特許第5717877号(P5717877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5717877ガルバニ電池を温度調整するための温度調整プレート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717877
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ガルバニ電池を温度調整するための温度調整プレート
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/613 20140101AFI20150423BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20150423BHJP
   H01M 10/6552 20140101ALI20150423BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20150423BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20150423BHJP
【FI】
   H01M10/613
   H01M10/647
   H01M10/6552
   H01M10/6556
   H01M10/658
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-547826(P2013-547826)
(86)(22)【出願日】2011年11月10日
(65)【公表番号】特表2014-505333(P2014-505333A)
(43)【公表日】2014年2月27日
(86)【国際出願番号】EP2011069804
(87)【国際公開番号】WO2012092993
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2013年9月4日
(31)【優先権主張番号】102011002415.8
(32)【優先日】2011年1月4日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】スヴェン ローベアト ライシュ
(72)【発明者】
【氏名】ディアク シュミーデラー
【審査官】 田中 寛人
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/115560(WO,A1)
【文献】 特開2000−294301(JP,A)
【文献】 特開2004−311317(JP,A)
【文献】 特表2012−523655(JP,A)
【文献】 特開2010−040420(JP,A)
【文献】 特開2007−244050(JP,A)
【文献】 特開2009−252746(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52−10/667
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のガルバニ電池(Z)を温度調整するための温度調整プレート(T)において、該温度調整プレート(T)が、該温度調整プレート(T)を通して温度調整媒体を案内するための少なくとも1つの温度調整媒体通路(1)を有しており、温度調整プレート(T)の、熱導出のために設けられていて、少なくとも1つの温度調整媒体通路(1)を分的に画定している少なくとも1つの区分(2a)が、熱伝導率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだプラスチックコンパウンド(MW)から形成されており、少なくとも1つの温度調整媒体通路(1)が、温度調整プレート(T)の少なくとも1つの別の区分(2b)によって部分的に画定されており、該少なくとも1つの別の区分(2b)が、一種類以上の別の材料(M)であって、熱伝導率を高めるための添加剤を含んでいないプラスチックもしくはプラスチックコンパウンドもしくはプラスチック・金属複合材料(M)から形成されており、前記両区分(2a、2b)が一緒に前記温度調整媒体通路(1)を画定していることを特徴とする、温度調整プレート。
【請求項2】
温度調整プレート(T)が、1つのバッテリモジュールの2つ以上のガルバニ電池(Z)を温度調整するために設計されている、請求項記載の温度調整プレート。
【請求項3】
ガルバニ電池(Z)の個数が、4個よりも多くて12個よりも少ない、請求項記載の温度調整プレート。
【請求項4】
ガルバニ電池(Z)の個数が、6個よりも多くて8個よりも少ない、請求項または記載の温度調整プレート。
【請求項5】
ガルバニ電池(Z)が、リチウム電池である、請求項1からまでのいずれか1項記載の温度調整プレート。
【請求項6】
リチウム電池が、リチウムイオン電池である、請求項記載の温度調整プレート。
【請求項7】
ガルバニ電池(Z)が、金属製のケースを備えている、請求項1からまでのいずれか1項記載の温度調整プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガルバニ電池ならびに相応のバッテリアッセンブリに用いられる温度調整プレートおよびプラスチックハウジングに関する。
【0002】
背景技術
リチウムイオン電池は、従来、金属製のケース、たとえばアルミニウムから成るケースを有している。通常、複数の電池(セル)、たとえば6〜8つの電池がまとめられて、1つのバッテリモジュールが形成される。そして、複数のバッテリモジュール、たとえば3つ以上のバッテリモジュールがまとめられて、1つのバッテリパックが形成されるようになっている。
【0003】
温度調整の目的のためには、たいてい、バッテリモジュールもしくはバッテリパックが金属製の冷却プレートに組み付けられる。この金属製の冷却プレートと電池との間の短絡を回避するためには、金属製のプレートと電池との間に電気的な絶縁体が設けられる。充電・運転状態を監視するためには、従来、個々の各電池が電池監視装置に個々に配線される。
【0004】
発明の開示
本発明の対象は、たとえば金属製の電池ケースを備えているかまたは場合により備えていない1つ以上のガルバニ電池、特にリチウム電池、たとえばリチウムイオン電池を温度調整するための温度調整プレートである。この温度調整プレートは、この温度調整プレートを通して温度調整媒体を案内するための少なくとも1つの温度調整媒体通路を有している。このような温度調整プレートは、冷却プレートと呼ぶこともできる。
【0005】
本発明によれば、温度調整プレートの、熱導出のために設けられていて、少なくとも1つの温度調整媒体通路を少なくとも部分的に画定している少なくとも1つの区分が、熱伝導率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだプラスチックコンパウンドから形成されている。
【0006】
「プラスチックコンパウンド」とは、本発明の意味では、特に一種類以上の基本ポリマのほかに、この基本ポリマの特性を変性させるための少なくとも一種類の添加剤を含んだ複合材を意味している。
【0007】
「熱伝導率を高めるための添加剤」とは、本発明の意味では、熱伝導率を高める添加剤を含んでいないプラスチックコンパウンドの比熱伝導率に対して、特にプラスチックコンパウンドの比熱伝導率を高める少なくとも一種類の添加剤を意味している。
【0008】
本発明に係る温度調整プレートによって、有利には、たとえば充電時に発生する熱が、最初に電池ケースから電気的な絶縁体に伝達されて、そこから引き続き冷却プレートに伝達される必要がなくなり、その代わりに、熱伝達を電池ケースまたは電池それ自体からさえ熱伝導性のプラスチックコンパウンドを介して温度調整媒体もしくは冷媒に直接的に行うことができることを達成することができる。こうして、有利には、熱伝導路の抵抗を著しく減少させることができ、重量を減少させることができる。
【0009】
基本的には、温度調整媒体は、液状、ガス状または固形の温度調整媒体であってよい。特に温度調整媒体は、液状またはガス状の温度調整媒体であってよい。
【0010】
温度調整プレートの1つの態様の範囲内では、少なくとも1つの温度調整媒体通路が、温度調整プレートの少なくとも1つの別の区分によって部分的に画定されており、この少なくとも1つの別の区分が、一種類以上の別の材料、たとえば一種類以上のプラスチック、プラスチックコンパウンドおよび/またはプラスチック・金属複合材料から形成されている。こうして、温度調整プレートが、有利には、あとで説明する別の機能を備えることができ、温度調整プレートを備えるべきバッテリのコストおよび重量を全体的に最適化することができ、特に減少させることができる。
【0011】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、温度調整プレートの少なくとも1つの別の区分が、熱伝導率を高めるための添加剤を含んでいないプラスチック、プラスチックコンパウンドもしくはプラスチック・金属複合材料だけを含んでいる。特に温度調整プレートの少なくとも1つの別の区分は、熱伝導率を高めるための添加剤を含んでいない一種類のプラスチックもしくはプラスチックコンパウンドから形成することができる。こうして、有利には、重量およびコストを特に最適化することができ、特に減少させることができる。
【0012】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、少なくとも1つの温度調整媒体通路が、互いに組み合わされた2つの半割シェルによって形成されている。この態様では、両半割シェルが、温度調整媒体通路を一緒にまたは互いに別個に形成するための構造を有することもできるし、両半割シェルの一方だけが、温度調整媒体通路を形成するための構造を有することもできる。この場合、他方の半割シェルは、このような構造を有していない。こうして、有利には、本発明に係る温度調整プレートの製造を簡単にすることができる。有利には、一方の半割シェルが、熱伝導率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだ一種類のプラスチックコンパウンドを有している。この場合、他方の半割シェルは、特に熱伝導率を高めるための添加剤を含んでいない。
【0013】
両半割シェルは、互いに異なるサイズ、互いに異なる構造および互いに異なる重量を有していてよい。したがって、「半割シェル」という概念は、両半割シェルが、それぞれ1つの完全体の正確な半分であることを意味するものではない。
【0014】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、温度調整プレートが、2つ以上のガルバニ電池、特に1つのバッテリモジュールの複数のガルバニ電池、例として4個以上12個以下のガルバニ電池、たとえば6個以上8個以下のガルバニ電池を温度調整するために設計されている。このことは、個々のバッテリモジュールを個別に形成して、提供されたスペースに適合させて配置することができるという利点を有している。このことは、複数のバッテリモジュールから成る1つの完全なバッテリパックに用いられる1つの共通の冷却プレートの使用時には不可能である。
【0015】
有利には、熱導出のために設けられた、温度調整通路を画定する少なくとも1つの区分は、20℃の周辺温度および50%の空気湿度において測定して、0.5W/(m・K)以上、特に0.7W/(m・K)以上、たとえば1W/(m・K)以上の比熱伝導率λと、1・10−5Ω・m以上、特に1・10−1Ω・m以上、たとえば1・10Ω・m以上の比電気抵抗ρとを有する一種類のプラスチックコンパウンドから形成されている。
【0016】
有利には、熱伝導率を高めるための添加剤は、20℃の周辺温度および50%の空気湿度において測定して、10W/(m・K)以上、特に20W/(m・K)以上、たとえば50W/(m・K)以上の比熱伝導率λおよび/または1・10−5Ω・m以上、特に1・10−1Ω・m以上、たとえば1・10Ω・m以上の比電気抵抗ρを有している。
【0017】
たとえば、熱伝導率を高めるための添加剤は、セラミック材料であってよい。たとえば、熱伝導率を高めるための添加剤は、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムまたはこれらを組み合わせたものであってよい。
【0018】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、温度調整プレートが、射出成形法および/または押出し法および/または深絞り法によって製造されている。このプラスチック処理時の高い幾何学形状自由度によって、温度調整媒体通路と、電気的な線路と、電気的な電池監視手段と、電気的なコンタクト箇所とを、有利には温度調整プレート内に組み込むことができ、これらの構成要素の形成も射出成形サイクル、押出しサイクルもしくは深絞りサイクルに組み込むことができるので、一連のプロセスの短縮を達成することができる。
【0019】
基本的には、電池の電気的なコンタクトは、公知先行技術により、配線もしくは追補的に組み付けられる金属製の線路によって行われてよい。
【0020】
しかし、温度調整プレートが1つ以上の電気的な線路を有することもできる。この電気的な線路は、特に温度調整プレートに組み込むことができる。たとえば、電気的な線路はMID技術、たとえばメタライゼーション法によって形成することができる。
【0021】
温度調整プレート内への電気的なコンタクトの埋込みは、1つのモジュールまたはパックにおける個々の電池のもしくは電池監視装置とのもしくは電池にコンタクトするための、製造技術的に手間を要する配線が省略され、その代わりに、電気的なコンタクトを、有利には大量生産に置き換えることができるという利点を有している。こうして、全体的に一連のプロセスを短縮することができ、製造コストを削減することができる。さらに、これによって、製造すべきバッテリアッセンブリのために全体的に必要となる構成スペースと、バッテリアッセンブリの重量とを最適化する、特に減少させることができる。
【0022】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、温度調整プレートが、特に導電のために設けられた温度調整プレート区分としての少なくとも1つの電気的な線路を有しており、この電気的な線路が、自己導電性の一種類のポリマまたはポリマ混合物および/または導電率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだ一種類のプラスチックコンパウンドおよび/または一種類の金属含有の材料から形成されている。
【0023】
自己導電性のポリマまたはポリマ混合物は、たとえばポリアセチレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリピロールおよび/またはポリチオフェンを含んでいてよい。導電率を高めるための添加剤は、たとえば黒鉛、煤、アルミニウム、銅、銀またはこれらを組み合わせたものであってよい。金属含有の材料は、たとえばアルミニウム、銅、銀、亜鉛、スズまたはこれらを組み合わせたものを含んでいてよい。
【0024】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、少なくとも1つの電気的な線路が、自己導電性のポリマまたはポリマ混合物および/または導電率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだプラスチックコンパウンドおよび/または金属含有の材料を温度調整プレートの一種類以上の別の材料の射出成形によりこの別の材料内に埋め込むことによって形成されている。
【0025】
このことは、電気的な線路を特に簡単に温度調整プレート内に実現するかもしくは組み込む可能性を成している。
【0026】
しかし、少なくとも1つの電気的な線路は、別の方法で実現されていてもよい。
【0027】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、温度調整プレートが、金属製の導電エレメント、たとえばワイヤまたは格子体を温度調整プレートの一種類以上の別の材料の射出成形によりこの別の材料で取り囲むことによって形成された少なくとも1つの電気的な線路を有している。
【0028】
このことは、電気的な線路を特に簡単にプラスチックハウジング内に実現するかもしくは組み込む別の可能性を成している。
【0029】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、温度調整プレートが、1つ以上のガルバニ電池の充電状態および/または運転状態を監視するための少なくとも1つの電気的な電池監視装置を有している。この少なくとも1つの電気的な電池監視装置は、特に温度調整プレート内に組み込まれていてよい。特に電池監視装置は、前述したように形成された電気的な線路を有していてよい。たとえば、少なくとも1つの電池監視装置は、少なくとも部分的にMID技術によって、たとえばメタライゼーション法を使用して形成することができる。電池監視装置の埋込みも同じく、電気的な線路に関連して説明した利点を有している。
【0030】
温度調整プレートの別の態様の範囲内では、温度調整プレートが、1つ以上のガルバニ電池に電気的にコンタクトするための少なくとも2つの電気的なコンタクト装置を有している。これらのコンタクト装置は、温度調整プレート内に部分的に組み込まれていてよい。特にコンタクト装置は、前述したように形成された電気的な線路を有していてよい。たとえば、コンタクト装置は、少なくとも部分的にMID技術によって、たとえばメタライゼーション法を使用して形成することができる。コンタクト装置の埋込みも同じく、電気的な線路に関連して説明した利点を有している。
【0031】
さらに、温度調整プレートは、1つ以上の温度調整媒体通路内に液状のまたはガス状の温度調整媒体を導入するための少なくとも1つの温度調整媒体導入接続部と、1つ以上の温度調整媒体通路から液状のまたはガス状の温度調整媒体を導出するための少なくとも1つの温度調整媒体導出接続部とを有していてよい。
【0032】
本発明に係る温度調整プレートの更なる利点および特徴については、これとともに、本発明に係るプラスチックハウジング、本発明に係るバッテリアッセンブリおよび図面に関連した説明に明確に記載してある。
【0033】
本発明の対象は、たとえば金属製の電池ケースを備えているかまたは場合により備えていない1つ以上のガルバニ電池、特にリチウム電池、たとえばリチウムイオン電池に用いられるプラスチックハウジングである。
【0034】
本発明によれば、プラスチックハウジングの、熱導出のために設けられた少なくとも1つの区分が、熱伝導率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだプラスチックコンパウンドから形成されている。
【0035】
本発明に係るプラスチックハウジングは、たとえば充電時に発生する熱が、最初に電池ケースから電気的な絶縁体に伝達されて、そこから引き続き冷却プレートに伝達される必要がなくなり、その代わりに、熱伝達を電池ケースまたは電池それ自体からさえ熱伝導性のプラスチックコンパウンドを介して温度調整媒体もしくは冷媒に場合により直接的に行うことができるという利点を有している。こうして、有利には、熱伝導路の抵抗を著しく減少させることができ、重量を減少させることができる。
【0036】
基本的には、熱導出のために設けられた少なくとも1つの区分が、プラスチックハウジングの、従来の冷却プレートに組み付けるために設けられた範囲であることが可能である。
【0037】
しかし、プラスチックハウジングの有利な態様の範囲内では、熱導出のために設けられた少なくとも1つの区分が、熱を電池から導出するために設けられていて、プラスチックハウジングを通して、特に液状のかつ/またはガス状の温度調整媒体を案内するための少なくとも1つの温度調整媒体通路を少なくとも部分的に画定している。
【0038】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、熱導出のために設けられた少なくとも1つの区分が、プラスチックハウジングの、特にプレート状のカバーの一部である。このことは、良好な温度調整作用を少ない材料コストおよび重量で熱伝導性のプラスチックコンパウンドによって得ることができるという利点を有している。
【0039】
「カバー」とは、本発明の範囲内では、特に閉鎖されたハウジングの形成のもと、1つ以上の別のハウジング構成部材を閉鎖するために設計された1つのハウジング構成部材を意味している。この場合、「カバー」という概念は、重力方向を基準とした、カバーと呼ばれるハウジング構成部材の向きに関して限定的に解釈すべきものではない。したがって、「カバー」とは、閉鎖されたハウジングの形成のもと、1つ以上の別のハウジング構成部材を上方でも、側方でも、下方でも閉鎖するために設計された1つのハウジング構成部材を意味している。
【0040】
特に本発明に係る温度調整プレートは、プラスチックハウジングの、熱導出のために設けられた少なくとも1つの区分を有するプレート状のカバーであってよい。
【0041】
しかし、択一的または付加的には、熱導出のために設けられたかつ/または少なくとも1つの温度調整媒体通路を画定する少なくとも1つの区分および/または熱伝導のために設けられたかつ/または少なくとも1つの温度調整媒体通路を画定する少なくとも1つの別の区分が、プラスチックハウジング内、特にプラスチックハウジングのベースボディ内に組み込まれていてもよい。
【0042】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、プラスチックハウジングが、2つ以上のガルバニ電池、特に1つのバッテリモジュールの複数のガルバニ電池、例として4個以上12個以下のガルバニ電池、たとえば6個以上8個以下のガルバニ電池を収容するために設計されている。このことは、個々のバッテリモジュールを個別に形成して、提供されたスペースに適合させて配置することができるという利点を有している。このことは、複数のバッテリモジュールから成る1つの完全なバッテリパックに用いられる1つの共通の冷却プレートの使用時には不可能である。
【0043】
有利には、熱導出のために設けられた少なくとも1つの区分は、20℃の周辺温度および50%の空気湿度において測定して、0.5W/(m・K)以上、特に0.7W/(m・K)以上、たとえば1W/(m・K)以上の比熱伝導率λと、1・10−5Ω・m以上、特に1・10−1Ω・m以上、たとえば1・10Ω・m以上の比電気抵抗ρとを有する一種類のプラスチックコンパウンドから形成されている。
【0044】
熱伝導率を高めるための添加剤は、特に20℃の周辺温度および50%の空気湿度において測定して、10W/(m・K)以上、特に20W/(m・K)以上、たとえば50W/(m・K)以上の比熱伝導率λおよび/または1・10−5Ω・m以上、特に1・10−1Ω・m以上、たとえば1・10Ω・m以上の比電気抵抗ρを有していてよい。
【0045】
たとえば、熱伝導率を高めるための添加剤は、セラミック材料であってよい。たとえば、熱伝導率を高めるための添加剤は、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムまたはこれらを組み合わせたものであってよい。
【0046】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、プラスチックハウジングが、射出成形法および/または押出し法および/または深絞り法によって製造されている。このプラスチック処理時の高い幾何学形状自由度によって、温度調整媒体通路と、電気的な線路と、電気的な電池監視手段と、電気的なコンタクト箇所とを、有利にはプラスチックハウジング内に組み込むことができ、これらの構成要素の形成も射出成形サイクル、押出しサイクルもしくは深絞りサイクルに組み込むことができるので、一連のプロセスの短縮を達成することができる。また、複数の異なるハウジングエレメントが、1つ、2つまたは、場合により、それ以上の部材から簡単に製造されてもよい。プラスチックハウジングが2つ以上のハウジング部材、たとえば1つのハウジングベースボディと1つのハウジングカバーとを有している限り、これらのハウジング部材は、たとえば溶接、接着または機械的な方法、たとえばねじ締結、クリップ留め等によって結合することができる。射出成形の場合には、ガルバニ電池をプラスチックの射出成形によりプラスチックハウジングで直接的に取り囲むことができるだけでなく、追補的にプラスチックハウジング内に差し込むこともできる。
【0047】
基本的には、電池の電気的なコンタクトは、公知先行技術により、配線もしくは追補的に組み付けられる金属製の線路によって行われてよい。
【0048】
しかし、有利には、プラスチックハウジングが少なくとも1つの電気的な線路を有している。この少なくとも1つの電気的な線路は、有利にはプラスチックハウジング内に組み込まれている。たとえば、少なくとも1つの電気的な線路はMID技術、たとえばメタライゼーション法によって形成することができる。
【0049】
プラスチックハウジング内への電気的なコンタクトの埋込みは、1つのモジュールまたはパックにおける個々の電池のもしくは電池監視装置とのもしくはハウジングの外側から電池にコンタクトするための、製造技術的に手間を要する配線が省略され、その代わりに、電気的なコンタクトを、有利には大量生産に置き換えることができるという利点を有している。こうして、全体的に一連のプロセスを短縮することができ、製造コストを削減することができる。さらに、これによって、製造すべきバッテリアッセンブリのために全体的に必要となる構成スペースと、バッテリアッセンブリの重量とを最適化する、特に減少させることができる。
【0050】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、プラスチックハウジングが、特に導電のために設けられたハウジング区分としての少なくとも1つの電気的な線路を有しており、この電気的な線路が、自己導電性の一種類のポリマまたはポリマ混合物および/または導電率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだ一種類のプラスチックコンパウンドおよび/または一種類の金属含有の材料から形成されている。
【0051】
自己導電性のポリマまたはポリマ混合物は、たとえばポリアセチレン、ポリアニリン、ポリパラフェニレン、ポリピロールおよび/またはポリチオフェンを含んでいてよい。導電率を高めるための添加剤は、たとえば黒鉛、煤、アルミニウム、銅、銀またはこれらを組み合わせたものであってよい。金属含有の材料は、たとえばアルミニウム、銅、銀、亜鉛、スズまたはこれらを組み合わせたものを含んでいてよい。
【0052】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、少なくとも1つの電気的な線路が、自己導電性のポリマまたはポリマ混合物および/または導電率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだプラスチックコンパウンドおよび/または金属含有の材料をプラスチックハウジングの一種類以上の別の材料の射出成形によりこの別の材料内に埋め込むことによって形成されている。
【0053】
このことは、電気的な線路を特に簡単にプラスチックハウジング内に実現するかもしくは組み込む可能性を成している。
【0054】
しかし、少なくとも1つの電気的な線路は、別の方法で実現されていてもよい。
【0055】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、プラスチックハウジングが、たとえば、金属製の導電エレメント、たとえばワイヤまたは格子体をプラスチックハウジングの一種類以上の別の材料の射出成形によりこの別の材料で取り囲むことによって形成された少なくとも1つの電気的な線路を有している。
【0056】
このことは、電気的な線路を特に簡単にプラスチックハウジング内に実現するかもしくは組み込む別の可能性を成している。
【0057】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、プラスチックハウジングが、1つ以上のガルバニ電池の充電状態および/または運転状態を監視するための少なくとも1つの電気的な電池監視装置を有している。この少なくとも1つの電気的な電池監視装置は、特にプラスチックハウジング内に組み込まれていてよい。特に電池監視装置は、前述したように形成された電気的な線路を有していてよい。たとえば、少なくとも1つの電池監視装置は、少なくとも部分的にMID技術によって、たとえばメタライゼーション法を使用して形成することができる。電池監視装置の埋込みも同じく、電気的な線路に関連して説明した利点を有している。
【0058】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、プラスチックハウジングが、このプラスチックハウジング内に配置された1つ以上のガルバニ電池に電気的にコンタクトするための少なくとも2つの電気的なコンタクト装置を有している。これらのコンタクト装置は、プラスチックハウジング内に部分的に組み込まれていてよい。特にコンタクト装置は、前述したように形成された電気的な線路を有していてよい。たとえば、コンタクト装置は、少なくとも部分的にMID技術によって、たとえばメタライゼーション法を使用して形成することができる。コンタクト装置の埋込みも同じく、電気的な線路に関連して説明した利点を有している。
【0059】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、少なくとも2つの電気的なコンタクト装置が、プラスチックハウジングの、熱導出のために設けられた少なくとも1つの区分と反対の側にかつ/または側内に配置されている。こうして、製造すべきバッテリアッセンブリを、有利には特にスペース節約的に組み立てることができる。
【0060】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、プラスチックハウジングが、熱導出のために設けられた少なくとも1つの区分と、少なくとも1つのガルバニ電池との間に、特に隣接配置可能であるかまたは隣接配置された少なくとも1つの熱伝導接着剤および/または熱伝導シートを有している。こうして、有利には、熱導出を改善することができる。熱伝導接着剤もしくは熱伝導シートは、主として、誤差補償のために使用され、電気的な絶縁のためには使用されないので、極めて薄く形成することができ、これによって、アッセンブリの全重量は著しく増加させられない。
【0061】
さらに、プラスチックハウジングは、導電率を高めるための添加剤を含んでいない一種類のプラスチックもしくはプラスチックコンパウンドから形成された少なくとも1つの別のハウジング区分を有していてよい。こうして、プラスチックハウジングの重量およびコストを、有利には最適化する、特に減少させることができる。
【0062】
プラスチックハウジングの別の態様の範囲内では、プラスチックハウジングが、2つ以上のガルバニ電池を収容するために形成されている。
【0063】
本発明に係るプラスチックハウジングの更なる利点および特徴については、これとともに、本発明に係る温度調整プレート、本発明に係るバッテリアッセンブリおよび図面に関連した説明に明確に記載してある。
【0064】
本発明の更なる対象は、本発明に係る温度調整プレートおよび/または本発明に係るプラスチックハウジングと、1つ以上のガルバニ電池、特にリチウム電池、たとえばリチウムイオン電池とを有するバッテリアッセンブリ、特にバッテリまたはバッテリモジュールである。
【0065】
「バッテリ」とは、本発明の意味では、日常会話において電池とも呼ばされる一次電池だけでなく、特に日常会話において蓄電池と呼ばれる二次電池も意味している。
【0066】
有利には、バッテリアッセンブリは、例として4個以上12個以下のガルバニ電池、たとえば6個以上8個以下のガルバニ電池を有するバッテリモジュールである。このことは、バッテリモジュールを個別に別のバッテリモジュールと組み合わせて、提供されたスペースに適合させて配置することができるという利点を有している。このことは、複数のバッテリモジュールから成る1つの完全なバッテリパックに用いられる1つの共通の冷却プレートの使用時には不可能である。
【0067】
ガルバニ電池は、場合により、金属製の電池ケース、たとえばアルミニウムから成る電池ケースを有していてよい。
【0068】
本発明に係るバッテリアッセンブリの更なる利点および特徴については、これとともに、本発明に係る温度調整プレート、本発明に係るプラスチックハウジングおよび図面に関連した説明に明確に記載してある。
【0069】
本発明に係る対象の更なる利点および有利な構成を図面により示し、以下において詳しく説明する。ただし、図面は、説明する特徴を有しているに過ぎず、本発明を何らかの形で限定するために考えられているものではないことに注意しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明に係る温度調整プレートの1つの実施の形態の概略的な横断面図である。
図2A】本発明に係るプラスチックハウジングの1つの実施の形態の概略的な横断面図である。
図2B】本発明に係るプラスチックハウジングの別の実施の形態の概略的な横断面図である。
【0071】
形態
図1には、たとえば金属製のケースを備えた1つ以上のガルバニ電池Z、特にリチウム電池、たとえばリチウムイオン電池を温度調整するための本発明に係る温度調整プレートTの実施の形態が示してある。図1に示したように、温度調整プレートTは、この温度調整プレートTを通して温度調整媒体を案内するための複数の温度調整媒体通路1を有している。図1に示したように、温度調整プレートTは、温度調整媒体通路1を部分的に画定する、熱導出のために設けられた区分2aを有している。本発明によれば、この区分2aが、熱伝導率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだプラスチックコンパウンドMWから形成されている。
【0072】
図1に示したように、温度調整媒体通路1は、温度調整プレートTの別の区分2bによって部分的に画定されている。この別の区分2bは、一種類以上の別の材料M、たとえば一種類以上のプラスチック、プラスチックコンパウンドおよび/またはプラスチック・金属複合材料から形成されている。有利には、別の区分2bは、熱伝導率を高めるための添加剤を含んでいない一種類以上のプラスチックもしくはプラスチックコンパウンドもしくはプラスチック・金属材料Mから形成されている。こうして、有利には、温度調整プレートTのコストと重量とを最適化することができる。
【0073】
図1に示したように、特に温度調整媒体通路1は、互いに組み合わされた、構造化された2つの半割シェル2a,2bによって形成されている。両半割シェル2a,2bのうち、一方の半割シェル2aは、熱伝導率添加剤が加えられたプラスチックコンパウンドMWを有しており、他方の半割シェル2bは、熱伝導率添加剤が加えられていないプラスチックコンパウンドMを有している。
【0074】
側方の波形の画定線は、本発明に係る温度調整プレートTを、複数のガルバニ電池Z、たとえば1つのバッテリパックの複数の電池、たとえば4〜12個の電池を同時に温度調整するために設計することができることを示している。
【0075】
さらに、図1に示した実施の形態は、特に1つ以上の電気的な線路、電池監視装置、コンタクト装置、温度調整媒体導入接続部および/または温度調整媒体導出接続部を有していてよい。これらの構成要素は、全般的な部分では説明されているが、図面を見やすくするという理由から、図1には示していない。
【0076】
図2Aには、本実施の形態の範囲内で、たとえば金属製の電池ケースを備えた1つ以上のガルバニ電池Zに用いられる本発明に係るプラスチックハウジングGが、熱導出のために設けられた区分12aを有していることが示してある。この区分12aは、熱伝導率を高めるための少なくとも一種類の添加剤を含んだプラスチックコンパウンドMWから形成されている。図1に示したように、熱導出のために設けられた区分12aは、プラスチックハウジングGの、特にプレート状のカバーの一部である。特に本発明に係る温度調整プレートTはカバーとして使用することができる。
【0077】
図1に示したように、熱導出のために設けられた区分12aと、区分12bとは、温度調整媒体を案内する構成部材、特にハウジングカバーとして機能する温度調整プレートTの構成要素である。この構成要素は、両区分12a,12bにより画定された温度調整媒体通路11を有している。熱導出のために設けられた区分12aと、プラスチックもしくはプラスチックコンパウンドMから形成された、熱伝導率を改善するための添加剤を含んでいない区分12bとは、半割シェルとして形成されている。両半割シェルは一緒に温度調整媒体通路11を形成すると共に画定している。
【0078】
図2Aに示したように、さらに、プラスチックハウジングG、特にハウジングベースボディは、プラスチックハウジングG内に配置された1つ以上のガルバニ電池Zに電気的にコンタクトするための2つの電気的なコンタクト装置13を有している。両コンタクト装置13は、プラスチックハウジングGの、熱導出のために設けられた区分12aと反対の側にかつ/または側内に配置されている。
【0079】
図2Aに示したように、プラスチックハウジングGは、前述したハウジングカバーのほかに、ハウジングベースボディを有している。プラスチックハウジングGに対する重量とコストとを最適化するためには、ハウジングベースボディが、熱伝導率を高めるための添加剤を含んでいないプラスチックもしくはプラスチックコンパウンドMから形成された区分15を有していてよい。
【0080】
側方の波形の画定線は、本発明に係るプラスチックハウジングGが、ガルバニ電池Zに対して、図示のコンパートメントに類似して形成された別のコンパートメントを有することができることを示している。
【0081】
図2Bに示した実施の形態では、主として、図2Aに示した実施の形態と異なり、プラスチックハウジングGが熱伝導接着剤もしくは熱伝導シート14を有している。この熱伝導接着剤もしくは熱伝導シート14は、プラスチックハウジングGの、熱導出のために設けられた区分12aと、ガルバニ電池Zとの間に隣接配置されている。
【0082】
さらに、図2Aおよび図2Bに示した実施の形態は、特に1つ以上の電気的な線路、電池監視装置、温度調整媒体導入接続部および/または温度調整媒体導出接続部を有していてよい。これらの構成要素は、全般的な部分では説明されているが、図面を見やすくするという理由から、図2Aおよび図2Bには示していない。
図1
図2A
図2B