(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718079
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】開閉体の駆動装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/632 20150101AFI20150423BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20150423BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20150423BHJP
F16D 27/112 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
E05F15/14
B60J5/04 C
B60J5/06 A
F16D27/10 341V
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-24463(P2011-24463)
(22)【出願日】2011年2月7日
(62)【分割の表示】特願2006-225042(P2006-225042)の分割
【原出願日】2006年8月22日
(65)【公開番号】特開2011-106268(P2011-106268A)
(43)【公開日】2011年6月2日
【審査請求日】2011年2月7日
【審判番号】不服2013-13663(P2013-13663/J1)
【審判請求日】2013年7月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089934
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 淳一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100092945
【弁理士】
【氏名又は名称】新関 千秋
(72)【発明者】
【氏名】北 真一郎
【合議体】
【審判長】
小野 忠悦
【審判官】
住田 秀弘
【審判官】
竹村 真一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−307604(JP,A)
【文献】
特開2005−232918(JP,A)
【文献】
特開2005−113552(JP,A)
【文献】
特開2003−221969(JP,A)
【文献】
特開2004−135403(JP,A)
【文献】
特開2006−125037(JP,A)
【文献】
実開平5−32671(JP,U)
【文献】
特開2006−9488(JP,A)
【文献】
特開2004−27752(JP,A)
【文献】
実開平5−25029(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/00
B60J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレート(7)と、前記ベースプレート(7)に取り付けられるモータ(8)と、回転すると開閉体を開閉移動可能の有底円筒状の出力ドラム(11)と、前記ベースプレート(7)に取り付けられ前記出力ドラム(11)を収納するドラム側ハウジング(23)と、前記出力ドラム(11)の回転中心となるドラムシャフト(10)と、前記モータ(8)からの駆動力を前記出力ドラム(11)に伝達して回転させ得る接続状態と伝達させない切断状態とに切り替え可能なクラッチ機構(12)と、前記モータ(8)の駆動力を減速して前記クラッチ機構(12)に伝達する減速機構(9)とを備え、前記クラッチ機構(12)は、電磁コイル(14)が組み込まれるフィールドコア(15)と、前記ドラムシャフト(10)に回転可能に外嵌されるロータ(16)と、前記ドラムシャフト(10)に軸方向へ移動可能に外嵌されるアーマチュア(17)とを備え、前記フィールドコア(15)の中央部には前記ドラムシャフト(10)の軸芯方向の貫通孔(151)を設け、前記ロータ(16)は前記フィールドコア(15)の前記貫通孔(151)内を相対回転自在に貫通させ、前記アーマチュア(17)には前記アーマチュア(17)が前記電磁コイル(14)の磁力により前記ドラムシャフト(10)の軸芯方向に沿って引き寄せられると前記ロータ(16)の摩擦面(164)と圧接して前記接続状態をなしえる摩擦面(171)を設け、前記ロータ(16)と前記アーマチュア(17)とは前記出力ドラム(11)の内径側に収容させ、前記ドラムシャフト(10)の一端側の一端部(101)は前記ドラム側ハウジング(23)に回転自在に支持させ、前記出力ドラム(11)の有底面から他端側に突出する前記ドラムシャフト(10)の根本部分には前記アーマチュア(17)が外嵌されるドラム根本側拡径部(104)を設け、前記ドラムシャフト(10)の他端側にはベアリング(25)により回転自在に支持される他端部(102)を設け、前記モータ(8)からの駆動力が入力される前記減速機構(9)および前記開閉体を開閉移動させる前記出力ドラム(11)は前記ドラムシャフト(10)の前記一端部(101)と前記他端部(102)との間に配置すると共に、前記減速機構(9)は前記ドラムシャフト(10)の半径方向においてその外側に前記ベアリング(25)と重合する構成とした開閉体の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両等に開閉可能に支持された開閉体を開閉するための開閉体の駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、開閉体の駆動装置においては、ベース部材にシャフトを介して回転自在に枢支され、スライドドア等の開閉体に駆動力を伝達するケーブルが外周面に巻回された出力ドラムと、モータからの駆動力が減速機構を介して入力されるとともに、駆動力が出力ドラムに伝達される接続状態及び伝達されない切断状態に切り替えられるクラッチ機構とを備えている。
【0003】
クラッチ機構は、電磁コイルが組み込まれて、ベース部材に固定される環状のフィールドコアと、出力ドラムを枢支したシャフトに回転可能に外嵌されるとともに側端面に摩擦面を有し、モータからの駆動力により回転可能なロータと、シャフトに相対回転自在で、かつ軸方向へ移動自在に支持されるとともに、出力ドラムと一体的に回転可能なアーマチュアとを備え、電磁コイルへの通電時、アーマチュアをロータに磁気的に吸着して接続状態にすることにより、ロータの回転をアーマチュアを介して出力ドラムに伝達するとともに、伝達部材を介して開閉体を開閉移動させるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−232918号公報(
図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のような従来の開閉体の駆動装置においては、モータ及び減速機構を組み付けたベース部材に対して、フィールドコア、ロータ、アーマチュア及び出力ドラムを順次、積層するように組付けなければならないため、組付け作業が面倒で、また、各部品間の精度が出難い問題がある。
【0006】
本発明は、従来の技術が有する上記のような問題点に鑑み、クラッチ機構を減速機構に連結する前の作業段階で、クラッチ機構及び出力ドラムの仮組みを可能にして、組付け作業を効率的に行うことができるようにした開閉体の駆動装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
よって本発明は、ベースプレート(7)と、前記ベースプレート(7)に取り付けられるモータ(8)と、回転すると開閉体を開閉
移動可能の有底円筒状の出力ドラム(11)と、前記ベースプレート(7)に取り付けられ前記出力ドラム(11)を収納するドラム側ハウジング(23)と、前記出力ドラム(11)の回転中心となるドラムシャフト(10)と、前記モータ(8)からの駆動力を前記出力ドラム(11)に伝達して回転させ得る接続状態と伝達させない切断状態とに切り替え可能なクラッチ機構(12)と、前記モータ(8)の駆動力を減速して前記クラッチ機構(12)に伝達する減速機構(9)とを備え、前記クラッチ機構(12)は、電磁コイル(14)が組み込まれるフィールドコア(15)と、前記ドラムシャフト(10)に回転可能に外嵌されるロータ(16)と、前記ドラムシャフト(10)に軸方向へ移動可能に外嵌されるアーマチュア(17)とを備え、前記フィールドコア(15)の中央部には前記ドラムシャフト(10)の軸芯方向の貫通孔(151)を設け、前記ロータ(16)は前記フィールドコア(15)の前記貫通孔(151)内を相対回転自在に貫通させ、前記アーマチュア(17)には前記アーマチュア(17)が前記電磁コイル(14)の磁力により前記ドラムシャフト(10)の軸芯方向に沿って引き寄せられると前記ロータ(16)の摩擦面(164)と圧接して前記接続状態をなしえる摩擦面(171)を設け、前記ロータ(16)と前記アーマチュア(17)とは前記出力ドラム(11)の内径側に収容させ、前記ドラムシャフト(10)の一端側の一端部(101)は前記ドラム側ハウジング(23)に回転自在に支持させ、前記出力ドラム(11)の有底面から他端側
に突出する前記ドラムシャフト(10)の根本部分には前記アーマチュア(17)が外嵌されるドラム根本側拡径部(104)を設け、前記ドラムシャフト(10)の他端側にはベアリング(25)により回転自在に支持される他端部(102)を設け、
前記モータ(8)からの駆動力が入力される前記減速機構(9)および前記開閉体を開閉移動させる前記出力ドラム(11)は前記ドラムシャフト(10)の前記一端部(101)と前記他端部(102)との間に配置すると共に、前記減速機構(9)は前記ドラムシャフト(10)の半径方向において
その外側に前記ベアリング(25)と重合する構成とした開閉体の駆動装置としたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、次のような効果が奏せられる。
(a)本発明によると、ロータのシャフトからの抜けを阻止する第1係止手段及びフィールドコアのロータからの抜けを阻止する第2係止手段を設けたことにより、ロータを減速機構に連結する前の作業段階で、出力ドラムを支持したシャフトに、アーマチュア、ロータ及びフィールドコアを脱落することがないように仮組みすることができるため、組付け作業を効率的に行うことができる。
【0009】
(b)本発明によると、ロータとアーマチュアとの間に、互いの摩擦面が離れる方向へ付勢する弾性部材を設けたことにより、アーマチュアの軸方向へのガタ付きを防止することができる。
【0010】
(c)本発明によると、ロータを、シャフトの段差部と第1係止手段との間に回転可能に挾持したことにより、ロータの軸方向へのガタ付きを防止することができる。
【0011】
(d)本発明によると、シャフトを、出力ドラムに一体的に形成したことにより、部品点数を削減して、構成の簡素化を図ることができる。
【0012】
(e)本発明によると、ロータの軸受筒部の端部を、減速機構に直接または間接的に連結したことにより、構成の簡素化を図るとともに、ロータを減速機構に確実に連結することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態を適用した車両の側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係わる一実施形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態を適用した車両の側面図、
図2は、駆動装置の縦断面図、
図3は、駆動装置の分解斜視図、
図4は、駆動装置の仮組み状態の縦断面図である。なお、以下の説明においては、
図1における左方を「前方」とし、
図1における右方を「後方」とする。
【0015】
図1に示すように、ミニバンまたはワゴンタイプの車両の開閉体をなすスライドドア(1)は、車体(2)の側面に設けられた上、中、下のガイドレール(3)(4)(5)により前後方向へ開閉可能に支持され、手動操作及び車体(2)後部に組み付けられた駆動装置(6)により、車体(2)の乗降口を閉鎖した全閉位置から車体(2)の外側面より若干外方に移動しつつ、車体(2)の側面に沿って後方へ移動した全開位置へ、及びその逆へ移動することができる。
【0016】
図2、3に示すように、駆動装置(6)は、車体(2)に固定されるベース部材をなす金属製のベースプレート(7)と、正逆回転可能なモータ(8)と、モータ(8)の回転を減速して回転可能な減速機構をなすウォームホイール(9)と、左右方向を向く
ドラムシャフト(10)により回転自在に枢支され、モータ(8)の駆動力をスライドドア(1)に伝達する伝達部材をなすケーブル(13)が巻回されて連結される合成樹脂製の出力ドラム(11)と、ウォームホイール(9)と出力ドラム(11)との間の動力伝達経路を断続可能なクラッチ機構(12)とを備えている。
【0017】
ベースプレート(7)の側面(
図2において左側面、
図3において上側面)には、ウォームホイール(9)を収容したギヤ側ハウジング(21)がねじ(20)により固定され、また、ベースプレート(7)の反対の側面(
図2において右側面、
図3において下側面)には、出力ドラム(11)及びクラッチ機構(12)を収容するドラム側ハウジング(23)がねじ(22)により固定される。なお、
図2におけるベースプレート(7)の右側面を一側面、左側面を他側面と表現する。モータ(8)は、ギヤ側ハウジング(21)を介してベースプレート(7)の他側面に取り付けられる。
【0018】
出力ドラム(11)に連結されるケーブル(13)は、ガイドレール(4)の前端部及び後端部に設けられたガイド部材(図示略)にそれぞれ掛け回されて、ガイドレール(4)に沿って配索されるとともに、端部がスライドドア(1)に連結される。
【0019】
図2に示すように、ウォームホイール(9)は、ギヤ側ハウジング(21)の内部に設けられた筒状の軸受筒部(211)に外嵌されることにより、ギヤ側ハウジング(21)内に回転自在に支持されるとともに、モータ(8)の出力軸に固着されたウォーム(24)に噛合し、モータ(8)の回転を減速して回転する。
【0020】
ウォームホイール(9)の内径側には、ウォームホイール(9)と一体的に回転可能なダンパープレート(19)が設けられている。このダンパープレート(19)は、ウォームホイール(9)の回転をロータ(16)に伝達するときの衝撃を緩和するためのものである。
【0021】
出力ドラム(11)は、ほぼ有底円筒状をなし、その外周面にケーブル(13)を巻回する螺旋溝(111)を形成し、また、中心部にシャフト(10)を一体的に形成している。
【0022】
出力ドラム(11)の右側面(
図3においては下側面)からドラム側ハウジング(23)側に突出する前記シャフト(10)の一端部(101)は、ドラム側ハウジング(23)に設けられた軸受孔(231)に回転自在に枢嵌され、また、同じく出力ドラム(11)の左側面(
図3においては上側面)からギヤ側ハウジング(21)側に向けて突出する他端部(102)は、ギヤ側ハウジング(21)の前記軸受筒部(211)の内側にベアリング(25)を介して回転自在に支持される。
【0023】
出力ドラム(11)の左側面から突出するシャフト(10)の根本部分には、ドラム根本側拡径部(104)が形成され、また、シャフト(10)の先端側となる小径の他端部(102)寄り側の外周には、後述の第1係止手段をなすEワッシャ(27)が軸方向に嵌合される嵌合溝(103)が設けられている。シャフト(10)のドラム根本側拡径部(104)と小径他端部(102)との間は、拡径部(104)よりは小径で他端部(102)よりは大径のシャフト中央部(106)に形成される。
【0024】
クラッチ機構(12)は、電磁コイル(14)が組み込まれてベースプレート(7)の一側面にねじ(26)により固定される磁性体からなるほぼ円筒状のフィールドコア(15)と、フィールドコア(15)の中央部に設けられた貫通孔(151)を貫通するシャフト(10)に回転可能に外嵌される磁性体からなるロータ(16)と、摩擦面(171)がロータ(16)の摩擦面(164)に対向するように、シャフト(10)の拡径部(104)に回転自在かつ軸方向へ僅かに移動自在に外嵌される磁性体からなるアーマチュア(17)とを備える。なお、ロータ(16)、アーマチュア(17)及びフィールドコア(15)は、出力ドラム(11)の内径側に収容される。
【0025】
ロータ(16)は、摩擦面(164)の反対側の側面から左方へ向けて突出して、シャフト(10)に回転自在に外嵌される軸受筒部(161)を有している。この軸受筒部(161)は、シャフト(10)と共にフィールドコア(15)の貫通孔(151)を貫通するとともに、その端部には、ダンパープレート(19)を介してウォームホイール(9)に連結されるローレット(162)が形成されている。また、軸受筒部(161)の外周には、後述の第2係止手段をなすリング部材(29)が軸方向へ嵌合する嵌合溝(163)が凹設されている。
【0026】
Eワッシャ(27)は、シャフト(10)にアーマチュア(17)及びロータ(16)の軸受筒部(161)を回転可能に外嵌した後、シャフト(10)の嵌合溝(103)に嵌合されることにより、ロータ(16)の軸受筒部(161)の左端面に当接して、ロータ(16)のシャフト(10)から抜ける方向(
図2、4において左方向)の移動を阻止する。これにより、クラッチ機構(12)をウォームホイール(9)に連結する前の組み立て作業段階において、ロータ(16)及びアーマチュア(17)がシャフト(10)から抜け出ることを阻止して、組立てを効率的に行うことができる。また、組立て後(フィールドコア(15)をベースプレート(7)に固定して、ロータ(16)をウォームホイール(9)に連結した状態)においては、軸受筒部(161)の両端部は、シャフト(10)に設けられた段差部(105)とEワッシャ(27)との間に、軸方向へガタ付きが生じないように挟持される。これにより、ロータ(16)のシャフト(10)に対する軸方向へのガタ付きを確実に阻止することができる。
【0027】
リング部材(29)は、フィールドコア(15)の貫通孔(151)にロータ(16)の軸受筒部(161)を回転可能に挿通した後、軸受筒部(161)の嵌合溝(163)に嵌合されることにより、フィールドコア(15)の左側面に当接して、フィールドコア(15)の軸受筒部(161)からの抜け出る方向(
図2、4において左方向)の移動を阻止する。これにより、ロータ(16)をウォームホイール(9)に連結する前の作業段階において、フィールドコア(15)がロータ(16)の軸受筒部(161)から抜け出ることを阻止して、組立てを効率的に行うことができる。また、組立て後においては、ロータ(16)の軸方向へのガタ付きを規制することもできる。
【0028】
ロータ(16)とアーマチュア(17)との間には、弾性部材をなすウェーブワッシャ(28)が設けられている。このウェーブワッシャ(28)は、シャフト(10)の拡径部(104)に外嵌され、アーマチュア(17)の摩擦面(171)がロータ(16)の摩擦面(164)から離れる方向へ付勢する。これにより、ロータ(16)とアーマチュア(17)間における両者の軸方向へのガタ付きを阻止する。なお、アーマチュア(17)は、出力ドラム(11)の左側面に当接することによって、その軸方向の移動力が制限されている。
【0029】
電磁コイル(14)への通電時、すなわちクラッチ機構(12)の接続状態においては、アーマチュア(17)をロータ(16)に磁気的に吸着して、モータ(8)の回転を、ウォーム(24)、ウォームホイール(9)、ダンパープレート(19)、ロータ(16)、アーマチュア(17)を介して、出力ドラム(11)に伝達する。出力ドラム(11)にモータ(8)の駆動力が伝達されると、ケーブル(13)を出力ドラム(11)に巻き取って、スライドドア(1)を閉じ方向または開き方向へ移動させることができる。また、電磁コイル(14)への非通電時、すなわちクラッチ機構(12)の切断状態においては、ロータ(16)とアーマチュア(17)との間が切断されているため、ウォームホイール(9)、モータ(8)を逆転させることなく、スライドドア(1)を手動操作で開閉することができる。
【0030】
次に、駆動装置(6)の組付け要領を説明する。先ず、出力ドラム(11)に一体的に形成したシャフト(10)に、アーマチュア(17)及びロータ(16)を回転自在に外嵌した状態で、シャフト(10)の嵌合溝(103)にEワッシャ(27)を嵌合する。
【0031】
次いで、フィールドコア(15)をロータ(16)の軸受筒部(161)に外嵌して、リング部材(29)をロータ(16)の嵌合溝(163)に嵌合する。これにより、
図4に示すように、Eワッシャ(27)により、ロータ(16)及びアーマチュア(17)がシャフト(10)から脱落することがないように、シャフト(10)に仮組みされ、また、リング部材(29)により、フィールドコア(15)がロータ(16)に仮組みされることにより、ロータ(16)をウォームホイール(9)に連結する前の作業段階で、クラッチ機構(12)と出力ドラム(11)とを仮組みすることができる。
【0032】
その後の作業段階で、予め、出力ドラム(11)に仮組みされたクラッチ機構(12)のフィールドコア(15)をねじ(26)によりベースプレート(7)に固定した後、最後に、ダンパープレート(19)をシャフト(10)のローレット(162)に嵌合して、ウォームホイール(9)とロータ(16)とを連結することによって、駆動装置(6)の組付けは完了する。
【0033】
以上、本発明の各実施形態について説明したが、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、上記実施形態に対して、次のような種々の変形や変更を施すことが可能である。
(i)シャフト(10)を、出力ドラム(11)と別体で形成する。
(ii)シャフト(10)を、ダンパープレート(19)を介することなく、ウォームホイール(9)に直接連結する。
(iii)開閉体を、スライドドア(1)に代えて、バックドア、サンルーフ、または窓開閉装置等にする。
(iv)ウェーブワッシャ(28)を、出力ドラム(11)とアーマチュア(17)との間に配置して、アーマチュア(17)の摩擦面(171)が、ロータ(16)の摩擦面(164)に常時接触する方向へ付勢する。これにより、ロータ(16)とアーマチュア(17)の軸方向へのガタ付きを防止することができる。
【符号の説明】
【0034】
(1)スライドドア(開閉体)、(2)車体、(3)、(4)、(5)ガイドレール、(6)駆動装置、(7)ベースプレート(ベース部材)、(8)モータ、(9)ウォームホイール(減速機構)、(10)シャフト、(11)出力ドラム、(12)クラッチ機構、(13)ケーブル(伝達部材)、(14)電磁コイル、(15)フィールドコア、(16)ロータ、(17)アーマチュア、(19)ダンパープレート、(20)ねじ、(21)ギヤ側ハウジング、(22)ねじ、(23)ドラム側ハウジング、(24)ウォーム、(25)ベアリング、(26)ねじ、(27)Eワッシャ(第1係止手段)、(28)ウェーブワッシャ(弾性部材)、(29)リング部材(第2係止手段)、(101)一端部、(102)他端部、(103)嵌合溝、(104)拡径部、(105)段差部、(106)シャフト中央部、(111)螺旋溝、(151)貫通孔、(161)軸受筒部、(162)ローレット、(163)嵌合溝、(164)摩擦面、(171)摩擦面、(211)軸受筒部、(231)軸受孔。