特許第5717841号(P5717841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717841
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ロック付開閉装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 83/36 20140101AFI20150423BHJP
   E05B 81/38 20140101ALI20150423BHJP
   E05B 77/54 20140101ALI20150423BHJP
   E05B 81/58 20140101ALI20150423BHJP
   E05F 15/632 20150101ALI20150423BHJP
   B61D 19/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   E05B83/36 A
   E05B81/38
   E05B77/54
   E05B81/58
   E05F15/14
   B61D19/00 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-503356(P2013-503356)
(86)(22)【出願日】2012年2月15日
(86)【国際出願番号】JP2012000983
(87)【国際公開番号】WO2012120790
(87)【国際公開日】20120913
【審査請求日】2013年7月31日
(31)【優先権主張番号】特願2011-51775(P2011-51775)
(32)【優先日】2011年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】特許業務法人 クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上田 晋司
(72)【発明者】
【氏名】鳥原 秀作
【審査官】 神崎 共哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−357052(JP,A)
【文献】 特開2008−121244(JP,A)
【文献】 特開2003−097124(JP,A)
【文献】 特開2000−142392(JP,A)
【文献】 米国特許第05483769(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00−85/28
E05F 15/00−15/79
B61D 19/00,19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに対して往復移動可能な引分け式の一対の引戸と、
前記一対の引戸にそれぞれ取付けられた一対の開閉駆動機構と、
前記一対の開閉駆動機構を駆動させる引戸のアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動力が入力される入力部と、前記入力部に入力された駆動力を出力可能な第1出力部および第2出力部と、を有する遊星歯車機構と、
前記ハウジングに設けられ、前記第1出力部および前記第2出力部からの出力に応じて、前記一対の引戸における各引戸に固定されたロック部材の移動をそれぞれ拘束することにより前記一対の引戸の動作を固定するロック機構と、
前記一対の引戸の全閉位置における状態で、外部信号に基づいてロック機構のロック解除状態からロック状態への切り換えを規制するロック規制機構と、を備え
前記ロック規制機構は、外部信号により駆動するロック規制駆動部を備え、
前記ロック規制駆動部は、前記一対の引戸の全閉位置における状態で、前記遊星歯車機構から前記ロック機構への動力分配を制限するロック規制駆動力伝達機構を備えることを特徴とするロック付開閉装置。
【請求項2】
前記ロック規制駆動力伝達機構は、
前記遊星歯車機構の遊星歯車キャリアと連結され、前記遊星歯車機構の開口幅方向に延びる連結部と、
前記ロック規制駆動部によって駆動され、前記連結部と係合可能なロック規制プレート部と、を含み、
前記ロック規制駆動部は、前記遊星歯車機構の開口幅方向に配設されたことを特徴とする請求項記載のロック付開閉装置。
【請求項3】
前記ロック規制駆動力伝達機構および前記ロック規制駆動部は、一体に設けられたことを特徴とする請求項記載のロック付開閉装置。
【請求項4】
前記ロック規制プレート部は、一端部に前記引戸の開閉方向と直交する水平方向の軸を有し、当該軸を中心に回動可能に設けられ、他端部に前記引戸の開閉方向に直交する水平方向に中心を持つ円柱状部を備え、
前記ロック規制駆動力伝達機構の連結部は、一端部に遊星歯車キャリアと連結され、他端部に、前記ロック規制プレート部の円柱状部と当接する爪部を備え、
前記爪部は、前記円柱状部の前記回動方向の移動を阻止する形状からなることを特徴とする請求項記載のロック付開閉装置。
【請求項5】
前記外部信号は、前記ロック付開閉装置が設けられる車両の速度に連動して前記車両より出力される速度信号であることを特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のロック付開閉装置。
【請求項6】
前記ロック規制機構は、外部信号にかえ、引戸が全閉してから所定時間経過するまで前記ロック解除状態から前記ロック状態への切換を規制すること特徴とする請求項1からのいずれか1項に記載のロック付開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復移動可能な引分け式引き戸のロック付開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングに対して往復移動可能に取付けられた引戸を開閉移動可能であるとともに全閉位置においてロックすることが可能なロック付開閉装置が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1には、引分け式の引戸を確実にロックすることが可能であるとともに、単一のアクチュエータで引戸の開閉及び閉鎖ロックを行うことができる簡素でコンパクトな構成のロック付開閉装置について開示されている。
【0004】
特許文献1記載のロック付開閉装置は、ハウジングに対して往復移動可能な引分け式の一対の引戸にそれぞれ取付けられた一対のラックと当該一対のラックに噛合するピニオンからなるラックアンドピニオン機構と、引戸の開閉駆動源としてのアクチュエータと、ハウジングに設けられ、一対の引戸における各引戸に固定されたロック部材の移動をそれぞれ拘束することにより一対の引戸を全閉位置でロック可能なロック機構と、ロック機構のロック状態とロック解除状態とを切り換えるための切り換え機構と、アクチュエータの駆動力が入力される入力部と、ピニオンに対して当該駆動力を出力可能な第1出力部と、切り換え機構に対して当該駆動力を出力可能な第2出力部と、を有する遊星歯車機構と、を備え、引戸が全閉位置にあるときは、第2出力部から切り換え機構に対して駆動力が出力されるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−121244号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、特許文献1記載のロック付開閉装置では、単一のアクチュエータで引き戸の開閉および閉鎖ロックを行うことができる。
【0007】
しかしながら、特許文献1記載のロック付開閉装置では、引き戸の開閉と閉鎖ロックとが、一連の動作として行われる。したがって、当該ロック付開閉装置を鉄道車両の扉開閉装置として利用した場合、乗降者のバッグなどの紐が引き戸に挟まれて、荷物が鉄道車両内に取り残されても、引き戸が全閉すると、そのまま扉がロックされてしまうため、車掌がロック付開閉装置を再開閉しない限り、乗降者は、バッグなどを引き抜くことができないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、単一のアクチュエータで引戸の開閉及び閉鎖ロックを行うことができ、かつ安全性を低下させることなく、バッグなどの荷物が容易に引き抜けるようにロック動作のタイミングを任意設定できるロック付開閉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)
一局面に従うロック付開閉装置は、ハウジングに対して往復移動可能な引分け式の一対の引戸と、一対の引戸にそれぞれ取付けられた一対の開閉駆動機構と、一対の開閉駆動機構を駆動させる引戸のアクチュエータと、アクチュエータの駆動力が入力される入力部と、入力部に入力された駆動力を出力可能な第1出力部および第2出力部と、を有する1入力2出力機構と、ハウジングに設けられ、第1出力部および第2出力部からの出力に応じて、一対の引戸における各引戸に固定されたロック部材の移動をそれぞれ拘束することにより一対の引戸の動作を固定するロック機構と、一対の引戸の全閉位置における状態で、外部信号に基づいてロック機構のロック解除状態からロック状態への切換を規制するロック規制機構と、を備えるものである。
【0010】
ロック付開閉装置においては、アクチュエータが駆動することにより、アクチュエータの駆動力が1入力2出力機構の入力部に入力され、第1出力部または第2出力部から出力される。第1出力部または第2出力部から出力された駆動力が、一対の開閉駆動機構を駆動させ、引戸が開閉される。
【0011】
そして、ロック規制機構は、外部信号にもとづいて、ロック機構がロック解除状態からロック状態への切り換えが規制されているので、引戸が全閉位置であっても、自動的にはロックされない。外部信号にもとづいて、ロック規制機構による規制が解除された後、第1出力部および第2出力部からの出力に応じて、ロック機構により、一対の引戸における各引戸に固定されたロック部材の移動がそれぞれ拘束され、一対の引戸がロックされる。
つまり、単一のアクチュエータで引戸の開閉及び閉鎖ロックを行うことができ、ロック機構により引戸は機械的にロックされるので、走行中に不用意に引戸が開くことも無く、安全性も損なわれない。
さらに、引戸が全閉状態になっても自動的にロックせず、外部信号に応じて、全閉状態の引戸をロックするタイミングを操作することができるので、引戸がロック状態になるまでは引戸をこじ開けることができ、バッグなどの荷物を容易に引き抜くこともできる。
【0012】
(2)
ロック付開閉装置において、1入力2出力機構は、遊星歯車機構からなり、ロック規制機構は、外部信号により駆動するロック規制駆動部を備え、ロック規制駆動部は、一対の引戸の全閉位置における状態で、遊星歯車機構からロック機構への動力分配を制限するロック規制駆動力伝達機構を備える。
【0013】
この場合、ロック規制駆動部のロック規制駆動力伝達機構により、一対の引戸の全閉位置における状態で、遊星歯車機構からロック機構への動力分配が機械的に制限されるので、信頼性を確保することができる。
【0014】
(3)
ロック付開閉装置において、ロック規制駆動力伝達機構は、遊星歯車機構の遊星歯車キャリアと連結され、遊星歯車機構の開口幅方向に延びる連結部と、ロック規制駆動部によって駆動され、連結部と係合可能なロック規制プレート部と、を含み、ロック規制駆動部は、遊星歯車機構の開口幅方向に配設されてもよい。
【0015】
この場合、連結部およびロック規制駆動部が遊星歯車機構の開口幅方向に配設されるので、引戸のハウジングに沿った方向と遊星歯車機構の開口幅方向とが一致し、連結部およびロック規制プレートを含むロック規制駆動部配設し易い。
【0016】
(4)
ロック付開閉装置において、ロック規制駆動力伝達機構およびロック規制駆動部は、一体に設けられてもよい。
【0017】
この場合、一体に設けられているので、鉄道車両等への艤装時に、ロック規制駆動力伝達機構およびロック規制駆動部の位置関係を調整する必要が無くなり、容易に艤装することができる。
【0018】
(5)
ロック付開閉装置において、ロック規制プレート部は、一端部に引戸の開閉方向と直交する水平方向の軸を有し、当該軸を中心に回動可能に設けられ、他端部に引戸の開閉方向に直交する水平方向に中心を持つ円柱状部を備え、ロック規制駆動力伝達機構の連結部は、一端部に遊星歯車キャリアと連結され、他端部に、ロック規制プレート部の円柱状部と当接する爪部を備え、爪部は円柱状部の回動方向の移動を阻止する形状からなってもよい。
【0019】
この場合、爪部が、円柱状部の回動方向の移動を阻止する形状からなるので、確実にロック規制を維持することができる。すなわち、意図しないロック規制の解除が行われない。
【0020】
(6)
外部信号は、ロック付開閉装置が設けられる車両の速度に連動して車両より出力される速度信号であってもよい。
【0021】
この場合、車両の速度が低速の場合には、ロック規制を行い引戸を開閉でき、車両速度が低速以上になった場合には、ロック規制を解除し、引戸をロック状態にすることができる。その結果、安全上、速度の許容できる範囲で、引戸に挟まれたバッグ等を引き抜く時間を長く取ることができる。
【0022】
(7)
ロック規制機構は、外部信号にかえ、引戸が全閉してから所定時間経過するまで、ロック解除状態からロック状態への切換を規制するものであってもよい。
【0023】
この場合、車両側からの信号線を別途、艤装する必要がないので、艤装が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】ロック付開閉装置を鉄道車両用開閉扉に設置した一例を示す模式的正面図である。
図2】ロック解除状態のロック付開閉装置の構成を示す模式的正面図である。
図3】遊星歯車機構およびラックピニオン機構の伝達方式を説明するための模式的説明図である。
図4】ロック機構の一例を説明するための模式図である。
図5】ロック機構の一例を説明するための模式図である。
図6】ロック規制装置の一例を説明するための模式図である。
図7】ロック規制装置の一例を説明するための模式図である。
図8】制御部の動作を説明するためのフローチャートである。
図9】制御部の他の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0025】
100 ロック付開閉装置
231,232 ロックピン
300 遊星歯車機構
301 電動モータ
310 サンギア
330 インターナルギア
340 キャリア
390 係止用軸
500 車両用開閉扉
600 ロック機構
700 ロック規制機構
710 ソレノイド
720 ロック規制プレート
722 軸
723 円柱状部材
730 ロック規制部
731 係止部
740 第1伝達部材
750 第2伝達部材
800 制御部
901,902 一対の引戸
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を用いて説明する。本発明の一実施の形態に係るロック付開閉装置を、鉄道車両に適用した場合について説明する。
【0027】
(一実施の形態)
まず、図1はロック付開閉装置100を車両用開閉扉500に設置した一例を示す模式的正面図である。
【0028】
(車両用開閉扉の概略構成)
図1に示す車両用開閉扉500は、鉄道車両等の車両の側壁に形成された開口部を開閉可能な扉として構成されている。車両用開閉扉500は、引分け式の左右一対の引戸901,902を備えている。一対の引戸901,902は、開口部の上方に水平に設置されたガイドレール910に沿って往復移動可能に設けられている。
【0029】
図1に示すように、引戸901,902のそれぞれの上縁にはハンガー921,922が固定されており、それぞれのハンガー921,922には複数の戸車940が回転自在に軸支されている。この戸車940は、ガイドレール910上を転動可能に構成されている。
【0030】
また、車両用開閉扉500は、本発明の一実施形態に係るロック付開閉装置100により、一対の引戸901,902が閉状態になってから所定のタイミングでロックできるようになっている。また、鉄道車両等の車両用開閉扉500は走行中に開放されると危険であり、走行中は不意に開かないように確実にロックしておくことが要求される。
【0031】
(ロック付開閉装置)
以下、ロック付開閉装置100について詳細に説明する。図2はロック解除状態のロック付開閉装置100の構成を示す模式的正面図であり、図3は遊星歯車機構300およびラックピニオン機構280の伝達方式を説明するための模式的説明図である。
【0032】
図2に示すように、車両の側壁(ハウジング)の上部(開口部の上方の空間)には板状の基体205が固着され、当該基体205に固定されたラックサポート206(図1参照)に、2本のラック271,272が支持されている。
ラック271,272は、長手方向を水平(図1のガイドレール910と平行)に向けて配置されるとともに、当該長手方向(水平方向)に摺動可能となるよう、スライド支持部208(図1参照)によって支持されている。
【0033】
2本のラック271,272は、上下方向に適宜の間隔を形成しつつ互いに平行に配置され、また、それぞれの歯部が互いに対向するように配置されている。そして、2本のラック271,272の双方の歯部に同時に噛合するようにして、ピニオン290が回動自在に配置されている。このピニオン290は、車両用開閉扉500の開口部上方の左右中央位置であって、且つ、2本のラック271,272に上下を挟まれた位置に配置される。
【0034】
2本のラック271,272それぞれの一端には、アーム部材221,222が設置されている。このアーム部材221,222は、それぞれハンガー921,922に対して結合部材925,926(図1参照)を介して固定されている。即ち、ラック271,272のそれぞれの一端は、当該アーム部材221,222を介して、対応する引戸901,902に連結されている。
【0035】
上述したラック271,272とピニオン290とにより、ラックピニオン機構280が構成されており、ラックピニオン機構280により2枚の引戸901,902は開閉駆動される。
なお、ラックピニオン機構280は、1つのピニオン290に対して複数のラック271,272を係合させているので、左右の引戸901,902同士を連結した状態にし、引戸901,902の対称的な開閉を実現する役割を果たす。
【0036】
また、図2示すように、一対のアーム部材221,222のそれぞれには、鉛直方向上向きに延びるロックピン231,232(ロック機構600との係止部材)が固定されている。当該ロックピン231,232が後述するロック機構600により拘束されることにより、一対の引戸901,902の移動がロックされることになる。
【0037】
また、図2および図3に示すように、基体205には遊星歯車機構300が支持されている。この遊星歯車機構300は、回転自在に軸支されたサンギア310(入力部)と、このサンギア310の外周に複数配置され、サンギア310に噛合しつつ自転及び公転が可能なプラネタリギア320と、当該プラネタリギア320の外側で噛合する内歯を有するインターナルギア330(第1出力部)と、当該プラネタリギア320を回転自在に支持するキャリア340(第2出力部)と、を有している。サンギア310、インターナルギア330、キャリア340の三者は、同一回転軸線上に配置されるとともに、それぞれが他に対して相対回転自在となるように配置されている。また、三者の回転軸線は、前述したラックピニオン機構280のピニオンの軸線とも一致している。
【0038】
そして、サンギア310には、正逆回転可能なダイレクトドライブ方式の電動モータ(アクチュエータ)301の出力軸が連結されている。なお、適宜の減速機構を介して連結しても構わない。
また、制御部800は、DCS(ドアクローズスイッチ)検知部810からの信号に基づいて、または電動モータ301からの信号に基づいて、当該電動モータ301の制御を行う。当該制御部800の詳細動作については、後述する。
【0039】
また、インターナルギア330は、前述のラックピニオン機構280のピニオン290に連結されている。さらに、キャリア340は、ロック機構600のロック状態とロック解除状態とを切り換えるためのロック機構600、すなわち、ロックスライダ633(切換部材:図4参照)を牽引するための牽引部材670(図4参照)に連結されている。
【0040】
(ロック機構)
次いで、ロック機構600について説明を行う。図4および図5は、ロック機構600の一例を説明するための模式図である。
【0041】
まず、図4に示すように、牽引部材670およびロックスライダ633は、基体205(図2参照)に対して固定されたラック271,272と平行に延びるシャフトガイド軸672に沿って矢印H6の方向に沿って往復移動可能に設置され、ロック状態の切り換え機構を構成している。
【0042】
図4の牽引部材670とロックスライダ633との間には、コイルバネ状のトルクリミットスプリング671が配設されている。当該トルクリミットスプリング671は、牽引部材670をロックスライダ633に押し付けるように当該牽引部材670とロックスライダ633とに弾性力を作用させている。すなわち、トルクリミットスプリング671は、牽引部材670のロックスライダ633に対する相対移動を抑制するように配置されている。
【0043】
また、ロックスライダ633の矢印H6の方向で、かつシャフトガイド軸672には、ロックスライダ633をロック方向に付勢するように、ロックスプリング674が配設されている。ロックスプリング674は、ロック位置にあるロックスライダ633がロック解除位置に戻ることを抑制する。
【0044】
また、牽引部材670は、遊星歯車機構300のキャリア340の回転に伴って、矢印H6の方向または矢印H6の方向と逆方向へ移動可能となるように、遊星歯車機構300のキャリア340と結合している。
さらに、遊星歯車機構300のキャリア340の上端部には、係止用軸390が設けられおり、当該係止用軸390は、後述するロック規制機構700の第2伝達部材750と係止されている。
【0045】
ここで、図4に示すように、ロックスライダ633が矢印H6と逆方向(矢印−H6方向)に移動すると、ロック規制機構700の第2伝達部材750が、矢印H7の方向に移動し、図5に示すように、ロックスライダ633が矢印H6の方向に移動すると、ロック規制機構700の第2伝達部材750が、矢印H7と逆方向(矢印−H7方向)に移動する。当該詳細は、後述する。
【0046】
(ロック規制機構)
次に、ロック規制機構700について説明を行う。図6および図7は、ロック規制機構700の一例を説明するための模式図である。
【0047】
図6に示すように、ロック規制機構700は、ソレノイド710の先端713がロック規制プレート720の軸722側近傍に軸支されている。また、ロック規制プレート720の円柱状部材723がロック規制部730の係止部731に係止され、ロック規制部730の下部に第1伝達部材740および第2伝達部材750が配設されている。係止部731は、円柱状部材723の断面中心軸よりも円柱状部材723の外周の上方位置において円柱状部材723と係止される。その結果、不用意に係止部731および円柱状部材723の係止が離れない。また、ロック規制部730、第1伝達部材740および第2伝達部材750は、一体として移動可能に設けられる。なお、円柱状部材723は、その軸を中心に回転可能に設けられていてもよく、この場合、不用意に係止部731および円柱状部材723の係止が離れない構造でありながら、ロック規制の解除を容易に行うことができるようになる。
【0048】
例えば、図7に示すように、ソレノイド710のコイル711をオフすることにより、ソレノイド710の鉄芯712が矢印−H7の方向に移動する。その結果、鉄芯712の先端713がロック規制プレート720を矢印R7の方向に軸722を中心に回転させる。そして、ロック規制プレート720の円柱状部材723がロック規制部730の係止部731から離れ、ロック規制部730が矢印H7の方向に移動する。その結果、第1伝達部材740および第2伝達部材750が矢印H7の方向に移動し、図5に示すように、ロックスライダ633が矢印H6と逆方向に移動することとなる。
なお、作動時間させる時間が短いため、省エネを考慮してソレノイド710としては通電時作動型としたが、停電時作動型であっても、構わない。
【0049】
(ロック規制機構の動作)
次に、図を用いてロック付開閉装置100の制御部800の動作について説明する。図8は制御部800の動作の一例を説明するためのフローチャートである。
【0050】
まず、初期状態として、引戸901,902が開状態である場合から説明を行う。制御部800は、閉動作指示が来るまで開状態を維持し(ステップS1)、閉動作指示を受けると、ロック規制機構700をオンにする(ステップS2)。すなわち、図6に示すように、ソレノイド710をオンにし、ロック規制プレート720および円柱状部材723を係止する。そして、ダイレクトドライブ方式の電動モータ(アクチュエータ)301を動作させ、引戸901,902を閉方向に移動させる(ステップS3)。
この場合、電動モータ301からサンギア310、インターナルギア330、からラックピニオン機構280へ動力が伝わり、引戸901,902が閉方向に移動する。
なお、本実施例では閉動作指示を受けてからロック規制機構700をオンにしたが、これに限られず、開動作開始後から引戸(ドア)901,902が全閉位置に至るまでの間のいずれかのタイミングでオンするようにしてもよい。
【0051】
次に、制御部800は、ドアクローズスイッチ信号(以下、DCS信号と呼ぶ)がONしたか否かを判定する(ステップS4)。ここで、制御部800は、DCS信号がONしていないと判定した場合、ステップS3からの処理を繰り返す。すなわち引戸(ドア)901,902が全閉するまで、閉動作を続ける。
【0052】
一方、制御部800は、DCS信号がONであると判定した場合でも電動モータ301を動作させ、引戸901,902を閉方向に付勢し続ける(ステップS5)。
この時点では、ロック規制機構700はオンであるため、引戸901,902は閉鎖状態にあるが、ロック機構600によりロックされていない状態である。
従って、電動モータ301により閉方向に付勢することで、不用意に引戸901,902が開かないようにすることができる。
【0053】
そして、制御部800は、車両速度が例えば5km/時速であるか否か判定する(ステップS6)。制御部800は、車両速度が5km/時速以下である場合には、車両速度が5km/時速以上になるまでステップS4からの処理を繰り返す。
なお、この間に、引戸901,902に鞄の紐等が挟まれて引き抜くために開かれたときは、DCS信号がOFFとなるため、閉動作が行なわれる(ステップ3)
【0054】
一方、制御部800は、車両速度が5km/時速以上になった場合、ロック規制機構700をOFF、すなわち、ソレノイド710への給電を中止する(ステップS7)。その結果、ロック規制機構700の規制解除(図7参照)、すなわち、ロック解除状態からロック状態への切り換え規制の解除が行われる。この場合、サンギア310からの駆動力は、インターナルギア330側(第1出力側)は回転できないため、プラネタリギア320から索引部材670側に駆動力が伝わる。
【0055】
その結果、図7に示したように、ロック規制機構700の第1伝達部材740および第2伝達部材750と、係止用軸390とが矢印H7の方向に移動可能となる。
【0056】
電動モータ301の閉方向の付勢力により、図4に示すように、ロックスライダ633が矢印H6と逆方向に移動する。すなわち、キャリア340からの駆動力により、牽引部材670の下端が矢印H6と逆方向に移動し、ロック機構600がロックピン231,232を完全に移動しないように固定する。その結果、引戸901,902が閉状態においてロックされる。
【0057】
なお、ロックが完了すると出力されるドアロックスイッチ(DLS)信号がONするまで、電動モータ301により閉方向に付勢され続ける(ステップS8)。
【0058】
このように、電動モータ301により閉方向に付勢することで、不用意に引戸901,902が開かないようにすることができるほか、ロック機構600の故障等により機械的なロックができない場合でも、不用意に引戸901,902が開かないようにすることもできる。
【0059】
一方、DLS信号がONすると、制御部800は、閉方向への付勢を停止し、モータ電力をOFFする(ステップS9)。この場合でも、ロック機構600によるロックが保持されているので、ロックがはずれ、走行中に引戸901,902が開くことを防止できる。
【0060】
また、モータ電力をOFFにすることにより、鉄道車両の走行時における消費電力の低減を図ることができ、さらに、制御部800が万が一誤作動しても走行中の誤開動作を防止することができる。
【0061】
なお、上記の実施の形態のロック規制機構700において制御部800がソレノイド710を用いてロック規制を制御することとしたが、これに限定されず、直動モータ、例えば、ボールネジ式、またはリニア式、モータ等、任意の駆動装置を用いてもよい。
【0062】
(他の例)
図9は、図8に示した制御部800の動作の他の例を説明するためのフローチャートである。
【0063】
図9に示す制御部800の動作が図8の制御部の動作と異なるのは、ステップS6の処理の代わりに、ステップS6aの処理を行う点である。以下、図9に示した制御部800の動作が、図8に示した制御部800の動作と異なる点の処理について主に説明を行う。
【0064】
図9に示すように、制御部800は、ドアクローズスイッチ信号(以下、DCS信号と呼ぶ)がONしたか否かを判定する(ステップS4)。ここで、制御部800は、DCS信号がONしていないと判定した場合、ステップS3からの処理を繰り返す。すなわち引戸(ドア)901,902が全閉するまで、閉動作を続ける。
【0065】
一方、制御部800は、DCS信号がONであると判定した場合でも電動モータ301を動作させ、引戸901,902を閉方向に付勢し続ける(ステップS5)。
この時点では、ロック規制機構700はオンであるため、引戸901,902は閉鎖状態にあるが、ロック機構600によりロックされていない状態である。
従って、電動モータ301により閉方向に付勢することで、不用意に引戸901,902が開かないようにすることができる。
【0066】
そして、制御部800は、所定時間が経過したか否か判定する(ステップS6a)。制御部800は、所定時間が経過していない場合には、所定時間が経過するまでステップS4からの処理を繰り返す。
なお、この間に、引戸901,902に鞄の紐等が挟まれて引き抜くために開かれたときは、DCS信号がOFFとなるため、閉動作が行なわれる(ステップ3)。
【0067】
一方、制御部800は、所定時間が経過した場合、ロック規制機構700をOFF、すなわち、ソレノイド710への給電を中止する(ステップS7)。他の処理については、図8の制御部800の動作と同じである。
【0068】
また、図9のステップS6aの処理における所定時間とは、ステップS4の処理のDCS信号を継続して、受信した時間であり、数秒以上数分以下の範囲で、好ましくは、数十秒である。なお、当該所定時間は、制御部800に内蔵されたタイマーまたはロック付開閉装置100に隣接配置された外部タイマー等により計測することができる。
【0069】
このように、図9に示すように、図8の速度信号に代え、DCS信号がONしてから、すなわち、引戸901,902が全閉してから所定時間経過した後、出力される信号を用いて、ロック規制を解除させてもよい。
この場合、引戸901,902がロック状態になる時間を画一化することができる。さらに、制御部800に内蔵されたタイマーを用いる場合、車両側から信号線を別途、艤装する必要が無いので、艤装が容易となる。
また、ロック付開閉装置100に隣接配置された外部タイマーを用いる場合であっても、配線が短いため容易に信号を受信することができる。
【0070】
以上のように、本実施の形態に係るロック付開閉装置100においては、ロック規制機構700は、速度信号に基づいてロック規制機構700により、ロック解除状態からロック状態への切り換えが規制または規制解除される。その結果、速度信号に応じて、全閉状態の一対の引戸901,902を固定するタイミングを操作することができるので、引戸901,902がロック状態になるまでは引戸901,902をこじ開けることができ、バッグなどの荷物を容易に引き抜くこともできる。
【0071】
例えば、車両の速度が所定の速度未満(低速)の場合には、ロック規制を行い一対の引戸901,902を開閉でき、車両速度が所定の速度以上(低速でない)になった場合には、ロック規制を解除し、一対の引戸901,902をロック状態にすることができる。その結果、安全上、速度の許容できる範囲で、一対の引戸901,902に挟まれたバッグ等を引き抜く時間を長く取ることができる。
【0072】
また、例えば、一対の引戸901,902が開方向へ移動されたと電動モータ301から制御部800への信号があった場合、全開ではないが、所定の領域の開きを許容し、所定時間経過後、電動モータ301を再度駆動させて一対の引戸901,902を閉方向へ移動させることができる。
【0073】
また、ソレノイド710、ロック規制プレート720、ロック規制部730、第1伝達部材740および第2伝達部材750により、一対の引戸901,902の全閉位置における状態で、遊星歯車機構300からロック機構600への動力分配が制限される。その結果、電動モータ301等を複数使用し、一対の引戸901,902の全閉状態を把握する必要がない。したがって、ロック付開閉装置100を簡略化することができる。
【0074】
また、ソレノイド710、ロック規制プレート720、ロック規制部730、第1伝達部材740および第2伝達部材750が、一体に設けられている位置関係を調整する必要が無くなり、容易に艤装することができる。また、移動車両等への艤装時に、遊星歯車機構300の開口幅方向(矢印H6またはH7の方向)に配設されるので、一対の引戸901,902のハウジングに沿った方向と一致し、配設し易い。
【0075】
本発明においては、ロック付開閉装置100がロック付開閉装置に相当し、一対の引戸901,902が一対の引戸に相当し、車両用開閉扉500が一対の開閉駆動機構に相当し、電動モータ301がアクチュエータに相当し、サンギア310が入力部に相当し、インターナルギア330が第1出力部に相当し、キャリア340が第2出力部に相当し、遊星歯車機構300が1入力2出力機構に相当し、係止用軸390、ロック規制部730、第1伝達部材740および第2伝達部材750が連結部に相当し、ロック規制プレート720がロック規制プレート部に相当し、軸722が水平方向の軸に相当し、円柱状部材723が円柱状部に相当し、係止部731が爪部および移動を阻止する形状に相当し、制御部800が制御部に相当し、ロック機構600がロック機構に相当し、ソレノイド710がロック規制駆動部に相当し、ロック規制プレート720、ロック規制部730、第1伝達部材740および第2伝達部材750がロック規制駆動力伝達機構に相当し、遊星歯車機構300が遊星歯車機構に相当し、ロック機構600、ロックピン231,232がロック部材に相当し、ロック規制機構700がロック規制機構に相当する。
【0076】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。その他本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9