特許第5717961号(P5717961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717961
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】フレキシブル回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 1/02 20060101AFI20150423BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   H05K1/02 B
   H05K3/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2009-292801(P2009-292801)
(22)【出願日】2009年12月24日
(65)【公開番号】特開2011-134884(P2011-134884A)
(43)【公開日】2011年7月7日
【審査請求日】2012年12月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000230249
【氏名又は名称】日本メクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085006
【弁理士】
【氏名又は名称】世良 和信
(74)【代理人】
【識別番号】100106622
【弁理士】
【氏名又は名称】和久田 純一
(72)【発明者】
【氏名】加治屋 篤
(72)【発明者】
【氏名】吉原 秀和
(72)【発明者】
【氏名】井澗 徹
【審査官】 中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−134473(JP,A)
【文献】 特開2008−159908(JP,A)
【文献】 特開平11−290962(JP,A)
【文献】 特開2000−042638(JP,A)
【文献】 特開2003−170228(JP,A)
【文献】 特開2006−228922(JP,A)
【文献】 特開2008−192789(JP,A)
【文献】 特開2008−210891(JP,A)
【文献】 特開2007−305704(JP,A)
【文献】 特開2008−153397(JP,A)
【文献】 特開平03−220787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 1/02
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に形成された配線層と、
前記配線層上に形成された熱可塑性樹脂からなる絶縁層と、
を有するフレキシブル回路基板であって、
フレキシブル回路基板の両端にテンションを加えた状態で成形装置の湾曲部を押し当てることにより折り曲げられた状態で加熱されることにより形成される、曲率半径R(mm)を有する折り曲げ部が、少なくとも1箇所に形成されており、
前記折り曲げ部の曲率半径R(mm)が維持された状態で変形可能に構成されており、
前記曲率半径R(mm)は、0.3mm以上であり、
前記熱可塑性樹脂とは、液晶ポリマーであるフレキシブル回路基板の製造方法であって、
フレキシブル回路基板の両端にテンションを加えた状態で、前記成形装置によってフレキシブル回路基板を折り曲げ、曲率半径R(mm)の折り曲げ部を形成する第1の工程と、
曲率半径R(mm)の折り曲げ部が形成されている状態のフレキシブル回路基板に対して、少なくとも前記折り曲げ部を加熱する第2の工程と、
を有し、
前記第1の工程において、
前記フレキシブル回路基板の厚さ方向の両側から、湾曲部を有する前記成形装置の前記湾曲部を互い違いに押し当てることにより、前記フレキシブル回路基板に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部を複数形成し、
前記第1の工程、及び前記第2の工程における前記フレキシブル回路基板との接触領域にゴム状弾性部材が設けられている前記成形装置を用いて、前記第1の工程、及び前記第2の工程を行うことを特徴とするフレキシブル回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記第2の工程では、
加熱温度が、前記フレキシブル回路基板の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度であって、
加熱時間が1時間以内である、ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁フィルムの表面に直接的に、又は接着剤を介して形成された配線層を有するフレキシブル回路基板及びその製造方法に関する。更に詳しくは、通信・映像機器等の各種電子機器をはじめ、自動車や航空機、ロボット等に取り付けられる構成部品間の接続、実装部品を実装した実装回路基板、及び照明装置に取り付けられる複数のLED(Light Emitting Diode)が実装されたフィラメント部に使用可能であり、任意の形状に加工が可能なフレキシブル回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の回路基板として、例えば、特開2003−008161号公報(特許文献1)に開示されているような、全層IVH樹脂多層回路基板が既に知られている。また、全体または一部を折り曲げて利用する、いわゆるフレキシブル回路基板も既に知られており、近年では、このようなフレキシブル回路基板が携帯機器の液晶ドライバモジュール等に利用されている。
【0003】
図5に、代表的なフレキシブル回路基板の模式的な断面図を示す。図5(a)に示すように、フレキシブル回路基板100は、絶縁フィルム20上に形成された配線層30と、配線層30上に形成された絶縁層40(一般的に、カバーレイ層(CL層)と称される)とを有している。さらに、図5(b)に示すように、これらを複層化したフレキシブル回路基板も知られている。図示するように、複層化されたフレキシブル回路基板100には、各々の配線層30を電気的に接続するためのスルーホール50が設けられており、これにより、配線同士の複雑な接続が可能になっている。また、図5(a)、図5(b)に示すフレキシブル回路基板100は、絶縁フィルム20上に配線層30が直接形成されている形態であるが、別の形態として、絶縁フィルムと配線層との間に接着層が設けられたフレキシブル回路基板も知られている。なお、従来のフレキシブル回路基板では、絶縁フィルム20、及び絶縁層40として、ポリイミドフィルムが用いられ、配線層30として圧延銅箔が用いられている。
【0004】
このような構成を有するフレキシブル回路基板は薄く、自在に折り曲げることが可能であるので、部品間の小さなスペースに挿入することができる。よって、部品間の小さなスペースにも多数の実装部品を配置することができるので、部品間スペースにおける実装密度を向上させることができる。すなわち、フレキシブル回路基板を折り曲げた状態で使用することによって、装置の高機能化、小型化を達成することができるので、フレキシブル回路基板については、今後、さらに幅広い分野での用途展開が期待されている。なお、関連する技術が特許文献1〜特許文献3に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−008161号公報
【特許文献2】実開平5−76070号公報
【特許文献3】特開平10−112571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら従来のフレキシブル回路基板には、以下の課題がある。
【0007】
上述した従来のフレキシブル回路基板は、繰り返し曲げ伸ばしされる、あるいは曲率が大きくなるように折り曲げられると、折り曲げ部において、曲げ応力に起因して絶縁性材料(即ち、絶縁フィルム、および適宜設けられる接着層)から配線層(即ち、銅箔)が剥離し、または配線層が破断し、その結果、接続不良を招くことがある。また、高密度に電子部品を実装した場合に、フレキシブル回路基板の放熱に起因して接続不良が生じる虞がある。即ち、電子部品からの放熱量が多くなると、フレキシブル回路基板に与えられる熱量が電子部品の作動時と停止時とで大きく異なることになり、その結果、フレキシブル回路基板の温度が大幅な上昇と下降とを繰り返す。これにより、フレキシブル回路基板の絶縁性材料−配線層間の熱膨張差が原因となって、配線層の剥離、または破断が生じてしまう。
【0008】
また、電子機器に対して更なる高機能化および小型化等が要求されることに伴い、電子部品をより高密度に実装できるように、フレキシブル回路基板の配線幅を更に微細化する技術が検討されているが、配線の微細化が進むことで、上述した接続不良(即ち、配線層の絶縁性材料からの剥離等)がより生じやすくなる。
【0009】
なお、例えば、実開平5−76070号公報(特許文献2)には、折り曲げた状態で使用可能な可撓性回路基板の構成が開示されている。具体的には、可撓性回路基板に金属補強板を貼り合せた後で、金属補強板に所定形状の折り曲げ加工を施すことで、金属補強板と共に可撓性回路基板を折り曲げている。一方、特開平10−112571号公報(特許文献3)には、弾性率の高いポリエチレンナフタレートを回路基板に用いることで自己形状保持性を確保した剛性回路部材を、所定の形状に折り曲げ加工する技術が開示されている。しかしながら、折り曲げ部を有するこれらの回路基板は、全体として剛性を有しているので、柔軟性に乏しいといった課題がある。よって、これらの回路基板を、例えばロボットの可動部等の伸縮性が要求される部位に取付けることは現実的とはいえない。
【0010】
即ち、従来では、折り曲げ部が形成されているフレキシブル回路基板において、柔軟に変形可能であり、かつ変形が繰り返された場合、電子部品からの放熱がある場合、又は微細配線が形成されている場合にも、配線層の剥離、破断を生じることがないフレキシブル回路基板については、何ら開示されていない。
そこで本発明の目的は、折り曲げ部が形成されているフレキシブル回路基板において、柔軟に変形可能であり、かつ変形が繰り返された場合、電子部品からの放熱がある場合、又は微細配線が形成されている場合にも、配線層の剥離、破断を生じることがない接続信頼性の高いフレキシブル回路基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明にあっては、
熱可塑性樹脂からなる絶縁フィルムと、
前記絶縁フィルム上に形成された配線層と、
前記配線層上に形成された熱可塑性樹脂からなる絶縁層と、
を有するフレキシブル回路基板であって、
フレキシブル回路基板の両端にテンションを加えた状態で成形装置の湾曲部を押し当てることにより折り曲げられた状態で加熱されることにより形成される、曲率半径R(mm)を有する折り曲げ部が、少なくとも1箇所に形成されており、
前記折り曲げ部の曲率半径R(mm)が維持された状態で変形可能に構成されており、
前記曲率半径R(mm)は、0.3mm以上であり、
前記熱可塑性樹脂とは、液晶ポリマーであるフレキシブル回路基板の製造方法であって、
フレキシブル回路基板の両端にテンションを加えた状態で、前記成形装置によってフレキシブル回路基板を折り曲げ、曲率半径R(mm)の折り曲げ部を形成する第1の工程と、
曲率半径R(mm)の折り曲げ部が形成されている状態のフレキシブル回路基板に対して、少なくとも前記折り曲げ部を加熱する第2の工程と、を有し、
前記第1の工程において、
前記フレキシブル回路基板の厚さ方向の両側から、湾曲部を有する前記成形装置の前記湾曲部を互い違いに押し当てることにより、前記フレキシブル回路基板に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部を複数形成し、
前記第1の工程、及び前記第2の工程における前記フレキシブル回路基板との接触領域にゴム状弾性部材が設けられている前記成形装置を用いて、前記第1の工程、及び前記第2の工程を行うことを特徴とする。
【0012】
かかる製造方法によれば、比較的に簡易な製造方法によって、フレキシブル回路基板に対して折り曲げ部を形成することができ、フレキシブル回路基板の製造コストを抑えることができる。
【0013】
また、
前記第1の工程において、
前記フレキシブル回路基板の厚さ方向の両側から、湾曲部を有する前記成形装置の前記湾曲部を互い違いに押し当てることにより、前記フレキシブル回路基板に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部を複数形成しているので、例えば蛇腹構造のような、折り曲げ部が複数形成されたフレキシブル回路基板を容易に製造することができる。
【0014】
また、
前記第1の工程、及び前記第2の工程における前記フレキシブル回路基板との接触領域にゴム状弾性部材が設けられている前記成形装置を用いて、前記第1の工程、及び前記第2の工程を行うので、ゴム状弾性部材が緩衝材として機能することにより、フレキシブル回路基板を衝撃、摩擦等から保護することができる。即ち、フレキシブル回路基板表面にコンデンサやLEDを実装した場合も、製造工程において成形装置によってこれらの実装部品を押潰する虞がない。また、ゴム状弾性部材を介して実装部品と成形装置とが接触するので、加熱時に実装部品に直接的に熱が伝わらず、熱による実装部品の破損を防ぐことが可能になる。
【0015】
また、
前記第2の工程では、
加熱温度が、前記フレキシブル回路基板の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度であって、
加熱時間が1時間以内である、
ことが好適である。
【0016】
かかる製造方法によれば、液晶ポリマーの熱変形開始未満の加熱温度で液晶ポリマーを加熱するので、液晶ポリマーが流動することがなく、フレキシブル回路基板の外観、性能を損なうことがない。また、フレキシブル回路基板の表面温度が150℃以上となる加熱温度であるので、液晶ポリマーに対して折り曲げ部を確実に形成することができ、さらに、加熱が終わった後も折り曲げ部が元の形状に戻ることはない(曲率半径R(mm)が維持される)。また、加熱時間が1時間以内であれば、生産効率を向上させることができる
と共に、長時間加熱することで生じる、液晶ポリマー変色、熱変形の問題、及び配線層の損傷を回避することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、本発明によれば、折り曲げ部が形成されているフレキシブル回路基板において、柔軟に変形可能であり、かつ変形が繰り返された場合にも配線層の剥離、破断を生じることがないフレキシブル回路基板の製造方法を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係るフレキシブル回路基板の概略構成図。
図2】本実施形態に係るフレキシブル回路基板の製造方法を示す模式図。
図3】本実施形態に係るフレキシブル回路基板の製造方法を示す模式図。
図4】本実施形態に係る伸縮試験の方法を示す概略図。
図5】従来のフレキシブル回路基板の模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
[実施形態]
(1:フレキシブル回路基板の概略構成)
図1を参照して、本実施形態に係るフレキシブル回路基板1の概略構成について説明する。図1(a)は、フレキシブル回路基板1に形成されている折り曲げ部1Aを拡大した図であり、図1(b)は、フレキシブル回路基板1の概略構成図であり、図1(c)は、フレキシブル回路基板1の模式断面図であり、図1(d)は、フレキシブル回路基板1の折り曲げ部1Aにおける挙動を示す図である。
【0021】
図1(c)に示すように、フレキシブル回路基板1は、絶縁フィルム2、絶縁フィルム2上に形成された配線層3、配線層3上に形成された絶縁層4とから構成されている。なお、配線層3は接着層5によって絶縁フィルム2上に接着されているが、接着層5を設けない構成であってもよい。また、図1(b)に示すように、フレキシブル回路基板1には、少なくとも1箇所に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部1A(立体成形部、又は湾曲部ともいう)を有している。本実施形態では、複数の折り曲げ部1Aを有する蛇腹形状のフレキシブル回路基板1について説明するが、フレキシブル回路基板1の形状はこれに限定されるものではなく、例えば、折り曲げ部1Aが1箇所設けられた、略U字形状であってもよい。
【0022】
配線層3は、圧延銅箔および電解銅箔等の公知の金属箔を、接着層5で絶縁フィルム2に貼り付けることにより形成されている。あるいは、配線層3は、絶縁フィルム2の表面(または絶縁フィルム2に形成された接着層5の表面)に、銅または銀のような金属を用いて、蒸着またはスパッタ等の方法により形成することもできる。接着層5は、ポリイミド等の公知の熱可塑性樹脂、またはシアネートエステル系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、フェノール系樹脂、ナフタレン樹脂、ユリア樹脂、アミノ樹脂、アルキッド樹脂、ケイ素樹脂、フラン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、及びポリウレタン樹脂等の公知の熱硬化性樹脂を用いて形成される。あるいは、接着層5は、上述の有機樹脂に、シリカまたはアルミナ等の無機フィラーを分散させたもので形成することもできる。
【0023】
絶縁フィルム2、及び絶縁層4は、特に、耐熱性が要求される熱可塑性樹脂が推奨され、液晶ポリマー(例えば、商品名「ロードラン」(ユニチカ社製)、「EPE」(三菱化学社製)、「出光LCP」(出光石油化学社製)、「エコノール」(住友化学社製)、「ザイダー」(日本石油化学社製)、「LCP」(東ソー社製)、「ベクトラ」(ヘキスト−セラニーズ社製)、「SRP」(ICI社製)、「べクスター」(クラレ社製)、「バイアック」(ジャパンゴアテックス社製)、「スミカスーパーLCP」(住友化学社製))、ポリアミドイミド(例えば、トリメリット酸とジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、m−又はp−フェニレンジアミン等の芳香族ジアミンとから得られるポリアミドイミド等)、熱可塑性ポリイミド(例えば、商品名「オーラム」(三井化学製))等が好ましい。絶縁フィルム2、及び絶縁層4に用いられる熱可塑性樹脂は、同じ材料であってもよいし、それぞれ異なる材料が選択されてもよい。なお、以下では絶縁フィルム2、及び絶縁層4に液晶ポリマーを用いた場合について説明する。
【0024】
上述したように、本実施形態に係るフレキシブル回路基板1は、複数箇所に曲率半径R(mm)の折り曲げ部1Aを有する蛇腹形状に形成されている。かかる形状を有する場合、フレキシブル回路基板1が伸縮変形することが可能になり、かつ、外力が作用した場合も、フレキシブル回路基板1全体が伸縮変形することで、局所的に応力が集中することを防止できる。さらに本実施形態に係るフレキシブル回路基板1は、以下の特徴たる構成を有している。即ち、通常、フレキシブル回路基板にこのような折り曲げ部を形成すると、外力が作用した場合などに折り曲げ部に局所的に応力が集中して折り曲げ部の曲率半径が変化し、配線層の剥離、破断が生じてしまう。しかしながら本実施形態では、後述する製造方法によってフレキシブル回路基板1を製造することで、外力が作用しても折り曲げ部1Aの曲率半径R(mm)が維持されるフレキシブル回路基板1を得ることができる。即ち、図1(d)に示すように本実施形態によれば、フレキシブル回路基板1が変形しても(図中点線部分)、折り曲げ部1Aの曲率半径R(mm)を一定に保つことができ、折り曲げ部1Aで配線の剥離、破断が生じる虞がない。
【0025】
(2:フレキシブル回路基板の製造方法)
図2を参照して、本実施形態に係るフレキシブル回路基板1の製造方法について説明する。
【0026】
まず、図2(a)に示すように、金属張りフィルム11を用意する。金属張りフィルム11は、熱可塑性樹脂からなる絶縁フィルム2の表面に接着層5を形成し、接着層5の表面に金属箔3Aを積層し、熱圧着により3つの層を一体化することにより形成できる。なお、金属張りフィルム11を形成する別の手法としては、金属箔上に絶縁フィルムの前駆体であるワニスを塗布し、この前駆体を乾燥させる手法、絶縁フィルム上に蒸着またはスパッタリング等で金属層を形成する手法、および導電性ペーストを塗布した絶縁フィルムに電解めっきにより配線層を形成する手法などが挙げられる。
【0027】
次に図2(b)に示すように、金属層(金属箔3A)を所望の配線パターンにエッチングして配線層3を形成し、フレキシブル回路基板1を得る。次に図2(c)に示すように、配線層3の上に熱可塑性樹脂を塗布することによって絶縁層4を形成する。あるいは、絶縁層4は、熱可塑性樹脂から成る絶縁フィルムを熱圧着することにより形成してもよい。以上、図2(a)〜(c)に示す工程により、絶縁層4を有する片面フレキシブル回路基板1が得られる。
【0028】
本実施形態に係るフレキシブル回路基板1は、上述した片面構造のみならず、以下に示す多層構造も採用することができる。図3を参照して、3層構造を有する多層フレキシブル回路基板の製造方法について説明する。
【0029】
まず、図3(a)に示すように、図2(a)に示す金属張りフィルム11、片面フレキシブル回路基板1、および金属箔7を用意し、さらに、これら3つのシートを接合するための接着シート6を2枚用意する。接着シート6としては、上述した絶縁層4用の熱可塑性樹脂をシート状に成形したものを使用する。これらを図示するように積層し、積層したものを加熱押圧することにより一体化させる。
【0030】
次に図3(b)に示すように、所望の位置にドリルやレーザーを用いて貫通孔8を形成し、スルーホールめっき8aして、配線層3間を電気的に接続させる。図3(b)には、配線層間をめっきにより接続した形態を示している。なお、別の方法として、貫通孔8内に導電性ペーストを充填し、導電性ペーストを硬化させることにより、配線層間を電気的に接続することも可能である。
【0031】
次に図3(c)に示すように、エッチング等の手法で、それぞれの表面に設けられている金属箔3A、7を所望の配線パターンを有する配線層3に形成する。その後、上述した手法(図2(c)参照)と同様にして、絶縁層4を形成する。これにより、3層構造を有する多層フレキシブル回路基板を製造することができる。なお、ここでは3層構造を有する形態について説明しているが、多層フレキシブル回路基板の構造は3層構造に限られるものではない。
【0032】
(3:折り曲げ部の成形方法)
図2(d)を参照して、上述の製造方法でフレキシブル回路基板1を製造した後に、製造したフレキシブル回路基板1に対して折り曲げ部1Aを成形する成形方法について説明する。
【0033】
本実施形態に係るフレキシブル回路基板1の製造方法は、フレキシブル回路基板1の両端にテンションを加えた状態で、成形装置によってフレキシブル回路基板1を折り曲げ、曲率半径R(mm)の折り曲げ部1Aを形成する第1の工程と、曲率半径R(mm)の折り曲げ部1Aが形成されている状態のフレキシブル回路基板1に対して、少なくとも折り曲げ部1Aを加熱する第2の工程と、を有している。また、本実施形態では、成形装置として、フレキシブル回路基板1の厚さ方向の両側からフレキシブル回路基板1に対して移動可能であり、先端に湾曲部を有する複数の金型9(部分金型ともいう)を備えている。
【0034】
第1の工程では、不図示の引っ張り手段によってフレキシブル回路基板1の両端を引っ張り、フレキシブル回路基板1の両端にテンションを加えた状態で、金型9を移動させ、金型9の先端をフレキシブル回路基板1の厚さ方向の両側からフレキシブル回路基板1に押し当てる。金型9の先端には湾曲部が形成されているので、金型9を両側から互い違いにフレキシブル回路基板1に押し当てることにより、フレキシブル回路基板1には複数の折り曲げ部1Aが形成されることになる。本実施形態における折り曲げ部1Aの曲率半径R(mm)は、金型9の先端形状を変えることで変更することができ、同様に、折り曲げ部1Aの数、折り曲げ部1A同士の間隔等も、金型9の数、間隔を適宜変更することによって自在に設定することができる。なお、フレキシブル回路基板1の厚さ方向両側にある金型9は、少なくとも一方がフレキシブル回路基板1に対して移動可能に構成されていればよい。また、金型9によってフレキシブル回路基板1を加圧する際の加圧力は、少なくともフレキシブル回路基板1に折り曲げ部1Aが確実に形成される加圧力であればよく、フレキシブル回路基板1の厚さ、材質等に応じて適宜変更することができる。
【0035】
第2の工程では、両端にテンションがかけられ、金型9が押し当てられていることによって複数の折り曲げ部1Aが形成されている状態のフレキシブル回路基板1に対して、少なくとも折り曲げ部1Aを加熱している。本実施形態では、折り曲げ部1Aが形成されているフレキシブル回路基板1を、金型9ごと加熱装置に入れることでフレキシブル回路基
板1を加熱しているが、金型9の内部に加熱部材を設け、金型9から生じる熱によってフレキシブル回路基板1の少なくとも折り曲げ部1Aを加熱する構成であってもよい。なお、本実施形態では、加熱温度が、フレキシブル回路基板1の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度であって、加熱時間が1時間以内に設定されている。フレキシブル回路基板1の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度で加熱を行えば、液晶ポリマーが流動することがなく、フレキシブル回路基板1の外観、性能を損なうことがなく、かつ、フレキシブル回路基板1の表面温度が150℃以上となる加熱温度であるので、液晶ポリマーに対して折り曲げ部1Aを確実に形成することができ、さらに、加熱が終わった後も折り曲げ部1Aが元の形状に戻ることはない(曲率半径R(mm)が維持される)。また、加熱時間が1時間以内であれば、生産効率を向上させることができると共に、長時間加熱することで生じる、液晶ポリマー変色、熱変形の問題、及び配線層3の損傷を回避することが可能になる。なお、ここでは絶縁フィルム2、絶縁層4に液晶ポリマーを用いた場合について説明しているが、上述したように絶縁フィルム2、絶縁層4に適用可能な材料はこれに限られるものではなく、他の材料を選択した場合は、上記加熱温度、加熱時間を適宜変更することで、折り曲げ部1Aを形成することができる(但し、加熱温度の上限は、選択された材料の熱変形開始温度未満となる温度である)。
【0036】
上述した第1の工程、及び第2の工程を行うことにより、少なくとも1箇所に曲率半径R(mm)を有し、かつ、曲率半径R(mm)を維持した状態で伸縮変形可能なフレキシブル回路基板1を製造することが可能になる。なお、第1の工程と第2の工程とを同時に行ってもよい。即ち、折り曲げ部1Aに相当する部分を加熱しつつ、金型9によってフレキシブル回路基板1を折り曲げていく方法も採用し得る。なお、金型9には、第1の工程、及び第2の工程におけるフレキシブル回路基板1との接触領域に、ゴム状弾性部材が設けられているとよい。かかる構成によると、ゴム状弾性部材が緩衝材として機能することにより、フレキシブル回路基板1を衝撃、摩擦等から保護することができる。即ち、フレキシブル回路基板1表面にコンデンサやLEDを実装した場合も、製造工程において金型9によってこれらの実装部品を押潰する虞がない。また、ゴム状弾性部材を介して実装部品と金型9とが接触するので、実装部品に直接的に熱が伝わらず、熱による実装部品の破損を防ぐことが可能になる。ゴム状弾性材料としては耐摩耗性、耐衝撃性、耐座屈性等があれば特に限定されるものではなく、例えばウレタンゴム、クロロプレンゴム、NBR、フッ素ゴム、シリコンゴム、天然ゴムなどを使用することができる。
【0037】
(4:効果の検証)
本実施形態に係るフレキシブル回路基板の製造方法の効果を検証すべく、下記に示す検証実験の下、本実施形態と比較例との比較を行った。その検証結果について説明する。
【0038】
まず、比較例1〜5では、銅張りフィルムとして、片面銅張り2層ポリイミドフィルムであるエスパーフレックス(商品名)(住友金属鉱山製、ポリイミドフィルム:Kapton−EN、フィルム厚:50μm、銅箔の厚さ:18μm)を用意した。また、比較例6〜10では、銅張りフィルムとして、片面銅張り3層ポリイミドフィルム(ポリイミドフィルム:Kapton−EN、フィルム厚:50μm、圧延銅箔の厚さ:18μm、接着剤:エポキシ樹脂、接着層の厚さ:10μm)を用意した。次いで、これらのサンプルをエッチング処理して、図4(a)に示すような配線パターンを有する配線層3を形成し、片面フレキシブル回路基板1を得た。回路基板の幅、配線の幅等は、図中に示すとおりである。なお、ここで用いられているポリイミドフィルム:Kapton−ENは、熱硬化性を有しており、少なくともこの点で、比較例1〜10の回路基板と本実施形態に係るフレキシブル回路基板1とは異なっている。
【0039】
次いで、片面フレキシブル回路基板を、表1に記載の条件(曲率半径(mm)、基板の
表面温度(℃)、成形時間(h))で成形した。なお、ここでは成形装置として、本実施形態で用いられる金型9と同一のものを使用している。
【0040】
【表1】
【0041】
得られた各サンプルの接続信頼性を評価するために、「繰り返し伸縮試験」を行った。図4(b)を参照して、試験方法を簡単に説明する。図4(b)は、「繰り返し伸縮試験」を実施するための装置を模式的に示したものである。まず、試験を実施するにあたり、試験対象となるフレキシブル回路基板1の両端を、固定部17において、固定板16及び上下可動板18にそれぞれ固定する。この時、フレキシブル回路基板1が縮んだ状態における固定板16と上下可動板18との間の距離は、フレキシブル回路基板1の曲率半径R(mm)の合計値になるように設定した。また、伸びきった状態における固定板16と上下可動板18との間の距離は、フレキシブル回路基板1の曲率半径の合計値の5倍になるように設定した。次いで、上下可動板18を100mm/秒で、100,000回上下に往復移動させた。その後、配線層3の抵抗値が伸縮前の配線層3の抵抗値から10%以上上昇したものを「不良」とみなした。試験数(N)は、各サンプルについて20とした。かかる試験結果を表2に示す。なお、表2における「形状維持可否」は、試験後の形状について、折り曲げ部の曲率半径R(mm)が維持されているか否かに関する評価である。また、「成形可否」は、金型9からフレキシブル回路基板を取り出した後に、曲率半径R(mm)の折り曲げ部が形成されているか否かについて調べたものである。
【0042】
なお、表2において、成形可否の基準、形状維持可否の基準は、
○:曲率半径が設計値の±10%未満、
△:曲率半径が設計値の±10%以上±20%未満、
×:曲率半径が設計値の±20%以上、
であって、外観の基準は、
○:絶縁フィルム又は絶縁層の流出が認められない、
×:絶縁フィルム又は絶縁層の流出が認められる、とする。
【0043】
【表2】
【0044】
表2より、比較例1〜比較例7では、加熱してもフレキシブル回路基板に折り曲げ部が形成されないことがわかった。また、比較例8〜比較例10では、加熱すると折り曲げ部が形成されるものの、上述の伸縮試験を行うと、折り曲げ部の曲率半径R(mm)が大き
く変化し、曲率半径R(mm)を保つことが難しいことがわかった。そこで、同様の試験を下記のサンプルA〜Eに対して実施した。サンプルA〜Eの条件は以下の通りである。
【0045】
サンプルA〜Eでは、本実施形態と同様に、絶縁フィルム2、及び絶縁層4に液晶ポリマーを用いた。即ち、最初に銅張りフィルムとして、片面銅張り液晶ポリマーフィルムであるエスパネックスL(商品名)(新日鉄化学製、フィルム厚:50μm、圧延銅箔の厚さ:18μm、熱変形開始温度:290℃)を用意した。次いで、これらのサンプルをエッチング処理して、図4(a)に示すような配線パターンを有する配線層3を形成し、片面フレキシブル回路基板1を得た。回路基板の幅、配線の幅等は、図中に示すとおりである。そして、表3に示す条件によって折り曲げ部1Aを形成し、折り曲げ部1Aが形成されたフレキシブル回路基板1に対して、上述の伸縮試験を行った。表4にその試験結果を示す。
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
表4に示す試験結果より、サンプルAのように、フレキシブル回路基板1の表面温度が100℃となるように加熱すると、折り曲げ部1Aを形成すること自体が難しいということがわかった。一方、サンプルEのように、フレキシブル回路基板1の表面温度が300℃となるように加熱すると、液晶ポリマーの熱変形開始温度を上回ることになるので、液晶ポリマーの熱変形が開始し、液晶ポリマーが流動してしまうことがわかった。即ち、折り曲げ部1Aを形成しても、加熱後に折り曲げ部1Aの曲率半径R(mm)を維持することが難しいということがわかった。また、液晶ポリマーが流動してしまうので、外観も許容レベルに達しないことが確認された。なお、サンプルB〜Dのように、フレキシブル回路基板1の表面温度が150℃以上であって、液晶ポリマーの熱変形開始温度未満であれば、折り曲げ部1Aを形成でき、かつ、上述の試験を行った後も折り曲げ部1Aの曲率半径R(mm)は維持され、さらに外観も許容レベルであることがわかった。すなわち「150℃」とは、折り曲げ部1Aを形成することができ、かつ、伸縮試験を施しても形成された折り曲げ部1Aの曲率半径R(mm)が維持されるための下限加熱温度いうことができる(本実施形態では液晶ポリマーを用いているが、他の材料を用いる場合は、当然、この温度も変わる可能性がある)。なお、ここでは加熱時間を1時間に設定しているが、発明者らの鋭意検討によると、加熱時間が1時間以内であっても、「成形可否」「形状維持可否」「外観」は、十分に許容レベルに達することがわかった。
【0049】
以上より、次のことがいえる。
・熱硬化性樹脂を用いる場合は、折り曲げ部を成形すること、または折り曲げ部の曲率R(mm)を維持することは出来ない。
・熱可塑性樹脂を用いる場合(液晶ポリマーの場合)は、加熱温度が、フレキシブル回路基板の表面温度が150℃以上かつ液晶ポリマーの熱変形開始温度未満となる温度であ
って、成形時間が1時間以内であると、折り曲げ部1Aを形成することができ、かつ、上述の伸縮試験を行っても、折り曲げ部1Aの曲率半径R(mm)を維持することができることがわかった。また、外観も許容レベルであることがわかった。
【0050】
次に、曲率半径R(mm)ついて考察した。ここでは、サンプルA〜サンプルEと同一構成のフレキシブル回路基板1を、加熱時の表面温度200℃、成形時間1時間の条件の下、曲率半径R(mm)=0.1mm(サンプルF)、0.3mm(サンプルG)でそれぞれ成形し、上述の伸縮試験を行った。成形条件を表5に、試験結果を表6に示す。
【0051】
【表5】
【0052】
【表6】
【0053】
この結果より、曲率半径R(mm)=0.1mmの場合は、「成形可否」「形状維持可否」「外観」ともに許容レベルであるものの、およそ半数の割合で「不良」が発生した。これは、折り曲げ部1Aの曲率半径R(mm)は維持されるものの、曲率半径R(mm)が小さい(=曲率が大きい)ので、折り曲げ部1Aにおいて配線層3がストレスを受け、剥離、破断が生じやすいためと考えられる。また、「不良」が生じる数は、配線をより微細化するとさらに増加するものと考えられる。一方、曲率半径R(mm)=0.3mmの場合は、「成形可否」「形状維持可否」「外観」ともに許容レベルであり、かつ「不良」も発生しなかった。すなわち、折り曲げ部1Aにおける配線の剥離、破断をより確実に防ぎ、接続信頼性をさらに向上させるためには、曲率半径R(mm)を0.3mm以上とすれば好適であることがわかる。
【0054】
以上より、本実施形態によれば、折り曲げ部が形成されているフレキシブル回路基板において、柔軟に変形可能であり、かつ変形が繰り返された場合、電子部品からの放熱がある場合、又は微細配線が形成されている場合にも、配線層の剥離、破断を生じることがない接続信頼性の高いフレキシブル回路基板の製造方法を提供することが可能になる。
【符号の説明】
【0055】
1…フレキシブル回路基板 1A…折り曲げ部 2…絶縁フィルム 3…配線層 4…絶縁層 5…接着層
図1
図2
図3
図4
図5