(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1または2に記載のバーブ付き縫合糸において、前記バーブが、切り口の長さ、前記縫合糸の断面方向に測定された切り口の深さ、前記細長い本体の周囲から測定された切り口角度、および、隣接する切り口間の距離の内の少なくとも一つによって、規定される、バーブ付き縫合糸。
請求項3に記載のバーブ付き縫合糸において、バーブを規定する前記切り口が実質的に直線状の切り口であり、その結果、それぞれのバーブが、前記細長い本体の前記周囲に対して測定された、前記の実質的に直線状の切り口の角度に対応した、単一の切り口角度を持つ、バーブ付き縫合糸。
請求項6に記載のバーブ付き縫合糸において、前記生体吸収性材料が、ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトンおよびそれらのコポリマーの内の1以上を含む、バーブ付き縫合糸。
請求項6に記載のバーブ付き縫合糸において、前記生体吸収性材料が、約67%のグリコリドおよび約33%のトリメチレンカーボネートからなるコポリマーを含む、バーブ付き縫合糸。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の方法に従って使用するためのアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の斜視図である。
【
図2】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図3】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図4】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図5】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図6】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図7】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図8】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図9】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図10】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図11】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の端面図である。
【
図12】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図13】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図14】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図15】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図16】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図17】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図18】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図19】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図20】本発明によるアンカーを備えたバーブ付き縫合糸の実施例の正面図である。
【
図21】縫合糸をアッタチメントに取り付ける従来の手段の正面図である。
【
図22】本発明に従って縫合糸をアンカーに取り付ける手段の正面図である。
【
図23】本発明に従って縫合糸をアンカーに取り付ける手段の正面図である。
【
図24】本発明によるループ状の端部を有する縫合糸の正面図である。
【
図25】本発明によるループ状の端部を有する縫合糸の正面図である。
【
図26】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図27】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図28】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図29】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図30】組織内の表面の創傷を反転させる本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図31】組織内の表面の創傷を反転させる本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図32】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図33】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図34】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図35】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図36】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図37】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図38A】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図38B】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図39A】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図39B】組織内で開いた創傷の2つの面を結合する本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図40】組織を位置決めする従来の方法の平面図である。
【
図41】組織を位置決めする従来の方法の平面図である。
【
図42】組織内に配置されたバーブ付き縫合糸に対して組織を位置決めする本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図43】組織内に配置されたバーブ付き縫合糸に対して組織を位置決めする本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図44】組織内に配置されたバーブ付き縫合糸に対して組織を位置決めする本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図45】組織内に配置されたバーブ付き縫合糸に対して組織を位置決めする本発明による方法の実施例の平面図である。
【
図46】本発明による方法の実施例の断面図である。
【
図47】本発明による方法の実施例の断面図である。
【
図48】本発明による方法の実施例の断面図である。
【
図49】組織内に配置されたバーブ付き縫合糸に沿って組織を位置決めする本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図50】組織内に配置されたバーブ付き縫合糸に沿って組織を位置決めする本発明による方法の他の実施例の平面図である。
【
図51A】切断された腱の2つの端部を結合する本発明による実施例の平面図である。
【
図51B】切断された腱の2つの端部を結合する本発明による実施例の平面図である。
【
図51C】切断された腱の2つの端部を結合する本発明による実施例の平面図である。
【
図52】吻合処置を実施する本発明による実施例の平面図である。
【
図53】吻合処置を実施する本発明による実施例の平面図である。
【
図54】吻合処置を実施する本発明による実施例の平面図である。
【
図55】吻合処置を実施する本発明による実施例の平面図である。
【
図56】バーブの構造に関する本発明による実施例の詳細図である。
【
図57】組織内で開いた創傷の2つの面を結合するために、本発明に従って実施された実施例の平面図である。
【
図58】組織内で開いた創傷の2つの面を結合するために、従来の方法に従って実施された実施例の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用する「創傷」という用語は、ヒトの皮膚または他の身体組織内の外科的切開、切り傷、裂傷、切断された組織もしくは偶発的な創傷、あるいは縫合、ステープリング、または組織を接続する別の装置を必要とする他の状態を意味している。
【0020】
本明細書で使用する「組織」という用語には、皮膚、骨、筋肉、器官などの組織、および腱、靱帯、筋肉などの他の軟部組織が含まれる。
【0021】
他のいくつかの用語は、本明細書において便宜上使用しているにすぎず、本発明を限定するものとして理解すべきではない。例えば、「上方」、「下方」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」「内向き」、「外向き」、「上向き」、「下向き」などの単語は、各図に示す構成を記述しているにすぎない。構成要素を任意の方向に向けることが可能であり、したがって別段の指定がない限り、用語はそうした変形形態を包含するものと理解すべきである。
【0022】
本発明の方法による使用に適したバーブ付き縫合糸および配置方法は、米国特許第5342376号(名称“Inserting Device for a Barbed Tissue Connector”)、米国特許第5931855号(名称“Surgical Methods Using One−Way Suture”)、米国特許第6241747号(名称“Barbed Bodily Tissue Connector”)、米国特許第6599310号(名称“Suture Method”)、米国特許出願第10/065256号(名称“Suture Method”)、米国特許出願第10/065278号(名称“Barbed Suture in Combination with Surgical Needle”)、米国特許出願第10/065279号(名称“Barb Configurations for Barbed Sutures”)、および米国特許出願第10/065280号(名称“Barbed Sutures)に記載されている。米国特許第5342376号、米国特許第5931855号、米国特許第6241747号、米国特許第6599310号、米国特許出願第10/065256号、米国特許出願第10/065278号、米国特許出願第10/065279号、および米国特許出願第10/065280号の内容を、参照によって本明細書に援用する。
【0023】
次に図面を参照するが、複数の図面を通じて、図中の類似の番号は対応する要素または類似の要素を示しており、
図1は、表面のまわりから延びるバーブ94を備えた縫合糸本体92、尖端96、および他端にアンカー98を有する単方向式バーブ付き縫合糸90の透視図である。アンカー98は、縫合糸本体92の長手方向の軸線に対して実質的に垂直な面内に縫合糸本体92の半径方向外側に延びるバーを含み、それによって一般にバーブ付き縫合糸90に「T」字形が与えられる。
図2〜11の(縫合糸本体が紙面に対して垂直であり且つ紙面内にある)端面図における実施例に示すように、他の多くの形および構成のアンカーが実現可能である。
図2〜11に示したアンカーはそれぞれ、縫合糸本体92から半径方向外側にバーブ94よりも長く延びる突出部分を有している。
図2〜5に示すバーブ付き縫合糸100、102、104、106のアンカー98はそれぞれ、縫合糸の端部に、一般には表面のまわりに等間隔に配置された1つまたは複数の突出部分108を有している。
図6〜8に示すバーブ付き縫合糸110、112、114の実施例は、縫合糸本体92の端部に、表面の一部のみから延びる複数の突出部分108を含むアンカー98を有している。
図9〜11は、各突出部分122〜123、124〜126、127〜130の長さがそれぞれ異なるバーブ付き縫合糸116、118、120の実施例を示している。
【0024】
図12〜20は、一端におけるバーブ付き縫合糸の他の実施例を示している。
図12は、縫合糸の他端に向かって凹形になった突出部分136を有するアンカー134を有するバーブ付き縫合糸132を示している。
図13は、凹形で縫合糸の尖端から離れていく突出部分142を有するアンカー140を備えたバーブ付き縫合糸138を示している。
図14は、バーから縫合糸の他端に向かって延びる複数のセグメント148をさらに含む、
図1に示したようなアンカー146を備えたバーブ付き縫合糸144を示している。
図15は、半球形のアンカー152を有するバーブ付き縫合糸150を示している。
図16は、コーンフラワーに似たアンカー156を有するバーブ付き縫合糸154を示している。
図17は、本体92のループによって形成されるアンカー160であって、それ自体が交差してクリップを形成し、そのクリップの間に組織を受け入れることができるアンカー160を有するバーブ付き縫合糸158を示している。
図18は、縫合糸本体92からなる鉤(フック)によって形成されたアンカー164を有するバーブ付き縫合糸162を示している。
図19は、「M」字に似た、縫合糸本体92が「M」字の中央の脚から延びるアンカーを有するバーブ付き縫合糸166を示している。
図20は、反対向きのバーブ94より長く、縫合糸170の他端に向かって延びる単一のバーブ172を有するバーブ付き縫合糸170を示している。
図12〜20の様々なアンカーの設計によって示されるように、多くのアンカーの設計をバーブ付き縫合糸と共に、本発明の範囲内で使用することが可能である。
【0025】
図1〜20に示したアンカーは、バーブ付き縫合糸本体92と一体成形することが可能であり、あるいは別法として、縫合糸の端部に取り付けることも可能である。
図21〜23は、アンカーをバーブ付き縫合糸に取り付ける方法を示している。
図21は、
図20のアンカー172を示したものである。アンカー172の端部は、軸線方向の穴178を有している。穴178の内側には歯176が設けられ、内部へ傾斜している。縫合糸本体92を穴178に挿入し、アンカー172の端部を縫合糸本体92のまわりでクリンプ(圧着)させる。
図22は、縫合糸本体92の端部に間隔のあいた複数のリング182を含むアンカー172を示している。縫合糸本体92の端部を、リング182を通して挿入する。縫合糸本体92には、リング182と向かい合い、リング182とかみ合うことによって縫合糸本体92を適所に固定するバーブ184が設けられている。
図23は、例えば接着剤や熱によって得られる、アンカー188とバーブ付き縫合糸本体92の間の連結部186を示している。
【0026】
図24は、一端にループ192を有する縫合糸190を示している。
図25を参照すると、縫合糸190は、縫合糸190を組織194、次いでループ192を通過させることによって組織194内に配置される。組織194は、縫合糸190およびループ192によって捕捉され、それによって縫合糸190が固定される。
【0027】
本発明によるアンカーは、スタンピング、穴あけ、射出成形またはレーザー切断システム、または当業者によって選択される他の方法によって形成することができる。アンカーは、生体吸収性材料、または当業者によって選択される材料で製造することができる。
【0028】
様々な生体吸収性ポリマーとして、それだけには限定されるものではないが、ポリジオキサノン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトンおよびそれらのコポリマーが含まれる。市販されている例には、ポリジオキサノン(PDS II(外科用縫合糸を販売するEthiconが使用する商標名)として販売されている)、約67%のグリコリドおよび約33%のトリメチレンカーボネートからなるコポリマー(MAXON(登録商標、外科用縫合糸用にAmerican Cyanamidに対して登録されている商標)として販売されている)、ならびに約75%のグリコリドおよび約25%のカプロラクトンからなるコポリマー(MONOCRYL(登録商標、縫合糸および縫合針用にJohnson & Johnsonに対して登録されている商標)として販売されている)がある。そうした生体吸収性材から製造されたバーブ付き縫合糸は、広い範囲の用途において有用である。
【0029】
さらに、アンカーを非吸収性材料から形成することが可能であり、それはポリマーであってもよい。そうしたポリマーとして、それだけに限定されるものではないが、ポリプロピレン、ポリアミド(ナイロンとしても知られている)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレートなど)、ポリテトラフルオロエチレン(GoreによってGORTEX(登録商標)として販売されている延伸ポリテトラフルオロエチレンなど)、ポリエーテルエステル(ジメチルテレフタレート、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、エステル単位を有するポリマー(ポリグリコリドなど)、および1,4−ブタンジオールの縮合重合であり、Tycoの所有企業であるDavis & GeckおよびU.S.Surgicalによって、NOVAFIL(登録商標、外科用縫合糸用にAmerican Cyanamidに対して登録された商標)という名称で販売されているポリブテステルなど)、またはポリウレタンが含まれる。あるいは、非吸収性材料は金属(鋼など)、合金、天然繊維(例えば絹、綿など)などでもよい。
【0030】
本明細書で使用する創傷という用語は、ヒトの皮膚または他の身体組織内の外科的切開、切り傷、裂傷、切断された組織もしくは偶発的な創傷、あるいは縫合、ステープリング、または組織を接続する別の装置を必要とする他の状態を意味している。
【0031】
図26〜39Bは、本発明の複数の実施例に従って、創傷または切り離された組織の面を寄せるために組織内に縫合糸を配置する様々な方法を示している。縫合糸の配置方法には、1つまたは複数の終端のJ縫合(J−stitch)、S縫合(S−stitch)などが含まれる。終端のJ縫合、S縫合などは、縫合糸の端部の一部が縫合糸の隣接部分に対して異なる方向に延びる縫合糸の配置方法を含む。縫合糸端部の相対方向は、例えば縫合糸の隣接部分の予測される経路から少なくとも約30度傾けることができる。本明細書では便宜上、J縫合およびS縫合について言及するが、縫合糸の配置はJ縫合またはS縫合と異なっていてもよく、それでも本発明の範囲内となり得ることが理解される。本発明の方法による縫合糸の配置を、以下に論じる針または挿入装置によって実施することができる。縫合糸の鋭い尖端の操作に加えて、またはその代わりに組織を操作することによって、そうしたパターンによる配置を容易にすることができる。本明細書に記述および図示する本発明に従って、組織を縫合糸に沿って手でまとめ、前進させることができる。
【0032】
本明細書では、縫合糸の尖端に言及することがある。縫合糸の尖端は、まっすぐでも曲がっていてもよい。一実施例では、縫合糸の尖端を縫合糸本体の両端に固定した外科用縫合針として、本体が2つの針のシャンク端部の間に延びるようにすることができる。針はステンレス鋼や他の外科用等級の合金で構成されることが好ましい。接着剤、クリンピング、スエージングなどによって針を縫合糸本体に固定すること、あるいは接合部を熱収縮チューブによって形成することができる。強く引っ張ること、もしくは引くこと、あるいは切断することによって針を縫合糸本体から取り外せるように、取り外し可能な結合を用いることもできる。針の長さは、針が完全に取り外され、縫合糸本体を組織内の所望の位置に残すように、修復中の組織の種類に都合がよいように選択される。
【0033】
図26では、バーブ94を有する2つの双方向式バーブ付き縫合糸254、256を用いて、組織252の創傷250の面が寄せられている。図面全体を通じて、実線の縫合糸は見える縫合糸を示し、破線の縫合糸は組織に埋め込まれた縫合糸を示し、点線の縫合糸は、縫合糸が埋め込まれる別の位置を示している。第1の縫合糸254は、終端のJ縫合260、262を用いて2つの端部を組織内に配置する縫合方法を用いて位置決めされている。第2の縫合糸256は、終端のS縫合264、266を用いて2つの端部を組織内に配置する縫合方法を用いて組織内に位置決めされている。J縫合260、262およびS縫合264、266は、他の縫合糸の方向、すなわち「内側」を向いているように示してあるが、当業者による用途および選択に応じて、別の位置260a、262a、264a、266aで外側に向けることも可能である。J縫合の配置を示す実施例として、Aに沿って並べられた第1の縫合糸254のJ縫合262の端部が、縫合糸の隣接部分の見込まれる経路254Bから角度θのところに位置決めされ、約90度になるように示してある。S縫合の配置を示す実施例として、Cに沿って並べられた第2の縫合糸256のS縫合266の端部が、縫合糸256の隣接部分の見込まれる経路Dから角度αのところに位置決めされ、約45度になるように示してある。J縫合の角度θおよびS縫合の角度αは、示したものより大きくても小さくてもよく、それでも縫合は本発明によるものと考えられる。
【0034】
図27は、創傷250の面を寄せる、単方向式バーブ付き縫合糸270、272を示している。縫合糸270、272はそれぞれ、アンカー274、276を有し、反対の端部において終端のJ縫合278またはS縫合280で終わる方法を用いて組織252内に配置されている。別のJ縫合またはS縫合の位置278a、280aを用いることも可能である。各アンカーは、小さい切り口を設けることによって第1の縫合糸270のアンカー274のように組織252に埋め込むことも、第2の縫合糸272のアンカー276のように組織の上に存在させることもできる。縫合糸270、272は、アンカー274、276と反対側の縫合糸の先端の針など、鋭い尖端を用いて配置することができる。アンカー274、276を概略的に示しているが、先に論じたように、適宜、様々なアンカーの利用が可能であることが理解される。
【0035】
便宜上、本明細書に記述する残りの実施例では、主にJ縫合について示す。しかし、本明細書に示す、針を用いて配置される縫合糸を有する実施例すべてにおいて、図示された任意のJ縫合をS縫合で置き換えることが可能であることを理解すべきである。組織を縫合糸本体に沿ってまとめ、前進させる1つの方法では、例えばJ縫合を完成させる前に、縫合糸の鋭い尖端が組織から出る。次いで組織を縫合糸本体に沿ってまとめ、前進させ、次いで縫合糸の尖端が組織に入り、J縫合を完成させる。
【0036】
図28および
図29はそれぞれ、創傷250を閉じるために、双方向式バーブ付き縫合糸254および単方向式縫合糸270を用いた、アルファ形の縫合パターンを用いた縫合方法を示している。
図29の双方向式バーブ付き縫合糸254を用いた縫合方法は各端部にJ縫合を有し、J縫合は、下向き284、286、上向き284a、286a、またはそれらの組合せとすることができる。
図29の単方向の縫合糸を用いた縫合方法は、その先端に示すJ縫合を有し、J縫合は下向き288でも上向き288aでもよい。巾着縫合は、虫垂切除術などにおける切断部を修復するために用いられる外科的縫合方法であり、その場合、残りの組織を反転させることが望ましい。
図30および
図31に示すように、それぞれ双方向式バーブ付き縫合糸254または単方向の縫合糸270を用いた本発明の方法に従って、巾着縫合を使用することができる。
図28についての記述が
図30に当てはまり、
図29についての記述が
図31に当てはまる。
【0037】
図32および
図33はそれぞれ、双方向式バーブ付き縫合糸254、およびアンカー274を有する単方向式バーブ付き縫合糸270を用いて創傷250の面を寄せるために、ジグザグ・パターンを用いる縫合方法を示している。先に
図26に示し、また
図32にも示すように、J縫合262における縫合糸254の終端の経路Aは、縫合糸の隣接部分の予測される縫合経路Bから傾いている。図示したJ縫合の角度は約135度である。角度は様々でよく、それでもJ縫合とみなせることが理解される。
【0038】
図34および
図35はそれぞれ、組織252内に正弦曲線パターンで配置された双方向式バーブ付き縫合糸254、およびアンカー274を有する単方向式バーブ付き縫合糸270を用いて創傷の面を寄せるための縫合方法を示している。
【0039】
図36および
図37はそれぞれ、組織252内にらせんパターンで配置された双方向式バーブ付き縫合糸254、およびアンカー274を有する単方向式バーブ付き縫合糸270を示している。
【0040】
図32、
図34および
図36の双方向式縫合糸254については、縫合は創傷の端部間の中間点から始まり、双方向に進む。
図32および
図34のジグザグ・パターンおよびらせんパターンではそれぞれ、バーブ94が方向を変える縫合糸254の中央部を創傷の一端に配置し、縫合糸の両端が、互いに鏡像となる別々のパターンとして創傷に沿って同じ方向に進むようにすることも可能である。その場合、縫合糸の両端は、創傷の同じ端部にJ縫合またはS方向を有することができる。
図32、
図34および
図36のJ縫合は、内向き260、262、外向き260a、262a、またはそれらの組合せとすることができる。
図33、
図35および
図37のJ縫合は、内向き278または外向き278aとすることができる。さらに、
図33および
図35に示した縫合糸270は、鏡像パターンとして創傷の端部まで折り返し、先端をアンカー274の近くに配置することが可能であり、またその位置にJ縫合またはS縫合を有することができる。
【0041】
図33、
図35および
図37のアンカー274は、組織252の表面に接触しているように示してある。本発明による他の方法により、アンカー274を、
図38Aおよび
図38Bに示すように組織の表面の下に配置することも可能である。
【0042】
図38Aに示すように、縫合糸270の鋭い尖端、例えば針280は、単方向式バーブ付き縫合糸270の先端にあり、創傷250の表面288に挿入される。縫合糸270を針280によって組織を通して引くと、アンカー274が創傷の表面288に接するようになる。縫合糸を引いて創傷を寄せると、アンカー274は組織252の中で抵抗に遭うまで移動するようになる。組織252は一般に、組織の表面に平行な層を含んでいる。アンカー274の形に応じて、アンカー274は層の間を創傷250の表面288を通り過ぎて移動し、隣接する組織にはまり込み、
図38Bに示すように創傷250の表面288から間隔をおいた位置に達すると考えられる。
図38Aを参照すると、一実施例では当業者によって選択されるように、創傷の端部からアンカー74までの距離Eを、「かみ合い(bite)」間の距離、すなわち創傷の表面288からパターンのピーク291までの距離Fとほぼ同じにすることができる。
【0043】
図39Aおよび
図39Bに示すように小さい創傷を寄せるためには、アンカーが組織に埋め込まれる単方向式バーブ付き縫合糸を用いた他の縫合方法が用いられる。
図39Aでは、単方向式バーブ付き縫合糸270の先端の針280が、創傷250の表面288に挿入されている。
図38Aおよび
図38Bに示した方法と同様に、縫合糸270を針280によって引くと、アンカー274が創傷250の表面288に接するようになる。縫合糸を引いて創傷250の面を寄せると、アンカーは組織252の中で抵抗に遭うまで組織252内へ移動するようになる。
図39Bでは、アンカーは創傷の表面288から間隔をおいた最終位置まで移動したように示してある。縫合糸270の配置はループを形成することが可能であり、先端を別の構成278、278aを有するJ縫合として配置することもできる。
【0044】
図40〜50は、美容外科などにおいて、創傷のない組織を位置決めするためにバーブ付き縫合糸を配置し、縫合糸が組織の表面より下になる、本発明による縫合方法を示している。
図40および
図41は、リフト(lift)を与えるための組織内における通常のバーブなしの縫合糸の配置を示している。
図40の方法は、頂部に1つの結び目302、最下部に出口/入口点304を有する1本の縫合糸300を用いている。結び目は、組織252を所望の量のリフトに調節するように締められる。
図41の方法は、頂部に1つの結び目310、最下部に別の結び目312を有する2本の縫合糸306、308を用いている。結び目は、組織252に所望の量のリフトを与えるように締められる。結び目302、310、312に対して組織にリフトを与えるのに十分な力を加え、組織252に対する負荷を、頂部の結び目302、310および最下部の結び目312、または縫合糸の低点304に集中させる。
【0045】
図42は、双方向式バーブ付き縫合糸254、256を実質的に互いに平行に配置し、各端部に隣接する縫合糸、すなわち内側に向けられたJ縫合260、262、264、266を有する本発明による縫合方法を示している。
図43は、外側に向けられたJ縫合260a、262a、264a、266aを有する、2本の平行な双方向式バーブ付き縫合糸254、256を用いた同様の縫合方法を示している。
図44は、反対方向に延びる終端のJ縫合314、316を有する双方向式バーブ付き縫合糸254を示している。縫合糸254、256を配置した後、組織を各縫合糸に沿って手で前進させて、組織をある量だけリフトするために外科医が望むとおりにまとめることができる。
図40および
図41の通常の方法とは異なり、バーブ付き縫合糸によって与えられる抵抗は、縫合糸の長さに沿って分散される。
【0046】
図45は、アンカー274、および組織252の表面より下に位置決めされ、J縫合278で終わる尖端320を有する埋め込まれた単方向式バーブ付き縫合糸270を示している。任意選択で、J縫合278を異なる方向に向けること、あるいは完全に省くこともできる。
【0047】
単方向式バーブ付き縫合糸270を組織252の表面より下に配置する1つの方法は、挿入装置を伴うものである。挿入装置のデザインには、直線、湾曲およびらせんが含まれる。そうした挿入装置322を用いる方法の1つを
図46に示す。挿入装置322は、直管または湾曲管324、先端326、終端328、および使い易くするためのハンドル330を含むことができる。湾曲管ではなく、直管を用いて組織を操作することによって、縫合糸をある程度非直線に取り付けることが可能になる。縫合糸270の尖端320は、挿入装置322の先端326、または挿入装置322の側面の開口部(図示せず)から延びることができる。縫合糸270上の少なくとも1つのバーブ94が、先端326の開口部、または挿入装置の側面の開口部を通って延びていなければならない。別法として、アンカー274が、先端326の開口部、または挿入装置の側面の開口部を通って延びることも可能である。挿入装置322を、表皮332を貫通して皮下組織334の中まで前進させる。所望の位置になったとき、挿入装置322を終端328によって引くと、縫合糸270の尖端320およびバーブ94が皮下組織334の中でかみ合い、
図48に示すように縫合糸270を適所に残してある方向の移動を制限するようになる。アンカー274も埋め込まれ、他の方向の移動を制限する。
【0048】
挿入装置を用いて単方向式バーブ付き縫合糸270を配置する他の方法を
図48に示す。挿入装置340は、直管または湾曲管342、先端344、終端346、および往復動するプランジャ348を有している。アンカー274を、挿入装置340の先端344に隣接する管342の中に配置する。挿入装置340を、表皮330を貫通して皮下組織334の中まで前進させる。所望の位置になったとき、アンカー274が管342から皮下組織334の中へ放出されるまで、プランジャ348を押し下げる。挿入装置340を終端346から引くと、アンカー274が組織内でかみ合い、ある方向の移動を制限するようになる。バーブ94も皮下組織334とかみ合い、反対方向の移動を制限する。
【0049】
アンカー274は、挿入装置に収まる任意の設計とすることが可能であり、挿入装置の管内にある間は折り畳まれ、解放されると広がる折り畳み式の設計を含むことができる。便宜上、図には「T」字形の設計を示しており、挿入装置の管の方向に沿って折り畳めるように構成されている場合に使用することができる。さらに
図45〜48に示し、前述した方法を用いて、単方向式バーブ付き縫合糸を挿入装置と共に配置して、
図27に示すように創傷の面を寄せることも可能である。
【0050】
図49は、本発明による前額、顔面および首に対する美容整形用のリフト方法を用いた、5本の双方向式バーブ付き縫合糸380、400〜403の配置を示している。一実施例では、各端部で直針を用いて、図示した5本の双方向式バーブ付き縫合糸380、400〜403のそれぞれを配置することができる。前額のリフトの場合、反転した「U」または「V」字形、あるいはその変形形態を形成する縫合糸380の端部は、一般に頭髪の生え際(あるいは生え際と思われるところ)より上の同じ挿入点382から入る。縫合糸400〜403は、端部が一般に反対の方向に延びるように配置され、一般に生え際と思われるところより上とすることができる挿入点404〜407から始まり、遠位で出る。すべての方法で縫合糸を正弦曲線パターンで配置するには、針による横方向の移動を、終了するまで組織から出ない一実施例において用いる。正弦曲線パターンは、振幅および反復数が
図49に示したものより大きくても小さくてもよく、本発明の範囲内とすることができる。双方向式バーブ付き縫合糸380、400〜403の別法として、それぞれの縫合糸の各部分384、386、480、410〜416に対して単方向式バーブ付き縫合糸を用い、その端部を挿入点382、404〜407で隣接する縫合糸に結び付けることができる。さらに一般には、配置された縫合糸の直線部分が曲線部分と出口点の間に存在してもよい。縫合糸を配置した後、リフトおよび組織の支持を与えるために、組織を縫合糸本体に沿って進め、まとめる。
【0051】
縫合糸を正弦曲線パターンに配置すると、縫合糸の「衝撃吸収」能力が高まり、縫合糸が延びて、またはまっすぐになって、移動または再配置された組織が逆戻りする(その元の位置に向かって移動する)のを防ぐ、多くの機会が与えられるようになる。曲線パターンの振幅は通常、結果として生じる一般には曲線部分の軸線に沿った縫合糸の保持力の方向に対して垂直である。
図49では例示的な振幅をGで示し、結果として生じる例示的な保持力をHで示している。組織を引くと、組織が直線状に配置された縫合糸の場合よりも大きく戻される可能性があるが、正弦曲線パターンによって与えられる屈曲部のために、正弦曲線状に配置された縫合糸の破損を減らすことができる。正弦曲線パターンは、直線状に配置された同じ数およびサイズの縫合糸と比べて、より大きい、または堅いリフトを可能にする。正弦曲線パターンによって、より少なく、より大きい縫合糸を使用することが可能になり、これは患者が鎮静剤の投与を望まない場合に好ましいことがある。
【0052】
前額リフト用の縫合糸380、400および額上の他のリフトの場合、額の縫合糸の一部384、386、408は、表皮下組織内の筋肉、前頭筋の真上でかみ合う。表皮下組織には、乳頭真皮、網状真皮および皮下組織が含まれる。頭皮の中へ延びる縫合糸400〜403の一部410〜413は、帽状腱膜および表皮下組織とかみ合う。
【0053】
一般に、顔面および首の縫合糸401〜403の場合、前方部分414〜416は筋肉、広頚筋の真上でかみ合うが、頬、または鼻の近くではわずかに表面に近くなり、表皮下組織内になる。特に上顔面の顔面リフト用縫合糸401の前方部分414は、鼻唇溝418に向かって延び、表皮下組織、表在性筋膜、あるいは両方とかみ合う。
【0054】
特に頬の中の顔面リフト用縫合糸402については、挿入点406はほぼ後部下顎の角度になる。縫合糸の第1の端部412は、表皮下組織、表在性筋膜またはそれらの組合せを通って、下顎の縁にほぼ平行な経路に沿って後方に押され、遠方で出る。縫合糸の第2の端部415は、表皮下組織、表在性筋膜またはそれらの組合せを通って、下顎の縁にほぼ平行な経路に沿って前方に押され、やはり遠方で出る。
【0055】
首のリフトを含む外科的処置では、バーブ付き縫合糸403の挿入点407は、ほぼ上部胸骨甲状筋のところになる。縫合糸の第1の端部413は、表皮下組織、表在性筋膜またはそれらの組合せを通って、下顎の縁にほぼ平行な経路に沿って後方に押され、遠方で出る。縫合糸の第2の端部416は、表皮下組織、表在性筋膜またはそれらの組合せを通って、下顎の縁にほぼ平行な経路に沿って前方に押され、やはり遠方で出る。
【0056】
他の美容外科の用途も、本発明の範囲内で実施することが可能である。例えば、腿のリフトおよび胸のリフトを実施することができる。腿のリフトでは、挿入点は一般に鼠径部のひだのところになる。縫合糸の第1の端部は、頭側で縫合糸の第1の端部が表皮下組織を通って組織の外に延びるまで押され、縫合糸の第2の端部は、尾側で表皮下組織を通って縫合糸の第2の端部が腿の上の組織の外に延びるまで押される。次いで、腿の組織を縫合糸本体に沿って進め、まとめて、リフトおよび組織の支持を与える。
【0057】
胸のリフトでは、挿入点は胸の湾曲部の上側になる。縫合糸の第1の端部は、皮下組織、真皮組織および胸筋に通って、胸の上部の出口点から組織の外に延びるまで押される。縫合糸の第2の端部は、尾側で繊維組織および脂肪組織を通って、縫合糸の第2の端部が胸の前側または下部の湾曲部に沿って出口点から組織の外に延びるまで押される。次いで、胸の組織を縫合糸本体に沿って進め、まとめて、リフトおよび組織の支持を与える。
【0058】
図50は、本発明に従って、アンカー436〜441を有する単方向式バーブ付き縫合糸430〜435を用いる美容外科の用途向けの縫合方法を示している。これらの縫合方法は、任意選択で終端のJ縫合またはS縫合(図示せず)を含むことが可能であり、また
図46〜49に示した挿入装置322、340または針を用いて配置することが可能である。例えば、顎の線に沿った1本の縫合糸434を、その尖端においてS縫合で終わるように示してある。上顔面の他の縫合糸433は、
図49のものと類似の曲線パターンを有するように示してある。概略的な「T」字形のアンカー436〜441を示しているが、アンカーは本明細書に記載する任意の設計とすることが可能であり、用途に応じて外科医によって選択される。アンカーは、挿入装置を用いるか、または小さい切り口を設けることによって埋め込むことができる。額に他の縫合糸442を示すが、縫合糸442は、前額の端部445に最も近いJ縫合を含む端部444、445の湾曲部を伴って配置される。かみ合わされた組織については、前額、顔面、首、腿および胸への適用は、同様の位置の双方向の縫合糸について先に詳しく述べたのと同様であり、またそれに対応している。縫合糸を配置した後、組織を縫合糸本体に沿って進め、まとめて、リフトおよび組織の支持を与える。J縫合など所望のパターンを完成させた後、組織を縫合糸に沿ってまとめ、進めることに対する変形形態として、J縫合を完成させる前に縫合糸の尖端が組織から出るようにし、次いで組織をまとめ、進めて、J縫合を完成させることもできる。
【0059】
図51A〜51Cは、切断された腱の2つの部分450、452を修復するための単方向式バーブ付き縫合糸270の使用を示しているが、便宜上、左部分450および右部分452と呼ぶ。
図51Aに示すように、縫合糸は左部分450の端部454に入り、曲線経路をたどって出口点456に至る。アンカー274は左部分450の端部454に接する。縫合糸は再び出口点456に隣接する点458から入り、点460から出るまで曲線経路上でループを形成し続け、次いで点462から入る。縫合糸はループを完成させ、左部分450の端部454を通って出て、次いで右部分452の端部464を通過する。
図51Bに示すように、縫合糸は選択された曲線経路をたどり、点466、468、470から出て、点472、474、476から入ることによって腱252を通り、端部464から離れるように進み、次いで点478、480、482を通って腱から出て、点484、486、488を通って入ることによって端部464へ戻る。
図51Cに示すように、次いで縫合糸は再び左部分450の端部454に入り、腱の表面からの最終的な出口506に達するまで選択された曲線経路をたどり、点490、492、494、496から腱を出て、点498、500、502、504から入る。
【0060】
また本発明により、バーブ付き縫合糸を用いて、吻合処置における血管の端部など、身体内の管、管状構造または中空器官の2つの部分の端部を結合する方法が提供される。本明細書で使用する「管」という用語は、それだけに限定されるものではないが、血管、大腸および小腸、輸送管などが含まれる。
図52〜55に示すように、より効果的な付着を促すために、結合前にまず管の端部を斜めに切断することもできる。
【0061】
図52を参照すると、アンカー274を有する単方向式バーブ付き縫合糸270を用いて、管の端部を結合する方法が示されている。バーブ付き縫合糸270の尖端280は、図示した実施例では針を含み、壁を通して管の第1の端部550の内部に挿入される。次いで縫合糸270の尖端を、管の内部から管の第2の端部552の壁を通して挿入する。管の2つの端部550、552を互いに引き寄せるために、アンカー274が管の第1の端部550の外面と接触するまで、縫合糸270を管の壁を通して引く。次いで、最初の挿入点556から周方向に間隔をおいた点554で、縫合糸270を再び管の第1の端部550の壁を通して挿入する。各ステップを繰り返して、管のまわりで縫合糸270を前進させる。最後のかみ合いの後、終端のJ縫合またはS縫合によって縫合パターンを完成させることができる。
【0062】
図53は、
図52に示した方法と同様の縫合パターンを用いて管の端部550、552を結合するために、双方向式バーブ付き縫合糸254を用いる方法を示している。最初の挿入点558から始め、縫合糸254の第1の部分560の端部を、壁を通して管の第1の端部552の内部に挿入する。次いで、縫合糸254の第1の部分560の端部を、管の内部から管の第2の端部550の壁を通して挿入する。管の2つの端部550、552を互いに引き寄せるために、縫合糸254の第2の部分562上の反対のバーブが管の第1の端部552の壁の外面と接触するまで、縫合糸254の第1の部分560を管の壁を通して引くことができる。最初の挿入点558から周方向の第1の方向に間隔をおいた点564で、縫合糸254の第1の端部560を、壁を通して管の第1の端部552の内部に挿入する。縫合糸254の第1の部分560の端部の出口点568から周方向に間隔をおいた点566で、縫合糸254の第2の部分562の端部を、壁を通して管の第2の端部550の内部に挿入する。次いで、最初の挿入点558から周方向の第2の方向に間隔をおいた点570で、縫合糸254の第2の部分562の端部を、管の内部から管の第1の端部552の壁を通して挿入する。これらのステップを繰り返して、管のまわりでバーブ付き縫合糸254の各端部を前進させる。最後のかみ合いの後、各端部における終端のJ縫合またはS縫合によって、縫合パターンを完成させることができる。
【0063】
図54は、身体の管の端部550、552を結合するために、双方向式バーブ付き縫合糸254を用いる他の方法を示している。最初の挿入点572から始め、縫合糸254の第1の部分560の端部を、管の第1の端部552の壁を通して挿入する。次いで、縫合糸254の第1の部分560の端部を、管の内部から管の第2の端部550の壁を通して挿入する。管の2つの端部550、552を互いに引き寄せるために、縫合糸254の第2の部分562上の反対のバーブが管の第1の端部552の壁の外面と接触するまで、縫合糸254の第1の部分560を管の壁を通して引くことができる。最初の挿入点572から周方向の第1の方向に間隔をおいた点574で、縫合糸254の第1の部分560の端部を、壁を通して管の第1の端部552の内部に挿入する。縫合糸254の第1の部分560の最初の挿入点572に隣接し、実際的に同じ挿入点として機能する点576で、縫合糸254の第2の部分562の端部を、管の第1の端部552の壁を通して挿入する。次いで、縫合糸254の第1の部分560の端部の第1の出口点580から周方向に間隔をおいた点578で、縫合糸254の第2の部分562の端部を、管の内部から管の第2の端部550の壁を通して挿入する。次いで、最初の挿入点576から周方向の第2の方向に間隔をおいた点582で、縫合糸254の第2の部分562の端部を、管の第1の端部552の壁を通して挿入する。これらのステップを繰り返して、管のまわりでバーブ付き縫合糸254の各端部を前進させる。最後のかみ合いの後、各端部における終端のJ縫合またはS縫合によって縫合パターンを完成させることができる。あるいは、
図55に示すように縫合糸の端部が互いに交差するまで、縫合パターンを前述のように続けることもできる。その場合も必要であれば、終端のJ縫合またはS縫合によって縫合パターンを完成させることができる。
【0064】
本発明に従って管の端部を結合する方法では、縫合糸を管の組織を通して前進させるため、管を通る縫合糸端部の挿入経路は長手方向の成分を含むことができる。この技術を用いると、より長い縫合糸が管の組織内に配置され、それによってより優れた保持力が得られる。さらに、バーブ付き縫合糸が自由端の周縁部に沿って最初に管に入る位置にかかわらず、本明細書に記載の方法を用いて身体内の管の端部を効果的に結合することができる。
【0065】
身体の管の2つの端部を結合する方法について図示および記述しているが、本発明はそのように限定されないことが理解される。特に本発明による方法は、元の管の端部間に管の一部を移植する処置を含むことができる。これは、特に冠状動脈バイパス手術、すなわちCABGで用いられる処置である。移植処置は、前述の縫合方法を用いて移植片の端部を管の端部に取り付けること以外は、本明細書に記載の方法と同様である。
【0066】
さらに本発明を、以下の非限定的な実施例によって説明する。
【0067】
「実施例」
各端部のJ縫合によって組織内に配置された双方向式バーブ付き縫合糸の組織保持能力を、従来の結紮された縫合糸と比較する試験を行った。双方向式バーブ付き縫合糸について、2つの異なるバーブの形状設計(AおよびB)をポリジオキサノン(PDO)から製造した(サイズ0)。各縫合糸の長さは17.8cm(7インチ)であり、中央の7.6cm(3インチ)には、2つの反対のセグメントに等分された78個のバーブを含んでいた。設計Aの螺進度は12.8度、設計Bの螺進度は12.4度であった。10個のサンプルを用いて、各設計の平均的な直線の引張力を測定した。ビデオ・カメラを取り付けたOptem Zoom顕微鏡(ニューヨーク州フェアポートのThales Potem Inc.製)を用いて、バーブの形状を、切り口の角度(φ)、切り口の深さ(D
c)、計算された切り口の長さ(L
c)および切り口間の距離の4つの異なるパラメータによって特徴付けた(
図56)。
【0068】
バーブ縫合糸の直線の引張力およびバーブ付きの形状は、表1に示すように決定された。
【0070】
図57および
図58を参照すると、死んだブタの末端の空腸530に、その長さに垂直な全厚3cmの切り口が作成されている。空腸のセグメントの寸法は、外周約10cm、厚さ5mmであった。各創傷538を、4cm×15cmの組織片の中央に配置されるように切除した。連続の「繰り返し」技術を用いて、
図57に示す2つの設計AおよびBを含むバーブ付き縫合糸254、または
図58に示す実験対照のPDS II(ポリジオキサノン)縫合糸540(すべてサイズ0)によって創傷538を閉じた。漿膜524および粘膜544において、縫合糸のストランドはかみ合ったが、粘膜層には穴を開けなかった。対照の縫合糸の各端部は結び目(5回(5 throw))によって固定し、バーブ付き縫合糸254は、隣接する組織を通るJ縫合のかみ合わせを用いて、およびかみ合わせなしで終了させた。かみ合いの寸法(4mm)、かみ合いの間の距離(5mm)、および切り口の交差回数(11)は、すべての縫合糸のタイプで同じであった。縫合糸のみが両半分を共に保持するように、創傷の縁部を切断した。縫合糸の各タイプの縫合された10個の組織の試験片について、Test Resources Universal Tester model 200Q(ミネソタ州イーデンプーリーのDDL製)によって、ロード・セル113kg(250ポンド)、ゲージ長5cm、クロスヘッド速度5cm/秒で試験を行った。縫合糸が組織を通って創傷まで裂け、2つの組織片が分離する破損状態まで各試験片を引っ張り、最大荷重を記録した。
【0071】
ブタの腸の創傷を分離するのに必要な平均的な最大の力を表2に示す。
【0073】
サイズ0の吸収性縫合糸に関する米国薬局方の結び目の最小引張力の要求値3.90kg(8.60ポンド)と比べると、バーブ付きPDOの設計Aの引張力は劣っていると思われる。しかし、終端のJ縫合を用いた設計Aの創傷の保持能力は、ブタの腸のモデルにおける同じサイズの対照の保持能力に比べて有利である(p=0.19)。さらに、終端のJ縫合を有する設計Bは、米国薬局方の要求値を超えているだけではなく、通常の縫合糸より機械的能力が高まる傾向を示している。J縫合を省き、設計Aを用いた創傷の保持力は、J縫合を有する設計Aの保持能力より劣っていた。この減少の一部は、J縫合が省かれた場合には組織内の縫合糸の長さが短くなることに起因している可能性があるが、違いの大部分は、J縫合の構成を省いたことに起因していると思われる。
【0074】
本発明を、その少数の例示的な実施例のみについてかなり詳細に図示および記述してきたが、特に前述の教示に照らせば、実質的に本発明の新規な教示および利点から逸脱することなく、開示した実施例に対して様々な変更、省略および追加を行うことが可能であるため、当業者は、本発明が図示および記述した実施例に限定されるものではないことを理解すべきである。例えば、1つまたは複数のJ縫合およびS縫合を有するバーブ付き縫合糸、ならびにアンカーを有する単方向式縫合糸を、それだけに限定されるものではないが、ニッセン胃底ひだ形成術、腹腔鏡手術中の腸構造の安定化、虫垂切除術、ツェンカー憩室手術、膀胱瘻設置術、置換心臓弁の固定、組織への外部装置の固定、および血管における軸線方向の創傷の閉鎖を含めた幅広い種類の用途に使用することができる。したがって、本発明の趣旨および範囲内に含めることができるこうした変更、省略、追加および同等のものをすべて包含するものである。