特許第5717875号(P5717875)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許5717875-位置決定方法 図000007
  • 特許5717875-位置決定方法 図000008
  • 特許5717875-位置決定方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717875
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】位置決定方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 5/02 20100101AFI20150423BHJP
   G01C 21/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   G01S5/02 A
   G01C21/00
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-545128(P2013-545128)
(86)(22)【出願日】2011年11月4日
(65)【公表番号】特表2014-505241(P2014-505241A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2011069401
(87)【国際公開番号】WO2012084322
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2013年6月21日
(31)【優先権主張番号】102010063702.5
(32)【優先日】2010年12月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス アイクマン
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハート ラメル
【審査官】 小川 亮
(56)【参考文献】
【文献】 特表平07−504971(JP,A)
【文献】 特表2008−519495(JP,A)
【文献】 特開平08−005390(JP,A)
【文献】 特表2009−501344(JP,A)
【文献】 特開平04−364491(JP,A)
【文献】 米国特許第06502033(US,B1)
【文献】 特開2009−089395(JP,A)
【文献】 特開2000−283788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 5/02
G01C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置決定方法であって、
測位システムの位置固定の送信機の無線信号から、位置データベース(162)を用いて第1の位置セット(12)を求め、慣性ナビゲーションシステム(INS)のセンサデータから結合により第2の位置セット(14)を求める、第1のステップ(10)と、
前記第1の位置セット(12)と前記第2の位置セット(14)とを最小2乗誤差法を用いた相互調整によってデータ融合し、前記データ融合から合成位置セット及び前記第1の位置セット(12)と前記第2の位置セット(14)との間の誤差を求める、第2のステップ(20)と、
求めた前記誤差を前記位置データベース(162)の誤差へ変換し、該変換した誤差を前記慣性ナビゲーションシステム(INS)の精度によって重みづけして、前記位置データベース(162)の前記第1の位置セット(12)の少なくとも1つの位置(32)を補正する、第3のステップ(30)と、
を含み、
新たな複数の位置を含む新たな第1の位置セット(12)および/または新たな第2の位置セット(14)を用いて前記第1,第2及び第3のステップ(10,20,30)を行うことにより、前記位置データベース(162)を補完する、
ことを特徴とする位置決定方法。
【請求項2】
前記第1の位置セット(12)を、前記位置データベース(162)に記憶されている送信機位置および送信機信号強度から求める、請求項1記載の位置決定方法。
【請求項3】
前記第3のステップ(30)において、少なくとも、前記第1の位置セット(12)の各位置に対して、対応する送信機に関する情報または少なくとも1つの送信機(34)の位置および信号強度を記憶する、請求項1または2記載の位置決定方法。
【請求項4】
前記方法の各ステップを順に複数回行う、請求項1からまでのいずれか1項記載の位置決定方法。
【請求項5】
前記第1のステップ(10)の前に、前記第1の位置セット(12)の複数の位置に対する個々の位置決定の精度(2)および/または前記第2の位置セット(14)の複数の位置に対する精度(4)を求める、請求項1からまでのいずれか1項記載の位置決定方法。
【請求項6】
請求項1からまでのいずれか1項記載の位置決定方法を実行するためのコンピュータプログラム。
【請求項7】
位置決定装置(100)であって、
該位置決定装置は、
測位システムの位置固定の送信機の複数の無線信号に対する受信機(110)と、
前記位置固定の送信機の複数の無線信号から前記受信機の第1の位置セットを求める位置決定手段(160)と、該位置決定手段(160)内に設けられる位置データベース(162)と、
第2の位置セットを結合により求めるために少なくとも方向および距離を求める、慣性ナビゲーションシステム(INS)のセンサ(120)と、
前記第1の位置セットと前記第2の位置セットとを記憶するメモリ(130)と、
前記第1の位置セットと前記第2の位置セットとを最小2乗誤差法を用いた相互調整によってデータ融合する処理装置(140)と
を備えており、
前記処理装置(140)は、
前記データ融合から合成位置セット及び前記第1の位置セット(12)と前記第2の位置セット(14)との間の誤差を求め、
求めた前記誤差を前記位置データベース(162)の誤差へ変換し、該変換した誤差を前記慣性ナビゲーションシステム(INS)の精度によって重みづけして、前記位置データベース(162)の前記第1の位置セット(12)の少なくとも1つの位置(32)を補正し、
さらに、
新たな複数の位置を含む新たな第1の位置セット(12)および/または新たな第2の位置セット(14)を用いて、前記データ融合を行い、前記合成位置セット及び前記誤差を求め、前記補正を行うことにより、前記位置データベース(162)を補完する、
ことを特徴とする位置決定装置。
【請求項8】
前記位置データベース(162)は、送信機位置および送信機信号強度を記憶する、請求項記載の位置決定装置。
【請求項9】
前記位置決定装置(100)は、ヨーレートセンサおよび/または電子コンパスおよび/または加速度センサおよび/または歩数計および/または圧力センサを含む、請求項7または8記載の位置決定装置。
【請求項10】
前記位置決定装置(100)は、移動端末機内に配置される位置決定装置である、請求項からまでのいずれか1項記載の位置決定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
本発明は、第1のステップにおいて、ほぼ位置固定の送信機の無線信号から第1の位置セットを求め、他のセンサデータから結合により第2の位置セットを求める、位置決定方法に関する。また、本発明は、当該位置決定方法を実行するためのコンピュータプログラム製品、および、位置決定装置に関する。
【0002】
商業的利用においては、これまで主として、個識別可能な送信機(例えばWLANルータ)の送信とこの送信について受信機(例えば測位機器内の受信機)で測定された受信強度とに基づいて受信機の位置を求めるWLAN測位装置が存在している。このために、基本的には、"ポジションフィンガプリンティング"もしくは"シグナルパスモデリング"と称される2つの異なるアプローチが存在する。
【0003】
"ポジションフィンガプリンティング"とは、測位システムを使用する前に、システムが使用される領域全体が測定され、利用可能な全てのWLANネットワークの受信強度が各位置に対する所定のパターンで入力される方式である。測位システムの動作中、測位機器で測定される受信強度がデータベースに格納されている受信強度と比較され、専用アルゴリズムを介して位置が計算される。考えうる最も簡単なアルゴリズムは、測定された受信強度が測位の際に測定された受信強度に対して最小幾何学距離を有する位置をデータベースから取り出して示すことである。
【0004】
"シグナルパスモデリング"とは、測位領域内に存在する全てのWLAN基地局の位置を含むデータベースを前提とした方式であり、特に、文献US7403762に記載されているように、測位領域における受信強度を測定することによって位置を求めることができる。測位中、端末機で測定された受信強度は、数学的な関係式により、対応する基地局までの距離へ変換され、公知のルータ位置に基づく三角測量法によって現在位置が求められる。この場合の三角測量法は、距離情報のみを使用し、角度情報を使用しない点で、公知の三角測量法とは異なる。
【0005】
これら2つの手法の精度は基礎となるデータベースの品質に依存して定まるものである。なぜならここでの位置測定はデータベースから与えられる基準よりも精確には決してなりえないからである。ここで、データベースを形成する際に生じる障害は、測定された受信強度が距離だけでなく特に伝送経路上の物体や端末機の向き、時間などにも依存するため、多種多様である。さらに、データベースが形成された後にルータ位置が変更されたり、ルータの削除や新規追加が生じたりすることもある。この場合に測位システムの正常動作性を保証するために、例えば文献US7474897に説明されているように、各ルータの測位情報の品質が評価され、測位に利用できるか否かが判別される。
【0006】
文献US7493127には、動作中、測位過程のたびに受信情報の一貫性を検査し、一貫性が得られなかった場合もしくは新たな受信情報が識別された場合に、別のルータによって求められた端末機の位置に基づいてルータ位置を変更もしくは新規追加することのできるデータベースの更新方法が記載されている。この方法によれば、位置決定に利用できる充分な数の別のルータが存在する場合に、個々のルータの特性が変更されてシステムの正常動作が制限されることがないことが保証される。
【0007】
歩行者の測位精度を向上させる手段には、出発点からの方向および距離を求めて結合する慣性ナビゲーションシステムINSとして知られた結合ナビゲーションがある。INSは例えばMEMSセンサに基づいて構成される。この場合、加速度センサが使用され、歩数の計数と歩幅の算出とを組み合わせて位置変化が検出される。付加的に、電子コンパスがしばしばヨーレートセンサと組み合わされて水平方向の前進運動を求めるために用いられ、また、圧力センサが垂直軸での運動を識別するために用いられる。INSデータおよびWLANデータのデータ融合による測位精度の改善は、特に、F.Evennou, F.Marx, "Advanced Integration of WiFi and Inertial Navigation Systems for Indoor Mobile Positioning" In: Eurasip journal on applied signal processing, Hindawi publishing corp., New York, 2006およびH.Wang, H.Lenz, A.Szabo, J.Bamberger, U.Hanebeck, "WLAN-Based Pedestrian Tracking Using Particle Filters and Low-Cost MEMS Sensors" In: Proceedings of Workshop on Positioning, Navigation and Communication, 2007, pp.1-7, 2007などに見られる。ここで、INSデータは、例えば粒子フィルタを用いてWLANによって定められた位置の時間特性を求めるために用いられ、これにより、INSが存在しない場合よりも位置を精確に求めることができる。
【0008】
また、INSを用いて"ポジションフィンガプリンティング"データベースの形成を簡単化することもできる。このことは、J.Seitz, L.Patino-Studencka, B.Schindler, S.Haimerl, J.G.Boronat, S.Meyer, J.Thielecke, "Sensor Data Fusion for Pedestrian Navigation Using WLAN and INS", in:Proceedings of Gyro Technology Symposium 2007, Sep.2007に記載されている。ここでは、手動入力される2つの基準位置間の経路が、データベースの形成中、INSで得られたデータを用いて補間され、これにより手動入力の必要性が低減される。
【0009】
従来技術の欄で説明したように、測位システムの精度は、基礎となる基準位置を含んだデータベースの品質によって制限される。基準位置は、WLAN測位システムの場合、例えばルータ位置を含む。公知のデータベースの最適化法は、基準位置の変更を識別するために、測位システムそのものから得られた情報しか使用していない。例えば、新たなルータの位置を求めるには、複数のルータについての複数箇所での受信強度を用いて現在位置を求めなければならない。この場合の位置測定は測定誤差をともなうので、新たに求められたルータの位置の不確定性は基準として使用されているルータの位置不確定性よりも大きくなる。また、位置決定時に、端末機の向きに基づく受信強度に起因して生じるシステマティックエラーは、新たなルータの位置に直接に影響する。このため、位置データベースの品質は時間の経過につれて低下する。これはルータ位置が変更されるたびに位置の不確定性が増大するせいである。
【0010】
新たなルータは他の複数のルータの近傍領域においてのみ所定の位置に対応づけることができる。そうでない場合には基準位置が求められないので位置決定は不可能である。これにより、データベースの最適化法は、高密度にルータを有する地域でしか行うことができず、郊外地域などでは行えない。
【0011】
発明の開示
発明の利点
本発明の位置決定方法は、ほぼ位置固定の送信機の無線信号から第1の位置セット(12)を求め、他のセンサデータから結合により第2の位置セット(14)を求める第1のステップ(10)と、第1の位置セット(12)と第2の位置セット(14)とを相互に比較する第2のステップ(20)とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の方法により、基準系を用いた新たな測定なしに、測位用データベースを自動的に改善することができる。適用領域の周辺での位置データベースの段階的な拡張や、建築物内での経路マッピングが可能となる。これら全ては、測位システムのユーザにとっては測位精度が向上するので有用であり、測位システムのオペレータにとっては、稼働中にユーザの測位機器による付加的なコストがかからず、データベースの品質が向上して運用コストが低下するので有用である。
【0013】
有利には、本発明の位置決定方法は本発明のコンピュータプログラム製品として実現でき、また、本発明の位置決定装置によって実行可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の位置決定方法の実施例を示す図である。
図2】本発明によって第1の位置セットと第2の位置セットとを比較する様子を示す図である。
図3】本発明による位置決定装置の実施例を示す図である。
【0015】
実施例の説明
従来のシステムは、精度の最下方レベルのINSデータおよびWLANデータを用いて位置決定精度を改善しようとしている。本発明の対象となっているのは、システムがまず個別に走行距離を求め、続いて求められた複数の経路を比較することにより、無線送信機を基礎とした測位システムの位置決定における誤差を識別することである。この場合、特に測位システムのデータベースにおけるシステマティックエラーが識別され、少数の基準しか有さない周辺領域および地域にも新たな位置基準が追加される。本発明のアイデアは、ユーザの位置決定装置によって、結合ナビゲーションに基づき、位置データベースを全体的に最適化することである。このために、例えば、位置決定装置におけるMEMSセンサを利用できる。以下に可能な構成の例を示す。
【0016】
図1には本発明の位置決定方法の実施例が示されている。データ融合が開始されるたびに個々の装置の精度が求められる。無線送信機を基礎とした測位システムでは、通常、測定された位置の全てに対して、精度2が個々に提示され、INSでは、特にコンパスデータとヨーレートセンサデータとの比較またはコンパスオフセット補償特性と歩幅測定の精度との比較によって、精度4が求められる。これらに続いて、本来の測位過程におけるデータ記録が行われる。このために記録されるデータの例が図2に示されている。図2には、第1の位置セット12と第2の位置セット14とを比較する様子が示されている。付加的に、この実施例では、2つの位置セットが調整され、合成位置セットが求められている。
【0017】
位置固定の無線送信機での測定と測位システム用データベースとを用いて、第1のステップ10で、第1の位置セット12が求められる。INSの結合ナビゲーションを用いて、同じ第1のステップ10で、第2の位置セット14すなわち1つの経路が求められる。第2のステップ20で、2つの位置セット12,14が相互に比較される。さらに、この実施例では、2つの位置セット12,14が相互に調整され、そこから合成位置セットが求められる。データの比較または融合は、例えば最小2乗誤差法(リーストスクエアエスティメーションLSE)を用いて行われる。ここで、INSのセンサとしてコンパスが使用される場合には、並進自由度のみを考慮すればよいことに注意されたい。この場合にはINSのコンパスを用いた絶対値測定のため回転は不要である。
【0018】
INSによって求められる経路は無線送信機を基礎とした測位システムによって求められる位置よりも正確であるという、たいていの場合に正しい過程に基づき、上記比較に関しても同様に、図2に矢印で示されている測位システムの誤差が求められる。測位システムで求められた位置と個々のルータの位置との差分により、測位システムの誤差がデータベースの誤差へ変換され、これがINSの精度によって重みづけされて補正される。この手法の大きな利点の第1は、測位システムの誤差とINSの誤差とが非相関と見なせるため、測位システムを用いた位置決定に誤りをともなう情報しか使用できない場合にもデータベースの最適化が可能となることにある。このようにすれば、位置基準が存在する領域の周辺部でもデータベースを拡張できる。この手法の大きな利点の第2は、種々の人員が種々の端末機(すなわち位置決定装置)によって測位過程を行うと仮定できることである。INSでの誤差は種々の端末機とは非相関であるので、これらの誤差は種々の端末機を用いることによる相互作用において相殺される。実際上、データベースはこの手法により最終的に改善される。これは、位置決定に使用される全ての基準オブジェクトの間に平均して誤差のない関係が形成されるためである。この手法で補正できない唯一の誤差は、位置決定装置の全ての基準オブジェクトの平均ゼロでない位置ずれである。しかしこのケースは事実上生じない。このように、従来技術に対する一連の利点が得られる。
【0019】
本発明の方法により、基準系を用いた新たな測定なしに、測位データベースを自動的に改善することができる。適用分野の周辺での測位データベース(位置データベース)の段階的拡張、および、建築物内での経路マッピングが可能となる。これら全ては、測位システムのユーザにとっては位置決定精度が向上するので有用であり、測位システムのオペレータにとっては、ユーザの測位機器による動作中に付加的なコストがかからず、データベースの品質が向上して運用コストが低下するので有用である。
【0020】
本発明の位置決定方法は、主要な要素として、無線送信機を基礎とした測位システム、運動経路(結合)を記録するINS、絶対位置と経路情報とを融合するアルゴリズム、融合データによるデータベースの最適化方法などに関している。これらの要素を以下に詳細に説明する。
【0021】
無線送信機を基礎とした位置決定装置
測位システムは端末機で求められた情報を現在位置へシミュレートするために用いられるデータベースを基礎としている。これは特に無線通信網を基礎とした測位システムに関連しており、こうした無線通信網は現在のところたいていの場合WLANネットワークである無線網を基礎としている。基本的には、装置はBluetooth(R)または他の形式の無線通信網を基礎としていてもよい。基本的には、非電磁的伝送経路(例えば音響伝送路)が考えられる。WLAN位置決定方法の分野では、本発明の方法は、特に、複数のルータ位置を含むデータベースに基づいているかまたは"ポジションフィンガプリンティング"法を使用している装置に適用される。
【0022】
運動経路の記録
運動経路の記録は、上述したように、例えばマイクロメカニカルセンサすなわちMEMSセンサに基づいて行われる。MEMSセンサは、その寸法、剛性およびエネルギ必要量が小さいことにより、モバイル測位機器に好適である。運動経路が記録される場合、位置変化の絶対値を求める少なくとも1つのセンサと位置変化の方向を求める少なくとも1つのセンサとが必要となる。これらは特に加速度センサ、コンパスおよびヨーレートセンサである。基本的には、他のセンサデータ、例えば速度や車両の操舵角などに基づいても経路情報の記録は可能であり、この場合、車両は特に自動車もしくは自転車である。また、コンパスと走行輪への適用のための車輪回転数測定とを組み合わせても良い。
【0023】
位置情報と経路情報との融合
位置情報および経路情報は、少なくとも2つの座標から成り、第3の座標およびタイムスタンプを含むこともある組
【数1】
の集合として数学的に表される。ここで、
【数2】
である。この場合、位置情報および経路情報の組の数は種々に異なっていてよい。N個の位置の組およびM個の経路の組が存在すると仮定する。位置の組については上記のようにインデクスi、経路の組については上記のようにインデクスjが用いられる。位置情報と経路情報との融合は、変数Δにしたがって、写像
【数3】
の極値計算によって行われ、ここで変数Δは位置情報および経路情報のシフト量を表している。この場合、特に、f(X,X,Δ)が近い時点で記録されたX,Xに対してゼロでない値が生じるケースが重要である。2次元の組でN=Mおよびi=Jの場合の最も簡単なケースは、
【数4】
である。ここで、Δは経路情報の座標系と位置情報の座標系との間のx方向でのシフト量であり、Δは同様のy方向でのシフト量である。この定義において、g(Δ)の最小値が定められると、所定のΔの選定によって、位置情報と経路情報との間の幾何学的距離を最小化することができる。
【0024】
同様に、多次元で他の距離の定義を用いた実現も可能である。この場合、特に、方向ごとの偏差がそれぞれ異なって重みづけされる。例えば、y方向の偏差のほうがz方向の偏差よりも強く重みづけされる。これは、z方向での位置測定が不正確であることが多いためである。ここで、2つの測定系の各測定点間の時間差も幾何学的方向の値と同様に処理できる。
【0025】
融合ステップの結果は、各測定点についての組の全次元における2つの測定系の間の差である。或る系が良好な近似で誤差なしと見なされうる場合、求められた誤差Eが観測点iでの他の系の測定誤差となる。
【0026】
データベースの最適化
求められた誤差Eに基づくデータベースを最適化するために、まず、全ての位置に対して、または、閾値を上回る誤差Eを有する位置に対して、データベース内の変化が測定位置にどれだけ影響を有しているかが求められる。このことは、数学的には、測定位置の変化にしたがったデータベースP内の各位置間の差に相応する。つまり、データベースの補正は、これらの値を基礎として、
【数5】
のように、実行される。ここで、kはデータベースの変化を重みづけするための係数である。この係数は例えば測定装置の精度およびデータベースの所望の最適化速度に依存して定められる。各位置について、位置データベースへの入力が存在しない場合、あらかじめ定められた位置および測定された経路に基づいて位置を求めることができ、これにより、上述した従来技術と同様に、未知の位置基準(WLANルータであることが多い)の位置を求めることができる。
【0027】
まとめると、本発明の位置決定方法は、第1のステップ10および第2のステップ20を含む。第1のステップ10では、ほぼ位置固定の送信機の無線信号から第1の位置セット12が求められ、他のセンサデータから結合により第2の位置セット14が求められる。第2のステップ20では、第1の位置セット12と第2の位置セット14とが相互に比較される。
【0028】
本発明の方法の或る実施例では、第1の位置セット12と第2の位置セット14との調整から合成位置セットが求められる。
【0029】
本発明の方法の有利な実施例では、"ポジションフィンガプリンティング"法を用いて、第1の位置セット12が、例えば位置データベースに記憶されている、可能な現在位置に対応する送信機に関する情報から求められる。本発明の方法の別の有利な実施例では、"シグナルパスモデリング"法を用いて、第1の位置セット12が、例えば位置データベースに記憶されている送信機位置および/または送信機信号強度から求められる。
【0030】
本発明の方法の有利な実施例では、第2のステップ20の後、第3のステップ30において、第1の位置セット12からの少なくとも1つの位置32が補正される。これにより、位置データベースが改善される。本発明の方法の別の有利な実施例として、第2のステップ20の後、第3のステップ30において、少なくとも第1の位置セット12からの別の位置34に対して,対応する送信機の情報または少なくとも1つの送信機の位置および/または信号強度が記憶される。このようにすれば、位置データベースを新たな入力によって補完し、拡張することができる。なお、本発明の方法は、順に複数回行うことができる。つまり、例えば第2のステップ20の後または第3のステップ30の後に、第1のステップ10を再び行うことができる。この場合、特に、第1のステップ10で、新たな複数の位置を、第2のステップ20で調整ないしデータ融合に用いられる新たな位置に関連させることにより、第1の位置セット12および/または第2の位置セット14を補完することができる。本発明の方法の別の有利な実施例として、第1のステップ10の前に、第1の位置セット12の位置に対する個々の位置決定の精度2および/または第2の位置セット14の位置に対する精度4が求められる。
【0031】
上述した本発明の位置決定方法と並んで、この方法を実行するためのコンピュータプログラム製品も本発明の対象となっている。
【0032】
さらに、位置決定装置も本発明の対象となっている。図3には本発明の位置決定装置の例が示されている。ここには、例えば移動端末機内に配置される位置決定装置100が示されている。位置決定装置100は、位置固定の送信機の複数の無線信号に対する受信機110と、位置固定の送信機の複数の無線信号から受信機の第1位置を求める位置算出手段160と、結合(結合ナビゲーション)により第2位置を求めるためのセンサ120とを備えている。このためのセンサ120は、方向を求める少なくとも1つのセンサ、例えば電子コンパスおよび/またはヨーレートセンサまたは回転速度センサであってもよいし、距離を求める少なくとも1つのセンサ、例えば加速度センサ、歩数計および/または歩幅計であってもよいし、垂直方向の距離成分を求める少なくとも1つのセンサ、例えば圧力センサであってもよい。これらのセンサは1つのMEMSセンサとして構成できる。MEMSセンサは構造がコンパクトであり、動作中の剛性および省エネルギ性の点で有利である。さらに、位置決定装置100は、第1の位置セットと第2の位置セットとを記憶するメモリ130と、第1の位置セットと第2の位置セットとを比較する処理装置140とを備えている。
【0033】
有利な実施例では、処理装置140は、例えば上述した実施例における本発明の方法の第2のステップ20において、2つの位置セットの調整またはデータ融合を行い、特に、合成位置セットを求めるように構成される。別の実施例では、位置決定手段160は、可能な現在位置に対応する送信機に関する情報を記憶するデータベース162、すなわち、位置決定装置の可能な位置のパターンに対して、例えばWLANネットワークとも称される利用可能な全ての無線送信機の受信強度が記録された"ポジションフィンガプリンティング"法に対する情報を含むデータベースを含む。さらに、別の実施例では、位置決定手段160は、"シグナルパスモデリング"法に対して、複数の送信機の位置および/または信号強度を記憶するデータベース162を含む。
図1
図2
図3