【文献】
M-Chastrette, et al.,Eur. J. Med. Chem.,1990年,Vol.25,pp. 433-440
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第10213号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Brunke at al., Rivista Italiana EPPOS, 1997, 49
【0008】
発明の概要
本発明の第1の対象は、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態の式
【化2】
[式中、Rは、Me基またはEt基を表し、R
aは、水素原子、あるいはSi(R
b)
3基または(R
c)
2COH基(R
bは、C
1-5基またはフェニル基を表し、R
cは、C
1-5基またはフェニル基を表す)を表す]の化合物である。
【0009】
実際に、本発明者らは、β−サンタロール(重要な付香成分)およびその誘導体が、式(I−a)[式中、R
aは水素原子である]のエニノール、すなわちその立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態の式
【化3】
[式中、Rは、Me基またはEt基を表す]の化合物から出発して有利に製造できることを発見した。
【0010】
特に、化合物(I)または(I−a)[式中、RはMeである]は、β−サンタロールの直接前駆体であることから、好適な実施形態である。
【0011】
前記化合物(I)は、化合物(I−a)[式中、R
aは水素原子ではない]から有利に製造することができる。したがって、本発明の第2の対象は、上記に定義したとおりの化合物(I)を製造するための方法であって、
a)2−R−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン[式中、Rは、化合物(I)の場合と同様の意味を有する]を式R
a−C≡CCHO[式中、R
aは、Si(R
b)
3基または(R
c)
2COH基(R
bおよびR
cは、互いに独立して、C
1-5基またはフェニル基を表す)を表す]の化合物と、触媒としてのAl、B、またはSn誘導体ルイス酸の存在下で反応させて(「エン」反応)、式(I−a)[式中、R
aは、Si(R
b)
3基または(R
c)
2COH基(R
bおよびR
cは、互いに独立して、C
1-5基またはフェニル基を表す)を表す]の化合物を得るステップと、
b)得られた化合物(I−a)を適切な塩基またはフッ素塩で処理して、化合物(I)を得るステップと、を含む方法に関する。
【0012】
特定の実施形態によると、上記の方法の出発物質は、光学活性またはラセミ型の2エンド−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンである。
【0013】
「エン反応」に必要な触媒は、当業者には周知であるが、非限定的な例として、以下の化合物:Me
2AlCl、EtAlCl
2、SnCl
4、またはBF
3を挙げることができる。
【0014】
ステップb)に必要な塩基またはフッ素塩は、当業者には周知であるが、非限定的な例として、以下の化合物:KOH、ホウ砂(Na
2B
4O
7)、またはKFを挙げることができる。
【0015】
ラセミ型または光学活性であり、式中、Rは上記に提示したものと同様の意味を有する、化合物2−R−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンは、従来技術に記載されている方法によって、あるいはより好都合には、本発明のさらなる対象である新しい方法によって得ることができ、この方法は、
a’)酸H(アニオン)と、
ラセミ型または光学活性の2−R
d−3−R
e−5−R
f−4−イミダゾリジノン誘導体、あるいはラセミ型または光学活性の式(C
4H
8N)−2−CAr
20SiR
b3のプロリノール誘導体と、を一緒に反応させることによって得られた光学活性塩の存在下で、
シクロペンタジエンをトランス形のアルデヒドRHC=CHCHO[式中、Rは、上記と同様の意味を有する]と、ディールス・アルダー条件下で反応させるステップであって、
アニオンは、Cl
-、ClO
4-、R
gSO
3-もしくはR
gCO
2-[式中、R
gは、C
1−C
7炭化水素基、またはC
1−C
8フルオロアルキル基もしくはフルオロアリール基である]、ClSO
3-、FSO
3-、BF
4-、PF
6-、SbCl
6-、AsCl
6-、SbF
6-、AsF
6-、またはB(R
h)
4-[式中、R
hは、場合によって1〜5個の基、例えばハライド原子、あるいはメチル基、またはCF
3基で置換されたフェニル基である]からなる群の中で選択されたアニオンを表し、
R
bは、化合物(I−a)の場合と同様に定義され、Arは、場合によって1個、2個、または3個のMe、EtCF
3、OMe、またはOEtで置換されたフェニル基を表し、
R
dは、t−Bu、フェニル基、ベンジル基、または5−Me−フリル基を表し、
R
eは、水素原子、C
1−C
3アルキル基、またはベンジル基を表し、
R
fは、t−Bu、フェニル基、ベンジル基を表す
(3−R−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2エキソ−カルバルデヒドを得るための)ステップと、
b’)ステップa’)で得られたディールス・アルダー付加物を飽和アルコールに還元し、場合によって、前記アルコールをエステル、カーボネート、またはスルホネートに変換するステップと、
c’)前記アルコール、エステル、カーボネート、またはスルホネートを所望の生成物に変換するステップと、を含む。
【0016】
ステップa’は、既知の反応であり、当業者はその標準的な知識を応用してこれを実施することができる(例えば、MacMillan et al.による国際出願第03/002491号またはJ.Am.Chem.Soc. 2005,
127, 11616参照、あるいはHayashi et al., Angew.Chem.Int.ed. 2008,
47, 6634またはOrg. Lett., 2007,
9, 2859参照)。前記の方法をどのように実施するかは、本明細書の実施例の部分に例示する。
【0017】
ステップb’)およびc’)は、周知の反応であり、当業者はその標準的な知識を応用してこれを実施することができる。前記の方法をどのように実施するかは、本明細書の実施例の部分に例示する。
【0018】
明確にするため、「エステル、カーボネート、またはスルホネート」とは、当該技術分野における通常の意味を有するものとする。すなわち、前記飽和アルコールの酸素原子は、アシル基、アルコキシカルボニル基、またはスルホネート基(例えば、C
1-7基)に結合している。
【0019】
好ましくは、Rはメチル基であり、アルデヒドRHC=CHCHOはクロトンアルデヒドである(すなわち、前記の方法、つまりステップa’)およびb’)およびc’)の方法によって得られる生成物は、2−Me−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンである)。
【0020】
前記の方法は、光学活性またはラセミ型の2エンド−R−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、続いて式(I−a’)の化合物を製造するために特に有用である。
【0021】
上記に記載したように、エニノール(I)は、β−サンタロールおよびその誘導体の有用な前駆体であることが発見された。実際に、エニノール(I)を使用して、下記に記載するようにアルデヒド(II)を製造することができるが、これはβ−サンタロールおよびその誘導体の製造における重要な中間体であることが知られている。
【0022】
したがって、本発明の第2の対象は、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態である、式
【化4】
[式中、Rは、Me基またはEt基を表す]の化合物を製造するための方法であって、
上記に定義したとおりの式
【化5】
のエニノールを、M(L)
nZ塩[式中、Mは、Zn(II)、Cu(I)、またはAg(I)を表し、nは、0〜4の整数表し、Lは、C
1−C
4ニトリル、C
6H
5CN、またはジ−ニトリル、あるいはC
5−C
8ピリジン誘導体を表し、Zは、弱配位または非配位のアニオンを表す]と反応させる(環化−開裂ステップ)ことによる方法である。
【0023】
特定の実施形態によると、前記M(L)
nZ塩は、Cu(L)
4Z[式中、Lは、C
1−C
4ニトリル、またはAgZ塩である]である。
【0024】
特定の実施形態によると、Zは、R
4S
3-[式中、R
4は、塩素原子またはフッ素原子、あるいはC
1−C
8アルキル基、フルオロアルキル基、もしくはフルオロアリール基、BF
4-、PF
6-、SbCl
6-、SbF
6-、またはBR
54-(式中、R
5は、場合によって1〜5個の基、例えばハライド原子、またはメチル基もしくはCF
3基で置換されたフェニル基である)である]である。MがAg(I)である場合、Zは、ニトラートまたはペルクロラートも表しうる。
【0025】
本発明の好適な実施形態によると、Zは、BF
4-、PF
6-、SbCl
6-、C
6F
5SO
3-、BPh
4-、CF
3SO
3-、またはさらにB[3,5−(CF
3)
2C
6H
4]
4-、より好ましくはBF
4-である。
【0026】
場合によって、本発明の前記方法に、添加剤として、アニオンZのアルカリ塩を添加してもよい。具体的には、式KZまたはCsZの塩を添加することができる。
【0027】
(I)の(II)への転化は、そのいずれの実施形態においても、好ましくは溶媒の存在下で実施する。そのような溶媒の非限定的な例は、エステル、芳香族炭化水素、塩素化溶媒、およびそれらの混合物である。より好ましくは、溶媒は、トルエンまたは1,2−ジクロロエタン、およびそれらの混合物である。
【0028】
本発明による(I)の(II)への転化を実施することができる温度は、そのいずれの実施形態においても、0℃〜150℃、好ましくは40℃〜70℃に含まれる。当然ながら、当業者は、出発生成物および最終生成物および/または最終的な溶媒の融点および沸点に応じて、好適な温度を選択できる。
【0029】
塩M(L)
nZは、広い範囲の濃度で、反応媒体に添加することができる。非限定的な例として、出発エニノール(I)のモル量に対して、0.01〜0.50モル当量の範囲の塩濃度を挙げることができる。好ましくは、塩濃度は、0.01〜0.10モル当量に含まれるであろう。M(L)
nZの最適濃度が、M(L)
nZの性質および所望の反応時間により異なることは明らかである。
【0030】
添加剤は、広い範囲の濃度で、反応媒体に添加することができる。非限定的な例として、塩の質量に対して、10〜250%の範囲の添加剤濃度を挙げることができる。好ましくは、添加剤濃度は、塩の質量に対して、10〜120%に含まれるであろう。
【0031】
本発明の任意の実施形態によると、また特定の態様とは無関係に、化合物(I−a)、(I)、または(II)は、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態であってもよい。立体異性体という用語は、配置EまたはZの任意のジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、または炭素−炭素異性体を意味する。
【0032】
本発明の特定の実施形態によると、化合物(I−a)は、50%(w/w)を上回る(1R,4S)立体異性体を含む立体異性体の混合物の形態、すなわち式(I−a’)
【化6】
に示すような絶対配置を有する化合物であり、さらなる実施形態においては、前記化合物(I)は、本質的に化合物(I−a’)からなる。
【0033】
本発明の特定の実施形態によると、化合物(I)は、50%(w/w)を上回る(1R,4S)立体異性体を含む立体異性体の混合物の形態、すなわち式(I’)
【化7】
に示すような絶対配置を有する化合物であり、さらなる実施形態においては、前記化合物(I)は、本質的に化合物(I’)からなる。
【0034】
化合物(I)の典型的な例として、1−[−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル]−3−ブチン−2−オール、またはその立体異性体1−[(1R,4S)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル]−3−ブチン−2−オールを挙げることができる。
【0035】
本発明の特定の実施形態によると、化合物(II)は、50%(w/w)を上回る2−エンド−R配置を含む異性体の混合物の形態である。さらに、前記化合物(II)は、50%(w/w)を上回る(1S,2S,4R)立体異性体を含む立体異性体の混合物の形態、すなわち式(II’)
【化8】
に示すような絶対配置を有する化合物であってもよく、さらなる実施形態においては、前記化合物(II)は、本質的に化合物(II’)からなる。
【0036】
化合物(II)の典型的な例として、3−[2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル]−アクリルアルデヒド、またはその立体異性体3−[(1S,2S,4R)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル]−アクリルアルデヒドを挙げることができる。
【0037】
化合物(I)は、β−サンタロールまたはその誘導体を製造するための有用な出発物質であることから、本発明は、以下に定義するとおりの式(III)の化合物の合成における、中間体としての化合物(I)の使用にも関する。言い換えると、本発明は、式(β−サンタロールまたは誘導体)
【化9】
[式中、
Rは、Me基またはEt基を表し、
R
1は、水素原子、あるいはMe基またはEt基を表し、
Xは、CH
2OR
2基、CHO基、またはCH(OR
3)
2基(R
2は、水素原子、C
1−C
3アルキル基、アルケニル基、またはアシル基を表し、R
3は、別々に、C
1−C
3アルキル基、アルケニル基、またはアシル基を表すか、あるいは一緒になってC
2−C
5アルカンジイル基を表す)を表し、
点線は、単結合または二重結合を表す]の化合物であって、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態の化合物を得るための方法にも関し、前記方法は、
1)上記に記載した方法によって、上記に定義したとおりの式(I)のエニノールを上記に定義したとおりの式(II)のアルデヒドに転化させるステップと、
2)式(II)のアルデヒドを上記に定義したとおりの式(III)の化合物に転化させるステップと、を含む。
【0038】
本発明の特定の実施形態によると、また特定の態様とは無関係に、Rはメチル基を表す。
【0039】
本発明のさらなる実施形態によると、また特定の態様とは無関係に、R
1は、メチル基またはエチル基を表す。
【0040】
本発明のさらなる実施形態によると、また特定の態様とは無関係に、R
2は、水素原子またはC
1−C
3アシル基を表す。
【0041】
本発明のさらなる実施形態によると、また特定の態様とは無関係に、R
3は、別々に、メチル基またはエチル基を表すか、あるいは一緒になって、C
2−C
4アルカンジイル基を表す。
【0042】
本発明の特定の実施形態によると、また特定の態様とは無関係に、化合物(III)は、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態であってよい。立体異性体という用語は、配置EまたはZの任意のジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、または炭素−炭素異性体を意味する。
【0043】
本発明の特定の実施形態によると、化合物(III)は、50%(w/w)を上回る2−エンド−R配置を含む異性体の混合物の形態である。さらに、前記化合物(III)は、50%(w/w)を上回る(1S,2S,4R)、あるいは(2Z,1S,2S,4R)の立体異性体を含む立体異性体の混合物の形態、すなわち式(III’)
【化10】
に示すような絶対配置を有する化合物であってもよく、さらなる実施形態においては、前記化合物(III)は、本質的に化合物(III’)からなる。
【0044】
化合物(III)の典型的な例として、β−サンタロール、(−)−β−サンタロール(すなわち、(2Z)−2−メチル−5−[(1S,2R,4R)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル]−2−ペンテン−l−オール)、β−サンタラール、β−サンタリルベンゾエート、β−サンタリルブチラート、β−サンタリルホルメート、β−サンタリルプロプリオネートを挙げることができる。
【0045】
前記方法の第1のステップは、上記に定義したとおりである。
【0046】
アルデヒド(II)の化合物(III)への転化は、当業者に周知の多様な手法で実施することができる。実例は、下記の実施例に示す。
【0047】
しかしながら、非限定的な例として、アルデヒド(II)を化合物(III)に転化させるための最も直接的な手法は、
i)アルデヒド(II)をPh
3P=CHR
1とカップリングさせた後、イリドをCH
2OおよびBuLiと反応させて(ウィッティッヒ付加後のヒドロキシアルキル化)、アルコールまたはカルボキシレート誘導体を得る反応と、
ii)アルコールを適切なエステル、アルデヒド、またはアセタールに転化させる反応と、を含む。
【0048】
任意のステップであるC=C結合の部分水素化または完全水素化は、どの時点でも、すなわちステップi)の前、またはステップi)もしくはii)の直後に、実施することができる。
【0049】
ウィッティッヒ−ヒドロキシアルキル化付加は、R.Snowden et al., Helvetica Chemica Acta, 1981,
64, 25に報告されている方法によって実施することができる。
【0050】
ウィッティッヒ付加により、XがCH
2OR
2[式中、R
2は、水素原子またはいくつかのアシル基である]を表す化合物(III)を直接得ることができる。R
2の意味が異なる化合物(III)が所望される場合は、前記化合物は、当業者に周知の任意の標準的な方法を用いて、アルコール(III)(XはCH
2OHである)を変換することによって得ることができる。例えば、式(III)のアルデヒドは、アルコール(III)の酸化によって得ることができ、あるいはエステル(III)は、前記アルコール(III)のエステル化によって得ることができる。
【0051】
あるいは、
a)アルデヒド(II)を式(IV)
【化11】
[式中、Rは、式(II)においてと同様の意味を有する]のその立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態のアルデヒドに還元(水素化)する反応と、
b)前記アルデヒド(IV)をアルデヒドR
1CH
2CHOとカップリングさせて(アルドール付加)、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態のアルデヒド(V)
【化12】
[式中、RおよびR
1は、式(II)においてと同様の意味を有する]を得る反応と、
c)前記化合物(V)を、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態の相当するジエノール誘導体(VI)
【化13】
[式中、RおよびR
1は、式(II)においてと同様の意味を有し、R
4は、C
1−C
3アルキル基、アルケニル基、またはアシル基、あるいはC
3−C
8シリル基を表す]に変換する反応と、
d)エノラート(VI)を、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態の化合物(VII)
【化14】
[式中、R、R
1、およびR
4は、式(VI)においてと同様の意味を有する]に還元する反応と、
e)場合によって、前記化合物(VII)を、その立体異性体またはそれらの混合物の任意の1つの形態の化合物(III’’)
【化15】
[式中、点線、R、R
1、およびXは、式(III)においてと同様の意味を有する]に転化させる反応と、を実施することによって、アルデヒド(II)を化合物(III’)(下記参照)に変換することができる。
【0052】
ステップe)は、任意のステップとしてのみ記載するが、これは化合物(VII)の多くが、すでに式(III)に含まれているためであり、したがって所望の化合物(III)によっては、最後のステップは必ずしも必要ではない。
【0053】
本発明の特定の実施形態によると、前記化合物(IV)〜(VII)は、化合物(II’)または(III’)に関して上記に記載したものに対応する配置を有する。
【0054】
ステップa)〜e)は、当業者に周知の標準的な方法によって実施することができる。
【0055】
例えば、各ステップについて以下の方法:
欧州特許第10213号によるステップa)またはb);
Simmons et al., Helv.Chim.Acta, 1988,
71, 1000、または国際出願第2005/037243号によるステップc);および
Shibasaki et al., J.Org.Chem., 1988,
53, 1227(ジエノールアセテート誘導体の[1,4]水素化が記載されている)、または国際出願第08/12017号によるステップd)を挙げることができる。
【0056】
このような手順の例を、以下の実施例に示す。
【実施例】
【0057】
本発明を、その全ての実施形態において、以下の実施例によってさらに詳細に説明する。これらの実施例において、略語は当該技術分野における通常の意味を有し、温度は、摂氏(℃)で示される。NMRスペクトルデータは、CDCl
3中、400MHzまたは125MHzの機器を用いて、
1Hまたは
13Cについてそれぞれ記録した。化学シフトδは、基準物質としてのTMSに対してppmで示し、カップリング定数JはHzで表す。
【0058】
実施例1
化合物(I)の製造−方法A:
a)3−エキソ−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オンの製造
ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.58M、260.0ml、410.8mmol)を、ジイソプロピルアミン(59.0ml、419.8mmol)のTHF(100ml)溶液に、窒素下、−78°Cで、40分間かけて添加した。この混合物を、−78°Cでさらに30分間攪拌してから、(±)−ノルカンファー(40.118g、364.2mmol)を加えたTHF(100ml)を−78°Cで滴下添加し、−78°Cでさらに30分間攪拌し、その後ヨードメタン(34.0ml、545.9mmol)を添加した。添加の終了後、この混合物を−78°Cでさらに30分間攪拌し、室温に達するまで放置した。この混合物をNH
4Clの飽和水溶液を用いて加水分解した。水層をペンタンで2回抽出し、混合有機層をNH
4Clの飽和水溶液、NaHCO
3の飽和水溶液、およびブラインで洗浄した。この有機層をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾別し、微真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、定量的収率で表題化合物(46.05g)を得た。
【0059】
【0060】
b)(3−エキソ−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イリデン)−酢酸の製造
NaH(55%、19.76g、451.45mmol)とTHF(400ml)とを窒素下で反応器に入れた。この懸濁液に、トリエチルホスホノアセテート(94.0ml、469.60ml)を室温で25分間かけて添加した。次にこの混合物を50℃で45分間加熱し、3−エキソ−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(46.054g、361.59mmol)を加えたTHF(100ml)をこのイリドに50℃で25分間かけて添加した。添加の終了後、混合物を2時間還流させた。次にこの混合物を室温まで冷却し、5%HCl水溶液と氷を用いて加水分解した。この混合物をEt
2Oで2回抽出した。混合有機層を水、飽和NaHCO
3水溶液、およびブラインで洗浄した。この溶液をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾別し、真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを減圧下でバルブ・ツー・バルブ蒸留して、85.5%の(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イリデン)−酢酸エチルエステルを含有する生成物(76.36g)を得た。
【0061】
KOHペレット(36.31g、350.0mmol)をH
2O(220ml)に室温で溶解させ、(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イリデン)−酢酸エチルエステル(76.361g、361.59mmol)を加えた無水エタノール(500ml)を添加し、この混合物を3.5時間加熱還流した。この溶液を室温に達するまで放置し、ペンタンで2回抽出した。混合有機層を5%NaOH水溶液、H
2Oで洗浄し、塩基性の層を濃HClでpH=1まで酸性化した。酸性の水性画分をペンタンで2回抽出し、混合有機層を5%HCl水溶液、H
2O、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾別した。真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によって精製して、2段階で75%の収率で所望の化合物(46.575g)を得た。
【0062】
【0063】
c)3(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−酢酸の製造
ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.40M、616.0ml、862.4mmol)を、ジイソプロピルアミン(125.0ml、888.9mmol)を加えたTHF(200ml)に、窒素下、−78°Cで60分間かけて添加した。この混合物を−78°Cでさらに30分間攪拌した後、(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イリデン)−酢酸(46.57g、280.2mmol)を加えたTHF(200ml)を−78°Cで滴下添加した。添加の終了後、この混合物を−78°Cでさらに30分間攪し、室温に達するまで放置した。このオレンジ色の混合物を5%HCl水溶液で加水分解した。水層をEt
2Oで2回抽出し、混合有機層をH
2Oで2回洗浄した。有機層をpH=11まで5%NaOH水溶液で2回抽出し、塩基性の層を濃HClでpH=1まで酸性化した。水性画分をEt
2Oで2回抽出し、混合有機画分をH
2O、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾別した。真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、86%の収率で所望の化合物(42.24g、純度95%)を得た。
【0064】
【0065】
d)(±)−2−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−エタノールの製造
3(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−酢酸(42.240g、254.2mmol)を加えた乾燥Et
2O(500ml)を、水素化リチウムアルミニウム(14.99g、381.2mmol)を加えたEt
2O(250ml)に、窒素下、室温で60分間かけて添加した。添加の終了後、この混合物を1.5時間加熱還流し、その後0℃まで冷却した。この混合物を14.0mlのH
2Oと14.0mlの5%NaOH水溶液でゆっくりと加水分解した。セライトとNa
2SO
4をこの未精製混合物に添加した。この懸濁液をセライトを通して濾別し、真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、76%の収率で所望の化合物(42.24g、純度89%)を得た。
【0066】
【0067】
e)(±)−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−アセトアルデヒドの製造
2−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−エタノール(16.37g、107.53mmol)をジクロロメタン(150ml)に溶解させ、デス・マーチン・ペルヨージナンのジクロロメタン溶液(15%、536.2g、189.7mmol)を窒素下、室温で110分間かけて添加した。この混合物を室温でさらに30分間攪拌し、氷浴中で5%NaOH水溶液を用いて加水分解し、Et
2Oで3回抽出した。混合有機層をH
2O、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾別した。減圧下で溶媒を除去して未精製物を得、これを減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、83%の収率で所望の化合物(13.468g、純度88%)を得た。
【0068】
【0069】
f)(±)−l−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−ブタ−3−イン−2−オールの製造
エチニルマグネシウムブロミドを加えたTHF(0.5M、210.0ml、105.0mmol)を窒素雰囲気下、室温で反応器に入れ、(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−アセトアルデヒド(12.15g、80.9mmol)を加えたTHF(200ml)を90分間かけて導入すると、混合物がオレンジ色に変化した。この混合物を室温でさらに30分間攪拌し、室温で5%HCl水溶液を用いて加水分解した。この混合物をEt
2Oで2回抽出し、混合有機層をNaHCO
3の飽和水溶液、H
2O、およびブラインで2回洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させた。真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを溶離剤としてシクロヘキサン/AcOEt(95/5)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、79%の収率で表題化合物(11.32g)を得た。
【0070】
【0071】
化合物(I)の製造−方法B
a)3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オンの製造
ジエチルアミン(50.0ml、455.0mmol)をホルムアルデヒド(MeOH/H
2O中36%、50.0ml、1.82mol)に、0℃で15分間かけて添加した。得られた混合物を酢酸(50.0ml、910.0mmol)で33分間かけて処理した。添加の終了後、温度を室温まで上昇させ、少量のBHTの存在下、(±)−ノルカンファー(50.0g、0.455mol)にこの混合物を95°Cで22分間かけて添加した。この混合物を5時間還流させ、室温まで冷却した。この黄色の混合物を5%HCl水溶液および氷で加水分解した(pH=1)。水層をEt
2Oで2回抽出し、混合有機層をH
2O、5%NaOH水溶液、およびブライン(2回)で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾別した。Et
2Oを大気圧下で蒸留して未精製物を得、これを減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、48%の収率で所望の化合物(26.800g)を得た。
【0072】
【0073】
b)(±)−3−エンド−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オンの製造
3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(29.670g、64.4%、0.157mmol)を、Pd/C(Pd中10%、1.480g、5%(w/w))を加えたEt
2O(300ml)の存在下、室温で2時間水素化した(大気圧)。この混合物を「フィルターセル」を通して濾過し、蒸留によってEt
2Oを除去して未精製物を得、これを蒸留(20mbar、87〜88°C)によってさらに精製して、定量的収率で表題化合物(19.82g)を得た。
【0074】
【0075】
c)(±)−2−エンド−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造:ウィッティッヒ反応による
メチルトリフェニルホスホニウムブロミド(13.31g、36.9mmol)を加えたTHF(40.0ml)を、窒素下、室温で、t−BuOK(6.910g、61.6mmol)で1度に処理した。得られた黄色の混合物を室温で攪拌し、3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−オン(4.0g、30.8mmol)を加えたTHF(16.0ml)を8分間かけて添加し、室温で15分間攪拌した。この混合物を塩化アンモニウムの飽和水溶液に注ぎ、ペンタンで2回抽出した。混合有機層を水とブラインとで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾別した。溶媒を大気圧での蒸留によって除去し、未精製混合物をバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、76%の収率で、無色の油として所望の化合物(2.845g)を得た。
【0076】
【0077】
d)トリメチルシリル−プロピナールの製造
トリメチルシリルエチン(5.0ml、36.10mmol)を含むTHF(25.0ml)を、EtMgBrのTHF溶液(1M、44.0ml、44.0mmol)に、窒素下、10〜15℃で滴下添加した。添加の終了後、この混合物を室温で1時間攪拌し、Et
2O(20.0ml)中のDMF(10.0ml、123.0mmol)の有効に攪拌された混合物に、−25°Cで30分間かけて添加した。この白色の懸濁液を室温に達するまで放置し、1時間攪拌し、30℃で15分間加熱し、0℃で5%H
2SO
4に注いだ。水層をEt
2Oで3回抽出し、混合有機層をNH
4Clの飽和水溶液で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、真空下で溶媒を慎重に除去して未精製物を得、これをバルブ・ツー・バルブ蒸留(20mBar、室温)によってさらに精製して、49%の収率で表題化合物(2.255g)を得た。
【0078】
【0079】
e)エン反応による、1−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−4−トリメチルシラニル−ブタ−3−イン−2−オールの製造
Me
2AlCl(ヘキサン中1M、1.1ml、1.1mmol)を、ジクロロメタン(5.0ml)中にトリメチルシリル−プロピナール(154.0mg、1.22mmol)と2−エンド−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(140.0mg、1.15mmol)とを含む溶液に、窒素下、−78°Cで滴下添加した。この混合物を−78°Cで15分間攪拌し、5%HCl水溶液で加水分解した。次に温度をゆっくりと室温まで上昇させ、CH
2Cl
2で2回抽出した。混合有機層を水、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾別して未精製物を得、これを溶離剤としてシクロヘキサン/AcOEt(97/3)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、59%の収率で表題化合物(148.0mg)を得た。
【0080】
エン反応は、−78°Cでジクロロメタン中の触媒としてBF
3Et
2O(5mol%)を用い、−78°Cで実施することもでき、5分間で完全に変換した。
【0081】
f)1−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−ブタ−3−イン−2−オールの製造
1−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−4−トリメチルシラニル−ブタ−3−イン−2−オールを、室温で1時間、メタノール中の過剰量のK
2CO
3で単に処理することによって、定量的収率で、1−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−ブタ−3−イン−2−オールが得られた。
【0082】
【0083】
実施例2
化合物(II)の製造
a)CuBF
4(CH
3CN)
4を用いた、3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロペン−1−アールの製造
CuBF
4(CH
3CN)
4(0.294g、0.93mmol)を、1−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−ブタ−3−イン−2−オール(3.24g、18.4mmol)の1,2−ジクロロエタン(100ml)溶液を装填した二口丸底フラスコに、窒素下、室温で添加した。この混合物を50℃で140分間攪拌した。この未精製混合物を室温に達するまで放置し、溶離剤としてCH
2Cl
2を用いて、シリカゲルのショートパッドを通して濾過した。真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、96%の収率で表題化合物(3.12g)を得た。
【0084】
【0085】
b)AgBF
4を用いた、3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロペン−1−アールの製造
AgBF
4(20.0mg、0.10mmol)を、1−(3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−ブタ−3−イン−2−オール(371.0mg、2.10mmol)の1,2−ジクロロエタン(10ml)溶液を装填した二口丸底フラスコに、窒素下、室温で添加した。この混合物を50℃の暗所で80分間攪拌した。この未精製混合物を室温に達するまで放置し、溶離剤としてCH
2Cl
2を用いて、シリカゲルのショートパッドを通して濾過した。真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを溶離剤としてシクロヘキサン/AcOEt(97/3)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、46%の収率で表題化合物(172.0mg)を得た。
【0086】
c)添加剤としてのKNO
3の存在下でAgNO
3を用いた、3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロペン−1−アールの製造
AgNO
3(17.6mg、0.10mmol)とKNO
3(107.0mg、1.06mmol)とを、1−(3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−ブタ−3−イン−2−オール(181.0mg、1.03mmol)のTHF/H
2O(2/1、10ml)溶液を装填した二口丸底フラスコに、窒素下、室温で添加した。この混合物を暗所において還流下で6.5時間攪拌し、AgNO
3(18.5mg、0.11mmol)をこの混合物に添加後、室温まで冷却し、暗所で一晩攪拌した。この未精製混合物をEt
2O(10ml)で希釈し、水層をEt
2Oで抽出した。溶離剤としてCH
2Cl
2を用い、シリカゲルのショートパッドを通してこの混合有機層を濾過した。真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを溶離剤としてシクロヘキサン/AcOEt(95/5)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、64%の収率で表題化合物(115.0mg)を得た。
【0087】
実施例3
化合物(III)およびその誘導体の製造
a)化合物(IV):3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロパン−1−アールの製造
Pd/CaCO
3(5%(w/w)、93.0mg)を二口丸底フラスコのメタノール(30ml)中に加え、雰囲気をN
2でパージした後、3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロペン−1−アール(1.886g、10.70mmol)を添加した。室温で、雰囲気を窒素、次いで水素でさらにパージした。この混合物を水素の単一雰囲気下、室温で4.5時間攪拌した。この混合物を「フィルターセル」を通して濾過して未精製物を得、これを溶離剤としてペンタン/Et
2O(97/3)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、85%の収率で表題化合物(1.627g)を得た。
【0088】
【0089】
A)β−サンタロールの製造(ウィッティッヒおよびヒドロキシアルキル化反応による)
ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.35M、11.7ml、15.8mmol)を、THF(125ml)中のエチルトリフェニルホスホニウムヨージド(6.61g、15.8mmol)の攪拌懸濁液に、0℃で15分間かけて添加した。得られた赤色の溶液を−78°Cまで冷却し、3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロパナール(2.55g、14.33mmol)のTHF(16ml)溶液を15分間かけて添加した。−78°Cでさらに5分経過した後、ブチルリチウムのヘキサン溶液(1.35M、12.7ml、17.2mmol)を5分間かけて添加し、この混合物を−78°Cでさらに20分間攪拌した後、2時間で0℃に達するまで放置した。この濃赤色の均一溶液に、乾燥パラホルムアルデヒド(2.60g、86.0mmol)を一度に添加し、この混合物を0℃で30分間攪拌し、室温に達するまで放置した。室温で1時間経過した後、この混合物をNH
4Clの飽和水溶液5.2ml中に注ぎ、CH
2Cl
2で2回抽出した。有機層を水およびブラインで洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させた。溶離剤としてジクロロメタンを用い、シリカゲルのショートパッドを通してこの混合物を濾過し、加圧下で溶媒を除去して未精製物を得た。溶離剤としてシクロヘキサン/AcOEt(90/10)を用いたシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィーによって、粗化合物の精製を実施して、淡黄色の油として純β−サンタロールを得た。さらに減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によって、50%の収率でβ−サンタロールを得た(Z:E=95:5)。
【0090】
【0091】
B)β−サンタロールの製造([1,4]水素化による)
i)化合物(V):2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−エキソ−2−イル)−ペント−2−エナールの製造
3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロパン−1−アール(274.0mg、1.54mmol)を、窒素下、室温でトルエン(15.0ml)に溶解させた。この混合物を加熱還流し、プロピオンアルデヒド(0.4ml、1.96mmol)、およびヘキサメチレンイミンと安息香酸との触媒水溶液(0.12ml、0.616mmol)とをそれぞれ一度に添加した。この添加の終了後、混合物をさらに6時間還流下で加熱した。この混合物を室温まで冷却し、ブラインで2回抽出し、有機層をMgSO
4上で乾燥させ、濾別し、濃縮して未精製物を得、これをシクロヘキサン/AcOEt(95/5)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、80%の収率で表題化合物を得た。
【0092】
【0093】
ii)化合物(IV):酢酸2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−ペンタ−1,3−ジエニルエステルの製造
トルエン(3.0ml)中の2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−イル)−ペント−2−エナール(268.0mg、1.23mmol)の攪拌溶液に、Ac
2O(0.35ml、3.70mmol)、Et
3N(0.70ml、5.02mmol)、および触媒量のDMAP(15.0mg、0.1mmol)を添加した。得られた混合物を22時間加熱還流した。この混合物を室温まで冷却し、ブラインでクエンチし、Et
2Oで2回抽出し、MgSO
4上で乾燥させ、濾別し、濃縮して未精製物を得、これをシクロヘキサン/AcOEt(98/2)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、82%の収率で表題化合物を得た(E:Z=79:21)。
【0094】
【0095】
iii)(2Z)−酢酸2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−ペント−2−エニルエステル(VII)の製造
酢酸2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−ペンタ−1,3−ジエニルエステル(6.80g、純度93%;24.3mmol0.18mmol)を、[(Cp
*)Ru(COD)]BF
4(52mg、0.122mmol)とマレイン酸(230mg、1.95mmol)とを加えた乾燥脱気アセトン(20ml)を用いて、60℃、4barのH
2下で24時間処理した。生成物をペンタン/5% NaOHで抽出し、NaCl飽和水溶液で2回洗浄し、乾燥させ(Na
2SO
4)、バルブ・ツー・バルブ蒸留を行なった:6.80g(81% Zおよび5% E(GCによる);92%)。
【0096】
【0097】
iv)β−サンタロール(III)の製造
室温で1時間、メタノール中の過剰量のK
2CO
3で単に処理することによって、定量的収率でβ−サンタロールを得た。
【0098】
C)全ての点線がC=Cである化合物(III)の製造
i)2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−ペンタ−2,4−ジエン酸エチルエステルの製造
NaH(55%、168.0mg、3.85mmol)とTHF(5.0ml)とを反応器に入れ、この懸濁液に、2−(ジエトキシ−ホスホリル)−プロピオン酸エチルエステル(939.0mg、3.94mmol)を室温で10分間かけて滴下添加した。この混合物を50℃で45分間加熱し、このイリドに、3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロペン−1−アール(566.0mg、3.21mmol)を加えたTHF(2.0ml)を50℃で滴下添加した。添加の終了後、この混合物を1時間還流させた。次にこの混合物を室温まで冷却し、5%HCl水溶液を用いて加水分解した。この反応物をEt
2Oで2回抽出した。混合有機層を水、NaHCO
3飽和水溶液、およびブラインで洗浄した。溶液をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾別し、真空下で溶媒を除去して未精製物を得、これを減圧下でのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、78%の収率で表題化合物(651.0mg)を得た。
【0099】
【0100】
ii)2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−ペント−2.4−ジエン−1−オールの製造
Dibal−H(トルエン中1M、5.5ml、5.5mmol)を、ジクロロメタン(20.0ml)中の2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−ペンタ−2,4−ジエン酸エチルエステル(651.0mg、2.50mmol)の攪拌溶液に、窒素下、−78°Cで25分間かけて添加した。得られた混合物を−78°Cで70分間攪拌し、0℃に設置して5%HCl水溶液およびブラインでクエンチした。この混合物をCH
2Cl
2で2回抽出し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾別し、濃縮して未精製物を得、これを溶離剤としてシクロヘキサン/AcOEt(9/1)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して、83%の収率で表題化合物(453.0mg)を得た。
【0101】
【0102】
実施例4
(−)−β−サンタロールの製造
a)(1S,2S,4R)−2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造:エナンチオ選択的およびエキソ選択的ディールス・アルダー反応による
(MacMillan et coll., J. Am. Chem. Soc. 2000, 122, 4243、およびPCT国際出願第2003002491号による)
MeOH/水(95:5)中の(2S,5S)−(−)−2−tert−ブチル−3−メチル−5−ベンジル−4−イミダゾリジノン・HCl(0.1当量)の溶液を、室温で24時間、シクロペンタジエン(3モル当量)およびクロトンアルデヒド(1モル当量)で処理した。エキソ環化付加物とエンド環化付加物(ともに71% ee)の72:28混合物(CHOに対するエキソ/エンド)をLiAlH
4(1モル当量)を加えたEt
2Oを用いて25〜30℃で還元し、30%の収率(2段階)で、相当するエキソ−メチル−ノルボルネノールおよびエンド−メチル−ノルボルネノールを得た。これらの化合物はキラルSFCで分離することができた(超臨界流体クロマトグラフィー:OD−Hカラム;共溶媒:MeOH:5%(2分)、次いで+1% MeOH/分;流速:2ml/分;200bar;1番目のエキソ主ピーク、2番目のエキソ小ピーク、3番目のエンド主ピーク、4番目のエンド小ピーク)。これらの既知の化合物の鏡像体の豊富化は、結晶化によって実施することができる(Seebach et coll., J. Org. Chem. 1995, 60, 1788)。エキソ体が豊富なメチル−ノルボルネノールを水素化した(5%の10% Pd/C;Et
2O、収率99%)。このエキソ体が豊富なメチルノルボルナノールを、0℃で17時間、Ac
2O(1.2モル当量)、NEt
3(2.0モル当量)、4−ジメチルアミノピリジン(5mol%)、トルエンで処理して、74%の収率でエキソ体が豊富なアセテートを得た。そのようにして得た化合物をペンタン(5%)中で希釈し、窒素流下、石英片を充填した30cmのカラムを通して610°Cで熱分解し、収率約80%で、光学活性なエンド体が豊富な表題化合物を得た。
備考:この化合物(エキソ体が豊富なものではない)は、Joachimsmann−Dufresne, Blanchard, Bull. Soc. Chim. France 1968, 385により、相当するアセテートの熱分解(ロングカラム、510℃)によって製造することもできる。実際に、Blanchard et coll.(Bull. Soc. Chim. France 1968, 385; Bull. Soc. Chim. France 1972, 4770)は、表題化合物(エキソ体が豊富なラセミ体)をシクロペンタジエンおよびクロトンアルデヒドから製造し、還元/水素化を一段階で実施している(H
2、Raney−Ni、90bar、110℃)。
【0103】
このようにして得た表題化合物は、実施例1の方法B、c)で得た化合物のものと一致するNMR特性を有した。
【0104】
a’)(1S,2S,4R)−2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの製造:エナンチオ選択的およびエキソ選択的ディールス・アルダー反応による
(Hayashi et al., Angew. Chem. Int. Ed. 2008, 47, 6634による)
(S)−(+)−2−[ビス−(3,5−トリフルオロメチルフェニル)トリメチルシリルオキシ−メチル]ピロリジニウムペルクロラート(5mol%)、水、新たに蒸留したクロトンアルデヒド(1モル当量)、およびシクロペンタジエン(3モル当量)の不均一混合物を、室温で24時間攪拌した。エキソ環化付加物とエンド環化付加物(それぞれ95% ee、76% ee)の72:28混合物(CHOに対するエキソ/エンド)を、NaBH
4(1モル当量)を加えたMeOHを用いて25〜30℃で還元し、49%の収率(2段階)で、相当するエキソ−メチル−ノルボルネノールおよびエンド−メチル−ノルボルネノールを得た。これらの化合物の鏡像体過剰率は、キラルキャピラリーカラム(CP−Chirasil−DEX CB (25×0.25mm、Chrompack社))を用いた、相当するトリフルオロアセテートのキラルGCによって判定した(Seebach et coll., J. Org. Chem. 1995, 60, 1788)。メチル−ノルボルネノールを水素化した(5%の10% Pd/C;Et
2O、収率99%)。このメチルノルボルナノールをClCOOEt(2モル当量)、ピリジン(2.0モル当量)、およびトルエンを用いて、0℃で90分間、室温で30分間処理することにより、91%の収率で相当するメチルカーボネートを得た。このようにして得た化合物をペンタン(5%)中で希釈し、窒素流下、3mのカラムを通して415°Cで熱分解し、収率約90%および91% eeで、光学活性なエンド体が豊富な表題化合物(キラルGC:1番目の主ピーク(分離不良))を、エキソ化合物(エンド/エキソ=72:28;エキソ:約54% ee(2番目の主ピーク))とともに得た。
【0105】
このようにして得た表題化合物は、実施例1の方法B、c)で得た化合物のものと一致するNMR特性を有した。
【0106】
b)(lR,4S)−1−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−ブタ−3−イン−2−オールの製造:エン反応による
Me
2AlCl(ヘキサン中1M、 23.7ml、23.7mmol)を、少量のBHT結晶を含有するジクロロメタン(80ml)中のトリメチルシリル−プロピナール(3.74g;純度80%、23.7mmol)および(1S,2S,4R)−2−エンド−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(4.25;純度65%;エキソ異性体25%含有;22.6mmol)の溶液に、窒素下、−78°Cで滴下添加した。この混合物を−78°Cで15分間攪拌し、5%HCl水溶液中に注いだ。生成物をエーテルで抽出した。混合有機層を水、濃NaHCO
3溶液、ブラインで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾別して未精製物を得、これをバルブ・ツー・バルブ蒸留して(0.07mbar/オーブン温度120℃)、(1R,4S)−1−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−4−トリメチルシラニル−ブタ−3−イン−2−オール(4.84g;純度66%)を得た。これをMeOH(50ml)に溶解させ、室温で30分間、K
2CO
3(3.23g、23.4mmol)で処理した。通常の抽出(ペンタン/水)およびバルブ・ツー・バルブ蒸留によって、表題化合物(3.09g)を得た。フラッシュクロマトグラフィー(SiO
2;シクロヘキサン/AcOEt=9:1)により、純粋な表題化合物(2.62g;66%)を得た。
【0107】
このようにして得た表題化合物は、実施例1の方法A、f)で得た化合物のものと一致するNMR特性を有した。
【0108】
c)CuBF
4(CH
3CN)
4を用いた、(1S,2S,4R)−3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロペン−1−アールの製造
ラセミ化合物に関して上記に記載したとおりに実施した(実施例2のa参照)。(lR,4S)−1−(3−メチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−2−イル)−ブタ−3−イン−2−オール(2.02g;11.5mmol)から出発して、1.91g(94%)の表題化合物を得た。キラルGC:91% ee(1番目の主ピーク)。低温結晶化により、97% eeの表題化合物(1.67g)を得た。
【0109】
[α]
D20:−267.4(CHCl
3;c=1.06)。
【0110】
このようにして得た表題化合物は、実施例2のa)で得た化合物のものと一致するNMR特性を有した。
【0111】
d)(1S,2R,4R)−3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロパン−1−アールの製造
ラセミ化合物に関して上記に記載したとおりに実施したが(実施例3のa参照)、ただし溶媒としてMeOH/水(96:4)を使用した。
【0112】
(1S,2S,4R)−3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロペン−1−アール(894mg;5.08mmol)から出発して、769mg(85%)の表題化合物を得た。キラルGCによる分離なし。
【0113】
[α]
D20:−112.3(CHCl
3;c=0.86)。
【0114】
このようにして得た表題化合物は、実施例3のa)で得た化合物のものと一致するNMR特性を有した。
【0115】
e)(1S,2R,4R)−2−メチル−5−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−エキソ−2−イル)−ペンタ−2−エナールの製造
ラセミ化合物に関して上記に記載したとおりに実施した(実施例3のB)i)参照)。(1S,2R,4R)−3−(2−メチル−3−メチレン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エキソ−イル)−プロパン−1−アールから出発して、純度92%、収率90%で表題化合物を得た。キラルGCによる分離なし。
【0116】
[α]
D20:−99.8(CHCl
3;c=1.14)。
【0117】
このようにして得た表題化合物は、得られた化合物(実施例3のB)i)参照)のものと一致するNMR特性を有した。
【0118】
f)(−)−β−サンタロールの製造
ラセミ化合物に関する手順(化合物IVおよびVIIを介する)を適用して(実施例3のB参照)、80%の収率で、94/6 Z/E−混合物として(−)−β−サンタロールを得た。クロマトグラフィー(SiO
2;シクロヘキサン/AcOEt=9:1)によって、97% eeの純粋なZ−(−)−β−サンタロールを得た。
【0119】
[α]
D20:−104.3(CHCl
3;c=0.76)。
【0120】
このようにして得た表題化合物は、実施例3のB)で得た化合物のものと一致するNMR特性を有した。