特許第5718063号(P5718063)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718063
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】検査計画作成支援装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/00 20060101AFI20150423BHJP
   A61B 6/03 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   A61B6/00 320R
   A61B6/00 320M
   A61B6/03 330B
【請求項の数】5
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2011-1702(P2011-1702)
(22)【出願日】2011年1月7日
(65)【公開番号】特開2012-143275(P2012-143275A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2013年12月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000153498
【氏名又は名称】株式会社日立メディコ
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】小池 秀明
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 健太郎
【審査官】 南川 泰裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−243078(JP,A)
【文献】 特開2008−284294(JP,A)
【文献】 特開2007−097909(JP,A)
【文献】 特開2005−058653(JP,A)
【文献】 特開2004−201757(JP,A)
【文献】 特開2008−272381(JP,A)
【文献】 特開平10−335092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象とする患者の過去の検査における被曝線量を検査日時情報とともに取得する被曝線量取得手段と、
前記被曝線量取得手段により取得した過去の検査における被曝線量と、時間経過に伴う組織の回復に関する演算式とに基づいて、被曝によって破壊された組織の時間経過に伴う再生を表す曲線である回復曲線を検査毎に算出する回復曲線算出手段と、
前記回復曲線算出手段により算出された回復曲線をグラフ化して表示するグラフ生成・表示手段と、
を備えることを特徴とする検査計画作成支援装置。
【請求項2】
次回検査の撮影条件の入力を受け付ける次回撮影条件入力手段と、
前記次回撮影条件入力手段により入力された撮影条件による予測線量を算出する予測線量算出手段と、
前記回復曲線から求められる過去の検査の累積線量と、前記予測線量との和が、既定の上限値を超えない日時範囲を算出し、次回検査の最適期間とする最適期間算出手段と、
前記次回検査の最適期間を示すオブジェクトを前記回復曲線のグラフ内に表示する最適期間表示手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の検査計画作成支援装置。
【請求項3】
次回検査日時の入力を受け付ける次回検査日時入力手段と、
前記回復曲線に基づいて、前記次回検査日時入力手段により入力された次回検査日時における過去の検査の累積線量を算出する累積線量算出手段と、
既定の上限値から前記累積線量を減じた許容線量を超えないように、次回検査の撮影条件を算出する撮影条件算出手段と、
前記撮影条件算出手段により算出された次回検査の撮影条件を提示する撮影条件提示手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の検査計画作成支援装置。
【請求項4】
前記回復曲線算出手段は、
前記被曝線量取得手段により取得した各検査の被曝線量D,・・・D,・・・,D(i,nは2以上の整数、nはi以上)のうち、最初の検査の被曝線量Dと、前記演算式とに基づいて最初の検査の回復曲線Aを算出する初回回復曲線算出手段と、
(i−1)回目以前の各回復曲線A(kは1以上、i未満の整数)から求められるi回目検査の時点tにおける累積線量=A1,ti+・・・+Ak,ti+・・・Ai−1,tiと、i回目検査の被曝線量Dと、前記演算式とに基づいてi回目回復曲線Aを算出するi回目回復曲線算出手段と、
前記i回目回復曲線Aの算出を検査回数分繰り返す繰り返し手段と、
を備え、更に、
i回目の検査について、既定の上限値Zから前記累積線量と前記被曝線量Dとを減算することにより、許容線量Kを算出する許容線量算出手段と、
前記上限値Z、各回の前記被曝線量D、各回の前記許容線量Kを示すオブジェクトをそれぞれ前記回復曲線のグラフ内に表示するオブジェクト表示手段と、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の検査計画作成支援装置。
【請求項5】
前記最適期間算出手段により算出された最適期間の中で任意の日時の選択を受け付ける
日時選択手段と、
前記日時選択手段により日時が選択される都度、選択された日時を最新の検査日時として回復曲線を算出し、当該回復曲線を含む全ての回復曲線から求められる累積線量と、前記予測線量と、前記既定の上限値とから、更に次の検査の最適期間を算出する最適期間再算出手段と、
前記グラフを更新するとともに、前記最適期間再算出手段によって算出された最適期間を示すように前記オブジェクトの表示を更新する表示更新手段と、
を備えることを特徴とする請求項2に記載の検査計画作成支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像診断検査の検査計画の作成を支援する検査計画作成支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、X線を用い、身体内部の状態を描出するX線診断装置が開発され、被検体の検査等に利用されている。しかし、これらの検査は放射線被曝を伴い、患者にとって負担となることがあるため、適切な検査計画を作成する必要があった。特に、X線CT装置等では組織の細部を詳細に高画質で描出するために細かいスライス厚で撮影したり、十分な量のX線を照射しなければならず、被曝線量が大きくなってしまうという問題があった。また、同一部位を複数回にわたって撮影し、病変部位を経過観察することもあるが、この場合には累積的に被曝線量が増加し、患者の負担も大きくなっていた。
【0003】
このような被曝による患者負担を軽減するために、近年のX線診断装置等では、撮影条件設定の際に、撮影による被曝線量を示唆して最適な撮影計画を作成するX線CT装置等が種々開発されている。
例えば、特許文献1には、被検体の過去の検査による累積被曝線量データと、これから行われるCT撮影に対して暫定的に設定された撮影条件に基づく累積被曝線量データとを加算した総累積被曝線量データを算出し、予め定められた基準値より総累積被曝線量データが大きくなる場合は、これを位置決め用画像上に強調表示することで、操作者に撮影条件の検討を促すことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−172138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1では、総累積被曝線量データを算出する際に、組織の回復を考慮していない。過去の検査によってある程度被曝しても組織が回復するという報告もあるように、患者が実際に許容可能な被曝線量は、検査日程の粗密や過去の検査から経過した時間等によっても異なるものである。従って、上述の特許文献1の手法では、算出される許容線量(上限値から総累積被曝線量を減算した値)と患者が実際に許容可能な被曝線量との間に差異が生じてしまい、最適な検査計画の作成に支障が生じるという問題があった。
また、医師等が検査計画を作成する際には、個々の患者の容態や緊急性、望む画質、或いは標準化された検査スケジュールの適用等、様々な要因によって被曝線量の低減を優先すべきか、画質を優先すべきか、或いは検査日程のいずれを優先すべきかが異なる。そのため、操作者が患者の過去の検査による被曝線量の推移を直感的に理解しやすく、柔軟な検査計画の作成を支援できるようなツールを提供することが望まれている。
【0006】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、患者の許容可能な被曝線量を正確に算出するとともに、被曝によって破壊された組織の時間経過に伴う再生を考慮した残存線量の推移を操作者が直感的に理解しやすく表示し、これにより容易かつ柔軟な検査計画の作成を支援する検査計画作成支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために本発明は、対象とする患者の過去の検査における被曝線量を検査日時情報とともに取得する被曝線量取得手段と、前記被曝線量取得手段により取得した過去の検査における被曝線量と、時間経過に伴う組織の回復に関する演算式とに基づいて、被曝によって破壊された組織の時間経過に伴う再生を表す曲線である回復曲線を検査毎に算出する回復曲線算出手段と、前記回復曲線算出手段により算出された回復曲線をグラフ化して表示するグラフ生成・表示手段と、を備えることを特徴とする検査計画作成支援装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の検査計画作成支援装置により、患者の許容可能な被曝線量を正確に算出するとともに、被曝によって破壊された組織の時間経過に伴う再生を考慮した残存線量の推移を操作者が直感的に理解しやすく表示でき、これにより容易かつ柔軟な検査計画の作成を支援できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】検査計画作成支援装置100を含む検査管理システム1のハードウエアブロック図
図2】本発明によるグラフ生成・表示処理の流れを説明するフローチャート
図3線量推移グラフ31の一例
図4】最適期間表示処理の流れを説明するフローチャート
図5】次回検査の最適期間の始点を明示した検査計画作成用画面3の一例
図6】ハンドル63が移動操作された際の検査計画作成用画面3の一例
図7】次回検査日時を決定した後、更新された検査計画作成用画面3の一例
図8】最適条件提示処理の流れを説明するフローチャート
図9】撮影条件テーブル8の一例
図10】予め次回検査日時が決まっている場合に表示される検査計画作成用画面3の一例
図11】次回検査日時に合わせて最適な撮影条件が提示された検査計画作成用画面3の一例
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0011】
[第1の実施の形態]
まず、図1を参照して、本発明の検査計画作成支援装置100を有する検査管理システム1の構成について説明する。
【0012】
図1に示すように、本発明に係る検査計画作成支援装置100は、表示装置107、入力装置109を有し、ネットワーク110を介して画像データベース111、医用画像撮影装置112、検査情報データベース114、他システム115等に接続される。
【0013】
検査計画作成支援装置100は、検査計画の作成を支援するための各種処理を行うコンピュータである。
検査計画作成支援装置100は、図1に示すように、CPU(Central Processing Unit)101、主メモリ102、記憶装置103、通信インタフェース(通信I/F)104、表示メモリ105、マウス108等の外部機器とのインタフェース(I/F)106を備え、各部はバス113を介して接続されている。
【0014】
CPU101は、主メモリ102または記憶装置103等に格納されるプログラムを主メモリ102のRAM上のワークメモリ領域に呼び出して実行し、バス113を介して接続された各部を駆動制御し、検査計画作成支援装置100が行う各種処理を実現する。
【0015】
また、CPU101は、検査計画の作成を支援するためのユーザインターフェースとして、被曝によって破壊された組織の時間経過に伴う再生を考慮した残存線量の推移を時系列に示した線量推移グラフ31(図3参照)を生成し、表示装置107に表示する。グラフ生成・表示処理の詳細は後述する。
【0016】
主メモリ102は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等により構成される。ROMは、コンピュータのブートプログラムやBIOS等のプログラム、データ等を恒久的に保持している。また、RAMは、ROM、記憶装置103等からロードしたプログラム、データ等を一時的に保持するとともに、CPU101が各種処理を行う為に使用するワークエリアを備える。
【0017】
記憶装置103は、HDD(ハードディスクドライブ)やフレシキブルディスク、光(磁気)ディスク、ZIPメモリ、USBメモリ等の可搬性記録媒体とデータの受け渡しをする記憶装置であり、CPU101が実行するプログラム、プログラム実行に必要なデータ、OS(オペレーティングシステム)等が格納される。プログラムに関しては、OSに相当する制御プログラムや、アプリケーションプログラムが格納されている。これらの各プログラムコードは、CPU101により必要に応じて読み出されて主メモリ102のRAMに移され、各種の手段として実行される。
【0018】
通信I/F104は、通信制御装置、通信ポート等を有し、検査計画作成支援装置100とネットワーク110との通信を媒介する。また通信I/F104は、ネットワーク110を介して、画像データベース111や、検査情報データベース、他のコンピュータ、或いは、X線CT装置、X線診断装置、MRI装置等の画像撮影装置112、他システム115等との通信制御を行う。
I/F106は、周辺機器を接続させるためのポートであり、周辺機器とのデータの送受信を行う。例えば、マウス108やスタイラスペン等のポインティングデバイスをI/F106を介して接続させるようにしてもよい。
【0019】
表示メモリ105は、CPU101から入力される表示データを一時的に蓄積するバッファである。蓄積された表示データは所定のタイミングで表示装置107に出力される。
【0020】
表示装置107は、液晶パネル、CRTモニタ等のディスプレイ装置と、ディスプレイ装置と連携して表示処理を実行するための論理回路で構成され、表示メモリ105を介してCPU101に接続される。表示装置107はCPU101の制御により表示メモリ105に蓄積された表示データを表示する。
【0021】
入力装置109は、例えば、キーボード等の入力装置であり、操作者によって入力される各種の指示や情報をCPU101に出力する。操作者は、表示装置107、入力装置109、及びマウス108等の外部機器を使用して対話的に検査計画作成支援装置100を操作する。マウス108はトラックパッドやトラックボールなどの他のポインティングデバイスであってもよい。
なお、表示装置107及び入力装置109は、例えば、タッチパネルディスプレイのように一体となっていてもよい。この場合、入力装置109のキーボード配列がタッチパネルディスプレイに表示されたり、タッチパネルディスプレイに表示されるオブジェクトへのタッチ操作が可能となる。
【0022】
ネットワーク110は、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イントラネット、インターネット等の各種通信網を含み、画像データベース111やサーバ、他の情報機器、他システム114等と検査計画作成支援装置100との通信接続を媒介する。
【0023】
画像データベース111は、医用画像撮影装置112によって撮影された画像データを蓄積して記憶するものである。
検査情報データベース114は、各患者の検査情報を蓄積して記憶するものである。検査情報には、患者情報、検査日時、検査名、検査による被曝線量、撮影条件、撮影部位、画像データ等が含まれる。検査情報は、医用画像撮影装置112による撮影が行われる都度、登録される。また、検査計画作成支援装置100やその他の情報機器、他システム115等が検査情報データベース114にアクセスし、検査情報を登録してもよい。
【0024】
図1に示す検査管理システム1では、画像データベース111及び検査情報データベース114はネットワーク110を介して検査計画作成支援装置100に接続される構成であるが、検査計画作成支援装置100内の例えば記憶装置103に画像データベース111及び検査情報データベース114を設けるようにしてもよい。
【0025】
次に、図2図3を参照して、検査計画作成支援装置100の動作について説明する。
【0026】
図2は、グラフ生成・表示処理の流れを示すフローチャートであり、図3はグラフ生成・表示処理によって生成される線量推移グラフ31の一例を示す図である。
【0027】
検査計画作成支援装置100のCPU101は、主メモリ102から図2のグラフ生成・表示処理に関するプログラム及びデータを読み出し、読み出したプログラム及びデータに基づいて処理を実行する。
【0028】
CPU101は、まず被曝線量の上限値Zの設定を行う(ステップS101)。ステップS101において、CPU101は、例えば操作者が上限値Zを入力するための入力欄を表示装置107に表示し、任意値の入力を受け付ける。或いは予め定められたリンク先にアクセスし、上限値データの読み込みを行うようにしてもよい。
【0029】
上限値Zは任意の値を設定可能であるが、好ましくは、例えばECやアメリカ食品医薬品局(FDA)ガイドライン等の国際的なガイドラインに従って設定されることが望ましい。また、検査施設によって独自のガイドラインが設けられている場合はそのガイドラインを適用してもよい。また、上限値は全ての患者に一律な値を与える必要はなく、患者の年齢、疾患、職業等に応じて異なる値が設定されてもよい。
【0030】
なお、ここで設定される上限値Zはあくまでも理想的な上限値を示唆するものであり、この上限値Zを超える検査計画の作成を排除するものではない。
CPU101は、設定された上限値Zを主メモリ102または記憶装置103に格納する。
【0031】
次に、CPU101は、患者情報の入力を受け付ける(ステップS102)。ここで入力される患者情報とは、検査計画を作成しようとする患者の患者IDや氏名等の識別情報である。
CPU101は患者情報を入力するための入力欄を表示装置107に表示し、操作者による入力を受け付ける。
【0032】
患者情報が入力されると、CPU101は、検査情報データベース114にアクセスし、該当する患者の過去の検査情報を取得する(ステップS103)。検査情報には、少なくとも各検査の検査日時情報及び被曝線量情報が含まれる。以下の説明では、過去の各検査における被曝線量をD、各検査の検査日時をtと表記する(iは1以上の整数)。また、過去の検査回数をn回とする(nは正整数)。
【0033】
CPU101は、時間及び線量を座標軸とする座標4内に上限値Zを示すオブジェクト50を描画する(ステップS104;図3参照)。
【0034】
次に、CPU101は残存線量の推移を示す線量推移グラフ31の作成を開始する。
すなわち、CPU101は、各検査について、回復曲線A及び許容線量Kを求め、求めた回復曲線Aを座標4内に描画するとともに、許容線量Kを示すオブジェクトや、検査の被曝線量Dを示すオブジェクト等を描画する(ステップS105〜ステップS112)。
【0035】
ここで、回復曲線Aについて説明する。回復曲線Aとは、患者が受けた被曝によって破壊された組織の時間経過に伴う再生を表す曲線である。
【0036】
被曝すると組織が破壊されるが、時間の経過に伴って回復し、破壊された組織数が減少する。
被曝によって破壊された組織の数をPとすると、その減少を示す方程式は、以下の式(1)で表すことができる。
【0037】
【数1】
【0038】
すなわち、破壊された組織の数Pは微小時間dtにつき、λPだけ減少する。ここで、式(1)のλは組織固有の減少定数とする。
破壊された組織が期間tの間に減少する量をA、破壊された組織の個数の初期値A、経過時間tとして、式(1)の微分方程式を解くと、以下の式(2)となる。
【0039】
【数2】
【0040】
本実施の形態では、破壊された組織の量[個]が時間の経過とともに再生(破壊された組織の減少、或いは正常組織の増加)するペースと、体内に残存する線量(残存線量)[mGy・cm]が減少するペースとが比例関係にあると仮定している。そのため、個数から線量への単位変換を特に行わず、式(2)を患者が受けた被曝によって破壊された組織の時間経過に伴う再生を表す演算式として回復曲線Aを求め、グラフ化している。ただし、必要に応じて単位変換を行ってもよい。
【0041】
式(2)において、Aはi回目検査時に被検体に蓄積している線量の総和であり、(i−1)回目までの各検査における被曝線量の残存値(残存線量)の累積値(以下、累積線量Rという)とi回目の検査による被曝線量Dとの和(R+D)で表される。
i回目の検査日時tの時点におけるk回目の検査の残存線量をAk,tiと表すと、残存線量Ak,tiは以下の式(3)、累積線量は以下の式(4)で表される。
【0042】
【数3】
【0043】
【数4】
【0044】
CPU101は、まず1回目の検査について回復曲線Aを求める。このため、まずカウンタiを1、累積線量を0に設定し(ステップS105)、A=Dとして回復曲線Aを求める(ステップS106)。
【0045】
更に、CPU101は、1回目の検査の許容線量Kを算出する(ステップS107)。
許容線量Kは以下の式(5)から求められる。
【0046】
許容線量K=上限値Z−被曝線量D累積線量・・・(5)
【0047】
CPU101は、図3に示すように、座標4内の1回目の検査日時(t=t)の位置に回復曲線Aを描画する。また、被曝線量Dのオブジェクト51、許容線量Kのオブジェクト52、累積線量(=0)と被曝線量D1との和(=A)を示すオブジェクト53を描画する(ステップS108)。
【0048】
1回目の検査についての演算が終了すると、CPU101は、カウンタiに1を加算し(ステップS109)、全ての検査についての演算が終了したか否か(i>n)を確認する(ステップS110)。
全ての検査についての演算が終了していない場合は(ステップS110;No)、次の回の検査について回復曲線等の演算及び描画を行う。
【0049】
CPU101は、2回目の検査日時tの時点における前回(すなわち1回目)の検査の残存線量A1,t2の和を求める(ステップS111、ステップS112)。2回目の検査までには過去に1回の検査しかないため、累積線量=A1,t2となる。
【0050】
その後、ステップS106へ戻り、A=R+Dとして回復曲線Aを求める。また、2回目の検査の許容線量Kを求め、図3に示すように、座標4内の2回目の検査日時(t=t2)の位置に回復曲線Aを描画する。また、被曝線量Dのオブジェクト54、許容線量Kのオブジェクト55、累積線量と被曝線量Dとの和(=A0)を示すオブジェクト56を描画する(ステップS106〜ステップS108)。
【0051】
2回目の検査についての演算が終了すると、CPU101はカウンタiに1を加算し(ステップS109)、全ての検査についての演算が終了したか否か(i>n)を確認する(ステップS110)。
全ての検査についての演算が終了していない場合は(ステップS110;No)、次の回の検査について回復曲線等の演算及び描画を繰り返し行う。
【0052】
すなわち、CPU101は、i回目の検査日時tの時点における前回まで(1回目、2回目、・・・、i−1回目)の検査の残存線量A1,ti,A2,ti,・・・,Ai−1,tiを求め(ステップS111)、その和(累積線量)を求める。
【0053】
=A1,ti+A2,ti+・・・+Ai−1,tiとなる(ステップS112)。
【0054】
その後、ステップS106へ戻り、A=R+Dとしてi回目の検査の回復曲線Aを求める。また、i回目の検査の許容線量Kを求め、図3に示すように、座標4内のi回目の検査日時(t=t)の位置に回復曲線Aを描画する。また、被曝線量Dのオブジェクト57、許容線量Kのオブジェクト58、累積線量と被曝線量Dとの和(=A)を示すオブジェクト59を描画する(ステップS106〜ステップS108)。
【0055】
以上の処理をn回の全ての検査について繰り返し行い、演算が終了すると(ステップS110;Yes)、グラフ生成・表示処理を終了する。
【0056】
図3には過去の3回分の検査について、それぞれ回復曲線A,A,A、許容線量K,K,K(オブジェクト52,55,58)、被曝線量D,D,D(オブジェクト51,54,57)、及び累積線量と被曝線量との和R+D(オブジェクト53,56,59)が表示されている。
3回目の検査では、累積線量と被曝線量Dとの和(オブジェクト59)が上限値Zを超えるため、3回目の許容線量Kを示すオブジェクト58は上限値Zを超えた位置に表示されることとなる。
【0057】
なお、図示しないが、許容線量Kが上限値Zを超えた場合に、その旨の警告をメッセージ表示、音声表示、オブジェクト58の識別表示等により報知すれば操作者が認識しやすくなるため、検査計画作成をより有効に支援できる。
【0058】
以上説明したように、検査計画作成支援装置100は、過去の検査における被曝線量と、時間経過に伴う組織の回復に関する演算式(例えば、上述の式(2))とに基づいて、被曝によって破壊された組織の時間経過に伴う再生を表すグラフ(回復曲線Ai)を検査毎に算出し、グラフ化して時系列に示す。
【0059】
i回目の回復曲線Aは、(i−1)回目以前の各回復曲線A(kは1以上、i未満の整数)から求められるi回目検査の時点tにおける累積線量(=ΣAk,ti)(初回累積線量は「0」)と、i回目検査の被曝線量Dと、上記演算式とに基づいて算出される。これをn回の検査分繰り返す。
【0060】
更に、i回目の検査について、既定の上限値Zから累積線量と被曝線量Dとを減算することにより、許容線量Kを算出し、上限値Z、各回の被曝線量D、各回の許容線量Kを示すオブジェクトをそれぞれ回復曲線Aのグラフとともに表示する。これをn回の検査分繰り返す。
【0061】
したがって、時間経過に伴う組織の回復を考慮した残存線量の推移がグラフ化して表示されるため、操作者は患者の受ける線量の推移を直感的に理解でき、検査計画の作成に役立てることができる。また、累積線量を算出する際に、時間経過に伴う組織の回復が考慮されるため、実際の患者負担をより正確に導き出すことができる。
また、被曝線量の上限値Z、各検査の被曝線量Di、許容線量Ki等を示す各オブジェクトもグラフ内に表示されるため、残存線量の推移をより直感的に理解しやすく、検査計画の作成の支援に有効である。
【0062】
なお、回復曲線Aを算出するための演算式は、上述の式(2)に限定されるものではなく、例えば、組織の再生に関しての式を考慮したり、患者の年齢や疾患に応じて重み付けしたり、異なる演算式を選択する等、累積される線量の減少を示すものであればいかなる演算式であってもよい。
また、図3に示す各オブジェクトや回復曲線の表示形態は一例であり適宜変更可能である。
【0063】
[第2の実施の形態]
次に、図4図7を参照して本発明の第2の実施の形態の検査計画作成支援装置100について説明する。なお、第2の実施の形態の検査計画作成支援装置100のハードウエア構成は第1の実施の形態の検査計画作成支援装置100と同様であるため、同一の各部については同一の符号を付して説明する。
【0064】
第2の実施の形態において、検査計画作成支援装置100は、未来に行う検査の最適実施期間(最適期間)を算出し、検査計画作成用画面3に提示する処理を行う。
【0065】
すなわち、次回(n+1回目に)行う予定の検査の撮影条件が既知の場合、次回検査の予測線量Dn+1が算出できる。これを利用し、CPU101は、次回検査の時点tn+1での累積線量n+1と予測線量Dn+1との和が上限値Zを超えないような日時範囲を算出し、次回検査の最適期間として提示する。
また、次回検査の日時が決定された場合は、更に次の回の検査の最適期間を繰り返し算出し、提示する。
【0066】
図4図7を参照して、最適期間表示処理の流れを説明する。
図4のフローチャートに示す最適期間表示処理は、図2に示すグラフ生成・表示処理の後に行われる。すなわち、過去(1〜n回目まで)の検査情報に基づいて残存線量の推移を示す線量推移グラフ31が生成され、図3に示すように描画された状態で最適期間表示処理が開始される。
【0067】
図4に示すように、CPU101は、まず次回(n+1回目)の撮影条件の設定を受け付ける(ステップS201)。ステップS201において、CPU101は、例えば操作者が撮影条件の各種パラメータを設定するための撮影条件欄32(図5参照)を表示装置107に表示し、任意値の入力を受け付ける。或いは、検査部位や疾患に応じた撮影条件候補を表示装置107に一覧表示し、幾つかの撮影条件候補からの選択を受け付けるようにしてもよい。検査部位や疾患に応じた各種撮影条件候補のデータは記憶装置103または検査情報データベース114等に格納されているものとする。
【0068】
次にCPU101は、設定された次回撮影条件のパラメータ値から次回(n+1回目)の撮影での予測被曝線量(以下、予測線量Dn+1という)を算出する(ステップS202)。
【0069】
CPU101は、過去(n回目まで)の各検査の累積線量n+1と次回の予測線量Dn+1の和が上限値Z以下となる期間(最適期間)を求める(ステップS203)。
【0070】
すなわち、以下の式(6)を満たす日時を最適期間とする。
【0071】
【数5】
【0072】
CPU101は、最適期間を示すオブジェクト60を線量推移グラフ31内に表示する(ステップS204)。また、例えば「次回撮影OK」のように、最適期間を意味するメッセージをオブジェクト60に付して表示するようにしてもよい。また、検査計画作成用画面3の次回検査日欄33に、最適期間の始点日時を表示する。
【0073】
また、CPU101は、グラフ31内の最適期間の始点位置にハンドル63を表示するようにしてもよい(ステップS205)。
ハンドル63は、次回検査の日時を設定するためのGUI(Graphical User Interface)であり、マウス108やタッチパネル等の操作に従って最適期間の範囲内を移動する。図5図6図7の例では、一点鎖線で示されている。また、図5に示すように、ハンドル63とともに予測線量Dn+1を示すオブジェクト62や回復曲線An+1の初期値A(予測線量Dn+1と累積線量Rn+1の和)を示すオブジェクト64を表示したり、図6に示すように更に許容線量Kn+1を示すオブジェクト65等を表示するようにしてもよい。許容線量Kn+1の値や初期値Aの値はハンドル63の移動に伴って変わるため、オブジェクト64,65,71の長さもハンドル63の移動に伴って更新表示される。
【0074】
図6に示すように、ハンドル63の位置が移動されると、CPU101は、次回検査日欄33にハンドル63の位置に応じた日時を表示する。また、次回検査日欄33に所望の日時が入力されると、CPU101は、ハンドル63の位置を入力された日時の位置に移動する。
【0075】
ハンドル63または次回検査日欄33を用いて所望の次回検査日時が設定されると(ステップS206;Yes)、CPU101は次回検査について回復曲線An+1を算出し(ステップS207)、グラフ31の次回検査日時tn+1の位置に回復曲線An+1を描画する(ステップS208)。
回復曲線An+1は、図2のステップS106と同様に求められる。
【0076】
次回検査についての演算が終了すると、CPU101は、nに1を加算し(ステップS209)、更に次の検査日(次々回検査の日時)について最適期間を算出し、提示する(ステップS201〜ステップS205)。次々回検査の検査日時が設定されると(ステップS206;Yes)、CPU101は次々回検査について回復曲線An+2を算出し(ステップS207)、線量推移グラフ31の次回検査日時tn+2の位置に回復曲線An+2を描画する(ステップS208)。
【0077】
図7は、次回検査日時が決定された後の段階で、更に次の最適期間が表示された例を示す図である。
ステップS207〜ステップS208の処理によって、図7に示すように、次回検査日時tn+1の位置に回復曲線An+1や各種オブジェクト62,64,71が描画される。
また、ステップS209→ステップS201〜ステップS205の処理によって、次々回検査の最適期間が算出され、最適期間を示すオブジェクト60の位置が更新され、グラフ31内に表示される。また、最適期間の始点位置にハンドル63が表示される。
【0078】
操作者による次の検査日時の設定に伴い、CPU101は、ステップ207〜ステップS209、ステップS201〜ステップS205の処理を繰り返し、先々の検査の最適期間を求める。また、検査スケジュールに伴う残存線量の推移を示すグラフ31を順次作成し、表示を更新する。
【0079】
検査計画作成の終了指示が入力されると(ステップS206;No→ステップS210;Yes)、最適期間表示処理を終了する。
【0080】
以上説明したように、第2の実施の形態の検査計画作成支援装置100によれば、未来の検査の撮影条件が設定されると、その撮影条件と過去の検査情報とから次の検査の最適期間を求め、提示する。
また、次回検査の日時が決定されると、更に次の検査について撮影条件の設定を受け付け、その撮影条件と、次回検査の予測線量と、過去の各検査の被曝線量と、各回復曲線とに基づいて最適な検査日時範囲を推定し、提示する。
【0081】
したがって、未来の検査計画を作成する際にも、組織の回復を考慮して最適期間が決定されるため、実際の患者負担に適合した最適な検査計画を作成できる。また、未来の検査計画についても、被曝線量や許容線量等の各数値や曲線をオブジェクトやグラフとして検査計画作成用画面3内に描画するため、操作者が未来の検査で受ける被曝線量の残存値を直感的にシミュレーションしやすく、柔軟かつ容易に検査計画を作成できる。
【0082】
なお、本実施の形態は、あくまで理想的な最適期間を算出し、提示するものであり、最適期間でない日に検査日を設定することを排除するものではない。例えば、図5図6等において、ハンドル63が最適期間外に移動され、累積線量n+1と次回被曝線量Dn+1との和が上限値Zを超える場合であっても、次回検査日として設定することもできる。累積線量n+1と次回被曝線量Dn+1との和が上限値Zを超えた場合は、その旨の警告を報知することが望ましい。
【0083】
また、検査部位が複数ある場合は、各部位についてそれぞれ回復曲線や累積線量を算出し、上限値に近い方に合わせて最適期間を算出すればよい。
例えば、1回目検査において頭部、2回目検査において腹部、3回目検査において頭部及び腹部の検査履歴があり、未来の検査(4回目)として頭部及び腹部の検査を行おうとする場合には、過去の頭部の被曝線量及び回復曲線と腹部の被曝線量及び回復曲線とから3回目検査を行った時点での各部位の累積線量と被曝線量の和(R_頭部+D_頭部=A_頭部、R_腹部+D_腹部=A_腹部)が求められる。これらの値(A_頭部、A_腹部)のうち、例えば頭部の方が上限値Zに近い場合は、4回目検査における頭部の予測線量D_頭部と頭部の回復曲線とから、頭部の累積線量と予測被曝線量との和が上限値Zを超えない日時範囲を算出し、これを次回検査の最適期間とする。また、各部位について、それぞれ回復曲線を描画したり、被曝線量、許容線量等のオブジェクトを表示したりすることが望ましい。なお、検査部位が複数ある場合も同様に、最適期間外に検査日時を設定することも可能とする。
【0084】
[第3の実施の形態]
次に、図8図11を参照して本発明の第3の実施の形態の検査計画作成支援装置100について説明する。なお、第3の実施の形態の検査計画作成支援装置100のハードウエア構成は第1、第2の実施の形態の検査計画作成支援装置100と同様であるため、同一の各部については同一の符号を付して説明する。
【0085】
第3の実施の形態では、検査計画作成支援装置100は、未来の所望の検査日時が設定されると、その検査の最適な撮影条件を算出し、提示する処理を行う。
【0086】
すなわち、次回(n+1回目)の検査日時が既知の場合、次回検査日時tn+1における過去の検査(1〜n回目)による累積線量n+1と上限値Zとから次回許容線量Kn+1が負の値にならないような撮影条件を算出できる。累積線量n+1を算出する際は、組織の回復(回復曲線A〜A)を考慮する。
【0087】
図8図11を参照して、最適条件提示処理の流れを説明する。
図8のフローチャートに示す最適条件提示処理は、図2に示すグラフ生成・表示処理の後に行われる。すなわち、過去(1〜n回目まで)の検査情報に基づいて線量の推移を示すグラフ31が生成され、図3に示すように描画された後に最適条件提示処理が開始される。
【0088】
図8に示すように、CPU101は、まず次回(n+1回目)の検査日時の設定を受け付ける(ステップS301)。ステップS301において、CPU101は、例えば操作者が検査日時を入力するための次回検査日時欄33を表示装置107に表示し、任意値の入力を受け付ける。
【0089】
CPU101は、次回検査日時における過去(n回目まで)の各検査の累積線量n+1を求める。また、許容線量Kn+1=上限値Z−Rn+1を算出する(ステップS302)。
【0090】
次にCPU101は、検査部位の入力を受け付け(ステップS303)、入力された検査部位の撮影条件候補を検索する(ステップS304)。撮影条件候補は、撮影条件テーブル8として検査部位毎に管理され、記憶装置103に記憶されているものとする。
【0091】
図9に示すように、撮影条件テーブル8には、検査部位81毎に1または複数の撮影条件候補82が格納されている。また、各撮影条件候補82についてそれぞれ予測線量83が予め求められ、撮影条件テーブル8に格納されているものとする。
【0092】
CPU101は、撮影条件テーブル8から、入力された検査部位に該当し、かつ、ステップS302で算出した許容線量Kn+1より予測線量83(Dn+1)が小さくなる撮影条件候補82を検索する(ステップS305)。
【0093】
入力された検査部位に該当し、かつ、ステップS302で算出した許容線量Kn+1より予測線量83(Dn+1)が小さくなる撮影条件候補82が撮影条件テーブル8内にある場合は(ステップS305;Yes)、更に検索結果が複数あるか判定する。検索結果が複数ある場合は(ステップS306;Yes)、CPU101は画質が最良となる撮影条件候補82を選択し(ステップS307)、最適な撮影条件として表示装置107に表示する(ステップS308)。検索結果が1つの場合は(ステップS306;No)、検索された撮影条件候補82を最適な撮影条件として表示装置107に表示する(ステップS308)。
【0094】
なお、撮影条件候補が複数ある場合に、検索結果を一覧表示して選択を受け付けるようにしてもよい。一覧表示する際は、画質の良好なものが上位となるように並べ替えることが望ましい。
【0095】
ステップS305において、入力された検査部位に該当し、かつ、ステップS302で算出した許容線量Kn+1より予測線量83(Dn+1)が小さくなる撮影条件候補82が撮影条件テーブル8内にない場合(ステップS305;No)は、CPU101は、予測線量(Dn+1)が許容線量Kn+1より小さくなるような撮影条件を生成し、表示する(ステップS310)。この場合、目的とする画質を得られない場合もあるため、警告を報知する(ステップS311)。
【0096】
その後、CPU101は、次回撮影条件に基づいて回復曲線An+1を描画するとともに許容線量Kn+1を示すオブジェクトを描画する(ステップS309)。
【0097】
撮影条件欄32内に表示された撮影条件が操作者によって修正された場合は、修正された撮影条件に従って、回復曲線An+1、許容線量Kn+1等を再算出し、それらの表示を更新する。
【0098】
図10は、次回検査日時が入力された段階における検査計画作成用画面3の一例を示す図であり、図11は最適な撮影条件が求められた段階での検査計画作成用画面3の一例を示す図である。
【0099】
図10に示すように、検査計画作成用画面3には、過去の検査についての残存線量の推移を示すグラフ31が表示されている。また、次回検査日時欄33に「2011年3月3日」が入力されるものとする。
【0100】
すると、CPU101により入力された次回検査日「2011年3月3日」における過去の検査の累積線量n+1が算出され、次回の許容線量Kn+1が算出される。そして、撮影条件テーブル8から、検査部位に該当し、許容線量Kn+1より予測線量83が小さい撮影条件候補82が検索され、検索結果のうち最適(例えば、画質が最良のもの)が図11に示すように、撮影条件欄32に提示される。また、次回検査の回復曲線An+1、許容線量n+1等が求められ、線量推移グラフ31内に表示される。
【0101】
以上説明したように、第3の実施の形態の検査計画作成支援装置100によれば、次回の検査日時が設定されると、過去の検査情報と、次回検査日における組織の回復(回復曲線)とを考慮して次の検査日における許容線量を算出し、許容線量より線量値が小さくなる撮影条件を求め、提示する。
また、予め記憶されている撮影条件候補の中から許容線量の条件を満たす撮影条件が検索できない場合は、画質を低下させても許容線量の条件を満たす撮影条件を生成し、提示する。
【0102】
したがって、検査日が決まっている場合に、その検査日までの組織の回復を考慮して撮影条件が決定されるため、より最適な撮影条件を決定できる。また、画質よりも被曝線量の条件を重く考慮するため、緊急性の低い定期検査等の計画を作成するのに好適である。また、緊急の検査を行う場合であっても、最適な撮影条件が提示されるため、被曝線量をより低減できる。
また、未来の検査計画についても、被曝線量や許容線量等の各数値や曲線をオブジェクトやグラフとして検査計画作成用画面3内に描画するため、操作者が未来の検査で受ける被曝線量の組織の回復を考慮した残存値の時間変化を直感的にシミュレーションしやすく、検査計画の作成を有効に支援できる。
【0103】
なお、本実施の形態は、あくまで理想的な撮影条件を算出し、提示する例であり、提示された撮影条件に対する修正の入力を受け付けるようにしてもよい。この場合、修正結果として許容線量の条件を満たさなくなったとしても、医師等の判断で検査の必要性を認められれば、この撮影条件で検査を行うことを禁止するものではない。ただし、許容線量の条件を満たさない場合は警告を報知することが望ましい。
【0104】
以上、本発明に係る検査計画作成支援装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0105】
100・・・・検査計画作成支援装置
101・・・・CPU
102・・・・主メモリ
103・・・・記憶装置
104・・・・通信I/F
105・・・・表示メモリ
106・・・・I/F
107・・・・表示装置
108・・・・マウス
109・・・・入力装置
110・・・・ネットワーク
111・・・・画像データベース
112・・・・医用画像撮影装置
3・・・・・・検査計画作成用画面
31・・・・・線量推移グラフ
4・・・・・・座標
50・・・・・上限値Zを示すオブジェクト
51,54,57・・・被曝線量Dを示すオブジェクト
52,55,58・・・許容線量Kを示すオブジェクト
53,56,59・・・累積線量と被曝線量Dとの和を示すオブジェクト
・・・・・・・・・i回目検査の被曝線量
・・・・・・・・・i回目検査の回復曲線
k,ti・・・・・・・i回目検査の時点でのk回目検査による被曝線量の残存値(k<i)
・・・・・・・・・i回目検査の時点での過去の検査の累積線量
32・・・・・・・・・撮影条件欄
33・・・・・・・・・次回検査日欄
60・・・・・・・・・次回検査の最適期間を示すオブジェクト
62・・・・・・・・・次回検査の予測線量Dn+1を示すオブジェクト
63・・・・・・・・・ハンドル(次回検査日時を設定するGUI)
64・・・・・・・・累積線量n+1と被曝線量Dn+1との和を示すオブジェ
クト
71・・・・・・・・次回検査の許容線量Kn+1を示すオブジェクト
5・・・・・・・・・マウスポインタ
8・・・・・・・・・撮影条件テーブル
82・・・・・・・・撮影条件候補
90・・・・・・・・次回検査日を示すオブジェクト
91・・・・・・・・次回検査の許容線量Kn+1を示すオブジェクト
92・・・・・・・・次回予測線量Dn+1を示すオブジェクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11