【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者が検討した結果、低外気温時には結露の量が大量になることで、計装空気を常時供給するという結露対策を施していても、火花点火装置の絶縁不良が生じて着火ミスが発生し、水中燃焼式気化装置の起動時間が長くなってしまうことが判明した。具体的に、本願発明者の検討対象である水中燃焼式気化装置の水中燃焼バーナーは、その燃焼室内に、ほぼ垂直方向に延びるように配設されたスパークロッドと、スパークロッドの下端部を除く中間部を収容するロッド保持管と、を有する火花点火装置を備え、ロッド保持管から下方に突出するスパークロッドの下端に放電電極が設けられている。
【0008】
この構成の水中燃焼バーナーにおいて、ロッド保持管内には、その上端から乾燥した計装空気が常時供給されており、計装空気はロッド保持管の下端開口から外に吐き出されるように構成されている。通常であれば、この計装空気によってスパークロッド及び放電電極の周囲が乾燥するため、絶縁状態が維持されて着火ミスは生じないものの、水中燃焼バーナーが停止している間に、外気温が極めて低いときには、ロッド保持管の外周面に大量の結露が付着する結果、その結露が、重力によって垂直方向に延びるように配設されたロッド保持管を伝ってその下端に移動し、ロッド保持管の下端部に、次第に大量の水が溜まるようになる。このように、ロッド保持管の下端部に大量の水が溜まっている結果、ロッド保持管から下方に突出しているスパークロッドの下端部付近において絶縁不良が生じるようになり、このことが、着火ミスを引き起こしていたのである。
【0009】
このことに関し、例えば特許文献2に記載されているように、水中燃焼バーナーの点火前に、火花点火装置の周囲に空気を流して、これを乾燥させる乾燥期間を設けることが考えられる。このことにより着火ミスは低減するものの、乾燥期間を別途設けることから、水中燃焼式気化装置の起動時間は延びる。
【0010】
そこで、本願発明者は、水中燃焼式気化装置の起動時には、水中燃焼バーナーが設けられるダウンカマーや、それに接続されるスパージパイプ内の水を排出するためのパージ動作が必要であることに着目し、パージ動作のために水中燃焼バーナーを通じてダウンカマー及びスパージパイプに流される空気を、その水中燃焼バーナーの燃焼室内に大量に導入することによって、特に火花点火装置の下端部に溜まる大量の水を、パージ空気によって吹き飛ばすようにして、パージ動作を行いながら火花点火装置の下端部付近を乾燥させ、その上で、水中燃焼バーナーの点火を行うようにした。
【0011】
具体的に、ここに開示する技術は、水槽内に浸漬されたダウンカマーに設けられかつ、ブロワーから供給された空気及び燃料供給源から供給された燃料を燃焼室内で燃焼させて、その燃焼ガスをスパージパイプを介して水中に噴出するよう構成された水中燃焼バーナーと、前記水槽内に浸漬配置された伝熱管束を有しかつ、当該伝熱管束内を通過する低温液化ガスを気化するように構成された熱交換器と、を備えた水中燃焼式気化装置に係る。
【0012】
この水中燃焼式気化装置は、所定電圧が印加されることにより火花放電をして、前記水中燃焼バーナーを点火させる火花点火装置と、前記ブロワーと前記水中燃焼バーナーとの間に介設されかつ、当該水中燃焼バーナーの燃焼室内に供給する燃焼用の1次空気と、前記燃焼室内に供給せずに前記水中燃焼バーナーを素通りさせる非燃焼用の2次空気との流量割合を変更する分配弁と、少なくとも前記火花点火装置及び前記分配弁の制御を行うように構成された制御器と、をさらに備える。
【0013】
そうして、前記水中燃焼バーナーは、前記分配弁を通じて供給された前記1次空気を前記燃焼室内において上から下に向かって流しながら、前記燃焼ガスを下向きに噴出するように構成されており、前記火花点火装置は、前記燃焼室内において、垂直方向に延びるように配設されて、その下端部に放電電極が設けられており、前記水中燃焼バーナーを起動する際には、前記水中燃焼バーナーの点火前に、前記ブロワーの駆動によって、前記水中燃焼バーナー、前記ダウンカマー及び前記スパージパイプを通じて前記水中に空気だけを噴出させるパージ動作を、予め設定された所定時間だけ行い、前記制御器は、前記パージ動作の最中には、前記1次空気の流量が所定の大流量(第1流量)となるように、前記分配弁の開度を調整すると共に、前記パージ動作の終了後に、前記火花点火装置の駆動によって前記水中燃焼バーナーを点火する。
【0014】
ここで、「垂直方向に延びるように配設される」とは、火花点火装置が、垂直方向に配設されること、及び、垂直方向に対し若干傾いて配設されることの双方を含む。より具体的には、火花点火装置に付着した結露が、重力によって下方に移動し得る限度において、火花点火装置を傾けて配設する場合を含む。
【0015】
また、「所定の大流量」とは、詳しくは後述するが、火花点火装置の、特に下端部に付着している水を吹き飛ばして、ここを乾燥させることが可能な程度の流量とすればよく、例えば1次空気の流量が2次空気の流量よりも大きくなる範囲で、適宜設定すればよい。尚、このパージ動作時の1次空気は、その流量が多ければ多いほど着火ミスの低減効果は高くなるため、できるだけ大流量であることが好ましく、最大流量に設定することが最も好ましい。そのように1次空気の流量を大流量に設定するために、制御器は、パージ動作を開始する際に、分配弁の1次側の開度を増大する場合がある。
【0016】
この構成によると、火花点火装置は燃焼室内において垂直方向に延びるように配設されているため、前述したように、例えば外気温が極めて低いときのように火花点火装置に大量の結露が付着した場合は、その結露は、重力によって火花点火装置を伝ってその長手方向の下方に移動する。その結果、放電電極が配置されている火花点火装置の下端部に、大量の水が溜まるようになる。
【0017】
一方、水中燃焼バーナーを起動する際には、その点火前に、ブロワーの駆動によるパージ動作を予め設定された所定時間だけ行う。これは、水中燃焼式気化装置に特有の、起動時に必要となる動作であり、ブロワーから送られてきた空気を水中燃焼バーナーからダウンカマー及びスパージパイプを通じて水中に噴出させることによって、ダウンカマー及びスパージパイプ内の水を排出する。
【0018】
このパージ動作の最中に、制御器は、水中燃焼バーナーの燃焼室に供給される1次空気の流量が所定の大流量となるように、分配弁の開度を調整する。このことにより、水中燃焼バーナーの燃焼室内には、パージ用の、比較的大流量の空気が、上から下向きに流れるようになる。前述のように火花点火装置に付着している水分は、火花点火装置が燃焼室内において垂直方向に延びるように配設されているため、重力によって下向きに流れやすく、その結果、火花点火装置の下部には、その上部よりも大量の水が付着している。燃焼室内に導入した空気は、燃焼室内において垂直方向に延びるように配設された火花点火装置に沿うように流れる結果、火花点火装置に付着している結露を下方に吹き飛ばす。火花点火装置の下端部に溜まっている水は特に、下向きに、効果的に吹き飛ばされる。こうして、火花点火装置の、放電電極が設けられている下端部の近傍の、絶縁不良を回復させることが可能になる。そして、パージ動作が終了した後に火花点火装置を駆動させることで、火花点火装置の上側に付着している結露が、重力によって下向きに流れてその下端部に再び集まる前に、水中燃焼バーナーを点火することが可能になり、その結果として、水中燃焼バーナーを確実に点火することができる。従って、制御器は、火花点火装置の駆動による水中燃焼バーナーの点火を、パージ動作の完了後、直ちに行うことが好ましい。より正確には、火花点火装置の駆動を、燃焼室内への大流量の1次空気の供給を停止した直後に行うことが好ましい。尚、ここでいう「直後」は、時間を空けずに直ちに行うことの他にも、多少の時間(例えば動作の切り替えに必要不可避な程度の短時間)を空けることは含まれる。つまり、ここでいう「直後」とは、意図的に長い時間間隔を設けることなく、大流量の1次空気の供給停止後に、火花点火装置の駆動を行うこと意味である。
【0019】
ここで、水中燃焼式気化装置では、水槽内の撹拌のために、ブロワーから水中燃焼バーナーに供給する空気の総量を一定にしつつ、燃焼室内に供給する1次空気の流量を、水中燃焼バーナーに供給する燃料量に対応するように調整して燃焼状態を良好にするために分配弁を用いている。従来においては、パージ動作の最中には1次空気の流量を最小に設定していた。これは、パージ動作終了後の水中燃焼バーナーの点火の際に、安全上、燃料流量を最小とする必要があり、この最小燃料流量に合わせて1次空気の流量も最小にするためである。これに対し、前記の構成では、パージ動作の最中には、1次空気の流量を大流量にすることが、従来と大きく相違する。
【0020】
この制御は、前述の通り、従来の水中燃焼式気化装置においても実行されていたパージ動作の最中に行われるため、火花点火装置の乾燥のために別途、乾燥時間を設ける必要がない。また、パージ動作は、水中燃焼バーナーの点火の直前に実行される動作であり、火花点火装置の乾燥動作を兼用するパージ動作の完了後に、水中燃焼バーナーの点火を行うことは、そのパージ動作の完了後でかつ、付着している水分が下方に流れて落ちて火花点火装置の絶縁状態が再び悪化してしまう前に、水中燃焼バーナーを確実に点火することを実現にする。従って、パージ動作中に火花点火装置の乾燥を行うことは、水中燃焼バーナーの点火を前提としたときに効率的でもある。そうして、別途の乾燥時間を不要にすることと、火花点火装置の着火ミスが回避乃至防止されて水中燃焼バーナーが早期にかつ確実に点火することと、が組み合わさって、水中燃焼式気化装置の起動時間が、従来よりも短くなる。
【0021】
前記制御器は、前記パージ動作の終了後に、前記1次空気の流量が前記所定の大流量(第1流量)よりも低い第2流量に低下するように前記分配弁の開度を調整した上で、前記火花点火装置の駆動によって前記水中燃焼バーナーを点火する、としてもよい。
【0022】
こうすることで、火花点火装置の乾燥後でもあるパージ動作の終了後には、1次空気の流量を第2流量に低下させることによって、種火がより安定し、水中燃焼バーナーを確実にかつ早期に点火することが可能になる。その結果、水中燃焼式気化装置の起動時間をより一層短縮する上で有利になる。