特許第5718131号(P5718131)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718131
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ヒータ装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 13/10 20060101AFI20150423BHJP
   F26B 23/04 20060101ALI20150423BHJP
   F26B 23/10 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   F26B13/10 E
   F26B23/04 B
   F26B23/10 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-84623(P2011-84623)
(22)【出願日】2011年4月6日
(65)【公開番号】特開2012-220065(P2012-220065A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年2月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000240341
【氏名又は名称】株式会社ヒラノテクシード
(74)【代理人】
【識別番号】100059225
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 璋子
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 富美一
【審査官】 長浜 義憲
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−069447(JP,A)
【文献】 特開2010−101595(JP,A)
【文献】 特開2006−264970(JP,A)
【文献】 特開2001−227864(JP,A)
【文献】 特開2004−290775(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 13/10
F26B 23/04
F26B 23/10
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行路が水平面に対し傾斜角θ(但し、0<=θ<90°である)を有し、前記走行路に沿って走行する長尺状の基材の上面を乾燥させるヒータ装置であって、
下面が平らな断面半円形の筒状のヒータ本体と、
前記ヒータ本体の前記下面に設けられた遠赤外線を輻射する輻射面と、
前記ヒータ本体の一端面に開口した熱媒体の流入口と、
前記ヒータ本体の他端面に開口した前記熱媒体の流出口と、
を有したヒータ部が、前記走行路に沿って複数個配列され、
前記流入口及び前記流出口が前記一端面及び前記他端面に設けられている位置に関して、前記下面の中心から法線を延ばし、この法線に対し上方に前記θ°回転した位置に前記流入口及び前記流出口が設けられ
前記流入口と前記流出口が円形であり、
前記流入口と前記流出口には、断面円形であって、前記熱媒体が流れる接続パイプがそれぞれ接続され、
断面半円形の前記ヒータ本体の頂点、円形の前記流入口の内周の一番上の位置、円形の前記流出口の内周の一番上の位置、断面円形の前記接続パイプの内周の一番上の位置が一直線になるようにそれぞれを配置されている、
ことを特徴とするヒータ装置。
【請求項2】
前記熱媒体が、100℃から600℃のオイルである、
ことを特徴とする請求項1に記載のヒータ装置。
【請求項3】
前記ヒータ本体の前記下面にセラミックが溶射されて、前記輻射面が形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のヒータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状の基材を乾燥、又は、熱処理するためのヒータ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、長尺状の基材を乾燥、又は、熱処理する場合に、遠赤外線を利用したヒータ装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このヒータ装置は、断面矩形の赤外線放射器の下面に遠赤外線を輻射するための輻射面が形成され、この赤外線放射器が、走行する基材の上方に複数配列されている。そして、この赤外線放射器を加熱するために、その内部にはオイル又は蒸気が供給されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−69447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の赤外線放射器は、長尺状の基材の走行路に沿って配列されるものであるが、この走行路が水平面に対し傾斜している場合には、各赤外線放射器を傾けて設置する必要がある。断面矩形の赤外線放射器を角度をもたせて設置すると、赤外線放射器の内部に空気が溜まることがあった。この場合に、溜まった空気は、高温状態のオイルや蒸気等の熱媒体と反応して、その熱媒体が酸化し、その内部が劣化し易いという問題点があった。
【0006】
また、赤外線放射器の内部の一部にでも空気があると、赤外線放射器の温度分布にムラが発生するという問題点もあった。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、熱媒体が流れるヒータ本体を傾斜して取り付けても、その内部に空気が溜まることがないヒータ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、走行路が水平面に対し傾斜角θ(但し、0<=θ<90°である)を有し、前記走行路に沿って走行する長尺状の基材の上面を乾燥させるヒータ装置であって、下面が平らな断面半円形の筒状のヒータ本体と、前記ヒータ本体の前記下面に設けられた遠赤外線を輻射する輻射面と、前記ヒータ本体の一端面に開口した熱媒体の流入口と、前記ヒータ本体の他端面に開口した前記熱媒体の流出口と、を有したヒータ部が、前記走行路に沿って複数個配列され、前記流入口及び前記流出口が前記一端面及び前記他端面に設けられている位置に関して、前記下面の中心から法線を延ばし、この法線に対し上方に前記θ°回転した位置に前記流入口及び前記流出口が設けられ、前記流入口と前記流出口が円形であり、前記流入口と前記流出口には、断面円形であって、前記熱媒体が流れる接続パイプがそれぞれ接続され、断面半円形の前記ヒータ本体の頂点、円形の前記流入口の内周の一番上の位置、円形の前記流出口の内周の一番上の位置、断面円形の前記接続パイプの内周の一番上の位置が一直線になるようにそれぞれを配置されている、ことを特徴とするヒータ装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ヒータ本体の内部に空気が溜まることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施形態を示す熱処理装置の全体図である。
図2】熱処理室の内部を下面から上を見た状態の図である。
図3】ヒータ本体の縦断面図である。
図4図3におけるA−A線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のヒータ装置を有した熱処理装置10について、図1図4に基づいて説明する。
【0012】
リチウムイオン電池用の電極に用いられる金属箔やセラミックシート等の長尺状の基材1の表面には、有機溶媒を含む塗工液が塗工されている。そのため、これらの基材1の乾燥、又は、熱処理には、塗工部の内部からの有機溶媒を発散を促進させ、かつ、塗工部分の表面からの塗工液の蒸発を促進させる必要がある。したがって、本実施形態の熱処理装置10は、熱処理室12の内部に、遠赤外線用の第1のヒータ装置12と、熱風を吹き付けて乾燥させる第2のヒータ装置14が設けられている。
【0013】
長尺状の基材1としては、上記したようにリチウムイオン電池用の電極の場合には、金属箔、孔が開口した金属箔、メッシュ状の金属箔等であり、セラミックシートの場合には、合成樹脂製のフィルム等である。
【0014】
(1)熱処理装置10の構成
まず、熱処理装置10の構成について図1図2に基づいて説明する。
【0015】
熱処理装置10の熱処理室16は、長方形であり、水平面に対しθ°(但し、0°<=θ<90°であり、図中ではθ=30°である)傾斜して取り付けられている。この熱処理室16の前面には、基材1の搬入口18が開口し、後面には基材1の搬出口20が開口している。そして、基材1の走行路は、熱処理室16と同様にθ°傾斜し、その走行路に沿って基材1が前後方向に走行する。
【0016】
熱処理室16の走行路の下面には、基材1を安定して走行させるための走行ローラ22が、所定間隔を開けて3個設けられている。
【0017】
走行路の上方には、所定間隔を開けて、熱風を吹き出す上ノズル24が3個設けられている。また、走行路の下方であって、走行ローラ22の間には、基材1に対し下斜めから熱風を吹き出す下ノズル26が設けられている。この上ノズル24と下ノズル26によって、熱風を吹き出す第2のヒータ装置14が構成されている。
【0018】
走行路の上方であって、上ノズル24の間には、遠赤外線によって基材1の上面を乾燥させるヒータ部28が2個を一組として所定間隔を開けて2組配列されている。これらヒータ部28が、遠赤外線用の第1のヒータ装置12を構成している。
【0019】
(2)上ノズル24の構造
上ノズル24の構造について、図1図2に基づいて説明する。
【0020】
上ノズル24は、矩形の箱体よりなる上基部30と、その上基部30の下面に設けられた上ノズル部32とから構成され、上ノズル部32の下面には、複数のパンチング穴34が開口している。上ノズル部32の上面と上基部30との間は開口し、上基部30に供給された熱風が上基部30内部で左右に広がり、その後に上ノズル部32に供給され、パンチング穴34から下方に吹き出される。
【0021】
(3)下ノズル26の構成
次に、下ノズル26の構造について、図1に基づいて説明する。
【0022】
下ノズル26は、下基部36と、この下基部36の上方に設けられた下ノズル部38とから構成されている。下ノズル部38の上面の前部には、上方斜めに開口したスリット部40が設けられている。下基部36には熱風が供給され、この下基部36内部で左右に広がり、その後に下基部36から開口部を通じて下ノズル部38に供給される。下ノズル部38に供給された熱風は、スリット部40から斜め上方に吹き出される。
【0023】
(4)ヒータ部28の構成
次に、ヒータ部28の構成について図2図4に基づいて説明する。
【0024】
ヒータ部28は、ステンレス製の断面半円形の筒体であるヒータ本体42を有している。ヒータ本体42の下面は平らであって、この下面にセラミックが溶射され、遠赤外線を輻射するための輻射面44が形成されている。ヒータ本体42の断面半円形の一端面46には、100℃〜600℃に加熱されたオイルが流入する流入口48が開口している。この流入口48は円形であって、図3に示すように、ヒータ本体42の下面の中心から法線を延ばし、この法線に対しθ°上方に傾いた位置に、円形の流入口48の中心Oが位置している。すなわち、流入口48は、断面半円形のヒータ本体42の一番上の位置である頂点に位置している。特に、図4に示すように、断面半円形のヒータ本体42の一番上の位置である頂点、円形の流入口48の内周の一番上の位置、断面円形の接続パイプ54の内周の一番上の位置が一直線になるようにそれぞれを配置するのがよい。また、加熱されたオイルの流出口50は、ヒータ本体42の断面半円形の他端面52に設けられている。この流出口50が設けられている位置も、流入口48と同様に下面の中心から法線を延ばし、θ°上方に回転した位置に円形の流出口50の中心Oが位置している。この場合も、図4に示すように、断面半円形のヒータ本体42の一番上の位置である頂点、円形の流出口50の内周の一番上の位置、断面円形の接続パイプ54の内周の一番上の位置が一直線になるようにそれぞれを配置するのがよい。
【0025】
ヒータ本体42の流入口48には、オイルが流れるための断面円形の接続パイプ54が接続されている。また、流出口50にも断面円形の接続パイプ54が接続されている。この接続パイプ54、接続パイプ54は、図2に示すように、横に並んだ次のヒータ本体42にオイルが流れるように順番に接続されている。
【0026】
(5)熱処理室16の動作状態
次に、熱処理室16の動作状態について説明する。
【0027】
長尺状の基材1が、熱処理室16の搬入口18から搬入される。基材1の走行路の傾きは、水平面に対しθ°となっている。熱処理室16に搬入された基材1は、θ°傾斜した状態で走行路に沿って前後方向に走行する。この場合に、基材1は、走行ローラ22によって安定して走行路上を走行する。
【0028】
上ノズル24は、走行している基材1の上面に対し真上から熱風を吹き付けて加熱し、基材1の塗工部の表面からの塗工液の蒸発を促進させ、乾燥させる。
【0029】
下ノズル26は、基材1の下面に対し斜めから熱風を吹き付け、基材1の下面を加熱して乾燥させると共に、基材1を安定して走行させる。
【0030】
複数配列されたヒータ部28は、その内部に加熱したオイルが流入し、このオイルの熱によって輻射面44から遠赤外線が輻射され、この輻射された遠赤外線によって、基材1の上面の塗工部の内部から有機溶媒の発散を促進させる。
【0031】
その後、熱処理室16の搬出口20から基材1が搬出される。
【0032】
(6)効果
本実施例によれば、基材1の上面及び下面が熱処理され、塗工部が乾燥する。この場合に、上ノズル24と下ノズル26からの熱風によって基材1の塗工部が。その表面から加熱され乾燥する。また、ヒータ部28によって、基材1の上面の塗工部の有機溶媒をその内部から発散させることができる。
【0033】
また、ヒータ部28は、基材1と対面する側は平面の構造を持ち、反対側が半円形の断面形状であるため、このヒータ本体42を製作するときに、流入口48と流出口50を走行路の傾きに合わせて開口するだけで、容易に製作することができる。すなわち、市販されている円形のステンレス製のパイプを引き抜き加工により成形し、平面と半円形を組み合わせた筒状のヒータ本体42を製作し、このヒータ本体42を、熱処理室16の幅方向に合わせて所定の長さに切断し、その傾斜角度に合わせるように流入口48と流出口50を開口させればよい。
【0034】
また、基材1と対面する側は平らな輻射面44であるため、効率よく遠赤外線を基材1に輻射することができ、乾燥速度を上げることができる。
【0035】
また、ヒータ本体42の内部の空気は、半円形状の頂点に設けられた流出口50から、ヒータ本体42の外部に流出するため、ヒータ本体42内部に空気が残らず、加熱したオイルと空気が接触する時間が少なく、オイルの酸化が少なくなり、オイルの寿命が延びる。すなわち、流入口48と流出口50とは、断面半円形のヒータ本体42がθ°傾斜していて、その頂点に開口しているため、仮に空気が流入口48からオイルと共に流入してもヒータ本体42の頂点部分を流れて流出口50からそのまま排出されるため、ヒータ本体42内部に空気が滞留しない。特に、図4に示すように、断面半円形のヒータ本体42の一番上の位置である頂点、円形の流入口48の内周の一番上の位置、円形の流出口50の内周の一番上の位置、断面円形の接続パイプ54の内周の一番上の位置が一直線になるようにそれぞれを配置すると、空気がオイルと共にヒータ本体42内部をより通過し易くなりヒータ本体42内部に滞留することがない。
【0036】
また、ヒータ本体42は断面半径であるため、断面角型の赤外線輻射器に比べて、その内部に充填されるオイルの量を少なくすることができるため、経済的である。
【0037】
また、ヒータ本体42が断面半円形であるため、表面積が少なくなり、不要な放熱量が減少し省エネルギーとなる。
【0038】
(7)変更例
上記実施形態では、熱風を吹き出すヒータ装置14については、上ノズル24と下ノズル26を設けたが、この上ノズル24と下ノズル26の構成は、他の構造を持つノズルであってもよい。例えば、上ノズル24と下ノズル26は、平行な2つのスリット状の吹き出し口を設け、この吹き出し口から真下及び真上に熱風を吹き付けてもよい。
【0039】
また、この上ノズル24と下ノズル26を設けることなく、ヒータ装置12のみを設けてもよい。
【0040】
また、上記実施形態では傾斜角θ=30°としたが、この傾斜角θは30°に限らず、0°<=θ<90°であればよく、例えばθ=0°(水平状態)、1.5°、12°でもよい。
【0041】
上記では本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
10・・・熱処理装置、12・・・ヒータ装置、16・・・熱処理室、42・・・ヒータ本体、44・・・輻射面、46・・・一端面、48・・・流入口、50・・・流出口、52・・・他端面、54・・・接続パイプ
図1
図2
図3
図4