特許第5718068号(P5718068)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5718068-傾斜検出器と傾斜検出装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718068
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】傾斜検出器と傾斜検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01C 9/20 20060101AFI20150423BHJP
   G01C 9/06 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   G01C9/20
   G01C9/06 A
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-7219(P2011-7219)
(22)【出願日】2011年1月17日
(65)【公開番号】特開2012-149921(P2012-149921A)
(43)【公開日】2012年8月9日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】100082670
【弁理士】
【氏名又は名称】西脇 民雄
(72)【発明者】
【氏名】大友 文夫
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 薫
【審査官】 中村 説志
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭59−162611(JP,U)
【文献】 特開2010−197216(JP,A)
【文献】 特開昭61−093906(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3004673(JP,U)
【文献】 実開平03−004211(JP,U)
【文献】 特開2007−127628(JP,A)
【文献】 米国特許第05526022(US,A)
【文献】 仏国特許出願公開第00716056(FR,A1)
【文献】 特開平01−133127(JP,A)
【文献】 特表平03−502262(JP,A)
【文献】 仏国特許出願公開第02868834(FR,A1)
【文献】 特開昭56−107112(JP,A)
【文献】 特開昭59−187213(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01C 1/00−15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自由表面を形成する液体と、この液体を封入した容器とを備えた傾斜検出器であって、
前記容器の周壁を球面状に形成し、
前記自由表面の中心とその周壁の球面中心とを一致させ
前記容器の底部の中央部に、上に突出した消波部を形成し、
この消波部の中央部を球面状に形成したことを特徴とする傾斜検出器。
【請求項2】
前記容器の底部の下面の中央部に凹部を形成したことを特徴とする請求項1に記載の傾斜検出器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の傾斜検出器と、この傾斜検出器の自由表面に向けて光束を照射する光源と、この光源と前記自由表面との間に介在されて前記光束にパターンを形成する視野パターンと、略自由表面中心に光の反射位置がくるように配置された光学リレー部と、前記自由表面で反射された光束のパターンを検出する受光センサと、この受光センサが検出するパターンに基づいて前記自由表面に対する容器の傾斜角を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする傾斜検出装置。
【請求項4】
請求項2に記載の傾斜検出器と、この傾斜検出器の自由表面に向けて光束を照射する光源と、この光源と前記自由表面との間に介在されて前記光束にパターンを形成する視野パターンと、略自由表面中心に光の反射位置がくるように配置された光学リレー部と、前記自由表面で反射された光束のパターンを検出する受光センサと、この受光センサが検出するパターンに基づいて前記自由表面に対する容器の傾斜角を演算する演算手段とを備え、
前記光学リレー部の一部を前記底部の下面の凹部に配置したことを特徴とする傾斜検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば測量機に搭載される傾斜検出器と、この傾斜検出器を備えた傾斜検出装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、測量機などに搭載される傾斜検出装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる傾斜検出装置は、自由表面を形成する液体と、この液体を封入した容器と、自由表面に向けて光束を照射する光源と、この光源と自由表面との間に介在されて光源の光束にパターンを形成する視野パターンと、自由表面で反射された光束のパターンを検出する受光センサと、この受光センサが受光するパターンに基づいて傾斜を求める演算手段などとを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−127628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このような傾斜検出装置にあっては、液面の中心で光束を反射させるが、その液面の中心部では液体の表面張力により中心部の液面は微小ながら湾曲状態に凹んだ状態となっている。また、容器の傾きによって液表面の形状が変化する。つまり、容器が円筒状であればその傾きによって液表面が楕円形となり、その傾きが大きくなれば短径と長径の差の大きい楕円形となる。このため、容器の傾きが大きいほど液面の中心部の湾曲状態の変化が大きくなり、その傾きが大きいほど検出精度に悪影響を及ぼすという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、傾きの大きさに拘わらず検出精度に悪影響を及ぼすことのない傾斜検出器と傾斜検出装置とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、自由表面を形成する液体と、この液体を封入した容器とを備えた傾斜検出器であって、
前記容器の周壁を球面状に形成し、
前記自由表面の中心とその周壁の球面中心とを一致させ
前記容器の底部の中央部に、上に突出した消波部を形成したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の傾斜検出器と、この傾斜検出器の自由表面に向けて光束を照射する光源と、この光源と前記自由表面との間に介在されて前記光束にパターンを形成する視野パターンと、略自由表面中心に光の反射位置がくるように配置された光学リレー部と、前記自由表面で反射された光束のパターンを検出する受光センサと、この受光センサが検出するパターンに基づいて前記自由表面に対する容器の傾斜角を演算する演算手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、容器の傾きの大きさに拘わらず検出精度に悪影響を及ぼすことがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明に係る傾斜検出装置の光学系の配置と傾斜検出器の構成を示し断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、この発明に係る傾斜検出器と傾斜検出装置の実施の形態である一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
図1に示す傾斜検出装置1は、傾斜検出器10と、この傾斜検出器10の後述する自由表面(液面)へ光束を照射する照射光学系20と、傾斜検出器10の自由表面で反射する反射光を受光する受光光学系30と、受光光学系30の受光素子32の受光に基づいて後述する容器の傾斜角を演算する演算回路(演算手段)40とを備えている。傾斜検出器10と照射光学系20と受光光学系30とは図示しない筐体に一体的に設けられている。
【0013】
傾斜検出器10は、例えばシリコンオイルなどの液体11と、この液体11を封入した透明な容器12とを有している。
【0014】
容器12は、円形の底部13と、この底部13に一体形成された球面状の周壁部(周壁)14とから構成され、この底部13の中央部には上に突出した消波部13Aが形成され、消波部13Aの中央部は球面状に形成されている。
【0015】
周壁部14の球体の中心位置14bと、液体11の自由表面(液面)11Aの中心位置とが一致されている。すなわち、液体11の液位が周壁部14の中心位置14bの高さに設定されている。
【0016】
照射光学系20は、LED光源(光源)21とコンデンサレンズ22と暗視野パターン23とビームスプリッター24とリレーレンズ(光学リレー部)25とを有している。
【0017】
コンデンサレンズ22とリレーレンズ25は液体11の自由表面11Aの中心位置に光の反射位置がくる(LED光源21が結像する)ように構成されている。
【0018】
暗視野パターン23には、従来と同様にX軸方向の傾きとY軸方向の傾きを求めるためのパターンが形成され、このパターンは特開2007−127628号公報に詳細に記載されているので、ここではその説明を省略する。なお、X軸とは例えば図1の紙面の左右方向であり、Y軸方向とはその紙面と直交する方向である。
【0019】
受光光学系30は、リレーレンズ25とビームスプリッター24と投影レンズ31とCCDなどのエリアセンサである受光センサ32とを有している。そして、暗視野パターン23と受光センサ32とが共役関係となっている。
【0020】
演算回路40は、受光センサ32が受光するパターンに基づいてX,Y軸方向の傾きを求めるものであり、その詳細は特開2007−127628号公報に記載されているので、ここではその説明を省略する。
[動 作]
次に、上記のように構成される傾斜検出装置1および傾斜検出器10の動作について説明する。
【0021】
LED光源21から光が射出され、この光がコンデンサレンズ22により平行光束とされ、暗視野パターン23を投影する。暗視野パターン23を透過したパターン光束はビームスプリッタ24を透過し、リレーレンズ25を介して容器12の液体11に入射する。そして、液体11の自由表面11A上に集光されるとともに反射される。
【0022】
液体11の自由表面11Aで反射された反射光は、リレーレンズ25を通ってビームスプリッタ24の傾斜面24Aで反射され、この反射光は投影レンズ31を介して受光センサ32に達し、この受光センサ32上にパターンが結像される。
【0023】
演算回路40は、受光センサ32上に形成されるパターンに基づいてX,Y軸方向の傾きを求める。
【0024】
ここで、容器12が傾いていない場合、すなわち、傾斜検出装置1が傾かずに設置されている場合、液体11の自由表面11Aは鎖線Hで示す位置となり、この鎖線Hが水平を示すことになる。
【0025】
そして、ビームスプリッタ24を透過したパターン光束は、リレーレンズ25により液体11の自由表面11Aの中心位置すなわち周壁部14の球体の中心位置14bに集光され、ここで反射することになる。
【0026】
この場合、容器12の周壁部14が球体状に形成されていることにより、液体11の自由表面(液面)11Aの形状は円形となっている。
【0027】
容器12が傾いている場合、すなわち、傾斜検出装置1が傾いて設置されている場合、例えば、液体11の自由表面11Aが実線で示す位置となっている場合、液体11の自由表面11Aの中心位置は周壁部14の球体の中心位置14bに一致し、ビームスプリッタ24を透過したパターン光束は、周壁部14の球体の中心位置14bに集光され、ここで反射することになる。
【0028】
また、容器12が傾いている場合、周壁部14が球体状に形成されていることにより、液体11の自由表面(液面)11Aの形状は円形となっている。
【0029】
この自由表面11Aの形状(液面の形状)は、容器12の傾きの大小に拘わりなく常に円形でその大きさも一定であり、このため、自由表面11Aの中心位置(14b)における湾曲形状、すなわち中心位置14bにおける液面の湾曲形状は容器12の傾きの大小に拘わらず常に一定となる。
【0030】
このため、水平に対する容器12の傾きの大きさに拘わらず検出精度に悪影響を及ぼすことがなく、常に高精度で容器12の傾きを求めることができることになる。
【0031】
また、容器12の周壁部14を球体状に形成したものであるから、水平に対する容器12の大きな傾きを検出することも可能となる。さらに、消波部13Aの中央部が球面状に形成されているので、容器12の大きな傾きに対しても消波効果が得られることになる。
【0032】
上記実施例では、容器12の周壁部14の上部も球体状に形成しているが、この上部は必ずしも球体状に形成する必要はない。 また、傾斜検出装置1は例えば測量機であるレーザ照準装置などに適用することができる。
【0033】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0034】
1 傾斜検出装置
10 傾斜検出器
11 液体
12 容器
14 周壁部
14b 中心位置
21 LED光源(光源)
23 暗視野パターン(視野パターン)
32 受光センサ
40 演算回路(演算手段)
図1