(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
薬物のカートリッジ(25)を備えた薬物送達デバイス(1)、好ましくはペン型の薬物送達デバイス、用の用量設定機構であって、用量設定機構(4)が、該カートリッジ(25)から投与すべき薬物の用量を選択するために操作可能であり、用量設定機構(4)が、
軸(30);
該軸(30)の第一の部分(34)に沿って備え付けられた第一のピッチを有する螺旋溝(32);及び
該軸(30)の該螺旋溝(32)上に配列されるナット部材(40)であって、
上記薬物送達デバイスの用量設定中、該軸(30)が、該ナット部材(40)に対して回転し、同時に該ナット部材(40)が、該軸(30)の第一の端部(38)から該軸(30)の第二の端部(39)に向かって、該螺旋溝(32)に沿って縦方向に進む、前記ナット部材(40)は、少なくとも一つの実質的に半径方向の停止面(42)を含んでなる、該ナット部材;及び
該用量設定機構(4)の使用者が、該カートリッジ(25)中に残っている薬物よりも多い該薬物の用量を設定することを防ぐ手段であって、該手段が、該ナット部材(40)が該軸(30)を該ナット部材(40)に対して回転することを防ぐように、該軸(30)上の少なくとも一つの実質的に半径方向の停止面(43)と係合している該ナット部材(40)上に少なくとも一つの実質的に半径方向の停止面(42)を含む、
更に、前記手段が、上記軸(30)の第二の部分(36)に沿って備え付けられた第二のピッチを含んでなり、上記第一のピッチが該第二のピッチとは異なり、該第の二ピッチが、該第一のピッチより大きい、第三のピッチが該軸(30)の第三の部分(35)に沿って備え付けられ、該軸(30)の上記第一の部分(34)に沿って備え付けられた上記第一のピッチが、該第三のピッチに略等しい、及び、第一の部分(34)が前記軸(30)の遠位端(38)の近くに位置し、そして前記第二の部分(36)が該軸(30)の近位端(39)近くに位置する、及び、第三の部分(35)が前記第二の部分の近位端に位置する、
上記用量設定機構。
請求項1に記載の機構であって、軸(30)及びナット部材(40)の相対的な動きが、互いに対して軸(30)及びナット部材(40)の出発位置(52)及び停止位置(62)を含んでなり、ここで該出発位置(52)と該停止位置(62)の間のナット部材(40)の、軸(30)に沿った移動距離が、前記カートリッジ(25)中に含有された薬物の量に対応する、上記機構。
請求項1または2に記載の機構であって、前記用量が前記カートリッジ(25)から投与されるとき、前記ナット部材(40)が、軸(30)に対して回転せず、むしろ該ナット部材(40)及び該軸(30)の両者が実質的に軸方向に動き、ここで、該ナット部材(40)が、好ましくは少なくとも一つのスプライン機構(44)を含み、少なくとも一つの該スプライン機構(44)が、該ナット部材(40)と、前記薬物送達デバイス(1)のハウジングとの間の相対的な回転を防ぐ、上記機構。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で使用する用語「薬物(drug)」又は「医薬品」」又は「薬物(medicament)」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで一実施態様において、薬学的に活性な化合物は、最大で1500Daまでの分子量を有し、及び/又は、ペプチド、蛋白質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、抗体、酵素、抗体、ホルモン若しくはオリゴヌクレオチド、又は上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈又は肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、癌、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症及び/又は、関節リウマチの処置、及び/又は、予防に有用であり、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、又は糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置、及び/又は、予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、更なる実施態様において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリン、又はヒトインスリン類似体若しくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)、又はその類似体若しくは誘導体、又はエキセジン−3又はエキセジン−4、若しくはエキセジン−3又はエキセジン−4の類似体若しくは誘導体を含む。
【0014】
インスリン類似体は、例えば、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリンであり、ここで、B28位におけるプロリンは、Asp、Lys、Leu、Val又はAlaで代替され、そして、B29位において、Lysは、Proで代替されてもよく;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、及びDes(B30)ヒトインスリンである。
【0015】
インスリン誘導体は、例えば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイル ヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0016】
エキセンジン−4は、例えば、エキセンジン−4(1−39)、配列H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH
2のペプチドを意
味する。
【0017】
エキセンジン−4誘導体は、例えば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);又は
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
ここで、基−Lys6−NH
2は、エキセンジン−4誘導体のC−末端と結合してもよく;
【0018】
又は以下の配列のエキセンジン−4誘導体;
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH
2、
desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH
2、
H−desAsp28 Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38 [Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH
2、
desMet(O)14,Asp28,Pro36,Pro37,Pro38 エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Asn−(Glu)5,desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25, Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH
2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−(Lys)6−des Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH
2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH
2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH
2;
又は前述のエキセンジン−4誘導体のいずれか1つの薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物;
から選択される。
【0019】
ホルモンは、例えば、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に表示されているような脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は規制活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストである。
【0020】
多糖類としては、例えば、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、又は超低分子量ヘパリン、若しくはそれらの誘導体などのグルコアミノグリカン、又は上述の多糖類のスルホン化された、例えば、ポリスルホン化形態、及び/又は、薬学的に許容可能なそれらの塩がある。ポリスルホン化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウム塩がある。
【0021】
薬学的に許容される塩は、例えば、酸付加塩及び塩基塩がある。酸付加塩としては、例えば、HCl又はHBr塩がある。塩基塩は、例えば、アルカリ又はアルカリ土類金属、例えば、Na
+、又は、K
+、又は、Ca
2+から選択されるカチオン、又は、アンモニウムイオンN
+(R1)(R2)(R3)(R4)を有する塩であり、ここで、R1〜R4は互いに独立に、水素;場合により置換されたC1−C6アルキル基;場合により置換されたC2−C6アルケニル基;場合により置換されたC6−C10アリール基、又は場合により置換されたC6−C10ヘテロアリール基である。薬学的に許容される塩の更なる例は、“Remington's Pharmaceutical Sciences”17編、Alfonso R.Gennaro(編集),Ma
rk Publishing社,Easton, Pa., U.S.A.,1985 及び Encyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0022】
薬学的に許容可能な溶媒和物は、例えば、水和物である。
【0023】
図1を参照すると、例示的配置に従って薬物送達デバイス1が示される。薬物送達デバイス1は、第一のカートリッジ保持部分2及び用量設定機構4を有するハウジングを含む。薬物送達デバイスは、リセット可能な薬物送達デバイス(つまり、再使用可能な)又はあるいは、リセット不可能な薬物送達デバイス(つまり、再使用不可能なデバイス)であり得る。カートリッジ保持部分2の第一の端部及び用量設定機構4の第二の端部は、連結機構によって一緒に固定される。リセット不可能なデバイスに対して、これらの連結機構は恒久的でかつ不可逆的あるであろう。リセット可能なデバイスに対して、これらの連結機構は開放可能であろう。
【0024】
この図示された配置において、カートリッジハウジング2は用量設定機構4の第二の端部内に固定される。取り外し可能なキャップ3は、カートリッジ保持部分又はカートリッジハウジングの第二の端部又は遠位端に亘って開放可能なように保持される。用量設定機構4は用量ダイアルグリップ12及び窓又はレンズ14を含む。用量目盛配置16は窓又はレンズ14を通して見ることができる。薬物送達デバイス1内に含有された薬物の用量を設定するために、使用者は、ダイアルされた用量が用量目盛配置16を経て窓又はレンズ14において見ることができるように、用量ダイアルグリップ12を回転する。
【0025】
図2は、カバー3が薬物送達デバイス1の遠位端19から取り外された、
図1の薬物送達デバイス1を図示する。この取り外しによってカートリッジハウジング6が曝される。図示された通り、そこから医薬品の多くの用量が投与され得るカートリッジ25は、カートリッジハウジング6中に供される。好ましくは、カートリッジ25は、一日に一回又はそれより多くのような、比較的しばしば投与することができる薬物のタイプを含む。そのような薬物の一つは、長時間作用型又は短時間作用型インスリンのどちらか又はインスリン類似体である。カートリッジ25は、カートリッジ25の第二の端部又は近位端27の近くに保持される(
図2において図示されていない)栓又はストッパーを含む。薬物送達デバイス、特に、用量設定機構4は、スピンドルを有するドライバも含む(
図2において図示されていない)。
【0026】
カートリッジハウジング6は、遠位端23及び近位端27を有する。好ましくは、カートリッジハウジング6のカートリッジ遠位端23は、取り外し可能なニードルアセンブリを取り付けるための溝8を含む(
図2において図示されていない)。しかしながら、他のニードルアセンブリ連結機構も使用され得るであろう。もし薬物送達デバイス1がリセット可能なデバイスを含むならば、カートリッジ近位端27は、用量設定機構4に取り外し可能なように連結される。一つの好ましい実施態様において、カートリッジハウジング近位端27はバヨネット連結を介して用量設定機構4に取り外し可能なように連結される。しかしながら、当業者が認識するであろうように、ねじ山、不完全ねじ部、ランプ(ramp)と戻り止め(detent)、スナップロック、スナップフィット及びルアー(luer)ロックのような他のタイプの取り外し可能なに連結方法も使用され得る。
【0027】
前述の通り、
図1又は2において図示された薬物送達デバイスの用量設定機構4は、再使用可能な薬物送達デバイス(つまり、リセットされ得る薬物送達デバイス)として利用され得る。薬物送達デバイス1が再使用可能な薬物送達デバイスを含む場合、カートリッジ25は、カートリッジハウジング6から取り外し得る。カートリッジ25は、デバイス1を破壊することなく、使用者が単にカートリッジハウジング6から用量設定機構4の連結を外すことによって、デバイス1から取り外し得る。
【0028】
使用中に、一旦、キャップ3が取り外されると、使用者は、カートリッジハウジング6の遠位端23に供された溝8に適切なニードルアセンブリを取り付けることができる。そのようなニードルアセンブリは、例えば、ハウジング6の遠位端23上にねじ込まれ得るか、あるいは、この遠位端23上にパチンとはめられ得る(snapped)。使用後に、交換可能なキャップ3はカートリッジハウジング6を再度覆うために使用され得る。好ましくは、デバイスが使用されていないとき、交換可能なキャップ3がカートリッジハウジング6を覆う位置にあるときに、全体として一体物の印象を供するように、交換可能なキャップ3の外部寸法は、用量設定機構4の外部寸法に同様か又は等しい。
【0029】
例示的配置によると、使用者が、カートリッジ中に残っている薬物よりも多い薬物の量を設定しようとするとき、
図1及び2の薬物送達デバイスにおいて設定され得る最大用量を制限することは有益であり得る。最大用量を制限することを達成するために、薬物送達デバイス1の用量設定機構4は、好ましくは、最終用量ロックアウト機構を含む。最終用量ロックアウト機構は、好ましくは、少なくとも第一の及び第二のピッチを含む螺旋溝32を有する回転可能な軸30を含む。
【0030】
図3及び4は、薬物送達デバイス1の用量設定機構4のような、薬物送達デバイスの用量設定機構の部品を図示する。用量設定機構は、薬物送達デバイス1の使用者が、薬物のカートリッジ中に残っている薬物よりも多い薬物の用量を設定することを防ぐ最終用量ロックアウト機構を含む。具体的に、
図3は最終用量ロックアウト機構の回転可能な軸30を図示し、そして
図4は最終用量ロックアウト機構のナット部材40を図示する。これら二つの部品は、
図5〜11において表わされるように、用量設定機構中で一緒に連結され得る。代替実施態様において、ナット部材は回転可能であり得て、そして軸は回転しないものであり得る。使用者が用量を設定するとき、ナット部材40及び軸30が互いに回転することが重要である。
【0031】
図3を参照すれば、回転可能な軸30は、回転可能な軸30に沿って供された螺旋溝32を含む。螺旋溝は、回転可能な軸30の第一の部分34に沿って供された第一のピッチ、及び回転可能な軸の第二の部分36に沿って供された第二のピッチを有する。第一の部分は回転可能な軸の遠位端の近くに置かれ、そして第二の部は回転可能な軸の近位端の近くに置かれる。更に、第一のピッチは第二のピッチとは異なる。
図3において表わされる通り、例示的実施態様において、第二のピッチは第一のピッチより大きい。単なる一例として、第二のピッチは第一のピッチの幅の約2倍から約10倍であり得る。
【0032】
例示的配置において、第三のピッチは回転可能な軸の第三の部分35上に供される。好ましくは、第三のピッチは、第二のピッチの端部に供され、そして、好ましくは、第二のピットと異なる。例示的配置において、第三のピッチは、第二のピッチより小さい。第三の部分35に沿って供された第三のピッチは、回転可能な軸30の第一の部分34に沿って供された第一のピッチと同じであるか類似であってよい。あるいは、第三の部分35に沿って供された第三のピッチは、回転可能な軸30の第一の部分34に沿って供された第一のピッチと異なってもよい。第三のピッチは、好ましくは、第一のピッチあるいは、非回転部材(40)上のピッチと幅が同じか又はそれらに非常に類似している。
【0033】
回転可能な軸30も、回転可能な軸30の近位端39に置かれた近位停止機構37を含む。好ましくは、近位停止機構37の形は、
図4において図示される非回転部材40の一つに相補的である。好ましい配置において、軸30は、好ましくは、駆動スリーブの遠位端で収容された、用量設定機構4の駆動スリーブの部分である。
【0034】
非回転部材40はナットを含み得る。例えば、非回転部材は、
図4において表わされる通り、完全な円形ナットであり得る。しかしながら、非回転部材は、あるいは、部分的ナットであり得るであろう。
【0035】
非回転部材40は、少なくとも一つの実質的に半径方向の停止面42を含む。少なくとも一つの実質的に半径方向の停止面42は、好ましくは、近位停止機構37上の少なくとも一つの停止面43に相補的である。例示的配置において、非回転部材40は複数の停止面42を含む。用量設定機構の実施態様において、(
図11において表わされた)停止面の長さは、好ましくは、約0.5から約2ミリメーターの範囲内にある。しかしながら、一般的にデバイスの設計に依存するであろうから、そのような停止面の長さに対して何らの制限もない。従って、それは、有限要素解析(FEA)などの或る試験パラメータに基づいて、機構のサイズに対する適切な強度などの、或る工学的又は設計の要求事項によって一部は決定され得る。
【0036】
更に、非回転部材40は、その内部にねじ形状46を含む。ねじ形状46は不完全ねじ部であり得るであろう。例示的実施態様において、ねじ形状46は二つの出発ねじの二つの半回転を含む。他のタイプのねじ形状も同様に可能である。非回転部材40は、
図5〜11において示される通り、回転可能な軸40の螺旋溝上に配列することができる。ねじ形状46によって、用量設定中に回転可能な軸30が回転されるとき、非回転部材が螺旋溝32を横切ることが可能になる。
【0037】
非回転部材40は少なくとも一つのスプライン機構44も含む。スプライン機構44は、用量設定機構4を収容する薬物送達デバイス1のハウジングと相互作用し得る非回転部材40からの突起であり得る。スプライン機構44は、非回転部材40と、用量設定機構4を収容する薬物送達デバイスのハウジングの間の相対的回転を防ぐために作用する。例示的実施態様において、非回転部材は複数のスプライン機構44を含む。
【0038】
図3及び4において図示された部品を有する用量設定機構を持つ薬物送達デバイスの用量設定中に、軸30は非回転部材40に対して回転される。回転中に、非回転部材40は、軸30の遠位端38から近位端39に向かって、螺旋溝32に沿って横切る。非回転部材40は、カートリッジ中に残っている薬物よりも多い用量が選択されるまで、螺旋溝32に沿って横切る。カートリッジ中に残っている薬物よりも多い用量が選択されるとき、非回転部材40は軸が回転すること、及びダイアルされた用量が増えることを防ぐ。具体的に、停止面42及び43は、軸が回転すること、及びダイアルされた用量が増えることを防ぐ。
【0039】
図5において表わされるように、回転可能な軸30は遠位出発位置52を含む。非回転部材40は、薬物送達デバイスカートリッジが実質的に薬物で充填されるとき、遠位出発位置52に置かれる。更に、
図6において表わされるように、回転可能な軸は近位停止位置62も含む。近位停止位置62は、非回転部材40が近位停止機構37と出会う点に置かれる。非回転部材40は、ダイアルされた用量がカートリッジ中に残っている薬物の量に等しいとき、近位停止位置に置かれる。遠位出発位置52と近位停止位置62の間の距離は、薬物送達デバイスの薬物カートリッジ中に含有される薬物の量に対応する。例えば、300国際単位(「単位」)の薬物を収容しているカートリッジの場合、非回転部材が遠位出発位置52に置かれるとき、略300単位の薬物がある。更に、非回転部材は、利用できる薬物の追加の単位が全くないときに、近位停止位置62に置かれる。更にまた、非回転部材は、用量に対して利用できる略150単位の薬物があるときに、(表わされていない)遠位出発位置52と近位停止位置62の間の略中間に置かれる。
【0040】
あるいは、用量をダイアル中の非回転部材40は、近位端、つまり近位出発位置から軸30の遠位端、つまり遠位停止位置に向かって、螺旋溝32に沿って横行し得る。カートリッジ中に残っている薬物よりも多い用量が選択されるとき、非回転部材40は、軸30が回転すること及び遠位停止位置に達した後、遠位停止機構に出会うダイアルされた用量が増えることを防ぐ。
【0041】
設定された用量がカートリッジから投与されるとき、非回転部材40は回転可能な軸30に対して回転しない。むしろ、非回転部材40及び回転可能な軸30の両者は軸方向に動く。
【0042】
用量設定機構の操作を
図7〜11を参照して更に述べる。用量設定の大部分に対して、非回転部材は、螺旋溝32に沿って横切りながら第一のピッチに沿って横切る。しかしながら、使用者が、カートリッジ25中に残っている薬物の限界に近い用量を設定しているとき、非回転部材40は、第一のピッチよりも大きい第二のピッチを有する螺旋溝32に沿って横切る。
図7〜11は、最後の用量の用量設定中の、回転可能な軸30と非回転部材40の間の相互作用を図示する。具体的に、これらの図は回転可能な軸30の回転の最後の約90度を図示する。そのような配置において、回転の最後の約90度は、一般的に、注射デバイスのカートリッジ25中に含有された薬物の約4から約7単位に等しいものであり得る。明確に示す目的で、非回転部材40のスプライン機構44は省略されている。
図7〜11は、非回転部材40と回転可能な軸30の間の相対的回転を表わす。
【0043】
図7は、回転の最後の90度の始まりを表わし、ここでこの例においては、非回転部材の停止機構42及び回転可能な軸30の停止機構43は、互いに丁度通過する。この点で、非回転部材40は第一のピッチに沿って横断しており、そして第二のピッチに沿って丁度横切り始めている。非回転部材40のねじ山は、例えば、領域70、72及び74で回転可能な軸30のねじ山と接触する。
【0044】
図8は、いつ非回転部材40が第二のピッチに沿って横切り始めるかを表わす。非回転部材40のねじ山は、例えば、点82、並びに領域80及び84で回転可能な軸30のねじ山と接触する。この例において、第二のピッチは、回転の略最後の80度に対応する場所で始まる。しかしながら、第二のピッチは、異なる場所で始まり得るであろうと理解されるべきである。例えば、第二のピッチは、回転の略最後の45〜360度に対応する場所で始まるであろう。他の場所も同様にあり得る。
【0045】
図9は、そこでそれが第一のピッチに沿って走行するのと比べて速く走行する第二のピッチに沿って、いつ非回転部材40が略中ほどを通って横切るかを表わす。これは、第二のピッチに沿った或る回転角度に亘る軸30に対する非回転部材40の軸移動が、第一のピッチに沿った同じ回転角度に亘る軸30に対する非回転部材40の軸移動よりも大きいことを意味する。第二のピッチに沿った速い回転は、使用者によって感知され得て、用量設定可能な最後に達したことを示す。
図9において図示された位置で、非回転部材40のねじ山は、点90及び92でのみ、回転可能な軸30のねじ山と接触する。
図9が表わす通り、ナット40は、それが第二のピッチ区域と係合されるとき、ツインの出発ねじ46のせいで、両側上に適切に誘導される。しかしながら、ねじ山の間の接触面積は最小である。示されるように、ツインの出発ねじは点90及び92で第二のピッチ領域に接触する。これらの接触点によって、この増えたピッチセグメント中で、非回転部材40が軸から外れて捩じれること防がれる。
【0046】
図10は、停止機構42と停止機構43が係合する直前でもあるが、いつ非回転部材40が第三のピッチに沿って横切り始めるかを表わす。非回転部材40のねじ山は、例えば、点100及び104、並びに領域102で回転可能な軸30のねじ山と接触する。
【0047】
図11は、いつ非回転部材40が第三のピッチに沿って横断を完了するか、そしていつ停止機構42と停止機構43が係合するかを表わす。
図11が表わす通り、非回転部材の停止機構42は、回転可能な軸30の遠位停止機構37の相補的な停止面43と隣接する。停止面の有効長さは長さ「a」として示される。有利なことに、有効長さが長いほど、最終用量ロックアウト機構の停止力がより大きくなる。
【0048】
回転可能な軸上に、丁度一定のピッチよりむしろ第二のピッチを供することによって、軸方向の停止面の有効長さを増やすことができる。第一のピッチから増やされた第二のピッチへの回転可能な軸30上のピッチの変化によって、停止面42、43の有効長さ「a」の増大が可能になり、その結果、停止面の接触面積の増大が創出される。増大された停止面の接触面積によって、使用者が、カートリッジ中に残された薬物の量を超える用量をダイアルしようと試みるときの停止力が増える。
【0049】
また、低減されたピッチ区域(つまり、第三の部分35上の第三のピッチ)は、好ましくは、ナット40上のピッチと類似しているか又は同じである。従って、非回転部材40のねじ山46と回転可能な軸30のねじ山の間の表面係合が増え、その結果、より高い軸負荷が制限されることが可能になる。増やされた表面係合によってより高い軸負荷が制限されるため、使用者によって高い停止トルク負荷がかけられるとき、これら二つの部分上のねじ山に対する破壊のリスクが低減される。第三の部分35上の低減されたピッチが長いほど、ねじ形状の間の接触表面がより大きくなり、その結果、これらの軸形状を制限できる軸負荷がより大きくなる。
【0050】
図7〜11において回転の最後の90度を表わす例は説明目的のためであり、そして限定的あることを意味するものではないと理解されるべきである。例えば、第二のピッチは回転の180度で又はその近くで生じ得るであろう(つまり、非回転部材に対して回転可能な軸の最後の半回転)。更にまた、第二のピッチは回転の360度で又はその近くで生じ得るであろう(つまり、非回転部材に対して回転可能な軸の最後の完全な回転)。更にまた、第二のピッチは回転の540度で又はその近くで生じ得るであろう(つまり、非回転部材に対して回転可能な軸の最後の一回転半の回転)。当業者が認識するであろうように、他の例も同様に可能である。
【0051】
例示的実施態様に従って用量設定機構によって、停止強度に致命的な影響を有することなしに、停止面面積が増やされる。従って、例示的な実施態様によって用量設定機構は、停止力が増えた改善された最終用量ロックアウト機構を提供する。増やされた停止力は、使用者が、残っている薬物より多い用量をダイアルすることを防ぐために有用である。上で論じられた通り、上述の用量設定機構は再使用可能な薬物送達デバイスにおいて、又は再使用不可能な薬物送達デバイスにおいて利用され得る。
【0052】
本発明の例示的実施態様が述べられてきた。こしかしながら当業者は、これらの実施態様対して変更及び修正が、請求の範囲によって定義される本発明の真の範囲及び精神から逸脱することなくなされ得ることを理解するであろう。