(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717881
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】強磁性体製のストリップを安定させその変形を低減するための電磁気装置及び関連方法
(51)【国際特許分類】
C23C 2/24 20060101AFI20150423BHJP
C23C 2/40 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
C23C2/24
C23C2/40
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-554052(P2013-554052)
(86)(22)【出願日】2012年2月21日
(65)【公表番号】特表2014-505797(P2014-505797A)
(43)【公表日】2014年3月6日
(86)【国際出願番号】IB2012050778
(87)【国際公開番号】WO2012114266
(87)【国際公開日】20120830
【審査請求日】2013年9月26日
(31)【優先権主張番号】MI2011A000268
(32)【優先日】2011年2月22日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513206186
【氏名又は名称】ダニエリ アンド チー. オッフィチーネ メッカーニケ ソチエタ ペル アツィオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グアスティーニ,ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】ミネン,ミケーレ
【審査官】
関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−179834(JP,A)
【文献】
特開2000−334512(JP,A)
【文献】
特開2004−277872(JP,A)
【文献】
特開2001−226007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 2/00〜2/40
B21B 39/00、39/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強磁性体製のストリップ(4)の供給中に前記ストリップ(4)の変形を安定させ減少させるための電磁気装置(1)であって、
前記ストリップ(4)の理論通過線(50)と平行でかつ前記ストリップ(4)の搬送方向(100)に直角な横方向(100’)に沿って整列された複数の第1の電磁石(15,15’,15’’,15’’’)と、
前記ストリップ(4)の前記理論通過線(50)に関して前記第1の電磁石(15,15’,15’’,15’’’)の鏡像の位置に配置された複数の第2の電磁石(16,16’,16’’,16’’’)とを有し、
前記第1と第2の電磁石(15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’)のそれぞれが、少なくとも1つの極(18,18’,18’’)と前記少なくとも1つの極(18,18’,18’’)に巻かれた少なくとも1つの給電コイル(17,17’,17’’)とを備えるコアを有し、
前記装置(1)は更に、
前記第1の電磁石(15,15’,15’’,15’’’)の前記コア同士を接続する強磁性体製の第1の接続要素(26)と、
前記第2の電磁石(16,16’,16’’,16’’’)の前記コア同士を接続する強磁性体製の第2の接続要素(26’)であって、前記強磁性体製の前記ストリップ(4)の前記理論通過線(50)に関して前記第1の接続要素(26)の鏡像の位置に配置された第2の接続要素(26’)とを有し、
前記第1の接続要素(26)は、前記ストリップ(4)と複数の前記第1の電磁石(15,15’,15’’,15’’’)との間に配置され、
前記第2の接続要素(26’)は、前記ストリップ(4)と複数の前記第2の電磁石(16,16’,16’’,16’’’)との間に配置され、
前記装置(1)が、前記理論移動平面(50)に対する前記ストリップ(4)の位置を測定する複数の位置センサを有し,前記電磁石(15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’)のそれぞれの各給電コイル(17,17’,17’’)が、前記理論移動平面(50)に対する前記ストリップ(4)の前記位置に応じて給電される、電磁気装置(1)。
【請求項2】
前記第1と第2の電磁石(15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’)がそれぞれ、
第1極(18)と、
前記第1極(18)より上の位置の第2極(18’)と、
前記第1極(18)と前記第2極(18’)との間に挟まれた中央極(18’’)と、
前記第1極(18)と前記第2極(18’)と前記中央極(18’’)とを接続するヨーク(19)とを有し、
強磁性体製の前記第1の接続要素(26)が、前記第1の電磁石(15,15’,15’’,15’’’)の前記中央極(18’’)同士を接続し、
強磁性体製の前記第2の接続要素(26’)が、前記第2の電磁石(16,16’,16’’,16’’’)の前記中央極(18’’)同士を接続する、請求項1に記載の電磁気装置(1)。
【請求項3】
前記センサが、前記理論平面(50)に対して鏡像位置に2つずつになるように前記ストリップ(4)の前記理論移動平面(50)に関して両側に配置された、請求項2に記載の電磁気装置(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの給電コイル(17)が、前記中央極(18’’)に巻かれた、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁気装置(1)。
【請求項5】
前記電磁石(15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’)がそれぞれ、
前記中央極(18’’)に巻かれた給電コイル(17)と、
前記第1極(18)に巻かれた第1の補助給電コイル(17’)と、
前記第2極(18’)に巻かれた第2の補助給電コイル(17’’)とを有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電磁気装置(1)。
【請求項6】
前記第1と第2の接続要素(26,26’)の前記横方向(100’)に沿って測定された範囲が、前記横方向(100’)に沿って測定された前記ストリップ(4)の範囲以上とされている、請求項1〜5のいずれか一項に記載の電磁気装置(1)。
【請求項7】
前記第1と第2の接続要素(26,26’)が、積層又は非積層の強磁性体製の矩形断面を有するバーから成り、前記バーが、前記バー自体によって接続された各中央極(18’’)の長さ(32)の二乗の5分の1以上の断面を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の電磁気装置(1)。
【請求項8】
前記第1と第2の接続要素(26,26’)の一方の前記理論通過線(50)からの距離(35)が、前記第1極(18)と前記第2極(18’)の同一理論平面(50)からの距離(35’)以下であり、前記距離(35,35’)が、前記理論通過線(50)に直角な方向に測定された、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電磁気装置(1)。
【請求項9】
強磁性体製の、前記第1の電磁石(15,15’,15’’,15’’’)の前記個々のヨーク(19)を互いに接続する第1の接続体(27)と、
強磁性体製の、前記第2の電磁石(16,16’,16’’,16’’’)の前記個々のヨーク(19)を互いに接続する第2の接続体(27’)とを有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項10】
前記接続体(27,27’)がそれぞれ、矩形断面を有する強磁性体製の板を有し、前記接続体(27,27’)のそれぞれに関して、前記理論通過線(50)と平行な方向に測定された前記断面の高さ(37)が、前記接続されたヨーク(19)の高さ以上である、請求項9に記載の装置(1)。
【請求項11】
前記第1の電磁石(15,15’,15’’,15’’’)のヨーク(19)が単一体(28)で作成され、及び/又は、前記第2の電磁石(16,16’,16’’,16’’’)のヨーク(19)が単一体(28)で作成された、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置(1)を含む、金属製のストリップ(4)を溶融金属で被覆するシステム。
【請求項13】
溶融金属槽(7)を収容するポット(111)と、
前記ポット(111)の下流に配置された、余分な被覆を除去するためのユニット(5)と、
前記ポット(111)を支持するための支柱構造体とを備え、
前記装置(1)が前記支柱構造体に配置された、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
溶融金属槽を収容するためのポット(111’)が提供され、前記溶融金属槽が前記ポット(111’)内に懸架されたままにするための電磁気装置(8)が提供され、前記ポット(111’)が、前記金属ストリップ(4)を導入するための入口(9)と、前記入口(9)の反対側に前記金属ストリップのための出口とを備え、前記装置(1)が、前記入口(9)に機能的に配置された、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
請求項1に記載の装置によって、強磁性体製のストリップ(4)を供給中に前記ストリップ(4)を安定させかつ/又はその変形を修正する方法であって、
第1の個別の磁界と前記ストリップ(4)の理論通過線(50)に対して前記第1の個別の磁界の鏡像の位置に第2の個別の磁界とを生成する段階と、
磁界を伝達し分散させるための第1の手段によって、前記第1の磁界を伝達し分散させて、前記ストリップと平行な横方向(100’)に沿って分散された第1の連続磁界を生成する段階と、
磁界を伝達し分散させるための第2の手段によって、前記第2の磁界を伝達し分散させて、磁界を伝達し分散させるための前記第1の手段によって生成された前記第1の連続磁界の鏡像の位置に前記横方向(100’)に沿って分散された第2の連続磁界を生成する段階とを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼ストリップなどの強磁性体製の偏平体を被覆するための方法及びシステムに関する。特に、本発明は、金属ストリップを溶融金属で被覆する方法(例えば、亜鉛めっき法)の範囲内で、強磁性体製の金属ストリップを安定させるための装置に関する。本発明は、また、前記電磁気装置を含む、金属ストリップを溶融金属で被覆するためのシステムに関する。最後に、本発明は、強磁性体製のストリップ(例えば、金属ストリップなど)を安定させかつ/又はその変形を修正する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
既知のように、例えば金属ストリップなどの強磁性体製のストリップは、外側が適切な被覆方法によって被覆される。
図1を参照すると、第1の従来の被覆方法は、ポット111に収容された溶融金属槽7内に金属ストリップ4を通過させる。金属ストリップ4は、ポット111の上から槽7に特定の傾きで入り、ポット内に沈められたローラ2,3によってポットから垂直方向に出るように案内される。特に、金属ストリップ4の経路を得るために、「シンク・ローラ」と呼ばれるローラ2が配置され、一方、更に、金属ストリップ4の変形を部分的に修正し、部分的に安定させるために、「クロスボウ(crossbow)」とも呼ばれる修正ローラ3が提供される。
【0003】
ポット111の下流、即ち溶融金属槽7の出口には、余分な溶融金属を槽7の方に戻すために、金属ストリップ4の表面を拭くエアナイフ(空気又は不活性ガス)又は磁気ナイフ5から成る、余分な被覆を除去するユニットが取り付けられる。次に、金属ストリップ4は、ストリップ自体の搬送方向に沿って垂直方向に配置されたジェット・クーラー5’によって冷却される。次に、金属ストリップ4は、上側ローラ6自体と接触した後に被覆面の品質を損なわないような状態で上側ローラ6に達する。したがって、この被覆方法は、金属ストリップ4が、通常は距離が30〜50メートルの2点間での張力がかかるように垂直方向に支持されることを必要とする。
【0004】
図2を参照すると、大きい溶融金属ポット(最大400トン)を使用する代わりに、比較的小さい磁気閉込めポット111’を提供する被覆方法が最近開発された。そのようなポット111’は、機械的可動部品を含まず、代わりに電磁気装置8を含み、電磁気装置8によって、溶融金属槽が、金属ストリップ4が槽内を垂直方向に通る間懸架されたままにされる。より正確には、金属ストリップ4は、ポット自体の底にある入口9から磁気閉込めポット111’に入り、次に入口の反対側の出口から出る。
【0005】
図1と
図2に示され図式化された2つの被覆方法では、金属ストリップ4は、主にジェット・クーラー5’とナイフ5の存在により引き起こされる振動を受ける。
図1の方法の場合には、使用される機械的ガイド部材(特に、ローラ2,3)の隙間が振動源であり、
図2の方法の場合には、溶融金属7の浮上のための電磁気装置8が、別の振動源である。既に前述したように、
図1の方法では、金属ストリップは、沈められたローラ2,3の近くで生じる金属ストリップの局所的可塑化による静的変形(クロスボウ)による影響も受ける。この現象は、また、金属ストリップ4の供給安定性を著しく損なう。更に、
図2の方法の場合、金属槽7の下側自由面が、また、金属ストリップ4の振動によって動揺し、その結果、表面自体から溶融金属の飛沫が飛ぶことがある。
【0006】
これらの欠点は、金属ストリップ4に沿った被覆厚の変化を決定し、製品の種別に必要なものより厚い被覆を提供することが必要になる。実際に知られているように、参考規格は、超えてはならない被覆厚の最小しきい値を課す。実際に、金属ストリップ4の振動と静的変形は、被覆の分布を不均一にし、また金属ストリップと偶然接触するのを防ぐためにより遠い距離で動作しなければならないガス及び/又は電磁気ナイフの効果を低下させる。この点で、通常、少なくとも金属ストリップ4の95%で必要な最低しきい値を保証するために、上塗りが提供されることに注意されたい。他の場合では、ストリップの供給速度が低下し、その結果、生産性が低下し不利である。
【0007】
また、
図2の方法の場合、ポット111’の入口9を通る液体金属の飛沫の放出が、被覆の品質に悪影響を及ぼすことに注意されたい。実際に、そのような飛沫は、金属ストリップ4の活性面に付着し、金属槽7に入る前に活性面とすぐに反応する。そのような現象により、金属ストリップ4の表面に異なる合金組成を有する箇所ができ、したがって金属ストリップ4の品質が低下する。
【0008】
したがって、以上検討から、関連被覆工程中、特に溶融金属を収容するポットの上流及び/又は下流で金属ストリップ4を供給する際に、金属ストリップ4上の振動及び変形をできるだけ低減する必要性が明らかである。金属ストリップの安定性を改善するための電磁気装置は既に開発されており、電磁気装置は、振動を最小にすべき領域(例えば、ガスナイフがある領域の近く)に取り付けられる。
【0009】
図3は、ストリップの被覆方法の範囲内で、金属ストリップ4の供給中に金属ストリップ4を局所的に安定させるために現在使用されている電磁気装置の図である。
図3の装置は、複数対の電磁アクチュエータ10,10’,10’’,10’’’からなり、これらの電磁アクチュエータはそれぞれ、互いに向き合う2個の電磁石によって構成される。全ての電磁アクチュエータ対が、金属ストリップ4の搬送方向100の方向と直角な方向100’にしたがって、少なくとも1つの他の電磁アクチュエータ対と位置合わせされる。各電磁アクチュエータ対には、開ループと閉ループの両方で制御され得るパワーアンプによって供給される電流が送られる。1対の電磁石において電磁石に供給する電流のレベルを決定する制御信号は、理論通過線に対する金属ストリップ4の実際の位置、被覆の厚さと均一さ、金属ストリップ4の厚さ及び/又は幅、速度線などの動作情報にしたがって生成される。特に、
図3に示した例では、信号は、金属ストリップ4の理論通過線に対する位置を検出する位置センサ11,11’,11’’,11’’から送られる。より正確には、各センサ信号は、対応する電磁石対の互いに向き合う電磁石をアクティベートするために使用される。本質的には,位置センサ11,11’,11’’,11’’によって提供される各信号は、対応する電磁石10,10’,10’’,10’’’対を制御する目的を有する。この理由のため、センサ11,11’,11’’,11’’の数は、必然的に電磁石10,10’,10’’,10’’’対の数と一致する。
【0010】
図4は、
図3の装置の上面図であり、金属ストリップ4への電磁石の作用を示す。特に、各対の電磁石10,10’,10’’,10’’’における電磁石が、金属ストリップ4に力を及ぼし、それらの合力14,14’,14’’が、金属ストリップ4上の、きわめて正確であるが理論点15,15’,15’’に対応しない点に作用し、合力自体は、金属ストリップ4を真に安定させ(即ち、理論平面50と合致する)、即ち金属ストリップ4の振動を防ぎかつその静的変形を補償するように加えられなければならない。
【0011】
以上のことから、限られた数の電磁石では、金属ストリップ4がとる可能性のある全ての形状を修正できないことは明らかである。同様に、限られた数の電磁石が、金属ストリップ4の縁4’に加わる力の作用に関する更に他の問題を決定することにも注意されたい。各電磁石によって加えられる合力は、実際には、金属ストリップ4の電磁石に面する部分の大きさに依存し、したがって、ストリップの横寸法(幅4’’)が異なるときは変化する(
図7を参照)。
【0012】
この点において、
図5と
図7はそれぞれ、金属ストリップ4と、4個の電磁石13によって加えられる力とを示す。2つの図は互いに、電磁石13間の相互距離と、金属ストリップ4の異なる幅4’’とが異なる。4個の電磁石13によって生成された力が、局所的に加わり、したがって金属ストリップ4の縁4’に有効でないことに注意されたい。この状態によって、電磁石13の供給電流を変形の補償に必要なレベルまで増大させなければならなくなる。しかしながら、これは、電磁石13の高速飽和と起こり得る過負荷問題を決定する。
【0013】
図6を参照すると、横方向100’に沿って配置された電磁石13の数を増やし、したがって電磁石をできるだけ近づけることによって、
図5の解決策に対する明らかな改良を行うことができる。しかしながら、この解決策によって、金属ストリップ4に加わる力の分布に実質的な「切れ目」ができ、また種々の電磁石13を駆動するのに必要な電源とケーブルの数が増え、その結果、装置の制御が複雑になりその関連コストが増大する。
【0014】
金属ストリップ4を安定させるために使用される電磁気装置の別の例は、特許文献1に示され、この特許では、ストリップの幅の変化に対するシステムの適応性の問題を解決するために、ストリップの3つの主振動モード形状をなくすのに好適な最低3個の電磁石が提供される。特許文献2では、金属ストリップを局所的に安定させるために側面磁石が配置され、側面磁石は、その位置を金属ストリップの幅に適応させ、即ち少なくともストリップの縁に必要な場合に力を集中させるように移動可能にされる。示された2つの最後の解決策が、特定の振動モード形状の存在下で、即ち特定の明確な不安定条件下で、ある程度しか有効ではないので、十分であると見なすことができないことは明らかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】国際公開WO2006/101446
【特許文献2】欧州特許出願公開EP1784520
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明の主な課題は、ストリップを被覆する方法において、強磁性体製のストリップ(例えば、金属ストリップ)を安定させその変形を減少させるための電磁気装置を提供することである。この課題の範囲内で、本発明の1つの目的は、強磁性体ストリップの振動を有効に減少させることができ、またストリップに生成された任意の静的変形(クロスボウ)を補償することができる電磁気装置を提供することである。本発明の別の目的は、液体金属の電磁浮上に基づく方法の範囲内で、溶融金属の浮上に必要な磁界によって引き起こされる液体金属の漏れをなくすことができる装置を提供することである。本発明の最後ではない目的は、競争力のあるコストで作成が確実かつ容易な装置を提供することである。
【0017】
したがって、本発明は、前記金属ストリップの第1の理論通過線と平行でかつストリップの搬送方向に直角で、また前記理論平面と平行な方向に沿って整列された第1の電磁石を含む電磁気装置に関連する。電磁気装置は、また、金属ストリップの前記理論通過線に関して前記第1の電磁石の鏡像の位置に位置決めされた第2の電磁石を含む。電磁石はそれぞれ、少なくとも1つの極と、前記極に巻かれた1つの給電コイルとを含むコアを有する。
【0018】
本発明による電磁気装置は、また、第1の電磁石の前記少なくとも1つの極を接続する強磁性体製の第1の接続要素と、第2の電磁石の前記少なくとも1つの極を接続する強磁性体製の第2の接続要素とを有する。係る第2の接続要素は、前記金属ストリップの前記理論通過線に関して前記第1の接続要素の位置と略鏡像の位置に位置決めされる。
【0019】
更に、本発明の1つの他の態様は、本発明による電磁気装置を含む強磁性体製のストリップを被覆するためのシステムに関する。
【0020】
本発明の更に他の態様によれば、上記の問題は、ストリップを供給する際に強磁性体製のストリップを安定させかつ/又はその変形を修正するために、上記の装置によって実施される方法によって解決され、
第1の個別の磁界と、前記ストリップの理論通過線に関して前記第1の個別の磁界の鏡像の位置に第2の個別の磁界とを生成する段階と、
磁界を伝達し分散させるための第1の手段によって、前記第1の磁界を伝達し分散させて、前記ストリップと平行な横方向に沿って分散された第1の連続磁界を生成する段階と、
磁界を伝達し分散させるための第2の手段によって、前記第2の磁界を伝達し分散させて、磁界を伝達し分散させるための前記第1の手段によって生成された前記第1の連続磁界の鏡像の位置に前記横方向に沿って分散された第2の連続磁界を生成する段階とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0021】
本発明の更に他の特徴及び利点は、添付図面の支援により、非限定的な例によって開示された、本発明による電磁気装置の好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な説明を考慮して明らかになる。
【0022】
【
図1】金属ストリップを被覆するための第1のシステムに関する概略図である。
【
図2】金属ストリップを被覆するための第2のシステムに関する概略図である。
【
図5】既知の電磁気装置に関する更に他の図である。
【
図6】既知の電磁気装置に関する更に他の図である。
【
図7】既知の電磁気装置に関する更に他の図である。
【
図8】本発明による電磁気装置の第1の実施形態に関する平面図である。
【
図9】
図8の電磁気装置の可能な応用に関する図である。
【
図10】
図8の電磁気装置の可能な応用に関する図である。
【
図11】請求項8による電磁気装置の斜視図である。
【
図16】本発明による電磁気装置の第2の実施形態に関する平面図である。
【
図17】本発明による電磁気装置の第2の実施形態に関する斜視図である。
【
図18】
図8〜
図11の電磁気装置の電磁石の可能な実施形態に関する側面図である。
【
図19】
図8〜
図11の電磁気装置の電磁石の可能な実施形態に関する側面図である。
【
図22】本発明による装置の第3の実施形態に関する斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図における同じ数字と同じ参照文字は、同じ要素又は構成要素を示す。
【0024】
本発明による電磁気装置1は、好ましくは液体金属被覆工程中に、強磁性体ストリップ(以下では、より単純に「ストリップ4」と示す)を安定させ、その変形(例えば、クロスボウ)を最小化するために使用されることがある。特に、電磁気装置1は、特に、例えば
図1又は
図2に概略的に示されたような、被覆工程を行うシステムの範囲内でストリップ4を安定させるために使用されるように適合される。以下の記述から、本発明による電磁気装置を使用して、強磁性体製のストリップの変形も修正するだけでなく、ストリップの変形を作為的に引き起こすこともできることが明らかである。
【0025】
図8〜
図22は、本発明による電磁気装置1の可能な実施形態を指す。本発明による電磁気装置1は、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’と、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’とを備える。第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’は、ストリップ4の理論通過線50に略平行でかつ前記理論平面に平行な搬送方向100に直角な横方向100’に沿って整列される。同様に、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’は、ストリップ4の理論通過線50に平行でかつ前記搬送方向100に直角の方向に沿って整列される。より正確には、前記理論平面50に関して、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’は、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’がとる位置の鏡像の位置に配置される。本発明の目的のため、理論通過線50という表現は、振動と動揺のない理想的条件下でストリップ4が理論的に供給されるべき平面を示すものである。
【0026】
本発明によれば、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’と、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’とは、少なくとも1つの極と、前記極に巻かれた少なくとも1個のコイルとを備え、好ましくは調整可能な強さの電流が供給されるコアを有する。
【0027】
図に示された好ましい実施形態によれば、コアは、略「E」形構造を有し、即ち3つの極18,18’,18’’と、前記極18,18’,18’’を互いに接続するヨーク19とを有する。前記極18,18’,18’’と前記ヨーク19は、積層又は非積層の強磁性体で作成されてもよい。より正確には、コアは、第1極18と、前記第1極18より高い位置の第2極18’と、前記第1極18と前記第2極18’の中間位置の中央極18’’とを備える。また、前記電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’はそれぞれ、前記極18,18’,18’’のうちの1つに巻かれた少なくとも1個の給電コイルを備える。図示されていない代替実施形態では、電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’のコアは、2つの極だけを有し、そのうちの少なくとも1つにコイルが巻かれてもよい。したがって、電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’のコアは、前述のコアのような「E」形構造と異なる略「C」形を有してもよい。
【0028】
第1の電磁石は、それぞれのコイルに給電することによって、前記ストリップ4の第1の側に第1の磁界を生成するという目的に役立つ。したがって、係る第1の磁界は、個別に生成され調整される。換言すると、これらの磁界はそれぞれ、コイルの異なる供給電流から生じる異なる強度を有してもよい。同様に、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’は、第1の磁界のうちの1つの鏡像の位置に、やはり個別の第2の磁界を生成するという目的に役立つ。
【0029】
本発明によれば、電磁気装置1は、また、強磁性体製の第1の接続要素26と、強磁性体製の第2の接続要素26’とを備える。第1の接続要素26は、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’のコアを互いに接続し、第2の接続要素26’は、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’のコアを接続する。第1の接続要素26と第2の接続要素26’は、理論供給平面50に関して鏡像位置を有する。
【0030】
特に、図に示された実施形態では、第1の接続要素26が、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’の中央極18’’を互いに接続し、第2の接続要素26’は、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’の中央極18’’を接続する。
【0031】
図8は、本発明による装置1の第1の実施形態に関する概略図である。第1の接続要素26と第2の接続要素26’は、積層又は非積層の強磁性体製の矩形断面を有するバーの形状で作成されることが好ましい。前に示されたように、2つの接続要素26,26’は、理論平面50に関する鏡像位置を有し、その長手方向軸103が、電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’の横整列方向100’に平行、即ち、ストリップ4の搬送方向100に直角になるように配列される。特に、好ましい実施形態によれば、2つの接続要素26,26’の横方向100’に沿って測定された範囲は、この横方向に沿って測定されたストリップ4の範囲以上とされている。
【0032】
第1の接続要素26は、横方向100’に沿って分散された第1の連続磁界を生成することによって、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’によって生成された第1の磁界を伝搬し分散させるという目的に役立つ。本質的に、第1の接続要素26によって生成された第1の連続磁界は、空間内に分散された「第1の磁界源」からなり、その力線は、ストリップ4の断面の全ての点に作用する。同様に、第2の接続要素は、第1の接続要素26によって生成された第1の連続磁界の鏡像の位置に、横方向100’に沿って分散された第2の連続磁界を生成することによって、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’によって生成された第2の磁界を伝搬し分散させるという目的に役立つ。第2の接続要素26’は、本質的に、第1の接続要素26によって規定された第1の磁界源の鏡像位置で空間内に分散された「第2の磁界源」から成る。
【0033】
種々の電磁石のコイルに様々な電流を供給することにより、また2つの接続要素26,26’のおかげで、ストリップ4の断面全体に沿って、その幅に関係なく、力を空間内に実際に連続分散させることができる。この目的を達成するために、処理の際に、ストリップ4の幅が、同一運動中に何度か変化してもよいことが分かる。本発明による装置は、ストリップの幅に関係なく力の作為的な分散を有利に実施する。また、ストリップ4の長さ全体に沿って均一で連続可変の力を生成することにより、本発明による装置1が、既知の技術の装置と異なり、ストリップの縁にも力を加えることができるようにするために力の供給源を移動させる可動部品の使用を必要としないことにも注意されたい。
【0034】
図8に破線で示された事例は、金属ストリップ4の起こり得る変形(以下では、「金属ストリップ4の変形」とも示される)を示し、実線は、本発明による装置1によって金属ストリップ4が達成した位置を示す。したがって、装置1の電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’のコイルの給電を変化させることによって、望ましい向きの力を得る他に、金属ストリップ4の断面全体(即ち、実質的に2つの縁4’の間)に沿った力の連続分布を得ることができる。即ち、従来の装置によって達成されたものと異なり、金属ストリップ4の断面の各点には、ストリップの理想的条件(理論平面50)からのずれを最小にするのに寄与するように限定された強度と向きの力が加わる。
【0035】
例えば、
図8の事例では、金属ストリップ4の幅の前半に沿った力45は、適正な理論位置からの、即ち理論通過線50からの第1の振れ46を最小にするために、第1の方向に向けられる。代わりに、金属ストリップ4の他方の半分は、第1と反対の第2の方向に向けられた力45’を受け、その理由は、理論平面50からの振れの方向も反対だからである。
【0036】
代わりに、
図9と
図10は、本発明による電磁気装置1によって補正される金属ストリップ4の他の起こり得る変形を示す。特に、
図10に示された変形が、
図4に示された変形に相当し、この変形は、前に示されたように、電磁石に面した金属ストリップの断面部分にしか力が加えられないシステムを提供する従来の電磁気装置によって有効に修正されないことがあることに注意されたい。代わりに、本発明による電磁気装置1で提供される2つの接続要素26,26’は、金属ストリップ4の断面全体を含む力の分布を決定する。
【0037】
図8、
図9及び
図10に示された例から、電磁気装置1によって、金属ストリップ4の任意の変形を修正することができ、即ち実質的に金属ストリップ4を理論平面50に沿って維持できることが明らかである。その結果、本発明による電磁気装置1は、機能的視点できわめて汎用性が高く、したがって、被覆工程の範囲内で、除去ユニット(ガス又は磁気ナイフ)によって生成される振動を修正し、かつ液体槽の電磁浮上により被覆の範囲内でローラによって生成される変形を修正するために使用されてもよい。
【0038】
図12〜
図15は、更に、電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’のコイルに送る電流のレベル(参照23,23’,23’’,23’’’で示された)を好適に変更することによって得ることができる力の分布を示す。係る図では描写を単純にするために、金属ストリップ4と第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’だけが示される。
図13は、力の分布を示し、特に、本電磁石のうちの1つ(参照15’と示された)に第1レベルの電流23を供給することによって得られる関連合力22の位置を示す。代わりに、
図14の図式化で示された力の分布は、異なる2つのレベルの電流23’’及び23’’’が供給された2つの電磁石15’及び15’’の同時アクティベートによって決定される。最後に、
図15に示された力の分布は、同じレベルの電流23’が供給された給電コイルを有する2つの隣り合った電磁石15’,15’’の同時アクティベートの結果である。
図13と
図14と
図15の比較から、力の合力22の作用点が、アクティベートされた電磁石の数と位置と、また電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’自体の給電コイルに流す電流レベルによって変化することに注意されたい。
【0039】
図18と
図19は、
図8〜
図11に既に示されている装置に使用することができる電磁石(参照番号15で示された)を横方向で示す。特に、
図18は、電磁石が、コアの中央極18’’に巻かれた単一給電コイル17を有する好ましい実施形態を示す。この解決策は、コイルの体積を高さに含めることを可能にし有利である。
【0040】
代わりに、
図19は、3つの給電コイル、即ち、中央極18’’に巻かれた中間コイル17、第1極18に巻かれた第1の補助コイル17’、第2極18’に巻かれた第2の補助コイル17’’が提供された代替解決策を示す。重量を軽くするために、示された給電コイル(中間コイル17と補助コイル17’,17’’)は水冷されてもよい。好ましくは、極18,18’,18’’は、矩形断面の角柱形状を有する。
【0041】
コアのヨーク19は、また、矩形断面の角柱形状を有し、前記理論平面50と略平行な平面51上に乗っている3つの極18,18’,18’’の端面38を接続する。中央極18’’は、ヨーク19に接続された端面38の反対側の他の端面38’で関連接続要素26に接続される。
【0042】
図11を参照すると、前記接続要素26,26’のそれぞれに必要な最小断面は、接続要素26自体によって接続された中央極18’’の長さ32の2乗の少なくとも5分の1である。特に、そのような長さ32は、前記理論移動平面50に略平行な方向に沿って測定される。そのような最小断面より大きいか又は等しい断面によって、金属ストリップ4に働く力の最適な均一性が得られ、同時にコアの飽和が阻止されることが分かった。
【0043】
再び、好ましい実施形態による
図18と
図19を参照すると、第1極18と第2極18’は、装置1の前記電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’のそれぞれの中央極18’’に接続された関連接続要素26,26より前に延在しない。この結果、本質的に、前記電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’のそれぞれに関して、理論平面50からの対応する接続要素26,26’の距離35が、理論平面50自体からの第1極18と第2極18’の距離35’より小さいか又は等しい(特に、
図18を参照)。この目的を達成するために、理論平面50からのそのような距離35’が、前記第1極18と前記第2極18’で同じであることに注意されたい。
【0044】
図16と
図17は、本発明による装置の第2の実施形態に関する。この事例では、装置1は、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’のヨーク19を互いに接続する第1の接続体27を有する。装置1は、また、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’のヨーク19を互いに接続する第2の接続体27’を有する。特に、第1の接続体27は、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’のヨーク19の後側断面を互いに接続する。「後側断面」という表現は、本質的に、理論通過線50から最も遠いヨークの断面を意味する。
図16に上面図で示されたように、第2の接続体27’は、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’のヨーク19の後側断面を全く同じように接続する。
【0045】
図20と
図21は、
図16と
図17に示された電磁気装置に関連する電磁石の構成を示す側面図である。特に、
図20は、
図18の解決策に示されたものと同様に、中央極18’’に巻かれた1つの単一コイル17の存在を示す。代わりに、
図21は、前述の
図17で解決策のために提供されたものと同様に、3つのコイル17,17’,17’’を提供する解決策を示す。
図18と
図19の解決策に関して前述した点に関して、
図20と
図21の解決策も有効であると考えられる。
【0046】
図20と
図21に的確に示された一実施形態によれば、第1の接続体27と第2の接続体27’は、積層又は非積層の強磁性体製の板の形状で得られる。特に、そのような板は、理論通過線50と平行な方向に測定された高さ37が、同じ接続体によって接続されたヨーク19の各高さ以上の断面を有する。更に、バーの形状の前記接続体27,27’はそれぞれ、前記理論通過線50に直角な方向で測定された厚さが少なくとも1mmである。
【0047】
2つの接続体27,27’を使用することにより、電磁石によってストリップ4に加えられる力の分布と均一性がより高まることに注意されたい。この目的を達成するために、再び
図16を検討すると、力45,45’の分布が、
図8の装置によって達成可能な分布と異なり、ストリップ4の変形が等しいことに注意されたい。特に、
図16の解決策において、力のより漸進的な分布が、
図8での分布に対して達成可能であり、したがってストリップ4の位置の修正がより有効になることに注意されたい。また、2つの接続体27,27’の存在が、電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’のコアの飽和を有利に減少させ、これが、装置1の操作性に有利に関連することが分かった。
【0048】
この目的を達成するために、
図22は、本発明による電磁気装置1の更に他の可能な実施形態を示し、この実施形態では、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’のコアのヨーク19が、単一片、即ち単一体28で作成される。同様に、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’のコアのヨーク19も単一体(図に示されない)で作成される。
【0049】
図22の解決策は、電磁気装置1の磁気効果を大幅に高め、したがって、飽和に関連する問題を更に制限する。また、この更なる解決策に関して、「単一体」28の使用が、同様に装置の金属支持構造を形成するため有利に適合するようにすることによって、電磁気装置1の構造の剛性を高めることに注意されたい。特に、そのような単一体28は、また、例えば、
図1と
図2に図式化されたようなストリップ4を被覆するシステム内に、位置決めを可能にする固定部材を備えてもよい。
【0050】
前述の実施形態のどれに関しても、本発明による電磁気装置1は、理論通過線50に対するストリップ4上の所定の点の位置を検出するのに適応された複数の位置センサを含む。位置センサのタイプによって、位置センサは、第1の側が前記第1の接続要素26によって区切られ、第1の側と反対側の第2の側が前記第2の接続要素26’によって区切られたスペースの領域の多少近くに位置決めされてもよい。
【0051】
前述の実施形態のいずれに関しても、装置1の電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’のアクティベート(即ち、電磁石のコイルの給電)は、上記のセンサから得られる情報によって制御される。この目的を達成するために、渦電流センサの使用が特に有利であることが示された。しかしながら、例えば容量型センサ又はレーザセンサの他のタイプのセンサが使用されてもよいことを理解されたい。
【0052】
好ましい実施形態によれば、渦電流センサは、装置1の電磁石の数より数が少ないことが好ましい。これらのセンサはそれぞれ、所定の点で、ストリップ4の位置、例えば理論平面50である基準面からのストリップ4の振れを検出するように位置決めされる。そのようなセンサから得られる信号は、ストリップ(変形)の真の形状を復元するために信号を処理する処理ユニットに送られる。特に、処理ユニットは、既知の点から始めてストリップ4の真の形状を復元する補間機能を実施する。ストリップ4の真の形状にしたがって、処理ユニットは、理論通過線50からのストリップの振れを最小にするためにストリップに加えられる力の分布を決定する。そのような分布にしたがって、電磁石を制御するユニット(処理ユニットに対応することがある)は、必要な力を生成するのに十分なレベルの電流を流すことによって、電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’の給電コイル17,17’,17’’の供給を制御する。
【0053】
従来の電気機械装置と異なり、センサ信号は、電磁気装置の全ての電磁石の給電を同時に制御するために使用され有利であることに注意されたい。これは、より正確でより均一な修正を可能にすることは明らかである。更に、ストリップの変形を計算するために補間機能を採用することは、含まれ利用されるセンサの数、したがって全体コストの削減を可能にし有利である。
【0054】
好ましい装置によれば、渦電流センサは、ストリップ4の両側に、理論通過線50に関して対称位置に2つずつ位置決めされる。この特定の配置は、互に向き合う2つのセンサ間の距離が既知なので、そのような距離の認識から始めることによって、測定システムを自動的に較正することを可能にすることに注意されたい。また、センサのこの特定の配置は、電磁石15,15’,15’’,15’’’,16,16’,16’’,16’’’によって生成される磁界の接近により、センサのうちの1つのセンサの信号に生じることがあるノイズを減らすことを可能にする。
【0055】
本発明による電磁気装置により、事前に設定された課題と目的を達成することができる。特に、装置は、ストリップの振動と変形を最小にすることを可能にする。これは、求められる最小被覆しきい値を保証するために必要な上塗りの減少を伴い有利である。また、ストリップの安定性の向上により、その生産ライン速度を高めることができ、これは、生産コストの低減、即ち、生産性の向上となることが明らかである。同時に、被覆の表面品質が大幅に改善される。また、本発明による装置は、様々な幅の金属ストリップに有効に適応することができるので、運用上の視点からきわめて用途が広いことが分かる。
【0056】
本発明は、また、金属ストリップ4を供給する際にその位置を安定させるために、前述の説明による少なくとも1つの装置1を含む、金属ストリップ4を被覆するためのシステムに関する。第1の実施形態では、システムは、
図1に図式化されたタイプのものでもよく、代わりに
図2に図式化されたタイプのものでもよい。いずれの場合も、本発明によるシステムは、過剰被覆を除去するためのユニットを含む。そのようなユニットは、ガスナイフ及び/又は磁気ナイフを含む。
【0057】
第1の設置形態によれば、本発明による装置1は、余分な被覆を除去するための前記ユニットも支持する支柱構造上に位置決めされてもよい。電磁気装置1に含まれるセンサによって、この動作位置は、除去ユニットのガスナイフ5及び/又は磁気ナイフに対する金属ストリップ4の実際位置を知ることを可能にする。これにより、ストリップの真の位置にしたがってナイフを近づけ/遠ざけることができ、この結果、ガス又は電磁気ナイフの場合には電気エネルギーの節約になる。
【0058】
図2のタイプのシステムの場合、本発明による電磁気装置1は、磁気浮上ポット111’の下に位置決めされてもよい。この位置は、溶融金属7の浮上に必要な強い磁界の作用によって引き起こされる金属ストリップ4の振動の減少を可能にする。
【0059】
本発明の強磁性体製のストリップ4(例えば、金属ストリップ)を安定させかつ/又はその変形を修正する方法は、第1の個別の磁界と、ストリップ4の理論通過線50に関して第1の磁界の鏡像の位置で第2の個別の磁界とを生成することを提供する。この方法は、磁界を伝達し分散させる第1の手段によって前記第1の磁界を伝達し分散させて、前記ストリップ4に平行な横方向100’に沿って分散された第1の連続磁界を生成することを提供する。本発明による方法は、また、ストリップ4の前記理論通過線50に関して分散された前記磁界のうちの1つのものの鏡像の位置に分散された第2の連続磁界を生成することによって、磁界を伝達し分散させるための第2の手段によって前記第2の磁界を伝達し分散させることを実現する。
【0060】
第1の磁界と第2の磁界は、少なくとも1つのコアと1つの給電コイルを含む電磁石によって生成される。給電コイル内の電流の供給は、それぞれの電磁石のコア内に集中された磁界を生成する。本質的に、単一の給電コイルは、集中空間領域内で作用する個別の磁界の供給源から成る。磁界を伝達し分散させるための第1の手段と第2の手段によって、第1の磁界と第2の磁界が、空間内に分散された第1の供給源(即ち第1の連続磁界)と空間内に分散された第2の供給源(即ち、第2の連続磁界)とを生成するように、実質的に空間内で再分散される。
【0061】
供給する際、ストリップ4は、その断面の任意の点が磁化されるように生成された2つの連続磁界の間に配置され、即ち、連続磁界によって生成された力の作用を受ける。本質的に、ストリップ4の磁化は、第1と第2の伝達及び分散手段によってそれぞれ生成された第1と第2の磁界の存在を反映した作用として起こる。ストリップ4の断面の各点には、強度と方向に関して、電磁石によって生成された第1と第2の磁界を伝達し分散させることによって生成された連続磁界のうちの1つに対応する分布を有する力が生成される。
【0062】
前述の図に示された実施形態の電磁気装置1が、本発明による方法を実行することを的確に可能にすることは明らかである。特に、電磁気装置1の場合、第1の電磁石15,15’,15’’,15’’’,によって第1の磁界が生成され、第2の電磁石16,16’,16’’,16’’’によって第2の磁界が生成されることに注意されたい。磁界を伝達し分散させるための第1の手段は、第1の接続要素26から成る。同様に、磁界を伝達し分散させるための第2の手段は、第1の接続要素26の鏡像である第2の接続要素26’から成る。
【0063】
本発明による方法を使用して、生産工程の範囲内で供給中の金属ストリップを安定させその変形を最小にすることができるが、強磁性体製のストリップの変形を、減らすあるいは無くすわけではなく、引き起こすこともできる。