【0249】
クエンチングを60分間実施したが、様々な時間において反応器から採取された部分標本のNMR分析は、3分間で定量的クエンチングが完了していたことを示した(図13)。
【0250】
最終的なポリマーのGPC分析は、カップリング生成物の証拠を示さなかった。
【0251】
[実施例9]
1−(3−ブロモプロピル)ピロールで準リビングPIBをその場でクエンチすることによる二官能一級臭化末端PIBの合成
N−(3−ブロモプロピル)ピロール(PyBrP)は、DMSO中、1,3−ジブロモプロパンによるピロリルナトリウム塩のN−アルキル化によって合成し、分留によって精製した。
【0252】
bDCCを開始剤とするIBの準リビング重合は、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに108mLのCHCl、72mLのn−ヘキサン、および0.07mL(64mg、3.2×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に5.4mL(3.8g、0.36M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、0.7182g(0.013M)のbDCCを反応器に加えた。重合を開始させるため、1.64mL(2.84g、0.080M)のTiClを反応器に加えた。反応は15分間進行させ、次に1.38mLのPyBrP(1.88g、10.0ミリモル)を15mLのヘキサンおよび10mLのCHClの混合物に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyBrPの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyBrP]=0.047M;
[CE]=0.023M;
[TiCl]=0.070M。
【0253】
PyBrPは、30分間リビング連鎖末端と反応させた。最後に過剰量の予め冷蔵しておいたメタノールを加えて、反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め;溶液を水で洗浄し、MgSOで乾燥し、回転式蒸発器で濃縮した。ポリマーを、最後に室温で吸引乾燥した。
【0254】
図14は、二官能準リビングPIBおよび1−(3−ブロモプロピル)ピロールの反応生成物のH NMRスペクトルを示す。ピロール部分の連鎖末端への付加は、1.96ppmおよび1.68ppmにおけるPIB三級塩化末端基を伴う共鳴の欠如によって示される。ピロール環の3位における置換の結果である生成物(多い方の異性体)によって、1.65、2.21、3.29、3.99、6.02、6.38、および6.55ppmにおいて、新たな共鳴の組み合わせが出現している。2位における置換(少ない方の異性体)の結果である生成物は、1.73、2.35、3.50、4.13、5.88、6.05、および6.59ppmにおいて観察される。
【0255】
クエンチングを30分間実施したが、様々な時間において反応器から採取された部分標本のNMR分析は、3分間で定量的クエンチングが完了していたことを示した(図15)。
【0256】
最終的なPIBのSEC分析により、カップリング反応もしくはポリマーの劣化のいずれも存在しないことを確認した。
【0257】
[実施例10]
1−(2−ブロモエチル)ピロールで準リビングPIBをその場でクエンチすることによる二官能一級臭化末端PIBの規模拡大
bDCCを開始剤とするIBの準リビング重合は、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、680mLのCHCl、1020mLのn−ヘキサン、および0.667mL(0.614g、3.2×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に85.95mL(60.0g、0.59M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、7.494g(0.013M)のbDCCを反応器に加えた。重合を開始させるため、17.16mL(29.7g、0.086M)のTiClを反応器に加えた。反応は55分間進行させ、次に12.97mLのPyBr(18.9g、109ミリモル)を15mLのヘキサンおよび10mLのCHClの混合物に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyBrの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyBr]=0.059M;
[CE]=0.028M;
[TiCl]=0.085M。
【0258】
PyBrは、60分間リビング連鎖末端と反応させた。最後に過剰量の予め冷蔵しておいたメタノールを加えて、反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、その結果得られた溶液を分離漏斗中、メタノールで洗浄した。次に、ポリマーを一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。膨潤した沈澱物をヘキサン中に再溶解させ、その結果得られた溶液を分離漏斗中、水で洗浄しMgSOで乾燥した。乾燥した溶液を、シリカゲルのカラムに通した。回転式蒸発器を用いる蒸留でポリマーからヘキサンを除去し、最終的に室温で吸引オーブン中、吸引乾燥した。
【0259】
生成物のH NMRスペクトルは、図11に類似していた。ピークの集積を分析した結果(第3表)は、連鎖末端の定量的官能基化を示した。臭化物基(h+b)およびピロール環の窒素(g+a)に隣接するメチレンのプロトンの集積は、百分率で107〜108%の末端基の官能基化を明らかにした。様々なピロール環の水素原子の集積は、96〜98%の末端基の官能基化を明らかにした。bプロトン(3異性体の−CH−CH−BrのBrに結合しているCHのH)の集積は、3異性体の画分[b/(h+b)]を0.73として明らかにし;同様に、3異性体(e)のH2プロトンの集積は、3異性体の画分[e/(k+e)]を0.70として明らかにした。
【0260】
【表3】
【0261】
[実施例11]
TiClの存在下で単官能三級塩化末端PIBと1−(2−ブロモエチル)ピロールとの反応による単官能一級臭化末端PIBの合成
単官能三級塩化末端PIBを、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で製造した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、654.5mLのCHClおよび0.58mL(0.53g、6.2×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に97.15mL(67.81g、1.51M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、6.12mL(5.35g、0.045M)のTMPClを反応器に加えた。重合を開始させるため、41.63mL(63.69g、0.680M)のBClを反応器に加えた。反応は、7時間進行させた。最後に過剰量の予め冷蔵しておいたメタノールを加えて、反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め;溶液を水で洗浄し、MgSOで乾燥し、回転式蒸発器で濃縮した。ポリマーを、最後に室温で吸引乾燥した。精製したポリマーのSEC分析は、Mn=1985g/モルを明らかにした。
【0262】
上記のように予め生成しておいた三級塩化末端PIBは、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン冷浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で、−70℃において1−(2−ブロモエチル)ピロールでクエンチした。テフロンで裏打ちされたキャップを取り付けた75mLの培養管中に、2.0gの三級塩化末端PIB(Mn=1985g/モル、0.037M)、10mLのCHCl、および15mLのn−ヘキサンを加えた。混合物を−70℃まで冷却し、周期的に渦を巻くように攪拌して均一にした。次に、0.33mL(0.57g、0.110M)のTiClを反応器に加え、引き続き0.25mLのPyBr(0.37g、2.1ミリモル)を6mLのヘキサンおよび4mLのCHClの混合物に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyBrの溶液を重合系に加えた。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyBr]=0.056M;
[CE]=0.027M;
[TiCl]=0.080M。
【0263】
PyBrは10分間リビング連鎖末端と反応させ、その時点で予め冷蔵しておいたメタノールを加えて反応をクエンチした。引き続き、CHClを蒸発させ;ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に過剰のPyBrを除くため一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め;溶液を回転式蒸発器で濃縮し、最後にポリマーを室温で吸引乾燥した。
【0264】
その結果として生じたポリマーのH NMR分析は、定量的な末端官能基化および少量の2−PIB−1−(2−ブロモエチル)ピロールを伴う主に3−PIB−1−(2−ブロモエチル)ピロールの生成を示した。定量的官能基化は、1.96ppmおよび1.68ppmにおける三級塩化ピークの完全な消失および3.52および4.19ppmを中心として、3−PIB異性体の臭素および窒素原子に、それぞれ結合しているメチレン基を表す等しい面積からなる二つの三重項の出現によって示された。2−PIB異性体についても、3.58および4.31ppmを中心とするメチレンのシグナルが出現した。ピロール環のプロトンおよびPIBの最も遠いメチレンのプロトンに関するシグナルが存在し、上記のこれまでの実施例におけるPyBrクエンチャーで得られた生成物について観察されたものと同じパターンが示された。オレフィンは、検出されなかった。
【0265】
[実施例12]
重合後の一級塩化末端PIBとアジ化ナトリウムとの反応による一級アジド末端PIBの合成
以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で、単官能一級塩化末端PIBを製造した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、340mLのCHCl、510mLのn−ヘキサン、および0.33mL(0.30g、3.1×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に47.5mL(33.2g、0.65M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、2.47mL(2.16g、0.016M)のTMPClを反応器に加えた。重合を開始させるため、4.79mL(8.28g、0.048M)のTiClを反応器に加えた。反応は34分間進行させ、次に3.77mLのPyCl(4.26g、32.9ミリモル)を25mLのヘキサン/CHCl(60/40、v/v、−70℃)に溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyClの溶液を重合系に加えた。PyClを、30分間リビング連鎖末端と反応させた。最後に過剰量の予め冷蔵しておいたメタノールを加えて、反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め;溶液を水で洗浄し、MgSOで乾燥し、回転式蒸発器で濃縮した。ポリマーを、最後に室温で吸引乾燥した。精製したポリマーのSEC分析は、Mn=2660g/モルを明らかにした。
【0266】
上記のように予め生成しておいた一級塩化末端PIB(2および3異性体の混合物)は、以下の操作に従い、乾燥窒素雰囲気下、フラスコ中でアジ化ナトリウムと反応させた。1−(2−クロロエチル)ピロール−PIB(Mn=2660g/モル、10g、3.76ミリモル)をフラスコ中で22.1mLの乾燥ヘプタンに溶解し、次に22.1mLの乾燥DMF中のアジ化ナトリウム(0.729g、11.21ミリモル)を加えた。得られた二相混合物を攪拌し、90℃まで加熱し、反応を24時間進行させた。反応の過程において、当初の二相混合物が単相になった。反応の最後で、冷却することにより、二相混合物が再び観察され、ヘプタンおよびDMFの層が分離した。ヘプタン相はメタノールで洗浄し、メタノール中に沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め、メタノール中に再び沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶媒させることにより再び集め、溶液を回転式蒸発器で濃縮し、ポリマーを最後に室温で吸引乾燥した。
【0267】
図16は、結果として生じたポリマーのH NMRスペクトルを割り当てられたピークと共に示す。アジドの添加は、3.69(3−PIB−Py−CH−CH−ClのClに結合しているCHのH)、3.73(2−PIB−Py−CH−CH−ClのClに結合しているCH)、4.11(3−PIB−Py−CH−CH−ClのClに結合していないCHのH)、および4.27ppm(2−PIB−Py−CH−CH−ClのClに結合していないCH)におけるピークの消失と、3.52および3.95ppm(3異性体、相対的に多い)、並びに3.64および4.13ppm(2異性体、相対的に少ない)における連鎖末端の1−(2−アジドエチル)ピロール部分の存在による新たなピークの出現とによって示された。
【0268】
[実施例13]
1−(2−シアノエチル)ピロール(PyCN)で準リビングPIBをその場でクエンチすることによる単官能一級シアン化末端PIBの合成
TMPClを開始剤とするIBの準リビング重合を、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、99.6mLのCHCl、66.4mLのn−ヘキサン、および0.062mL(0.058g、0.54ミリモル)の2,6−ルチジンを加え、次に混合物を−70℃まで平衡させた。11.3mL(7.87g、140.4ミリモル)のIBを反応器に加えた。10分間の攪拌後、0.61mL(0.53g、3.6ミリモル)のTMPClを反応器に移した。5分間の攪拌後、0.32mL(0.55g、2.91ミリモル)のTiClを針で反応器に移した。反応は40分間進行させ、次に1.23mLのPyCN(1.29g、10.7ミリモル)を10mLのヘキサンおよび15mLのCHClの混合物に分散して製造し、予め冷蔵しておいたPyCNのスラリーを加え、引き続き1.65mL(1.29g、10.7ミリモル)のTiClを追加した。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyCN]=0.052M;
[CE]=0.017M;
[TiCl]=0.087M。
【0269】
PyCNは、40分間リビング連鎖末端と反応させた。最後に、予め冷蔵しておいたメタノールを加えて反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め、溶液を回転式蒸発器で濃縮し、ポリマーを最後に室温で吸引乾燥した。
【0270】
図17は、様々な時間において反応器から採取された部分標本の部分的H NMRスペクトルを示す。1−(2−シアノエチル)ピロールによるクエンチングの進行は、メチルプロトン(1.68ppm)および準リビングPIB前駆体の末端三級塩化物基に隣接するメチレンのプロトン(1.96ppm)の消失によって観察することができる。官能基化は、20分以内で完了した。
【0271】
[実施例14]
1−(2−シアノエチル)ピロールで準リビングPIBをその場でクエンチすることによる二官能一級シアン化末端PIBの合成
bDCCを開始剤とするIBの準リビング重合は、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機、赤外線プローブ、および熱電対を取り付けた丸底フラスコに、99.6mLのCHCl、66.4mLのn−ヘキサン、および0.062mL(0.057g、3.0×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物を−70℃まで平衡させ、次に11.3mL(7.89g、0.79M)のIBを反応器に加えた。熱的な平衡後、0.517g(1.80ミリモル)のbDCCを反応器に加えた。重合を開始させるため、0.32mL(0.55g、0.016M)のTiClを反応器に加えた。反応は49分間進行させた。次に、1.23mL(1.29g、10.7ミリモル)のPyCNを10mLのヘキサンおよび15mLのCHClの混合物に分散して製造し、予め冷蔵しておいたPyCNのスラリーを加え、引き続き1.65mL(2.85g、15.0ミリモル)のTiClを追加した。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyCN]=0.052M;
[CE]=0.017M;
[TiCl]=0.087M。
【0272】
PyCNは、5時間リビング連鎖末端と反応させた。最後に、予め冷蔵しておいたメタノールを加えて反応をクエンチした。引き続き、ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め、溶液を回転式蒸発器で濃縮し、ポリマーを最後に室温で吸引乾燥した。
【0273】
図18は、結果として生じたポリマーのH NMRスペクトルをピークの割り当てと共に示す。キャッピング剤の添加は、1.96ppm(−−PIB−CH−C(CH−ClのCH)および1.68ppm(−−PIB−CH−C(CH−ClのCH)におけるピークの消失と、1.66、2.72、4.11、6.07、6.40、および6.57ppm(3異性体、相対的に多い)並びに1.71、2.80、4.29、5.90、6.10、および6.60ppm(2異性体、相対的に少ない)における連鎖末端の1−(2−シアノエチル)ピロール部分の存在による新たなピークの出現とによって示された。
【0274】
図19は、様々な時間において反応器から採取された部分標本の部分的H NMRスペクトルを示す。1−(2−シアノエチル)ピロールによるクエンチングの進行は、メチルプロトン(1.68ppm)および準リビングPIB前駆体の末端三級塩化物基に隣接するメチレンのプロトン(1.96ppm)の消失によって観察することができる。官能基化は20分以内で完了した。
【0275】
エンドキャップする前後において、PIBについてのGPCのトレースは実質的に同じであって、カップリング反応もしくはポリマーの劣化のいずれも存在しないことを示していた(図20)。
【0276】
bDCCからの芳香族開始剤残基は、H NMRによる末端基の官能基化の定量のため内部参照を提供した。このように様々な末端基の共鳴領域が集積され、図18において芳香族プロトン(m)の集積した領域と比較した。第4表に示されるように、それらの結果は、実質的に連鎖末端の定量的官能基化を示していた。例えば、シアノ基(h+b)およびピロール環の窒素(g+a)に隣接するメチレンのプロトンの集積は、百分率で103および104%の末端基の官能基化を明らかにした。様々なピロール環の水素原子の集積は、96%の末端基の官能基化を明らかにした。bプロトン(3異性体の−CH−CH−CNのシアノ基に結合しているCHのH)の集積は3異性体の画分[b/(h+b)]を0.71として明らかにし;同様に、3異性体のH2プロトン(e)の集積は、3異性体の画分[e/(k+e)]を0.70として明らかにした。
【0277】
【表4】
【0278】
[実施例15]
TiClの存在下でジ三級塩化末端PIBと1−(2−アジドエチル)ピロールとの反応による二官能一級アジド末端PIBの合成
50/50(v/v)ヘプタン/ジメチルホルムアミド混合物中、90℃で24時間、過剰量のNaNを1−(2−ブロモエチル)ピロールと反応させることにより1−(2−アジドエチル)ピロールを製造した。
【0279】
以下の操作を、乾燥窒素雰囲気下、−70℃に設定され恒温に制御されたヘキサン/ヘプタン冷浴を取り付けたグローブボックス内で実施した。テフロンで裏打ちされたキャップを取り付けた75mLの培養管中に、0.53gの予め生成しておいた二官能三級塩化末端PIB(Mn=2099g/モル、0.019Mのtert−Cl末端基)、10mLのCHCl、15mLのn−ヘキサン、および0.008mL(0.007g、2.6×10−3M)の2,6−ルチジンを加えた。混合物は−70℃まで冷却し、周期的に渦を巻くように攪拌して均一にした。次に、0.55mL(0.95g、0.192M)のTiClを反応器に移し、引き続き、0.123g(1.0ミリモル)の1−(2−アジドエチル)ピロール(PyAz)を15mLのn−ヘキサンおよび10mLのCHClに溶解して製造し、予め冷蔵しておいたPyAzの溶液を移した。クエンチングに関連する濃度は以下の通りであった:
[PyAz]=0.052M;
[CE]=0.010M;
[TiCl]=0.098M。
【0280】
PyAzは、10分間リビング連鎖末端と反応させ、その時点で予め冷蔵しておいたメタノールを加えて反応をクエンチした。引き続き、CHClを蒸発させ;ポリマーをヘキサン中に溶解し、メタノールで洗浄し、次に過剰のPyAzを除くため一度にヘキサンからメタノール中に移して沈澱させた。沈殿物をヘキサン中に溶解させることにより集め;溶液を回転式蒸発器で濃縮し、ポリマーを最後に40℃で吸引乾燥した。
【0281】
図21は、結果として生じたポリマーのH NMRスペクトルをピークの割り当てと共に示す。キャッピング剤の添加は、1.96および1.68ppmにおける三級塩化ピークの消失と、1.67、3.52、3.95、6.07、6.40、および6.57ppm(3異性体、相対的に多い)並びに1.72、3.64、4.13、5.90、6.10、および6.60ppm(2異性体、相対的に少ない)における連鎖末端の1−(2−アジドエチル)ピロール部分の存在による新たなピークの出現とによって示された。
【0282】
エンドキャップする前後においてPIBについてのGPCのトレースは実質的に同じであって、カップリング反応もしくはポリマーの劣化のいずれも存在しないことを示していた(図22)。
【0283】
ピークの集積の分析(第5表)は、連鎖末端の高度な官能基化を示した。アジド基(h+b)およびピロール環の窒素(g+a)に隣接するメチレンのプロトンの集積は、百分率で末端基の官能基化が98〜99%であることを明らかにした。bプロトン(3異性体の−CH−CH−NのNに結合しているCHのH)の集積は、3異性体の画分[b/(h+b)]を0.62として明らかにし;同様に、3異性体のH2プロトン(e)の集積は、3異性体の画分[e/(k+e)]を0.61として明らかにした。アジド基を伴う官能基化は、混合エキソ/エンドオレフィンの存在によって完全には定量的ではなく、約1〜2%と推定された。
【0284】
【表5】
【0285】
[実施例16]
パラジウム触媒の存在下で実施例12の生成物(アジド末端PIB)を水素で還元することによるアミン末端PIBの合成
実施例12の生成物である1−(2−アジドエチル)ピロール−PIB(0.5g、0.2ミリモル)およびテトラヒドロフラン(60mL)から製造され、チャコール上の10%パラジウムを0.055g含む溶液を、パー(Parr)低圧水素化器で35psiにて19時間水素化した。混合物を窒素雰囲気下でセライトを通して濾過し、生成物を溶媒の回転蒸発により濃縮した。
【0286】
生成物である1−(2−アミノエチル)ピロール−PIBのH NMR分析は、19時間の還元期間後にアジドのアミンへの変換が完了したことを示した。エチレン結合におけるメチレンのプロトンを、反応における変換を確認するために採用した。アミン生成物において、ピロールに隣接するメチレンのプロトンは4.1(2異性体、相対的に少ない)および3.8(3異性体、相対的に多い)において観察され、アミン基に隣接するメチレンのプロトンは3.1(2異性体、相対的に少ない)および3.0(3異性体、相対的に多い)において観察された。アジド−PIBによる共鳴の残存は認められなかった。
【0287】
[実施例17]
ボランによる1−(2−シアノエチル)ピロール−PIBの還元によるアミン末端PIBの合成
1−(2−シアノエチル)ピロール−PIB(29.6g、11.9ミリモル)およびテトラヒドロフラン(90mL)から製造した溶液に、ボラン−ジメチルスルフィド(1.18mL、12.5ミリモルのボラン)の溶液をスポイトで滴下した。混合物を65℃で15時間攪拌し、次に室温まで放置して冷却した。4.0M水酸化ナトリウム(20mL)の溶液を、ゆっくり滴下する速さで、氷水浴で5℃まで冷蔵しておいた反応混合物に加えた。次に混合物を、65℃で12時間還流した。室温まで冷却してから、ヘキサンを加え、有機層を水および食塩水で洗浄(3×20mL)した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥し、濾過し、溶媒を除去して、最終生成物を得た(収量:22.2g)。
【0288】
生成物である1−(3−アミノプロピル)ピロール−PIBのプロトンNMR分析は、割り当てた反応時間後に、シアノ基のアミンへの変換が完了したことを示した。反応における変換は、反応物のエチレン鎖におけるメチレンのプロトンの消失および生成物の1,3−プロピレン鎖におけるメチレンのプロトンの出現を観察することによって確認した。アミン生成物において、ピロールに隣接するメチレンのプロトンは4.0(2異性体、相対的に少ない)および3.8ppm(3異性体、相対的に多い)において観察され、新たなアミン基に隣接するメチレンのプロトンは2.8(2異性体、相対的に少ない)および2.7ppm(3異性体、相対的に多い)において観察された。二つの異性体における中央のメチレン(1,3−プロピレン鎖の2位)のプロトンは、1.8および2.0間の化学的シフトを伴う多重項として観察された。シアノ−PIBに割り当てられた化学的シフトの残存は認められなかった。
【0289】
[実施例18]
実施例7の生成物(1−(2−ブロモエチル)ピロール−PIB)とアニリンとの反応による1−(2−アニリノエチル)ピロール−PIBの合成
実施例7の生成物である1−(2−ブロモエチル)ピロール−PIB(10.8g、4.5ミリモル)およびアニソール(60mL)から製造した溶液に、スポイトでアニリン(12.3mL、135.0ミリモル)およびN,N−ジイソプロピルエチルアミン(7.84mL、45ミリモル)を加えた。混合物を130℃で攪拌しながら、定期的に部分標本を取り出して反応の進行を調べた。44時間後に、アニリンによる臭化末端の置換が完了した。溶液を吸引により濃縮して、粗製物(11.64g)を得た。粗製物をヘキサン中に溶解し(125mL)、メタノール:水の50:50(v:v)溶液で洗浄した。有機溶液を硫酸マグネシウムで乾燥し、生成物を回転式蒸発器で濃縮した(収量:10.14g)。
【0290】
生成物である1−(2−アニリノエチル)ピロール−PIBのプロトンNMR分析は、44時間後に臭化物基のアミンへの変換が完了したことを示した。エチレン鎖におけるメチレンのプロトンを、反応における変換を確認するために採用した。生成物において、ピロールに隣接するメチレンのプロトンは4.2(2異性体、相対的に少ない)および4.05ppm(3異性体、相対的に多い)において観察され、アニリン部分に隣接するメチレンのプロトンは3.55(2異性体、相対的に少ない)および3.45ppm(3異性体、相対的に多い)において観察された。ブロモエチル−PIBによる共鳴の残存は認められなかった。
【0291】
[実施例19]
すす分散性の結果
すす分散性試験も、実施例17および18、並びに比較例Aについて異なる適用量で、すすの濃縮ベンチテストとして実施した。この試験の詳細は、米国特許第5716912号明細書に記載されており、その全ての内容は参照のため、この明細書の記載とする。すすの濃縮ベンチテストでは、均一に分散したカーボンブラックを導入する前後において、油の動粘度を測定する。知られているようにカーボンブラックが凝集するため、これにより一般に油の動粘度が増加する。カーボンブラックの凝集を防止するために有効な添加剤は、一般に良好なすすの分散性を示すであろう。従って、カーボンブラックの存在下で粘度の増加をより低くする添加剤は、カーボンブラックの存在下で粘度の増加をより高くする添加剤よりも、良好に機能することが予測される。表6は、すすの濃縮ベンチテストについて、それらの結果を列挙する;参考のため、添加剤を含まない基準油についての結果も表示する。
【0292】
【表6】
【0293】
すすの濃縮ベンチテストについての以上の結果は、実施例17および18のPIB−アミンの使用による粘度百分率の増加が、分散剤を全く含まずに処方された油(基準)における粘度百分率の増加よりも低かったことを示す。さらに、実施例17もしくは18のいずれかを含む油における粘度の増加は比較例Aのものよりも低く、実施例17および18がより良好な分散性を発揮することを示している。この試験は、実施例17および18のPIB−アミンが良好な分散性を有することを示す。
【0294】
本明細書に記載した発明的事項は特定の態様を参照して記述されているが、本発明は、当業者が添付の特許請求の範囲の真意および範囲を逸脱しない限り行うことができる様々な変更および置換を包含する。
【0295】
[比較例A]
準リビングPIBをN−メチルピロールでその場でクエンチすることによる単官能N−メチルピロール−PIBの合成
米国特許第6969744号明細書に記載の方法に従い、N−メチルピロールで停止させた単官能PIBを製造した。TMPClを開始剤とするIBの準リビング重合を、以下の操作に従い、一体化した低温保持ヘキサン/ヘプタン浴を取り付けた乾燥窒素雰囲気のグローブボックス中で実施した。機械式攪拌機および熱電対を取り付けた丸底フラスコに513.0mLのCHCl、557.0mLのn−ヘキサン、および1.5mLの2,6−ルチジンを加え、次に混合物を−60℃まで平衡させた。212.7mL(2.6モル)のIBを反応器に加えた。10分間の攪拌後、9.43g(0.063モル)のTMPClを反応器に移した。5分間の攪拌後、4.87mL(0.044モル)のTiClを反応器に移した。反応は66分間進行させ、その時点で溶液を2つの等しい容量の部分標本に分離した。8分(重合時間の合計で74分)後、4.2mL(0.048モル)のN−メチルピロール、次に8.7mL(0.079モル)のTiClを部分標本の一つに加えた。この溶液を50分間反応させ、その時間が経過後、反応を45mLのメタノール(−60℃で平衡させた)で停止させた。溶液をグローブボックスから取り出し、揮発性成分を周囲の環境条件で蒸発させるために充分な時間、放置した。引き続き、PIB−ヘキサン溶液を希釈HCl溶液、次に脱イオン水で洗浄し、次に硫酸マグネシウムで乾燥した。固形分を濾過し、PIBを回転式蒸発器で濃縮した。
【0296】
H NMR分光分析は、全てのPIB連鎖末端がN−メチルピロール部分(2および3異性体の混合物)を伴う末端であることを示した。N−メチル置換基による共鳴の集積は、3:2異性体比が、おおよそ55:45であることを示した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
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図22