特許第5718134号(P5718134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヤマハ発動機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5718134-ロボット 図000002
  • 特許5718134-ロボット 図000003
  • 特許5718134-ロボット 図000004
  • 特許5718134-ロボット 図000005
  • 特許5718134-ロボット 図000006
  • 特許5718134-ロボット 図000007
  • 特許5718134-ロボット 図000008
  • 特許5718134-ロボット 図000009
  • 特許5718134-ロボット 図000010
  • 特許5718134-ロボット 図000011
  • 特許5718134-ロボット 図000012
  • 特許5718134-ロボット 図000013
  • 特許5718134-ロボット 図000014
  • 特許5718134-ロボット 図000015
  • 特許5718134-ロボット 図000016
  • 特許5718134-ロボット 図000017
  • 特許5718134-ロボット 図000018
  • 特許5718134-ロボット 図000019
  • 特許5718134-ロボット 図000020
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718134
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   B25J19/00 E
【請求項の数】10
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2011-87187(P2011-87187)
(22)【出願日】2011年4月11日
(65)【公開番号】特開2012-218118(P2012-218118A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2013年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】特許業務法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬目 俊文
【審査官】 青山 純
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−280019(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/010598(WO,A1)
【文献】 特開2008−245390(JP,A)
【文献】 特開平9−269039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動部と、
基部と、
前記基部を中心として水平方向に回転可能に設けられたアームと、
前記アームの先端部に配置され、前記駆動部の作動により軸の上下移動および軸の回転を可能にして設けられた中空の作動軸と、
前記作動軸に挿通された可撓性を有する線条部材と、
前記作動軸を覆うカバーと
を備えるロボットであって、
前記カバーにおける前記作動軸の上方部分には挿通穴が形成され、
前記作動軸の上端に連結され、前記挿通穴を貫通して外部に延びる中空シャフトとをさらに備え、
前記線条部材は、前記中空シャフトの内部に挿入されたことを特徴とするロボット。
【請求項2】
前記線条部材に、配線および配管の少なくとも一方が含まれる請求項1に記載のロボット。
【請求項3】
前記中空シャフトは、前記作動軸の上端に着脱される着脱部を備えている請求項1または2に記載のロボット。
【請求項4】
前記作動軸が上下方向の下端位置にあるときに、前記中空シャフトの上端部が、前記カバーの挿通穴よりも上方に位置するようにした請求項1ないし3のうちのいずれか一つに記載のロボット。
【請求項5】
前記作動軸は、スプラインシャフトを含み、
前記作動軸に取り付けられ、前記スプラインシャフトの上下移動をガイドするスプラインナットと、
前記スプラインナットに取り付けられ、前記スプラインナットと前記アームとの間に配置されたベアリングとを、さらに備えた請求項1ないし4のうちのいずれか一つに記載のロボット。
【請求項6】
前記駆動部は、
前記作動軸と平行して前記カバー内に配置されたボールねじ軸と、
前記作動軸に連結され前記ボールねじ軸の回転によって前記作動軸とともに上下移動する連結部と、
前記ボールねじ軸を軸周り方向に回転させるモータと
を含む請求項1ないし5のうちのいずれか一つに記載のロボット。
【請求項7】
前記線条部材は、基端側配線と前記基端側配線に着脱可能に接続された接続配線とからなる配線と、基端側配管と前記基端側配管に着脱可能に接続された接続配管とからなる配管との少なくとも一方を含み、
前記作動軸は、前記接続配線と前記接続配管とを組み付けた作動軸組付体に含まれる請求項1ないし6のうちのいずれか一つに記載のロボット。
【請求項8】
前記作動軸組付体は、
前記作動軸の上端開口に取り付けられ、前記接続配線と前記接続配管との少なくとも一方を取り付ける上端接続部材と、
前記作動軸の下端開口に取り付けられ、前記接続配線と前記接続配管との少なくとも一方を取り付ける下端接続部材と
を含む請求項7に記載のロボット。
【請求項9】
前記中空シャフトの前記作動軸との接続部の近傍に下部貫通穴を設けるとともに、前記中空シャフトの前記下部貫通穴よりも上方に上部貫通穴を設け、
前記中空シャフト内における前記下部貫通穴と前記上部貫通穴との間に、前記接続配線または前記接続配管の一方を接続するコネクタを設け、
前記接続配線または前記接続配管の他方を、前記下部貫通穴と前記上部貫通穴との間で前記中空シャフトの外部に出した請求項7または8に記載のロボット。
【請求項10】
前記中空シャフトをアルミニウムで構成した請求項1ないし9のうちのいずれか一つに記載のロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に回転可能に設けられたアームの先端に、中空の作動軸を、上下移動および軸周り方向への回転を可能にして設けるとともに、作動軸の内部に配線および配管を通したロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電子部品の実装にロボットが用いられており、このようなロボットの中に、配線や配管がアームの移動の邪魔にならないようにするために、その配線や配管を作動軸の内部に配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。このロボットは、ロボット基台を備えたロボットコラムと、ロボットコラムの上端に水平方向に回転可能に設けられた第1アームと、第1アームの先端に水平方向に回転可能に設けられた第2アームとを備えている。そして、第2アームの先端に取付シャフトが設けられ、この取付シャフト内に上下動および回転動が可能になった中空のロボットスプラインシャフトが設置されている。
【0003】
また、ロボットスプラインシャフトの下部には、電磁弁を備えたエアマニホールド、リモート端末制御プリント基板および圧縮エアの供給により作動するハンドやツールなどが取り付けられている。そして、ロボットコラムから第2アームを介して延びてくるケーブルやエア配管が、ロボットスプラインシャフトの上端開口からロボットスプラインシャフトの内部を挿通しロボットスプラインシャフトの下端開口から外部に引き出されている。ケーブルの先端はリモート端末制御プリント基板の端子に接続され、エア配管の先端はエアマニホールドの接続口に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−277178号公報
【発明の概要】
【0005】
前述した従来のロボットが備えるロボットスプラインシャフトは、通常、鋼などの剛性を有する金属を高精度に加工しているため高価なものである。しかしながら、前述した従来のロボットでは、ロボットスプラインシャフト内に配線や配管を通すため、上下移動するロボットスプラインシャフトを、第2アームの上部に設けられたカバーの上方に突出する長さにする必要があり、このため、ロボットスプラインシャフトが必要以上に長くなり高価につくという問題がある。また、ロボットスプラインシャフトがカバーの上部に突出しているため、さび易いという問題や、取り替え作業が面倒であるという問題もある。
【0006】
本発明は、このような問題に対処するためになされたもので、その目的は、安価につくとともに、配線や配管を収容してカバーの上部から突出する部分の取り換え作業が容易になるロボットを提供することである。なお、下記本発明の各構成要件の記載においては、本発明の理解を容易にするために、実施形態の対応箇所の符号を括弧内に記載しているが、本発明の構成要件は、実施形態の符号によって示された対応箇所の構成に限定解釈されるべきものではない。
【0007】
前述した目的を達成するため、本発明に係るロボットの構成上の特徴は、駆動部(33,40,62,65)と、基部(21b)と、基部を中心として水平方向に回転可能に設けられたアーム(20)と、アームの先端部に配置され、駆動部の作動により軸の上下移動および軸の回転を可能にして設けられた中空の作動軸(32,71,81)と、作動軸に挿通された可撓性を有する線条部材(52a,52b,74a,74b,84,84a)と、作動軸を覆うカバー(31,51,61)とを備えるロボット(A,B)であって、カバーにおける作動軸の上方部分には挿通穴(31a)が形成され、作動軸の上端に連結され、挿通穴を貫通して外部に延びる中空シャフト(45,68,85)とをさらに備え、線条部材は、中空シャフトの内部に挿入されたことにある。
【0008】
本発明に係るロボットでは、中空の作動軸にそのまま線条部材を通すのではなく、作動軸の上端に中空シャフトを着脱可能に連結し、中空シャフトの上端開口から線条部材を挿入して中空シャフトと作動軸とに通している。また、中空シャフトは、作動軸を収容するカバーの上部に挿通穴を設け、この挿通穴を介して外部に突出するようにしている。このため、作動軸を延長させてカバーの外部に突出させる必要がなくなる。また、中空シャフトは、線条部材を通せるだけの簡単な構成のものでよいため、強度や精度が要求されず安価なものを用いることができる。
【0009】
本発明に係るロボットの他の構成上の特徴は、線条部材に、配線(52a,74a,84a)および配管(52b,74b,84)の少なくとも一方が含まれることにある。本発明に係る線条部材には、各装置間を電気的に接続する配線または空気を送ったり吸引したりするための配管の少なくとも一方が含まれる。これによると、所定の機能を有する線条部材を作動軸と中空シャフト内を挿通させて目的の部分に延ばすことができる。
【0010】
本発明に係るロボットのさらに他の構成上の特徴は、中空シャフトは、作動軸の上端に着脱される着脱部(47)を備えていることにある。
【0011】
本発明では、中空シャフトが作動軸に着脱可能になっているため、中空シャフトを簡単に交換できる。さらに、中空シャフトは、ロボットの製造時に、最初からロボットに組み込んでおくことに限らず、既存のロボットに後から取り付けることもできる。たとえば、配線や配管をアームの所定部分からアームの側方を通過させて、作動軸の下端側に延ばしていたロボットの作動軸に、中空シャフトを連結して、中空シャフトの上端開口から線条部材を挿入することができる。この場合、カバーに挿通穴を設けて、作動軸と中空シャフトを着脱部を介して連結する。
【0012】
本発明に係るロボットのさらに他の構成上の特徴は、作動軸が上下方向の下端位置にあるときに、中空シャフトの上端部が、カバーの挿通穴よりも上方に位置するようにしたことにある。本発明によると、中空シャフトが上下移動する際に、線条部材が挿通穴の周縁部に接触することがなくなる。このため、線条部材が挿通穴の周縁部に擦られて消耗することがなくなる。なお、線条部材は、所定の固定具によって中空シャフトの上端開口に固定しておくことが好ましい。これによると、線条部材が中空シャフトの上端開口の周縁部に擦られて消耗することも防止できる。
【0013】
本発明に係るロボットのさらに他の構成上の特徴は、作動軸は、スプラインシャフトを含み、作動軸に取り付けられスプラインシャフトの上下移動をガイドするスプラインナット(37)と、スプラインナットに取り付けられスプラインナットとアームとの間に配置されたベアリング(36)とを、さらに備えたことにある。本発明によると、作動軸に中空シャフトを連結することで軸が長くなるが、スプラインナットとベアリングとにより強固に保持できる。また、この場合の作動軸を回転させるためのモータとしては、アームにおける作動軸の周囲に設けられ、作動軸を直接または減速機を介して回転させるものであってもよいし、ベルトを介して作動軸を回転させるものであってもよい。
【0014】
本発明に係るロボットのさらに他の構成上の特徴は、駆動部は、作動軸と平行してカバー内に配置されたボールねじ軸(43,67)と、作動軸に連結されボールねじ軸の回転によって作動軸とともに上下移動する連結部(41)と、ボールねじ軸を軸周り方向に回転させるモータ(34,63)とを含むことにある。
【0015】
本発明に係るロボットでは、カバー内に、作動軸とボールねじ軸とが配置されるためカバー内の空きスペースが少なくなっている。このため、線条部材を中空シャフトと作動軸内を通すことがより、カバー内に線条部材を収容するスペースを設ける必要がなくなる。なお、ボールねじ軸を軸周り方向に回転させるモータとしては、ボールねじ軸の外周に設けられてボールねじ軸を直接回転させるものであってもよいし、ベルトを介してボールねじ軸を回転させるものであってもよい。
【0016】
本発明に係るロボットのさらに他の構成上の特徴は、線条部材は、基端側配線(75a,84b)と基端側配線に着脱可能に接続された接続配線(74a,84a)とからなる配線と、基端側配管(75b)と基端側配管に着脱可能に接続された接続配管(74b)とからなる配管との少なくとも一方を含み、作動軸は、接続配線と接続配管とを組み付けた作動軸組付体(70,80)に含まれることにある。
【0017】
本発明によると、作動軸と、作動軸の内部に設けられた接続配線と接続配管との少なくとも一方を一体に構成することができる。このため、作動軸を取り替える際に、配線と配管を作動軸から抜き取ったり、挿入したりする作業が不要になる。このため、メンテナンスのための作業や取り替え作業が容易になる。
【0018】
本発明に係るロボットのさらに他の構成上の特徴は、作動軸組付体は、作動軸(71,81)の上端開口に取り付けられ、接続配線と接続配管との少なくとも一方を取り付ける上端接続部材(72,82)と、作動軸の下端開口に取り付けられ、接続配線と接続配管との少なくとも一方を取り付ける下端接続部材(73,83)とを含むことにある。本発明によると、作動軸と、作動軸内に設けられた接続配線と接続配管との少なくとも一方からなる作動軸組付体を共通する部材として他のロボットにも使用することができる。
【0019】
本発明に係るロボットのさらに他の構成上の特徴は、中空シャフトの作動軸との接続部の近傍に下部貫通穴(85b)を設けるとともに、中空シャフトの下部貫通穴よりも上方に上部貫通穴(85a)を設け、中空シャフト内における下部貫通穴と上部貫通穴との間に、接続配線または接続配管の一方を接続するコネクタ(86)を設け、接続配線または接続配管の他方を、下部貫通穴と上部貫通穴との間で中空シャフトの外部に出したことにある。
【0020】
本発明によると、作動軸内に組み込まれた接続配線や接続配管などの他に、他の配線や配管を中空シャフトと作動軸を介して作動軸の下部に通すことができる。また、作動軸内のスペースが狭くなった場合には、作動軸に組み込まれた接続部分以外の他の配線や配管を、中空シャフトと作動軸との連結部のところで、一旦外部に出すことができる。このため、配線および配管の数が多い場合にも中空シャフトと作動軸を介して配線と配管とを作動軸の下部に通すことができる。なお、作動軸の下端近傍にも貫通穴を設けて、作動軸の下端に接続部材を設けたために、作動軸内のスペースが狭くなった場合には、他の配線または配管を、作動軸の下部における接続部材の上方部分から外部に出すこともできる。
【0021】
本発明に係るロボットのさらに他の構成上の特徴は、中空シャフトをアルミニウムで構成したことにある。本発明によると、中空シャフトが安価につくとともに、軽量化が可能になる。さらに、さびが発生することを防止できる。なお、中空シャフトの表面にはアルマイト処理を施しておくことがより好ましい。これによると、中空シャフトの耐食性、耐摩耗性および美観を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るスカラロボットを示した斜視図である。
図2図1のスカラロボットの作動軸が下降した状態を示した斜視図である。
図3】スカラロボットの内部を示した断面図である。
図4】作動軸と中空シャフトとの連結部を示した断面図である。
図5】配線および配管を中空シャフトの上端開口に固定した状態を示した斜視図である。
図6】配線および配管を作動軸の下部から引き出してハンドに接続した状態を示した斜視図である。
図7】本発明の第2実施形態に係るスカラロボットを示した斜視図である。
図8図7のスカラロボットの内部を示した断面図である。
図9】作動軸の内部に配線および配管を組み込んだ状態を示した一部切欠き断面図である。
図10】作動軸から中空シャフトを外した状態を示した斜視図である。
図11図10の作動軸と中空シャフトを連結させた状態を示した斜視図である。
図12】作動軸に先端側配管を取り付ける状態を示した側面図である。
図13図12の作動軸に先端側配線と先端側配管とを接続する状態を示した斜視図である。
図14】本発明の第3実施形態に係るスカラロボットが備える作動軸と中空シャフトを連結させた状態を示した斜視図である。
図15図14の縦断面図である。
図16】作動軸に中空シャフトを取り付ける状態を示した斜視図である。
図17】本発明の第3実施形態に係るスカラロボットが備える作動軸に先端側配線を接続する状態を示した斜視図である。
図18図17の作動軸に接続配線および接続配管を接続した状態を示した斜視図である。
図19】中空シャフトを取り付ける前のスカラロボットを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態に係るロボットを図面を用いて説明する。図1および図2は、同実施形態に係るスカラロボットAを示している。このスカラロボットAはベース部10と、第1アーム18と、第2アーム20と、第2アーム20に設けられた昇降回転駆動装置30とを備えている。ベース部10は床や台等に固定設置されており、図3に示したように、矩形箱形のケース11と、ケース11内の上部に固定設置されたモータ12と、モータ12の上部に組み付けられケース11の上面部11aに固定設置された減速機13とを備えている。以下の説明において、上下方向および左右方向は、図3に基づいて記載する。
【0024】
ケース11の上面部11aにおける左側部分に取付用穴11bが形成されており、モータ12と減速機13とは、この取付用穴11bを介して上面部11aに取り付けられている。モータ12は、モータケース12aに軸受を介して回転自在に支持された回転軸12b、回転軸12bの外周に設けられたロータ、ロータの外周に対向して配置されたステータおよび回転検出用レゾルバなどで構成されている。このモータ12は、回転軸12bを上方に向けて突出させるとともに、取付用穴11b内を下方から上方に向かって貫通させて、減速機13の入力部13aに連結されており、モータケース12aを上面部11aの下面に固定することにより、ケース11に組み付けられている。
【0025】
減速機13は、ハーモニックドライブ(登録商標)として知られているもので、詳細は省略するが、モータ12の回転軸12bに連結された入力部13aと、第1アーム18に連結された出力部13bとを備えている。そして、出力部13bの外周にはベアリング14が設けられており、このベアリング14によって、第1アーム18は、ケース11に対して回転可能に支持されている。また、モータ12の駆動力は、回転軸12b、入力部13aおよび出力部13bを介して減速されて第1アーム18に伝達される。
【0026】
また、ケース11の右側面部11cの上部には、後述するカバー51に向かって延びる可撓性のあるケーブル15の一端部が取付部材15aによって固定されている。ケーブル15の内部には、各種の配線や吸引用の配管等が収容されている。また、ケース11の右側面部11cの下部には、ケース11内の各種の配線や吸引用の配管等の各端部を、ケース11の外側の配線および配管16に接続するための配線配管用コネクタ16aが設けられている。この配線配管用コネクタ16aと、ケーブル15内の配線および配管は、ケース11内で接続されている。
【0027】
第1アーム18は、長円形の板状に形成されている。第1アーム18の下面における右側部分には天井面の高さが低い取付用凹部が形成されており、この取付用凹部に減速機13の出力部13bが固定されている。そして、第1アーム18の上面における左側部分にも同様の深さが浅い取付用凹部が形成され、その取付用凹部に、モータ21と減速機22を介して第2アーム20が取り付けられている。
【0028】
第2アーム20は、第1アーム18よりも長軸方向に長い長円形の板状に形成されており、その右側部分には、上下に貫通する取付用穴23が形成されている。そして、モータ21は、回転軸21bを下方に向けて突出させて、取付用穴23内を上方から下方に向かって貫通させ、モータケース21aを第2アーム20の上面に固定させて、第2アーム20に組み付けられている。このモータ21は、前述したモータ12と上下方向の位置が逆になっているが、同機種のもので構成されている。なお、本実施形態においては、回転軸21bで本発明に係る基部が構成され、第2アーム20で本発明に係るアームが構成される。
【0029】
減速機22も、前述した減速機13と上下方向の位置が逆になっているが、同機種のもので構成されており、モータ21の回転軸21bに連結された入力部22aと第1アーム18に連結された出力部22bとを備えている。減速機22は、モータ21の回転軸21bの回転を減速して第1アーム18に伝達する。そして、出力部22bの外周にベアリング24が設けられている。このベアリング24を介して、第2アーム20は、第1アーム18に対して回転可能に支持される。また、モータ21の駆動力は回転軸21b、入力部22aおよび出力部22bを介して第1アーム18に伝達される。第2アーム20の左側部分には、後述する作動軸32を挿通させる取付用穴25が形成されている。
【0030】
昇降回転駆動装置30は、第2アーム20の左側に設けられており、縦長のカバー31と、取付用穴25を挿通して垂直に配置された中空の作動軸32と、作動軸32を軸周り方向に回転させる回転装置33と、作動軸32を上下方向に移動させる昇降装置40とを備えている。また、作動軸32の上端部には、カバー31の上面に形成された挿通穴31aを貫通して外部に延びる中空シャフト45が連結されている。なお、回転装置33と昇降装置40とで本発明に係る駆動部が構成される。カバー31は、第2アーム20の上面の左側に設けられ、作動軸32、回転装置33および昇降装置40の第2アーム20よりも上方に位置する部分を周囲と上方から囲っている。また、カバー31の上面における右側部分には上方に突出する有天筒状の突出収容部31bが形成されている。
【0031】
回転装置33は、作動軸32が貫通するモータ34と減速機35とを備えている。モータ34は、取付用穴25を貫通して第2アーム20に固定されており、モータケース34a内に回転自在に支持された円筒状の回転軸34b、回転軸34bの外周に設けられたロータ、ロータの外周に対向して配置されたステータおよび回転検出用レゾルバなどで構成されている。減速機35は、前述した減速機13,22と同機種のもので構成されており、入力部35aおよび出力部35bを備えている。そして、出力部35bの外周にはベアリング36が設けられている。
【0032】
ベアリング36の外輪には、取付部材37aを介してボールスプラインナット37が連結されている。このボールスプラインナット37の内周面には複数の縦溝が周方向に一定間隔で形成されている。また、作動軸32は、外周部に複数の縦溝32aが形成された鋼製のボールスプライン軸からなっており、縦溝32aをボールスプラインナット37の縦溝に噛み合わせて、モータ34、減速機35およびボールスプラインナット37に対して上下移動可能な状態で設置されている。また、作動軸32は、下部がボールスプラインナット37、ベアリング36を介して第2アーム20に回転自在に支持されており、モータ34の作動により生じる回転力を減速機35によって減速されてボールスプラインナット37とともに回転する。
【0033】
作動軸32の上端部は、図4に示したように、上下に配置されたベアリング38a,38bによって軸回り方向に回転可能で、かつ上下方向には固定された状態で、昇降装置40に備わった連結部材41に支持されている。昇降装置40は、連結部材41、ボールねじナット42、ボールねじ軸43およびモータ44を備えている。モータ44は、第2アーム20におけるモータ34が取り付けられた部分の右側に固定されている。ボールねじ軸43は、モータ44の回転軸に連結され、モータ44の作動により回転する。
【0034】
そして、ボールねじナット42は、ボールねじ軸43に螺合しており、連結部材41は、ボールねじナット42と作動軸32の上端部とを連結している。このため、モータ44の作動により、ボールねじ軸43が軸周り方向に回転すると、ボールねじナット42は、ボールねじ軸43に沿って上下移動し、これによって、作動軸32も連結部材41を介して上下移動する。なお、ボールねじ軸43の上端側部分は、カバー31の突出収容部31b内に突出している。
【0035】
作動軸32の上端には、ベアリングナット46を介して中空シャフト45が連結されている。中空シャフト45は、外径および内径が、作動軸32と略同じに設定されたアルミニウム製の管部材で構成されており、表面にはアルマイト処理が施されている。これによって、耐食性、耐摩耗性および美観を向上させている。また、中空シャフト45の下端部には外部側に突出する連結用のフランジ部47が形成されており、このフランジ部47の下面外周には下方に突出するリング状の突起47aがフランジ部47の周縁部に沿って形成されている。そして、フランジ部47における中空シャフト45の本体と突起47aとの間には、上下に貫通する複数のねじ挿通穴47bが形成されている。
【0036】
ベアリングナット46は、円筒状のナット本体46aと、ナット本体46aの外周上部から円周に沿って外部側に延びるフランジ部46bとからなっている。ナット本体46aは、内周側に作動軸32の上端外周を位置させてねじどうしの螺合により作動軸32に固定されている。フランジ部46bは、フランジ部47の突起47aの内部に嵌め込める大きさに形成されており、上下に貫通する複数のねじ穴46cがねじ挿通穴47bと同じ間隔で形成されている。そして、中空シャフト45は、突起47aの内部にフランジ部46bを入れ、ねじ挿通穴47bの上部からねじ48を挿入してそのねじ48をねじ穴46cに螺合させることにより、作動軸32に連結されている。
【0037】
第2アーム20の上面の右側には、カバー31と並んでカバー31よりも小さなカバー51が設けられている。このカバー51は、高さがカバー31の半分程度に設定され、下面および左側面が開放された略矩形の箱状に形成されている。そして、カバー51は、下面の開放縁部を第2アーム20の上面に当て、左側面の開放縁部をカバー31の右側面に当てて、第2アーム20とカバー31とに固定されている。カバー31の右側面の下部には開口が形成されており、これによってカバー31とカバー51とは内部で連通している。また、カバー51の上面における左側部分には、ケース11の上面部11aから延びてくるケーブル15の先端部が取付部材15bによって固定されている。
【0038】
そして、カバー51の上面右側からは、配線52aおよび配管52bが中空シャフト45の上端に向かって延びており、この配線52aおよび配管52bの基端側部分は、カバー51の上面に設けられた配線コネクタと配管継手とからなる接続部材52cによって固定されている。配線52aおよび配管52bの基端部は、カバー51内で、ケーブル15を介して延びてきた配線および配管にそれぞれ接続されている。
【0039】
また、第2アーム20の前後の側部の左右方向の中央部分には、カバー31とカバー51との境界部分に沿って延び、上部がカバー31の上面よりもさらに高くなったコ字状のステー53が設けられている。このステー53の上部側部分には、所定間隔をおいて複数のねじ挿通穴53aが形成されている。そして、配線52aおよび配管52bは、このステー53の前部の上下に延びる部分に沿うように配置され、間隔をおいて複数のナイロンクランプ54とねじ54aとナットによってステー53に固定されている。
【0040】
配線52aおよび配管52bの先端側部分は、中空シャフト45および作動軸32の内部を通って、作動軸32の下端から外部に延びている。また、中空シャフト45の上端には、図5に示したように、固定用のステー55が取り付けられており、配線52aおよび配管52bは、このステー55によって中空シャフト45の上端に固定されている。ステー55は、それぞれ外周縁側に間隔をおいて複数のねじ挿通穴が形成された水平片55aと垂直片55bとからなるL形の部材で構成されており、水平片55aの中央には、配線52aおよび配管52bを通すための挿通穴が形成されている。
【0041】
また、中空シャフト45の上端には、複数のねじ穴を備えたフランジ部45aが形成されている。ステー55は、水平片55aの挿通穴を中空シャフト45の上端開口に合わせてフランジ部45aの上面に配置され、ねじ56によって中空シャフト45に固定されている。そして、配線52aおよび配管52bは、2個のナイロンクランプ57とそれぞれ4個のねじ57aとナット(図示せず)によって垂直片55bに固定されている。
【0042】
そして、配線52aおよび配管52bにおける接続部材52cとステー55との間の部分の長さは、中空シャフト45が、図1に示した移動範囲の上端に位置しているときと、図2に示した移動範囲の下端に位置しているときとの間のストロークと、中空シャフト45が軸回り方向に回転する際の捻じれを考慮して、中空シャフト45に追従でき、かつたるみが生じない長さに設定されている。また、中空シャフト45の長さおよび高さは、中空シャフト45が、図2に示した移動範囲の下端に位置しているときに、ステー55が取り付けられた上端部が、カバー31の上面から上方に僅かに上方に突出するようにして設定されている。
【0043】
また、作動軸32の下部には、図6に示したように、アダプタ58を介してハンド58aが取り付けられている。ハンド58aには、工具等の作業用具や、チャック、作業アーム、吸引装置等の作業装置や、センサ58bが取り付けられる。ケース11内やケーブル15内を通る各種の配線および配管の一部は、モータ12,21,34,44等に接続され、残りの配線および配管は、さらに配線52aおよび配管52bを介してハンド58aに取り付けられる作業装置やセンサ58bに接続される。また、配線52a、または、ケーブル15内を通る配線や、配線および配管16の配線は、制御装置(図示せず)や電源に接続されており、スカラロボットAに備わった各装置は、制御装置の制御にしたがって作動する。なお、配線52aおよび配管52bにおける作動軸32の下端部とハンド58aやセンサ58bとの間の部分の長さは余裕を持たせる必要がないため、最小限の長さにしておく。
【0044】
このように構成されたスカラロボットAを、例えば基板等に電子部品を実装する部品実装機として作動させる際には、基板等、電子部品が装着される部材を所定の場所に設置するとともに、電子部品を所定の場所に準備しておく。また、作動軸32の下部のハンド58aに、吸引装置を装着し、この吸引装置に、配管52bの中の負圧管を接続しておく。そして、スイッチ等の操作により、スカラロボットAの作動を開始させる。これによって、ベース部10に対して、第1アーム18がモータ12の回転軸12bを中心として水平面上で回転するとともに、第1アーム18に対して、第2アーム20がモータ21の回転軸21bを中心として水平面上で回転して作動軸32を電子部品の設置場所に移動させる。
【0045】
ついで、モータ34,44の作動により、作動軸32の下端の吸引装置が下降するとともに、軸周り方向に回転して電子部品を所定方向から吸着できるようにする。その状態で、吸引装置の作動により、吸引装置に電子部品が吸着される。つぎに、モータ44の作動により吸引装置が上昇し、モータ12,21の作動により第1アーム18がベース部10に対して、第2アーム20が第1アーム18に対してそれぞれ回転し、吸引装置は基板の所定位置の上方に移動する。ついで、モータ34,44の作動により、吸引装置が下降するとともに、軸周り方向に回転して電子部品を基板の設定位置に位置させる。その状態で、吸引装置による電子部品の吸引を解除して、電子部品を基板上に実装する。この操作を繰り返すことにより、複数の電子部品が順次基板に装着される。
【0046】
このスカラロボットAが作動する際、配線52aおよび配管52bにおける移動する部分は、第2アーム20に設けられたステー53の上部と、第2アーム20に設けられたカバー31の上方で上下移動する中空シャフト45の上端との間に、たるみを生じさせることなく掛け渡されているため、スカラロボットAの作動の邪魔になることはない。
【0047】
以上のように、本実施形態に係るスカラロボットAでは、作動軸32の上端に中空シャフト45をベアリングナット46を介して着脱可能に連結し、中空シャフト45の上端開口から配線52aおよび配管52bを挿入して中空シャフト45と作動軸32とに通している。また、中空シャフト45は、カバー31の挿通穴31aから外部に突出するようにしている。このため、作動軸32を延長させてカバー31の外部に突出させる必要がなくなる。この場合の中空シャフト45は、作動軸32のような強度や加工精度が要求されないため、配線52aおよび配管52bを通せるだけの簡単な構成のものでよく、安価で軽量のアルミニウムを用いている。また、中空シャフト45が破損した場合には新たな中空シャフト45に簡単に交換できる。
【0048】
さらに、作動軸32および中空シャフト45が上下方向に移動する際の下端位置にあるときに、中空シャフト45の上端部が、カバー31の挿通穴31aよりも上方に位置するようにしている。このため、中空シャフト45が上下移動する際に、配線52aおよび配管52bが挿通穴31aの周縁部に擦られて消耗することがなくなる。また、配線52aおよび配管52bを、ステー55によって中空シャフト45の上端部に固定しているため、これによっても、配線52aおよび配管52bが中空シャフト45の上端開口の周縁部に擦られて消耗することを防止できる。
【0049】
さらに、本実施形態に係るスカラロボットAでは、カバー31内に、作動軸32とボールねじ軸43とを配置しているためカバー31内の空きスペースが少なくなっているが、配線52aおよび配管52bを中空シャフト45と作動軸32の内部を通すことにより、別途、配線52aおよび配管52bを配置するためのスペースを設ける必要がなくなる。
【0050】
(第2実施形態)
図7および図8は、本発明の第2実施形態に係るスカラロボットBを示している。このスカラロボットBでは、昇降回転駆動装置60は、カバー61と、作動軸組付体70(図9参照)と、作動軸組付体70を軸周り方向に回転させる回転装置62と、作動軸組付体70を上下方向に移動させる昇降装置65とを備えている。また、作動軸組付体70の上端部には、中空シャフト68が着脱可能に連結されている。カバー61は、前述したカバー31,51を一体に形成した段違いの箱形形状をしており、カバー31の突出収容部31bに相当する突出収容部は設けられていない。
【0051】
回転装置62は、モータ63と、減速機64の入力部64aに連結された状態で作動軸組付体70の外周に設けられたプーリ64bと、モータ63の回転軸63aに設けられたプーリ63bと、プーリ63bとプーリ64bとの間に掛け渡されたタイミングベルト63cとを備えている。モータ63は、カバー61の上面が低くなった右側部分の内部右側に配置されている。また、減速機64は、前述した減速機35と同様の構成をしており、その入力部64aにプーリ64bが連結されている。このため、モータ63が作動すると、その駆動力が、回転軸63aからプーリ63b、タイミングベルト63cおよびプーリ64bを介して減速機64の入力部64aに伝達される。
【0052】
昇降装置65は、前述した昇降装置40のモータ44に代えて、モータ66と、ボールねじ軸67の下端側外周に設けられたプーリ67aと、モータ66の回転軸66aに設けられたプーリ66bと、プーリ66bとプーリ67aとの間に掛け渡されたタイミングベルト66cとを備えた構成をしている。モータ66は、カバー61の上面が低くなった右側部分の内部左側にモータ63と並んで配置されている。このため、モータ66が作動すると、その駆動力が、回転軸66aからプーリ66b、タイミングベルト66cおよびプーリ67aを介してボールねじ軸67に伝達される。
【0053】
作動軸組付体70は、図9に示したように、中空の作動軸71の上下の開口にそれぞれ、接続部材72,73を取り付けるとともに、接続部材72,73間をそれぞれ、接続配線74aと接続配管74bとで接続した一体からなる構成をしている。作動軸71は、前述した作動軸32と同様、外周部に複数の縦溝71a(図10および図11参照)が形成された鋼製のボールスプライン軸からなっている。接続部材72は、肉厚円板状のブッシュフランジ72aの中央部分に、それぞれ上下に連通する二つの穴部を設け、この穴部の両側にそれぞれ接続部を構成する配線コネクタ72bと配管継手72cを設けて構成されている。
【0054】
そして、接続部材72は、配線コネクタ72bと配管継手72cとをそれぞれ作動軸71の内部側と外部側とに突出させて作動軸71の上端開口内部に取り付けられている。接続部材73は、肉厚円板状のブッシュフランジ73aの内部に、それぞれ上下に連通する二つの穴部を設け、この穴部の両側にそれぞれ接続部を構成する配線コネクタ73bと配管継手73cを設けて構成されている。
【0055】
また、接続部材73は、配線コネクタ73bと配管継手73cとをそれぞれ作動軸71の内部側と外部側とに突出させて作動軸71の下端開口内部に取り付けられている。接続部材72,73は、それぞれ配線コネクタ72bと配線コネクタ73bおよび配管継手72cと配管継手73cが互いに対向するようにして、作動軸71の開口に対してねじ止めまたは圧入することによって固定されている。そして、作動軸71の内部側の配線コネクタ72bと配線コネクタ73bとに接続配線74aの両端部が接続され、作動軸71の内部側の配管継手72cと配管継手73cとに接続配管74bの両端部が接続されている。なお、接続部材72,73をねじ止めによって作動軸71に取り付ける場合には、上下のねじを逆方向に形成して、接続配線74aと接続配管74bとに捻じれが生じないようにする。
【0056】
また、図10に示したように、接続部材72の外部側の配線コネクタ72bと配管継手72cには、中空シャフト68内を通り下端開口から突出する基端側配線75aと基端側配管75bとを接続することができる。図11は、配線コネクタ72bを介して基端側配線75aと接続配線74aを接続するとともに、配管継手72cを介して基端側配管75bと接続配管74bとを接続し、作動軸71の上端に中空シャフト68を連結した状態を示している。また、カバー61内の右側の低い上面からは、上方に延びたのちに湾曲して中空シャフト68の上方に開口を向けた管状ガイド部76a,76bが設けられている。そして、基端側配線75aは、管状ガイド部76a内を通過して中空シャフト68の上端開口から内部に延び、基端側配管75bは、管状ガイド部76b内を通過して中空シャフト68の上端開口から内部に延びている。
【0057】
また、図12および図13に示したように、接続部材73の外部側の配線コネクタ73bと配管継手73cとは、下方に向かって突出しており、この配線コネクタ73bと配管継手73cとに、図13に示したようにして、先端側配線77aと先端側配管77bとを接続していくことができる。なお、配線コネクタ73bと配管継手73cとをそれぞれ、先端側配線77aと先端側配管77bとに接続すると、図6と同様の状態になる。そして、先端側配線77aの先端部は、センサ78aなどに接続され、先端側配管77bの先端はハンド78bに取り付けられる作業装置などに接続される。このスカラロボットBのそれ以外の部分の構成については、前述したスカラロボットAと同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0058】
本実施形態に係るスカラロボットBでは、作動軸71の上下の開口にそれぞれ、接続部材72,73を取り付けるとともに、接続部材72,73間をそれぞれ、接続配線74aと接続配管74bとで接続して一体に構成された作動軸組付体70を用いている。このため、作動軸71を取り替える際に、接続配線74aと接続配管74bとを作動軸71から抜き取ったり、挿入したりすることなく、接続配線74aと接続配管74bも作動軸71と一緒に取り替えることができる。このため、メンテナンスのための作業や取り替え作業が容易になる。このスカラロボットBのそれ以外の作用効果については、前述したスカラロボットAと同様である。
【0059】
(第3実施形態)
図14ないし図16は、本発明の第3実施形態に係るスカラロボットが備える作動軸組付体80と中空シャフト85との連結部分を示しており、図17および図18は、作動軸組付体80とハンド88側部分との連結部分を示している。作動軸組付体80は、中空の作動軸81の上下の開口にそれぞれ、接続部材82,83を取り付けるとともに、接続部材82,83間を、接続配線84aで接続した一体からなる構成をしている。作動軸81は、外周部に複数の縦溝81aが形成された鋼製のボールスプライン軸からなっている。
【0060】
接続部材82は、肉厚円板状のブッシュフランジで構成されており、下部に接続配線84aの上端部が接続され、上部に配線コネクタ82aが形成されている。そして、接続部材82は、接続配線84aを作動軸81内に入れ、配線コネクタ82aを上方に突出させて作動軸81の上端開口内部に取り付けられている。接続部材83は、肉厚円板状のブッシュフランジで構成されており、上部に接続配線84aの下端部が接続され、下部に配線コネクタ83aが形成されている。そして、接続部材83は、配線コネクタ83aを下方に突出させて作動軸81の下端開口内部に取り付けられている。接続部材82,83は、それぞれ作動軸81の開口内周部に対してねじ止めまたは圧入することによって固定されている。
【0061】
中空シャフト85の下部側部分には上下に間隔をおいて一対の貫通穴85a,85bが形成され、作動軸81の上端側には上部貫通穴81aが形成されている。また、中空シャフト85内を通り下端開口から突出する基端側配線84bの先端部には、接続部材82の配線コネクタ82aに嵌合できるコネクタ86が取り付けられている。そして、図14および図15に示したように、作動軸81と中空シャフト85とは、配線コネクタ82aとコネクタ86とを接続して連結することができる。このとき、中空シャフト85の貫通穴85bと、作動軸81の上部貫通穴81aとが一致するようにする。図16は、作動軸81と中空シャフト85とを連結する前の状態を示している。
【0062】
この作動軸81と中空シャフト85には、配管84も通されており、図16の状態で、中空シャフト85内を延びてくる配管84の先端部を貫通穴85aから一旦外部に引き出したのちに、貫通穴85bと上部貫通穴81aとを通して作動軸81の内部に入れる。その状態で、作動軸81と中空シャフト85とを連結し、さらに、中空シャフト85と配管84との周囲に紐状のインシュロック85cを巻き付けて配管84を中空シャフト85に固定することにより、図14および図15の状態になる。また、図17に示したように、作動軸81の下部における接続部材83の上方部分には下部貫通穴81bが形成されている。そして、接続部材83の配線コネクタ83aに接続される先端側配線84cの上端部には、配線コネクタ83aに嵌合できるコネクタ86aが取り付けられている。
【0063】
そして、図18に示したように、配線コネクタ83aとコネクタ86aとを接続するとともに、配管84の下部を下部貫通穴81bから外部に引き出す。先端側配線84cの先端部は、センサ87などに接続され、配管84の先端はハンド87aに取り付けられる作業装置などに接続される。このスカラロボットBのそれ以外の部分の構成については、前述したスカラロボットBと同一である。したがって、同一部分に同一符号を記して説明は省略する。
【0064】
本実施形態に係るスカラロボットでは、中空シャフト85に一対の貫通穴85a,85bを形成するとともに、作動軸81の上端側に上部貫通穴81aを形成し下端側に下部貫通穴81bを形成している。このため、接続部材82,83を介して作動軸81内に組み込まれた接続配線84aの他に、配管84を中空シャフト85と作動軸81を介して作動軸81の下部に通すことができる。このスカラロボットのそれ以外の作用効果については、前述したスカラロボットBと同様である。
【0065】
また、本発明に係るロボットは、前述した各実施形態に限定するものでなく、適宜変更して実施することができる。例えば、前述した各実施形態において用いる中空シャフト45,68,85は、既存のロボットに、取り付けることもできる。例えば、図19に示したスカラロボットCに、中空シャフト45を組み込むことにより、スカラロボットAを構成することができる。なお、図示は省略するが、第2アーム20の底面には、配線52aおよび配管52bを接続できるタップが形成されている。そして、配線52aおよび配管52bは、このタップの部分から作動軸32の下端側に延びている。また、カバー31の挿通穴31aは、シール89で塞がれている。
【0066】
このため、キャップ89を外して、作動軸32に中空シャフト45を連結するとともに、ステー53を第2アーム20に取り付ける。そして、タップに接続された配線52aおよび配管52bを取り外して、その基端部を接続部材52cに接続して先端側部分を中空シャフト45の上端から内部に入れていく等の操作をすることにより、スカラロボットAを得ることができる。また、前述した第3実施形態においては、作動軸81の内部に接続配線84aを設置して、作動軸組付体80を構成しているが、接続配線84aに代えて接続配管を用いて作動軸組付体を構成してもよいし、接続配線の一部と接続配線の一部を用いて作動軸組付体を構成してもよい。
【0067】
同様に、第3実施形態においては、配管84を中空シャフト85の貫通穴85aから一旦外部に引き出したのちに、貫通穴85bと上部貫通穴81aとを通して作動軸81の内部に入れ、下部貫通穴81bから外部に引き出しているが、この配管84に代えて配線を用いてもよいし、接続配線の一部と接続配線の一部を用いてもよい。また、第1実施形態のスカラロボットAにおいて、作動軸32、配線52aおよび配管52bに代えて、第2実施形態の作動軸組付体70、基端側配線75a、基端側配管75b、先端側配線77aおよび先端側配管77bを設けてもよいし、第2および第3実施形態の作動軸組付体80、基端側配線84b、先端側配線84cおよび配管84を設けてもよい。
【0068】
また、逆に、第2実施形態のスカラロボットBにおいて、作動軸組付体70、基端側配線75a、基端側配管75b、先端側配線77aおよび先端側配管77bに代えて、第1実施形態の作動軸32、配線52aおよび配管52bを設けてもよいし、第3実施形態のスカラロボットにおいて、作動軸組付体80、基端側配線84b、先端側配線84cおよび配管84に代えて、第1実施形態の作動軸32、配線52aおよび配管52bを設けてもよい。さらに、第1実施形態のスカラロボットAでは、カバーを別体からなるカバー31とカバー51とを組み付けて構成しているが、これは一体からなるカバーで構成してもよい。また、第2実施形態のスカラロボットBでは、基端側配線75aおよび基端側配管75bを管状ガイド部76a,76bで支持しているが、この管状ガイド部76a,76bは省略してもよい。さらに、本発明に係るロボットのそれ以外の部分の構成についても、本発明の技術的範囲内で適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0069】
21b…回転軸、20…第2アーム、30,60…昇降回転駆動装置、31,51,61…カバー、31a…挿通穴、32,71,81…作動軸、33,62…回転装置、34,63…モータ、36…ベアリング、37…ボールスプラインナット、40,65…昇降装置、41…連結部材、43,67…ボールねじ軸、45,68,85…中空シャフト、52a…配線、52b,84…配管、70,80…作動軸組付体、72,73,82,83…接続部材、74a,84a…接続配線、74b…接続配管、75a,84b…基端側配線、75b…基端側配管、85a,85b…貫通穴、86…コネクタ、A,B…スカラロボット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19