特許第5718122号(P5718122)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718122
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ボールペン
(51)【国際特許分類】
   B43K 7/02 20060101AFI20150423BHJP
   B43K 7/10 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   B43K7/02 A
   B43K7/10
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-73797(P2011-73797)
(22)【出願日】2011年3月30日
(65)【公開番号】特開2012-206383(P2012-206383A)
(43)【公開日】2012年10月25日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005957
【氏名又は名称】三菱鉛筆株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118315
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 博道
(74)【代理人】
【識別番号】100120488
【弁理士】
【氏名又は名称】北口 智英
(72)【発明者】
【氏名】中島 徹
【審査官】 荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−049527(JP,A)
【文献】 特開2000−177290(JP,A)
【文献】 特開平08−282176(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3022432(JP,U)
【文献】 特開昭49−002625(JP,A)
【文献】 実公昭29−013711(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 1/00− 8/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有し内部にインクを収容するインクタンクと、
該インクタンクの先端に装着される、筆記ボールを備えたボールペンチップと、
を備えたインクカートリッジが軸筒内に収容されるボールペンであって、
前記ボールペンチップ内には、前記インクタンクから前記筆記ボールまでを連絡する内部空間としてのインク流通孔が設けられ、
多孔体で構成された中芯が前記インク流通孔に圧入されているとともに、
前記インクタンクは内部に収容されるインクの消費に伴い変形可能な厚さ0.05mm〜0.2mmの可撓性のあるフィルム材で構成され
前記中芯は前記ボールペンチップ内部の筆記ボール後端から前記インクタンクの中心部より後端側まで達していることを特徴とするボールペン。
【請求項2】
前記インクカートリッジが交換可能であることを特徴とする請求項1記載のボールペン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインクタンクが可撓性であるボールペンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来公知の、低粘度インクを直接インクタンク内に充填した水性ボールペンの場合、筆記時にインクを吐出する際にインクタンク内に空気を取り込む必要がある。そのため、筆記中に急激に温度上昇や気圧低下が起きた場合、あるいはキャップ装着中に温度上昇又は気圧低下が起きてタンク内圧が上昇した状態でキャップを取り外した場合、タンク内からインクが噴き出し、筆記中の紙面や、衣服等を汚すことがある。そこでいわゆるコレクターと称される櫛歯状インク誘導部材を採用したり、インクタンク内の圧力緩衝構造によりインクの噴き出し対策を行っている。しかしこの方法では部品点数が多くなり構成や組み立て工程が煩雑になるという欠点があった。
【0003】
そこで下記各特許文献のように、インクタンクを可撓性の材質で構成し、筆記先端部にバルブ(あるいはスプリング)を搭載することによって、筆記に応じてインクタンクが収縮するため、上記問題は一応解決される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−177290号公報
【特許文献2】実公昭29−13711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術のうち、特許文献1記載の発明では、インクタンクがパウチフィルムを用いて構成されている。しかし、筆記先端のインク吐出部分が弁機構となっているため、落下による衝撃が加わったり、筆記時、特に上向きで筆記したような場合において、インクタンク内に空気が混入するおそれがある。
一方、特許文献2記載の発明では、スプリングをボールペンチップに内蔵しているが、筆記のたびにボールとスプリングとがバルブと同等の機能を発揮することとなり、インクタンク内に空気が入るおそれがある。逆に、空気が入らないようにするために、スプリングの押圧加重を強くし過ぎると、十分な筆記が不可能となる。また、実際には、通常のボールペンのサイズで、空気が入らないほどスプリングの押圧加重を上げることは物理的に困難である。
【0006】
以上の問題点に鑑み、本発明は、インクタンク内に空気が入らず筆記不良を起こすことなくインクを使い切ることができるような、可撓性インクタンクを有するボールペンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決すべく、本発明は、可撓性を有し内部にインク41を収容するインクタンク40と、
該インクタンク40の先端に装着される、筆記ボール65を備えたボールペンチップ60と、
を備えたインクカートリッジ30が軸筒11内に収容されるボールペン10であって、
前記ボールペンチップ60内には、前記インクタンク40から前記筆記ボール65までを連絡する内部空間としてのインク流通孔64が設けられ、
多孔体で構成された中芯70が前記インク流通孔64に圧入されているとともに、
前記インクタンク40は内部に収容されるインク41の消費に伴い変形可能な厚さ0.05mm〜0.2mmの可撓性のあるフィルム材で構成され
前記中芯70は前記ボールペンチップ60内部の筆記ボール65後端から前記インクタンク40の中心部より後端側まで達していることを特徴とする。
なお、以下の記載では、ボールペン10の筆記先端側を「先端」とし、その反対側を「後端」とする。
【0008】
「可撓性を有するインクタンク40」とは、インクタンク40が、内部のインク41の消費に伴い変形可能な材質で形成されていることを意味する。たとえば、ラミネートフィルムでインクタンク40を構成することで、インクタンク40に可撓性を付与することが可能となる。このような材質でインクタンク40を構成すれば、内部のインク41が消費されるとともに、インクタンク40自体が萎むように容積を減じることとなる。
「ボールペンチップ60」としては、従来公知のボールペンチップ60、たとえば、ステンレス鋼製のホルダー61の先端に、超硬合金製の筆記ボール65が装着されているようなものを使用することができる。このボールペンチップ60は、インクタンク40の先端に直接装着されてもよいし、継手50あるいはさらに口プラ80を介して装着されることとしてもよい。
【0009】
本件発明で使用される「インクカートリッジ30」は、上記のようなインクタンク40とボールペンチップ60とを備えた構成となっている。このようなインクカートリッジ30が、ボールペン10の外部構造である「軸筒11」の内部空間に収容されることとなっている。
「インク流通孔64」とは、ボールペンチップ60の内部空間であって、インクタンク40から筆記ボール65までインク41を流通させるためのものである。このインク流通孔64に、多孔体で構成された「中芯70」が圧入されている。ここで、「多孔体」とは、微小孔を多数有する材質であって、たとえば、微小発泡性のプラスチックやセラミック等がこれに該当する。
【0010】
すなわち、本発明では、インクタンク40内のインク41は、インク流通孔64を通って筆記ボール65へ至るが、そのインク流通孔64には中芯70が圧入されており、この中芯70の毛細管力によってインク41が浸透することで、先端へ移送されることとなっている。
このように、インク41の流通は中芯70の毛細管力によることとなっている。そして、インク41の消費に伴い、インクタンク40はその可撓性により容積を減じるに従って萎んでいくことになっている。よって、インクタンク40内にインク41の消費量分の空気を導入する必要がないので、そのインクタンク40内に導入された空気の膨張によるインク41の噴出が本発明では起こり得ないこととなっている。
【0011】
また、フィルムの材質や、厚さを適宜設定することで、インクの出やすさを調整することも可能である。
また、前記中芯70は前記ボールペンチップ60内部の筆記ボール65後端から、前記インクタンク40の中心部より後端側まで達している。こうすることによって、横向きや上向きで筆記してもインクタンク40内のインク41を吸い出すことが可能となり、終筆時にインク41をインクタンク40内に残さず筆記することができる。
さらに、前記インクカートリッジ30が交換可能であることが望ましい。よって、インク41が消費し尽くされれば新しいものと交換することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上記のように構成されているので、インクタンク内に空気が入らず筆記不良を起こすことなくインクを使い切ることができるような、可撓性インクタンクを有するボールペンを提供することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るボールペンの外観を示す側面図である。
図2図1に示すボールペンからキャップを外した様子を示す側面図である。
図3図2に示すボールペンの軸筒から取り外したインクカートリッジの外観を正面図(A)及び側面図(B)で示す。
図4図1に示すボールペンを側面断面図で示す。
図5図4に示すボールペンの先端部分の側面断面を拡大して示す。
図6】本発明の第2の実施の形態に係るボールペンを側面断面図で示す。
図7】本発明の第3の実施の形態に係るボールペンの各部位(A)及び全体(B)の構成を側面断面図で示す。
図8】本発明の第4の実施の形態に係るボールペンの各部位(A)及び全体(B)の構成を側面断面図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
(1)第1の実施の形態
本発明の第1の実施の形態に係るボールペン10は、図1に側面図で示すように、非使用時にはポリカーボネート製の軸筒11の先端に、同じくポリカーボネート製のクリップ21を備えたキャップ20が装着されている。このキャップ20を取り外すと、図2に側面図で示すように、キャップ20で覆われていた軸筒11の先端側のグリップ部12が視認されるとともに、軸筒11の先端から、ボールペンチップ60を含むインクカートリッジ30の先端部分が露出している。このインクカートリッジ30は、軸筒11先端に螺合されており、これを取り外すと図3に示すようなインクカートリッジ30の全体が視認される。インクカートリッジ30は、インク41が収容されるインクタンク40と、その先端に装着されるポリプロピレン製の継手50と、さらにその先端に装着されるボールペンチップ60を備えている。インクタンク40は、可撓性のあるフィルム材で構成されている。フィルム材はポリエチレン層−アルミ層−ポリエチレン層の3層から成り、その厚さは0.05mm〜0.2mmに形成される。インクタンク40後端は、図3(A)及び(B)に示すように、熱溶着にて封印された溶着封印部42として形成されている。また、インクタンク40の前端の内周面は、継手50後端の外周面と熱溶着により接着されている。さらに、継手50後端の、インクタンク40との接着部位52直前の外周には、軸筒11先端内周に形成された雌ネジ部13(図5参照)と螺号するための雄ネジ部51が形成されている。
【0015】
図4は、図1に示したボールペン10を断面図で示すものである。軸筒11の後端には、インクタンク40の容積減少に伴い軸筒11内部に空気を導入するための通気孔14が設けられている。また、ボールペンチップ60の内部空間には中芯70が圧入されている。
この図4に示したボールペン10の先端部分を拡大して示すのが図5である。ボールペンチップ60は、円柱材のステンレス鋼を切削して形成したホルダー61と、その先端に抱持される超硬合金製の筆記ボール65とから構成される。ホルダー61の先端外周は先細に切削されたテーパー部62として形成されている。テーパー部62の先端付近の内周には、筆記ボール65を収容するボールハウス63が形成されている。一方、ホルダー61の後端からボールハウス63に至るまでの内部を切削して形成された内部空間がインク流通孔64であって、その中にはたとえばPET(ポリエチレンテレフタレート)やアクリル樹脂で形成された繊維芯、PE(ポリエチレン)で形成された焼結体等の多孔体で形成された中芯70が圧入されている。ホルダー61の後半部分は継手50の先端に圧入されているが、中芯70の後端は、継手50の内部空間であるインク導入部53の先端縁にまで達している。また、上述した、継手50の後端外周がインクタンク40内周に接着されていること、及び、継手50のこの接着部位52の直前の外周に設けられた雄ネジ部51が軸筒11先端内周に設けられた雌ネジ部13と螺合していることも本図で視認できる。
【0016】
図4及び図5に示すように、インクタンク40内部に収容されているインク41は、中芯70を毛細管力により浸透して先端方向へ移送され、ボールハウス63へ至りそこで筆記ボール65へ転写されることで、筆記が可能となっている。そして、図5に示す通り、中芯70はボールペンチップ60に圧入されているので、ボールペンチップ60の先端からインクタンク40方向へ空気が入ることはない。
(2)第2の実施の形態
本発明の第2の実施の形態に係るボールペン10を図6の側面断面図で示す。前記第1の実施の形態では、図4及び図5に示すように、中芯70の後端は継手50のインク導入部53の先端縁で止まっているが、本第2の実施の形態においては、インクタンク40の中心部を超えて後端部側へ寄った位置にまで、中芯70の後端が達している。この構造によって、インクタンク40の内部のインク41が中芯70とよりよく接触し、そして浸透しやすくなっている。したがって、インク41が消費されて少なくなってきた場合でも効率よくインク41を先端まで移送することが可能となっている。その他の構造は前記第1の実施の形態と同様である。
【0017】
(3)第3の実施の形態
本発明の第3の実施の形態に係るボールペン10を図7の側面断面図で示す。
本実施の形態に係るインクカートリッジ30においては、図7(A)に示すように、継手50の先端に口プラ80が装着され、さらにその口プラ80の先端にボールペンチップ60が装着されることとなっている。また、口プラ80の後端は、継手50のインク導入部53の後端付近にまで延びた後方突出部81となっており、その内部に、ボールペンチップ60に圧入された中芯70が延在している。
そしてこのインクカートリッジ30を軸筒11に螺着し、そしてキャップ20を装着すれば図7(B)に示すボールペン10が形成される。そして、インクタンク40内のインク41が消費され、インクタンク40のフィルムが扁平に萎んでしまったら、図7(A)のようにまた新たなインクカートリッジ30を軸筒11に装着することで再びボールペン10として使用可能となる。
【0018】
(4)第4の実施の形態
本発明の第4の実施の形態に係るボールペン10を図8の側面断面図で示す。
本実施の形態に係るインクカートリッジ30においては、図8(A)に示すように、継手50とインクタンク40とが別部材となっている。
すなわち、継手50の先端に口プラ80が装着され、さらにその口プラ80の先端にボールペンチップ60が装着されることとなっている。また、口プラ80の後端は、継手50のインク導入部53を通過し、後端を超えて延びた後方突出部81となっており、その内部に、ボールペンチップ60に圧入された中芯70が延在している。
【0019】
一方、インクタンク40先端には、継手50を受ける部材としてのスパウト43が装着され、さらにそのスパウト43の内部空間の中間付近は、IIR(ブチルゴム)、NBR(ニトリルゴム)といったゴムやエラストマー等のゴム弾性を有するシール部材44で封印されている。
そして、継手50をスパウト43に装着するとき、口プラ80の後方突出部81がシール部材44を突き破り(図8(B)参照)、これによってインクタンク40の内部のインク41が、中芯70と接触することとなる。これによって、図7(A)に示すとほぼ同様のインクカートリッジ30が形成される。
【0020】
そしてこのインクカートリッジ30を軸筒11に螺着し、そしてキャップ20を装着すれば図8(B)に示すボールペン10が形成される。そして、インクタンク40内のインク41が消費され、インクタンク40のフィルムが扁平に萎んでしまったら、インクタンク40と継手50とを取り外し、図8(A)のように継手50をまた新たなインクタンク40に装着し、そしてこうして再び形成されたインクカートリッジ30を軸筒11に装着することで再びボールペン10として使用可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、可撓性のインクタンクを備えたボールペンに使用可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 ボールペン 11 軸筒 12 グリップ部
13 雌ネジ部 14 通気孔
20 キャップ 21 クリップ
30 インクカートリッジ
40 インクタンク 41 インク 42 溶着封印部
43 スパウト 44 シール部材
50 継手 51 雄ネジ部 52 接着部位
53 インク導入部
60 ボールペンチップ 61 ホルダー 62 テーパー部
63 ボールハウス 64 インク流通孔 65 筆記ボール
70 中芯
80 口プラ 81 後方突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8