(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような小型の分光モジュールにおいては、反射型グレーティングの分光特性がパッケージの曲面の形成精度に大きく依存する。そのため、パッケージの曲面が所定の曲率で高精度に形成されていないと、分光特性が変化して、その結果、信頼性が低下するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、小型化を図りつつ、分光特性の変化による信頼性の低下を防止することができる分光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の分光モジュールは、空洞が形成された収容部材と、空洞の内面と対向するように収容部材に取り付けられ、空洞外から空洞内に光を通過させる光通過部材と、光通過部材によって支持され、空洞外から入射した光を分光すると共に空洞の内面側に透過させる分光部と、空洞の内面に配置され、分光部によって分光された光を反射する反射部と、光通過部材によって支持され、反射部によって反射された光を検出する光検出素子と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この分光モジュールでは、空洞外から空洞内に光を通過させる光通過部材によって、透過型の分光部及び光検出素子が支持されている。そのため、収容部材の状態に起因して分光部の分光特性が変化するのを抑制することができる。さらに、分光部、反射部及び光検出素子を互いに近付けて配置しても、透過型の分光部が収容部材によって支持されている場合に比べ、分光部の光入射面で反射した光が迷光として光検出素子によって検出されるのを抑制することができる。よって、この分光モジュールによれば、小型化を図りつつ、分光特性の変化による信頼性の低下を防止することが可能となる。
【0008】
なお、「光通過部材によって分光部及び光検出素子が支持されている」とは、分光部及び光検出素子が光通過部材によって直接的に支持されている場合だけでなく、分光部及び光検出素子が光通過部材によって間接的に(すなわち、収容部材以外の何らかの部材を介して)支持されている場合も含む意味である。
【0009】
ここで、光通過部材又は光検出素子には、分光部の前段に位置するように光入射部が設けられていることが好ましい。これによれば、分光部の所定の位置に選択的にかつ確実に光を入射させることができる。なお、前段とは、光の進行方向における上流側を意味する。
【0010】
このとき、光通過部材には、分光部の後段に位置しかつ反射部の前段に位置するように光出射部が設けられていることが好ましい。これによれば、分光部によって分光された光のうち検出すべき光のみを通過させることができる。なお、後段とは、光の進行方向における下流側を意味する。
【0011】
さらに、光入射部及び光出射部の少なくとも一方は、分光部に対して相対的に移動するように構成されていることが好ましい。これによれば、検出すべき光の波長範囲を変化させることができる。
【0012】
また、空洞は、外気に対して気密に封止されていることが好ましい。これによれば、少なくとも反射部等、空洞に臨む部材が湿気等により劣化するのを防止することができる。
【0013】
また、反射部は、空洞の内面に配置されたミラー素子であり、ミラー素子は、表面に凹部が形成された基材と、基材上に配置された成形層と、を備え、成形層は、凹部の深さ方向から見た場合に凹部内に位置する第1の部分、及び第1の部分と繋がった状態で基材の表面上に位置する第2の部分を有し、第1の部分において凹部の内面と対向する所定の面には、ミラーである光学機能部が設けられていることが好ましい。これによれば、使用時の温度変化等によって発生する応力が基材の凹部に集中しても、基材の表面上に位置する第2の部分によって、基材の凹部内に位置する第1の部分が押え付けられる。これにより、基材から成形層が剥離するのを防止することができる。さらに、使用時の温度変化等に起因する成形層の収縮や膨張が、基材の表面上に位置する第2の部分に吸収されて、基材の凹部内に位置する第1の部分の収縮や膨張が緩和される。これにより、第1の部分の所定の面の変形を防止することができ、延いてはその所定の面に設けられた光学機能部の変形を防止することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、小型化を図りつつ、分光特性の変化による信頼性の低下を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[第1の実施形態]
【0017】
図1に示されるように、分光モジュール1は、光吸収性を有する樹脂やセラミックからなる直方体箱状(例えば、幅35mm、奥行き30mm、高さ15mm)のパッケージ本体(収容部材)2を備えている。パッケージ本体2には、一方の側に開口する断面矩形状の凹部である空洞3、及び空洞3の開口3aを段階的に拡幅させる断面矩形状の拡幅部4〜6が形成されている。
【0018】
パッケージ本体2の外側の拡幅部6には、光吸収性を有する樹脂やセラミックからなる矩形板状のパッケージ蓋(光通過部材)7が接着等により気密に固定されている。パッケージ蓋7には光入射孔8が形成されており、光入射孔8には窓部材9が気密に固定されている。空洞3は、パッケージ本体2、パッケージ蓋7及び窓部材9によって、外気に対して気密に封止されている。
【0019】
パッケージ本体2の内側の拡幅部4には、光吸収性を有する樹脂やセラミックからなる矩形板状の支持基板(光通過部材)11が接着等により固定されている。支持基板11には、光入射孔8と対向するように光入射スリット(光入射部)12が形成されている。光入射スリット12の底面3b側の開口は、底面3bに向かって末広がりとなるように拡幅されている。
【0020】
パッケージ蓋7及び支持基板11は、空洞3の所定の内面である底面3bと対向するようにパッケージ本体2に取り付けられている。パッケージ蓋7及び支持基板11は、光入射孔8、窓部材9及び光入射スリット12を介して、空洞3外から空洞3内に光Lを通過させる。
【0021】
支持基板11に対して空洞3側には、光入射スリット12と対向するように、石英からなる矩形板状の透過型グレーティング素子(分光部)13が配置されている。透過型グレーティング素子13は、筒状の光吸収部材14を介して支持基板11に取り付けられている。つまり、透過型グレーティング素子13は、支持基板11によって間接的に支持されている。透過型グレーティング素子13は、光入射孔8、窓部材9及び光入射スリット12を介して空洞3外から入射した光Lを分光すると共に空洞3の底面3b側に透過させる。光吸収部材14は、光入射スリット12の底面3b側の開口から透過型グレーティング素子13の光入射面13aに至る光Lの光路を包囲している。
【0022】
空洞3の底面3bには、ミラー素子(反射部)20が配置されている。ミラー素子20は、ミラーである光学機能部21において、透過型グレーティング素子13によって分光された光Lを支持基板11側に反射する。ミラー素子20は、シリコン、プラスチック、セラミック又はガラス等からなる正方形板状(例えば、外形20mm×20mm、厚さ2mm)の基材22を備えている。基材22の表面22aには、開口23aに向かって末広がりとなる正四角錐台状の凹部23が形成されている。
【0023】
基材22上には、光硬化性のエポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン又は有機無機ハイブリッド樹脂等のレプリカ用光学樹脂を光硬化させることによって形成された成形層24が配置されている。成形層24の外縁24aは、凹部23の深さ方向(すなわち、一方の側)から見た場合に凹部23の底面23bの中心を包囲しており、外縁24aの少なくとも一部は、正方形状の開口23aの各辺の外側を通っている。なお、成形層4の材料には、前述した光硬化性の樹脂材料に限らず、熱硬化性の樹脂材料、又は低融点ガラスや有機無機ハイブリッドガラス等、成形型による成形及び硬化が可能な様々な材料(成形材料)を適用することができる。
【0024】
成形層24は、一体的に形成された本体部(第1の部分)25及び乗上げ部(第2の部分)26を有している。本体部25は、凹部23の深さ方向から見た場合に凹部23内に位置している。乗上げ部26は、本体部25と繋がった状態で基材22の表面22a上に位置している。乗上げ部26は、正方形状の開口23aの各辺の外側に設けられており、凹部23を挟んで対向しかつ凹部23を包囲している。
【0025】
成形層24は、凹部23の所定の内面である底面23bと対向する凹状の曲面(所定の面)24bを有している。曲面24bは、凹部23の底面23bの中心に向かって凹んだ曲面であり、正方形状の開口23aの各辺の中点を通って、本体部25から各乗上げ部26に至っている。成形層24の曲面24b上には、AlやAu等の蒸着膜である反射膜27が形成されている。反射膜27は、曲面24bにおける本体部25上の所定の領域に形成されており、反射膜27の表面が、ミラーである光学機能部21となっている。
【0026】
支持基板11に対して空洞3の反対側には、半導体等からなる基板15b、及び基板15bに形成された光検出部15aを有する光検出素子15が配置されている。支持基板11には、光検出部15aと対向するように光通過孔16が形成されている。光通過孔16の底面3b側の開口は、底面3bに向かって末広がりとなるように拡幅されている。光検出部15aは、フォトダイオードが例えば1次元に配列されて構成されている。光検出素子15は、ミラー素子20によって反射されて光通過孔16を通過した光Lを検出する。なお、光検出素子15は、フォトダイオードアレイに限定されず、C−MOSイメージセンサやCCDイメージセンサ等であってもよい。
【0027】
支持基板11の表面11aには、AlやAu等の単層膜、或いはCr−Pt−Au、Ti−Pt−Au、Ti−Ni−Au、Cr−Au等の積層膜からなる配線17が設けられている。光検出素子15の複数の外部端子のそれぞれは、バンプ18を介したフェースダウンボンディングによって、複数の配線17のそれぞれと接続されている。つまり、光検出素子15は、支持基板11によって間接的に支持されている。パッケージ本体2には、基端部が中間の拡幅部5に露出しかつ先端部が外部に延在するように、複数のリード19が埋設されている。各配線17は、ワイヤ31によって、各リード19の基端部と接続されている。支持基板11の表面11aには、光吸収層42が形成されている。光吸収層42は、バンプ18及びリード19が配置される部分を除いて配線17を覆っている。
【0028】
以上のように構成された分光モジュール1では、光入射孔8、窓部材9及び光入射スリット12を介して空洞3外から入射した光Lは、透過型グレーティング素子13によって分光されると共に空洞3の底面3b側に透過させられる。透過型グレーティング素子13によって分光された光Lは、ミラー素子20によって支持基板11側に反射される。ミラー素子20によって反射された光Lは、光通過孔16を介して光検出部15aに入射する。これにより、光検出素子15から出力された電気信号は、バンプ18、配線17、ワイヤ31及びリード19を介して分光モジュール1の外部に取り出される。
【0029】
以上説明したように、分光モジュール1では、空洞3外から空洞3内に光Lを通過させるパッケージ蓋7及び支持基板11のうちの支持基板11によって、透過型グレーティング素子13及び光検出素子15が支持されている。そのため、パッケージ本体2の状態(形成精度や、使用時の温度変化による収縮及び膨張等)に起因して透過型グレーティング素子13の分光特性が変化してしまうのを抑制することができる。さらに、透過型グレーティング素子13、ミラー素子20及び光検出素子15を互いに近付けて配置しても、透過型グレーティング素子13がパッケージ本体2によって支持されている場合に比べ、透過型グレーティング素子13の光入射面13aで反射した光が迷光として光検出素子15によって検出されるのを抑制することができる。よって、分光モジュール1によれば、小型化を図りつつ、分光特性の変化による信頼性の低下を防止することが可能となる。
【0030】
ここで、分光モジュール1においては、透過型グレーティング素子13の光入射面13aで反射した光が迷光となるのを抑制するための構造が、次のように単純化されている。すなわち、透過型グレーティング素子13を支持基板11に取り付けるための光吸収部材14に、光入射スリット12から光入射面13aに至る光Lの光路を包囲させている。これに対し、透過型グレーティング素子13をパッケージ本体2に支持させると、その支持のための構造の他に、透過型グレーティング素子13の光入射面13aで反射した光が迷光となるのを抑制するための構造が必要となるなど、構造が複雑化するおそれがある。なお、光入射スリット12から光入射面13aに至る光Lの光路を光吸収部材14に包囲させなくても、透過型グレーティング素子13がパッケージ本体2によって支持されている場合に比べれば、透過型グレーティング素子13の光入射面13aで反射した光が迷光となるのを抑制することができる。
【0031】
また、分光モジュール1では、透過型グレーティング素子13が支持基板11によって支持されているので、ミラー素子20から光検出素子15に至る光Lの光路を単純化することができる。これに対し、透過型グレーティング素子13をパッケージ本体2に支持させると、その支持のための構造によって検出すべき光Lが蹴られないように、検出すべき光Lを複数回反射させるなど、ミラー素子20から光検出素子15に至る光Lの光路が複雑化するおそれがある。さらに、その支持のための構造に、検出すべき光L以外の光が当たり、多重反射による迷光が発生するおそれもある。
【0032】
また、分光モジュール1では、透過型グレーティング素子13が支持基板11によって支持されているので、透過型グレーティング素子13を所定の姿勢で容易にかつ確実に固定することができる。例えば、光Lの光路を調整したり、透過型グレーティング素子13の光入射面13aで反射した光が迷光となるのを抑制したりするために、透過型グレーティング素子13を傾けて配置することも可能である。
【0033】
また、従来の分光モジュールのように、パッケージの所定の内面である曲面に反射型グレーティングを設ける場合には、検出すべき光の波長範囲に応じてパッケージの曲面の曲率を変化させることが必要となり、パッケージの共通化が妨げられる。一方、パッケージの共通化を図ろうとすると、検出すべき光の波長範囲が制限される。それに対し、分光モジュール1では、透過型グレーティング素子13を変更すれば、検出すべき光の波長範囲を変化させることができるので、パッケージ本体2の共通化を図ることができる。加えて、分光モジュール1では、平面板状の透過型グレーティング素子13の採用によって、小型化に際し、球面状の光学面を有する反射型グレーティングを採用する必要がないため、グレーティングの光学設計の自由度が広がる。従って、分光モジュール1によれば、小型化と様々な製品特性(波長帯域や分解能)のバリエーションとの両立を実現することが可能となる。
【0034】
また、従来の分光モジュールのように、パッケージの所定の内面である曲面に反射型グレーティングを設ける場合には、分光特性の変化を防止するために、パッケージの曲面を所定の曲率で高精度に形成することが必要となり、分光モジュールのコストダウンが妨げられる。それに対し、分光モジュール1では、そのような高精度の曲面の形成や、その曲面へのグレーティングの形成が不要となるので、分光モジュール1のコストダウンを図ることができる。
【0035】
さらに、分光モジュール1では、透過型グレーティング素子13及び光検出素子15を支持基板11に取り付けておくと共に、ミラー素子20をパッケージ本体2に取り付けておき、その後に、支持基板11とパッケージ本体2とを組み合わせれば、透過型グレーティング素子13、ミラー素子20及び光検出素子15の互いの位置決めを実現することができる。しかも、透過型グレーティング素子13をパッケージ本体2に支持させるための構造等が存在しないため、ミラー素子20をパッケージ本体2に容易に取り付けることができる。
【0036】
また、支持基板11には、透過型グレーティング素子13の前段(すなわち、光Lの進行方向における上流側)に位置するように光入射スリット12が設けられている。これにより、透過型グレーティング素子13の所定の位置に選択的にかつ確実に光Lを入射させることができる。
【0037】
また、パッケージ本体2に形成された空洞3は、パッケージ本体2、パッケージ蓋7及び窓部材9によって、外気に対して気密に封止されている。これにより、透過型グレーティング素子13、ミラー素子20、光検出素子15等、空洞3に臨む部材が湿気等により劣化するのを防止することができる。
【0038】
また、分光された光Lを反射する反射部としてミラー素子20が採用されている。ミラー素子20では、使用時の温度変化等によって発生する応力が基材22の凹部23に集中しても、基材22の表面22a上に位置する乗上げ部26によって、基材22の凹部23内に位置する本体部25が押え付けられる。この作用には、乗上げ部26が位置する表面22aが、凹部23の側面(内面)23cと不連続な面(ここでは、平坦面)となっていることが寄与している。しかも、乗上げ部26が、凹部23を挟んで対向しかつ凹部23を包囲するように複数設けられているので、本体部25が周囲から均一に押さえ付けられることになる。これにより、基材22からの成形層24の剥離を確実に防止することができる。
【0039】
さらに、ミラー素子20では、使用時の温度変化等に起因する成形層24の収縮や膨張が、基材22の表面22a上に位置する乗上げ部26に吸収されて、基材22の凹部23内に位置する本体部25の収縮や膨張が緩和される。しかも、乗上げ部26が、凹部23を挟んで対向しかつ凹部23を包囲するように複数設けられているので、本体部25の収縮や膨張が均一に緩和されることになる。これにより、本体部25の曲面24bの変形を確実に防止することができ、延いてはその曲面24bに設けられた光学機能部21の変形を確実に防止することができる。
【0040】
また、ミラー素子20では、ミラーである光学機能部21となる表面を有する反射膜27が、曲面24bの中心を外すように曲面24b上に形成されているので、0次光が迷光となるのを抑制することができる。曲面24bの中心を外すように、光入射スリット12や透過型グレーティング素子13を曲面24bに対向させても、0次光が迷光となるのを抑制することができる。
【0041】
なお、ミラー素子20においては、基材22の表面22aに形成された凹部23の内面は、一続きの曲面等、曲面であってもよい。また、光学機能部21が設けられる成形層24の曲面24bは、少なくとも本体部25に形成されていれば、本体部25から乗上げ部26に至っていなくてもよい。逆に、光学機能部21は、本体部25から乗上げ部26に至っていてもよい。また、乗上げ部26が凹部23を挟んで対向する場合、対向する方向は任意である。また、乗上げ部26は、凹部23を挟んで対向するように一組だけ設けられていてもよい。また、乗上げ部26は、例えば120°ごとに配置されるなど、凹部23を挟んで対向せずに凹部23を包囲するように複数設けられていてもよい。また、乗上げ部26は、基材22の表面22a上において一続きになっていてもよい。
【0042】
また、
図2に示されるように、パッケージ本体2の空洞3の底面3bを曲面状に形成し、ミラー素子20に代えて、その底面3bに反射膜(反射部)32を形成してもよい。この場合にも、従来の分光モジュールのように、パッケージの所定の内面である曲面に反射型グレーティングを設ける場合に比べれば、検出すべき光の波長範囲に応じてパッケージの曲面の曲率を変化させることや、パッケージの曲面を所定の曲率で高精度に形成することの必要性は低くなる。よって、従来の分光モジュールに比べて、パッケージ本体2の共通化や、分光モジュール1のコストダウンを図ることができる。
[第2の実施形態]
【0043】
図3に示される分光モジュール1は、光検出素子15に光入射スリット(光入射部)33が形成されている点で、
図1に示される分光モジュール1と主に相違している。以下、この相違点を中心に、第2の実施形態の分光モジュールについて説明する。
【0044】
図3に示されるように、光検出素子15の基板15bには、光検出部15aと並設されるように光入射スリット33が形成されている。光入射スリット33は、光検出部15aに対して高精度に位置決めされた状態で、エッチング等によって基板15bに形成されている。光検出部15a及び光入射スリット33は、支持基板11の光通過孔16と対向している。なお、光通過孔16は、光検出部15a及び光入射スリット33のそれぞれと対向するように、支持基板11に複数設けられていてもよい。
【0045】
透過型グレーティング素子13は、光検出素子15の光入射スリット33と対向するように、支持基板11に対して空洞3側に配置されている。透過型グレーティング素子13は、光入射面13aが光通過孔16に臨んだ状態で支持基板11に固定されている。つまり、透過型グレーティング素子13は、支持基板11によって直接的に支持されている。
【0046】
以上のように構成された分光モジュール1では、光入射孔8、窓部材9、光入射スリット33及び光通過孔16を介して空洞3外から入射した光Lは、透過型グレーティング素子13によって分光されると共に空洞3の底面3b側に透過させられる。透過型グレーティング素子13によって分光された光Lは、ミラー素子20によって支持基板11側に反射される。ミラー素子20によって反射された光Lは、光通過孔16を介して光検出部15aに入射する。これにより、光検出素子15から出力された電気信号は、バンプ18、配線17、ワイヤ31及びリード19を介して分光モジュール1の外部に取り出される。
【0047】
以上説明したように、分光モジュール1では、空洞3外から空洞3内に光Lを通過させるパッケージ蓋7及び支持基板11のうちの支持基板11によって、透過型グレーティング素子13及び光検出素子15が支持されている。そのため、パッケージ本体2の状態(形成精度や、使用時の温度変化による収縮及び膨張等)に起因して透過型グレーティング素子13の分光特性が変化するのを抑制することができる。さらに、透過型グレーティング素子13、ミラー素子20及び光検出素子15を互いに近付けて配置しても、透過型グレーティング素子13がパッケージ本体2によって支持されている場合に比べ、透過型グレーティング素子13の光入射面13aで反射した光が迷光として光検出素子によって検出されるのを抑制することができる。よって、分光モジュール1によれば、小型化を図りつつ、分光特性の変化による信頼性の低下を防止することが可能となる。
【0048】
また、光検出素子15には、透過型グレーティング素子13の前段(すなわち、光Lの進行方向における上流側)に位置するように光入射スリット33が設けられている。これにより、透過型グレーティング素子13の所定の位置に選択的にかつ確実に光Lを入射させることができる。
【0049】
なお、
図4に示されるように、パッケージ本体2の空洞3の底面3bを曲面状に形成し、ミラー素子20に代えて、その底面3bに反射膜32を形成してもよい。この場合にも、従来の分光モジュールに比べて、パッケージ本体2の共通化や、分光モジュール1のコストダウンを図ることができる。
[第3の実施形態]
【0050】
図5に示される分光モジュール1は、パッケージ蓋7に透過型グレーティング素子13が固定されている点、及び支持基板11に光出射アパーチャ(光出射部)34が形成されている点で、
図2に示される分光モジュール1と主に相違している。以下、この相違点を中心に、第3の実施形態の分光モジュールについて説明する。
【0051】
図5に示されるように、パッケージ蓋7に対して空洞3の反対側には、光入射スリット12が形成された可動部材35が配置されている。可動部材35は、対向する光入射孔8の範囲内において光入射スリット12が移動可能となるように、パッケージ蓋7に気密に取り付けられている。パッケージ蓋7に対して空洞3側には、透過型グレーティング素子13が配置されている。透過型グレーティング素子13は、光入射面13aが光入射孔8に臨んだ状態で光入射孔8を覆うようにパッケージ蓋7に気密に固定されている。つまり、透過型グレーティング素子13は、パッケージ蓋7によって直接的に支持されている。支持基板11には、透過型グレーティング素子13によって分光された光Lの一部を通過させる光出射アパーチャ34が形成されている。
【0052】
パッケージ蓋7は、側壁部材36を介して支持基板11上に支持されている。空洞3は、パッケージ本体2、パッケージ蓋7、透過型グレーティング素子13及び側壁部材36によって、外気に対して気密に封止されている。パッケージ蓋7と支持基板11との間には、仕切り部材37が立設されている。仕切り部材37は、グレーティング素子13が配置された領域と、光検出素子15が配置された領域とを隔てる。
【0053】
以上のように構成された分光モジュール1では、光入射スリット12及び光入射孔8を介して空洞3外から入射した光Lは、透過型グレーティング素子13によって分光されると共に空洞3の底面3b側に透過させられる。透過型グレーティング素子13によって分光された光Lのうち光出射アパーチャ34を通過した光Lは、反射膜32によって支持基板11側に反射される。反射膜32によって反射された光Lは、光通過孔16を介して光検出部15aに入射する。これにより、光検出素子15から出力された電気信号は、バンプ18、配線17、ワイヤ31及びリード19を介して分光モジュール1の外部に取り出される。
【0054】
以上説明したように、分光モジュール1では、空洞3外から空洞3内に光Lを通過させるパッケージ蓋7及び支持基板11のうちのパッケージ蓋7によって、透過型グレーティング素子13が支持されており、それらのうちの支持基板11によって光検出素子15が支持されている。そのため、パッケージ本体2の状態(形成精度や、使用時の温度変化による収縮及び膨張等)に起因して透過型グレーティング素子13の分光特性が変化するのを抑制することができる。さらに、透過型グレーティング素子13、反射膜32及び光検出素子15を互いに近付けて配置しても、透過型グレーティング素子13がパッケージ本体2によって支持されている場合に比べ、透過型グレーティング素子13の光入射面13aで反射した光が迷光として光検出素子によって検出されるのを抑制することができる。よって、分光モジュール1によれば、小型化を図りつつ、分光特性の変化による信頼性の低下を防止することが可能となる。
【0055】
また、パッケージ蓋7には、透過型グレーティング素子13の前段(すなわち、光Lの進行方向における上流側)に位置するように光入射スリット12が設けられている。これにより、透過型グレーティング素子13の所定の位置に選択的にかつ確実に光Lを入射させることができる。
【0056】
また、支持基板11には、透過型グレーティング素子13の後段(すなわち、光Lの進行方向における下流側)に位置しかつ反射膜32の前段に位置するように光出射アパーチャ34が設けられている。これにより、透過型グレーティング素子13によって分光された光Lのうち、0次光や不要な回折光をカットして、検出すべき光Lのみを通過させることができる。
【0057】
さらに、光入射スリット12は、透過型グレーティング素子13に対して相対的に移動するように構成されている。そのため、
図5(a),(b)に示されるように、光入射スリット12の位置を変えれば、光出射アパーチャ34を通過し得る光Lの進行方向、すなわち波長が変わるので、検出すべき光Lの波長範囲を変化させることができる。なお、光入射スリット12及び光出射アパーチャ34の少なくとも一方を、透過型グレーティング素子13に対して相対的に移動するように構成すれば、検出すべき光Lの波長範囲を変化させることができる。
【0058】
以上、本発明の第1〜3の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、光入射スリット12に代えて、その位置に、光ファイバ等の導光部材を接続したり、レンズ等の光学部材を配置したりしてもよい。また、支持基板11を光透過性の材料により形成してもよい。その場合には、光吸収層42のパターニング等によって、光入射スリット12、光通過孔16及び光出射アパーチャ34等に対応する開口を形成すればよい。また、分光モジュール1の各構成部材の材料及び形状には、前述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を適用することができる。