(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被検体にX線を照射するX線源と、前記X線源に対向配置され前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器を搭載し前記被検体の周囲を回転するスキャナと、前記X線検出器で検出された前記被検体の撮影部位における複数方向からの透過X線量に基づいて前記被検体の撮影部位における断面像を再構成する画像再構成装置と、再構成された断面像を表示する画像表示装置と、を備えたX線CT装置において、
被検体の位置決め用画像を撮影する位置決め用画像撮影手段と、
前記位置決め用画像を用いて、被検体内部の高吸収体の分布を解析する解析手段と、
解析された高吸収体の分布、該高吸収体以外の部分の既知のX線減弱係数、前記位置決め用画像を撮影する際の照射X線量、及び計測された透過X線量に基づいて前記高吸収体のX線減弱係数を求め、該高吸収体の物質を推定する物質推定手段と、
前記高吸収体の分布及びX線減弱係数を用いて撮影範囲の各断面位置における最適な照射X線量を算出する露出制御手段と、
前記露出制御手段により算出された照射X線量に従って前記被検体の本撮影を行う撮影手段と、を備え、
前記解析手段は、
少なくとも2方向から撮影された各位置決め用画像の濃度分布に基づいて、高吸収体とその他の既知のX線減弱係数を適用する部分とを区分化し、区分化画像を作成する区分化手段と、
前記各区分化画像を複写することにより次元を拡張する次元拡張手段と、
前記次元拡張手段により次元の拡張された各区分化画像の同一座標の区分を比較し、比較結果に応じて該座標の区分を決定する再区分化処理を行うことで前記高吸収体の分布を3次元的に推定し、あるX線照射角度における前記高吸収体の厚みを推定する厚み推定手段と、を備え、
前記物質推定手段は、前記厚み推定手段により推定された前記高吸収体の厚み、該高吸収体以外の部分の既知のX線減弱係数、前記位置決め用画像を撮影する際の照射X線量、及び計測された透過X線量に基づいて前記高吸収体のX線減弱係数を推定することを特徴とするX線CT装置。
被検体にX線を照射するX線源と、前記X線源に対向配置され前記被検体を透過したX線を検出するX線検出器と、前記X線源と前記X線検出器を搭載し前記被検体の周囲を回転するスキャナと、前記X線検出器で検出された前記被検体の撮影部位における複数方向からの透過X線量に基づいて前記被検体の撮影部位における断面像を再構成する画像再構成装置と、再構成された断面像を表示する画像表示装置と、を備えたX線CT装置において、
被検体の位置決め用画像を撮影する位置決め用画像撮影手段と、
前記位置決め用画像を用いて、被検体内部の高吸収体の分布を解析する解析手段と、
解析された高吸収体の分布、該高吸収体以外の部分の既知のX線減弱係数、前記位置決め用画像を撮影する際の照射X線量、及び計測された透過X線量に基づいて前記高吸収体のX線減弱係数を求め、該高吸収体の物質を推定する物質推定手段と、
前記高吸収体の分布及びX線減弱係数を用いて撮影範囲の各断面位置における最適な照射X線量を算出する露出制御手段と、
前記露出制御手段により算出された照射X線量に従って前記被検体の本撮影を行う撮影手段と、を備え、
前記解析手段は、
1方向から撮影された位置決め用画像の被検体領域を全て低吸収体と区分し、該領域の透過線量を水等価長に変換した単区分水等価長スキャノ画像のプロファイルを生成する単区分水等価長プロファイル生成手段と、
前記位置決め用画像の被検体領域をその濃度分布から低吸収体及び高吸収体に区分し、各区分の透過線量をそれぞれ水等価長に変換した二区分水等価長スキャノ画像のプロファイルを生成する二区分水等価長プロファイル生成手段と、
前記単区分水等価長プロファイルと前記二区分水等価長プロファイルとの差分から、前記高吸収体のプロファイルを算出する高吸収体算出手段と、
前記高吸収体のプロファイルに2つのピークが存在するか否かを判定する判定手段と、
前記高吸収体のプロファイルに2つのピークが存在する場合は、該高吸収体の形状を環状とみなし、前記ピークの分布に基づいて前記環の内径及び外径を推定する形状推定手段と、を備え、
前記物質推定手段は、前記形状推定手段により推定された前記高吸収体の形状情報を用いて前記高吸収体のX線減弱係数を推定することを特徴とするX線CT装置。
前記解析手段により前記被検体内部に高吸収体が存在すると判明した場合に、注意喚起のための報知データを生成して報知する注意喚起報知手段を更に備えることを特徴とする請求項1または請求項3に記載のX線CT装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0012】
[第1の実施の形態]
まず、
図1〜
図2を参照して、本実施の形態のX線CT装置1の構成について説明する。
【0013】
図1に示すように、X線CT装置1は、スキャナ2、寝台3、操作卓4、表示装置7、及び操作装置8から構成される。X線CT装置1は、寝台3上の天板5に固定される被検体6をスキャナ2の開口部に搬入してスキャンすることにより、被検体6の透過X線量データを取得する。
【0014】
スキャナ2は、
図2に示すようにX線管201、高電圧発生装置202、コリメータ203、開口部204、X線検出器205、データ収集装置206、回転板207、及び回転板駆動装置208を備える。
【0015】
X線管201はX線源であり、操作卓4の中央制御装置400により制御されて被検体6に対してX線を連続的または断続的に照射する。中央制御装置400は、操作卓4の演算装置42により決定されたX線管電圧(以下、管電圧という)及びX線管電流(以下、管電流という)に従って高電圧発生装置202を制御し、X線管201に印加または供給するX線管電圧及びX線管電流を調整する。
【0016】
コリメータ203は、X線管201から放射されたX線を、例えばコーンビーム(円錐形または角錐形ビーム)等のX線として被検体6に照射させるものであり、開口幅は中央制御装置400により制御される。被検体6を透過したX線はX線検出器205に入射する。
【0017】
X線検出器205は、例えばシンチレータとフォトダイオードの組み合わせによって構成されるX線検出素子群をチャネル方向(周回方向)に例えば1000個程度、列方向(体軸方向)に例えば1〜320個程度配列したものであり、被検体6を介してX線管201に対向するように配置される。X線検出器205はX線管201から放射されて被検体6を透過したX線を検出し、検出した透過X線量データをデータ収集装置206に出力する。
【0018】
データ収集装置206は、X線検出器205に接続され、X線検出器205の個々のX線検出素子により検出される透過X線量データを収集し、画像再構成装置421に出力する。
【0019】
回転板207には、X線管201、コリメータ203、X線検出器205、データ収集装置206が搭載される。回転板207は、回転板駆動装置208から、駆動伝達系を通じて伝達される駆動力によって回転される。
【0020】
図1に示す寝台3は、被検体6が載置される天板5、寝台制御装置、上下動装置、及び天板駆動装置等を備える。寝台制御装置は、上下動装置を制御して寝台3の高さを適切なものにする。また、天板駆動装置を制御して天板5を体軸方向に前後動したり、体軸と垂直方向であって、かつ天板5に平行な方向(左右方向)に移動したりする。これにより、被検体6がスキャナ2のX線照射空間に搬入及び搬出される。
【0021】
操作卓4は、表示装置7、操作装置8、及び記憶装置411を備えた入出力装置41と、画像再構成装置421及び画像処理装置422を備えた演算装置42と、中央制御装置400とを備える。操作卓4はスキャナ2及び寝台3に接続される。
【0022】
中央制御装置400は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。中央制御装置400は、操作装置8からの操作指示に従って、スキャナ2内のX線管201、高電圧発生装置202、コリメータ203、寝台3、回転駆動装置208、データ収集装置206、入出力装置41、及び演算装置42を制御する。
【0023】
また、中央制御装置400は、後述する撮影処理(
図3参照)の手順に従ってX線CT装置1の各部を制御し、被検体6の撮影を行う。撮影処理では、まず被検体6の位置決め画像(スキャノグラム画像)を撮影し、スキャノグラム画像から得られる情報に基づいて、被検体6に照射する最適な管電流及び管電圧を算出し、その管電流及び管電圧に従って本撮影を実行し、本撮影にて得られた透過X線量データに基づいて断層画像を再構成し、表示装置7に表示する。
【0024】
表示装置7は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、中央制御装置400に接続される。表示装置7は画像再構成装置421から出力される再構成画像や位置決め用画像、並びに中央制御装置400や演算装置42が取り扱う種々の情報を表示するものである。
【0025】
操作装置8は、例えば、キーボード、マウス等のポインティングデバイス、テンキー等の入力装置、及び各種スイッチボタン等を備え、操作者によって入力される各種の指示や情報を中央制御装置400に出力する。操作者は、表示装置7及び操作装置8を使用して対話的にX線CT装置1を操作することができる。例えば、後述する注意喚起画面500(
図4参照)において照射X線の最適制御を行うか否かの選択操作や撮影条件の設定操作等を行うことができる。
【0026】
記憶装置411は、ハードディスク等により構成されるものであり、中央制御装置400に接続される。記憶装置411には、X線CT装置1の機能を実現するためのプログラム、装置パラメータ等の撮影に必要なパラメータが記憶される。また、これらのプログラムやパラメータの他、データ収集装置206が収集した透過X線量データや演算装置42により生成された画像等が記憶される。
【0027】
画像再構成装置421は、中央制御装置400の制御によってスキャナ2内のデータ収集装置206が収集した透過X線量データを取得する。位置決め撮影時には、データ収集装置206が収集した透過X線量データを用いて位置決め画像を作成する。また、本撮影時には、データ収集装置206が収集した複数ビューの透過X線量データを用いて断層像を再構成する。
画像処理装置422は、画像データの解析や解析結果に基づいて最適な照射X線量を算出する処理等を行う。
【0028】
次に、本実施の形態に係るX線CT装置1の動作について説明する。
まず、全体の流れを説明する。
図3に示すように、寝台3に載置された被検体6に対して位置決め撮影を行う(ステップS101)。位置決め撮影とは、撮影対象部位を含む部位に対して、スキャナ2を回転させずに一定角度からX線を照射する撮影方法である。
以下の説明において、寝台方向と垂直な方向から撮影した位置決め画像を「縦スキャノ画像」と呼び、寝台方向と水平な方向から撮影した位置決め画像を「横スキャノ画像」と呼ぶ。第1の実施の形態では少なくとも2方向から撮影されたスキャノ画像を用いて被検体6内の金属製留置物(高吸収体)の分布を解析するため、縦スキャノ画像及び横スキャノ画像の撮影を行うものとする。なお、位置決め画像の撮影方向は、縦及び横に限定されるものでなく、任意の方向から撮影された位置決め画像を用いてもよい。
【0029】
次に、演算装置42の画像処理装置422は、ステップS101で得られた位置決め画像の情報を用いて、当該画像に含まれる高吸収体の物質を推定する物質推定処理を行う(ステップS102)。物質推定処理において、演算装置42は、位置決め画像の濃度分布から高吸収体の分布を解析する。本明細書でいうところの高吸収体とは金属製体内留置物または石灰化病変を意味し、そのCT値は、撮影条件にもよるが、骨の数倍程度以上のCT値を示すものとする。すなわち、位置決め画像の濃度分布から高吸収体の存在位置を推定することが可能である。また、以下の説明において、低吸収体とは、高吸収体、寝台領域、空気領域を除く部位である。通常の被検体に相当する程度のCT値範囲をいう。被検体領域が寝台領域全体にかかっている場合は、低吸収体領域と寝台領域とを容易に識別できないことがあるため、この場合は、寝台領域と被検体領域とを分けず、単に低吸収体として区分してもよい。
ステップS102の物質推定処理については後述する。
【0030】
次に、中央制御装置400は、ステップS102の演算装置42による解析結果に基づいて高吸収体の分布を示す注意喚起画面500を操作者に提供し、本撮影の前に注意喚起する(ステップS103)。
【0031】
図4に注意喚起画面500の一例を示す。注意喚起画面500には、ステップS101にて撮影された位置決め画像(例えば、縦スキャノ画像501)が表示される。また、縦スキャノ画像501には、その画素値の濃度分布から高吸収体506と認識される領域が存在することがある。この場合、中央制御装置400は被検体6から取り外すことが可能な高吸収体を取り外すように促すメッセージ502(
図4の「高吸収体を3個見つけました。取り外して問題のないものは、取り外してから本撮影して下さい。」等)を注意喚起画面500内に表示したり、音声案内を再生したりする。
【0032】
また、中央制御装置400は、ステップS103で提示する注意喚起画面500において、高吸収体506の存在位置を「高吸収体A」、「高吸収体B」、「高吸収体C」にようにマーク505とともに明示する。また、マーク505とともに、高吸収体506の物質に応じた照射X線の最適制御を行うか否かを選択させるためのチェックボックス504や、その選択を促すメッセージ503(
図4の「照射X線最適制御を行う場合はチェックボックスにマークして下さい。」等)を表示するようにしてもよい。また、音声メッセージやアラーム音を報知してもよい。
【0033】
注意喚起画面500の高吸収体506に応じた照射X線の最適制御を行うか否かを選択させるためのチェックボックス504にチェックが入力されると、中央制御装置400は、高吸収体506の位置や物質推定処理にて推定された物質情報に応じて最適な管電流・管電圧でX線を照射するための変調曲線を算出する。そして変調曲線に基づいて管電流、管電圧を制御しながら、本撮影を行う(自動露出撮影;ステップS104)。
【0034】
本撮影において、被検体6を透過し、X線検出器205により検出された透過X線量は、データ収集装置206によって収集され、操作卓4の画像再構成装置421へ出力される。画像再構成装置421は、入力された計測データ(透過X線量データ)を用いて断層画像の画像再構成を行う(ステップS105)。
【0035】
画像再構成処理には、スキャナ2で計測され、データ収集装置206から送出された透過X線量データから再構成に不都合なハードウエア特性や物理現象による影響を取り除き、再構成に使用できる投影データとするための各種補正処理(X線強度補正、オフセット補正、ビームハードニング補正、ヘリカル補間等)が含まれる。また、再構成に用いる手法は、例えば、フィルタ補正逆投影法、重畳積分法、逐次近似法、その他の公知の手法を用いればよい。ステップS102にて推定された高吸収体506の物質情報を画像再構成処理において利用することが望ましい。例えば、ビームハードニング補正処理において高吸収体506の物質情報を利用することが挙げられる。高吸収体506の物質情報を用いた補正処理については、第3の実施の形態で説明する。
【0036】
画像再構成装置421により断層画像が生成されると、中央制御装置400は生成された断層画像を表示装置7に表示する(ステップS106)。
以上が撮影処理の全体の流れである。
【0037】
次に、
図5〜
図9を参照して、ステップS102の物質推定処理について説明する。
位置決め画像から得られる情報から高吸収体506の物質を推定するために、本発明では、
図5に示すように、まず位置決め画像を区分化し、高吸収体の分布を表した区分化画像を生成する(ステップS201)。高吸収体以外の区分は、低吸収体のみとしてもよいし、寝台、空気等に更に区分してもよい。
【0038】
被検体領域における高吸収体(または低吸収体)の分布を解析するため、本第1の実施の形態では、少なくとも2方向から撮影された位置決め画像を用いる。以下の説明では、縦スキャノ画像と、横スキャノ画像とを用いるものとする。
【0039】
図6のフローチャートを用いて、第1の実施の形態の画像区分化処理について説明する。
まず、中央制御装置400は、縦スキャノ画像及び横スキャノ画像について区分化処理を実施する(ステップS301)。すなわち、中央制御装置400は、縦スキャノ画像をその濃度分布に基づいて、高吸収体領域、低吸収体領域、及び空気領域に区分化する。また、横スキャノ画像をその濃度分布に基づいて、高吸収体領域、低吸収体領域、寝台領域、及び空気領域に区分化する。区分化は、濃度値の閾値処理により行えばよい。高吸収体と低吸収体との閾値は、例えば骨の濃度値の数倍程度以上とすればよい。
被検体6は寝台領域を概ね覆うように載置されるため、縦スキャノ画像では寝台領域を分離しにくい。そのため、寝台領域は区分化しないが、可能であれば区分化してもよい。
また、同一区分では同じ画素値、異なる区分では異なる画素値となるように区分化した各画素に画素値を与え、区分化画像を生成する。また、基準とする物質の透過長は、水の透過長でもよいし、それ以外の物質の透過長でもよい。
また、各位置決め画像上の物体の既知の位置情報や形状情報を区分化に利用してもよい。例えば寝台の位置や形状は、被検体との位置関係から推測可能であるため、この位置情報や形状情報を区分化に利用してもよい。
更に、上述の閾値と、物質の位置情報、形状情報等とを適宜組み合わせて区分化に利用してもよい。
【0040】
次に、中央制御装置400は、
図7に示す縦スキャノ画像61及び横スキャノ画像62の次元をそれぞれ拡張処理する(ステップS302)。すなわち、縦スキャノ画像61を横方向に複写し、擬似的な3次元スキャノ画像610を生成する。横スキャノ画像62についても縦方向に複写し、擬似的な3次元スキャノ画像620を生成する。以下、次元拡張処理された縦スキャノ画像を縦方向拡張スキャノ画像610といい、次元拡張処理された横スキャノ画像を横方向拡張スキャノ画像620という。
図7に、(a)縦方向拡張スキャノ画像610、(b)横方向拡張スキャノ画像620の例を示す。
【0041】
その後、中央制御装置400は、縦方向拡張スキャノ画像610及び横方向拡張スキャノ画像620の同一座標の画素値を比較して再区分化し、その比較結果により3次元スキャノ画像を生成する(ステップS303)。
【0042】
図8は、再区分化する処理について説明する図である。
図8(a)は、縦方向拡張スキャノ画像610と横方向拡張スキャノ画像620とを、ある断面Pにおいて重ね合わせた状態を模式的に示した図であり、破線内の領域612、622が低吸収体、斜線の領域611,621が高吸収体、破線外の領域が空気領域を示している。
中央制御装置400は、縦横の各拡張スキャノ画像の同一座標の区分を比較し、その結果に応じてその座標の区分を決定する(再区分化する)。
図9に示すように、縦横の各拡張スキャノ画像の同一座標が同一区分である場合は(ステップS401;Yes)、そのままの区分を採用する(ステップS402)。縦横の各拡張スキャノ画像の同一座標の区分が異なっており、一方が高吸収体である場合は(ステップS401;No→ステップS403;Yes)、他方の区分を採用する(ステップS404)。また、縦横の各拡張スキャノ画像の同一座標の区分が異なっており、いずれも高吸収体でなく一方が低吸収体である場合は(ステップS401;No→ステップS403;No→ステップS405;Yes)、他方の区分を採用する(ステップS404)。また、いずれも高吸収体でなく、かついずれも低吸収体でなく、いずれか一方が寝台である場合は(ステップS401;No→ステップS403;No→ステップS405;No→ステップS406;Yes)、寝台として再区分化する(ステップS407)。4区分化(高吸収体、低吸収体、寝台、空気)の場合、残りの領域(ステップS401;No→ステップS403;No→ステップS405;No→ステップS406;No)は、空気として再区分化する(ステップS408)。
【0043】
再区分化処理が終了すると、
図8(b)に示すように、再区分化された3次元スキャノ画像が生成される。
図8(b)では、破線64内が低吸収体、網掛けの領域63が高吸収体、残りの領域65は寝台または空気領域とされる。
なお、上述の再区分化処理では、3次元に拡張されたスキャノ画像(縦方向拡張スキャノ画像610、横方向拡張スキャノ画像620)の各画素についてステップS401〜ステップS408に示すような比較処理が行われるが、再区分化後の3次元スキャノ画像の画素サイズは任意である。例えば、いずれかの元画像(縦方向または横方向の拡張スキャノ画像610,620)の画素サイズとしてもよいし、新たな画素サイズを設定してもよい。
また、上述の画像区分化処理(
図6)では直交する2方向のスキャノ画像を演算対象としたが、これに限定されるものではなく、斜交する2方向のスキャノ画像を用いてそれぞれ擬似的な3次元スキャノ画像を作成し、再区分化処理を行うようにしてもよい。斜交するスキャノ画像を用いる場合は、それらの斜交角度情報を用いて斜交座標系から直交座標系へ座標変換し、その後、擬似的な3次元スキャノ画像を作成し、再区分化処理を行えばよい。
【0044】
上述のような再区分化処理の結果、再区分化された3次元スキャノ画像から各区分の3次元的な分布が求まるため、特定方向における各区分(高吸収体、低吸収体、寝台、空気等)の厚さ情報が得られる。これを利用して、中央制御装置400は各区分のX線減弱係数を推定する(
図5のステップS202)。高吸収体のX線減弱係数を未知の定数とし、高吸収体以外の区分(低吸収体、寝台、空気等)には既知のX線減弱係数を適用し、照射X線量I
0と、計測された透過X線量Iとを以下の式(1)に適用する。これにより、高吸収体506の物質を推定できる。
【0045】
被検体に入射するX線量I
0と被検体を透過する透過X線量Iとの関係は、以下の式(1)で表されることが知られている。
【0047】
ここで、Iは被検体6を透過する透過X線量、I
0は被検体6に入射するX線量、μ
1,μ
2,・・・はX線減弱係数、l
1,l
2,・・・は各X線減弱係数に該当する物質を透過するX線ビームの長さ(透過長)である。
【0048】
低吸収体の区分のX線減弱係数μ
2として、例えば人体に近い水のX線減弱係数を適用すればよい。また、低吸収体の区分の厚さ(透過長)l
2は再区分化された3次元スキャノ画像から推定できる。
高吸収体の物質を推定するには、高吸収体を透過するX線ビームの長さl
1が分かれば、高吸収体のX線減弱係数μ
1を上述の式(1)、低吸収体(寝台、空気等を区分化してもよい)のX線減弱係数μ
2、低吸収体を透過するX線ビームの長さl
2から、照射X線量I
0、計測データIから求めることが可能となる。
なお、高吸収体のX線減弱係数を算出する際は、複数のデータ(複数断面または複数角度方向からの透過長)を用いて統計的に算出すれば、精度よく高吸収体のX線減弱係数を算出できる。
【0049】
ステップS201、ステップS202により、高吸収体の厚さとX線減弱係数が推定されると、中央制御装置400は、これらの情報に基づいて、高吸収体が含まれる撮影範囲における最適な照射X線量を算出する(自動露出調整値算出処理;ステップS203)。
すなわち、中央制御装置401は、再区分化された3次元スキャノ画像を用いて、各スライス位置でのX線照射角度に応じた各区分のX線透過長と各区分に応じたX線減弱係数とを用いて、最適な照射X線量を求める。
管電流を調整する場合は、被検体6が低吸収体のみで組成されている場合と同じ透過線量が得られるように、スライス位置及びX線照射角度に応じて管電流を調整する。
また、管電圧を調整する場合は、高吸収体のX線減弱係数が基準X線減弱係数と近い値となるように管電圧を調整する。基準X線減弱係数とは、断層画像における低吸収体と高吸収体の画像コントラスト比が低下しすぎないようにするための基準値である。
また、管電流及び管電圧の調整を組み合わせて照射X線量を調整するようにしてもよい。
【0050】
以上により、被検体の体内に存在する留置物の物質に応じた照射X線の最適化を行うことが可能となる。
【0051】
第1の実施の形態では高吸収体の分布(厚み)を推定するために、少なくとも2方向の位置決め画像(スキャノグラム画像)から擬似的に3次元スキャノ画像を生成し、精度よく高吸収体の分布を推定できる。なお、2方向に限らず、3方向以上としてもよい。また、低吸収体について、一律に水のX線減弱係数を用いる例を説明したが、胸部、腹部のように部位毎に更に細分化して適切なX線減弱係数を適用してもよい。
【0052】
[第2の実施の形態]
次に、
図10〜
図12を参照して、第2の実施の形態のX線CT装置1について説明する。第2の実施の形態のX線CT装置1のハードウエア構成は、第1の実施の形態のX線CT装置1と同様であるため、同一の部分には同一の符号を付して説明する。
また、第2の実施の形態のX線CT装置1は、全体としては第1の実施の形態と同様の流れで撮影処理(
図3参照)を行うが、ステップS102の物質推定処理において、第2の実施の形態では、第1の実施の形態とは異なる手法で高吸収体の分布を解析するものとする。
【0053】
第2の実施の形態では、1方向から撮影された位置決め画像(例えば、縦スキャノ画像)を用いて金属製体内留置物(高吸収体)の分布を推定する。
また、第2の実施の形態の手法を適用するのに好適な例として、ステントグラフトのような中空円筒状(環状)構造の金属製留置物が体内に存在する場合を想定する。血管内に挿入されたステントグラフトの中空部分は血液等の低吸収体で満たされる。以下の説明では、簡単のため、ステントグラフトの長軸と寝台方向とが一致しているものとして説明する。
【0054】
第2の実施の形態の物質推定処理において、中央制御装置400はまず、第2の実施の形態の画像区分化処理(
図10参照)を実行して、被検体内における高吸収体の分布(位置及び形状)を推定し、それらの情報を用いて、高吸収体のX線減弱係数を推定する。その後は、第1の実施の形態と同様に、推定された高吸収体の分布(位置及び形状)及び物質(X線減弱係数)に基づいて、断面位置及び回転角度に応じた最適な照射X線量(管電流値、管電圧値)を求め、本撮影を行って断層画像を再構成する。
【0055】
図10のフローチャートに示すように、第2の実施の形態の画像区分化処理では、中央制御装置400は、まず、一方向からの位置決め画像(縦スキャノ画像)について区分化透過長変換処理を行う(ステップS501)。
【0056】
区分化透過長変換処理では、中央制御装置400は、水等価長を基準として、位置決め画像(縦スキャノ画像)上の被検体領域を高吸収体の有無にかかわらず全て低吸収体と仮定し、該領域の透過線量を水等価長に変換した単区分水等価長スキャノ画像のプロファイルを生成する(
図11(a)のプロファイル71)。次に、上述の位置決め画像と同じ位置決め画像(縦スキャノ画像)を用いて、被検体部分を高吸収体と低吸収体の2区分に区分化し、透過線量を水等価長に変換した二区分水等価長スキャノ画像のプロファイルを作成する(
図11(b)のプロファイル72)。
【0057】
図11(a)は単区分水等価長スキャノ画像のプロファイル71、
図11(b)は二区分水等価長スキャノ画像のプロファイル72、
図11(c)は差分スキャノ画像のプロファイル73を示す図である。各プロファイルにおいて、横軸はX線検出器のチャネル、縦軸は水等価長である。
【0058】
中央制御装置400は、単区分水等価長スキャノ画像のプロファイル71と二区分水等価長スキャノ画像のプロファイル72との差分をとり、差分プロファイル73を得る。この差分プロファイル73は高吸収体を抽出したスキャノ画像に相当する(ステップS502)。
高吸収体の形状が中空円筒状(環状)であって、その高吸収体の長軸方向が縦スキャノ画像の寝台方向に平行な場合は、X線透過距離の位置依存性から、差分プロファイル73は、水等価長の長い部分2箇所と短い部分1箇所を有する特徴的なプロファイルとなる(
図11(c))。
図11(c)に示すように、差分プロファイル73の二つのピークの頂点の間隔を中空円筒状構造物の内径74とし、二つのピークの両端の間隔を中空円筒状構造物の外径75として、留置物の形状を推定できる。
【0059】
中央制御装置400は、高吸収体が存在する範囲についてステップS501〜ステップS502の処理を繰り返し、中空円筒状構造物全体の形状を推定する。
【0060】
次に、中央制御装置400は環状次元拡張処理を行って、高吸収体の形状を3次元的に推定する(ステップS503)。
すなわち、中央制御装置400は、上述の単区分水等価長スキャノ画像のプロファイル71を寝台方向に垂直な方向(縦方向)に拡張して擬似的な3次元スキャノ画像のプロファイルを作成することにより、低吸収体の形状を修正する。このとき、
図12(a)に示すように、横方向(チャネル方向)の各位置に関して縦方向(体厚方向)の水等価長の中点76が一致するように低吸収体の断面形状を修正する。
【0061】
また、高吸収体については、ステップS502で得られた内径74及び外径75の情報に基づいて環状の構造物断面に拡張し、二区分水等価長スキャノ画像のプロファイル72における高吸収体の横方向(チャネル方向)位置に相当する横方向位置に配置する。縦方向(体厚方向)位置は低吸収体の縦方向長さの中央とする。なお、高吸収体の中空部分は低吸収体として区分化する。
図12(b)に示すような、低吸収体77の内部に環状の高吸収体78を有する区分化画像が生成される。
【0062】
中央制御装置400は、各体軸方向位置について上述のような区分化画像79を生成すれば、一方向の位置決め画像から高吸収体の3次元的な分布を求めることができる。
【0063】
その後、推定された高吸収体の形状に基づいて、上述の式(1)から高吸収体のX線減弱係数を推定する。高吸収体以外の部分の既知のX線減弱係数と、照射X線量と、計測されたX線量は既知であるため、高吸収体のX線減弱係数μ
1が推定される。
【0064】
その後、中央制御装置400は、ステップS503にて推定した高吸収体の形状と、ステップS202にて推定した高吸収体のX線減弱係数とを用いて、高吸収体が含まれる撮影範囲における管電流または管電圧を調整し(自動露出調整値算出処理;ステップS203)、自動露出撮影を行い、画像再構成処理、断層画像の表示処理を行う。自動露出調整値算出処理、自動露出撮影、画像再構成処理、表示処理については第1の実施の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0065】
以上により、被検体の体内に存在する留置物の物質に応じた照射X線の最適化を行うことが可能となる。
第2の実施の形態に示す手法を用いて物質推定を行えば、1回の位置決め撮影から得た情報から中空円筒状構造物の形状情報を得ることが可能となり、画像情報に基づく高吸収体の物質推定性能が向上する。これにより、より最適に照射X線量を調整でき、高吸収体を含む被検体であっても画質劣化をより抑制することが可能となる。
【0066】
なお、上述の例では、寝台方向と垂直な方向から撮影した縦スキャノ画像を用いて高吸収体の形状を推定する例を示したが、横スキャノ画像を用いてもよい。横スキャノ画像を用いた場合は、上述の説明における「縦方向」と「横方向」とを置き換えれば、同様に高吸収体の形状を推定できる。
また、上述の例では、中空円筒状構造物の長軸が寝台方向と一致する例を示したが、これ以外の配置であっても本実施の形態の手法を用いて物質を推定することが可能である。この場合は、ステップS502においてプロファイルを作成する際に、中空円筒状構造物(ステントグラフト)の芯線方向を法線とする断面のプロファイル(単区分水等価長スキャノ画像のプロファイル、二区分水等価長スキャノ画像のプロファイル、差分プロファイル)を作成し、上述の説明に適用すればよい。
また、中空円筒状構造物がY字状の場合は、分岐部分で分割し、芯線方向を法線とする断面のプロファイル(単区分水等価長スキャノ画像のプロファイル、二区分水等価長スキャノ画像のプロファイル、差分プロファイル)を作成し、上述の説明に適用すればよい。
また、上述の第2の実施の形態の物質推定処理を、差分プロファイルにピークが2つ現れない、すなわち中空円筒状の構造物でない場合に適用してもよい。この場合は、体内留置物の形状を球状や球に近い形状等に置き換えて、高吸収体の分布を推測することが考えられる。
【0067】
[第3の実施の形態]
次に、
図13を参照して、第3の実施の形態のX線CT装置1について説明する。第3の実施の形態のX線CT装置1のハードウエア構成は、第1の実施の形態のX線CT装置1と同様であるため、同一の部分には同一の符号を付して以下の説明をする。
また、第3の実施の形態のX線CT装置1は、全体としては第1の実施の形態と同様の流れで撮影処理を行う(
図3参照)。また、ステップS102の物質推定処理は、第1の実施の形態に示すような2方向の位置決め画像から高吸収体の分布を解析する手法を用いてもよいし、或いは第2の実施の形態に示すような1方向の位置決め画像から高吸収体の分布(形状)を解析する手法を用いてもよい。また、ステップS101の位置決め撮影、ステップS103の注意喚起処理、ステップS104の自動露出撮影、ステップS106の断層画像の表示処理に関しては、第1の実施の形態と同様とする。
【0068】
第3の実施の形態では、
図3のステップS105の画像再構成処理において、高吸収体に起因する画質劣化を更に低減するために、ステップS104の自動露出撮影で得られた画像に対して物質推定ビームハードニング補正を行う。
【0069】
X線CT装置1の記憶装置411には、各種ビームハードニング補正係数群が予め準備され、記憶されている。補正係数群としては、体内留置物の物質(金属性物質)に対して、ビームハードニング補正で使用すべき補正係数がそれぞれ記憶される。これらの補正係数群は、撮影条件(照射X線エネルギー等)毎に、複数の材質について適用すべき補正係数が含まれる。例えば、ステントグラフトに用いられる材質(医療用ステンレスである316Lステンレス、タンタル、コバルト合金、ナイチノール(ニッケル・チタン合金)等)についてそれぞれ補正係数が各撮影条件別に記憶される。補正係数群は、予め実験または数値シミュレーションにより得られたデータとすればよい。
【0070】
中央制御装置400は、ステップS102で推定した物質(ステップS202で推定するX線減弱係数)から物質を同定し、記憶装置411内の補正係数群からその物質に該当する物質の補正係数を選択する(ステップS601)。そして、選択した補正係数を用いて高吸収体順投影データと通常順投影データを補正し、画像再構成処理を行う。ビームハードニング補正以外の補正については従来の手法と同様に行えばよい。
【0071】
以上説明したように、第3の実施の形態によれば、被検体内に留置された高吸収体の物質に配慮して照射X線を最適化して本撮影を行った際に、更に、高吸収体の物質に応じて最適なビームハードニング補正を行えるため、高吸収体の体内留置に起因する画質劣化を更に抑制することが可能となる。
【0072】
以上、本発明に係るX線CT装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。被検体全体をカバーするワイドファンビームを照射しつつX線管とX線検出器とが一体となり回転する回転−回転方式(Rotate−Rotate方式)、電子ビームを電気的に偏向させながらターゲット電極に当てる電子ビーム走査方式(Scanning Electron Beam方式)、その他の方式のものがあるが、本発明はいずれの方式のX線CT装置にも適用可能である。また、上述の実施の形態では、ガントリータイプのX線CT装置について説明したがCアーム型のX線CT装置でもよい。また、当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。