特許第5717995号(P5717995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5717995
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】分析光発生装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/67 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   G01N21/67 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-170341(P2010-170341)
(22)【出願日】2010年7月29日
(65)【公開番号】特開2012-32210(P2012-32210A)
(43)【公開日】2012年2月16日
【審査請求日】2013年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000142425
【氏名又は名称】アズビル金門株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】内海 慶也
(72)【発明者】
【氏名】結城 興仁
(72)【発明者】
【氏名】山崎 猛
(72)【発明者】
【氏名】吉野 達哉
(72)【発明者】
【氏名】布村 崇裕
【審査官】 波多江 進
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−232024(JP,A)
【文献】 特開平09−010643(JP,A)
【文献】 実開昭50−082851(JP,U)
【文献】 実開昭55−137052(JP,U)
【文献】 特開2003−057153(JP,A)
【文献】 特開昭56−005158(JP,A)
【文献】 特開平7−159377(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/66 − 21/74
G01N 1/28 − 1/44
B05B 17/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導入される液体試料に超音波を加えて噴霧化し、この噴霧化された液体試料にキャリアガスを混合して試料ガスとし、この試料ガスをプラズマ発生部に導いて前記液体試料中の元素を特定するための分析光を生成する分析光発生装置であって、
前記液体試料が導入される容器と、
前記容器に導入された液体試料に超音波を加えて噴霧化する超音波振動子と、
前記超音波振動子によって噴霧化され前記キャリアガスと混合されて前記プラズマ発生部に向かう前記容器内の試料ガスの流路中に当該試料ガスの通過方向に間隔を設けて、かつ当該試料ガスの通過方向に移動可能に設置された複数の防御壁とを備え、
前記複数の防御壁は、
前記超音波振動子の中心部に対向する位置から離れた位置に前記試料ガスを通過させる通路として貫通孔を有し、隣接する防御壁が有する前記貫通孔が重ならないように離隔して設置されている
ことを特徴とする分析光発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載された分析光発生装置において、
前記防御壁および前記プラズマ発生部は、前記容器に対して着脱可能に設けられている
ことを特徴とする分析光発生装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された分析光発生装置において、
前記容器を加熱する加熱手段を備える
ことを特徴とする分析光発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、導入される液体試料に超音波を加えて噴霧化し、この噴霧化された液体試料にキャリアガスを混合して試料ガスとし、この試料ガスをプラズマ発生部に導いて液体試料中の元素を特定するための分析光を生成する分析光発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体試料中の元素を分析するための装置として、ICP発光分光分析装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。このICP発光分光分析装置では、液体試料を超音波を加えて噴霧化し、この噴霧化された液体試料にキャリアガスを混合して試料ガスとし、この試料ガスを高周波プラズマ中に導いて、液体試料中の元素を特定するための分析光を生成する。
【0003】
このICP発光分光分析装置は、高周波発生用の設備が必要となるため、機器が大型となり、消費電力も大きい。また、大型のため、据え置きタイプとなり、現場配管などに直接繋げて元素分析を行うことができない。
【0004】
このため、ICP発光分光分析装置では、現場で直接、工場排水などの液体試料中の元素を分析したいという近年の要望に応えることができない。また、取り扱いやメンテナンス(試料導入部の洗浄など)の容易性の観点からも、ICP発光分光分析装置の現場での使用は不向きである。
【0005】
そこで、本出願人は、マイクロホローカソード放電を利用したプラズマ発生部を用いることにより、装置の小型化を図ることを試みている。
【0006】
図5はマイクロホローカソード放電を利用したプラズマ発生部の電極構造の概略を示す図である。同図において、1−1および1−2は平行平板電極であり、2はこの電極1−1,1−2間にサンドイッチ状に挟み込まれた絶縁板である。電極1−1,1−2および絶縁板2の中央には小径の孔3が形成されている。
【0007】
このような電極構造を有するプラズマ発生部では、電極1−1,1−2間に所定の直流電圧を印加することにより、試料ガスが導かれる小径の孔3にプラズマを発生させ、分析光を生成させる。
【0008】
これにより、大気圧下、小電力、小空間で、高い電流密度のプラズマを発生させることができ、液体試料が導入される容器とプラズマ発生部とを直結させるようにして、装置を小型化することが可能となる。
【0009】
なお、マイクロホローカソード放電については、特許文献2などにもその使用例があるので、ここでの詳細な説明は省略する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平5−232025号公報
【特許文献2】特開2008−181704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、マイクロホローカソード放電を利用し、液体試料が導入される容器とプラズマ発生部とを直結させるようにした場合、図6にその概略図を示すように、噴霧化された液体試料6とキャリアガス7との混合ガス(試料ガス)がダイレクトにプラズマ発生部5に導かれることになる。
【0012】
このため、プラズマ発生部5に導かれる試料ガス中に液滴の大きな液体試料が含まれるものとなり、分析光の発光強度にバラツキが生じ、分析が不安定となるという問題があった。
【0013】
なお、図6において、4−1は液体試料導入口、4−2はキャリアガス導入口、4−3は液体試料導出口、8は超音波振動子であり、超音波振動子8によって容器4内の液体試料6が噴霧化される。
【0014】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、プラズマ発生部に導かれる試料ガス中に含まれる液体試料の液滴を微細化し、安定した分析を連続的に行わせることが可能な分析光発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
このような目的を達成するために本発明は、プラズマ発生部に向かう容器内の試料ガスの流路中に当該試料ガスの通過方向に間隔を設けて、かつ当該試料ガスの通過方向に移動可能に設置された複数の防御壁を備え、複数の防御壁は、超音波振動子の中心部に対向する位置から離れた位置に試料ガスを通過させる通路として貫通孔を有し、隣接する防御壁が有する貫通孔が重ならないように離隔して設置されていることを特徴とする。
【0016】
この発明において、超音波振動子によって噴霧化された液体試料は、キャリアガスと混合されて試料ガスとされ、容器内の流路中をプラズマ発生部に向かう。この途中、試料ガスは、容器内に設置されている防御壁に当たる。
【0017】
この際、噴霧化された液体試料は超音波振動子の中心部から吹き上げられ、この吹き上げられた液体試料とキャリアガスとの混合ガス(試料ガス)が防御壁に当たり、試料ガス中に含まれている液滴の大きな液体試料が振り落とされる。
【0018】
これにより、試料ガスには液滴の小さな液体試料が残り、この試料ガスが超音波振動子の中心部に対向する位置から離れた位置にある複数の防御壁(試料ガスの通過方向に間隔を設けて設置された複数の防御壁)の通路(貫通孔)を通過して、容器内の流路中をプラズマ発生部に向かう。
【0020】
本発明では、試料ガス中に含まれる液体試料の液滴をより小さくするために、試料ガスの通過方向に間隔を設けて防御壁を複数設置している。また、隣接する防御壁が有する通路(貫通孔)を重ならないように離隔して設置している。例えば、1段目の防御壁が有する通路(貫通孔)に対して、2段目の防御壁が有する通路(貫通孔)を180゜離隔した位置とする。
【0021】
また、本発明では、試料ガスの通過方向に防御壁を移動可能に設置し、その位置を調整できるようにしている。なお、防御壁およびプラズマ発生部は、部品の交換やメンテナンスの観点から、容器に対して着脱可能に設けるようにした方がよい。また、容器を加熱する加熱手段を設け、試料ガス中に含まれる液体試料の液滴の微細化を促進するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プラズマ発生部に向かう容器内の試料ガスの流路中に、超音波振動子の中心部に対向する位置から離れた位置に試料ガスを通過させる通路(貫通孔)を有する防御壁を試料ガスの通過方向に間隔を設けて複数設置するようにしたので、試料ガス中に含まれている液滴の大きな液体試料を振り落とし、液滴の小さな液体試料を通過させるようにして、プラズマ発生部に導かれる試料ガス中に含まれる液体試料の液滴を微細化し、安定した分析を連続的に行わせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係る分析光発生装置の一実施の形態の要部を示す構成図である。
図2】コーナ部に超音波振動子を設けるようにした分析光発生装置の要部を示す図である。
図3】防御壁を分割構造としその間に通路を形成するようにした分析光発生装置の要部を示す図である。
図4】容器の周囲にヒータを設けるようにした分析光発生装置の要部を示す構成図である。
図5】マイクロホローカソード放電を利用したプラズマ発生部の電極構造の概略を示す図である。
図6】液体試料が導入される容器とマイクロホローカソード放電を利用したプラズマ発生部とを直結させるようにした場合の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の説明では、本発明の権利範囲に含まれないものも実施の形態として記載されているが、ここでは全て実施の形態として説明する。図1はこの発明に係る分析光発生装置の一実施の形態の要部を示す構成図である。同図において、図6と同一符号は、図6を参照して説明した構成要素と同一或いは同等構成要素を示す。
【0025】
この分析光発生装置100は、本体部101と、プラズマ発生部102と、コネクタ部103とから構成され、本体部101とプラズマ発生部102とを含めた高さ方向の寸法Hは150mm程度、幅方向の寸法Wは80mm程度と小型・コンパクトな構造とされている。
【0026】
〔本体部〕
本体部101は、有底円筒状のステンレス製の容器4を備え、容器4の底部には試料導入口4−1とキャリアガス導入口4−2と試料導出口4−3が設けられている。試料導入口4−1とキャリアガス導入口4−2は、キャリアガス導入口4−2を試料導入口4−1よりも高い位置として、容器4の外周面に設けられている。試料導出口4−3は容器4の底面に設けられている。
【0027】
この本体部101において、試料導入口4−1からは液体試料6が容器4内に連続的に導入され、キャリアガス導入口4−2からはキャリアガス7が連続的に容器4内に導入される。キャリアガス7は、プラズマ発生部102での分析光の発光をし易くするために導入されるガスで、例えばアルゴンガス(Arガス)が用いられる。また、容器4に導入された液体試料6は、容器4の底部を流れて、試料導出口4−3から連続的に排出される。
【0028】
容器4の底部には、容器4に導入された液体試料6、すなわち容器4の底部を流れる液体試料6に超音波を加えて噴霧化する超音波振動子8が設けられている。超音波振動子8は容器4の底部の中央に設けられている。すなわち、容器4の中心線Cに対して、超音波振動子8の中心部(振動中心)を一致させるようにして、超音波振動子8が容器4の底部に設けられている。
【0029】
また、容器4の内周面には、容器4の上端面からネジ部4−4が形成されている。このネジ部4−4はキャリアガス導入口4−2の上方まで続いている。そして、このネジ部4−4にその外周面に形成されたネジ部9aを螺合させて、容器4内に円板状の防御壁9が設置されている。防御壁9も容器4と同じステンレス製とされている。
【0030】
防御壁9には、その中心部を避けた位置(超音波振動子8の中心部に対向する位置から離れた位置)に、試料ガスの通路として貫通孔9bが形成されている。この貫通孔9bは表面張力により液膜が張らない程度の大きさ(例えば、直径5mm以上)とされている。また、防御壁9の上面中央部には、この防御壁9の容器4内の上下方向の位置を調整可能とするための溝9cが形成されている。この例では、溝9cにドライバの先端を差し込んで回すことによって、防御壁9を回転させて容器4内の上下方向の位置を調整することができるものととされいる。
【0031】
容器4内の防御壁9は2段とされている。この例では、試料ガスの通過方向に間隔を設けて、容器4内に2つの防御壁9−1,9−2を設置している。この場合、防御壁9−1,9−2の回転角度位置を調整することにより、1段目の防御壁9−1の貫通孔9bに対して、2段目の防御壁9−2の貫通孔9bを180゜離隔した位置としている。また、防御壁9−1,9−2の容器4内における上下方向の位置を調整することにより、容器4の底部に設けられている超音波振動子8から防御壁9−1までの距離L1および防御壁9−1と防御壁9−2との間の距離L2を予め定められた距離としている。
【0032】
〔プラズマ発生部〕
プラズマ発生部102は、試料ガス導入部10と、マイクロホローカソード電極部11と、キャップ部12とから構成されている。
【0033】
マイクロホローカソード電極部11は、図5にその電極構造を示したように、電極1−1,1−2間に絶縁板2をサンドイッチ状に挟み込んだ構造とされ、その中央に小径の孔(プラズマ発生孔)3が形成されている。この例において、電極1−1,1−2は銅、モリブデン、白金などの部材で形成され、絶縁板2はセラミックとされている。また、プラズマ発生孔3は500μm程度の孔とされている。
【0034】
プラズマ発生部102において、マイクロホローカソード電極部11は試料ガス導入部10の上面に配置され、マイクロホローカソード電極部11を試料ガス導入部10とで挟み込むような形でキャップ部12が設けられている。なお、プラズマ発生部102は試料ガス導入部10とキャップ部12とを接合した一体構造としてもよいが、キャップ部12をねじ蓋方式とするなど、キャップ部12とプラズマ発生部102とを分割可能な構成として、マイクロホローカソード電極部11を必要に応じて交換できるような構成としてもよい。
【0035】
試料ガス導入部10およびキャップ部12は絶縁部材とされている。試料ガス導入部10の中央部には、ロート状の試料ガス導入孔10aが設けられ、この試料ガス導入孔10aよりマイクロホローカソード電極部11のプラズマ発生孔3に試料ガスが導かれるものとされている。マイクロホローカソード電極部11の上面はキャップ部12によって覆われた空間12aとされている。
【0036】
また、試料ガス導入部10の下端部には、その外周にネジ部10bが設けられており、このネジ部10bを容器4の内周面に形成されているネジ部4−4に螺合することによって、容器4の上面にプラズマ発生部102が着脱可能に取り付けられている。
【0037】
〔コネクタ部〕
コネクタ部103は、光ファイバ13と、光ファイバ接合部14とから構成されている。光ファイバ接合部14は、キャップ部12に取り付けられ、プラズマ発生部102内で生じた分析光を光ファイバ13へ導く。光ファイバ13に導かれた分析光は図示されていない外部の分析装置に送られる。
【0038】
〔分析光の生成〕
この分析光発生装置100では、試料導入口4−1から液体試料6が連続的に導入され、容器4の底部を流れて、試料導出口4−3から連続的に排出される。この間、容器4の底部に導入された液体試料6は、超音波振動子8によって超音波が加えられることによって噴霧化される。
【0039】
この噴霧化された液体試料6は、キャリアガス導入口4−2から導入されるキャリアガス7と混合されて試料ガスとなり、容器4内の流路中をプラズマ発生部102に向かう。この途中、試料ガスは、先ず、容器4内に設置されている1段目の防御壁9−1に当たる。
【0040】
この際、噴霧化された液体試料6は超音波振動子8の中心部から吹き上げられ、この吹き上げられた液体試料6とキャリアガス7との混合ガス(試料ガス)が1段目の防御壁9−1に当たり、試料ガス中に含まれている液滴の大きな液体試料が振り落とされる。
【0041】
これにより、試料ガスには液滴の小さな液体試料が残り、この試料ガスが超音波振動子8の中心部に対向する位置から離れた位置にある防御壁9−1の貫通孔9bを通過して、1段目の防御壁9−1と2段目の防御壁9−2との間の空間AR1に入る。
【0042】
1段目の防御壁9−1と2段目の防御壁9−2との間の空間AR1に入った試料ガスは、この空間AR1を防御壁9−1,9−2に沿って進み、2段目の防御壁9−2の貫通孔9bを通過して、2段目の防御壁9−2と試料ガス導入部10との間の空間AR2に入る。
【0043】
そして、2段目の防御壁9−2と試料ガス導入部10との間の空間AR2に入った試料ガスは、試料ガス導入部10の試料ガス導入孔10aに入る。そして、この試料ガス導入孔10aに入った試料ガスが、マイクロホローカソード電極部11のプラズマ発生孔3に導かれて、分析光が生成される。
【0044】
この場合、1段目の防御壁9−1の貫通孔9bに対して、2段目の防御壁9−2の貫通孔9bは180゜離隔した位置にあり、試料ガス導入部10の試料ガス導入孔10aは容器4の中央にあるので、試料ガスの中継経路が長くなる。これにより、試料ガスに含まれる液体試料の液滴が徐々に小さくなり、微細化されて行く。
【0045】
このようにして、本実施の形態では、プラズマ発生部102に導かれる試料ガス中に含まれる液体試料の液滴が微細化されるので、プラズマ発生部102での分析光の発光強度にバラツキが生じなくなり、安定した分析を連続的に行わせることができるようになる。
【0046】
本実施の形態では、防御壁9−1,9−2をねじ込み式としているので、プラズマ発生部102での分析光の発光強度にバラツキが生じないように、防御壁9−1,9−2の上下方向の位置を必要に応じて任意の高さに調整することが可能である。また、プラズマ発生部102や防御壁9−1,9−2をねじ込み式としているので、部品の交換やメンテナンスも容易であり、現場での使用にも適している。
【0047】
なお、上述した実施の形態では、試料ガスが通過する通路として貫通孔9bを防御壁9に形成するようにしたが、防御壁9の外周面に切欠を形成し、この切欠(防御壁9の外周面の一部と容器4の内周面との間の隙間)を試料ガスが通過する通路とするようにしてもよい。
【0048】
また、上述した実施の形態では、防御壁9を防御壁9−1と9−2の2段としたが、さらに防御壁9の段数を増やすようにしてもよい。防御壁9を3段以上設置する場合も、2段の場合と同様、前段の防御壁9の貫通孔9bに対して、後段の防御壁9の貫通孔9bを180゜離隔した位置とするように配置する。
【0049】
また、本実施の形態では、防御壁9を複数段配置する場合、貫通孔9bを180゜離隔した位置とするが、必ずしも180゜隔離した位置としなくてもよい。すなわち、隣接する防御壁9の貫通孔9bが重ならなければよく、できるだけ両者を遠ざけるようにした方がよい。また、防御壁9は1段であってもよく、固定されていてもよい。
【0050】
また、上述した実施の形態では、防御壁9(9−1,9−2)を容器4内に水平に配置するようにしているが、貫通孔9b側が低くなるように少し傾けて配置するようにしてもよく、上面をそのような傾斜面とするようにしてもよい。このようにすることによって、防御壁9の上面に付着した試料ガス中の液体試料の液滴を貫通孔9bを通して落下させて、容器4の底部で回収することが可能となる。また、防御壁9−1と9−2との対向面に凹凸を設け、試料ガスが空間AR1を通過する際、その凹凸で試料ガスに含まれる液滴の大きな液体試料を捕捉するようにしてもよい。
【0051】
また、例えば図2に示すように、容器4を傾け、容器4のコーナ部に液体試料6を導入するようにし、この導入された液体試料6を容器4のコーナ部に設けた超音波振動子8によって噴霧化するようにしてもよい。
【0052】
この場合、防御壁9−1における超音波振動子8の中心部(振動中心)に対向する位置はP1点となる。したがって、防御壁9−1に設ける貫通孔9bは、このP1点から離れた位置にあればよい。
【0053】
また、図3に示すように、防御壁15を第1の防御壁15aと第2の防御壁15bとの分割構造とし、防御壁15aと防御壁15bとの間に空間15cを作り、この空間15cを防御壁15が有する通路としてもよい。
【0054】
また、図4に示すように、容器4の周囲にヒータ16を設け、容器4を加熱するようにし、試料ガス中に含まれる液体試料の液滴の微細化を促進するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の分析光発生装置は、導入される液体試料に超音波を加えて噴霧化し、この噴霧化された液体試料にキャリアガスを混合して試料ガスとし、この試料ガスをプラズマ発生部に導いて液体試料中の元素を特定するための分析光を生成する分析光発生装置として、現場で直接、工場排水などの液体試料中の元素の分析を行う際に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1−1,1−2…電極(平行平板電極)、2…絶縁板、3…小径の孔(プラズマ発生孔)、4…容器、4−1…液体試料導入口、4−2…キャリアガス導入口、4−3…液体試料導出口、4−4…ネジ部、6…液体試料、7…キャリアガス、8…超音波振動子、9(9−1,9−2)…防御壁、9a…ネジ部、9b…貫通孔(通路)、9c…溝、10…試料ガス導入部、10a…試料ガス導入孔、10b…ネジ部、11…マイクロホローカソード電極部、12…キャップ部、12a…空間、13…光ファイバ、14…光ファイバ接合部、15…防御壁、15a…第1の防御壁、15b…第2の防御壁、15c…空間(通路)、16…ヒータ、AR1,AR2…空間、100…分析光発生装置、101…本体部、102…プラズマ発生部、103…コネクタ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6