(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
(1)第1の実施の形態:拡散板の光出射面に蛍光体層を直に設けた例
(2)変形例1:拡散板の光入射面に蛍光体層を直に設けた例
(3)変形例2:導光板の光出射面に蛍光体層を直に設けた例
(4)変形例3:導光板の底面に蛍光体層を直に設けた例
(5)変形例4:導光板の光入射面(側面)に蛍光体層を直に設けた例
(6)第2の実施の形態:拡散板の光出射面に蛍光体シートを接着した例
(7)変形例5:拡散板の光入射面に蛍光体シートを接着した例
(8)変形例6:導光板の光出射面に蛍光体シートを接着した例
【0016】
<第1の実施の形態>
[1.表示装置1の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る表示装置1の断面構造を模式的に表すものである。表示装置1は、例えば液晶ディスプレイ等であり、表示パネル20と、この表示パネル20を照明するバックライトとしての光源部12を備えたものである。これらの表示パネル20と光源部12との間には、光源部12の側から順に、拡散板13(基材)、蛍光体層14、保護層15、拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射型偏光フィルム18が順に積層されている。このような積層構造において、拡散板13の表面(光出射面)には、蛍光体層14が直に設けられており、この蛍光体層14の表面に保護層が形成されている。
【0017】
光源部12は、基板11上に複数のLED12aを配置してなり、この光源部12の光出射側に、拡散板13が配設される。LED12aは、例えば青色発光ダイオードから構成されている。なお、一体化されてなる拡散板13および蛍光体層14が、本発明の光学部材に対応している。以下、この拡散板13および蛍光体層14の具体的な構成について説明する。
【0018】
拡散板13は、裏面からの入射光を拡散して強度分布を均一化するものである。拡散板13に用いられる材料としては、透明性、加工性および耐熱性などの観点から、例えばポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)および環状非晶質ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂や、多官能アクリレート、多官能ポリオレフィン、不飽和ポリエステル、エポキシ樹脂などが挙げられる。特に、青色発光ダイオードもしくは近紫外発光ダイオードによって劣化が軽微なものが望ましい。この拡散板13の厚みは、例えば1mm〜3mm程度である。
【0019】
ここで、
図2に、シクロオレフィン樹脂(COP)、ポリカーボネート1,2およびアクリル樹脂における厚み2mmにおける水蒸気透過率(g/m
2/day)を示す。いずれの樹脂材料についても、水蒸気透過率は10g/m
2/day以下であり、厚みにより十分なガスバリア性を発揮し得ることがわかる。すなわち、拡散板13では、この樹脂材料の厚みによりガスバリア性が発揮され、これによって蛍光体層14の保護層としての役割をも果たしている。
【0020】
蛍光体層14は、入射した色光をより長い波長域の色光に変換する蛍光体を含んで構成されている。このような蛍光体としては、例えばLED12aとして青色発光ダイオードを用いた場合、青色光によって励起されて緑色光、赤色光もしくは黄色光等を発生させる蛍光体を適切な配合比で含んだものが挙げられる。黄色変換の蛍光体としては、(Y,Gd)
3(Al,Ga)
5O
12:Ce
3+(通称YAG:Ce
3+)、α−SiAlON:Eu
2+などが挙げられる。黄色もしくは緑色変換の蛍光体としては、 (Ca,Sr,Ba)
2SiO
4:Eu
2+などが挙げられる。緑色変換の蛍光体としては、SrGa
2S
4:Eu
2+、Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce
3+などが挙げられる。赤色変換の蛍光体としては、(Ca,Sr,Ba)S:Eu
2+、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu
2+、CaAlSiN
3:Eu
2+などが挙げられる。このような蛍光体層14は、上記蛍光体を溶媒に混合させたものを、拡散板13の表面に直接、印刷あるいは塗布したのち乾燥させることにより、形成することができる。
【0021】
保護層15は、水蒸気や酸素等のガスバリア性を有する材料により構成されている。保護層15は、例えばポリエチレンテレフタレート等の樹脂フィルムの上に、酸化シリコン(SiO
X)や酸化アルミニウム(Al
2O
3)等よりなる無機膜と他の樹脂層とが積層した構成となっており、厚みは例えば10μm〜1000μmである。
【0022】
表示パネル20は、例えば、TFT(Thin Film Transistor;薄膜トランジスタ)や各種駆動回路および画素電極等が形成されたTFT基板と、カラーフィルタや対向電極等が形成された対向基板との間に液晶層(いずれも図示せず)を封止してなるものである。この表示パネル4の光入射側および光出射側には、それぞれ偏光板(図示せず)が互いに偏光軸が直交するように貼り合わされている。
【0023】
拡散フィルム16は、入射光を拡散して強度分布を均一化するものである。レンズフィルム17は、例えばプリズム状(三角柱状)の突起が同一面内に複数並列したものであり、入射光を例えば正面方向に集光する機能を有する。反射型偏光フィルム18は、一方の偏光を透過させ、他方の偏光を下方(光源部12の側)に反射させて再利用に供するものであり、光利用効率を高めるために設けられている。
【0024】
[2.表示装置1の作用、効果]
本実施の形態では、LED12aから発せられた青色光は、拡散板13を通過したのち、蛍光体層14に入射する。蛍光体層14では、入射した青色光の一部が、蛍光体層14内に含まれている蛍光体により、例えば赤色光や緑色光等に色変換される。すなわち、蛍光体層14を色変換されずにそのまま通過した青色光と、蛍光体層14において色変換された色光との混色により、例えば白色光として蛍光体層14の上方へ出射する。
【0025】
蛍光体層14から出射した白色光は、保護層15を通過したのち、拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射型偏光フィルム18を順に通過して、表示パネル20を照射する。この照射光が、表示パネル20において画像データに基づいて変調されることにより、画像表示が行われる。
【0026】
ここで、
図3を参照して、本実施の形態の比較例に係る表示装置100について説明する。表示装置100は、基板101上に複数のLED102aを配置してなる光源部102の側から順に、拡散板103、蛍光体シート104、拡散フィルム107、レンズフィルム108、反射型偏光フィルム109および表示パネル110を備えている。蛍光体シート104は、一対のフィルム106a,106b同士の間に、色変換を行う蛍光体層105を挟みこんだものである。すなわち、光源部102と表示パネル110との間において、拡散板103と拡散フィルム107との間に、これらの光学部材とは別体として蛍光体シート104が配設されている。このため、表示装置100では、蛍光体シート104と隣接する他の光学部材、例えば拡散板103との間に、空気層Aが介在することとなる。
【0027】
従って、比較例に係る表示装置100では、この空気層Aの介在により、拡散板103から蛍光体シート104との間の光路において、拡散板103と空気層Aとの間、および空気層Aと蛍光体シート104との間の屈折率差が大きくなってしまう。この結果、界面における光反射が発生し易くなり、光損失が生じてしまう。例えば、この表示装置100において、蛍光体シート104の上方へ出射する光の発光効率を測定したところ、60%であった。
【0028】
これに対し、本実施の形態では、蛍光体層14が拡散板13に一体的に設けられ、具体的には拡散板13の光出射面に直に設けられていることにより、蛍光体層14と拡散板13との間には、上記のような空気層Aが介在しない。すなわち、蛍光体層14と拡散板13との間の屈折率差が、空気層Aを介在させた場合の屈折率差よりも小さくなる。
【0029】
以上説明したように、本実施の形態では、蛍光体層14を拡散板13の光出射面に直に設けるようにしたので、光が拡散板13から蛍光体層14へ通過する過程において、空気層Aを介在させる場合に比べ、界面での光反射を低減することができる。よって、色変換を行う蛍光体層14との間で光損失の発生を抑制することが可能となる。例えば、保護層15の上方から出射する光の発光効率を測定したところ、上記比較例における発光効率(60%)に比べ約15%向上した。また、これにより、表示装置1では、輝度の低減を抑制することができる。
【0030】
また、蛍光体層14を、十分な厚みを有する拡散板13上に直に設けるようにすれば、拡散板13を、蛍光体層14の保護層として機能させることができる。ここで一般に、蛍光体は、前述のように水蒸気や酸素等に対して脆弱であるため、比較例のような保護用のフィルム106a,106b等で挟み込む必要がある。この点、本実施の形態のように、蛍光体層14に隣接する拡散板13に厚みを持たせて、拡散板13にガスバリア性を発揮させるようにすれば、蛍光体層14の劣化を抑制することができると共に、フィルム106a,106bのうちの一方が不要となる。すなわち、上記比較例に比べ、拡散板13と蛍光体層14との間の部品点数が少なくなるため、屈折率の異なる部材同士による界面が減少する。よって、拡散板13を出射したのち蛍光体層14へ入射するまでの間に、光が他の部材等により吸収、反射されることを防止することができ、光損失を効果的に抑制することが可能となる。
【0031】
更に、蛍光体層14を保護するための部材を減らすと共に、液晶ディスプレイにおいて通常使用される光学部材(ここでは、拡散板13)に直に蛍光体層14を印刷等によって形成することにより製造可能であるため、プロセスの簡略化、低コスト化にも繋がる。
【0032】
(実施例1)
次に、上記第1の実施の形態の実施例(実施例1)として、蛍光体層14の劣化についての実験を行った。具体的には、青色発光ダイオードと、蛍光体層14を直に形成してなる拡散板13とを用いて、拡散板13の水蒸気透過率(g/m
2/day)に対する発光効率の変化を測定した。その結果を
図4に示す。但し、蛍光体層14には、一般的に高温高湿の環境下において劣化が大きいとされる赤色変換の蛍光体を用い、発光効率としては、初期の発光効率を1とし、85℃,90%RHの環境下に500時間放置した後の相対的な値を示す。
図4に示したように、拡散板13における水蒸気透過率が高い程、すなわち水蒸気バリア性が低い程、蛍光体の劣化が顕著となり、発光効率が低下することがわかる。なお、このような実験での加速係数は一般に70以上とされており、実環境で35000時間以上使用した場合の劣化程度に相当する。一般的にバックライトの寿命特性においては、輝度半減に要する時間が30000時間以上であることが信頼性を保証するための条件となっている。すなわち、水蒸気透過率が2g/m
2/day以下であれば、この信頼性条件を上回ることができることがわかる。
【0033】
次に、上記第1の実施の形態の変形例(変形例1〜4)について説明する。以下では、第1の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0034】
<変形例1>
図5は、変形例1に係る表示装置の断面構造を模式的に表すものである。この表示装置では、光源部12と表示パネル20との間の積層構造において、蛍光体層14が、拡散板13の光入射面に直に設けられ、この蛍光体層14の表面には、上記第1の実施の形態と同様、保護層15が形成されている。拡散板13の光出射側には、拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射偏光フィルム18が配設されている。
【0035】
本変形例では、LED12aから発せられた青色光は、まず保護層15を通過したのち、蛍光体層14において、その一部が色変換される。これにより、蛍光体層14から白色光が生じ、この白色光が、空気層や他の部材を経ることなく拡散板13へ入射する。拡散板13において拡散された光は、拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射型偏光フィルムを順に通過したのち、表示パネルを照射し、これにより表示がなされる。よって、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。すなわち、拡散板13の蛍光体層14が形成される面は、光入射面であってもよい。
【0036】
<変形例2>
図6(A)は、変形例2に係る導光板31を用いた光学部材の断面構造を模式的に表すものである。この光学部材は、例えば液晶ディスプレイ等のバックライトとして用いられ、例えば平行平板状の導光板31(基材)の側面にLED30が配設されたものである。本変形例では、この導光板31の上面(光出射面)に、蛍光体層21が直に設けられている。蛍光体層21の表面には保護層22が形成されている。蛍光体層21は、一の色光をより長い波長域の色光に色変換する蛍光体を含んでいる。この蛍光体層21は、上記第1の実施の形態の蛍光体層14と同様の蛍光体を用いて、導光板31の光出射面に直接、印刷あるいは塗布することにより形成することができる。保護層22は、上記第1の実施の形態の保護層15と同様の材料により構成されている。LED30は、例えば青色発光ダイオードにより構成されている。なお、一体的に形成されてなる導光板31および蛍光体層21が、本発明の光学部材に対応している。
【0037】
導光板31の構成材料としては、上記第1の実施の形態の拡散板13と同様、例えばポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、ポリエーテルスルホンおよび環状非晶質ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂や、多官能アクリレート、多官能ポリオレフィン、不飽和ポリエステルおよびエポキシ樹脂などが挙げられる。導光板31の厚みは、例えば0.5mm〜5mm程度である。この導光板31についても、上記第1の実施の形態の拡散板13と同様、その十分な厚みにより、光学的な機能に加え、蛍光体層21の保護層としての機能をも発揮するようになっている。
【0038】
このような導光板31の底面(光出射面に対向する面)には、光取り出し用の加工として、例えば複数の溝31aが形成されている。この溝31aにより、導光板31中を伝播する光は、その全反射条件が崩され(臨界角未満となり)、導光板31の上方から出射するようになっている。
【0039】
本変形例では、LED30から発せられた青色光が導光板31の内部へ入射すると、この青色光は、導光板31内を全反射により伝播したのち、溝31aによって導光板31の上方へ出射する。導光板31を出射した青色光は、蛍光体層21に入射すると、この蛍光体層21に含有された蛍光体によって、その一部が色変換される。これにより、色変換されずに蛍光体層21をそのまま通過した青色光と、蛍光体Bによって色変換された色光との混色により、例えば白色光が得られる。このとき、導光板31と蛍光体層21との間に、空気層が介在していないため、界面における光反射が抑制される。また、導光板31を蛍光体層21の保護層として機能させることにより、部品点数が減り、これによって屈折率の異なる層同士による界面が減少する。よって、蛍光体層21が形成される基材としては、上記第1の実施の形態における拡散板13に限らず、導光板31であってもよく、このような場合であっても、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0040】
なお、導光板31における光取り出し加工は、上記のような溝31aに限定されない。例えば、
図6(B)に示したように、その底面に複数のドット32aが印刷された導光板32を用いるようにしてもよい。
【0041】
<変形例3>
図7(A)は、変形例3に係る導光板31を用いた光学部材の断面構造を模式的に表すものである。この光学部材は、上記変形例2と同様、導光板31の側面にLED30が配設されると共に、底面(光出射面に対向する面)に複数の溝31aが形成されたものである。但し、本変形例では、導光板31の底面に蛍光体層23が直に設けられた構成となっている。蛍光体層23は、一の色光をより長い波長域の色光に色変換する蛍光体を含んでいる。この蛍光体層23は、上記第1の実施の形態の蛍光体層14と同様の蛍光体を用いて、導光板31の底面に直接、印刷あるいは塗布することにより形成することができる。保護層24は、上記第1の実施の形態の保護層15と同様の材料により構成されている。導光板31は、上記変形例2と同様、その厚みにより、蛍光体層23の保護層としての機能も有している。
【0042】
本変形例では、導光板31内を伝播する青色光の一部は、溝31aによって全反射条件が崩される際に、蛍光体層23を通過して色変換され、導光板31の上方へ出射する。よって、導光板31の上方から、混色により白色光が取り出される。
【0043】
このように、蛍光体層23は、導光板31の底面に直に設けるようにしてもよい。この場合であっても、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。なお、本変形例においても、光取り出し加工としては、溝31aに限定されず、
図7(B)に示したように、導光板32の底面にドット32aを印刷した構成であってもよい。
【0044】
<変形例4>
図8(A)は、変形例4に係る導光板31を用いた光学部材の断面構造を模式的に表すものである。この光学部材は、上記変形例2と同様、導光板31の側面にLED30が配設されると共に、底面に複数の溝31aが形成されたものである。但し、本変形例では、導光板31の光入射面(LED30が配設されている側面)に、蛍光体層27が直に設けられた構成となっている。蛍光体層27は、一の色光をより長い波長域の色光に色変換する蛍光体を含んでいる。この蛍光体層27は、上記第1の実施の形態の蛍光体層14と同様の蛍光体を用いて、導光板31の側面に直接、印刷あるいは塗布することにより形成することができる。保護層28は、上記第1の実施の形態の保護層15と同様の材料により構成されている。また、本変形例においても、導光板31は、蛍光体層23の保護層としての機能を有している。
【0045】
本変形例では、LED30から発せられた青色光の一部は、導光板31内に入射する前に蛍光体層27において色変換される。このようにして色変換がなされた色光と色変換されずにそのまま蛍光体層27を通過した青色光とが、導光板31内を伝播したのち、導光板31の上方から、白色光として取り出される。
【0046】
このように、蛍光体層27は、導光板31の光入射面に設けるようにしてもよい。この場合であっても、上記第1の実施の形態と同等の効果を得ることができる。なお、本変形例においても、光取り出し加工としては、溝31aに限定されず、
図8(B)に示したように、導光板32の底面にドット32aを印刷した構成であってもよい。
【0047】
なお、上記変形例2〜4では、導光板31として、平行平板状のものを例に挙げて説明したが、導光板31の形状は平行平板状に限らず、他の形状、例えば楔形等であってもよい。
【0048】
<第2の実施の形態>
[1.表示装置2の構成]
図9は、本発明の第2の実施の形態に係る表示装置2の断面構造を模式的に表すものである。表示装置2は、例えば液晶ディスプレイ等であり、表示パネル20と、この表示パネル20を照明するバックライトとしての光源部12を備えたものである。これらの表示パネル20と光源部12との間には、光源部12の側から順に、拡散板33(基材)、蛍光体シート35、拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射型偏光フィルム18が順に積層されている。このような積層構造において、拡散板33の光出射面に蛍光体シート35が接着層34により接着されている。なお、接着層34により一体的に形成されてなる拡散板13および蛍光体層14が、本発明の光学部材に対応している。また、以下では、上記第1の実施の形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0049】
拡散板33は、上記第1の実施の形態の拡散板13と同様、入射光を拡散して強度分布を均一化するものであり、その構成材料や厚みについても、上記第1の実施の形態の拡散板13と同様である。
【0050】
接着層34は、可視光に対して透明な材料、例えば酢酸ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等により構成され、厚みは例えば1μm〜100μmである。このような接着層34を形成する際には、上記した樹脂を含む接着剤、接着シートもしくはゲル等が用いられる。
【0051】
蛍光体シート35は、入射した色光をより長い波長域の色光に変換する蛍光体を含む蛍光体層36を、2枚のフィルム37a,37bで挟み込んだものである。蛍光体層36に含まれる蛍光体としては、上記第1の実施の形態の蛍光体層14に含まれる蛍光体と同様のものが挙げられる。
【0052】
フィルム37a,37bは、蛍光体層36を支持すると共に、蛍光体層36の保護層としても機能するものである。フィルム37a,37bの構成材料としては、例えばポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等の他、例えば水蒸気や硫化ガス等の透過率を制御し得るような性質を有する材料が挙げられる。フィルム37a,37bの厚みは、例えば10μm〜1000μmである。この2枚のフィルム37a,37bにより、蛍光体層36へのガス透過率が制御され、蛍光体層36の劣化を抑制することができる。
【0053】
このような蛍光体シート35は、例えば次のようにして形成することができる。すなわち、まず、フィルム37aの一面に、上述の蛍光体を溶媒に混合したものを印刷したのち乾燥させる。この後、接着剤等を用いて、もう一方のフィルム37bを、蛍光体層36を挟み込むようにフィルム37aに貼り合わせる。これにより蛍光体シート35を形成する。
【0054】
蛍光体シート35を拡散板33に接着する際には、例えば拡散板33の一面に、上述した材料よりなる接着層34を形成したのち、この接着層34の上から蛍光体シートを重ね合わせ、接着層34を硬化させる。これにより、蛍光体シート35と拡散板33との間の空隙が接着層34によって充填される。
【0055】
[2.表示装置2の作用、効果]
本実施の形態では、LED12aから発せられた青色光は、拡散板33を通過したのち、接着層34を介して蛍光体シート35に入射する。蛍光体層シート35では、入射した青色光は、フィルム37aを通過したのち、蛍光体層36に含まれている蛍光体により、その一部が例えば赤色光や緑色光等に色変換される。すなわち、蛍光体層36を色変換されずにそのまま通過した青色光と、蛍光体層36において色変換された色光との混色により、例えば白色光として蛍光体シート35の上方へ取り出される。蛍光体シート35から出射した白色光は、拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射型偏光フィルム18を順に通過して、表示パネル20を照射する。この照射光が、表示パネル20において画像データに基づいて変調されることにより、画像表示が行われる。
【0056】
ここで、
図3に示した比較例に係る表示装置100では、拡散板103と蛍光体シート104との間に空気層Aが介在しているため、前述のように、拡散板103から蛍光体シート104との間の光路における屈折率差が大きくなってしまう。この結果、界面における光反射が発生し易くなり、光損失が生じてしまう。
【0057】
これに対し、本実施の形態では、蛍光体層36を有する蛍光体シート35が、拡散板33の光出射面に接着層34によって接着されていることにより、蛍光体シート35と拡散板33との間の空隙が接着層34によって充填される。すなわち、拡散板33と接着層34との間、および接着層34と蛍光体シート35との間の屈折率差が、空気層Aを介在させた場合の屈折率差よりも小さくなる。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、蛍光体シート35と拡散板13との間に接着層34設けたので、光が拡散板33から蛍光体シート35へ通過する過程において、空気層Aを介在させる場合に比べ、界面での光反射やそれに伴う拡散を低減することができる。よって、色変換を行う蛍光体シート35との間で光損失の発生を抑制することが可能となる。
【0059】
例えば、蛍光体シート35の上方から出射する光の発光効率を測定したところ、上記比較例における発光効率(60%)に比べ約25%向上した。
図10に、実施例として、拡散板34と蛍光体シート35との間に接着層34を設けた場合(接着層あり)と、比較例として、拡散板103と蛍光体シート104との間に空気層Aが介在する場合(接着層なし)とについての発光スペクトルを示す。但し、発光強度(%)については、励起光(青色光)のスペクトルピークで規格化したものである。
【0060】
次に、上記第2の実施の形態の変形例(変形例5,6)について説明する。以下では、第2の実施の形態と同様の構成要素については同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0061】
<変形例5>
図11は、変形例5に係る表示装置の断面構造を模式的に表すものである。この表示装置では、光源部12と表示パネル20との間の積層構造において、蛍光体層シート35が、拡散板33の光入射面に接着層34を介して設けられている。拡散板33の光出射側には、拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射偏光フィルム18が配設されている。
【0062】
本変形例では、LED12aから発せられた青色光は、まず蛍光体シート35へ入射し、蛍光体シート35において、その一部が色変換される。これにより、蛍光体シート35から白色光が生じ、この白色光が、空気層を経ることなく拡散板33へ入射する。拡散板33において拡散された光は、拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射型偏光フィルムを順に通過したのち、表示パネルを照射し、これにより表示がなされる。よって、上記第2の実施の形態と同等の効果を得ることができる。すなわち、拡散板33の蛍光体シート35が接着される面は、光入射面であってもよい。
【0063】
なお、上記第2の実施の形態および変形例5では、蛍光体シート35を接着させる基材として、拡散板33を例に挙げて説明したが、この拡散板33に限られず、他の光学部材を基材としてもよい。例えば、上記表示装置2における拡散フィルム16、レンズフィルム17および反射偏光フィルム18等を基材としてもよい。但し、いずれの基材に接着した場合であっても、蛍光体シート35は、上述したようにフィルム37a,37bにより保護されているため、蛍光体層36の劣化を抑制することができる。すなわち、第1の実施の形態および変形例1〜4に比べ、蛍光体シート35を接着する基材の選択性が向上する。但し、レンズフィルム17や反射偏光フィルム18に接着した場合、光路を乱す虞があるため、拡散板33もしくは拡散フィルム16に接着することが望ましい。
【0064】
<変形例6>
図12は、変形例6に係る導光板31を用いた光学部材の断面構造を模式的に表すものである。この光学部材は、例えば液晶ディスプレイ等のバックライトとして用いられ、例えば平行平板状の導光板31(基材)の側面にLED30が配設されたものである。本変形例では、この導光板31の上面(光出射面)に、蛍光体シート35が接着層41を介して接着されている。LED30は、例えば青色発光ダイオードにより構成されている。接着層41は、上記第2の実施の形態の接着層34と同様の材料および厚みにより構成されている。なお、接着層41により一体的に形成されてなる導光板31および蛍光体シート35が、本発明の光学部材に対応している。
【0065】
本変形例では、LED30から発せられた青色光が導光板31の内部へ入射すると、この青色光は、導光板31内を全反射により伝播したのち、導光板31の上方へ出射する。導光板31を出射した青色光は、接着層41を通過したのち、蛍光体シート35に入射する。蛍光体シート35では、蛍光体層36に含有された蛍光体によって、青色光の一部が色変換される。これにより、蛍光体シート35の上方から白色光が得られる。このとき、導光板31と蛍光体シート35との間に、空気層が介在していないため、界面における光反射が抑制される。よって、蛍光体シート35が接着される基材としては、上記第2の実施の形態における拡散板33等に限らず、導光板31であってもよく、このような場合であっても、上記第2の実施の形態と同等の効果を得ることができる。
【0066】
なお、導光板31における光取り出し加工は、上記のような溝31aに限定されない。例えば、
図12(B)に示したように、その底面に複数のドット32aが印刷された導光板32を用いるようにしてもよい。また、導光板31において蛍光体シート35を接着する面は、光出射面に限らず、側面(光入射面)や底面(光出射面に対向する面)であってもよい。
【0067】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらの実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、LEDとして青色発光ダイオードを用いた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、比較的短い波長領域の色光を発する光源、例えば近紫外発光ダイオードを用いるようにしてもよい。この場合、蛍光体としては、緑色変換もしくは黄色変換の蛍光体として、(Ca,Sr,Ba)
2SiO
4:Eu
2+、BAM:Eu
2+,Mn
2+およびα−SiAlON:Eu
2+などを用いることができる。また、赤色変換の蛍光体として、Y
2O
2S:Eu
3+、La
2O
2S:Eu
3+、(Ca,Sr,Ba)
2Si
5N
8:Eu
2+、CaAlSiN
3:Eu
2+、LiEuW
2O
8、Ca(Eu,La)
4Si
3O
13、Eu
2W
2O
9系、(La,Eu)
2W
3O
12、(Ca,Sr,Ba)
3MgSi
2O
8:Eu
2+,Mn
2+、CaTiO
3:Pr
3+,Bi
3+などを用いることができる。また、青色変換の蛍光体として、BAM:Eu
2+、(Ca,Sr,Ba)
5(PO
4)
3Cl:Eu
2+などを用いることができる。但し、発光効率や耐候性の観点からは、青色発光ダイオードを用いることが好ましい。
【0068】
更に、上記実施の形態では、本発明の表示装置として液晶ディスプレイを用いた構成を例に挙げて説明したが、これに限定されず、他の表示装置にも適用することが可能である。