(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
(レーダ装置1のバス2の車内3における配置位置について)
図1は、本発明に係るレーダ装置1が搭載されたバス2の内部を真上から見た場合の様子を模式的に示した図である。
図2は、バス2の内部を横から見えた場合の様子を模式的に示した図である。以下の説明では、バス2の直進時の進行方向を長手方向と称し、長手方向に直交する方向を短手方向と称する。また、バス2の運転室のある方を前方と称し、その反対側を後方と称する。
【0018】
本発明の第一の実施の形態のレーダ装置1は、
図1および
図2に示すように、バス2の車内3の前方に設置されている。レーダ装置1は、赤外線などのレーザ光を照射してその反射光を受光するものでもよいし、電磁波であるレーダ波を送信してその反射波を受信するものでもよい。以下の実施の形態の説明では、レーダ装置1は、電磁波であるレーダ波を送信し、その反射波を受信するものとして説明するが、レーダ装置1をレーダ波を送受信するものに限定するものではなく、以下の説明における「レーダ波」を「レーザ光」に置き換え、「送信」または「放射」を「照射」、「受信」を「受光」、「アンテナ11」を「投受光器」などに置き換えることによって、レーザ光を投受光するレーダ装置を用いた場合についても同様に説明することができる。さらに、超音波などの音波を用いるレーダ装置など、あらゆる方式のレーダ装置を採用することができる。
【0019】
バス2の車内3には、ハンドル4および運転席5などからなる運転室、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8がある。また、レーダ装置1の検出エリア9は、
図1に示すように、水平方向には、約110度の放射角を有し、
図2に示すように、垂直方向には、約3.2度の放射角を有する。また、レーダ装置1は、約13Hz(ヘルツ)の周期でレーダ波を繰り返し送信している。レーダ装置1から送信されたレーダ波がレーダ波の反射物によって反射されて再びレーダ装置1に受信されたときに、そのレーダ波の放射方向(受信方向でもよい)とレーダ波の送受時間差とから反射物の位置情報を取得する。
【0020】
レーダ装置1の水平方向の分解能は約0.25度であり、垂直方向の分解能は約0.8度である。すなわち、レーダ装置1は、水平方向には、レーダ波の放射方向を約0.25度ずつ変更しながら約110度の範囲にレーダ波を送信している。一方、レーダ装置1は、垂直方向には、0.8度ずつ変更しながら約3.2度の範囲にレーダ波を送信している。すなわち垂直方向には、それぞれ約0.8度の放射角の4つのレイヤを有していることになる。なお、水平方向にレーダ波の放射方向を約0.25度ずつ変更する方法については放射方向を機械的に変更する方法と、放射方向を電気的に変更する方法とがある。レーダ装置1は、約13Hzの周期でレーダ波を繰り返し送信するため、放射方向を電気的に変更する方法が採られている。
【0021】
また、レーダ装置1の垂直方向の4つのレイヤの検出結果を、各レイヤ毎に個別に扱う方法と各レイヤの検出結果を合成してあたかも4つのレイヤに分かれていないかのように扱う方法とがある。レーダ装置1では、各レイヤの検出結果を合成してあたかも4つのレイヤに分かれていないかのように扱う方法を採る。また、初めから垂直方向に単一のレイヤを有するレーダ装置1(垂直分解能約3.2度)を用いてもよい。
【0022】
また、レーダ装置1の垂直方向の放射角は約3.2度と狭いため、一人で通路に立つ可能性がある小学生低学年から大人までを検出できるように、垂直方向の放射角の中心を、バス2の床面から80センチ〜90センチ程度の高さになるようにしている。
【0023】
また、バス2の着座していない乗客の多くは、吊革につかまった状態であり、この場合、乗客は、バス2の短手方向を向いて立つことになる。
図3は、乗客に放射されるレーダ波の様子を示している。この例では、レーダ装置1は、バス2の前方の短手方向中心に置かれ、後方を向くように配置され、乗客は、バス2の通路に、短手方向を向いて立っている。Mは、乗客を真上から見たときの乗客の身体の範囲を示している。胴体の腹または背中部分が、図中横方向を向き、横部分が図中上下方向を向いている。すなわちレーダ装置1の側から見ると、乗客の身体Mの側面(横)がレーダ装置1側を向いていることになり、レーダ波の反射面積が比較的小さくなる。そこで、
図4に示すように、レーダ装置1を、水平方向の捜査範囲の中心より少し横にずらし、バス2の通路側を向くように配置する。このようにすることにより、バス2の短手方向を向いて立っている乗客については、レーダ波が乗客の正面側にも多く当たることになるので、レーダ波の反射面積を広くすることができ、乗客からの反射波をレーダ装置1で受信し易くできるようになる。
【0024】
(本発明の第一の実施の形態のレーダ装置1の構成について)
次に、レーダ装置1の構成例を
図5を参照して説明する。レーダ装置1は、
図5に示すように、大きく分けてレーダ部10(請求項でいう位置情報取得手段の一部)、演算部(請求項でいう位置情報取得手段の一部、反射度合加算手段、位置情報検出手段、乗客移動検出手段、警報手段の一部、および記憶手段)20、および警報部(請求項でいう警報手段の一部)30を有する。レーダ部10は、アンテナ11、送受信部12、および制御部13を有する。
【0025】
アンテナ11は、送受信部12から送信されるレーダ波を空中に放射し、反射物により反射されたレーダ波を受信して送受信部12に入力する。この際、制御部13の制御によりレーダ波の水平方向の放射方向を、約0.25度ずつ約110度にわたり、約1/13秒間以内に電気的に変更することができる。また、アンテナ11は、垂直方向には、4つのレイヤでレーダ波の送受を行うことができる。
【0026】
送受信部12は、制御部13の制御によりレーダ波を発振させてアンテナ11に出力し、アンテナ11が受信した反射物で反射されたレーダ波を受信する。
【0027】
制御部13は、送受信部12を制御して約13Hzの周期でレーダ波を繰り返し送信させる。また、この際、約1/13秒間の間に、アンテナ11におけるレーダ波の水平方向の放射方向を約0.25度ずつ440回、電気的に変更させるように制御する。
【0028】
演算部20は、位置情報取得部(請求項でいう位置情報取得手段の一部)21、反射頻度加算部(請求項でいう反射度合加算手段)22、記憶部(請求項でいう記憶手段)23、乗客位置検出部(請求項でいう位置情報検出手段)24、乗客移動検出部25(請求項でいう乗客移動検出手段)、および警報発出制御部(請求項でいう警報手段の一部)26を有する。演算部20は、コンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、マイクロプロセッサ(マイクロコンピュータ)、DSP(Digital Signal Processor)などにより構成され、内部に、演算処理部、メモリ、およびI/O(Input/Output)ポートなどを有し、インストールされているプログラムを実行することによって、上述の各部(位置情報取得部21、反射頻度加算部22、記憶部23、乗客位置検出部24、乗客移動検出部25、および警報発出制御部26)の機能が演算部20に実現される。
【0029】
位置情報取得部21は、レーダ波の反射物からの反射波を、レーダ波の放射方向およびレーダ波の送受時間差に基づいて解析し、反射物の車内における位置情報を、反射があった位置およびその位置の反射頻度として取得する。ここで反射頻度とは、反射度合を表すための尺度のひとつであり、約13Hzの送信周期において、反射物が何回レーダ波を反射したか(すなわち何回レーダ波を受信できたか)という頻度である。たとえば13Hz(すなわち1秒間に13回)の送信周期において、反射物が13回とも全てレーダ波を反射し、アンテナ11がこの反射波を受信できた場合、反射頻度は、たとえば「100%(パーセント)」であるとしたり、あるいは、反射回数をそのまま指標に用いて「13回」などとしてもよい。ここでは、反射物は主に乗客の人体であり、人体は柔軟である上に曲面で構成されており、さらにバス2の振動その他の要因により、常時、動いている。このため、レーダ波の人体における反射頻度は、さほど高いものではなく、またレーダ装置1からの距離が離れるのにしたがって低くなる。また、バス2の車内3に設置されている運転席5、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8などの構造物も柔軟である上に曲面で構成されており、レーダ波のこれらの構造物における反射頻度は、さほど高いものではなく、またレーダ装置1からの距離が離れるのにしたがって低くなる。
【0030】
反射頻度加算部22は、位置情報取得部21が取得した反射頻度を、バス2の短手方向に累積加算し、反射が起こった位置とその位置の反射頻度とが2次元平面上で1対1に対応するように位置情報を加工する。
【0031】
記憶部23は、位置情報取得部21および反射頻度加算部22による処理を、車内3に乗客が乗車していないときに予め行って取得した位置情報(これを「空車時の位置情報」と称する)を記憶する記憶領域と、乗客位置検出部24が検出した乗客の位置情報を記憶する記憶領域とを有する。このとき記憶部23は、時刻が異なる複数の乗客の位置情報を記憶する記憶領域を有する。
【0032】
乗客位置検出部24は、位置情報取得部21および反射頻度加算部22による処理を、車内3に乗客が乗車しているときに行って取得した位置情報から記憶部23に記憶されている空車時の位置情報を減算し、その減算結果として乗客の位置情報を検出する。
【0033】
乗客移動検出部25は、乗客位置検出部24が検出した異なる時刻の乗客の位置情報を比較して車内3を移動中の乗客を検出する。
【0034】
警報発出制御部26は、乗客移動検出部25が乗客の移動を検出したときには、警報を発出する。
【0035】
警報部30は、ディスプレイ31、スピーカ32、および警報ランプ33を有する。ディスプレイ31は、たとえば液晶パネル、またはEL(Electro Luminescence)パネルなどであり、警報発出制御部26の制御に従って各種情報(情報種別については後述する。)を文字、図形、および画像などにより表示する。スピーカ32は、警報発出制御部26の制御に従って各種情報を音声信号または音響信号として出力する。警報ランプ33は、警報発出制御部26の制御に従って各種情報を発光素子の点灯または点滅のパターンなどにより表示する。
【0036】
(乗客移動検出処理について)
次に、レーダ装置1の乗客移動検出処理について、
図6〜
図16を参照して具体的に説明するが、はじめにその前処理として、乗客が乗っていない状態での内部の物品の位置関係を示す情報を取得する処理が以下のように行われる。
【0037】
最初に、バス2の車内3に乗客が乗っていない状態で、レーダ装置1を動作させる。これにより、位置情報取得部21は、レーダ波の放射方向およびレーダ波の送受時間差を解析し、反射物の車内における位置情報を、反射があった位置およびその位置の反射頻度として取得し、この位置情報をバス2の車内3の長手方向と短手方向の位置座標を底面に有する3次元空間に展開する。
【0038】
図6は、位置情報取得部21が取得したバス2の空車時の車内3の位置情報を3次元空間に展開した例を示している。
図6の平面Sは、バス2の車内3の長手方向と短手方向の位置座標を表している。
図6の平面Sから上に伸びる線分の長さは反射頻度を表し、その平面S上の位置はレーダ波の反射物の位置を表している。
図6では、
図1に示す運転席5、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8の位置情報が取得されている。なお、
図6では、運転席5、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8に対応する線分(位置情報)にそれぞれ(5)、(6)、(7)、(8)を付して示している。
【0039】
位置情報取得部21によれば、レーダ装置1に最も近い位置にある運転席5の反射頻度が最も多く、最後部にある二人掛け座席6の反射頻度が最も少ないことがわかる。このような車内3の空車時の位置情報は、バス2の管理業者などが新車を購入して内装を完了し、運行を開始する前などに取得するものである。また、運行を開始した後であっても内装を改装したときには、車内3の空車時の位置情報を取得するようにする。なお、
図6の線分は、説明を分かり易くするために、本数を間引いて記載してあり、実際には、さらに多数の線分が表れている。
【0040】
続いて、反射頻度加算部22は、
図6で示した空車時の位置情報における反射頻度を、
図7に示すように、短手方向に加算して2次元平面上に展開する。
図7の横軸は、バス2の車内3の長手方向(前後方向)の位置座標であり、
図7の縦軸は、長手方向において同じ位置における反射頻度を短手方向(左右方向)に累積加算したものである。なお、
図7では、運転席5、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8に対応する反射頻度部分に群それぞれ(5)、(6)、(7)、(8)を付して示している。これによれば、反射頻度を短手方向に加算したので、運転席5の反射頻度と一人掛け座席8の反射頻度とが合成されて1つの波形を形成している。同様に、ベンチシート7の反射頻度とこれに対向している二人掛け座席6の反射頻度とが合成されて2つの波形を形成している。また、後半部の二人掛け座席6の反射頻度については左右の相対する二人掛け座席6の反射頻度が互いに合成されて5つの波形を形成している。
図7の空車時の位置情報は、記憶部23に記憶される。なお、空車時の位置情報の記憶部23への記憶形態は、どのようであってもよい。たとえば(長手方向の距離、反射頻度)からなる座標値として空車時の位置情報を記憶部23に記憶してもよいし、あるいは、
図7の各波形の状態をそのまま図形情報として記憶部23に記憶してもよい。
【0041】
以上のようにして、乗客が乗っていない状態での内部の物品の位置関係を示す情報が取得される。このように取得された乗客が乗っていない状態での内部の物品の位置関係を示す情報に基づいて、以下に示す乗客移動検出処理が行われる。
【0042】
図8は、位置情報取得部21が取得した、バス2に、4名の乗客M1,M2,M3,M4が乗車したときの車内3の位置情報を3次元空間に展開して示している。
図8の平面Sと線分の意味は、
図6と同様である。
図8では、
図6の位置情報に加え、矢印で示した乗客M1,M2,M3,M4の位置情報が現れている。なお、乗客M1,M2,M3,M4の位置情報をそれぞれ(M1)、(M2)、(M3)、(M4)で示している。なお、
図6と同様に、
図8の線分は、説明を分かり易くするために、本数を間引いて記載してあり、実際には、さらに多数の線分が表れている。
【0043】
続いて、反射頻度加算部22により、
図8で示した位置情報における反射頻度を、短手方向に加算して2次元平面上に示したものが
図9に示す位置情報である。
図9の横軸は、バス2の車内3の長手方向(前後方向)の位置座標であり、
図9の縦軸は、長手方向において同じ位置における反射頻度を短手方向(左右方向)に累積加算したものである。なお、
図9では、運転席5、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8、乗客M1〜M4に対応する位置情報をそれぞれ(5)、(6)、(7)、(8)、(M1)〜(M4)で示している。これによれば、
図7で示した位置情報に、乗客M1〜M4に対応する位置情報の波形が追加されている。
【0044】
続いて、乗客位置検出部24により、
図9で示した位置情報から記憶部23が記憶している
図7で示した空車時の位置情報を減算した位置情報を
図10に示す。
図10では、運転席5、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8の波形が減算により削除され、乗客M1〜M4の波形だけが残っている。このようにして、車内3に予め備え付けられている構造物の位置情報を削除し、乗客M1〜M4の位置情報だけを取り出すことができる。なお、
図10では、横軸および縦軸に目盛りを図示した。目盛りはいずれも百分率(%)であり、横軸は、バス2の車内3の長手方向の全長を100%としたものであり、縦軸は、レーダ装置1から13Hzの周期で送信されるレーダ波の全てが反射されて受信された場合を100%としたものである。
【0045】
続いて、乗客位置検出部24は、
図10に示した乗客M1〜M4の位置情報の波形の中から最大ピークの波形を抽出し、これを1番目の乗客M1として認識して記憶部23に記憶させる。なお、乗客M1は、位置が10(%)であり、反射頻度が90(%)であるので、その数値を「乗客の位置:10、乗客の反射頻度:90」などとして記憶部23に記憶させる。また、複数の波形の中から最大ピークを抽出するアルゴリズムは、たとえばクイックソートアルゴリズムなどを使用することができる。
【0046】
続いて、乗客位置検出部24は、
図10で1番目の乗客として認識して記憶部23に記憶させた乗客M1を、
図11に示すように、位置情報から削除(破線により図示)する。次に、乗客位置検出部24は、
図11に示した乗客M2〜M4の位置情報の波形の中から最大ピークの波形を抽出し、これを2番目の乗客M2として認識して記憶部23に記憶させる。なお、乗客M2は、位置が30(%)であり、反射頻度が70(%)である。
【0047】
続いて、乗客位置検出部24は、
図11で2番目の乗客として認識して記憶部23に記憶させた乗客M2を、
図12に示すように、位置情報から削除する。次に、乗客位置検出部24は、
図12に示した乗客M3,M4の位置情報の波形の中から最大ピークの波形を抽出し、これを3番目の乗客M3として認識して記憶部23に記憶させる。なお、乗客M3は、位置が68(%)であり、反射頻度が57(%)である。
【0048】
続いて、乗客位置検出部24は、
図12で3番目の乗客として認識して記憶部23に記憶させた乗客M3を、
図13に示すように、位置情報から削除する。次に、乗客位置検出部24は、
図13に示した乗客M4の位置情報の波形が1つだけであることから、これを4番目の乗客M4として認識して記憶部23に記憶させる。なお、乗客M4は、位置が92(%)であり、反射頻度が34(%)である。
【0049】
このようにして、
図14に示すように、乗客M1〜M4の波形が全て削除されると、乗客位置検出部24は、全ての乗客M1〜M4の認識を完了したと判断して以後の同様の処理を停止させる。このとき、記憶部23には、
図15に示すように、記憶領域No.1〜No.4に、それぞれ乗客の位置および乗客の反射頻度の情報が格納されている。なお、前述した
図7の車内3の空車時の位置情報は、記憶部23の
図15に示した記憶領域とは別の記憶領域(不図示)に記憶されているものである。
【0050】
位置情報取得部21、反射頻度加算部22、および乗客位置検出部24は、上述の
図6〜
図15で説明した処理を1周期として繰り返し処理を実行する。なお、この1周期に要する時間は、演算部20の処理能力によっても異なるが、たとえば1/6秒〜1/4秒程度である。
【0051】
次に、上述の1周期の処理が終了してから所定時間(たとえば数秒間)後の乗客位置検出部24が取得した乗客M1〜M4の位置情報(これを第2回目の位置情報と称する)を
図16に示す。また、第2回目の位置情報が取得されてからさらに所定時間後の乗客位置検出部24が取得した乗客M1〜M4の位置情報(これを第3回目の位置情報と称する)を
図17に示す。なお、
図16および
図17では、
図10における乗客M4の位置情報(これを第1回目の位置情報と称する)を破線で示してある。また、
図18には、第1回目、第2回目、および第3回目の位置情報が記憶されている記憶部23の記憶領域の状態を示す。これによれば、記憶部23の「No.4」の記憶領域に記憶されている位置情報だけが第1回目〜第3回目の間で変化していることがわかる。
【0052】
乗客移動検出部25は、記憶部23から第1回目〜第3回目の位置情報を読み出し、乗客M1〜M4の位置情報を比較する。これにより乗客移動検出部25は、乗客M4の位置がバス2の前方に移動していることを検出する。乗客移動検出部25は、乗客M4の位置がバス2の前方に移動していることを警報発出制御部26に伝達する。
【0053】
警報発出制御部26は、乗客移動検出部25から乗客M4の位置がバス2の前方に移動していることを伝達されると、警報部30を制御して運転者にその旨を伝達する。たとえば警報発出制御部26は、警報部30のディスプレイ31に、「乗客移動中」などのメッセージを表示させる。さらに、警報部30のディスプレイ31に、「乗客移動中」などのメッセージを表示させる際に、バス2の車内3のどの位置からどの方向に乗客が移動中であるかの軌跡を併せて表示するようにしてもよい。また、警報発出制御部26は、警報部30のスピーカ32に、「バスの走行中には車内を移動しないでください。」などの音声メッセージを出力させる。また、警報発出制御部26は、警報部30のランプ33に、ランプ33を点滅させるような断続した電圧を出力する。
【0054】
以上の演算部20の動作を、
図19のフローチャートに示す。なお、
図19のSTARTからENDまでの処理は、1周期分の処理であり、レーダ装置1がON状態であれば、STARTからENDまでの処理は繰り返し実行される。
【0055】
START:レーダ装置1がON状態であれば、演算部20がプログラムを実行し、演算部20に、位置情報取得部21、反射頻度加算部22、記憶部23、乗客位置検出部24、乗客移動検出部25、および警報発出制御部26の機能が実現され、手続きはステップS1に進む。
【0056】
ステップS1:演算部20は、位置情報取得部21により、
図8に示した3次元の位置情報を取得すると、手続きはステップS2に進む。
【0057】
ステップS2:演算部20は、反射頻度加算部22により、位置情報取得部21が取得した位置情報における反射頻度をバス2の短手方向に加算し、
図9に示した2次元の位置情報に加工すると、手続きはステップS3に進む。
【0058】
ステップS3:演算部20は、乗客位置検出部24により、
図7に示した予め記憶部23に記憶されているバス2の車内3の空車時の位置情報を、
図9に示した反射頻度加算部22から取得した位置情報から減算し、
図10に示した位置情報を取得すると、手続きはステップS4に進む。
【0059】
ステップS4:演算部20は、乗客位置検出部24により、
図10に示した位置情報に基づいて、
図11〜
図14に示したように、個別に乗客M1〜M4を検出すると、手続きはステップS5に進む。
【0060】
ステップS5:演算部20は、乗客位置検出部24により、
図15に示すように、乗客M1〜M4の位置情報を記憶部23に記憶させると、手続きはステップS6に進む。
【0061】
ステップS6:演算部20は、乗客移動検出部25により、記憶部23に記憶されている位置情報を読み出し、複数回の位置情報は有るか否かを判定する。ここで複数回の位置情報が有ると判定されると、手続きはステップS7に進む。一方、ここで複数回の位置情報は無いと判定されると、手続きはステップS1に戻る。
【0062】
ステップS7:演算部20は、乗客移動検出部25により、記憶部23に記憶されている複数回の位置情報を比較すると、手続きはステップS8に進む。
【0063】
ステップS8:演算部20は、乗客移動検出部25により、記憶部23に記憶されている複数回の位置情報を比較した結果、移動中の乗客は有るか否かを判定する。ここで移動中の乗客が有ると判定されると、手続きはステップS9に進む。ここで移動中の乗客は無いと判定されると、手続きはステップS1に戻る。
【0064】
ステップS9:演算部20は、警報発出制御部26により、警報部30から警報を発出させて1周期分の処理を終了する(END)。
【0065】
(効果について)
レーダ装置1によれば、3次元空間における位置情報を、2次元平面における位置情報に変換して扱うので、演算部20における演算処理を簡略化することができる。このため、演算部20の処理速度を高速化することができる。さらに、演算部20の記憶部23に記憶される際の情報量も少なくできる。
【0066】
また、予め空車時の位置情報を取得しておき、これを乗客が乗車しているときの位置情報から減算することにより、乗客以外の構造物の位置情報を削除し、乗客の位置情報を検出し易くすることができる。これにより、高い精度で乗客の検出が可能になり、誤検出を低減させることができる。
【0067】
また、異なる時刻の乗客の位置情報を比較して車内を移動中の乗客を検出するので、現在移動中である乗客を的確に検出することができる。さらに、第1番目から第n番目までの乗客のそれぞれについて個別に車内を移動中か否かを検出することができるので、多数の乗客が乗車している場合でも現在移動中である乗客を個別に検出することができる。
【0068】
また、乗客の移動を検出したときには、警報を発出することができるので、運転者および乗客に対し、的確に注意を喚起することができる。
【0069】
また、レーダ装置1を搭載したバス2によれば、運転者は、走行中における車内3の乗客への注意をレーダ装置1に任せることができる。これにより、バス2の運転者は、注意力を車外に対して集中させることができ、バス2の運転の安全性を向上させることができる。
【0070】
(本発明の第二の実施の形態のレーダ装置1Aについて)
本発明の第二の実施の形態のレーダ装置1Aについて、
図20〜
図22を参照して説明する。レーダ装置1Aが配置されるバス2は、
図20に示すように、エアサスペンションを構成するエアベローズ40を装備している。エアベローズ40内の空気圧は、バス2の空車時が最も低く、バス2の乗客数の増加と共に、エアベローズ40内の空気圧も増加する。エアベローズ40には、エアベローズ40内の空気圧を検出する空気圧センサ41(請求項でいう乗客数推定手段の一部)が備えられている。空気圧センサ41の検出結果は、レーダ装置1Aで取り込むことができる。
【0071】
(構成)
レーダ装置1Aの構成は、レーダ装置1と基本的に同じであるが、
図21に示すように、乗客位置検出部24A(請求項でいう乗客数推定手段の一部)、記憶部23Aがレーダ装置1とは異なる。たとえば乗客位置検出部24Aは、エアベローズ40の空気圧センサ41からエアベローズ40内の空気圧の情報を取り込み、取り込んだ空気圧の情報に基づいてバス2の乗客数を推定できるようになっている。また、記憶部23Aは、
図7に示した車内3の空車時の位置情報に加え、後述する車内3の満席時および定員時の位置情報も併せて記憶することができる。
【0072】
(車内3の満席時および定員時の位置情報について)
第一の実施の形態では、
図7に示したように、車内3の空車時の位置情報が記憶部23に予め記憶されており、この空車時の位置情報を用いて、
図10に示したように、車内3の乗客M1〜M4の位置情報のみを検出している。第二の実施の形態では、この手法をさらに発展させ、車内3の満席時および定員時の位置情報によって、車内3を移動中の乗客のみの検出を図るものである。
【0073】
たとえば、車内3の運転席5には運転者が着座し、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8の全てに乗客が着座している状態の位置情報をレーダ装置1Aで取得した場合、
図7の状態とは多少異なるものになる。すなわち、座席に座っている人体の厚みが加わった分、反射頻度を表す波形の形状は異なるものになる。これを車内3の満席時の位置情報と称する。車内3の満席時の位置情報を取得するためには、バス2の製造業者または管理業者などが自社の従業員などを全ての座席に着座させ、この状態でレーダ装置1Aを起動させるなどにより取得できる。また、車内3の定員時の位置情報とは、車内3の運転席5には運転者が着座し、二人掛け座席6、ベンチシート7、一人掛け座席8の全てに乗客が着座していると共に、全ての吊革に乗客が掴まっている状態における位置情報である。定員時の位置情報を取得するためには、バス2の製造業者または管理業者などが自社の従業員などを全ての座席に着座させると共に、全ての吊革に掴まらせ、この状態の位置情報をレーダ装置1Aで取得する。
【0074】
これにより、たとえば満席となる乗客数以上であり定員未満の乗客数のときには、実際の位置情報から上述した満席時の位置情報を減算すると、着座している乗客の位置情報が実際の位置情報から削除され、着座していない乗客の検出が容易になる。また、定員以上の乗客数のときには、実際の位置情報から上述した定員時の位置情報を減算すると、着座している乗客および吊革に掴まっている乗客の位置情報が実際の位置情報から削除され、座席に着座しておらず、かつ吊革にも掴まっていない乗客の検出が容易になる。
【0075】
(動作)
レーダ装置1Aの演算部20Aの処理を
図22のフローチャートを参照して説明する。なお、
図22のフローチャートにおいて、ステップS1,S2,S4〜S9の処理については、第一の実施の形態と同じなので説明を省略する。
【0076】
ステップS10:演算部20Aの乗客位置検出部24Aは、エアベローズ40の空気圧センサ41からエアベローズ40内の空気圧の情報を取得し、取得した空気圧の情報から乗客数を推定し、ステップS11の手続きに進む。なお、エアベローズ40内の空気圧と乗客数との関係は、予めシミュレーションや実験などによって取得しておくものとする。
【0077】
ステップS11:演算部20Aの乗客位置検出部24Aは、ステップS10で推定した乗客数に見合った補正用位置情報を選択し、ステップS12の手続きに進む。ここで、推定した乗客数に見合った補正位置情報とは、たとえば満席となる乗客数以上であり定員未満の乗客数のときには、上述した満席時の位置情報を、補正用位置情報として選択する。また、定員以上となる乗客数であれば、上述した定員時の位置情報を、補正用位置情報として選択する。
【0078】
ステップS12:演算部20Aの乗客位置検出部24Aは、実際の位置情報からステップS11で選択した補正用位置情報を減算し、ステップS4の手続きに進む。
【0079】
(効果)
このように演算部20Aの乗客位置検出部24Aによれば、実際の位置情報から選択した補正用位置情報を減算することにより、たとえば乗客数が満席時には、単なる椅子などの構造物のみの位置情報を減算するよりも椅子に乗客が座った状態の位置情報を減算することができる。これにより、乗客のみの位置情報の検出精度を向上させることができ、ひいては移動中の乗客の検出精度を高めることができる。
【0080】
また、乗客数が定員以上のときには、座席に着座しておらず、吊革にも掴まっていない乗客の検出精度を高めることができる。これにより、バス2の乗客数が多く、車内3が乗客で混雑しているような状況下において、移動中の乗客の検出精度を高めることができる。
【0081】
(その他の実施の形態)
本発明の実施の形態は、その要旨を逸脱しない限り様々に変更が可能である。たとえばコンピュータである演算部20,20Aによって実行され、演算部20,20Aの各機能(位置情報取得部21、反射頻度加算部22、記憶部23,23A、乗客位置検出部24,24A、乗客移動検出部25、および警報発出制御部26)を実現させるプログラムは、演算部20,20Aにあらかじめインストールされていてもよいし、あるいは、プログラムが記録されている(プログラムを記憶している)リムーバブルメディアを図示せぬドライブなどに装着し、リムーバブルメディアから読み出したプログラムを演算部20,20Aの内部の不揮発性のメモリに記憶することにより、または、有線または無線の伝送媒体を介して送信されてきたプログラムを、図示せぬ通信部で受信し、演算部20,20Aの内部の不揮発性のメモリに記憶することで、コンピュータである演算部20,20Aにインストールすることができる。
【0082】
なお、コンピュータが実行するプログラムは、本明細書で説明する順序に沿って時系列に処理が行われるプログラムであってもよいし、並列に、あるいは呼び出しが行われたとき等の必要なタイミングで処理が行われるプログラムであってもよい。
【0083】
また、上述の実施の形態では、バス2の車内3における移動中の乗客を検出する例を説明したが、バス2を電車または船舶もしくは航空機などに置き換えてもよい。
【0084】
また、警報部30については、ディスプレイ31、スピーカ32、警報ランプ33を有するとして説明したが、さらに無線送受信装置などを有し、遠隔地にある管理センタなどに警報発出の状況を通知するなどとしてもよい。
【0085】
また、
図6および
図8では、説明を分かり易くするために、3次元空間に反射頻度を線分の長さで表したが、反射頻度を2次元の平面S上に数値で表してもよい。
【0086】
また、第二の実施の形態において、バス2の乗客数を推定するために、エアベローズ40内の空気圧を利用したが、バス2の乗客数が推定できればどのような手法を用いてもよい。たとえば、エアサスペンションを有さないバスであれば、車高の変化を検出するストロークセンサ(またはハイトセンサ)などにより乗客数に応じた車体の沈み込み程度を検出してもよい。あるいは、車内3にカメラ装置を配置して画像処理によって、乗客数を推定してもよい。もしくは、券売機または整理券発行機などの情報から乗客数を推定してもよい。
【0087】
また、第二の実施の形態において、補正用位置情報を、「空車時の位置情報」、「満席時の位置情報」、「定員時の位置情報」の3つとしたが、乗客数をさらに細分化してさらに多数の補正用位置情報を用いてもよい。たとえば、「運転者無し+乗客無し状態」、「運転者有り+乗客無し状態」、「運転者有り+乗客半数着席」、…、「運転者有り+乗客満員」などとして多数の補正用位置情報を用意し、推定された乗客数に応じて適用してもよい。
【0088】
また、上述の実施の形態では、反射度合を表すための尺度として反射頻度を用いたが、その他にも反射強度が判定可能なレーダ装置を採用すれば、反射頻度に代えて反射強度を反射度合を表す尺度として用いてもよい。