【実施例】
【0022】
先ず、本発明に係る植物用センサ装置10の概略的な構成について説明する。
図1は、本発明に係る植物用センサ装置の一例としての植物用センサ装置10を模式的に示す斜視図である。
図2は、2つの植物用センサ装置10をトラクターTRに設置した様子を示す説明図である。
図3は、植物用センサ装置10の機能構成を模式的に示すブロック図である。
【0023】
本発明に係る本実施例の植物用センサ装置10では、
図1に示すように、第1測定光P1と第2測定光P2とを同一の照射領域IAに照射することが可能とされている。この第1測定光P1と第2測定光P2とは、互いに異なる波長に設定されている。なお、この第1測定光P1および第2測定光P2における波長とは、各測定光のスペクトルにおいて強度がピーク値となる波長をいう。この植物用センサ装置10では、第1測定光P1および第2測定光P2で生育状況測定対象とする植物(
図2の符号Cr参照)を照射し、その生育状況測定対象からの第1測定光P1および第2測定光P2の反射光Pr(
図3参照)を取得することにより、当該生育状況測定対象の第1測定光P1および第2測定光P2に対するそれぞれの反射率を生成するものである。この反射光Prの取得による反射率の生成については、後に詳細に説明する。
【0024】
この第1測定光P1および第2測定光P2に対する反射率は、生育状況測定対象とした植物(
図2の符号Cr参照)の生育状況を判断することに用いることができる。例えば、第1測定光P1として赤の波長帯域の光を用いるとともに、第2測定光P2として赤外の波長帯域の光を用いて、生育状況測定対象とする植物の第1測定光P1および第2測定光P2に対するそれぞれの反射率を取得する。この赤の波長帯域の第1測定光P1の反射率(Rとする)と、赤外の波長帯域の第2測定光P2の反射率(IRとする)と、を用いることにより、当該生育状況測定対象とする植物の生育状況(そこに含まれる栄養素の量)を示す正規化差植生指数(NDVI)を求めることができる。この正規化差植生指数は、(NDVI=(IR−R)/(IR+R))で表されるものである。
【0025】
植物用センサ装置10には、図示は略すが、操作部が設けられている。この操作部は、植物用センサ装置10における各種機能の実行のための操作を行うものである。この各種機能は、後述する第1測定光P1および第2測定光P2による照射や、その照射領域IAの回転姿勢の調整や、第1測定光P1および第2測定光P2に基づく正規化差植生指数の算出の実行等を含むものである。また、植物用センサ装置10には、取付部11が設けられており、任意の箇所への取り付けが可能とされている。
【0026】
植物用センサ装置10は、例えば、
図2に示すように、農業用機械(Agricultural machine)の一例としてのトラクターTRに取付部11を介して設置されて使用される。この
図2の例では、トラクターTRには、左右に1つずつの植物用センサ装置10が搭載されており、それぞれがトラクターTRの側方に照射領域IA(
図1および
図12等参照)を形成するように設置されている。このトラクターTRでは、自らが走行する両脇に両植物用センサ装置10で照射領域IAを形成することができるので、栽培している作物Crの脇を通行することにより、その作物Crの生育状況(正規化差植生指数)を取得することができる。この例のトラクターTRには、肥料散布機Fs(
図12参照)が搭載されている。その肥料散布機Fsは、図示は略すが制御部の制御下で散布する肥料の量の調整が可能とされているとともに、その制御部が各植物用センサ装置10の後述するドライバー回路40やドライバー回路41(
図3参照)を介して各植物用センサ装置10(そのCPU23)とのデータの遣り取りが可能とされており、各植物用センサ装置10で取得した正規化差植生指数に応じた量の肥料を散布する。このため、トラクターTRでは、作物Crを栽培している農地に沿って走行するだけで、作物Crの生育状況に応じた適切な量の肥料を当該作物Crに散布することができ、作物Crを効率よく栽培することを可能とする。
【0027】
この植物用センサ装置10は、
図3に示すように、発光ユニット21と、受光ユニット22と、CPU(制御ユニット)23と、APCユニット24と、演算処理ユニット25と、を備える。その発光ユニット21は、第1発光部26と、第2発光部27と、第1温度調節素子28と、第2温度調節素子29と、第1温度検出素子30と、第2温度検出素子31と、を有する。
【0028】
第1発光部26は、第1測定光P1を出射するための発光部材である。この第1発光部26は、本実施例では、出射光のピーク値の波長を735nmとするパルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成されており、赤の波長帯域(第1波長)の光を出射可能である。第2発光部27は、第2測定光P2を出射するための発光部材である。この第2発光部27は、本実施例では、出射光のピーク値の波長を808nmとするパルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成されており、赤外の波長帯域(第2波長)の光を出射可能である。この第1発光部26および第2発光部27は、後述するように、測定光出力制御部(APCユニット24および演算処理ユニット25)の制御下で駆動(出力調整および点消灯)される。その第1発光部26および第2発光部27の温度を調整すべく、第1温度調節素子28と、第2温度調節素子29と、第1温度検出素子30と、第2温度検出素子31と、が設けられている。
【0029】
第1温度調節素子28および第2温度調節素子29は、第1発光部26と第2発光部27とを加熱または冷却するものである。この第1温度調節素子28および第2温度調節素子29は、本実施例ではペルチェ効果型素子で形成されており、第1温度調節素子28が第1発光部26に適合する大きさ寸法および形状とされているとともに、第2温度調節素子29が第2発光部27と第1温度調節素子28との双方を載置可能な大きさ寸法の矩形状とされている(
図4参照)。第1温度検出素子30は、第1発光部26の温度を検出するものであり、本実施例では、サーミスタで形成されている。第2温度検出素子31は、第2発光部27の温度を検出するものであり、本実施例ではサーミスタで形成されている。
【0030】
本実施例の発光ユニット21では、
図4に示すように、ベース基板32に第2温度調節素子29が取り付けられ、その第2温度調節素子29には、それと略等しい大きさ寸法の金属板33が設けられている。その金属板33には、1つの隅部に第2発光部27が設けられているとともに、その対角位置となる隅部に第1温度調節素子28を介して第1発光部26が設けられている。このため、第2発光部27は、金属板33および第2温度調節素子29を介してベース基板32に取り付けられている。また、第1発光部26は、第1温度調節素子28、金属板33および第2温度調節素子29を介してベース基板32に取り付けられている。その第1発光部26に第1温度検出素子30が取り付けられているとともに、第2発光部27に第2温度検出素子31が取り付けられている。なお、本実施例の発光ユニット21では、
図3に示すように、さらに、各種回路が設けられたプリント回路基板PCBの温度を検出する第3温度検出素子34としてのサーミスタを有する。この第3温度検出素子34は、例えば、受光部(受光ユニット22(測定用受光部35)やAPCユニット24(監視用受光部42))に接近して設けることにより、その受光部の駆動回路が設けられたプリント回路基板PCBの温度を検出して、当該受光部における受光信号の管理に用いることができる。
【0031】
発光ユニット21では、第1温度検出素子30、第2温度検出素子31および第3温度検出素子34の検出出力がCPU23に入力される。CPU23は、第1温度検出素子30からの検出結果に基づいて、第1発光部26の温度を一定とするように第1温度調節素子28を制御するとともに、第2温度検出素子31からの検出結果に基づいて、第2発光部27の温度を一定とするように第2温度調節素子29を制御する。このため、CPU23は、第1発光部26の温度を制御する第1温度制御回路として機能するとともに、第2発光部27の温度を制御する第2温度制御回路として機能する。なお、本実施例では、第2温度調節素子29は、第2発光部27の温度を直に調節するとともに、第1温度調節素子28を介して第1発光部26の温度も調節することとなる。
【0032】
その第2温度調節素子29は、本実施例では、ペルチェ効果型素子で形成されていることから、CPU23により通電方向が制御されることにより、温度調節を行うことが可能とされている。第2温度調節素子29では、
図4に示すように、矢印I2方向に通電されると放熱して金属板33を介して第2発光部27を加熱し、矢印I2´方向に通電されると吸熱して金属板33を介して第2発光部27を冷却する。
【0033】
また、第1温度調節素子28は、本実施例では、ペルチェ効果型素子で形成されていることから、CPU23により通電方向が制御されることにより、温度調節を行うことが可能とされている。第1温度調節素子28では、矢印I1方向に通電されると放熱して第1発光部26を加熱し、矢印I1´方向に通電されると吸熱して第1発光部26を冷却する。このとき、第1温度調節素子28(第1発光部26)は、金属板33を介して第2温度調節素子29上に設けられていることから、第2温度調節素子29での吸放熱の影響を受けるので、CPU23により第2温度調節素子29での温度調節を考慮して温度調節されている。
【0034】
受光ユニット22は、
図3に示すように、測定用受光部35と、増幅回路36と、A/D変換器37と、を有する。測定用受光部35は、第1測定光P1および第2測定光P2が照射された生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prを取得すべく設けられており、受光面に光が入射すると、その光量に応じた電気信号を出力する。この測定用受光部35は、本実施例では図示は略すが6つのPD(Photodiode)で形成されている。測定用受光部35は、電気信号(検出出力)を増幅回路36へ向けて出力する。なお、測定用受光部35から出力される電気信号には、生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prの光量に応じた分に加えて、外乱光の光量に応じた分も含まれている。その増幅回路36は、入力された電気信号を適宜増幅してA/D変換器37へ向けて出力する。そのA/D変換器37は、入力された電気信号をデジタル信号に変換し、演算処理ユニット25へ向けて出力する。
【0035】
CPU(中央演算処理装置)23は、植物用センサ装置10において、外部電力供給源38から電源回路39を経て電力が供給される各構成部を統括的に制御する制御ユニットとして機能する。そのCPU23は、RS−232Cの規格に対応するドライバー回路40や、キャン通信が可能とされたドライバー回路41を介して、外部とのデータの遣り取りが可能とされており、植物用センサ装置10の駆動に必要なデータまたはプログラムを取得することが可能とされている。加えて、CPU23は、上述したように、第1発光部26および第2発光部27の温度調整(第1温度調節素子28および第2温度調節素子29の駆動制御)を行うことができる。
【0036】
また、CPU23は、後述するように、演算処理ユニット25(その積算部45)から出力される積算信号に基づいて、第1測定光P1および第2測定光P2を照射した生育状況測定対象(作物Cr)における、その第1測定光P1および第2測定光P2に対する反射率を算出するとともに、その算出結果(各反射率)に基づいて生育状況測定対象(作物Cr)の正規化差植生指数を算出する演算部としても機能する。このため、CPU23すなわち植物用センサ装置10は、第1測定光P1および第2測定光P2を利用して、生育状況測定対象の生育状況に関する情報を取得することができる。
【0037】
APCユニット24は、第1発光部26および第2発光部27の出力パワー、すなわち出射される第1測定光P1および第2測定光P2の強度(発光量の大きさ)を所定の大きさに安定させるものである(フィードバック制御)。このAPCユニット24は、監視用受光部42と、増幅回路43と、フィードバック回路44と、を有する。監視用受光部42は、後述するように、植物用センサ装置10(その出射部としてのシリンドリカルレンズ70)から出射される前の第1測定光P1および第2測定光P2の一部を取得すべく設けられている(
図5および
図10参照)。この監視用受光部42は、受光面に光が入射すると、その光量に応じた電気信号を出力するものであり、本実施例ではPD(Photodiode)で形成されている。監視用受光部42は、
図3および
図5に示すように、電気信号(検出出力)を増幅回路43へ向けて出力する。その増幅回路43は、入力された電気信号を適宜増幅してフィードバック回路44へ向けて出力する。そのフィードバック回路44は、入力された電気信号に基づいて、その受光信号の大きさが一定となるように第1発光部26および第2発光部27の駆動電流を制御する。これにより、第1発光部26および第2発光部27から出射される第1測定光P1および第2測定光P2の強度が一定となるように自動的に制御される。この詳細な構成については後述する。
【0038】
このため、APCユニット24では、監視用受光部42が、第1発光部26および第2発光部27から生育状況測定対象(作物Cr)に向けて照射される第1測定光P1および第2測定光P2の一部を受光する補助受光素子として機能する。また、APCユニット24では、増幅回路43とフィードバック回路44とが、補助受光素子からの受光信号に基づいて第1測定光P1および第2測定光P2の強度が一定となるように第1発光部26および第2発光部27の出力パワーを制御する光量制御部として機能する。
【0039】
演算処理ユニット25は、FPGA(Field Programmable Gate Array)で形成されており、
図3に示すように、測定用受光部35の受光信号を所定時間積算して積算信号を出力する積算機能(積算部45)と、第1発光部26および第2発光部27の発光制御のためのパルス信号を生成する発光制御機能(パルス生成部(発光制御部)46)と、を有する。積算部45の動作については、後に詳細に説明する。パルス生成部46は、第1発光部26の発光と第2発光部27の発光とを異なるタイミングとするように、第1発光部26および第2発光部27を発光制御するためのパルス信号を生成して、当該パルス信号を第1発光部26および第2発光部27に出力する。このため、演算処理ユニット25(そのパルス生成部46)は、APCユニット24と協働して、第1発光部26および第2発光部27の駆動(出力調整および点消灯)を制御する測定光出力制御部として機能する。本実施例では、測定光出力制御部(その演算処理ユニット25)は、第1発光部26と第2発光部27とを交互に同一の時間幅で出射させるとともに、それぞれの出射後に等しい時間の駆動停止(消灯)時間を設定している。
【0040】
次に、第1発光部26および第2発光部27の駆動を制御する測定光出力制御部において、第1測定光P1および第2測定光P2の強度が一定となるように第1発光部26および第2発光部27の出力パワーを制御する光量制御部の具体的な構成に付いて説明する。なお、光量制御部では、単一の監視用受光部42を用いつつそれぞれに対応した光量制御回路を用いて、第1発光部26と第2発光部27との出力パワーをそれぞれ制御するものであるが、双方の光量制御回路の構成および作用は等しいものであることから、以下では、監視用受光部42を用いる第1発光部26の光量制御回路について
図6を用いて説明し、第2発光部27の光量制御回路については省略する。その
図6は、第1発光部26の発光量の大きさを一定とすべく制御する第1光量制御部(APCユニット24)、および第1発光部26の発光タイミングを制御する発光制御部(パルス生成部46)の構成を示す回路図である。
【0041】
この
図6に示す第1発光部26の光量制御回路は、第1測定光P1および第2測定光P2の一部を受光可能とされた監視用受光部42を有する。その監視用受光部42のカソードには、抵抗R1を介して電圧+Vが印加される。監視用受光部42のカソードと抵抗R1との接続点は、コンデンサ(電解コンデンサ)C1を介してアースされている。そのコンデンサC1には、コンデンサC2が並列に接続されている。監視用受光部42のアノードは、抵抗R2を介してアースされている。
【0042】
監視用受光部42のアノードと抵抗R2との接続点は、オペレーショナルアンプリファイアIC1(以下ではオペアンプIC1ともいう)のマイナス入力端子−に接続されている。そのオペアンプIC1のプラス入力端子+は、抵抗R3を介してアースされている。オペアンプIC1の出力端子は、帰還抵抗R4を介してオペアンプIC1のプラス入力端子+に接続されている。その帰還抵抗R4には、これと並列にコンデンサC3が接続されている。
【0043】
このオペアンプIC1は、抵抗R1〜R4、コンデンサC1〜C3と協働して、監視用受光部42からのパルス的受光信号S1(受光した第1測定光P1および第2測定光P2に応じた電気信号)を電流・電圧変換するとともに、そのパルス的受光信号S1を増幅したパルス的受光信号S1´を出力する機能を有する。
【0044】
そのオペアンプIC1の出力端子は、アナログスイッチング素子SW(以下、スイッチSWともいう)および抵抗R5を介して、オペレーショナルアンプリファイアIC2(以下ではオペアンプIC2ともいう)のプラス入力端子+に接続されている。オペアンプIC2のプラス入力端子+と抵抗R5との接続点は、コンデンサC4を介してアースされている。オペアンプIC2の出力端子は、そのオペアンプIC2のマイナス入力端子−に接続されるとともに、抵抗R6を介してオペレーショナルアンプリファイアIC3(以下ではオペアンプIC3ともいう)のマイナス入力端子−に接続されている。スイッチSWは、後述するパルスPT1が入力されるとオン状態とされ、抵抗R5を介してオペアンプIC1の出力端子とオペアンプIC2のプラス入力端子+とを導通状態とする。すなわち、スイッチSWがオン状態とされると、増幅されたパルス的受光信号S1´がオペアンプIC2のプラス入力端子+へ出力される。
【0045】
このオペアンプIC2は、抵抗R5、コンデンサC4、抵抗R6と協働して、パルス的受光信号S1´を平滑化し、連続的受光信号S1´´として後段のオペアンプIC3のマイナス入力端子−に出力する機能を有する。
【0046】
オペアンプIC3のプラス入力端子+は、コンデンサC5を介してアースされている。そのコンデンサC5には、抵抗R7が並列に接続されている。そのオペアンプIC3のプラス入力端子+とコンデンサC5との接続点には、抵抗R8を介して電圧Vが印加される。オペアンプIC3の出力端子は、このオペアンプIC3のマイナス入力端子−にコンデンサC6を介して接続されているとともに、トランジスタTrのベースに接続されている。このトランジスタTrのコレクタには、電圧Vが印加されている。また、トランジスタTrのエミッタは、電界効果型トランジスタFET1(以下ではFET1ともいう)のゲートに接続されるとともに、抵抗R9を介してアースされている。抵抗R9にはこれと並列にコンデンサC7が接続されている。
【0047】
そのFET1のドレインは、レーザダイオードPLDである第1発光部26のカソードに接続されている。その第1発光部26のアノードには、電圧Vが印加されている。また、FET1のソースは、抵抗R10を介して電界効果型トランジスタFET2(以下ではFET2ともいう)のドレインに接続されている。そのFET2のソースは、アースされている。
【0048】
オペアンプIC3は、オペアンプIC2の出力端子から出力される出力電圧(連続的受光信号S1´´)と、コンデンサC5、抵抗R7および抵抗R8により規定される基準電圧Vrと、を比較して、オペアンプIC3からの出力電圧と基準電圧Vrとの差分電圧δVをトランジスタTrのベースに向けて出力する。トランジスタTrは、入力される差分電圧δVに基づいて、第1発光部26から出射される第1測定光P1の発光量が一定となるように、FET1のゲート電圧を制御する。このオペアンプIC3とトランジスタTrと抵抗R7〜R9とコンデンサC5〜C7は、フィードバック回路44を大略構成している。
【0049】
スイッチSWおよびFET2のゲートには、演算処理ユニット25のパルス生成部46から、周期パルスPTが入力される。そのパルス生成部46は、所定の間隔を置きつつ第1発光部26と第2発光部27とを交互に同一の時間幅で出射させるための周期パルスPTを生成する。FET2では、ゲートに周期パルスPTが入力されることにより、周期的にオン・オフされ、上述したようにスイッチSWでは、周期パルスPTが入力されることにより、周期的にオン・オフされる。これにより、第1発光部26には、周期的に矢印方向に電流が流れることから、周期的に発光(パルス発光)するので、周期パルスPTに応じるパルス的な第1測定光P1を出射する。
【0050】
演算処理ユニット25のパルス生成部46から出力される周期パルスPTは、
図7(a)に示すように、第1発光部26を周期的に発光させるパルスPT1と、第2発光部27を周期的に発光させるパルスPT2と、を有する。その周期パルスPT1と周期パルスPT2とは、互いに等しいパルス時間幅で交互に発生されており、第1発光部26と第2発光部27とを交互に同一の時間幅で出射させる。また、周期パルスPT1が発生してから周期パルスPT2が発生するまでの時間幅と、周期パルスPT2が発生してから周期パルスPT1が発生するまでの時間幅と、が互いに等しいものとされており、第1発光部26と第2発光部27とのいずれかの出射後に双方が等しい時間で駆動停止(消灯)される。このため、周期パルスPT1と周期パルスPT2とは、互いに等しい周期とされている。
【0051】
その演算処理ユニット25の積算部45では、上述したように、受光ユニット22(その測定用受光部35)からの受光信号を所定時間積算して積算信号を出力する積算機能を有している。ここで、
図7(a)に示すような周期パルスPT1と周期パルスPT2とを有する周期パルスPTが生成されて、それに基づき第1測定光P1および第2測定光P2が出射されたものとする。すると、受光ユニット22の測定用受光部35(
図3参照)は、第1測定光P1の反射光成分と外乱光に起因する外乱光成分とを含んだ光量を取得(受光)するとともに、第2測定光P2の反射光成分と外乱光に起因する外乱光成分とを含んだ光量を取得(受光)する。このため、受光ユニット22からは、第1測定光P1の反射光成分と外乱光に起因する外乱光成分とを含んだ光量に相当する受光信号SN1と、第2測定光P2の反射光成分と外乱光に起因する外乱光成分とを含んだ光量に相当する受光信号SN2と、が周期的に交互に出力される。
【0052】
この演算処理ユニット25の積算部45では、受光ユニット22から受光信号を受けると、パルス生成部46による第1発光部26および第2発光部27の点灯制御に同期する第1積算ステップと、パルス生成部46による第1発光部26および第2発光部27の消灯制御に同期する第2積算ステップと、を実行する。その第1積算ステップでは、第1測定光P1の反射光成分を含む受光信号SN1を所定個数積算するとともに、第2測定光P2の反射光成分を含む受光信号SN2を所定個数積算し、測定光毎の積算結果をCPU23に向けて出力する。第2積算ステップでは、第1測定光P1の出射が停止された後のパルス的受光信号すなわち第1測定光P1の反射光成分が除かれたパルス的受光信号としての受光信号N1を所定個数積算するとともに、第2測定光P2の出射が停止された後の(第2測定光P2の反射光成分が除かれた)パルス的受光信号としての受光信号N2を所定個数積算する。その所定個数の受光信号N1が積算された積算結果と、所定個数の受光信号N2が積算された積算結果と、をCPU23に向けて出力する。
【0053】
この演算処理ユニット25の積算部45での積算処理の一例を以下で説明する。積算部45は、例えば、受光信号SN1のパルス幅を、
図7(b)に示すように区間t1〜t10に分割し、区間毎に(各t1〜t10で)受光出力を複数回サンプリングし、各サンプリング値を加算(積算)してこの加算値を一時的に記憶する。このとき、例えば、区間t1において、受光出力を8回サンプリングし、8個のサンプリング値を加算して、
図7(c)に示すように加算値K1を取得し、この加算値K1を一時的に記憶する。積算部45は、同様にして、各区間に対応する加算値K2〜K10を得る処理を実行し、加算値K1〜K10の値から最も大きな加算値を抽出し、その抽出した加算値を受光信号SN1のピーク値(最大値)を示す受光出力値として取得する。この
図7(c)の例では、受光出力値(受光信号SN1(
図7(b)参照)のピーク値)は加算値K6となる。
【0054】
積算部45(演算処理ユニット25)は、この受光出力値(ピーク値)の取得を、
図7(a)に示す複数の受光信号SN1についてそれぞれ実行し、その各受光信号SN1の受光出力値(ピーク値)を所定個数積算して、第1測定光P1による反射光成分が強調された第1積算信号IS1aを得る(
図8参照)。また、積算部45は、複数の受光信号SN2ついても、同様の演算を行うことにより、サンプリングに基づいて複数の受光信号SN2の受光出力値(ピーク値)をそれぞれ取得し、その各受光信号SN2の受光出力値(ピーク値)を所定個数積算して、第2測定光P2による反射光成分が強調された第1積算信号IS1bを得る(
図8参照)。この第1積算信号IS1aおよび第1積算信号IS1bを得ることが第1積算ステップとなる。
【0055】
さらに、積算部45は、複数の受光信号N1ついても、同様の演算を行うことにより、サンプリングに基づいて複数の受光信号N1の受光出力値(ピーク値)をそれぞれ取得し、その各受光信号N1の受光出力値(ピーク値)を所定個数積算して、第1測定光P1の反射光成分が除かれて外乱光のみに起因する第2積算信号IS2aを得る(
図8参照)。ついで、積算部45は、複数の受光信号N2ついても、同様の演算を行うことにより、サンプリングに基づいて複数の受光信号N2の受光出力値(ピーク値)をそれぞれ取得し、その各受光信号N2の受光出力値(ピーク値)を所定個数積算して、第2測定光P2の反射光成分が除かれて外乱光のみに起因する第2積算信号IS2bを得る(
図8参照)。この第2積算信号IS2aおよび第2積算信号IS2bを得ることが第2積算ステップとなる。
【0056】
CPU23には、上述したように、演算処理ユニット25(その積算部45)から、第1積算信号IS1aと第1積算信号IS1bと第2積算信号IS2aと第2積算信号IS2bとが入力される。すると、CPU23は、第1積算信号IS1aから第2積算信号IS2aを減算することにより、外乱光に起因する光量成分が除かれた第1測定光P1の反射光成分を示す第1の受光信号ISa(
図9参照)を算出する。また、CPU23は、第1積算信号IS1bから第2積算信号IS2bを減算することにより、外乱光に起因する光量成分が除かれた第2測定光P2の反射光成分を示す第2の受光信号ISb(
図9参照)を算出する。この後、CPU23は、第1測定光P1および第2測定光P2を照射した生育状況測定対象(作物Cr)における、第1発光部26の全発光量と第1の受光信号ISaとに基づいて第1測定光P1に対する反射率を算出するとともに、第2発光部27の全発光量と第2の受光信号ISbとに基づいて第2測定光P2に対する反射率を算出し、正規化差植生指数を算出する。このため、CPU23は、外乱光に起因する光量成分の影響を極めて少なくした第1測定光P1に対する反射率と第2測定光P2に対する反射率とに基づいて、第1測定光P1および第2測定光P2を照射した生育状況測定対象(作物Cr)の正規化差植生指数を取得することができるので、当該生育状況測定対象(作物Cr)の生育状況に関する情報をより正確に取得することができる。この生育状況測定対象(作物Cr)の生育状況に関する情報は、上述したように、ドライバー回路40やドライバー回路41を介して、外部にデータとして出力することができる。
【0057】
次に、本発明に係る植物用センサ装置10の特徴部分について、
図10から
図12を用いて説明する。植物用センサ装置10では、第1発光部26および第2発光部27により所定の照射領域IA(
図11および
図12参照)を形成するための照射光学系60を有する。
図10は、照射光学系60の構成を説明するための概略的に示す説明図である。なお、
図11では、理解容易のためにハーフミラー69を省略して示している。
【0058】
照射光学系60は、発光ユニット21の第1発光部26および第2発光部27に加えて、第1レンズ61と、第2レンズ62と、ダイクロイックミラー63と、第3レンズ64と、光ファイバ65と、巻付部材66と、第4レンズ67と、第5レンズ68と、ハーフミラー69と、シリンドリカルレンズ70と、監視用受光部42と、を有する。
【0059】
第1レンズ61は、第1発光部26に対応して設けられており、第1発光部26から出射される光すなわち第1測定光P1を第1出射光軸L1に平行な光束とする。第2レンズ62は、第2発光部27に対応して設けられており、第2発光部27から出射される光すなわち第2測定光P2を第2出射光軸L2に平行な光束とする。その第2出射光軸L2と第1出射光軸L1とは、直交して設定されており、それらが交差する位置にダイクロイックミラー63が設けられている。
【0060】
そのダイクロイックミラー63は、第2発光部27からの第2測定光P2の透過を許して第2出射光軸L2と同一線上の出射光軸L上で第3レンズ64へと進行させるとともに、第1発光部26からの第1測定光P1を出射光軸L上で第3レンズ64へ向けて反射する。なお、実際には、第2出射光軸L2と出射光軸Lとでは、ダイクロイックミラー63における光学的な性質によりずれが生じる(同一線上とはならない)。このため、第2発光部27は、ダイクロイックミラー63を透過した後の第2測定光P2が、出射光軸L上を進行する(第2出射光軸L2が出射光軸L上となる)ように、ダイクロイックミラー63および第1発光部26に対する位置が設定されている。
【0061】
ダイクロイックミラー63は、本実施例では、少なくとも735nmの周辺の波長帯域の光(赤の波長帯域(第1波長))を反射するとともに、808nmの周辺の波長帯域の光(赤外の波長帯域(第2波長))の透過を許すものとされている。このため、ダイクロイックミラー63は、第1発光部26からの第1測定光P1の出射光路と、第2発光部27からの第2測定光P2の出射光路と、を合流させて同一の出射光軸L上で第3レンズ64(後述する共通出射光路)へと向かわせる光路合流手段として機能する。その第3レンズ64は、ダイクロイックミラー63で反射された第1測定光P1およびダイクロイックミラー63を経た第2測定光P2を、光ファイバ65の一端に設けられた入射端面65aに集光する。なお、第1発光部26と第2発光部27との設定位置を逆転させる構成としてもよい。このような構成とする場合、第1温度調節素子28を変更した第1発光部26の設定位置に配置する必要がある。また、ダイクロイックミラー63は、第1発光部26からの第1測定光P1の透過を許して第2出射光軸L2と同一線上の出射光軸L上で第3レンズ64へと進行させるとともに、第2発光部27からの第2測定光P2を出射光軸L上で第3レンズ64へ向けて反射すべく、適宜波長帯域に対する作用を有するものを用いればよい。
【0062】
その光ファイバ65は、入射端面65aから入射された第1測定光P1および第2測定光P2を、他端に設けられた出射端面65bから出射させる。光ファイバ65では、第1測定光P1および第2測定光P2をミキシングさせつつ内部を進行させる作用を有する。本実施例では、このミキシング作用を促進するために、光ファイバ65には、モードスクランブル処理が施されている。このモードスクランブル処理は、光ファイバ65の導光路内におけるモード間の光パワーの相互交換を誘起するものである。そのモードスクランブル処理として、本実施例では、光ファイバ65が巻付部材66に巻き付けられている。この巻付部材66は、光ファイバ65を曲げ許容半径の範囲内で巻回させることによりモードスクランブル処理を行う。このため、光ファイバ65(その出射端面65b)から出射される第1測定光P1および第2測定光P2では、進行方向に直交する面で見て均一な強度とされるとともに無偏光(ランダム偏光)とされている。これにより、第1発光部26および第2発光部27から出射される第1測定光P1および第2測定光P2は、進行方向に直交する面で見ると楕円形状とされているが、出射端面65bから出射される第1測定光P1および第2測定光P2では、光ファイバ65でのミキシング作用によりその出射端面65bに応じた円形状とされる。この光ファイバ65は、入射端面65aから入射された第1測定光P1および第2測定光P2を、出射端面65bから出射光軸L上で第4レンズ67へ向けて出射させる。
【0063】
その第4レンズ67は、出射端面65bから出射される第1測定光P1および第2測定光P2を、出射光軸Lに平行な光束とする。その出射光軸L上にハーフミラー69が設けられている。このハーフミラー69は、入射される平行光束(第1測定光P1および第2測定光P2)の一部を透過させるとともに、残部を第5レンズ68が配置された分岐出射光軸Lb上へと反射する。この第5レンズ68は、ハーフミラー69により反射された平行光束(第1測定光P1および第2測定光P2)を、分岐出射光軸Lb上で監視用受光部42の入射面42aに集光する。この監視用受光部42は、上述したように、APCユニット24(
図3等参照)を構成するものである。このため、ハーフミラー69は、入射される第1測定光P1および第2測定光P2の一部を、測定光出力制御部を構成する監視用受光部42へ向けて分岐する光束分岐手段として機能する。これにより、APCユニット24では、光ファイバ65(共通出射光路)を経て均一な強度分布で無偏光な第1測定光P1および第2測定光P2を用いて、第1発光部26および第2発光部27の出力パワーを調整することができる。
【0064】
また、ハーフミラー69を経た出射光軸L上にシリンドリカルレンズ70が設けられている。そのシリンドリカルレンズ70は、
図10および
図11に示すように、出射光軸Lに直交する平面で見て、一方向のみに屈折力を持つ光学部材であって、ハーフミラー69を経た第1測定光P1および第2測定光P2を出射光軸Lに直交する平面での一方向に拡大するものとされている。ここで、第1測定光P1および第2測定光P2は、光ファイバ65の出射端面65bから出射される際には、上述したように出射光軸Lに直交する平面で見ると円形状とされている。このため、ハーフミラー69を経た断面円形状の第1測定光P1および第2測定光P2は、シリンドリカルレンズ70により一方向のみが所定の大きさ寸法に拡大された楕円形状とされる(
図11および
図12等参照)。
【0065】
また、シリンドリカルレンズ70は、回転駆動部71(
図10参照)により、出射光軸Lを中心として回転(自転)可能に保持されている(
図11の(a)、(b)参照)。この回転駆動部71は、図示は略すが、植物用センサ装置10において照射光学系60を収容する筐体に固定されて設けられている。この照射光学系60では、このシリンドリカルレンズ70が第1測定光P1および第2測定光P2の出射面を形成している。このため、照射光学系60では、
図11の(a)および(b)に示すように、回転駆動部71(
図10参照)でシリンドリカルレンズ70を出射光軸L回りに回転(自転)させると、出射光軸Lに直交する平面で見て第1測定光P1および第2測定光P2を拡大させる方向(上述した一方向)を変更することができるので、第1測定光P1および第2測定光P2による照射領域IAを出射光軸L回りに回転(自転)させることができる。
【0066】
この照射光学系60では、上述したように、演算処理ユニット25のパルス生成部46による点灯制御に応じて、第1発光部26から第1測定光P1を出射するとともに、第2発光部27のから第2測定光P2を出射する。その第1発光部26から出射された第1測定光P1は、第1レンズ61を経てダイクロイックミラー63により反射されて、出射光軸L上で第3レンズ64へと進行する。また、第2発光部27から出射された第2測定光P2は、第2レンズ62およびダイクロイックミラー63を経て、出射光軸L上で第3レンズ64へと進行する。このため、照射光学系60では、ダイクロイックミラー63により第1測定光P1の出射光路と第2測定光P2の出射光路とが合流されて、出射光軸L上で第3レンズ64へと向かう。その第3レンズ64へと進行した光束(第1測定光P1および第2測定光P2)は、入射端面65aから光ファイバ65へと入射され、その光ファイバ65による導光路を経て出射端面65bから出射されて、第4レンズ67へと進行する。その出射光軸L上で第4レンズ67を経た光束(第1測定光P1および第2測定光P2)は、一部がハーフミラー69により反射されて分岐出射光軸Lb上で第5レンズ68を経て監視用受光部42へと入射し、他部がシリンドリカルレンズ70により一方向が拡大された楕円形状とされて当該シリンドリカルレンズ70から出射される。このため、第3レンズ64、光ファイバ65、第4レンズ67、およびハーフミラー69を経て、シリンドリカルレンズ70へと向かう光路が、光路合流手段としてのダイクロイックミラー63と、出射面を規定する出射部としてのシリンドリカルレンズ70と、を接続する共通出射光路として機能する。
【0067】
これにより、照射光学系60では、同一のシリンドリカルレンズ70から第1測定光P1と第2測定光P2とを同一の出射光軸L上で出射させることができ、第1測定光P1と第2測定光P2とのそれぞれで楕円形状を呈する同一の照射領域IAを形成することができる。また、照射光学系60では、
図11に示すように、回転駆動部71(
図10参照)でシリンドリカルレンズ70を適宜回転させることにより、第1測定光P1および第2測定光P2による照射領域IAを出射光軸L回りに回転(自転)させることができる。
【0068】
このように、本発明に係る植物用センサ装置10では、照射光学系60において、第1発光部26からの第1測定光P1の出射光路と第2発光部27からの第2測定光P2の出射光路とを合流させる光路合流手段(本実施例ではダイクロイックミラー63)と、その光路合流手段から出射部(本実施例ではシリンドリカルレンズ70)に至る共通出射光路(第3レンズ64、光ファイバ65、第4レンズ67、およびハーフミラー69)と、が設けられていることから、単一の出射部(シリンドリカルレンズ70)から等しい出射光軸L上に第1測定光P1および第2測定光P2を出射させることができるので、第1測定光P1による照射領域(照射領域IA)と第2測定光P2による照射領域(照射領域IA)とを一致させることができる。このため、等しい条件下で生育状況測定対象(作物Cr)を第1測定光P1および第2測定光P2で照射することができるので、当該生育状況測定対象(作物Cr)における第1測定光P1に対する反射率と第2測定光P2に対する反射率とを適切に取得することができる。
【0069】
また、植物用センサ装置10では、光路合流手段で合流させて共通出射光路を経た後に、単一の出射面(シリンドリカルレンズ70)から等しい出射光軸L上で第1測定光P1および第2測定光P2を出射させるものであることから、出射面(シリンドリカルレンズ70)からの距離に拘らず第1測定光P1による照射領域(照射領域IA)と第2測定光P2による照射領域(照射領域IA)とを一致させることができる。
【0070】
さらに、植物用センサ装置10では、共通出射光路の一部が光ファイバ65で形成されていることから、第1測定光P1および第2測定光P2をミキシングすることができ、第1測定光P1および第2測定光P2を均一な強度分布で無偏光(ランダム偏光)な光束とすることができる。このため、生育状況測定対象(作物Cr)からの第1測定光P1および第2測定光P2に対する反射光をより適切に取得することができるので、当該生育状況測定対象(作物Cr)における第1測定光P1に対する反射率と第2測定光P2に対する反射率とを適切に取得することができる。
【0071】
植物用センサ装置10では、出射面(出射部)がシリンドリカルレンズ70により形成されていることから、第1測定光P1および第2測定光P2による照射領域IAの形状を容易に設定することができる。
【0072】
植物用センサ装置10では、出射面(出射部)を形成するシリンドリカルレンズ70が、回転駆動部71により出射光軸L回りに回転(自転)自在とされていることから、出射光軸L回りで見てシリンドリカルレンズ70の回転姿勢を適宜調整するだけで、第1測定光P1および第2測定光P2による照射領域IAの出射光軸L回りで見た回転姿勢を変更することができる。このため、例えば、
図12(a)、(b)に示すように、植物用センサ装置10のトラクターTRへの取り付け状態に拘らず、トラクターTRの周辺での照射領域IAの形成位置を適宜調整することができる(実線と二点鎖線とで示す照射領域IA参照)ので、トラクターTRへの取り付けの自由度を高めることができる。なお、
図12では、肥料散布機Fsが搭載されたトラクターTRに対する植物用センサ装置10の取り付け状態の一例を示しており、(a)は両植物用センサ装置10が側方に設けられた状態を示し、(b)は両植物用センサ装置10が斜め前方に設けられた状態を示している。
図12(a)、(b)に示すように、トラクターTRに対する両植物用センサ装置10の取り付け状態が変化しても、トラクターTRの周辺での照射領域IAの形成位置を適宜調整する(出射光軸L回りで見たシリンドリカルレンズ70の回転姿勢を適宜調整する)ことで、肥料散布機Fsが肥料を散布する領域に適合させることができる。
【0073】
植物用センサ装置10では、出射面(出射部)を形成するシリンドリカルレンズ70が、回転駆動部71により出射光軸L回りに回転(自転)自在とされていることから、例えば、
図12に示すように、トラクターTRに取り付けた後であっても、トラクターTRの周辺での照射領域IAの形成位置を適宜調整(実線と二点鎖線とで示す照射領域IA参照)することができるので、用途に応じて任意の位置(照射領域IA)を第1測定光P1および第2測定光P2で照射することができ、その第1測定光P1および第2測定光P2を用いて生育状況測定対象(作物Cr)の生育状況に関する情報を取得することができる。
【0074】
植物用センサ装置10では、共通出射光路の一部を形成する光ファイバ65が、巻付部材66に巻き付けられてモードスクランブル処理が施されていることから、第1測定光P1および第2測定光P2をより効率よくミキシングすることができ、第1測定光P1および第2測定光P2をより確実に均一な強度分布で無偏光(ランダム偏光)な光束とすることができる。このような構成を実際に製作したところ、第1発光部26から出射される第1測定光P1における偏光比が20:1であったことに対し、出射端面65bから出射した第1測定光P1における偏光比を1.1:1に改善することができた。
【0075】
植物用センサ装置10では、光ファイバ65へのモードスクランブル処理を、当該光ファイバ65を巻付部材66に巻き付けることにより行うものであることから、簡易でかつ小さな構成とすることができる。
【0076】
植物用センサ装置10では、光ファイバ65によりミキシングした第1測定光P1および第2測定光P2の一部を、APCユニット24の監視用受光部42で受光させる構成であることから、第1発光部26および第2発光部27から出射された第1測定光P1および第2測定光P2をより適切に取得することができるので、第1発光部26および第2発光部27の出力パワーをより適切に調整することができる。このため、より安定した第1測定光P1および第2測定光P2を生育状況測定対象(作物Cr)に照射することができるので、当該生育状況測定対象(作物Cr)における第1測定光P1に対する反射率と第2測定光P2に対する反射率とをより適切に取得することができる。
【0077】
植物用センサ装置10では、第1測定光P1および第2測定光P2を光ファイバ65によりミキシングして断面円形状で均一な強度分布で無偏光な光束とした後に、シリンドリカルレンズ70を用いて第1測定光P1および第2測定光P2による照射領域IAの形状を設定するものであることから、安定した形状、大きさ寸法および強度分布の照射領域IAを形成することができる。このため、生育状況測定対象(作物Cr)における第1測定光P1に対する反射率と第2測定光P2に対する反射率とを、より適切に取得することができる。
【0078】
植物用センサ装置10では、第1測定光P1および第2測定光P2を光ファイバ65によりミキシングして断面円形状で均一な強度分布で無偏光な光束とした後に、シリンドリカルレンズ70を用いて第1測定光P1および第2測定光P2による照射領域IAの形状を設定するものであることから、光ファイバ65(その出射端面65b)の径寸法、第4レンズ67の光学的な特性、およびシリンドリカルレンズ70の光学的な特性を、適宜設定することにより、照射領域IAの形状および大きさ寸法を適宜設定することができる。
【0079】
植物用センサ装置10では、適切に取得した第1測定光P1に対する反射率と第2測定光P2に対する反射率とに基づいて、第1測定光P1および第2測定光P2を照射した生育状況測定対象(作物Cr)の正規化差植生指数を取得することができるので、当該生育状況測定対象(作物Cr)の生育状況に関する情報をより正確に取得することができる。
【0080】
植物用センサ装置10では、より安定した第1測定光P1および第2測定光P2を照射した生育状況測定対象(作物Cr)からの反射光Prにおいて、外乱光に起因する光量成分の影響を極めて少なくして第1測定光P1に対する反射率と第2測定光P2に対する反射率とを算出することができるので、当該生育状況測定対象(作物Cr)の正規化差植生指数を極めて正確に取得することができ、その生育状況に関する情報を極めて正確に取得することができる。
【0081】
植物用センサ装置10では、第1発光部26および第2発光部27から出射された第1測定光P1および第2測定光P2を、光ファイバ65を通してその出射端面65bから出射させる構成であることから、実質的な光源面積を大幅に拡大することができるので、レーザ安全基準(規格)の達成を容易なものとすることができる。これは、パルス発振型のレーザダイオード(PLD)で構成された第1発光部26および第2発光部27の光源面積(出射箇所の面積)に比較して、光ファイバ65の出射端面65bが極めて大きいことによる。
【0082】
植物用センサ装置10では、第1発光部26および第2発光部27が、第1温度検出素子30と第1温度調節素子28と第2温度検出素子31と第2温度調節素子29とにより温度調節されていることから、より安定して第1測定光P1および第2測定光P2を出射させることができるので、生育状況測定対象(作物Cr)における第1測定光P1に対する反射率と第2測定光P2に対する反射率とを、より適切に取得することができる。
【0083】
したがって、本発明に係る植物用センサ装置10では、異なる波長の2つの測定光の生育状況測定対象からの反射光をより適切に取得することができる。
【0084】
なお、上記した実施例では、本発明に係る植物用センサ装置の一例としての植物用センサ装置10について説明したが、生育状況測定対象を照射すべく第1波長の第1測定光を出射する第1発光部と、前記生育状況測定対象を照射すべく第2波長の第2測定光を出射する第2発光部と、前記生育状況測定対象による前記各測定光の反射光を受光して受光信号を出力する受光部と、前記第1発光部からの出射と前記第2発光部からの出射とを異なるタイミングで発光制御する制御部と、前記第1発光部からの第1測定光の第1出射光路と、前記第2発光部からの第2測定光の第2出射光路と、を合流する光路合流手段と、該光路合流手段と、第1測定光および第2測定光を前記生育状況測定対象へ向けて出射する出射部と、を接続する共通出射光路と、を備える植物用センサ装置であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0085】
また、上記した実施例では、第1測定光P1(第1発光部26)としてピーク値の波長が735nmの光(光束)を用いていたが、赤の波長帯域(第1波長)の光(光束)であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0086】
さらに、上記した実施例では、第2測定光P2(第2発光部27)としてピーク値の波長が808nmの光(光束)を用いていたが、赤外の波長帯域(第2波長)の光(光束)であればよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0087】
上記した実施例では、生育状況測定対象として、農作物としての作物Crを例にあげていたが、異なる波長の2つの測定光に対する反射率を用いて生育状況を把握することが可能なものであれば、栽培された植物や自生植物を生育状況測定対象としてもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0088】
上記した実施例では、第1測定光P1に対する反射率を算出する際に第1発光部26の全発光量を用いていたが、監視用受光部42からの受光信号と第1の受光信号ISaとに基づいて第1測定光P1に対する反射率を算出してもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0089】
上記した実施例では、第2測定光P2に対する反射率を算出する際に第2発光部27の全発光量を用いていたが、監視用受光部42からの受光信号と第2の受光信号ISbとに基づいて第2測定光P2に対する反射率を算出してもよく、上記した実施例に限定されるものではない。
【0090】
以上、本発明の植物用センサ装置を実施例に基づき説明してきたが、具体的な構成についてはこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。