(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記移動機構は、前記リール本体に外方に露出されて移動自在に装着された操作部材を有し、前記操作部材の移動位置に応じて前記ブレーキシューと前記ブレーキドラムとを異なる位置で位置決めする、請求項2又は3に記載の両軸受リールの遠心制動装置。
複数の前記ブレーキシューの少なくとも一つを前記ブレーキドラムに接触可能な作動状態と、前記ブレーキドラムに接触不能な非作動状態と、に切換可能な切換機構をさらに備える、請求項5に記載の両軸受リールの遠心制動装置。
前記ブレーキシューの前記第1端と第2端とを結ぶ前記ブレーキドラムに対向可能な内側面は、前記ブレーキシューが前記非作動状態にあるとき、前記ブレーキドラムの外周面から離反する形状である、請求項6に記載の両軸受リールの遠心制動装置。
前記ブレーキシューは、前記スプールが糸繰り出し方向に回転するとき、前記第1端が前記第2端に対して前記スプールの回転方向上流側に配置されるように前記回転部材に支持される、請求項1から7のいずれか1項に記載の両軸受リールの遠心制動装置。
複数の前記ブレーキシューは、前記第1端に前記ブレーキドラムに接触する半円形状の接触面を有する長板形状の部材である、請求項1から8のいずれか1項に記載の両軸受リールの遠心制動装置。
前記接触面は、前記第1端の板厚方向の中央に形成された突出面と、前記突出面から両側面に前記テーパ面に係合するように前記テーパ面の傾斜角度よりきつい傾斜角度で形成されたテーパ状の傾斜面と、を有する、請求項9に記載の両軸受リールの遠心制動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の遠心制動装置では、いずれも、移動部材を径方向外方に移動させて制動部材に接触させることによりスプールを制動している。特許文献1の遠心制動装置では、移動部材が制動部材に接触する半径位置に比例して制動力が変化する。このため、移動部材の半径位置を変化させても、制動力を大きく変化させることができない。また、半径位置の変化量も大きくできないことから、制動力の調整範囲が狭いものになる。
【0009】
特許文献2の遠心制動装置では、スプール軸と食い違う軸回りに移動部材を揺動させている。このため、スプール軸方向の寸法が特許文献1の遠心制動装置に比べて長くなり、リールの大型化を招く。また、スプール軸方向の位置が僅かにずれるだけで移動部材の揺動範囲、すなわち半径位置が変化してしまうので、安定した制動力を得にくい。
【0010】
本発明の課題は、両軸受リールの遠心制動装置において、リールの大型化を招くことなく、安定した制動力を広範囲で調整できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
発明1に係る両軸受リールの遠心制動装置は、リール本体に回転自在に装着されたスプールを遠心力により制動する両軸受リールの遠心制動装置である。遠心制動装置は、回転部材と、少なくとも一つのブレーキシューと、ブレーキドラムと、を備えている。回転部材は、スプールの少なくとも糸繰り出し方向の回転に連動して回転する。ブレーキシューは、第1端と第2端とを有する。ブレーキシューは、第1端と重心との間で回転部材にスプールの回転軸と平行な軸回りに揺動自在に装着される。ブレーキドラムは、ブレーキシューの径方向内側に配置され、揺動するブレーキシューの第1端に異なる直径で接触可能な外周面を有する。
【0012】
この遠心制動装置では、ブレーキシューがスプールの回転軸と平行な軸回りに回転部材に揺動自在に装着されている。また、ブレーキドラムは、ブレーキシューの第1端に異なる直径で接触可能な外周面を有している。さらに、ブレーキシューは、揺動軸芯がブレーキドラムに接触する第1端と重心との間に配置されている。このため、ブレーキシューの第2端がブレーキドラムから離反して揺動角度が大きくなるほど、重心がブレーキドラムから遠くなるため、遠心力は大きくなる。しかし、遠心力の、重心と揺動軸芯とを結ぶ線と直交する揺動方向の分力は、ブレーキシューの揺動角度が大きくなるほど小さくなる。さらにブレーキシューの揺動角度が大きいほど接触位置で分力によるモーメントで発生する力の方向がブレーキドラムの中心から離反する。この結果、接触位置でブレーキドラムの中心に向かう制動力が小さくなる。このため、重心の半径位置だけではなく、ブレーキシューの傾きにより制動力が大きく変化し、安定した制動力を広範囲で調整できるようになる。なお、これらの作用については、発明の実施形態で詳細に説明する。
【0013】
また、ブレーキシューがスプール軸と平行な軸回りに揺動するため、スプール軸と食い違う軸回りに揺動する場合に比べて、遠心制動装置の回転軸方向の長さが長くならない。このため、リールの大型化を抑えることができる。
【0014】
発明2に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明1に記載の装置において、ブレーキドラムは、ブレーキシューが接触可能なテーパ面を外周面に有する。遠心制動装置は、ブレーキシューとブレーキドラムとを回転軸の軸方向に相対移動かつ位置決め可能な移動機構をさらに備える。
【0015】
この場合には、移動機構によりブレーキドラム又はブレーキシューを軸方向に移動させて位置決めすることより、ブレーキシューの第1端のテーパ面への接触位置が径方向に変化し、ブレーキシューの揺動角度が変化する。これにより、ブレーキシューの揺動角度を容易に変化させて制動力を広範囲に調整することができる。
【0016】
発明3に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明に2に記載の装置において、テーパ面は、スプールに向かって縮径するように形成される。この場合には、スプールに向かってテーパ面が縮径されるので、ブレーキシューの揺動軸芯を可及的に回転軸の中心側に配置でき、リールの径方向寸法の増加を抑えることができる。
【0017】
発明4に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明2又は3に記載の装置において、移動機構は、リール本体に外方に露出されて移動自在に装着された操作部材を有する。移動機構は、操作部材の移動位置に応じてブレーキシューとブレーキドラムとを異なる位置で位置決めする。
【0018】
この場合には、外方に露出する操作部材によりブレーキシューとブレーキドラムが軸方向の複数の位置のいずれかに位置決めされるので、リール本体の例えばカバー部材をあけなくても制動力を調整でき、制動力の調整が容易である。
【0019】
発明5に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明1から4のいずれかに記載の装置において、ブレーキシューは、スプールの回転方向に間隔を隔てて複数配置されている。この場合には、ブレーキシューが複数設けられるので、大きな制動力を得ることができる。
【0020】
発明6に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明5に記載の装置において、複数のブレーキシューの少なくとも一つをブレーキドラムに接触可能な作動状態と、ブレーキドラムに接触不能な非作動状態と、に切換可能な切換機構をさらに備える。
【0021】
この場合には、ブレーキシューを作動状態と非作動状態とに切り換えできるため、ブレーキドラムに接触可能なブレーキシューの数を変更することができる。このため、ブレーキシューの状態を切り換えることにより制動力の調整範囲をさらに広範囲に行える。
【0022】
発明7に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明6に記載の装置において、ブレーキシューの第1端と第2端とを結ぶブレーキドラムに対向可能な内側面は、ブレーキシューが非作動状態にあるとき、ブレーキドラムの外周面から離反
する形状である。
【0023】
この場合には、揺動するブレーキシューであっても、非作動状態にすればブレーキシューがブレーキドラムに接触しない。
【0024】
発明8に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明1から7のいずれかに記載の装置において、ブレーキシューは、スプールが糸繰り出し方向に回転するとき、第1端がスプールの回転方向上流側に配置され、第2端が回転方向下流側に配置されるように回転部材に支持される。
【0025】
この場合には、キャスティング等の糸繰り出し時に揺動軸芯が第1端より回転方向上流側に配置されるので、くさび力が作用せず遠心力の作用により制動力が変化する。このため、制動力の設定が容易である。
【0026】
発明9に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明1から8のいずれかに記載の装置において、複数のブレーキシューは、第1端にブレーキドラムに接触する半円形状の接触面を有する長板形状の部材である。
【0027】
この場合には、ブレーキシューの第1端が半円形であるので、ブレーキシューの揺動範囲で第1端が揺動したときに、ブレーキドラムに対して同じ接触状態を維持しやすい。
【0028】
発明10に係る両軸受リールの遠心制動装置は、発明9に記載の装置において、接触面は、第1端の板厚方向の中央に形成された突出面と、突出面から両側面にテーパ面に係合するようにテーパ面の傾斜角度よりきつい傾斜角度で形成されたテーパ状の傾斜面と、を有する。
【0029】
この場合には、ブレーキシューのブレーキドラムとのテーパ面での接触部分が突出面と傾斜面との境界部分となるため、接触部分が一定になり制動力が安定する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、ブレーキシューの揺動軸芯を第1端と重心との間に配置し、かつスプールの回転軸と平行な軸回りに揺動自在に回転部材に装着したので、リールの大型化を招くことなく、制動力を広範囲で調整できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、
図1に示すように、ベイトキャスト用の小型のロープロフィール型のリールである。両軸受リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用ハンドル2と、ハンドル2のリール本体1側に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3とを備えている。
【0033】
<リール本体>
リール本体1は、
図2に示すように、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6a及び第2側カバー6bとを有している。また、リール本体1は、
図1に示すように、前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8とを有している。リール本体1の内部には糸巻き用のスプール12が回転自在かつ着脱自在に装着されている。
【0034】
フレーム5は、
図2に示すように、所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板5a及び第2側板5bと、これらの第1側板5a及び第2側板5bを連結する図示しない複数の連結部とを有している。第1側板5aには、スプール12が通過可能な階段状に拡径する開口部5cが形成されている。開口部5cは、第1側カバー6aに向かって階段状に拡径している。
【0035】
第1側カバー6aは、第1側板5a及び第2側板5bの後部に軸方向移動自在かつ回動自在に装着された開閉軸6dに開閉可能に装着されている。開閉軸6dは、第1側カバー6aに一端が固定されている。開閉軸6dは、軸回りに揺動する開閉レバー14により、閉位置でロックされる。第1側カバー6aには、遠心制動機構23の制動力を調整操作するための操作部材36を第1側カバー6aの外方に露出させるための開口6eが形成されている。第2側カバー6bは、第2側板5bにネジ止め固定されている。
【0036】
フレーム5内には、
図2に示すように、スプール12と、スプール12内に釣り糸を均一に巻き付けるためのレベルワインド機構15と、サミングを行う場合の親指の当てとなるクラッチレバー17とが配置されている。クラッチレバー17は、開閉レバー14と並べて配置されている。スプール12は、第1側板5aの開口部5cを通過可能である。また、フレーム5と第2側カバー6bとの間には、ギア機構18と、クラッチ機構13と、クラッチ制御機構19と、ドラグ機構21と、キャスティングコントロール機構22とが配置されている。ギア機構18は、ハンドル2からの回転力をスプール12及びレベルワインド機構15に伝えるための機構である。クラッチ制御機構19は、クラッチレバー17の操作に応じてクラッチ機構13の係脱及び制御を行うための機構である。キャスティングコントロール機構22は、スプール12の回転時の抵抗力を調整するための機構である。さらに、フレーム5と第1側カバー6aとの間には、キャスティング時のバックラッシュを抑えるための遠心制動機構23(遠心制動装置の一例)が配置されている。
【0037】
<スプール及びスプール軸>
スプール12は、
図2に示すように、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部12aと、左右一対のフランジ部12bと、ボス部12cと、を有している。フランジ部12bは、糸巻胴部12aの両端にそれぞれ径方向外方に一体的に突出して設けられている。ボス部12cは、スプール軸16(スプール12の回転軸の一例)に圧入等の適宜の固定手段により固定されることにより、スプール12は、スプール軸16に一体回転可能に連結されている。
【0038】
スプール軸16は、
図2に示すように、第2側板5bを貫通して第2側カバー6bの外方に延びている。スプール軸16の延びた一端は、第2側カバー6bに形成されたボス部6cに第1軸受24aにより回転自在に支持されている。またスプール軸16の他端は、遠心制動機構23内で第2軸受24bにより回転自在に支持されている。
【0039】
スプール軸16の第2側板5bの貫通部分には、クラッチ機構13を構成する係合ピン20が固定されている。係合ピン20は、直径に沿ってスプール軸16を貫通しており、その両端が径方向に突出している。スプール軸16のスプール12の固定部分の外周面には、第1セレーション16aが形成されている。第1セレーション16aは、スプール12を圧入する際の回り止めとして機能する。スプール軸16の第1セレーション16aの第1側カバー6a側には、大径の鍔部16bが形成されている。鍔部16bは、遠心制動機構23の後述する回転部材62を位置決めするために設けられている。鍔部16bの第1側カバー6a側のスプール軸16の外周面には、第2セレーション16cが形成されている。第2セレーション16cは、回転部材62をスプール軸16に圧入する際の回り止めとして機能する。
【0040】
<遠心制動機構>
遠心制動機構23は、
図3に示すように、ブレーキケース60と、回転部材62と、複数(例えば6つ)のブレーキシュー64と、ブレーキドラム66と、操作部材36を有する移動機構68と、オンオフ切換機構70(切換機構の一例)と、を備えている。ブレーキケース60は、第1側板5aの開口部5cに、複数の爪部72aを有するバヨネット構造72により着脱自在に装着されている。このため、第1側カバー6aをあけてブレーキケース60を取り外すことにより、スプール12を取り出すことができる。
【0041】
<ブレーキケース>
ブレーキケース60は、金属製又は合成樹脂製の有底筒状の部材である。ブレーキケース60は、環状の取付板60aと、取付板60aの内周側に一体形成された外筒部60bと、外筒部60bの径方向内方に配置された内筒部60cと、外筒部60bと内筒部60cとを連結する円板状の連結部60dと、を有している。
【0042】
取付板60aの外周面は、開口部5cに配置されている。取付板60aの外周面には、バヨネット構造72の複数の爪部72aが周方向に適宜の間隔を隔てて形成されている。外筒部60bの一部には、移動機構68を配置するための切欠き部60eが形成されている。内筒部60cには、前述した第2軸受24b及び一方の摩擦プレート51が内部に収納されている。内筒部60cの外周面には、ブレーキドラム66に螺合する雄ネジ部60fが形成されている。連結部60dの外側面には、ブレーキケース60を着脱操作する際に使用される操作把手60gが形成されている。この操作把手60gを摘んでブレーキケース60を回動させることにより、ブレーキケース60を第1側板5aに対して着脱できる。また、連結部60dには、移動機構68を装着するための機構装着部60hが径方向外方に延びて形成されている。
【0043】
<回転部材>
回転部材62は、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂製の概ね円板状の部材であり、スプール12の少なくとも糸繰り出し方向の回転に連動して回転する。回転部材62は、
図3及び
図4に示すように、スプール軸16に圧入等の適宜の固定手段により一体回転可能に連結されている。回転部材62は、この実施形態では、第2セレーション16cに圧入固定されている。回転部材62はスプール軸16の鍔部16bにより軸方向に位置決めされている。
【0044】
回転部材62は、内周部がスプール軸16に固定される筒状のボス部62aと、ボス部62aの径方向外方に配置された環状のシュー取付部62bと、ボス部62aとシュー取付部62bとを接続する接続部62cとを有している。ボス部62aは、筒状であり、スプール軸16の鍔部16bにより軸方向に位置決めされ、第2セレーション16cに圧入固定されている。
【0045】
シュー取付部62bは、
図4に示すように、リング板形状の本体部63aと、本体部63aに設けられた複数(例えば、6つ)のシュー支持部63bと、本体部63aに設けられた複数(例えば、6つ)の揺動規制部63cと、を有している。本体部63aは、スプール軸16と直交する取付面63eを、ブレーキケース60側に有している。複数のシュー支持部63bは、スプール12の回転方向に等間隔に配置されている。シュー支持部63bは、ブレーキシュー64を揺動自在に支持する揺動軸である。シュー支持部63bは、スプール軸16と平行に配置され、取付面63eからブレーキケース60側に延びている。シュー支持部63bは、大径の揺動支持部63fと、小径の先端部63gと、を有している。揺動支持部63fにブレーキシュー64が揺動自在に装着される。揺動規制部63cは、ブレーキシュー64のブレーキドラム66に向かう接触方向の揺動を規制するものである。揺動規制部63cは、スプール軸16と平行に配置され、取付面63eからブレーキケース60側に延びる丸棒形状の部分である。また、本体部63aには、ブレーキシュー64をブレーキドラム66に接触可能な
図5に実線で示す作動状態と、接触不能な
図5に二点鎖線で示す非作動状態と、に切り換えるオンオフ切換機構70を構成する複数(例えば、6つ)の切換突起63dが一体形成されている。切換突起63dは、スプール軸16と平行に配置され、取付面63eからブレーキケース60側に延びる丸棒形状の部分である。揺動規制部63c及び切換突起63dもスプール12の回転方向に等間隔に配置されている。
【0046】
接続部62cは、有底筒状の部材であり、ボス部62aの外周部に一体形成されている。接続部62cの外周側の端面にシュー取付部62bの本体部63aが一体形成されている。
【0047】
シュー支持部63bの先端部63g、揺動規制部63cの先端及び切換突起63dの先端には、花びら形状の抜け止め部材71が着脱可能に装着されている。抜け止め部材71は、ブレーキシュー64を抜け止めするために設けられている。抜け止め部材71は、ブレーキドラム66の外周側に配置されている。抜け止め部材71は、例えばアルミニウム合金等の金属製の部材である。抜け止め部材71は、6つのシュー支持部63bの先端部63g、6つの揺動規制部63cの先端及び6つの切換突起63dの先端が挿入可能な複数(例えば18個)の抜け止め孔71aを有している。抜け止め孔71aは、6つのシュー支持部63bの先端部63g、6つの揺動規制部63cの先端及び6つの切換突起63dの先端より僅かに小径に形成され、これらに弾性的に係止される。
【0048】
<ブレーキシュー>
6つのブレーキシュー64は、
図4及び
図5に示すように、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂等の合成樹脂製の概ね長板形状の部材である。ブレーキシュー64は、スプール12の回転方向に間隔を隔てて配置されている。ブレーキシュー64は、ブレーキドラム66に接触可能な第1端64aとブレーキドラム66に接触不能な第2端64bとを有している。また、ブレーキシュー64は、第1端64aと重心GRとの間で回転部材62のシュー支持部63bの揺動支持部63fに揺動自在に装着されるボス部64cを有している。ボス部64cは、揺動支持部63fの軸方向長さより僅かに短い(例えば0.2mmから1mm短い)長さを有している。揺動支持部63fの中心であるブレーキシュー64の揺動軸芯PCは、重心GRと第1端64aとの間に配置されている。ブレーキシュー64は、スプール12が糸繰り出し方向RD(
図5)に回転するとき、第1端64aがスプール12の回転方向上流側に配置され、第2端が回転方向下流側に配置されるように回転部材62に支持されている。
【0049】
ブレーキシュー64の第1端64aと第2端64bとを結ぶブレーキドラム66に対向可能な径方向の内側面64dは、ブレーキシュー64が非作動状態にあるとき、ブレーキドラムの外周面から離反
する形状である。具体的には、内側面64dは、円弧状の湾曲面である。さらに、ブレーキシュー64は、第1端64aにブレーキドラム66に接触する半円形の接触面64eを有している。接触面64eは、
図3のA部に示すように、第1端64aの板厚方向の中央に形成された突出面64fと、突出面64fから両側面に所定の傾斜角度αで形成されたテーパ状の傾斜面64gと、を有している。傾斜面64gの突出面64fに対する傾斜角度αは例えば26.6度である。また、
図4及び
図5に示すように、ブレーキシュー64の第2端64bには、切換突起63dに係合する切換凹部64hが形成されている。オンオフ切換機構70は、切換突起63dと切換凹部64hとにより構成される。切換凹部64hは、切換突起63dに係合してブレーキシュー64を非作動状態に弾性的に保持するために設けられている。ブレーキシュー64の径方向の外側面64iには、ブレーキシュー64を作動状態から非作動状態及び非作動状態から作動状態に切り換えるために使用される切換操作部64jが形成されている。切換操作部64jは、重心GRより揺動軸芯PCから離れた位置で、外側面64iからブレーキケース60側に延びている。このようにオンオフ切換機構70によりブレーキドラム66の接触可能なブレーキシュー64の数を変更することにより、さらに広範囲に制動力を調整できる。
【0050】
ブレーキシュー64は、スプール12が回転すると、重心GRに作用する遠心力により、揺動軸芯PCを中心として
図5時計回りに揺動する。外側面64iは、直線形状であり、外側面64iは、揺動中心PCと重心GRの間で揺動規制部63cに接触する。これにより、ブレーキシュー64の
図5時計回りの揺動が規制される。この結果、スプール12が糸巻取方向に回転したとき、ブレーキシュー64が
図5時計回りに揺動しても、ブレーキシュー64がブレーキドラム66に食い込みにくくなる。
【0051】
<ブレーキドラム>
ブレーキドラム66は、
図3、
図4及び
図5に示すようにブレーキシュー64の径方向内方に配置された、例えば亜鉛合金製の比較的硬質の金属製の筒状部材である。ブレーキドラム66は、スプール12に近い回転部材62側から順に配置された第1平行面66aとテーパ面66bと第1平行面66aより大径の第2平行面66cとを有する外周面66dを有している。すなわち、ブレーキドラム66は、異なる直径でブレーキシュー64に接触可能な外周面66dを有している。この第1平行面66a、テーパ面66b及び第2平行面66cに遠心力により揺動するブレーキシュー64の第1端64aに形成された接触面64eが接触する。テーパ面66bは、第2平行面66cから第1平行面66aに向かって徐々に縮径するように形成されている。ここで、第1平行面66a直径は、第2平行面66cの直径の85%から95%の範囲である。この実施形態では、第1平行面66aの直径は、14.5mmであり、第2平行面66cの直径は、15.7mmである。また、テーパ面66bの軸方向長さは、2mmである。したがって、
図3のA部に示すテーパ面66bの第1平行面66aに対する傾斜角度βは例えば16.7度であり、ブレーキシュー64の傾斜面64gの傾斜角度α(=26.6度)より小さい。このため、テーパ面66bにブレーキシュー64が接触する場合、接触面64eの突出面64fと傾斜面64gとの境界部分に接触する。
【0052】
ブレーキドラム66の内周面には、ブレーキケース60の雄ネジ部60fに螺合する雌ネジ部66eが形成されている。雌ネジ部66eは、テーパ面66bの軸方向長さより長い長さで形成されている。この実施形態では、雌ネジ部66eは、3.5mm〜5mmの範囲で形成されている。雄ネジ部60f及び雌ネジ部66eは、ピッチが例えば1.75mmの多条ネジ(例えば三条ネジ)である。このため、ブレーキドラム66が一回転すると、ブレーキドラム66は、スプール軸方向に5.25mmスプール軸方向に移動する。このように多条ネジを用いることにより、操作部材36の操作回転量に対してブレーキドラムを大きくスプール軸方向に移動させることができる。ブレーキドラム66の外周面には、移動機構68を構成する第1ギア部材73が一体回転可能に連結されている。第1ギア部材73は、操作部材36の回動操作に連動して回動する。この第1ギア部材73の回動により、ブレーキドラム66がスプール軸方向に移動する。
【0053】
<移動機構>
移動機構68は、ブレーキシュー64とブレーキドラム66とをスプール軸方向に移動かつ位置決め可能な機構である。移動機構68は、
図3に示すように、操作部材36と、第1ギア部材73と、第1ギア部材73に噛み合う第2ギア部材74と、第2ギア部材74に噛み合い、操作部材36と一体回転に設けられた第3ギア部材75と、を有している。操作部材36は、ブレーキケース60の機構装着部60hに回動自在に装着されている。第1ギア部材73は、ブレーキドラム66ともにスプール軸方向に移動するため、第1ギア部材73は、ブレーキドラム66がいずれの移動位置にあっても第2ギア部材74に噛み合うように肉厚が厚くなっている。第2ギア部材74は、ブレーキケース60の機構装着部60hに回転自在に装着されている。第1ギア部材73と第3ギア部材とのギア比は、例えば、1/3から1/1の範囲である。
【0054】
操作部材36は、操作部材36と機構装着部60hとの間に配置された位置決め機構76により複数段階(例えば、6段階から20段階)の操作位置で位置決めされる。この実施形態では、10段階の操作位置で位置決めされる。位置決め機構76は、例えば、位置決めピン76aと、位置決めピンが係合する複数(例えば11個)の位置決め凹部76bと、を有している。位置決めピン76aは、機構装着部60hに進退自在に装着され、図示しないコイルバネにより進出方向に付勢されている。なお、位置決め機構76の構成は、位置決めピン76aと位置決め凹部76bとに限定されず、操作部材36を位置決め可能なものであればどのような構成でも良い。操作部材36には、
図1及び
図3に示すように両側が凹んだ把手部36aが形成されている。操作部材36の把手部36aを摘んで回動させることにより制動力を調整できる。
【0055】
操作部材36を
図1に示す操作開始位置から時計回りに回動操作すると、第3ギア部材75が回動し、第2ギア部材74を介して第1ギア部材73が回動し、ブレーキドラム66が回動する。なお、操作開始位置は最も制動力が弱い状態の操作位置である。これにより、ブレーキケース60とのネジ結合により、ブレーキドラム66がスプール12から離反する方向に移動し、最大の操作位置で
図3に示すスプール12に最も接近した最大制動位置にブレーキドラム66が移動する。これにより、遠心制動機構23の制動力を複数段階に調整できる。
【0056】
<その他のリールの構成>
ギア機構18は、
図2に示すように、ハンドル軸30と、ハンドル軸30に固定されたドライブギア31と、ドライブギア31に噛み合う筒状のピニオンギア32とを有している。ハンドル軸30は、第2側板5bと第2側カバー6bとに回転自在に支持されている。ドライブギア31は、ハンドル軸30に回転自在に支持され、ドラグ機構21を介してハンドル軸30の回転が伝達される。ピニオンギア32は、
図2に示すように、第2側板5bの外方から内方に延び、中心にスプール軸16が貫通する筒状部材である。ピニオンギア32は、スプール軸16に軸方向に移動自在に装着されている。また、ピニオンギア32の
図2左端部は、軸受43により第2側板5bに回転自在かつ軸方向移動自在に支持されている。
【0057】
ピニオンギア32は、
図2右端側外周部に形成されドライブギア31に噛合する歯部32aと、他端側に形成された噛み合い溝32bと、歯部32aと噛み合い溝32bとの間に形成されたくびれ部32cとを有している。噛み合い溝32bは、ピニオンギア32の端面に直径に沿って形成された凹溝であり、噛み合い溝32bに係合ピン20が係止される。ここではピニオンギア32が外方に移動し、その噛み合い溝32bと係合ピン20とが離脱すると、ハンドル軸30からの回転力はスプール12に伝達されない。この噛み合い溝32bと係合ピン20とによりクラッチ機構13が構成される。係合ピン20と噛み合い溝32bとが係合すると、ピニオンギア32からスプール軸16にトルクが伝達される。
【0058】
クラッチレバー17は1対の第1側板5a及び第2側板5b間でスプール12の後方に配置されている。クラッチレバー17は、上下(
図2紙面直交方向)に移動自在に装着され、上方のクラッチオン位置と下方のクラッチオフ位置との間で移動する。
【0059】
クラッチ制御機構19は、
図2に示すように、クラッチヨーク40を有している。クラッチヨーク40は、スプール軸16の外周側に配置されており、2本のピン41(一方のみ図示)によってスプール軸16の軸心と平行に移動可能に支持されている。クラッチヨーク40は、その中央部がピニオンギア32のくびれ部32cに係合する。
【0060】
このような構成で、クラッチレバー17がクラッチオン位置にあると、ピニオンギア32は内方のクラッチ係合位置に位置しており、その噛み合い溝32bとスプール軸16の係合ピン20とが係合してクラッチオン状態となっている。一方、クラッチレバー17がクラッチオフ位置に操作されると、クラッチヨーク40によってピニオンギア32が外方に移動し、噛み合い溝32bと係合ピン20との係合が外れクラッチオフ状態となる。
【0061】
ドラグ機構21は、ドライブギア31に押圧されるドラグ板45と、スタードラグ3の回転操作によってドラグ板45をドライブギア31に所定の力で押圧するための押圧プレート46とを有している。ドラグ機構21は、スタードラグ3の回動操作によりドラグ力が調整される。
【0062】
キャスティングコントロール機構22は、スプール軸16の両端を挟むように配置された1対の摩擦プレート51と、摩擦プレート51によるスプール軸16の挟持力を調節するための制動キャップ52とを有している。左側の摩擦プレート51は、ブレーキケース60内に装着されている。
【0063】
<遠心制動機構の動作>
遠心制動機構23では、操作部材36が、例えば、
図1に示す操作開始位置にあるときは、
図6に示すように、第1平行面66aにブレーキシュー64の接触面64eが接触する。
図6から
図9を参照してスプール12に作用する遠心制動機構23の制動力を図面から求めてみる。ここで、ブレーキドラム66の第1平行面66aの直径が14.5mm、第2平行面66cの直径が15.7mmとして、
図6に示す最小制動位置と、
図9に示す最大制動位置と、その間のテーパ面66bの2つの中間制動位置と、での制動力を求める。なお、
図7では、テーパ面66bの直径14.9mmの中間制動位置、
図8では、テーパ面の直径15.3mmの中間制動位置での制動力を求める。それぞれの制動位置での制動力は、
図6に示す最小制動力を基準としてその倍率で示している。また、それぞれの制動位置での遠心力は、
図9に示した最小遠心力を基準としてその倍率で示している。
図10に各制動位置における制動力の算出過程を示す。
図10から明らかなように、この実施形態では、ブレーキドラム66の径が大きいほど遠心力により作用する制動力が大きくなる。
【0064】
ここで、重心GRに作用する遠心力をCFとし、その大きさは、重心までの半径に比例することに着目する。
図10に示すように、
図9の最大制動力が作用する場合の遠心力を1とすると、最小制動位置(直径15.7mm)に向かって遠心力は徐々に大きくなる。この遠心力の揺動方向の分力、具体的には、揺動軸芯PCと重心GRとを結ぶ線分L1と直交する方向のモーメントに寄与する分力F1を求める。分力F1は、遠心力CFと、分力F1と遠心力CFとが挟む角度A1の余弦関数と、を乗算(F1=CF×COS(A1))することにより算出できる。このため、遠心力CFと角度A1とにより分力F1を算出することができる。算出された分力F1は、ブレーキドラム66の直径が大きくなるほど、大きくなることがわかる。続いて、分力F1と線分L1と揺動中心PCから接触面64eとブレーキドラム66の接触位置を結ぶ線分L2とから、接触位置での揺動方向の力F2をモーメント(F2=F1×L1/L2)により算出する。求めた力F2のスプール軸芯SC方向の分力がスプール12に作用する遠心制動機構23の制動力F3になる。この制動力F3は、力F2と、力F2と分力F3とが挟む角度A2の正弦関数と、を乗算(F3=F2×SIN(A2))することにより算出できる。このため、角度A2を図から求めることにより制動力F3を算出できる。この計算過程を
図10に示す。
図10の制動位置毎の制動力比をグラフ化したものが
図11である。
図11では、横軸にブレーキドラム66の直径〈すなわち、制動位置〉をとり、縦軸に制動力比をとっている。この
図10及び
図11から明らかなように、この実施形態では、最大制動力と最小制動力とで2.5倍強の範囲に制動力を調整可能であることがわかった。
【0065】
このような構成の遠心制動機構23では、操作部材36が操作開始位置から時計回りに回動操作されると、第3ギア部材75が時計回りに回転し、第2ギア部材74を介して第1ギア部材73が時計回りに回転する。なお、
図5は最小制動位置にすなわち操作開始位置に操作部材36がある状態を示している。これによりブレーキドラム66が回動し、例えばスプール12から離反する方向にブレーキドラム66が移動する。最大制動位置に操作されると、ブレーキシュー64が第2平行面66cに接触し、前述したように
図3及び
図9に示した最大制動状態になる。逆に、操作部材36を反時計回りに操作すると制動力が徐々に弱くなる。
【0066】
調整が終わり、キャスティングを行うとスプール12が糸繰り出し方向に回転する。スプール12が回転すると、遠心力がブレーキシュー64の重心GRに作用し、ブレーキシュー64がスプール12の平行な軸回りに揺動し、接触面64eがブレーキドラム66の外周面の調整された位置に接触する。すると、ブレーキシュー64とブレーキドラム66との摩擦によりスプール12が制動される。このときの制動力は、接触位置でのブレーキドラム66の直径に依存する。
【0067】
ここでは、遠心制動機構23の制動力が:遠心力ではなく、ブレーキシュー64の傾き(ブレーキドラム66に接触する位置)に依存して変化するため、広範囲に制動力を調整可能になる。また、ブレーキシュー64がスプール軸16と平行な軸回りに揺動するので、スプール軸方向の長さの増加を抑えることができ、ブレーキシュー64を揺動させても、リールの大型化を防止できる。
【0068】
<特徴>
上記実施形態は、下記のように表現可能である。
【0069】
(A)遠心制動機構23は、リール本体1に回転自在に装着されたスプール12を遠心力により制動する。遠心制動機構23は、回転部材62と、少なくとも一つのブレーキシュー64と、ブレーキドラム66と、を備えている。回転部材62は、スプール12の少なくとも糸繰り出し方向の回転に連動して回転する。ブレーキシュー64は、第1端64aと第2端64bとを有する。ブレーキシュー64は、第1端64aと重心GRとの間で回転部材62にスプール軸16と平行な軸回りに揺動自在に装着される。ブレーキドラム66は、ブレーキシュー64の径方向内側に配置され、揺動するブレーキシュー64の第1端64aに異なる直径で接触可能な外周面66dを有する。
【0070】
この遠心制動機構23では、ブレーキシュー64がスプール軸16と平行な軸回りに回転部材62に揺動自在に装着されている。また、ブレーキドラム66は、ブレーキシュー64の第1端64aに異なる直径で接触可能な外周面66dを有している。さらに、ブレーキシュー64は、揺動中心がブレーキドラム66に接触する第1端64aと重心GRとの間に配置されている。このため、ブレーキシュー64の第2端64bがブレーキドラム66から離反して揺動角度が大きくなるほど、重心GRがブレーキドラム66から遠くなるため、遠心力は大きくなる。しかし、遠心力の、重心GRと揺動軸芯PCとを結ぶ線と直交する揺動方向の分力F1は、ブレーキシュー64の揺動角度が大きくなるほど小さくなる。さらにブレーキシュー64の揺動角度が大きいほど接触位置で分力F1によるモーメントで発生する力F2の方向がブレーキドラム66の中心、すなわちスプール軸芯SCから離反する。この結果、接触位置でブレーキドラム66の中心に向かう制動力F3が小さくなる。このため、遠心力ではなく、ブレーキシュー64の傾きにより制動力が大きく変化し、安定した制動力を広範囲で調整できるようになる。
【0071】
また、ブレーキシュー64がスプール軸16と平行な軸回りに揺動するため、スプール軸16と食い違う軸回りに揺動する場合に比べて遠心制動機構23のスプール軸方向の長さが長くならない。このため、リールの大型化を抑えることができる。
【0072】
(B)遠心制動機構23において、ブレーキドラム66は、ブレーキシュー64が接触可能なテーパ面66bを外周面に有する。遠心制動機構23は、ブレーキシュー64とブレーキドラム66とをスプール軸16の軸方向に相対移動かつ位置決め可能な移動機構68をさらに備える。
【0073】
この場合には、移動機構68によりブレーキドラム66又はブレーキシュー64を軸方向に移動させて位置決めすることより、ブレーキシュー64の第1端64aのテーパ面66bへの接触位置が径方向に変化し、ブレーキシュー64の揺動角度が変化する。これにより、ブレーキシュー64の揺動角度を容易に変化させて制動力を広範囲に調整することができる。
【0074】
(C)遠心制動機構23において、テーパ面66bは、スプール12に向かって縮径するように形成される。この場合には、スプール12に向かってテーパ面66bが縮径されるので、ブレーキシュー64の揺動中心を可及的にスプール軸16の中心側に配置でき、リールの径方向寸法の増加を抑えることができる。
【0075】
(D)遠心制動機構23において、移動機構68は、リール本体1に外方に露出されて移動自在に装着された操作部材36を有する。移動機構68は、操作部材36の移動位置に応じてブレーキシュー64とブレーキドラム66とを異なる位置で位置決めする。
【0076】
この場合には、外方に露出する操作部材36によりブレーキシュー64とブレーキドラム66が軸方向の複数の位置のいずれかに位置決めされるので、リール本体1の例えば第1側カバー6aをあけなくても制動力を調整でき、制動力の調整が容易である。
【0077】
(E)遠心制動機構23において、ブレーキシュー64は、スプール12の回転方向に間隔を隔てて複数配置されている。この場合には、ブレーキシュー64が複数設けられるので、大きな制動力を得ることができる。
【0078】
(F)遠心制動機構23において、複数のブレーキシュー64の少なくとも一つをブレーキドラム66に接触可能な作動状態と、ブレーキドラム66に接触不能な非作動状態と、に切換可能なオンオフ切換機構70をさらに備える。
【0079】
この場合には、ブレーキシュー64を作動状態と非作動状態とに切り換えできるため、ブレーキドラム66に接触可能なブレーキシュー64の数を変更することができる。このため、ブレーキシュー64の状態を切り換えることにより制動力の調整範囲をさらに広範囲に行える。
【0080】
(G)遠心制動機構23において、ブレーキシュー64の第1端64aと第2端64bとを結ぶブレーキドラム66に対向可能な内側面64dは、ブレーキシュー64が非作動状態にあるとき、ブレーキドラム66の外周面66dから離反
する形状である。
【0081】
この場合には、揺動するブレーキシュー64であっても、非作動状態にすればブレーキシュー64がブレーキドラム66に接触しない。
【0082】
(H)遠心制動機構23において、ブレーキシュー64は、スプール12が糸繰り出し方向に回転するとき、第1端64aがスプール12の回転方向上流側に配置され、第2端64bが回転方向下流側に配置されるように回転部材62に支持される。
【0083】
この場合には、キャスティング等の糸繰り出し時に揺動軸芯PCが第1端64aより回転方向上流側に配置されるので、くさび力が作用せず遠心力の作用により制動力が変化する。このため、制動力の設定が容易である。
【0084】
(I)遠心制動機構23において、複数のブレーキシュー64は、第1端64aにブレーキドラム66に接触する半円形状の接触面64eを有する長板形状の部材である。
【0085】
この場合には、ブレーキシュー64の第1端が半円形であるので、ブレーキシュー64の揺動範囲で第1端64aが揺動したときに、ブレーキドラム66に対して同じ接触状態を維持しやすい。
【0086】
(J)遠心制動機構23において、接触面64eは、第1端64aの板厚方向の中央に形成された突出面64fと、突出面64fから両側面にテーパ面66bに係合するようにテーパ面66bの傾斜角度βよりきつい傾斜角度αで形成されたテーパ状の傾斜面64gと、を有する。
【0087】
この場合には、ブレーキシュー64のブレーキドラム66とのテーパ面66bでの接触部分が突出面64fと傾斜面64gとの境界部分となるため、接触部分が一定になり制動力が安定する。
【0088】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0089】
(a)前記実施形態では、ブレーキシュー64を周方向に間隔を隔てて6つ設けたが、ブレーキシュー64の個数は少なくとも一つあればよい。また、複数の場合のブレーキシュー64の個数は6つに限定されず2つ以上であればいくつでも良い。ただし、リールの小型化、軽量化及び制動特性の適正化を図るためには、ブレーキシュー64の数は、3つ以上8つ以下が好ましい。
【0090】
(b)前記実施形態では、ブレーキシュー64の揺動軸芯PCを第1端64aのスプール12の糸繰り出し時の回転方向下流側に配置したが、揺動軸芯を糸繰り出し時の回転方向上流側に配置しても良い。
【0091】
(c)前記実施形態では、回転部材62がスプール軸16に一体回転可能に連結されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、スプールに一体回転可能に連結されていても良い。
【0092】
(d)前記実施形態では操作部材が回動したが、操作部材の移動は回動に限定されず操作部材は移動するものであればどのような構成でも良い。例えば、操作部材が直線的に移動する摘み部材であっても良いし、操作部材が揺動するレバー部材であっても良い。
【0093】
(e)前記実施形態では、ブレーキドラムをスプール軸方向に移動させたが、回転部材をスプール軸方向に移動させても良い。この場合、例えば、スプール軸又はスプールに回転部材を螺合させてかつ移動位置でロック可能に構成すればよい。
【0094】
(f)前記実施形態では、ブレーキシューの交換については言及していないが、異なる質量のブレーキシューを複数種類用意し、ブレーキシューを交換することにより、さらに広範囲で制動力を調整できる。また、ブレーキシューの数を6つから、減らしても良い。
【0095】
(g)前記実施形態では、回転部材62がスプール軸12に一体回転可能に固定されているが、本発明はこれに限定されない。例えば、スプール12又はスプール軸16の糸繰り出し方向の回転にのみ連動して回転するようにしても良い。この場合、スプール又はスプール軸と回転部材との間にワンウェイクラッチ等の部材を配置しても良い。
【0096】
図12において、遠心制動機構123の回転部材162は、スプール軸116にバネ式のワンウェイクラッチ180を介して連結されている。回転部材162のボス部162aは、スプール軸116に回転自在に装着されている。ワンウェイクラッチ180は、一端が回転部材162のボス部162aに係止され、他端が第2軸受24bに接触している圧縮状態のコイルバネ180aにより構成される。
【0097】
このような構成のワンウェイクラッチ180では、スプール軸116が糸繰り出し方向に回転すると、スプール軸116との摩擦によりコイルバネのバネ径が小さくなり、コイルバネ180aがスプール軸116と共に回転して回転部材162を糸繰り出し方向に回転させる。一方、スプール軸116が糸巻取方向に回転すると、コイルバネ180aのバネ径が大きくなり、スプール軸116の回転は、回転部材162に伝達されない。なお、ワンウェイクラッチ180の形態は、コイルバネ180aに限定されず、爪式のワンウェイクラッチ又はローラ型のワンウェイクラッチであっても良い。
【0098】
その他の構成は前記実施形態と同じであるので、その他の構成の説明及び
図12への符号の記載を省略する。