(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
径方向に延びる翼形部と、前記翼形部の径方向外側に配される外側シュラウドと、を備え、前記外側シュラウドが、軸方向、および、周方向に延びるシュラウド本体部と、前記シュラウド本体部の径方向外側に設けられ径方向外側に突出するとともに周方向に延びる径方向突出部、および、前記径方向突出部から軸方向に突出するとともに周方向に延びる係合部を備えるフック部と、を有し、静翼支持部材を介して車室の内部に支持される静翼の改造方法であって、
前記係合部が、前記静翼支持部材と径方向に接触するシール面を周方向全体にわたって連続して有するように、前記フック部の周方向の少なくとも一部に、軸方向または径方向に凹む凹部を形成する凹部加工工程を含む静翼の改造方法。
軸方向、および、周方向に延びる分割環本体部と、前記分割環本体部の径方向外側に設けられ、径方向外側に突出するとともに周方向に延びる径方向突出部と、前記径方向突出部から軸方向に突出するとともに周方向に延びる係合部と、を備えるフック部と、を有し、分割環支持部材によって車室の内部に支持され、環状の高温ガス流路の外周面を画定するガスタービンの分割環の改造方法であって、
前記係合部が、前記分割環支持部材と径方向に接触するシール面を周方向全体にわたって連続して有するように、前記フック部の周方向の少なくとも一部に、軸方向に凹む凹部を形成する凹部加工工程を含む分割環の改造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように応力低減のためにフックに対して凹部を形成し、この凹部を埋めるようにシール組立体を配置した場合、部品同士の隙間から冷却空気が漏れてしまう。そのため、ガスパスに流れ込む漏れ空気量が増加して、ガスタービンの性能が低下してしまう可能性がある。
この発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、漏れ空気量の増加を抑制しつつ、熱応力を低減することができる静翼、ガスタービン、分割環、静翼の改造方法、および、分割環の改造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために以下の構成を採用する。
この発明の第一態様によれば、静翼は、径方向に延びる翼形部と、前記翼形部の径方向外側に配される外側シュラウドと、を備え、静翼支持部材によって車室の内部に支持される静翼であって、前記外側シュラウドは、軸方向、および、周方向に延びるシュラウド本体部と、前記シュラウド本体部の径方向外側に設けられ、径方向外側に突出するとともに周方向に延びる径方向突出部と、前記径方向突出部から軸方向に突出するとともに周方向に延びる係合部と、を備えるフック部と、を有し、前記フック部は、周方向の少なくとも一部に軸方向または径方向に凹む凹部を有し、前記係合部は、前記静翼支持部材と径方向に接触するシール面を周方向全体にわたって連続して有する。
このように構成することで、凹部によってフック部の剛性を低下させることができるため、加熱によるシュラウド本体部の変形に、フック部を追従して変形させることができる。さらに、フック部が軸方向又は径方向に凹む凹部を有しつつ、凹部によってシール面が周方向に分断されない。その結果、漏れ空気量の増加を抑制しつつ、熱応力を低減することができる。
【0007】
この発明の第二態様によれば、静翼は、第一態様における前記フック部が、軸方向の上流側に配される前部フックを備え、前記前部フックの前記係合部は、径方向の内側にシール面を備えてもよい。
このように構成することで、径方向内周側にシール面を有した前部フックの剛性を、シール面を分断することなしに凹部によって低下させることができる。その結果、漏れ空気量の増加を抑制しつつ、前部フック側においてシュラウド本体部に作用する熱応力を低減することができる。
【0008】
この発明の第三態様によれば、静翼は、第二態様において、前記凹部が配される周方向の範囲が、前記翼形部の前縁の周方向位置を含んでもよい。
このように構成することで、前縁の高応力部における応力低減を図ることができる。
【0009】
この発明の第四態様によれば、静翼は、第一から第三態様の何れか一つの態様における前記フック部が、軸方向の下流側に配される後部フックを備え、前記後部フックの前記係合部が、径方向の外周側にシール面を備えてもよい。
このように構成することで、径方向の外周側にシール面が形成された後部フックの剛性を凹部によって低下させて、後部フック側においてシュラウド本体部に作用する熱応力を低減できる。
【0010】
この発明の第五態様によれば、静翼は、第四態様において、前記凹部が形成される周方向の範囲は、前記翼形部の後縁の周方向位置を含んでもよい。
このように構成することで、翼形部の後縁の高応力部における応力低減を図ることができる。
【0011】
この発明の第六態様によれば、静翼は、第一、第二、第四態様の何れか一つの態様において、前記凹部が形成される周方向の範囲は、前記フック部の周方向中央を含んでもよい。
このように構成することで、シュラウド曲げ変形に対するフック部剛性の効果的な低減を図ることができる。
【0012】
この発明の第七態様によれば、分割環は、分割環支持部材によって車室の内部に支持され、環状の高温ガス流路の外周面を画定するガスタービンの分割環であって、軸方向、および、周方向に延びる分割環本体部と、前記分割環本体部の径方向外側に設けられ、径方向外側に突出するとともに周方向に延びる径方向突出部と、前記径方向突出部から軸方向に突出するとともに周方向に延びる係合部と、を備えるフック部と、を有し、前記フック部は、周方向の少なくとも一部に軸方
向に凹む凹部を有し、前記係合部は、前記分割環支持部材と径方向に接触するシール面を周方向全体にわたって連続して有する。
このように構成することで、凹部によって分割環のフック部の剛性を低下させることができるため、加熱による分割環本体部の変形に、フック部を追従して変形させることができる。さらに、フック部が軸方
向に凹む凹部を有し、係合部がシール面を周方向全体にわたって連続して有しているため、凹部によってシール面を周方向に分断することがない。その結果、漏れ空気量の増加を抑制しつつ、熱応力を低減することができる。
【0013】
この発明の第八態様によれば、ガスタービンは、第一から第六態様の何れか一つの態様の静翼、および、第七態様の分割環のうち少なくとも一方を備える。
このように構成することで、漏れ空気量の増加を抑えつつ、シュラウド本体部の熱応力、分割環本体部の熱応力を抑制できるため、ガスタービンの性能向上、および、信頼性向上を図ることができる。
【0014】
この発明の第九態様によれば、静翼の改造方法は、径方向に延びる翼形部と、前記翼形部の径方向外側に配される外側シュラウドと、を備え、前記外側シュラウドが、軸方向、および、周方向に延びるシュラウド本体部と、前記シュラウド本体部の径方向外側に設けられ径方向外側に突出するとともに周方向に延びる径方向突出部、および、前記径方向突出部から軸方向に突出するとともに周方向に延びる係合部を備えるフック部と、を有し、静翼支持部材を介して車室の内部に支持される静翼の改造方法であって、前記係合部が、前記静翼支持部材と径方向に接触するシール面を周方向全体にわたって連続して有するように、前記フック部の周方向の少なくとも一部に、軸方向または径方向に凹む凹部を形成する凹部加工工程を含む。
このようにすることで、メンテナンス時などに、既存の静翼に対して凹部を形成して、漏れ空気量、および、熱応力を改善することができる。
【0015】
この発明の第十態様によれば、分割環の改造方法は、軸方向、および、周方向に延びる分割環本体部と、前記分割環本体部の径方向外側に設けられ、径方向外側に突出するとともに周方向に延びる径方向突出部と、前記径方向突出部から軸方向に突出するとともに周方向に延びる係合部と、を備えるフック部と、を有し、分割環支持部材によって車室の内部に支持され、環状の高温ガス流路の外周面を画定するガスタービンの分割環の改造方法であって、前記係合部が、前記分割環支持部材と径方向に接触するシール面を周方向全体にわたって連続して有するように、前記フック部の周方向の少なくとも一部に、軸方
向に凹む凹部を形成する凹部加工工程を含む。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る静翼、ガスタービン、分割環、静翼の改造方法、および、分割環の改造方法によれば、漏れ空気量の増加を抑制しつつ、熱応力を低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第一実施形態)
以下、この発明の一実施形態に係る静翼、ガスタービン、静翼の改造方法、および、分割環の改造方法について説明する。
図1は、この発明の第一実施形態におけるガスタービンの概略図である。
図2は、この発明の第一実施形態におけるガスタービンの要部断面図である。
図1に示すように、この実施形態のガスタービン1は、圧縮機2と、燃焼器3と、タービン部4と、を備えている。
【0019】
圧縮機2は、空気取込口から空気を取り込んで圧縮空気を生成する。
燃焼器3は、圧縮機2の吐出口に接続されている。この燃焼器3は、圧縮機2から吐出された圧縮空気に燃料を噴射して高温・高圧の燃焼ガスGを生成する。
【0020】
タービン部4は、ケーシング(車室)6と、ロータ7とを備えている。
ケーシング6は、ロータ軸Ar(
図2参照)を中心として筒状に形成されている。
ロータ7は、ロータ軸Arを中心としてケーシング6に回転可能に支持されている。
タービン部4は、燃焼器3から送り出された燃焼ガスGを作動流体としてロータ7を回転駆動する。このタービン部4により発生した駆動力は、ロータ7に連結された発電機(図示無し)等に伝達される。以下の説明においては、タービン部4のロータ軸Arにおける圧縮機2側を上流側、その反対側を下流側と称する。また、ロータ軸Arの延びる方向を単に軸方向Da、ロータ軸Arの周方向を単に周方向Dc、ロータ軸Arに対する径方向を単に径方向Drと称し、さらに径方向で、ロータ軸Arに近づく側を径方向内側、ロータ軸Arから遠ざかる側を径方向外側と称する。
【0021】
図2に示すように、ロータ7は、ロータ本体10と、動翼段11とを備えている。ロータ7は、ロータ軸Arを中心として、軸方向Daに延びている。動翼段11は、軸方向Daに並んでロータ本体10に複数取り付けられている。各動翼段11は、複数の動翼12を有している。これら複数の動翼12は、ロータ軸Arに対して周方向Dcに並んでロータ軸Arに取り付けられている。
【0022】
動翼12は、動翼本体13と、プラットホーム14と、翼根15と、を有している。動翼本体13は、径方向Drに延びている。プラットホーム14は、動翼本体13の径方向内側に設けられている。翼根15は、プラットホーム14の径方向内側に設けられている。動翼12は、翼根15がロータ本体10に埋め込まれることで、ロータ本体10に固定されている。
【0023】
複数の動翼段11の各上流側には、静翼段17が配置されている。各静翼段17は、いずれも、複数の静翼18が周方向Dcに並んで構成されている。静翼18は、静翼本体(翼形部)19と、外側シュラウド20と、内側シュラウド21と、を有している。静翼本体19は、径方向Drに延びている。外側シュラウド20は、静翼本体19の径方向外側に設けられている。内側シュラウド21は、静翼本体19の径方向内側に設けられている。
【0024】
動翼段11、および、静翼段17の径方向外側、且つ、ケーシング6の径方向内側には、翼環23が配置されている。この翼環23は、ロータ軸Arを中心として筒状に形成されている。翼環23は、ケーシング6に固定されている。また、翼環23は、静翼18の外側シュラウド20に対して、遮熱環24(静翼支持部材)を介して連結されている。
【0025】
軸方向Daで隣接する外側シュラウド20同士の間には、分割環25が配置されている。分割環25は、ロータ軸Arを中心として周方向Dcに複数並んで配置されている。周方向Dcに並んだ複数の分割環25は、環状を成している。分割環25の径方向内側には、動翼段11が配置されている。周方向Dcに並んだ複数の分割環25は、いずれも、遮熱環24により翼環23に連結されている。
【0026】
燃焼器3は、尾筒27と、燃料供給器28と、を備えている。尾筒27は、高温高圧の燃焼ガスGをタービン部4に送る。燃料供給器28は、尾筒27内に燃料、および、圧縮空気を供給する。尾筒27の下流側の出口フランジ29には、第一静翼段17aを構成する静翼18aの内側シュラウド21、および、外側シュラウド20が接続されている。
【0027】
圧縮機2からの圧縮空気Aは、タービン部4のケーシング6内に入り、燃焼器3の周りから燃焼器3の燃料供給器28内に流れ込む。燃料供給器28はこの圧縮空気Aと共に外部からの燃料を尾筒27内に供給する。尾筒27内では、燃料が燃焼して、燃焼ガスGが生成される。この燃焼ガスGは、静翼段17を構成する複数の静翼18の内側シュラウド21と外側シュラウド20との間、その下流側の動翼段11を構成する複数の動翼12のプラットホーム14とこの動翼12の径方向外側に配置されている分割環25との間を通る過程で、動翼本体13に接して、ロータ7をロータ軸Ar回りに回転させる。
【0028】
すなわち、燃焼ガスGが流れる環状の燃焼ガス流路Pgは、静翼18の内側シュラウド21、および、外側シュラウド20と、動翼12のプラットホーム14、および、これに対向する分割環25とで画定されている。上述した静翼18、動翼12及び分割環25は、いずれも、高温高圧の燃焼ガスGに接する高温部品である。
【0029】
圧縮機2からの圧縮空気Aの一部、又は圧縮機2から抽気された圧縮空気Aは、静翼18の外側シュラウド20及び内側シュラウド21を冷却するために、この外側シュラウド20の径方向外側や内側シュラウド21の径方向内側の領域にも流れ込む。また、ケーシング6の径方向内側であって翼環23の径方向外側に領域にも、圧縮機2からケーシング6内に流れ込んだ前述の圧縮空気Aの一部、又は圧縮機2から抽気した圧縮空気Aが供給される。圧縮空気Aは、分割環25を冷却するために、翼環23を介して、その径方向内側に配置されている分割環25の径方向外側に流れ込む。
【0030】
図3は、この発明の第一実施形態における静翼分割体の斜視図である。
図4は、この発明の第一実施形態における外側シュラウドの周辺を周方向から見た図である。
図3に示すように、上述した静翼段17は、複数の静翼分割体(セグメント)30を備えている。静翼段17は、複数の静翼分割体30を周方向に複数連結することで全体として環状に形成される。この実施形態における静翼分割体30は、3つの静翼本体19と、外側シュラウド20と、内側シュラウド21とを備えている。外側シュラウド20と、内側シュラウド21とは、3つの静翼本体19と一体に形成されている。
【0031】
外側シュラウド20は、シュラウド本体部31と、フック部32とを備えている。
シュラウド本体部31は、軸方向Da、および、周方向Dcに延びている。このシュラウド本体部31は、周方向Dcに湾曲する板状に形成されている。シュラウド本体部31は、その内周面から径方向内側に向かって上述した静翼本体19が延びている。
【0032】
フック部32は、上述した遮熱環24に静翼分割体30を係合するために形成されている。フック部32は、前部フック33と、後部フック34と、を備えている。
図3、
図4に示すように、前部フック33は、軸方向Daで外側シュラウド20の上流側に配される。この実施形態における前部フック33は、外側シュラウド20の上流側の端縁20aに配されている。前部フック33は、外側シュラウド20から径方向外側に向かって突出している。また、前部フック33は、周方向Dcに外側シュラウド20の全幅にわたって連続して形成されている。
【0033】
前部フック33は、軸方向Daの下流側に向かって突出する突出部36を備えている。この突出部36は、前部フック33の径方向外側の端部から突出している。
【0034】
後部フック34は、軸方向Daで外側シュラウド20の下流側に配される。この実施形態における前部フック33は、外側シュラウド20の下流側の端縁20bに配されている。後部フック34は、前部フック33と同様に、外側シュラウド20から径方向外側に向かって突出している。また、後部フック34は、周方向Dcに外側シュラウド20の全幅にわたって連続して形成されている。後部フック34は、軸方向Daの上流側に向かって突出する突出部37を有している。
【0035】
図4に示すように、上述した遮熱環24には、前部フック33と係合する前部係合部39が形成されている。この前部係合部39は、前部フック33の下流側に隣接するように径方向内側に向かって延びている。この前部係合部39には、前部フック33の突出部36を径方向内側から支持する支持部41が形成されている。支持部41は、軸方向Daの下流側から上流側に向かって延びている。支持部41は、前部フック33と同様に、周方向に連続して形成されている。ここで、静翼18は、上流から下流に向かって流れる燃焼ガスGによって押されるため、前部フック33には径方向内側に向かって変位しようとする力が作用する。そのため、前部フック33の突出部36の径方向内側は、遮熱環24の支持部41の径方向外側に押し付けられ、その間隙42aは小さくなっている。遮熱環24と前部フック33との間から冷却空気が燃焼ガス流路Pg(
図2参照)に漏れ出す流路においては、この間隙42aが最も断面積が狭い。そのため、前部フック33の突出部36は、その径方向内側を向く面が周方向で連続したシール面42となっている。
【0036】
さらに遮熱環24には、後部フック34と係合する後部係合部40が形成されている。この後部係合部40は、後部フック34の上流側に隣接するように径方向内側に向かって延びている。この後部係合部40には、後部フック34の突出部37を径方向内側から支持する支持部43が形成されている。支持部43は、軸方向Daの上流側から下流側に向かって延びている。支持部43は、後部フック34と同様に、周方向に連続して形成されている。ここで、上流から下流に向かって流れる燃焼ガスGによって静翼18が押されると、後部フック34には径方向外側に向かって変位しようとする力が作用する。そのため、後部フック34の突出部37の径方向外側は、遮熱環24の径方向内側面24aに押し付けられ、その間隙45aは小さくなっている。遮熱環24と後部フック34との間から冷却空気が燃焼ガス流路Pg(
図2参照)に漏れ出す流路においては、この間隙45aが最も断面積が狭い。そのため、後部フック34は、その径方向外側を向く面が周方向で連続したシール面45となっている。
【0037】
後部フック34は、その径方向外側を向く面、すなわち、径方向外側に向かって立ち上がるフック本体部44と、突出部37との互いの径方向外側を向く面がシール面45となっている。ここで、この実施形態におけるフック本体部44の径方向外側を向く面と、突出部37の径方向外側を向く面とは、周方向で連続した一つのシール面45を形成している。シール面42,45は、それぞれ外側シュラウド20よりも径方向外側に供給されている冷却空気が、外側シュラウド20よりも径方向内側の燃焼ガス流路Pgに漏れ出すことを抑制している。
【0038】
図5は、この発明の第一実施形態における凹部を径方向外側から見た図である。
図6は、この発明の第一実施形態における凹部を軸方向の上流側から見た図である。
図3から
図6に示すように、後部フック34には、凹部50が形成されている。凹部50は、後部フック34の周方向の少なくとも一部に形成されている。また、後部フック34の径方向外側には、シール面45が配されている。凹部50はシール面45の一部を切り取るように設けられているものの、シール面45は凹部50の軸方向Da下流側を含む後部フック34の全幅にわたって周方向に連続して配されている。
【0039】
この実施形態における凹部50は、静翼分割体30の周方向Dcの中央部、換言すれば、フック部32の周方向中央を含む位置に形成されている。また、この実施形態における凹部50は、後部フック34に対して軸方向Daの上流側から下流側に向かって凹むように形成されている。より具体的には、凹部50は、軸方向Daに沿ってみたときに突出部37側からフック本体部44に至り、かつフック本体部44の軸方向Da下流側までは貫通しない範囲で凹むように形成されている。凹部50の下流側の面51は、フック本体部44の軸方向Daにおける中央部C1(
図4参照)と、第二突出部38との間に配されている。
【0040】
凹部50は、下流側の面51と、径方向内側の面52と、周方向両側の面53とを備えている。下流側の面51は、径方向Dr、且つ、周方向Dcに延びている。径方向内側の面52は、軸方向Da、且つ、周方向Dcに延びている。周方向両側の面53は、径方向Dr、且つ、軸方向Daに延びている。これら下流側の面51と、径方向内側の面52と、周方向両側の面53とが互いに接続される各隅部は、曲面により接続されている。
【0041】
次に、上述した第一実施形態のガスタービン1における静翼18の改造方法について図面を参照しながら説明する。この実施形態における静翼の改造方法は、いわゆる既設のガスタービン1に対して行う改造方法である。なお、後述する分割環25の改造方法も、以下に説明する静翼の改造方法と同様であるため、分割環25の改造方法についての詳細説明は省略する。
図7は、この発明の第一実施形態における静翼の改造方法を示すフローチャートである。
まず、事前準備として、遮熱環24から静翼18を取り外す。
次いで、
図7に示すように、静翼18のフック部32に対して切削加工等により上述した凹部50を形成する(ステップS01;切欠き加工工程)。
その後、後工程として、フック部32を遮熱環24から取り外した手順とは逆手順で、静翼18を遮熱環24に取り付ける作業を行い、上記静翼18の改造を終了する。
【0042】
したがって、上述した第一実施形態によれば、凹部50によってフック部32の後部フック34の剛性を低下させることができる。そのため、加熱によるシュラウド本体部31の変形に、後部フック34を追従して変形させることができる。さらに、フック部が軸方向又は径方向に凹む凹部50を有しつつ、凹部50によって突出部37のシール面45が周方向Dcに分断されない。そのため、漏れ空気量の増加を抑制しつつ、静翼18に作用する熱応力を低減して静翼18を長寿命化することができる。
【0043】
さらに、複数の静翼分割体30からなる静翼18において、各静翼分割体30に凹部50を形成することで、凹部50を容易に形成することができる。その結果、後部フック34の剛性を容易に低下させることができる。
【0044】
また、漏れ空気量の増加を抑制しつつ、シュラウド本体部31の熱応力を抑制できるため、ガスタービンの性能向上、および、信頼性向上を図ることができる。
【0045】
(第二実施形態)
次に、この発明の第二実施形態における静翼について説明する。この第二実施形態の静翼は、上述した第一実施形態の静翼の前部フック33にも切欠き部を設けている。そのため、第一実施形態と同一部分に同一符号を付して説明するとともに、重複説明を省略する。
【0046】
図8は、この発明の第二実施形態における
図4に相当する断面図である。
図8に示すように、前部フック33は、シュラウド本体部31の軸方向Daの上流側に配されている。前部フック33は、軸方向Daの下流側に突出する突出部36を有している。突出部36は、後部フック34のシール面45(図中、太線で示す)が径方向外側の面であるのに対して、径方向内側の面が遮熱環24との間をシールするシール面42(図中太線で示す)となっている。
【0047】
前部フック33は、凹部60を備えている。凹部60は、前部フック33の周方向Dcの少なくとも一部に形成されている。この凹部60は、少なくとも軸方向Daにシール面42が配されている。また凹部60は、前部フック33に対して軸方向Daに向かって凹むように形成されている。
【0048】
より具体的には、凹部60は、突出部36のシール面42の軸方向Daの下流側の部分60aから、フック本体部61の径方向外側の部分60bを経由して、フック本体部61の軸方向Daの上流側の部分60cに回り込むように形成されている。つまり、凹部60は、シール面42の軸方向Daの下流側の部分60aと、フック本体部61の軸方向Daの上流側の部分60cとにおいて、それぞれシール面42の軸方向Daに配されている。また、凹部60の上流側の部分60cは、突出部36の端面36aから、シール面42を挟んで軸方向Daの上流側に配されている。
【0049】
したがって、上述した第二実施形態によれば、凹部60によって前部フック33の剛性を低下させることができる。そのため、シュラウド本体部31における軸方向Daの上流側における熱応力を低減できる。その一方で、シール面42が前部フック33の全幅にわたって周方向に連続するため、前部係合部39と前部フック33との間のシール性能が確保される。その結果、前部フック33の剛性を低下させるにあたって漏れ空気量を増加させてしまうことがない。
【0050】
また、シール面42に対して軸方向Daの下流側、および、上流側の両方に凹部60が形成されるため、十分に前部フック33の剛性低下を図ることができる。その結果、シュラウド本体部31の軸方向Daの上流側に作用する熱応力を十分に低減することができる。
【0051】
(第一変形例)
図9は、この発明の各実施形態の第一変形例における後部フックの断面図である。
上述した各実施形態においては、後部フック34のシール面45に対して、軸方向Daの上流側に凹部50を形成する場合を一例に説明した。しかし、凹部50の軸方向Daにシール面45が配されていればよく、例えば、
図9に示すように、凹部50を、シール面45の軸方向Daの下流側に形成してもよい。
【0052】
(第二変形例)
図10は、この発明の各実施形態の第二変形例における前部フックの断面図である。
上述した第二実施形態においては、前部フック33のシール面42に対して、軸方向Daの上流側、および、下流側の両方に凹部60が形成される場合を一例に説明した。しかし、凹部60は、シール面42に対して、軸方向Daの上流側、および、下流側の両方に形成される場合に限られない。例えば、
図10に示すように、フック本体部61の径方向外側の部分60bから、フック本体部61の軸方向Daの上流側の部分60cに回り込むように形成してもよい。すなわち、第二実施形態におけるシール面42の軸方向Daの下流側の部分60aを省略してもよい。
【0053】
(第三変形例)
図11は、この発明の各実施形態の第三変形例における外側シュラウドの斜視図である。この
図11においては、上述した外側シュラウド20のみを簡略化して示している(
図12も同様)。
上述した各実施形態の静翼分割体30の外側シュラウド20は、凹部50を周方向Dcの中央部に一つだけ備える場合について説明した。しかし、凹部50は、この構成に限られない。例えば、
図11の第三変形例に示すように、凹部50を周方向Dcで複数箇所に形成してもよい。また、凹部50の個数は2つに限られず、3つ以上設けてもよい。このようにすることで、フック部32の剛性を更に低下させることができるため、容易に剛性を調整することができる。ここで、凹部50を一例に説明したが、凹部60を同様に複数設けてもよい。
【0054】
(第四変形例)
図12は、この発明の各実施形態の第四変形例における外側シュラウドの斜視図である。
上述した各実施形態の静翼分割体30の外側シュラウド20は、凹部50を周方向Dcの一部に形成する場合について説明した。しかし、凹部50は、この構成に限られない。例えば、
図12の第四変形例に示すように、周方向Dcで、凹部50を静翼分割体30の長さ寸法の半分の寸法よりも長く形成してもよい。つまり、静翼分割体30の周方向Dcの大部分に凹部50を形成してもよい。このように形成することで、切削加工等の工数を削減しつつ、一つの静翼分割体30に凹部50を複数設ける場合と同様に、フック部32の剛性を更に低下させることができるため、容易に剛性を調整することができる。ここで、凹部50を一例に説明したが、凹部60を同様に周方向Dcに長尺に形成してもよい。
【0055】
この発明は、上述した各実施形態や各変形例に限定されるものではなく、この発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各実施形態や各変形例に種々の変更を加えたものを含む。すなわち、各実施形態や各変形例で挙げた具体的な形状や構成等は一例にすぎず、適宜変更が可能である。
【0056】
例えば、凹部50の形状は、フック部32の剛性を低下させることができれば良く、第一実施形態にて説明した凹部50の形状に限られない。
図13は、この発明の第五変形例における後部フック周辺の拡大斜視図である。
図14は、この発明の第六変形例における後部フック周辺の拡大斜視図である。
上述した実施形態においては、後部フック34に対して凹部50を軸方向Daの上流側から下流側に向けて凹むように形成する場合について説明した。しかし、凹部50の形状は、上記実施形態の形状に限られない。例えば、
図13に示す第五変形例のように、径方向Drに凹むように形成してもよい。
【0057】
さらに、上述した実施形態においては、凹部50の形状が、軸方向Daに垂直な断面視で角溝状となる場合を例示した。しかし、凹部50の形状は、フック部32の剛性を低下させることができる形状であれば上記形状に限られない。例えば、
図14に示す第六変形例のように、軸方向Daに垂直な断面視で丸溝状となるように凹部50を形成してもよい。
【0058】
図15は、この発明の実施形態の第七変形例における外側シュラウドを径方向外側から見た図である。
図16は、この発明の実施形態の第八変形例における外側シュラウドを径方向外側から見た図である。
図17は、この発明の実施形態の第九変形例における外側シュラウドを径方向外側から見た図である。
上述した第一実施形態においては、凹部50,60を、フック部32の周方向中央を含む範囲に形成する場合を例示した。しかし、この構成に限られない。例えば、
図15に示す第七変形例のように、凹部60を、周方向Dcについて見たときに静翼本体19の前縁19aの位置を含むように複数配するようにしてもよい。同様に、
図16に示す第八変形例のように、凹部50を、周方向Dcについて見たときに静翼本体19の後縁19bの位置を含むように複数配するようにしてもよい。
【0059】
シュラウド本体部31と静翼本体19の前縁19aとの結合部、または、シュラウド本体部31と後縁19bとの結合部は、それぞれシュラウド本体部31の変形に加えて静翼本体19の変形が重畳する。そのため、熱応力が高くなる傾向がある。そこで、凹部50,60を、周方向Dcについて見たときに静翼本体19の前縁19aまたは後縁19bの位置を含むように配置すれば、この高応力部の熱応力を効果的に低減できる。なお、
図15においては、凹部60のみを設け、
図16においては凹部50のみを設けているが、凹部60および凹部50を両方とも設けるようにしてもよい。
【0060】
図18は、この発明の実施形態の第十変形例における
図13に相当する拡大斜視図である。
上述した実施形態においては、後部フック34の突出部37が、軸方向Daの上流側に向かって突出する場合について説明した。しかし、突出部37の突出する方向は軸方向Daの上流側に限られない。例えば、
図18に示す第十変形例のように、軸方向Daの下流側に突出するように形成してもよい。なお、
図18の一例においては、凹部50が後部フック34の上流側に形成されているが、凹部50が形成される位置は、この位置に限られない。
【0061】
また、上述した第二実施形態においては、前部フック33に凹部60を形成し、後部フック34に凹部50を形成する場合について説明した。しかし、例えば、後部フック34に凹部50を設けずに、前部フック33にのみに凹部60を形成するようにしてもよい。
【0062】
図19は、この発明の第十一変形例における分割環の斜視図である。
上述した第一、第二実施形態においては、静翼18の外側シュラウド20に凹部50,60を形成する場合について説明した。しかし、凹部50,60は、分割環25にも適用可能である。
【0063】
図19に示すように、分割環25は、分割環本体部70と、フック部71と、を有している。分割環本体部70は、軸方向Da、および、周方向Dcに延びている(
図2参照)。
フック部71は、径方向突出部72と、係合部73と、を備えている。径方向突出部72は、分割環本体部70の径方向Drの外側に設けられている。この径方向突出部72は、径方向Drの外側に突出するとともに周方向Dcに延びている。係合部73は、径方向突出部72から軸方向Daの下流側に突出するとともに周方向Dcに延びている。このフック部71は、周方向Dcの少なくとも一部に軸方向Daまたは径方向Drに凹む凹部74を有している。なお、
図19においては、凹部74が軸方向Daに凹む場合を例示している。係合部73は、遮熱環24(
図2参照、分割環支持部材)と径方向Drに接触するシール面75を周方向Dcの全体にわたって連続して有している。
【0064】
このように分割環25を構成することで、上述した実施形態の外側シュラウド20と同様に、凹部74によってフック部71の剛性を低下させることができる。そのため、加熱による分割環本体部70の変形に、フック部71を追従して変形させることができる。さらに、凹部74によって径方向突出部72のシール面75を周方向Dcに分断することがない。そのため、シール面75を周方向Dcに連続して形成することができる。その結果、漏れ空気量の増加を抑制しつつ、分割環本体部70に作用する熱応力を低減して分割環25を長寿命化することができる。なお、上述した分割環25の凹部74についても、上述した各実施形態および各変形例の静翼18の凹部50と同様、種々形状および配置を採用してもよい。
【解決手段】径方向に延びる翼形部19と、翼形部19の径方向外側に配される外側シュラウド20と、をそれぞれ一体に備え、車室に遮熱環を介して支持され、外側シュラウド20が、軸方向、および、周方向に延びるシュラウド本体部31と、遮熱環に係合する環状のフック部32と、を備え、フック部32が、軸方向の少なくとも一方側に突出し径方向の少なくとも一方にシール面45を有する突出部37を備え、周方向の少なくとも一部に、軸方向にシール面45が配されるように、軸方向に凹む凹部50を備える。