特許第5718224号(P5718224)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718224
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】充填手段を備えた自己注入器
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20150423BHJP
   A61M 5/315 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   A61M5/24
   A61M5/315
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-514113(P2011-514113)
(86)(22)【出願日】2009年6月10日
(65)【公表番号】特表2011-524766(P2011-524766A)
(43)【公表日】2011年9月8日
(86)【国際出願番号】GB2009001451
(87)【国際公開番号】WO2009153544
(87)【国際公開日】20091223
【審査請求日】2012年6月8日
(31)【優先権主張番号】0811347.4
(32)【優先日】2008年6月19日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】506157570
【氏名又は名称】シラグ・ゲーエムベーハー・インターナショナル
【氏名又は名称原語表記】Cilag GMBH International
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】ジェニングス・ダグラス・アイバン
【審査官】 金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0105430(US,A1)
【文献】 特開平07−116224(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/138296(WO,A1)
【文献】 特表2007−505677(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/047372(WO,A2)
【文献】 特表2003−525667(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第03604826(DE,A1)
【文献】 特表2002−521147(JP,A)
【文献】 国際公開第98/011927(WO,A1)
【文献】 特開2000−126293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注入装置において、
放出ノズルおよび分配ピストンを有する流体容器を受容するように構成されたハウジングであって、前記分配ピストンは、前記流体容器の中を移動することができ、前記流体容器の中身を前記放出ノズルから排出する、ハウジングと、
作動時に前記流体容器に作用して、前記放出ノズルが前記ハウジング内部に収容される後退位置から、前記放出ノズルが前記ハウジングから延出する延出位置まで、前記流体容器を進め、前記分配ピストンに作用して、前記流体容器の中身を前記放出ノズルから排出するように構成された、駆動装置と、
流体を収容するバイアルを受容し、前記バイアルを前記放出ノズルに接続するように構成されたコネクタと、
前記分配ピストンが前記放出ノズルに隣接して前記流体容器に位置する第1の位置から、前記分配ピストンが前記放出ノズルから引き離される第2の位置まで、前記分配ピストンを前記流体容器に対して動かす手段であって、動かすことによって、流体が前記バイアルから前記流体容器に引き込まれる、動かす手段と、
前記駆動装置および分配ピストンを含む駆動サブアセンブリと、
前記コネクタおよび流体容器を含む分配サブアセンブリと、
を含み、
前記コネクタは、前記注入装置の前記放出ノズル上に位置する取り外し可能なキャップであり、
前記キャップは、前記バイアルを受容するように構成された開口端部を有し、
前記取り外し可能なキャップは、前記キャップを前記ハウジングから取り外すと前記バイアルが前記放出ノズルから分離されるように構成され、
前記分配ピストンは、前記駆動装置に接続され、
前記駆動サブアセンブリおよび分配サブアセンブリは、互いに対してスライドするように構成され、
前記駆動サブアセンブリおよび分配サブアセンブリは、前記駆動サブアセンブリおよび分配サブアセンブリが互いから引き離されると、前記分配ピストンがその第1の位置から第2の位置へと動いて、それにより流体が前記バイアルから前記流体容器内に運ばれるように、構成される、注入装置。
【請求項2】
請求項1に記載の注入装置において、
前記分配サブアセンブリは、前記駆動サブアセンブリの内側で一部分がスライドするように構成される、注入装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の注入装置において、
前記分配サブアセンブリおよび駆動サブアセンブリは、前記分配サブアセンブリが前記駆動サブアセンブリに対してスライドすることができる非ロック位置から、前記分配サブアセンブリが前記分配サブアセンブリに対してスライドすることができないロック位置まで、互いに対して回転するように構成される、注入装置。
【請求項4】
請求項1に記載の注入装置において、
前記取り外し可能なキャップは、前記開口端部上に取り外し可能なカバー要素を含み、
前記取り外し可能なカバー要素は、前記開口端部にバイアルを挿入する前に取り外されるように構成される、注入装置。
【請求項5】
請求項に記載の注入装置において、
前記取り外し可能なカバー要素は、シールドを保持し、前記シールドは、前記取り外し可能なカバー要素が前記取り外し可能なキャップ上の所定の場所にあるときに前記放出ノズル上に位置しており、前記取り外し可能なカバー要素が前記取り外し可能なキャップから取り外されると前記放出ノズルから取り外される、注入装置。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか1項に記載の注入装置において、
前記バイアルを前記コネクタに挿入する際、前記放出ノズルは、前記バイアルの閉鎖要素を貫通して、前記バイアルと前記流体容器との間に流体経路を形成する、注入装置。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の注入装置において、
前記流体容器は、注射器であり、前記放出ノズルは、針である、注入装置。
【請求項8】
請求項1〜のいずれか1項に記載の注入装置において、
作動時に前記駆動装置を解放して前記分配ピストンに作用し、前記流体容器をその延出位置に動かし、前記放出ノズルにより流体を排出するように構成された、解放機構、
を含む、注入装置。
【請求項9】
請求項1〜のいずれか1項に記載の注入装置において、
前記流体容器の中身が排出された後で前記流体容器をその延出位置から後退位置まで動かすように構成された後退機構、
を含む、注入装置。
【発明の詳細な説明】
【開示の内容】
【0001】
〔発明の分野〕
本発明は、バイアルと共に使用される注入装置に関する。
【0002】
〔発明の背景〕
皮下用薬剤は、家庭での注入のためバイアルに入れて患者に提供され得る。現在の方法は、患者が薬剤をバイアルから注射器に引き入れ、手動注入を行うというものである。市場は、家庭での注入を行うための自己注入器へと向かっている。予め装填された薬剤注射器を含む、製造され組み立てられる自己注入器が、例えば国際特許出願公開第2006/106295号から既知である。この特許出願公開は、参照により本明細書に組み込まれる。現在、患者が皮下用薬剤をバイアルから自己注入器内に運ぶ、容易な方法はない。
【0003】
〔発明の概要〕
本発明は、前記の問題を解決することを目的とする。
【0004】
本発明の第1の態様では、注入装置が提供され、この注入装置は、
放出ノズルおよび分配ピストンを有する流体容器を受容するように構成されたハウジングであって、分配ピストンは流体容器の中を動くことができ、放出ノズルから流体容器の中身を排出する、ハウジングと、
作動時に流体容器に作用して、放出ノズルがハウジング内部に収容される後退位置から、放出ノズルがハウジングから延出する延出位置まで、流体容器を進め、また、分配ピストンに作用して、放出ノズルから流体容器の中身を排出するように構成された、駆動装置と、
を含み、
流体を収容するバイアルを受容し、バイアルを放出ノズルに接続するように構成されたコネクタと、
分配ピストンが放出ノズルに隣接して流体容器内に位置する第1の位置から、分配ピストンが放出ノズルから引き離される第2の位置まで、流体容器に対して分配ピストンを動かす手段であって、動かすことにより、流体をバイアルから流体容器に引き込む、動かす手段と、
によって特徴付けられる。
【0005】
分配ピストンを流体容器に対して動かす手段を設けることにより、注入装置の注射器が、標準的なバイアルから充填されることができ、これによって、バイアルに収容される薬剤用の注入装置を家庭で使用することが、大きく促進される。
【0006】
本発明の一実施形態では、注入装置は、駆動装置および分配ピストンを含む駆動サブアセンブリと、コネクタおよび流体容器を含む分配サブアセンブリと、を含み、分配ピストンは、駆動装置に接続され、駆動サブアセンブリおよび分配サブアセンブリは、互いに対してスライドするように構成され、駆動サブアセンブリおよび分配サブアセンブリは、これらが互いから引き離されたときに分配ピストンがその第1の位置から第2の位置に動き、それによって流体をバイアルから流体容器内へ運ぶように、構成されている。
【0007】
好ましくは、分配サブアセンブリは、駆動サブアセンブリの内側で、一部分がスライドするように構成される。
【0008】
好ましくは、分配サブアセンブリおよび駆動サブアセンブリは、分配サブアセンブリが駆動サブアセンブリに対してスライドできる非ロック位置から、分配サブアセンブリが分配サブアセンブリに対してスライドできないロック位置まで、互いに対して回転するように構成される。これを容易にするために、ロック突起が、分配サブアセンブリまたは駆動サブアセンブリのうち一方に設けられてよく、対応する溝がもう一方に設けられる。
【0009】
本発明の代替的な実施形態では、動かす手段は、分配ピストンと連絡する、ハウジング内に位置するスライダーを含む。スライダーは、ハウジングから突出する、使用者が作動可能な移動要素を含んでよい。スライダーは、分配ピストンと磁気的につながって(in magnetic communication)いてよい。あるいは、スライダーは、分配ピストンに一体的に接続されてもよい。
【0010】
受容する手段は、注入装置の放出ノズルの上に位置する取り外し可能なキャップであってよく、キャップは、バイアルを受容するように構成された開口端部を有し、取り外し可能なキャップは、キャップをハウジングから取り外すと、バイアルが放出ノズルから切り離されるように構成されている。取り外し可能なキャップは、開口端部の上に取り外し可能なカバー要素を含んでよく、取り外し可能なカバー要素は、バイアルを開口端部に挿入する前に取り外されるように構成される。好ましくは、取り外し可能なカバー要素はシールドを保持し、シールドは、取り外し可能なカバー要素が取り外し可能なキャップ上の所定の場所にあるときに放出ノズル上に位置し、また、取り外し可能なカバー要素が取り外し可能なキャップから取り外されると、放出ノズルから取り外される。
【0011】
バイアルをコネクタに挿入する際、放出ノズルは、バイアルの閉鎖要素を貫通して、バイアルと流体容器との間に流体経路を形成する。
【0012】
好ましくは、流体容器は注射器であり、放出ノズルは針である。
【0013】
好ましくは、注入装置は、解放機構を含み、解放機構は、作動時に、駆動装置を解放して分配ピストンに作用し、注射器をその延出位置へ動かし、また、放出ノズルを通して流体を排出するように構成される。
【0014】
本発明の一実施形態では、流体容器の中身が排出された後で流体容器をその延出位置から後退位置へ動かすように構成された、後退機構が提供される。
【0015】
本発明の1つまたは複数の実施形態が、添付図面を参照して以下に説明される。
【0016】
〔図面の詳細な説明〕
図1および図2は、近位端部110bおよび遠位端部110aを備えた送達装置ハウジング112を有する、本発明による送達装置110を示す。ハウジング112の遠位端部110aは出口孔128を有し、出口孔128を通って、スリーブ119の端部が現れることができる。
【0017】
送達装置110は、図1に示すように2つのサブアセンブリから組み立てられる。送達サブアセンブリ210は、突端部分102、注射器輸送部150、交換可能な解放要素155、スリーブ119、およびバネ126、ならびにエンドキャップ101を含む。突端部分102は、注射器輸送部150を取り囲み、かつ支持し、また、ねじってひねる接続(screw and twist connection)によってキャップ101に接続される。
【0018】
駆動サブアセンブリ220は、以下で論じるように、注入装置110のハウジング112、および駆動要素、およびアクチュエータを含む。2つのサブアセンブリ220、210を組み立てて注入装置110を形成すると、駆動アセンブリ220は、送達サブアセンブリ210により保持された注射器114を作動させることができる。作動後、2つのサブアセンブリは、分離されてよく、駆動アセンブリ220の駆動要素およびアクチュエータは、さらに使用されるようにリセットされる。
【0019】
ハウジング112は、従来型の皮下注射器114を受容するように構成され、皮下注射器114は、貯蔵部を画定し、また、皮下注射針118において一端部が終端し、フランジ120で他端部が終端している、注射器本体116を含む。注射器本体116は、貯蔵部の長さに沿って実質的に一定の直径であり、皮下注射針で終端する注射器114の端部の近くで、著しく小さい直径となっている。駆動連結部134は、注射器114の栓を通じて作用して、針118を通して注射器114の中身を放出する。この駆動連結部134は、注射器本体により画定される貯蔵部内部でプランジャ104により投与されるべき薬剤を閉じ込めており、また、薬剤を注射器114内に装填することも可能にする。例示される注射器114は、皮下型であるが、これは必ずしもそうである必要はない。経皮的な、またはバリスティック皮膚および皮下注射器(Transcutaneous or ballistic dermal and subcutaneous syringes)を、本発明の注入装置と共に使用することもできる。
【0020】
例示されるように、注射器114は、送達サブアセンブリ210内部で注射器輸送部150の中に収容される。注射器輸送部150は、近位端部151を有し、近位端部151を通って、注射器の針118が突出する。戻しバネ126は、戻しバネ支持体160および注射器輸送部150を通じて、針118がハウジング112の孔128から延出する延出位置から、針118がハウジング112内部に収容される後退位置まで、注射器114を付勢する。
【0021】
注射器輸送部150は、シース(不図示)を含み、シースの中に注射器114が遠位端部170から挿入されることができる。注射器114は、針118の上に覆い101aを備える。注射器が故障するかまたは壊れた場合、長さに沿って注射器114を取り囲むシースは、注射器の破片を収容し、それらの破片が注入装置110から出る可能性を減少させる。
【0022】
覆い101aは、覆い101aが取り外される前、針118を保護し、汚染しないように針118をシールする。覆い101aは、注射器118が送達サブアセンブリ210に挿入された後で、出口孔128の上でハウジング112上に取り外し可能に位置するキャップ101によってつかまれる。覆い101aは、キャップ101から取り外し可能なカバー要素101bによって、キャップ101の中にとらえられ、覆い101aもまた取り外され、それによって、キャップ101の開口端部に形成された開口部であるポート101cを露出する。
【0023】
駆動装置アセンブリ220のハウジング112はまた、アクチュエータ214と、ここでは圧縮駆動バネ130の形をとる駆動装置と、を含む。駆動バネ130からの推進力(Drive)は、多構成要素駆動装置を通じて注射器114のピストンへ伝えられて、注射器114をその後退位置から延出位置へ進め、針118を通して注射器の中身を放出する。駆動装置は、薬剤および注射器114に直接作用することにより、このタスクを達成する。駆動連結部134と注射器本体116との間の静止摩擦により、戻しバネ126が最も低い位置にくる(bottoms out)かまたは注射器本体116がその運動を妨害する何らかの他の障害物(不図示)に当たるまで、駆動連結部134と注射器本体116が共に前進することが最初に確実となる。
【0024】
駆動バネ130と注射器114との間の多構成要素駆動装置は、3つの主要な構成要素のみからなる。駆動スリーブ131は、駆動バネ130からの推進力を受け取り、それを駆動要素132に伝達する。この駆動要素が次に、既に説明した駆動連結部134に推進力を伝達する。
【0025】
駆動要素132は、使用者が作動可能な注射器装填要素133を含み、この注射器装填要素133は、ロック要素133cによって内部で駆動連結部134と係合し、第1のアーム133aにより駆動要素132を通って延びる。組立の際、非装填位置では、駆動連結部134の遠位端部235は、針118への接続部に隣接して、注射器114内部のその遠位端部でプランジャ104に接して位置する。第1のアーム133aは、その近位端部で第2のアーム133bに接続され、第2のアーム133bは、使用者が作動可能な突起133dを含む。組立の際、使用者が作動可能な突起133dは、スロット190を通ってハウジングから延びる。ハウジング112の近位端部におけるさらなるスロット(不図示)により、使用者が作動可能な突起133aを注射器114の開口端部114aに隣接した近位位置まで近位にスライドさせることによって注射器装填要素133およびプランジャ104が動くと、第1のアーム133aおよび第2のアーム133bがハウジング112から延出することができる。装填位置では、駆動要素132は、駆動要素132および駆動連結部134のラッチアーム132a、134aによって駆動連結部134にロックされる。したがって、駆動連結部134は、駆動バネ130の解放時に駆動要素132および駆動スリーブ131と共に動くことができる。本発明の代替的な実施形態では、注射器装填要素133は、第1のアーム133aのボアによってプランジャに直接接続されてよく、駆動連結部134は、注射器114の開口端部114aにおける近位位置にあってよい。注射器装填要素133は次に、注射器連結部134に隣接した、注射器114の開口端部114aにおける近位位置に向かってプランジャ104をスライドさせるように、作動される。
【0026】
トリガーの形のアクチュエータ214は、出口孔128から離れた、ハウジング112上に設けられる。トリガーは、操作されると、駆動スリーブ131をハウジング112から切り離すように作用し、駆動バネ130の影響下で駆動スリーブをハウジング112に対して動かす。装置の操作はその後、以下のとおりとなる。アクチュエータ214は、スライドスリーブ119がその最遠位位置にきて出口孔128から延出したときにスライドスリーブ119およびスライドスリーブロック要素119aによって、作動するのを妨げられる。スライドスリーブの遠位端部が組織に接して位置するかまたは出口孔に押し込まれると、ロック要素119aはもはやアクチュエータ214に作用せず、アクチュエータが作動させられ得る。
【0027】
アクチュエータは次に押し下げられて、駆動バネ130は解放される。駆動バネ130は駆動スリーブ131を動かし、駆動スリーブ131は駆動要素132を動かし、駆動要素132は駆動連結部134を動かす。駆動連結部134は、動いて、静止摩擦、および投与されるべき薬剤を通じて作用する静水学的力によって、戻しバネ126の作用に対抗して注射器本体114を動かす。注射器本体114は、注射器輸送部150を動かし、注射器輸送部150は次に戻しバネ支持体160を動かし、戻しバネ126を圧縮する。皮下注射針118は、ハウジング112の出口孔128から出る。これは、戻しバネ126が最も低い位置にくるかまたは注射器本体116がその運動を妨害する何らかの他の障害物(不図示)に当たるまで続く。駆動連結部134と注射器本体116との間の静止摩擦、および投与されるべき薬剤を通じて作用する静水学的力は、駆動バネ130により生じる十分な駆動力に抵抗するには十分でないので、この時点で、駆動連結部134は、注射器本体116内部で動き始め、薬剤は放出され始める。しかしながら、駆動連結部134と注射器本体116との間の動的摩擦、ならびに投与されるべき薬剤を通じて作用している静水学的および動水力学な力は、戻しバネ126をその圧縮状態に保持するのには十分であり、そのため、皮下注射針118は延出したままである。
【0028】
駆動連結部134が注射器本体116内部でその移動の終わりに達する前、したがって、注射器の中身が完全に放出される前に、第1の連結部132および駆動連結部134を結合する可撓性ラッチアーム134bが、注射器輸送部150の遠位端部に接続された交換可能な解放要素155に達する。
【0029】
交換可能な解放要素155は、本質的には狭窄部であり、可撓性ラッチアーム132bが駆動要素132を駆動連結部134にもはや連結しないような位置まで、この狭窄部が可撓性ラッチアーム132bを動かす。いったんこれが生じると、駆動要素132は、もはや駆動連結部134に作用せず、駆動要素132を駆動連結部134に対して動かす。その結果、駆動連結部134は、注射器本体116内部で動き続け、薬剤は放出され続ける。したがって、戻しバネ126は、圧縮されたままで、皮下注射針は延出したままである。
【0030】
しばらくすると、駆動連結部134は、注射器本体116内部で移動を完了し、さらに遠くへは行けなくなる。この時点で、注射器114の中身は完全に放出され、駆動バネ130が及ぼす力は、駆動連結部134をその最終位置に保持するように作用して、駆動要素132を動かし続ける。
【0031】
駆動スリーブ131を駆動要素132と結合する可撓性ラッチアームは、ハウジング112内部の別の狭窄部に達する。この狭窄部は、可撓性ラッチアームが駆動スリーブ131を駆動要素132にもはや連結しないように、可撓性ラッチアームを動かす。いったんこれが起きると、駆動スリーブ131はもはや駆動要素132に作用せず、駆動スリーブおよび駆動要素を互いに対して動かす。この時点で、駆動バネ130により生じた力は、もはや注射器114に伝達されていない。注射器に作用する唯一の力は、戻しバネ支持体160および注射器輸送部150によって針118に最も近い注射器114の端部に作用する、戻しバネ126からの戻し力(return force)である。その結果、注射器はその後退位置に戻り、注入サイクルが完了する。
【0032】
図3a〜図3dは、注入装置110の一実施形態と、注入前にバイアル300から注入装置110に流体を装填する工程と、を示す。バイアル300は標準的なサイズのものであり、バイアルをシールする閉鎖要素301を含む。閉鎖要素301は、針118により貫通され得る可撓性の膜の形をしていてよい。キャップ101のポート101cは、流体がバイアルから注射器114の中へ抜き取られる間、バイアル300を受容し支持するようにサイズおよび寸法が決められている。これを行うプロセスは以下のとおりである。
【0033】
図3bに示すように、閉鎖要素101bは、キャップ101から取り外されるが、キャップ101は、ハウジング112上の所定の場所にとどまる。これによって、覆い101aが針118から取り外され、ポート101cが開き、このポートにおいて針118が露出される。
【0034】
バイアル300は、最初にポート101cの端部、すなわち閉鎖要素301を含む端部に挿入される。バイアル300が挿入されると、針が、閉鎖要素301を貫通して、バイアル300内へ延び、その終点がバイアル300内部に収容される流体中に位置する。好ましくは、注入装置110は、バイアル300が地面の最も近くに位置した状態で注入装置の長さ方向軸が垂直に延びるように位置付けられるべきである。重力が、バイアル300中の流体に作用し、バイアルの底に流体を保持し、流体を抜き取ることができるようになる。
【0035】
使用者は、突起133dを注入装置110の近位端部に向けてスライドさせることによって、注射器装填要素133を操作することができる。これにより、注射器114のプランジャ104はその非装填位置から注射器114の近位端部に向かって装填位置まで動き、注射器114内の圧力減少により、流体をバイアル300から注射器114内へ抜き取る。注射器装填要素133がその装填位置に達したとき、すなわちスロット190の最近位端部にきたとき、注射器114は、バイアル300から流体を装填されている。バイアル300は、キャップ101を取り外すことにより注入装置110から取り外されることができ、注入装置110は、スライドスリーブ119の遠位端部を組織に対して設置し、アクチュエータ214を作動させることによって、使用の準備ができる。
【0036】
図4a〜図4dは、注入装置110の代替的な実施形態と、注入前にその注入装置にバイアル400から流体を装填する工程と、を示す。この代替的な実施形態の注入装置110の構造は、以下に説明する違いを除けば、図1および図2に描いた実施形態のものと同じである。図3a〜図3dの実施形態と同じように、バイアル400は標準的なサイズのもので、バイアル400をシールする閉鎖要素405を含む。閉鎖要素405は、針118により貫通され得る可撓性の膜の形であってよい。この代替的な実施形態では、送達サブアセンブリ210のキャップ401は、カバー要素401bおよびフランジ401dを、その遠位端部に含む。キャップ401はまた、非装填位置と装填位置との間でハウジング112を出入りしてスライド可能かつ回転可能である送達サブアセンブリ210の突端部分402に接続されている。延出した装填位置では、突端部分402は、ハウジング112に対してその位置をロックするように回転することができる。図1および図2で説明された実施形態と同じように、突端部分402は、駆動連結部134に対して注射器部分と共に移動する注射器114を支持し、駆動連結部134は、この代替的な実施形態では、駆動要素132に固定されている。この代替的な実施形態では、注射器装填要素はない。キャップ101のポート401cは、流体がバイアルから注射器114内に抜き取られる間、バイアル400を受容し支持するようにサイズおよび寸法が決められている。これを行うプロセスは以下の通りである。
【0037】
図4bに示すように、閉鎖要素401bは、キャップ401から取り外されるが、キャップ401は、ハウジング112上の所定の位置にとどまっている。これにより、覆い101aが針118から取り外され、ポート401cが開き、ポート401cの中に針118が露出される。
【0038】
バイアル400は、最初にポート401cの端部、すなわち閉鎖要素401を含む端部、に挿入される。バイアル400が挿入されると、針118は閉鎖要素401を貫通し、バイアル400内に延出し、針の終点が、バイアル400内部に収容される流体の中にくる。好ましくは、注入装置110は、バイアル300が地面の最も近くに位置する状態で、注入装置の長さ方向軸が垂直に延びるように、位置付けられるべきである。重力がバイアル400中の流体に作用して、流体をバイアルの底に保持し、流体を抜き取ることができるようになる。
【0039】
使用者は、例えばフランジ401dを引っ張って、注射器114を含めてキャップ401および突端部分402を駆動サブアセンブリ220の遠位端部から離すように延ばすことによって、駆動サブアセンブリ220に対して送達サブアセンブリ210をスライドさせることができる。これにより、注射器114内で駆動連結部134により保持されるプランジャ104は、その非装填位置から、注射器114の近位開口端部114aに向かって装填位置まで動き、注射器114内の圧力減少により、流体をバイアル400から注射器114内に抜き取る。送達サブアセンブリ210が駆動サブアセンブリ220から十分に延出したら、キャップ401および突端部分402は、回転して、駆動サブアセンブリ220に対する送達サブアセンブリ210のさらなる長さ方向運動をロックおよび防止することができる。注射器114はいまやバイアル400から流体を装填されている。バイアル400は、例えばさらなる回転により、キャップ101を取り外すことによって注入装置110から取り外されてよく、注入装置110は、スライドスリーブ119の遠位端部を組織に対して設置し、アクチュエータ214を作動させることにより、使用の準備ができる。
【0040】
本発明は、例として説明されており、細部の改変が本発明の範囲内で行われてよいことが、当然理解されるであろう。
【0041】
〔実施の態様〕
(1) 注入装置において、
放出ノズルおよび分配ピストンを有する流体容器を受容するように構成されたハウジングであって、前記分配ピストンは、前記流体容器の中を移動することができ、前記流体容器の中身を前記放出ノズルから排出する、ハウジングと、
作動時に前記流体容器に作用して、前記放出ノズルが前記ハウジング内部に収容される後退位置から、前記放出ノズルが前記ハウジングから延出する延出位置まで、前記流体容器を進め、前記分配ピストンに作用して、前記流体容器の中身を前記放出ノズルから排出するように構成された、駆動装置と、
を含み、
流体を収容するバイアルを受容し、前記バイアルを前記放出ノズルに接続するように構成されたコネクタと、
前記分配ピストンが前記放出ノズルに隣接して前記流体容器に位置する第1の位置から、前記分配ピストンが前記放出ノズルから引き離される第2の位置まで、前記分配ピストンを前記流体容器に対して動かす手段であって、動かすことによって、流体が前記バイアルから前記流体容器に引き込まれる、動かす手段と、
によって特徴付けられる、注入装置。
(2) 実施態様1に記載の注入装置において、
前記駆動装置および分配ピストンを含む駆動サブアセンブリと、
前記コネクタおよび流体容器を含む分配サブアセンブリと、
を含み、
前記分配ピストンは、前記駆動装置に接続され、
前記駆動サブアセンブリおよび分配サブアセンブリは、互いに対してスライドするように構成され、
前記駆動サブアセンブリおよび分配サブアセンブリは、前記駆動サブアセンブリおよび分配サブアセンブリが互いから引き離されると、前記分配ピストンがその第1の位置から第2の位置へと動いて、それにより流体が前記バイアルから前記流体容器内に運ばれるように、構成される、注入装置。
(3) 実施態様2に記載の注入装置において、
前記分配サブアセンブリは、前記駆動サブアセンブリの内側で一部分がスライドするように構成される、注入装置。
(4) 実施態様2または3に記載の注入装置において、
前記分配サブアセンブリおよび駆動サブアセンブリは、前記分配サブアセンブリが前記駆動サブアセンブリに対してスライドすることができる非ロック位置から、前記分配サブアセンブリが前記分配サブアセンブリに対してスライドすることができないロック位置まで、互いに対して回転するように構成される、注入装置。
(5) 実施態様1に記載の注入装置において、
前記動かす手段は、前記分配ピストンと連絡する、前記ハウジングに位置するスライダーを含む、注入装置。
【0042】
(6) 実施態様5に記載の注入装置において、
前記スライダーは、前記ハウジングから突出する、使用者が作動可能な移動要素を含む、注入装置。
(7) 実施態様5または6に記載の注入装置において、
前記スライダーは、前記分配ピストンと磁気的につながっている、注入装置。
(8) 実施態様5または6に記載の注入装置において、
前記スライダーは、前記分配ピストンに一体的に接続される、注入装置。
(9) 実施態様1〜8のいずれかに記載の注入装置において、
前記受容する手段は、前記注入装置の前記放出ノズル上に位置する取り外し可能なキャップであり、
前記キャップは、前記バイアルを受容するように構成された開口端部を有し、
前記取り外し可能なキャップは、前記キャップを前記ハウジングから取り外すと前記バイアルが前記放出ノズルから分離されるように構成される、注入装置。
(10) 実施態様9に記載の注入装置において、
前記取り外し可能なキャップは、前記開口端部上に取り外し可能なカバー要素を含み、
前記取り外し可能なカバー要素は、前記開口端部にバイアルを挿入する前に取り外されるように構成される、注入装置。
【0043】
(11) 実施態様10に記載の注入装置において、
前記取り外し可能なカバー要素は、シールドを保持し、前記シールドは、前記取り外し可能なカバー要素が前記取り外し可能なキャップ上の所定の場所にあるときに前記放出ノズル上に位置しており、前記取り外し可能なカバー要素が前記取り外し可能なキャップから取り外されると前記放出ノズルから取り外される、注入装置。
(12) 実施態様1〜11のいずれかに記載の注入装置において、
前記バイアルを前記コネクタに挿入する際、前記放出ノズルは、前記バイアルの閉鎖要素を貫通して、前記バイアルと前記流体容器との間に流体経路を形成する、注入装置。
(13) 実施態様1〜12のいずれかに記載の注入装置において、
前記流体容器は、注射器であり、前記放出ノズルは、針である、注入装置。
(14) 実施態様1〜13のいずれかに記載の注入装置において、
作動時に前記駆動装置を解放して前記分配ピストンに作用し、前記注射器をその延出位置に動かし、前記放出ノズルにより流体を排出するように構成された、解放機構、
を含む、注入装置。
(15) 実施態様1〜14のいずれかに記載の注入装置において、
前記流体容器の中身が排出された後で前記流体容器をその延出位置から後退位置まで動かすように構成された後退機構、
を含む、注入装置。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】本発明の一実施形態による注入装置のサブアセンブリの斜視図を示す。
図2図1の実施形態による注入装置の構成要素の分解組立図を示す。
図3a図1による注入装置の側断面図を示す。
図3b図1による注入装置の側断面図を示す。
図3c図1による注入装置の側断面図を示す。
図3d図1による注入装置の側断面図を示す。
図4a】本発明の代替的な実施形態による注入装置の側断面図を示す。
図4b】本発明の代替的な実施形態による注入装置の側断面図を示す。
図4c】本発明の代替的な実施形態による注入装置の側断面図を示す。
図4d】本発明の代替的な実施形態による注入装置の側断面図を示す。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d