特許第5718013号(P5718013)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718013
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ヒートポンプの制御方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 1/00 20060101AFI20150423BHJP
   F25B 30/02 20060101ALI20150423BHJP
   F24H 1/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   F25B1/00 304L
   F25B30/02 F
   F25B1/00 304Z
   F25B1/00 371J
   F24H1/00 611Q
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-231776(P2010-231776)
(22)【出願日】2010年10月14日
(65)【公開番号】特開2012-83080(P2012-83080A)
(43)【公開日】2012年4月26日
【審査請求日】2013年10月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】390002886
【氏名又は名称】株式会社長府製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【弁理士】
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100163267
【弁理士】
【氏名又は名称】今中 崇之
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 望
【審査官】 鈴木 充
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−025517(JP,A)
【文献】 特開平08−028996(JP,A)
【文献】 特開昭62−217068(JP,A)
【文献】 特開2005−351588(JP,A)
【文献】 特開昭63−127057(JP,A)
【文献】 特開2008−121977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 1/00
F24H 1/00
F25B 30/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張弁によって減圧した冷媒を、蒸発器で蒸発させて外気の熱を吸熱させ圧縮機によって圧縮して水熱交換器で水を加熱するための熱源とするヒートポンプの制御方法において、
前記水熱交換器で前記水に与えられる熱エネルギーが、前記圧縮機の単位消費電力に対して最大となるときの、前記水熱交換器に入水する前記水の温度X、該水熱交換器から出湯される湯の温度Y、前記圧縮機に吸入される前記冷媒の過熱度Z、及び前記圧縮機から吐出される前記冷媒の温度Tを、前記温度Tが異なる値となる条件下で計測して3組のX、Y、Z、Tを得、該3組のX、Y、Z、TをT=A×X+B×Y+C×Zにそれぞれ代入してなる3つの方程式からA、B、Cを算出する準備工程と、
前記水熱交換器に入水する前記水の温度をX’、該水熱交換器から出湯される湯の温度をY’、前記圧縮機に吸入される前記冷媒の過熱度をZ’、該圧縮機から吐出される該冷媒の温度をT’として、予め設定された時間間隔で、X’、Y’、Z’及びT’の計測と、計測されたX’、Y’及びZ’を基にしてA×X’+B×Y’+C×Z’の算出値である目標吐出温度T1の取得とを行い、前記計測された温度T’が前記目標吐出温度T1に近づくように前記膨張弁の開度を調整して、前記水を加熱する加熱制御工程とを有し、
前記圧縮機に吸入される前記冷媒の過熱度は、前記圧縮機に吸入される冷媒の温度を計測する吸入サーミスタにより検知した温度から、前記蒸発器に取り付けられて、前記冷媒の蒸発温度を計測する蒸発サーミスタにより検知した温度を差し引くことによって得られることを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のヒートポンプの制御方法において、前記準備工程で、前記外気の温度を複数の温度領域に分け、該温度領域ごとに、前記A、B、Cを算出し、
前記加熱制御工程で、前記X’、Y’、Z’及びT’の計測と共に、前記外気の温度を計測し、計測された該外気の温度が属する前記温度領域に対して前記準備工程で算出したA、B、Cを用いてA×X’+B×Y’+C×Z’から前記目標吐出温度T1を算出することを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【請求項3】
請求項1記載のヒートポンプの制御方法において、前記準備工程で、算出されるA、B又はCが、実際に記憶できる所定の範囲W1外の値となる場合には、前記T=A×X+B×Y+C×Zの代わりに、T=A×X+B×Y+C×Z+Dを用いて、
A、B及びCが該所定の範囲W1内になるA、B、CとDを求めて、
前記加熱制御工程で、前記目標吐出温度T1の算出に、A×X’+B×Y’+C×Z’の代わりに、A×X’+B×Y’+C×Z’+Dを用いることを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【請求項4】
請求項3記載のヒートポンプの制御方法において、前記準備工程で、前記外気の温度を複数の温度領域に分け、該温度領域ごとに、前記A、B、C、Dを算出し、
前記加熱制御工程で、前記X’、Y’、Z’及びT’の計測と共に、前記外気の温度を計測し、計測された該外気の温度が属する前記温度領域に対して前記準備工程で算出したA、B、C、Dを用いてA×X’+B×Y’+C×Z’+Dから前記目標吐出温度T1を算出することを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒートポンプの制御方法において、前記加熱制御工程で、前記目標吐出温度T1が前記水熱交換機から出湯される湯の目標出湯温度Y1より低くなっているときは、前記計測された温度T’が、前記目標出湯温度Y1に近づくように前記膨張弁の開度を調整することを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のヒートポンプの制御方法において、前記加熱制御工程で、前記目標吐出温度T1が予め設定された限界温度Hより高温になっているときは、前記温度T’が、該限界温度Hに近づくように前記膨張弁の開度を調整することを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のヒートポンプの制御方法において、前記加熱制御工程で、前記目標吐出温度T1が、予め設定された時間以上、予め定められた安定温度領域W2内で保たれた後に、前記温度X’が予め設定された温度より高くなり、かつ、前記目標吐出温度T1が前記安定温度領域W2外の温度になったときには、前記温度T’が前記安定温度領域W2内の温度に近づくように前記膨張弁の開度を調整することを特徴とするヒートポンプの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気中のエネルギーを用いて水を加熱するヒートポンプの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプによる水の加熱は、消費電力が抑制され二酸化炭素の排出量が削減されるため注目されている。ヒートポンプの熱効率(COP)は、圧縮機の単位消費電力に対する水に与えられる熱エネルギーの値から求められ、この熱効率を高めるためのヒートポンプの制御方法が特許文献1、2、3に記載されている。
特許文献1、2、3では、ヒートポンプの熱効率を高水準に保つための圧縮機から吐出される冷媒の温度が目標吐出温度として定められ、圧縮機から吐出される冷媒の温度を、この目標吐出温度に近づくような制御がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3518475号公報
【特許文献2】特許第3856025号公報
【特許文献3】特開2009−92331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度がヒートポンプの熱効率に影響を及ぼすことが一般的に知られているのにも関わらず、特許文献1、2、3では、目標吐出温度を求めるにあたり、この圧縮機に吸入される冷媒の過熱度が直接的に考慮されていないという問題があった。
圧縮機に吸入される冷媒の過熱度は、冷媒の密度に密接に関連しており、冷媒の過熱度が高くなると冷媒密度は低くなり、冷媒の過熱度(加熱度)が低くなると冷媒密度は高くなる。そして、冷媒密度が低くなりすぎると、圧縮機が一度に圧縮する冷媒量が少なくなってヒートポンプの熱効率の低下を招き、冷媒密度が高くなりすぎると、圧縮機に作用する抵抗が大きくなってヒートポンプの熱効率が低下するため、冷媒の過熱度がヒートポンプの熱効率に及ぼす影響は小さくない。
本発明は、かかる事情に鑑みてなされるもので、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を考慮して膨張弁の開度を調整するヒートポンプの制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的に沿う本発明に係るヒートポンプの制御方法は、膨張弁によって減圧した冷媒を、蒸発器で蒸発させて外気の熱を吸熱させ圧縮機によって圧縮して水熱交換器で水を加熱するための熱源とするヒートポンプの制御方法において、前記水熱交換器で前記水に与えられる熱エネルギーが、前記圧縮機の単位消費電力に対して最大となるときの、前記水熱交換器に入水する前記水の温度X、該水熱交換器から出湯される湯の温度Y、前記圧縮機に吸入される前記冷媒の過熱度Z、及び前記圧縮機から吐出される前記冷媒の温度Tを、前記温度Tが異なる値となる条件下で計測して3組のX、Y、Z、Tを得、該3組のX、Y、Z、TをT=A×X+B×Y+C×Zにそれぞれ代入してなる3つの方程式からA、B、Cを算出する準備工程と、前記水熱交換器に入水する前記水の温度をX’、該水熱交換器から出湯される湯の温度をY’、前記圧縮機に吸入される前記冷媒の過熱度をZ’、該圧縮機から吐出される該冷媒の温度をT’として、予め設定された時間間隔で、X’、Y’、Z’及びT’の計測と、計測されたX’、Y’及びZ’を基にしてA×X’+B×Y’+C×Z’の算出値である目標吐出温度T1の取得とを行い、前記計測された温度T’が前記目標吐出温度T1に近づくように前記膨張弁の開度を調整して、前記水を加熱する加熱制御工程とを有し、前記圧縮機に吸入される前記冷媒の過熱度は、前記圧縮機に吸入される冷媒の温度を計測する吸入サーミスタにより検知した温度から、前記蒸発器に取り付けられて、前記冷媒の蒸発温度を計測する蒸発サーミスタにより検知した温度を差し引くことによって得られる
【0006】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、前記準備工程で、前記外気の温度を複数の温度領域に分け、該温度領域ごとに、前記A、B、Cを算出し、前記加熱制御工程で、前記X’、Y’、Z’及びT’の計測と共に、前記外気の温度を計測し、計測された該外気の温度が属する前記温度領域に対して前記準備工程で算出したA、B、Cを用いてA×X’+B×Y’+C×Z’から前記目標吐出温度T1を算出するのが好ましい。
【0007】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、前記準備工程で、算出されるA、B又はCが、実際に記憶できる所定の範囲W1外の値となる場合には、前記T=A×X+B×Y+C×Zの代わりに、T=A×X+B×Y+C×Z+Dを用いて、A、B及びCが該所定の範囲W1内になるA、B、CとDを求めて、前記加熱制御工程で、前記目標吐出温度T1の算出に、A×X’+B×Y’+C×Z’の代わりに、A×X’+B×Y’+C×Z’+Dを用いるのが好ましい。
【0008】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、前記準備工程で、前記外気の温度を複数の温度領域に分け、該温度領域ごとに、前記A、B、C、Dを算出し、前記加熱制御工程で、前記X’、Y’、Z’及びT’の計測と共に、前記外気の温度を計測し、計測された該外気の温度が属する前記温度領域に対して前記準備工程で算出したA、B、C、Dを用いてA×X’+B×Y’+C×Z’+Dから前記目標吐出温度T1を算出するのが好ましい。
【0009】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、前記加熱制御工程で、前記目標吐出温度T1が前記水熱交換機から出湯される湯の目標出湯温度Y1より低くなっているときは、前記計測された温度T’が、前記目標出湯温度Y1に近づくように前記膨張弁の開度を調整するのが好ましい。
【0010】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、前記加熱制御工程で、前記目標吐出温度T1が予め設定された限界温度Hより高温になっているときは、前記温度T’が、該限界温度Hに近づくように前記膨張弁の開度を調整するのが好ましい。
【0011】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、前記加熱制御工程で、前記目標吐出温度T1が、予め設定された時間以上、予め定められた安定温度領域W2内で保たれた後に、前記温度X’が予め設定された温度より高くなり、かつ、前記目標吐出温度T1が前記安定温度領域W2外の温度になったときには、前記温度T’が前記安定温度領域W2内の温度に近づくように前記膨張弁の開度を調整するのが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るヒートポンプの制御方法は、水熱交換器で水に与えられる熱エネルギーが、圧縮機の単位消費電力に対して最大となるときの、水熱交換器に入水する水の温度X、水熱交換器から出湯される湯の温度Y、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度Z、及び圧縮機から吐出される冷媒の温度Tを、温度Tが異なる値となる条件下で計測して3組のX、Y、Z、Tを得、3組のX、Y、Z、TをT=A×X+B×Y+C×Zにそれぞれ代入してなる3つの方程式からA、B、Cを算出する準備工程と、水熱交換器に入水する水の温度をX’、水熱交換器から出湯される湯の温度をY’、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度をZ’、圧縮機から吐出される冷媒の温度をT’として、予め設定された時間間隔で、X’、Y’、Z’及びT’の計測と、計測されたX’、Y’及びZ’を基にしてA×X’+B×Y’+C×Z’の算出値である目標吐出温度T1の取得とを行い、温度T’が目標吐出温度T1に近づくように膨張弁の開度を調整する加熱制御工程とを有するので、圧縮機に吸入される冷媒の過熱度を考慮した膨張弁の開度調整によりヒートポンプを制御することが可能である。
【0013】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、準備工程で、外気の温度を複数の温度領域に分け、温度領域ごとに、A、B、Cを算出し、加熱制御工程で、X’、Y’、Z’及びT’の計測と共に、外気の温度を計測し、計測された外気の温度が属する温度領域に対して準備工程で算出したA、B、Cを用いてA×X’+B×Y’+C×Z’から目標吐出温度T1を算出する場合、実際の外気の温度に近い条件下で算出されたA、B、Cを用いて目標吐出温度T1を算出でき、外気温度に合わせた膨張弁の開度調整が可能である。
【0014】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、準備工程で、算出されるA、B又はCが、実際に記憶できる所定の範囲W1外の値となる場合に、T=A×X+B×Y+C×Zの代わりに、T=A×X+B×Y+C×Z+Dを用いて、A、B及びCが所定の範囲W1内になるA、B、CとDを求めて、加熱制御工程で、目標吐出温度T1の算出に、A×X’+B×Y’+C×Z’の代わりに、A×X’+B×Y’+C×Z’+Dを用いる場合、A、B、Cに設定可能な数字に実装面上の制限があったとしても、その制限内の数字に収まる値を用いることが可能である。
【0015】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、準備工程で、外気の温度を複数の温度領域に分け、温度領域ごとに、A、B、C、Dを算出し、加熱制御工程で、X’、Y’、Z’及びT’の計測と共に、外気の温度を計測し、計測された外気の温度が属する温度領域に対して準備工程で算出したA、B、C、Dを用いてA×X’+B×Y’+C×Z’+Dから目標吐出温度T1を算出する場合、実際の外気の温度に近い条件下で算出されたA、B、C、Dを用いて目標吐出温度T1を算出でき、外気温度に合わせた膨張弁の開度調整が可能である。
【0016】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、加熱制御工程で、目標吐出温度T1が水熱交換機から出湯される湯の目標出湯温度Y1より低くなっているときに、計測された温度T’が、目標出湯温度Y1に近づくように膨張弁の開度を調整する場合、沸き上げ開始直後で水熱交換器から出湯する湯の温度Y’が低く、目標吐出温度T1に目標出湯温度Y1より低い温度が算出された際には、計測された温度T’を目標吐出温度T1に近づける制御に比べ、水の温度の昇温率を早期に高めることができる。
【0017】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、加熱制御工程で、目標吐出温度T1が予め設定された限界温度Hより高温になっているとき、温度T’が、限界温度Hに近づくように膨張弁の開度を調整する場合、目標吐出温度T1を算出する際に用いられる温度(例えば水熱交換器から出湯する湯の温度Y’)の値が何らかの理由で実際の温度から大きくかけ離れた値となって目標吐出温度T1が想定温度を超えるようになったときには、目標吐出温度T1を無視した制御に切り替えて、COPの低下及び機器の故障を抑制することができる。
【0018】
本発明に係るヒートポンプの制御方法において、加熱制御工程で、目標吐出温度T1が、予め設定された時間以上、予め定められた安定温度領域W2内で保たれた後に、温度X’が予め設定された温度より高くなり、かつ、目標吐出温度T1が安定温度領域W2外の温度になったときに、温度T’が安定温度領域W2内の温度に近づくように膨張弁の開度を調整する場合、必要以上に温度T’を低下、あるいは上昇することによるCOPの低下を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施の形態に係るヒートポンプの制御方法が適用されるヒートポンプユニットの回路図である。
図2】同ヒートポンプユニットによって湯の沸き上げを行った際の各種温度変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
図1に示すように、本発明の一実施の形態に係るヒートポンプの制御方法が適用されるヒートポンプユニット10は、貯湯タンク11の水を加熱する加熱装置であり、冷媒が循環する冷媒循環回路12を備えている。
【0021】
冷媒循環回路12には、冷媒を熱源に貯湯タンク11からの水を加熱する水熱交換器13と、水熱交換器13から送り出された気液混合状態の冷媒を減圧する膨張弁14と、減圧された冷媒を蒸発させて外気の熱を吸熱させる蒸発器15と、蒸発器15でガス状となった冷媒を圧縮する圧縮機16が設けられている。
また、冷媒循環回路12には、圧縮機16から送られる冷媒の圧力が予め定められた値(例えば13MPa)以上になった際に、冷媒循環回路12を構成する管や機器等に破損が生じないように圧縮機16の運転を停止させるための圧力スイッチ17が取り付けられている。
【0022】
水熱交換器13は、貯湯タンク11等と共に湯水循環回路18を形成している。湯水循環回路18には循環ポンプ19が取り付けられており、循環ポンプ19が作動すると、貯湯タンク11の底部から水熱交換器13に水が送られ、水熱交換器13で加熱され湯となり、貯湯タンク11の上部に戻される。
湯水循環回路18には、水熱交換器13に入水する水の温度を計測する入水サーミスタ20と、水熱交換器13から出湯する湯の温度を計測する出湯サーミスタ21が取り付けられている。
また、湯水循環回路18には、水熱交換器13の湯の出側と貯湯タンク11の底部を連結するバイパス管23と、水熱交換器13からの湯の送り先を、貯湯タンク11の上部にするか、バイパス管23を介して貯湯タンク11の底部にするかを切り替える三方弁24が設けられている。そして、循環ポンプ19及び三方弁24は、プログラムを搭載したチップと記憶デバイス等を備えた制御装置26に信号接続されている。
【0023】
ヒートポンプユニット10には、圧縮機16等の制御を行うHP制御装置27が設けられている。
制御装置26は、HP制御装置27と信号通信が可能であり、HP制御装置27に対して圧縮機16等の運転指令信号を出力すると共に、循環ポンプ19に作動信号を送信して、貯湯タンク11内の水の沸き上げ運転を行う。更に、制御装置26は、HP制御装置27を介して出湯サーミスタ21で計測される水熱交換器13から出湯する湯の温度を計測可能であり、この出湯サーミスタ21を介して計測する湯温が、予め設定された温度(例えば40℃)以下の場合には、水熱交換器13からの湯がバイパス管23を介して貯湯タンク11の底部に送られるように三方弁24の切り替えを行い、貯湯タンク11の上部にある湯の温度を下げないための制御を行う。そして、制御装置26は、出湯サーミスタ21を介して計測する湯温が予め設定された温度よりも高温となったのを検知したとき、三方弁24を切り替えて、水熱交換器13からの湯を貯湯タンク11の上部に供給する。
【0024】
貯湯タンク11には、異なる高さ位置に複数(本実施の形態では5つ)の残湯サーミスタ28a〜28eが設けられている。制御装置26は、残湯サーミスタ28a〜28eを介して貯湯タンク11の異なる高さ位置の温度を一定時間間隔で計測し、貯湯タンク11内にある湯の状態を検出する。
なお、貯湯タンク11の底部及び上部には、貯湯タンク11に水道水を給水する給水管29及び貯湯タンク11内の湯を台所や浴槽等に供給するための出湯管29aがそれぞれ接続されている。給水管29には、図示しない減圧弁が配置されている。
【0025】
冷媒循環回路12に設けられている膨張弁14は、HP制御装置27から出力される信号によって開度が調整され、液状の冷媒を膨張させて、その圧力を所定の値に低下する。
蒸発器15は、膨張弁14で減圧された冷媒を蒸発させ、冷媒に外気の熱を吸熱させることができる。蒸発器15には、外気を蒸発器15の表面に供給して蒸発器15の仕事効率を高めるファン30が近接配置されている。ファン30はHP制御装置27からの信号によって所定の回転数で回転する。
【0026】
蒸発器15と圧縮機16を接続する導管には、水熱交換器13から膨張弁14に送られる冷媒を熱源に蒸発器15から圧縮機16に向かう冷媒を加熱する内部熱交換器31が設けられている。内部熱交換器31は、水熱交換器13から送り出される冷媒が、通常、蒸発器15でガス状となった冷媒に比べて高い(例えば10℃高い)温度であることから、水熱交換器13から膨張弁14に送られる冷媒を熱源に蒸発器15から圧縮機16に送られる冷媒を加熱するために用いられる。
また、蒸発器15には、冷媒の蒸発温度を計測する蒸発サーミスタ32が取り付けられており、HP制御装置27は、蒸発サーミスタ32を介して、冷媒の蒸発温度を検出することができる。
なお、HP制御装置27は、プログラムが搭載されたチップと記憶デバイス等から構成されている。
【0027】
内部熱交換器31で加熱された冷媒は、アキュムレータ33を介して、圧縮機16に流入する。アキュムレータ33は、蒸発器15で冷媒の全てがガス状とならず、ガス状の冷媒と液状の冷媒が混合状態(即ち気液混合状態)で蒸発器15から内部熱交換器31を介して送られてきた際に、圧縮機16内にガス状の冷媒のみを供給するようにしている。
圧縮機16は、図示しないインバータを搭載しており、HP制御装置27からの信号を受けてインバータの周波数を変えることにより冷媒の圧縮量を調整する。ヒートポンプユニット10には外気温度を計測する外気サーミスタ34が取り付けられており、HP制御装置27は、外気サーミスタ34を介して検知した外気温度に応じて所定の周波数でインバータを作動することができる。
【0028】
冷媒循環回路12には、圧縮機16に吸入される冷媒の温度を計測する吸入サーミスタ35と圧縮機16から吐出される圧縮された冷媒の温度を計測する吐出管サーミスタ36が装着されている。HP制御装置27は、吸入サーミスタ35及び吐出管サーミスタ36に信号接続されており、吸入サーミスタ35及び吐出管サーミスタ36の各計測値を検知することができる。
【0029】
また、HP制御装置27は、入水サーミスタ20及び出湯サーミスタ21を介して、水熱交換器13で加熱前の水の温度、及び水熱交換器13で加熱された湯の温度をそれぞれ検知することができる。
そして、HP制御装置27は、入水サーミスタ20、出湯サーミスタ21、蒸発サーミスタ32、吸入サーミスタ35及び吐出管サーミスタ36を介して取得した各温度値を基にして、圧縮機16の単位消費電力に対して、水熱交換器13で冷媒から水に与えられる熱エネルギー(以下、「COP」ともいう)が高水準となるように、膨張弁14の開度調整を行う。以下、COPを高水準に保つための膨張弁14の開度調整方法、即ちヒートポンプの制御方法について説明する。
【0030】
本実施の形態に係るヒートポンプの制御方法は、COPが最大となるときの吸入サーミスタ35及び吐出管サーミスタ36の各計測値等の関係を求めてCOPを高水準に保つための条件を求める準備工程と、準備工程で求めた条件を基にして膨張弁14の開度を調整し貯湯タンク11の底部から送られる水を加熱する加熱制御工程とから構成される。
一般的にヒートポンプユニットには、外気温度について動作保証温度が存在する。ヒートポンプユニット10もその例外ではなく、動作保証温度が存在し、本実施の形態では、動作保証温度は−10℃以上43℃以下である。
【0031】
準備工程では、この動作保証温度内で外気の温度を複数の温度領域に分け、その温度領域ごとに、COPが最大となる条件が求められる。そして、加熱制御工程では、HP制御装置27が、外気サーミスタ34によって計測される外気温度から現在の外気温度が属する温度領域を検知し、その温度領域について準備工程で求めた条件を基にして膨張弁14の開度調整を行う。
本実施の形態では、外気の温度を、−10℃以上7℃未満、7℃以上16℃未満、及び16℃以上43℃以下の3つの温度領域に分けて、膨張弁14の開度調整を行っている。
【0032】
準備工程では、予め定めた外気の温度領域ごとに、まず、膨張弁14の開度を変えながら、COPの算出を行いCOPが最大になる状態を探知する。
COPは、湯水循環回路18を循環する水が、水熱交換器13で冷媒循環回路12を循環する冷媒から与えられる単位時間当たりの熱エネルギーを、圧縮機16の単位時間当たりの消費電力量で除算して得ることができる。
そして、COPが最大となる状態が検知されると、HP制御装置27は、水熱交換器13に入水する水の温度Xと、水熱交換器13から出湯する湯の温度Yと、圧縮機16に吸入される冷媒の過熱度Zと、圧縮機16から吐出される冷媒の温度Tの各値を記憶する。
ここで、HP制御装置27は、温度X、温度Y及び温度Tをそれぞれ入水サーミスタ20、出湯サーミスタ21及び吐出管サーミスタ36を介して取得でき、過熱度Zについては、吸入サーミスタ35を介して検知した温度から蒸発サーミスタ32を介して検知した温度を差し引くことによって得ることができる。
【0033】
HP制御装置27がこの温度X、温度Y、過熱度Z及び温度Tの各値を記憶する処理は、外気の温度領域ごとに、温度Tが異なる3つの条件下で行われる。なお、外気温度、水熱交換器13への入水温度及び水熱交換器13からの出湯温度のうち少なくとも一つの値を変えると、温度Tが異なることになる。
そして、HP制御装置27は、外気の温度領域ごとに、3組のX、Y、Z、Tを得、この3組のX、Y、Z、TをT=A×X+B×Y+C×Zにそれぞれ代入してなる3つの方程式からA、B、Cの値を算出する。
【0034】
例えば、−10℃以上7℃未満の温度領域での計測結果が、1)X=9℃、Y=90℃、Z=6.3℃、T=117.8℃、2)X=5℃、Y=90℃、Z=4.9℃、T=119.9℃、3)X=9℃、Y=85℃、Z=−1.2℃、T=121℃であった場合、
117.8=A×9+B×90+C×6.3、
119.9=A×5+B×90+C×4.9、
121=A×9+B×85+C×(−1.2)
の3つの方程式が得られるので、この連立方程式からA、B、Cを算出することができる。
なお、通常Zがプラスの値であるのに対し、3)の計測結果でZがマイナスの値になっているのは、蒸発器15から圧縮機16にガス状の冷媒が送られる際に発生する圧力損失等が原因となっている。
【0035】
また、HP制御装置27が備えるメモリ容量の制限等による実装面上の理由により、A、B、Cの値として実際に記憶できる数値の範囲が、所定の範囲に制限されている場合がある。
本実施の形態では、A、B、Cに設定可能な数値を格納しているメモリ容量が256ビットであり、A、B、Cに設定可能な値は−128/32以上127/32以下の範囲W1内の値に制限されている。更に、A、B、Cそれぞれに対して設定できる値は、Nを整数としてN/32の値に限られている。従って、通常、A、B、Cに設定可能な値で、各方程式の右辺を算出した値をそれぞれ各方程式の左辺と同一の値にはできない。
このため、A、B、Cには、各方程式において右辺の算出値が左辺の値の±α%以内の範囲となる値が設定され(αは、0より大きく1以下の数字で、例えば0.5)、A、B、Cには具体的にそれぞれ、A=−2/32、B=45/32、C=−44/32が設定される。
そして、このA=−2/32、B=45/32、C=−44/32が、外気が−10℃以上7℃未満の温度領域において、後の加熱制御工程で膨張弁14の開度調整を行うための基となる演算式に採用される係数となる。
なお、範囲W1は、−128/32以上127/32以下の範囲に限定されず、他の範囲にすることもできる。
【0036】
これに対し、外気が7℃以上16℃未満の温度領域での計測結果から得られる方程式は、
90=A×17+B×65+C×10.4、
94.2=A×9+B×65+C×7.7、
117.8=A×9+B×90+C×6.3
となり、これらの方程式を基に、A、B、Cを求めると、A、B、Cは範囲W1内の値にならない。
【0037】
そこで、HP制御装置27は、A、B又はCが所定の範囲W1外の値となる場合、T=A×X+B×Y+C×Zの代わりに、T=A×X+B×Y+C×Z+Dの式を用いて、A、B及びCが所定の範囲W1内になるA、B、CとDを求める。
具体的には、
90=A×17+B×65+C×10.4+D、
94.2=A×9+B×65+C×7.7+D、
117.8=A×9+B×90+C×6.3+D
の3つの方程式について、右辺の算出値が、左辺の値の±α%以内の範囲になるA、B、C、Dの値が求められ、それぞれA=−40/32、B=34/32、C=68/32、D=20となる。
そして、このA=−40/32、B=34/32、C=68/32、D=20が、外気が7℃以上16℃未満の温度領域において、加熱制御工程で膨張弁14の開度調整をするための基となる演算式に採用される係数となる。
なお、Dについても、HP制御装置27が備えるメモリ容量によって、設定可能な値が0〜255の範囲に制限されている。
【0038】
このように、HP制御装置27は、−10℃以上7℃未満、7℃以上16℃未満、及び16℃以上43℃以下の外気の温度領域ごとに、圧縮機16から吐出される冷媒の温度Tの異なる値となる条件下でA、B、Cを算出し、算出されたA、B、Cが範囲W1内の値であれば、そのA、B、Cを、膨張弁14の開度調整のための演算式の係数として記憶する。
一方、HP制御装置27は、算出されたA又はB若しくはCが範囲W1内の値でない温度領域については、A、B及びCが所定の範囲W1内になるようにA、B、CとDの値を算出して、そのA、B、C、Dを、膨張弁14の開度調整のための演算式の係数として記憶する。
準備工程は、HP制御装置27が外気の各温度領域について膨張弁14の開度調整のための演算式の係数A、B、C、Dを記憶して完了し、この準備工程の完了により、HP制御装置27は、貯湯タンク11の水の加熱制御が可能な状態になる。
【0039】
加熱制御工程は、HP制御装置27が制御装置26から貯湯タンク11の沸き上げ指令信号を受信することによって開始される。
水熱交換器13に入水する水の温度をX’、水熱交換器13から出湯される湯の温度をY’、圧縮機16に吸入される冷媒の過熱度をZ’、圧縮機16から吐出される冷媒の温度をT’とすると、HP制御装置27は、加熱制御工程において予め設定された時間間隔(本実施の形態では、10秒から240秒で具体的には30秒)でX’、Y’、Z’及びT’の計測と共に、外気の温度計測を行う。
HP制御装置27は、X’、Y’、T’及び外気温度をそれぞれ入水サーミスタ20、出湯サーミスタ21、吐出管サーミスタ36及び外気サーミスタ34を介して計測することができ、Z’については、吸入サーミスタ35を介して検出した温度から蒸発サーミスタ32を介して検出した温度を差し引いて算出する。
【0040】
そして、HP制御装置27は、計測された外気温度が属する温度領域に対して記憶しているA、B、Cの値あるいは、A、B、C、Dの値を基に目標吐出温度T1の演算処理を行う。
具体的には、外気温度の計測値が属する温度領域(例えば−10℃以上7℃未満の温度領域)に対して、A、B、Cの値を記憶している場合、HP制御装置27は、計測されたX’、Y’及びZ’を基にしてA×X’+B×Y’+C×Z’の算出値を目標吐出温度T1として取得する。
一方、外気温度の計測値が属する温度領域(例えば7℃以上16℃未満の温度領域)に対して、A、B、C、Dが膨張弁14の開度調整のための演算式の係数として記憶されている場合、HP制御装置27は、計測されたX’、Y’及びZ’を基にしてA×X’+B×Y’+C×Z’+Dの算出値を目標吐出温度T1として取得する。
【0041】
HP制御装置27は、X’、Y’、Z’、T’及び外気温度を計測するごとに目標吐出温度T1を算出し、温度T’がその算出された目標吐出温度T1に近づくように膨張弁14の開度調整を行う。
膨張弁14の開度調整は、一般的なフィードバック制御であるPID制御によりなされる。
本実施の形態では、急激な膨張弁14の開度変更によって、温度T’が目標吐出温度T1を上回る、いわゆるオーバーシュートになるのを回避するため、最新の温度T’の計測値(最後に計測された値)と所定時間前(例えば120秒前)に計測された温度T’の計測値を足して2で割った値と、最新の目標吐出温度T1とを比較して、膨張弁14の開度が決定される。
【0042】
HP制御装置27が貯湯タンク11の沸き上げを開始した時間を0分とすると、加熱制御工程における目標吐出温度T1及び温度T’の推移は、図2に示すようになる。
目標出湯温度Y1は、HP制御装置27に対して制御装置26から貯湯タンク11の沸き上げ開始の指令信号と共に送信される信号によって決定される。また、入水温度X’の温度は、貯湯タンク11の下部から出水される水の温度のため、貯湯タンク11の上部から蓄えられる湯が下部に達するまでは、通常一定の範囲内で保たれる。
なお、図2は、外気温度が7℃、目標出湯温度Y1が65℃、入水温度9℃の条件で貯湯タンク11の沸き上げを行ったときの実験データをグラフ化したものである。
【0043】
出湯温度Y’は、通常、貯湯タンク11の沸き上げを開始する時点(図2では0分の時点)で、目標出湯温度Y1より低く、冷媒循環回路12を循環する冷媒の温度上昇と共に上昇して目標出湯温度Y1と略同一の温度になる。図2では12〜13分付近で出湯温度Y’が目標出湯温度Y1と略同一になっている。
そして、出湯温度Y’が目標出湯温度Y1と略同一になってからは、目標出湯温度Y1が変わらず、かつ外気等に大きな変化がない限り、膨張弁14の開度は大きく変えられることがなく、吐出温度T’と目標吐出温度T1は略同一の温度の状態が保たれる。
【0044】
HP制御装置27は、目標吐出温度T1が、予め設定された時間(2分〜5分の範囲で、本実施の形態では3分)以上、予め定められた安定温度領域W2(−3℃から+3℃の範囲で、本実施の形態では、−2℃から+2℃の温度領域)内で変動する状態になったのを検出して、湯の沸き上げが安定状態になったことを検知する。
HP制御装置27は、湯の沸き上げが安定状態になった後に、温度X’が予め設定された温度(5℃〜15℃の範囲で、本実施の形態では10℃)より高くなり、かつ、目標吐出温度T1が安定温度領域W2外の温度(例えば11℃)になったときには、温度T’が、安定温度領域W2内の温度に近づくように膨張弁14の開度を調整する。
【0045】
温度X’が予め設定された温度より高くなるのは、貯湯タンク11内の上部から流入し貯湯タンク11の上部に蓄えられる湯が貯湯タンク11の下部まで達し、貯湯タンク11内の水が全て沸きあがった状態になりつつあることを意味している。
そして、温度X’が一定温度以上になってもなお、目標吐出温度T1を算出して、温度T’がその算出された最新の目標吐出温度T1に近づくような膨張弁14の開度調整を行うと、必要以上に温度T’が低下してCOPの低下を招く等の現象が生じ得るので、温度T’の温度調整の対象を、算出された最新の目標吐出温度T1にはせず、安定温度領域W2内の温度としている。
ここで、温度T’の対象とされる安定温度領域W2内の温度は、安定温度領域W2の平均温度、下限温度あるいは上限温度のいずれかにすることができる。
【0046】
また、HP制御装置27は、目標吐出温度T1が水熱交換器13から出湯される湯の目標出湯温度Y1より低くなっている状態のときには、温度T’が、目標出湯温度Y1に近づくように膨張弁14の開度を調整する。
これは、沸き上げ開始直後、通常、出湯温度Y’が低温のため目標吐出温度T1が低くなり、温度T’をこの低い目標吐出温度T1に近づける制御を行うと、冷媒が水を十分に加熱(例えば40℃に加熱)できる状態になるまで長い時間を要するためである。
図2に示される実験データでは、沸き上げ開始から2〜3分が経過するまで、目標吐出温度T1が目標出湯温度Y1より低く、温度T’を目標出湯温度Y1に近づけるための制御が行われている。
【0047】
そして、HP制御装置27は、目標吐出温度T1が予め設定された限界温度H(115℃〜135℃の範囲で、本実施の形態ではH=125℃)より高温になっているときには、温度T’が、その限界温度Hに近づくように膨張弁14の開度を調整する。
これは、サーミスタの障害等によって、目標吐出温度T1が想定される温度以上の温度になり得ることを考慮したものであり、目標吐出温度T1が想定温度以上になったときには、吐出温度のT’の目標温度が、目標吐出温度T1から限界温度Hに切り替えられる。
また、ヒートポンプユニット10による貯湯タンク11の沸き上げ運転は、制御装置26からHP制御装置27に運転停止の指示信号が送信されるまで継続され、HP制御装置27は、制御装置26からの運転停止信号により圧縮機16、ファン30等を停止する。
【0048】
ここで、HP制御装置27は、準備工程において、外気の温度領域ごとに3つの条件下で計測したX、Y、Z、Tを基に、A、B、CやA、B、C、Dを算出しているが、X、Y、Z、Tを計測する際の条件を変えれば、算出されるA、B、C、あるいは、A、B、C、Dの値も変わることになる。
例えば、−10℃以上7℃未満の温度領域でA、B、Cを算出するにあたって、COPが最高となったときのX=9℃、Y=90℃、Z=6.3℃、T=117.8℃の計測結果を採用する代わりに他の計測結果X=4℃、Y=90℃、Z=6.3℃、T=113.2℃(XとTの値が異なっている)を採用してA、B、Cを算出すれば、A、B、Cの値は異なる。
【0049】
しかしながら、入水温度X及び出湯温度Yと、冷媒の吐出温度T及び加熱度Zは密接に関係しているため、実際には、X、Y、Z、Tを計測する条件を変えても、算出されるA、B、C、あるいは、A、B、C、Dは大きく変わらない。
また、実験において、外気温度=20.5℃、入水温度X’=20℃、出湯温度Y’=65℃の環境下で、COPが最大となるように膨張弁14の開度調整を行った際のCOPが4.92(このときのZ’及びT’は、Z’=10.3℃、T’=85.9℃)であったのに対し、同環境下で、本実施の形態のヒートポンプの制御を行い、沸き上げが安定状態になったときのCOPは4.91(T’=85.5℃、Z’=10.4℃)となり、その差は0.01であった。これは、本実施の形態に係るヒートポンプの制御方法が高水準のCOPを確保可能であることを意味している。
【0050】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、外気の温度領域は3つであることに限定されず、4つ、5つやそれ以外の数の温度領域を設けることができる。
【符号の説明】
【0051】
10:ヒートポンプユニット、11:貯湯タンク、12:冷媒循環回路、13:水熱交換器、14:膨張弁、15:蒸発器、16:圧縮機、17:圧力スイッチ、18:湯水循環回路、19:循環ポンプ、20:入水サーミスタ、21:出湯サーミスタ、23:バイパス管、24:三方弁、26:制御装置、27:HP制御装置、28a〜28e:残湯サーミスタ、29:給水管、29a:出湯管、30:ファン、31:内部熱交換器、32:蒸発サーミスタ、33:アキュムレータ、34:外気サーミスタ、35:吸入サーミスタ、36:吐出管サーミスタ
図1
図2