(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718181
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】車両用シートのヘッドレスト
(51)【国際特許分類】
B60N 2/48 20060101AFI20150423BHJP
A47C 7/38 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
B60N2/48
A47C7/38
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-149253(P2011-149253)
(22)【出願日】2011年7月5日
(65)【公開番号】特開2013-14255(P2013-14255A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2014年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000133098
【氏名又は名称】株式会社タチエス
(74)【代理人】
【識別番号】100141221
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 和明
(74)【代理人】
【識別番号】100091764
【弁理士】
【氏名又は名称】窪谷 剛至
(74)【代理人】
【識別番号】100103366
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 礼至
(72)【発明者】
【氏名】田畑 毅
【審査官】
宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−034504(JP,A)
【文献】
特開2005−034502(JP,A)
【文献】
特開2007−167378(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00 − 2/72
A47C 7/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋体として成る表皮内にステーを部分的に挿入配置するとともに、前記表皮内に注入された発泡液が硬化して前記表皮と一体発泡してパッド体となる車両シートのヘッドレストにおいて、
前記表皮が、非通気性フィルムを裏面に一体に有した複数の表皮ピースの縫合連結による袋体として成り、
前記ステーが、シートバックの頂部に装着される左右一対の直線状軸部を有し、前記表皮内に挿入配置されるその上端部に、前方に折曲された側面略く字形状の折曲角部が設けられ、
前記ステーの折曲角部との外方側近傍位置で、ステーと表皮との間における幅狭な箇所には、前記ヘッドレストの左右方向に延びる表皮ピース間の縫合部を整列させて、該縫合部より発泡時の炭酸ガスを外部に放出することを特徴とする車両用シートのヘッドレスト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのヘッドレスト、詳しくは表皮とパッド体を一体発泡成形したヘッドレストに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種、一体発泡成形したヘッドレストとしては、一例として、特開2005−304943号公報に示すものがある。
かかるヘッドレストは、袋体として成る表皮(袋状の表皮)と、この表皮内に注入された発泡液、例えば、発泡性ウレタンが硬化してなるパッド体と、パッド体内に部分的に挿入配置されたステーから成り、当該ステーの両端が直線状軸部として外部下方に延出してシートバックの頂部に装着可能となっている。
通常、このヘッドレストは、袋状の表皮内に、発泡液を直接注入することにより、一体発泡成形品として製造されるが、発泡液である発泡ウレタンは、主剤と硬化剤との化学反応により炭酸ガスが発生することによる炭酸ガスの気圧によりウレタンが膨らむので、炭酸ガスを外部に放出する必要がある。特に一体発泡成形品としてなるヘッドレストのステーと表皮との間に幅狭な箇所があると、発泡液は幅広な箇所に比較して流れ難くなり、発泡液から発生される炭酸ガスが発泡液に先行して幅狭な箇所に溜まりやすくなるため、炭酸ガスを確実に外部に放出しないと、幅狭な箇所への発泡液の充填が十分に行えなくなる。
その為、公知の構成においては、かかる幅狭な箇所のステーにガス抜き孔を設け、このステーのガス抜き孔から炭酸ガスを外部に放出する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−304943号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この様に、かかるヘッドレストでは、ステーにガス抜き孔を設ける構成であるため、ステー自身の剛性低下を招くおそれを否定できず、また、ステーにガス抜き孔を穿設する必要から、孔径が比較的大きくなりやすく、表皮内に発泡液を加圧注入する際、発泡液がステーのガス抜き孔から過剰に漏出するおそれがある。
【0005】
また、このヘッドレストでは、ステーと表皮との間の幅狭な箇所にも、炭酸ガスがとどまることなく発泡液の充填ができるため、ステーと表皮との間隔に制限を受けることなく、ヘッドレストの外形デザインの多様化が期待できるが、前突時等に後席着座者からの荷重を受ける個所をパッド厚の薄い個所とすると、後席着座者に過剰な底付き感を与えるおそれがある。つまり、ヘッドレストにおける外形デザインの多様化と安全性能との両立が容易に図れない。
【0006】
本発明は、構成の複雑化を伴うことなく、またステーの剛性低下を伴うことなく、ヘッドレストにおける外形デザインの多様化と安全性能との両立をはかる車両用シートのヘッドレストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るヘッドレストは、袋体として成る表皮内にステーを部分的に挿入配置するとともに、前記表皮内に注入された発泡液が硬化して前記表皮と一体発泡してパッド体となる車両シートのヘッドレストにおいて、
前記表皮が、非通気性フィルムを裏面に一体に有した複数の表皮ピースの縫合連結による袋体として成り、
前記ステーが、シートバックの頂部に装着される左右一対の直線状軸部を有し、前記表皮内に挿入配置されるその上端部に、前方に折曲された側面略く字形状の折曲角部が設けられ、
前記ステーの折曲角部との外方側近傍位置
で、ステーと表皮との間における幅狭な箇所には、前記ヘッドレストの左右方向に延びる表皮ピース間の縫合部を整列させ
て、該縫合部より発泡時の炭酸ガスを外部に放出することを特徴とする。
【0008】
このヘッドレストでは、ステーの折曲角部と表皮ピースの縫合部とが整列され、その縫合部の針穴から発泡時の炭酸ガスが外部に放出されるため、幅狭な箇所への発泡液の充填が炭酸ガスに妨げられることなく行える。よって、パッド体の肉薄部分を含む一体発泡成形品、例えば、ヘッドレストの成形が確実に可能となるため、外形デザインの多様化が図られる。
【0009】
また、表皮ピース間の縫合部がステーの折曲角部にその外方側近傍位置
で、ステーと表皮との間における幅狭な箇所で整列されているため、かかる縫合部の縫い代がステーの折曲角部方向に延びることで、この縫い代が緩衝体としての機能を有することとなる。つまり、パッド体の肉薄部分であっても、縫い代によって後席着座者に対する衝撃が緩和されるため、後席着座者への過剰な底付き感の付与が抑制でき、安全性能が向上される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、構成の複雑化を図ることなく、また、ステーの剛性低下を回避して、ヘッドレストの外形デザインの多様化と安全性能との両立を図ることができる車両用シートのヘッドレストが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明にかかるヘッドレストの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1に示すヘッドレストのA−A線断面図である。
【
図3】
図2に示すヘッドレストの要部拡大図である。
【
図4】
図1に示すヘッドレストの後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ本発明に係るヘッドレストの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1,2に示す様に、一体発泡成形品としてのヘッドレストHは、袋体として成る表皮1と、この表皮1内に注入された発泡液、例えば、発泡性ウレタンが硬化してなるパッド体2と、表皮1内に部分的に挿入配置されたステー3とからなる。
【0014】
このヘッドレストHは、格納状態、すなわち最下位置の状態でシートバック(図示せず)の頂部に当接する略水平で扁平な上部H1と、格納状態でシートバックの前面に重なる様に前面の傾斜と略同じ傾斜で上部H1から斜め下方に向かって延在する扁平な前側垂下部H2とを有している。
【0015】
そして、
図2に加えて
図3に示す様に、ヘッドレストHの表皮1は、非通気性フィルム4を裏面1bに一体に有する複数の表皮ピース1a、1a・・の縫合連結による袋体として形成されている。そのため、表皮1内に注入した発泡液は外部に漏出することなく、表皮1内に充填できる。
【0016】
表皮1内に部分的に挿入配置されるステー3は、シートバックの頂部に装着される左右一対の直線状軸部3cを有する、正面略逆U形状のパイプ材からなり、この直線状軸部の上端から、側面略く字形状の折曲角部3dを介して、表皮1内に配置されるヘッドレストHの形状に応じた折曲部3aが前方かつ下方に延びて形成されている。
【0017】
図
2、3、4に示す様に、このステー3の折曲角部3dとの外方側近傍位置
で、ステーと表皮との間における他の箇所に対して幅狭な箇所には、ヘッドレストHの左右方向に延びる表皮ピース1a、1a間の縫合部5を整列させるべく、表皮ピース1a、1aが縫合されている。
【0018】
かかるヘッドレストHでは、ステー3bの折曲角部3dと表皮ピース1a、1aの縫合部5とがステー3の折曲角部3dの外方側近傍位置
で、ステーと表皮との間における幅狭な箇所で整列するため、このステー3の折曲角部3dと表皮ピース1a、1aの縫合部5との間に溜まる発泡時の炭酸ガスは、注入圧力のもとでその縫合部5の針穴から外部に放出(
図3矢印方向)される。そのため、ステー3の折曲角部3dと表皮ピース1a、1aの縫合部5との間が幅狭であっても、当該箇所への発泡液の充填が炭酸ガスに妨げられることなく容易かつ十分に行える。
よって、肉薄部分を含むヘッドレストHであっても、その成形が確実に可能となり、外形デザインの多様化が十分に図られる。
【0019】
表皮ピース1a、1a間の縫合部5は、ステー3の折曲角部3dにその外方側近傍位置
で、ステーと表皮との間における幅狭な箇所で整列されているため、かかる縫合部5の縫い代がステー3の折曲角部3d方向に延びることで、この縫い代がその後方からかかる荷重に対しての緩衝体としての機能を有することとなる。
つまり、パッド体2の肉薄部分であっても、縫い代によって後席着座者に対する衝撃が緩和されるため、後席着座者への過剰な底付き感の付与が抑制でき、安全性能が向上される。
【符号の説明】
【0020】
Hはヘッドレスト、1は表皮、2はパッド体、3はステー、5は縫合部