(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
化学実験では、実験作業過程において、人体に有害な生物化学物質が発生する場合が多い。これら生物化学物質の室内への拡散を防止し、人体への汚染を防ぐ装置の1つにヒュームフードがある。一般に、ヒュームフードは、上下または左右に開閉可能なサッシ付きの囲い(エンクロージャ)を備えており、実験室の作業者はこのサッシからエンクロージャ内にアクセスすることができる。ヒュームフードで作業中の作業者が有害な生物化学物質に曝されないようにするために、エンクロージャは生物化学物質を除去する局所排気ダクトに接続されている。
【0003】
室圧制御システムは、ヒュームフード内で生物化学物質を扱う実験をする場合に、生物化学物質が部屋内に逆流しないように、サッシ面の面風速を所定の速度にするよう局所排気ダクトの風量を調整するシステムである。
図10は従来の室圧制御システムの構成を示す図である。室圧制御システムは、部屋100内に設置されたヒュームフード101−1,101−2と、ヒュームフード101−1,101−2に接続された局所排気ダクト102−1,102−2と、部屋100に給気を供給する給気ダクト103と、部屋100の空気を排気する一般排気ダクト104と、局所排気ダクト102−1,102−2の風量を調整する局所排気バルブEXV1,EXV2と、給気ダクト103の風量を調整する給気バルブMAVと、一般排気ダクト104の風量を調整する一般排気バルブGEXと、局所排気バルブEXV1,EXV2を制御するコントローラ105−1,105−2と、給気バルブMAVを制御するコントローラ106と、一般排気バルブGEXを制御するコントローラ107と、各コントローラ105−1,105−2,106,107を互いに接続する通信線108と、各コントローラ105−1,105−2,106,107を図示しない中央監視装置と接続するゲートウェイ109と、部屋100の外で室圧をチェックするための室圧モニタ110とから構成される。
【0004】
ヒュームフード101−1,101−2は、サッシ111−1,111−2と、検知範囲に人がいるかどうかを検出する人検知センサ112−1,112−2と、ヒュームフード101−1,101−2を使用する作業者に情報を通知するためのヒュームフードモニタ113−1,113−2と、サッシ111−1,111−2の開度を検出するサッシセンサ114−1,114−2とを備えている。
【0005】
このような室圧制御システムには、実験中に生物化学物質をヒュームフード内にこぼす等の緊急事態が発生し、生物化学物質が部屋内に逆流した場合には、局所排気バルブを全開にして局所排気ダクトの風量を上げる緊急時風量機能が備えられている。関連技術として、特許文献1には、ヒュームフード内に悪臭・有害ガスセンサ、温度センサ、煙センサ、炎センサを設置し、各センサの出力信号の内から最大の出力信号をリアルタイムで選択して、その最大の出力信号に対応してヒュームフードの排気ファンの回転数を制御し、排出空気量を適切な量に制御する技術が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の室圧制御システムでは、ヒュームフードの局所排気バルブや排気ファンの故障を検出する機能はなく、局所排気系統の故障に対応することができないという問題点があった。例えば局所排気バルブの固着によりヒュームフードのサッシ面の面風速が所定値よりも過小になると、ヒュームフードで作業中の作業者が有害な生物化学物質に曝される可能性があるが、従来の室圧制御システムではこのような故障に対応することができなかった。
【0008】
また、従来の室圧制御システムでは、1か所の局所排気バルブを全開にするだけでは排気風量が足らない可能性があり、排気風量が不足すると、生物化学物質がヒュームフードから部屋内に漏れ出し、さらに汚染が他の部屋に拡大する可能性があった。この場合、他の局所排気バルブや一般排気バルブも全開にして排気すればよいが、これらのバルブを全開にすると、生物化学物質の部屋内への拡散を助長することになり、部屋内に作業者がいる場合に作業者が生物化学物質に曝される可能性がある。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、局所排気系統の故障を検出して局所排気風量を適切な量に制御することができる室圧制御システムを提供することを目的とする。
また、本発明は、生物化学物質がヒュームフードから部屋内に漏れ出してしまった場合に、人の有無に応じて適切な排気制御を行うことができる室圧制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の室圧制御システムは、対象部屋に設置された複数のヒュームフードと、この複数のヒュームフードの排気風量をそれぞれ局所排気バルブで調節する複数の局所排気風量調節手段と、この複数の局所排気風量調節手段の運転状態を示す運転情報を入力とし、各局所排気風量調節手段の運転状態を判断する運転状態判断手段と、
この運転状態判断手段が、前記複数の局所排気風量調節手段のうち少なくとも1つの局所排気風量調節手段が故障と判断
した場合に、当該局所排気風量調節手段の局所排気バルブを最大開度にして強制排気を行う設定変更手段と
、対象部屋内に在室者が存在するか否かを示す在室情報を入力とし、対象部屋内に在室者が存在するか否かを判断する在室状況判断手段とを備え
、前記設定変更手段は、前記運転状態判断手段が、前記複数の局所排気風量調節手段のうち少なくとも1つの局所排気風量調節手段が故障と判断し、かつ前記在室状況判断手段が、対象部屋内に在室者が存在しないと判断した場合に、全ての前記局所排気風量調節手段の局所排気バルブを最大開度にして強制排気を行うことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の室圧制御システムは、対象部屋に設置された複数のヒュームフードと、この複数のヒュームフードの排気風量をそれぞれ局所排気バルブで調節する複数の局所排気風量調節手段と、対象部屋内に生物化学物質が漏れているか否かを示す漏洩情報を入力とし、対象部屋内に生物化学物質が漏れているか否かを判断する漏洩判断手段と、対象部屋内に在室者が存在するか否かを示す在室情報を入力とし、対象部屋内に在室者が存在するか否かを判断する在室状況判断手段と、
前記漏洩判断手段が、対象部屋内に生物化学物質が漏れたと判断
し、かつ
前記在室状況判断手段が、対象部屋内に在室者が存在しないと判断
した場合に、全ての前記局所排気風量調節手段の局所排気バルブを最大開度にして強制排気を行い、
前記漏洩判断手段が、対象部屋内に生物化学物質が漏れたと判断
し、かつ
前記在室状況判断手段が、対象部屋内に在室者が存在すると判断
した場合に、現在運転中の前記局所排気風量調節手段の局所排気バルブを最大開度にして強制排気を行う設定変更手段とを備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の室圧制御システムの1構成例は、さらに、対象部屋へ吹き出す給気の風量を給気バルブで調節する給気風量調節手段と、対象部屋から吸い出す排気の風量を一般排気バルブで調節する一般排気風量調節手段とを備え、前記給気風量調節手段と前記一般排気風量調節手段とは、前記給気風量調節手段によって調節される給気風量と前記局所排気風量調節手段および前記一般排気風量調節手段によって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブと前記一般排気バルブを制御し、前記設定変更手段は、
前記運転状態判断手段が、前記複数の局所排気風量調節手段のうち少なくとも1つの局所排気風量調節手段が故障と判断
し、かつ
前記在室状況判断手段が、対象部屋内に在室者が存在しないと判断
した場合に、全ての前記局所排気風量調節手段の局所排気バルブと前記一般排気風量調節手段の一般排気バルブとを最大開度にして強制排気を行うことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の室圧制御システムの1構成例は、さらに、対象部屋へ吹き出す給気の風量を給気バルブで調節する給気風量調節手段と、対象部屋から吸い出す排気の風量を一般排気バルブで調節する一般排気風量調節手段とを備え、前記給気風量調節手段と前記一般排気風量調節手段とは、前記給気風量調節手段によって調節される給気風量と前記局所排気風量調節手段および前記一般排気風量調節手段によって調節される排気風量との差が所定の設定値に一致するように、前記給気バルブと前記一般排気バルブを制御し、前記設定変更手段は、
前記漏洩判断手段が、対象部屋内に生物化学物質が漏れたと判断
し、かつ
前記在室状況判断手段が、対象部屋内に在室者が存在しないと判断
した場合に、全ての前記局所排気風量調節手段の局所排気バルブと前記一般排気風量調節手段の一般排気バルブとを最大開度にして強制排気を行うことを特徴とするものである。
また、本発明の室圧制御システムの1構成例は、さらに、対象部屋の外で前記強制排気のモードを表示する表示手段を備えることを特徴とするものである。
また、本発明の室圧制御システムの1構成例は、さらに、人の指示に応じて前記強制排気のモードを切り替える手動強制排気操作手段を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複数の局所排気風量調節手段のうち少なくとも1つの局所排気風量調節手段が故障と判断した場合に、当該局所排気風量調節手段の局所排気バルブを最大開度にして強制排気を行うことにより、局所排気風量を適切な量に制御することができる。その結果、本発明では、ヒュームフードで作業中の作業者が有害な生物化学物質に曝される可能性を低減することができる。
【0015】
また、本発明では、対象部屋内に生物化学物質が漏れたと判断し、かつ対象部屋内に在室者が存在しないと判断した場合に、全ての局所排気風量調節手段の局所排気バルブを最大開度にして強制排気を行い、対象部屋内に生物化学物質が漏れたと判断し、かつ対象部屋内に在室者が存在すると判断した場合に、現在運転中の局所排気風量調節手段の局所排気バルブを最大開度にして強制排気を行うことにより、生物化学物質がヒュームフードから対象部屋内に漏れ出してしまった場合に、人の有無に応じて適切な排気制御を行うことができる。
【0016】
また、本発明では、複数の局所排気風量調節手段のうち少なくとも1つの局所排気風量調節手段が故障と判断し、かつ対象部屋内に在室者が存在しないと判断した場合に、全ての局所排気風量調節手段の局所排気バルブを最大開度にして強制排気を行うことにより、生物化学物質がヒュームフードから対象部屋内に漏れ出し、さらに汚染が他の部屋に拡大する可能性を低減することができる。
【0017】
また、本発明では、複数の局所排気風量調節手段のうち少なくとも1つの局所排気風量調節手段が故障と判断し、かつ対象部屋内に在室者が存在しないと判断した場合に、全ての局所排気風量調節手段の局所排気バルブと一般排気風量調節手段の一般排気バルブとを最大開度にして強制排気を行うことにより、汚染が他の部屋に拡大する可能性を更に低減することができる。
【0018】
また、本発明では、対象部屋内に生物化学物質が漏れたと判断し、かつ対象部屋内に在室者が存在しないと判断した場合に、全ての局所排気風量調節手段の局所排気バルブと一般排気風量調節手段の一般排気バルブとを最大開度にして強制排気を行うことにより、汚染が他の部屋に拡大する可能性を更に低減することができる。
【0019】
また、本発明では、対象部屋の外で強制排気のモードを表示する表示手段を設けることにより、対象部屋の外の人に強制排気のモードを知らせることができる。
【0020】
また、本発明では、手動強制排気操作手段を設けることにより、強制排気のモードを手動で切り替えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[
参考例]
以下、本発明の
参考例について図面を参照して説明する。
図1は本発明の
参考例に係る室圧制御システムの構成を示す図であり、
図10と同様の構成には同一の符号を付してある。本
参考例の室圧制御システムは、部屋100内に設置されたヒュームフード101−1,101−2と、局所排気ダクト102−1,102−2と、給気ダクト103と、一般排気ダクト104と、局所排気バルブEXV1,EXV2と、給気バルブMAVと、一般排気バルブGEXと、コントローラ105−1,105−2,106,107と、通信線108と、ゲートウェイ109と、室圧モニタ110と、部屋100内への生物化学物質の漏れを検出するリークセンサ(細菌センサ)115と、中央監視装置116とから構成される。
【0023】
図2はコントローラ105−1の構成例を示すブロック図、
図3はコントローラ106の構成例を示すブロック図、
図4はコントローラ107の構成例を示すブロック図である。コントローラ105−1は、局所排気バルブEXV1を制御する排気風量制御部200を有する。
【0024】
コントローラ105−2の構成もコントローラ105−1と同様である。コントローラ106は、給気バルブMAVを制御する給気風量制御部201を有する。
コントローラ107は、一般排気バルブGEXを制御する排気風量制御部202と、局所排気系統の運転状態を判断する運転状態判断部203と、局所排気系統の運転状態に応じて強制排気を行う設定変更部204とを有する。
【0025】
局所排気ダクト102−1,102−2と局所排気バルブEXV1,EXV2とコントローラ105−1,105−2とは、局所排気風量調節手段を構成している。給気ダクト103と給気バルブMAVとコントローラ106とは、給気風量調節手段を構成している。一般排気ダクト104と一般排気バルブGEXとコントローラ107とは、一般排気風量調節手段を構成している。室圧モニタ110と中央監視装置116とは、表示手段を構成している。また、室圧モニタ110と中央監視装置116と設定変更部204とは、手動強制排気操作手段を構成している。
【0026】
なお、本
参考例では、運転状態判断部203と設定変更部204とをコントローラ107に設けているが、これに限るものではなく、運転状態判断部203と設定変更部204とを他のコントローラに設けてもよいし、中央監視装置116に設けてもよい。
【0027】
次に、通常時の室圧制御システムの動作について説明する。ここでは、給気ダクト103から吹き出す給気の風量をVmav、一般排気ダクト104で吸い出す排気の風量をVgex、局所排気ダクト102−1,102−2で吸い出す排気の風量をVexv1,Vexv2とする。
【0028】
コントローラ105−1の排気風量制御部200は、ヒュームフード101−1のサッシ開口面積に基づいて、サッシ面の面風速が規定値(通常0.5m/s)となるように風量Vexv1を定め、局所排気ダクト102−1の排気風量がVexv1となるように局所排気バルブEXV1の開度を制御する。同様に、コントローラ105−2の排気風量制御部は、ヒュームフード101−2のサッシ開口面積に基づいて、サッシ面の面風速が規定値となるように風量Vexv2を定め、局所排気ダクト102−2の排気風量がVexv2となるように局所排気バルブEXV2の開度を制御する。なお、ヒュームフード101−1,101−2のサッシ開口面積は、サッシセンサ114−1,114−2が検出するサッシ開度から求めることができるサッシ111−1,111−2の開口部高さと、既知のサッシ幅との乗算により決定することができる。
【0029】
コントローラ107の排気風量制御部202は、総排気風量(Vgex+Vexv1+Vexv2)が一定となるように、サッシ開閉による排気風量Vexv1,Vexv2の変動分だけ、風量Vgexを増減させ、一般排気ダクト104の排気風量がVgexとなるように一般排気バルブGEXの開度を制御する。
コントローラ106の給気風量制御部201は、部屋100の最低換気風量を満足させるよう、少なくとも最低風量を常に吹き出すように風量Vmavを決定し、給気ダクト103の給気風量がVmavとなるように給気バルブMAVの開度を制御する。部屋100の最低換気風量を確保するため、Vmavは最低換気風量以上に設定される。
【0030】
以上のような風量の設定の仕方により、ヒュームフード101−1,101−2が両方とも使用されていないとき(すなわち、サッシ111−1,111−2が全閉のとき)、式(1)が成立する。
Vmav=Vgex+α ・・・(1)
【0031】
定数αは、部屋100から漏れていく風量を決定すると共に、部屋100を正圧にするか負圧にするかを決定するためのオフセット風量である。
次に、ヒュームフード101−1のみ使用されているときには、式(2)が成立する。
Vmav=Vgex+Vexv1+α ・・・(2)
【0032】
また、ヒュームフード101−1,101−2が両方とも使用されているときには、式(3)が成立する。
Vmav=Vgex+Vexv1+Vexv2+α ・・・(3)
【0033】
なお、例えば排気風量Vexv1が最大風量(Vexv1)maxになると、コントローラ107の排気風量制御部202は風量Vgexを減少させて風量バランスをとろうとするが、風量Vgexの減少動作だけで風量バランスをとろうとしても、一般排気バルブGEXの開度が0%になった場合には風量Vgexを更に減らすことはできない。このような場合、コントローラ106の給気風量制御部201は、式(4)が成り立つように風量Vmavを調節する。
Vmav=Vgex+(Vexv1)max+Vexv2+α ・・・(4)
【0034】
次に、局所排気バルブの固着等の故障が発生した場合の動作について説明する。
図5は局所排気バルブの故障時の動作を示すシーケンスである。
コントローラ107の運転状態判断部203は、コントローラ105−1,105−2からヒュームフード101−1,101−2の局所排気系統の運転情報を常時取得する(ステップS100,S101)。運転情報は、サッシ面の面風速の規定値とサッシ開口面積から計算される実際の面風速との偏差、実際の面風速、異常信号などの情報を含む。
【0035】
運転状態判断部203は、例えばヒュームフード101−1の運転情報から、ヒュームフード101−1のサッシ面の面風速が規定値に対して過小であることが判明した場合、ヒュームフード101−1の局所排気系統に故障が発生したと判断する(ステップS102)。
【0036】
設定変更部204は、ヒュームフード101−1の局所排気系統に故障が発生したと判断された場合、コントローラ105−1に対して局所排気バルブEXV1を最大開度にして、局所排気ダクト102−1の排気風量Vexv1を最大風量(Vexv1)maxにするよう指示する(ステップS103)。
この指示に応じて、コントローラ105−1の排気風量制御部200は、局所排気バルブEXV1の開度を最大(100%)にする。また、排気風量制御部200は、故障が発生したことを、ヒュームフードモニタ113−1による表示出力および音声出力によって作業者に通知する。以下、故障が発生した局所排気系統のバルブを最大開度にして強制排気を行うモードを緊急モード1と呼ぶ。
【0037】
緊急モード1においても、コントローラ107からの指示を受けていないコントローラ105−2は、通常時の動作を継続する。
緊急モード1において、コントローラ106の給気風量制御部201は、排気風量Vexv1の増加分だけ給気風量Vmavを増加させる(ステップS104)。
【0038】
排気風量Vexv1が最大風量(Vexv1)maxになると、コントローラ106の給気風量制御部201は給気風量Vmavを増加させて風量バランスをとろうとするが、給気風量Vmavの増加だけで風量バランスをとろうとしても、給気バルブMAVの開度が100%になった場合には給気風量Vmavを更に増やすことはできない。このような場合、コントローラ107の排気風量制御部202は、式(4)が成り立つように排気風量Vgexを調節する(ステップS105)。
【0039】
以上のように、本
参考例では、局所排気系統の運転状態を監視し、局所排気系統に故障が発生した場合には、局所排気風量を適切な量に制御することができる。その結果、本
参考例では、ヒュームフードで作業中の作業者が有害な生物化学物質に曝される可能性を低減することができる。
【0040】
[
第1の実施の形態]
次に、本発明の
第1の実施の形態について説明する。
参考例では、故障が発生した局所排気系統のバルブを最大開度にしたが、局所排気バルブが全く動作しないか、あるいは排気風量が足らない場合には、故障が発生した局所排気系統だけでは対応することができない。そこで、本実施の形態では、部屋に人がいないことを確認した上で、他の排気系統のバルブも最大開度にする。以下、故障が発生した排気系統以外のバルブも最大開度にして強制排気を行うモードを緊急モード2と呼ぶ。
【0041】
図6は本実施の形態のコントローラ107の構成例を示すブロック図である。本実施の形態のコントローラ107は、
参考例で説明した構成に対して、部屋100内に在室者が存在するか否かを判断する在室状況判断部205を加えたものである。室圧制御システムの他の構成は
参考例と同様であるので、
図1〜
図3の符号を用いて説明する。通常時の動作は
参考例と同じである。
【0042】
図7は本実施の形態における局所排気バルブの故障時の動作を示すシーケンスである。コントローラ107の運転状態判断部203は、コントローラ105−1,105−2からヒュームフード101−1,101−2の局所排気系統の運転情報を常時取得する(ステップS200,S201)。
コントローラ107の在室状況判断部205は、在室者が存在するか否かを示す在室情報を人検知センサ112−1,112−2からコントローラ105−1,105−2を介して常時取得する(ステップS202,S203)。
【0043】
運転状態判断部203は、例えばヒュームフード101−1の運転情報から、ヒュームフード101−1のサッシ面の面風速が規定値に対して過小であることが判明した場合、ヒュームフード101−1の局所排気系統に故障が発生したと判断する(ステップS204)。
【0044】
在室状況判断部205は、人検知センサ112−1,112−2の在室情報を確認した結果、人検知センサ112−1,112−2が人の存在を検出していない場合、部屋100内に人がいないと判断する(ステップS205)。なお、本実施の形態では、人検知センサ112−1,112−2を用いているが、既存の入退室管理システムから出力される在室情報を利用して部屋100内に人がいるかどうかを確認するようにしてもよい。入退室管理システムは、作業者が所持している無線タグ等を利用して人の入退室を管理するものである。このような入退室管理システムは周知であるので、詳細な説明は省略する。また、カメラを利用して部屋100内に人がいるかどうかを確認するようにしてもよい。
【0045】
設定変更部204は、ヒュームフード101−1の局所排気系統に故障が発生したと判断され、かつ部屋100内に人がいないと判断された場合、一般排気バルブGEXを最大開度にして、一般排気ダクト104の排気風量Vgexを最大風量(Vgex)maxにする(ステップS206)。
【0046】
また、設定変更部204は、
参考例と同様に、コントローラ105−1に対して局所排気バルブEXV1を最大開度にして、局所排気ダクト102−1の排気風量Vexv1を最大風量(Vexv1)maxにするよう指示する(ステップS207)。この指示に応じて、コントローラ105−1の排気風量制御部200は、局所排気バルブEXV1の開度を最大にする。さらに、設定変更部204は、コントローラ105−2に対して局所排気バルブEXV2を最大開度にして、局所排気ダクト102−2の排気風量Vexv2を最大風量(Vexv2)maxにするよう指示する(ステップS208)。この指示に応じて、コントローラ105−2の排気風量制御部は、局所排気バルブEXV2の開度を最大にする。
【0047】
緊急モード2において、コントローラ106の給気風量制御部201は、式(5)が成り立つように給気風量Vmavを調節する(ステップS209)。
Vmav=(Vgex)max+(Vexv1)max+(Vexv2)max+α
・・・(5)
【0048】
なお、設定変更部204は、給気バルブMAVの開度が100%に到達して、給気風量が最大風量(Vmav)maxに達し、給気風量Vmavを更に増やすことができない場合には、式(6)が成り立つように排気風量Vgexを調節する(ステップS206)。
(Vmav)max=Vgex+(Vexv1)max+(Vexv2)max+α
・・・(6)
【0049】
以上のように、本実施の形態では、局所排気系統に故障が発生し、かつ在室者が存在しない場合に、故障が発生した排気系統以外の他の排気系統のバルブも最大開度にして強制排気を行うようにしたので、生物化学物質がヒュームフードから部屋内に漏れ出し、さらに汚染が他の部屋に拡大する可能性を低減することができる。
【0050】
[
第2の実施の形態]
次に、本発明の
第2の実施の形態について説明する。
図8は本実施の形態のコントローラ107の構成例を示すブロック図である。本実施の形態のコントローラ107は、
第1の実施の形態で説明した構成に対して、部屋100内に生物化学物質が漏れているか否かを判断する漏洩判断部206を加えたものである。室圧制御システムの他の構成は
参考例と同様であるので、
図1〜
図3の符号を用いて説明する。通常時の動作は
参考例と同じである。
【0051】
図9は本実施の形態における生物化学物質漏洩時の動作を示すシーケンスである。コントローラ107の在室状況判断部205は、
第1の実施の形態と同様に、在室者が存在するか否かを示す在室情報を人検知センサ112−1,112−2からコントローラ105−1,105−2を介して常時取得する(ステップS300,S301)。
【0052】
コントローラ107の漏洩判断部206は、生物化学物質が漏れているか否かを示す漏洩情報をリークセンサ115から常時取得する(ステップS302)。そして、漏洩判断部206は、リークセンサ115の漏洩情報を確認した結果、リークセンサ115が生物化学物質を検出している場合、部屋100内に生物化学物質が漏れていると判断する(ステップS303)。なお、本実施の形態では、リークセンサ115を用いているが、部屋100内の作業者が緊急時にヒュームフードモニタ113−1,113−2を操作したことによる漏洩情報をヒュームフードモニタ113−1,113−2から受信するようにしてもよい。また、室外の人が室圧モニタ110に表示された室圧を見て緊急時と判断し、室圧モニタ110を操作したことによる漏洩情報を室圧モニタ110から受信するようにしてもよい。また、中央監視室の係員が部屋100の映像等を見て緊急時と判断し、中央監視装置116を操作したことによる漏洩情報を中央監視装置116から受信するようにしてもよい。
【0053】
在室状況判断部205は、人検知センサ112−1,112−2の在室情報を確認した結果、人検知センサ112−1,112−2が人の存在を検出していない場合、部屋100内に人がいないと判断する(ステップS304)。
【0054】
設定変更部204は、部屋100内に生物化学物質が漏れたと判断され、かつ部屋100内に人がいないと判断された場合、一般排気バルブGEXを最大開度にして、一般排気ダクト104の排気風量Vgexを最大風量(Vgex)maxにする(ステップS305)。
【0055】
また、設定変更部204は、
参考例と同様に、コントローラ105−1に対して局所排気バルブEXV1を最大開度にして、局所排気ダクト102−1の排気風量Vexv1を最大風量(Vexv1)maxにするよう指示する(ステップS306)。この指示に応じて、コントローラ105−1の排気風量制御部200は、局所排気バルブEXV1の開度を最大にする。さらに、設定変更部204は、コントローラ105−2に対して局所排気バルブEXV2を最大開度にして、局所排気ダクト102−2の排気風量Vexv2を最大風量(Vexv2)maxにするよう指示する(ステップS307)。この指示に応じて、コントローラ105−2の排気風量制御部は、局所排気バルブEXV2の開度を最大にする。
【0056】
コントローラ106の給気風量制御部201は、式(5)が成り立つように給気風量Vmavを調節する(ステップS308)。
第1の実施の形態と同様に、設定変更部204は、給気バルブMAVの開度が100%に到達して、給気風量が最大風量(Vmav)maxに達し、給気風量Vmavを更に増やすことができない場合には、式(6)が成り立つように排気風量Vgexを調節する(ステップS305)。
【0057】
こうして、本実施の形態では、部屋100内に生物化学物質が漏れ、かつ在室者が存在しない場合に、緊急モード2の強制排気を行うようにしたので、生物化学物質がヒュームフードから部屋内に漏れ出し、さらに汚染が他の部屋に拡大する可能性を低減することができる。本実施の形態では、部屋100内に生物化学物質が漏れ、かつ在室者が存在する場合には、
参考例で説明した緊急モード1の強制排気を行う。これにより、本実施の形態では、生物化学物質がヒュームフードから部屋100内に漏れ出してしまった場合に、人の有無に応じて適切な排気制御を行うことができる。
【0058】
本実施の形態の緊急モード1では、現在運転中のヒュームフード(サッシが全閉でないヒュームフード)の局所排気バルブを最大開度にする。また、どのヒュームフードから生物化学物質が漏れたかをリークセンサで個別に検出できる場合には、生物化学物質が漏れ出したヒュームフードの局所排気バルブを最大開度にすればよい。
【0059】
なお、
第1、
第2の実施の形態では、緊急モード2において全ての排気系統のバルブを最大開度にしているが、これに限るものではなく、故障した局所排気系統のバルブEXV1と他の局所排気系統のバルブEXV2とを最大開度にしてもよいし、故障した局所排気系統のバルブEXV1と一般排気バルブGEXとを最大開度にしてもよい。
【0060】
また、
参考例および第1、第2の実施の形態において、コントローラ107の設定変更部204は、コントローラ106を通じて室圧モニタ110にどの緊急モードで動作しているかを表示させるようにしてもよい。また、室外の人が室圧モニタ110を操作したことによる切替情報を室圧モニタ110から受信したとき、設定変更部204は、切替情報に応じて緊急モードを切り替えるようにしてもよい。例えば部屋100内に人がいるにも拘わらず、誤って緊急モード2で強制排気をしてしまっているときに、室外の人が室圧モニタ110を操作して緊急モード1に切り替えることができる。また、部屋100内に人がいないにも拘わらず、緊急モード1で強制排気をしているときに、室外の人が室圧モニタ110を操作して緊急モード2に切り替えることができる。
【0061】
同様に、コントローラ107の設定変更部204は、中央監視装置116にどの緊急モードで動作しているかを表示させるようにしてもよい。また、中央監視室の係員が中央監視装置116を操作したことによる切替情報を中央監視装置116から受信したとき、設定変更部204は、切替情報に応じて緊急モードを切り替えるようにしてもよい。
【0062】
参考例および第1、第2の実施の形態で説明した各コントローラ105−1,105−2,106,107は、例えばCPU、記憶装置およびインタフェースを備えたコンピュータとこれらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。各コントローラ105−1,105−2,106,107のCPUは、記憶装置に格納されたプログラムに従って
参考例および第1、第2の実施の形態で説明した処理を実行する。