特許第5718250号(P5718250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718250
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】改善された複合材料
(51)【国際特許分類】
   B62D 29/04 20060101AFI20150423BHJP
   B32B 5/28 20060101ALI20150423BHJP
   B32B 7/04 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
   B62D29/04 Z
   B32B5/28 A
   B32B7/04
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-544081(P2011-544081)
(86)(22)【出願日】2009年12月21日
(65)【公表番号】特表2012-514545(P2012-514545A)
(43)【公表日】2012年6月28日
(86)【国際出願番号】GB2009051753
(87)【国際公開番号】WO2010079319
(87)【国際公開日】20100715
【審査請求日】2012年12月19日
(31)【優先権主張番号】0900090.2
(32)【優先日】2009年1月7日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】504132032
【氏名又は名称】ヘクセル コンポジッツ、リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓
(74)【代理人】
【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100122655
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 裕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100107504
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 克則
(74)【代理人】
【識別番号】100117569
【弁理士】
【氏名又は名称】亀岡 幹生
(74)【代理人】
【識別番号】100149799
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 陽一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100166109
【弁理士】
【氏名又は名称】田続 誠
(72)【発明者】
【氏名】カウセ、ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ハドリー、フィリップ
【審査官】 長谷川 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−204735(JP,A)
【文献】 特開2004−291408(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D17/00−23/00
25/00−25/08
25/14−25/22
27/00−29/04
B32B1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性樹脂と、少なくとも3層の繊維強化構造層と、少なくとも1層の減衰層とを含み、繊維強化構造層と減衰層との数の比が少なくとも3:1である消音性ビークルボディシェル構成材を形成するのに用いられる硬化性ラミネートであって、
前記消音性ビークルボディシェル構成材の最外面の最も近くに配置されることになる少なくとも1つの最も上の位置にある繊維強化構造層であって、構造繊維と硬化性エポキシ樹脂とを含む前記繊維強化構造層と、
少なくとも1つのそれよりも低い位置にある繊維強化構造層であって、構造繊維と硬化性エポキシ樹脂とを含む、前記繊維強化構造層と、
前記の最も上の位置にある繊維強化構造層と前記のそれよりも低い位置にある繊維強化構造層との間に配置されている減衰プリプレグであって、構造繊維と硬化性エポキシ樹脂を含むプリプレグと、そのプリプレグの表面に接着された未硬化ゴム層の前記減衰層とを含む前記減衰プリプレグとを含み、
前記の未硬化ゴム層の減衰層は繊維強化材を含まず、前記の構造繊維と硬化性エポキシ樹脂を含むプリプレグが繊維強化構造層を形成している、
前記硬化性ラミネート。
【請求項2】
前記の繊維強化構造層と減衰層との数の比が、5:1から20:1である、請求項1に記載の硬化性ラミネート。
【請求項3】
前記繊維強化構造層の少なくとも50%が、0.1から1.0mmの厚さを有する、請求項1に記載の硬化性ラミネート。
【請求項4】
1.0から10.0mmの厚さを有する、請求項1に記載の硬化性ラミネート。
【請求項5】
前記未硬化ゴム層が未硬化のニトリルゴムから作られている、請求項1に記載の硬化性ラミネート。
【請求項6】
互いに隣接する4層以下の減衰層を含む、請求項1に記載の硬化性ラミネート。
【請求項7】
合計で5層以下の減衰層を有する、請求項1に記載の硬化性ラミネート。
【請求項8】
前記の最も上の位置にある繊維強化構造層と前記のそれよりも低い位置にある繊維強化構造層中の構造繊維が一方向繊維であって、前記の減衰プリプレグ中の構造繊維が一方向繊維である、請求項1に記載の硬化性ラミネート。
【請求項9】
前記消音性ビークルボディシェル構成材が航空機用の構成材である、請求項1から8までのいずれか一項に記載の硬化性ラミネート。
【請求項10】
型に接触している、請求項1から8までのいずれか一項に記載の硬化性ラミネート。
【請求項11】
少なくとも1.0mの表面積を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の硬化性ラミネート。
【請求項12】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の硬化性ラミネートを加熱することによって硬化するプロセスにより得られる、剛性ボディシェル。
【請求項13】
ラミネートビークルボディシェル構成材を構成する方法であって、熱硬化性樹脂及び構造繊維を含んだシート状減衰プリプレグ又はセミプレグ層を、そこに繊維を含まない未硬化ゴム層を緊密に接触させた状態で配置し、少なくとも1層の前記減衰プリプレグ又はセミプレグ層をボディシェル構成要素の最終的な形状に形成するステップと、その前又は後に、硬化性ラミネートビークルボディシェル構成材が形成されるように追加の繊維構造層を配置し、次いでラミネートを加熱しそれによってラミネートを硬化することにより、前記追加の繊維構造層と前記減衰プリプレグ又はセミプレグ層との数の比が少なくとも3:1である前記ラミネートビークルボディシェル構成材を生成するステップとを含む、前記方法。
【請求項14】
前記減衰プリプレグ又はセミプレグ層の後に配置される追加の繊維構造層が配置された、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記の追加の繊維構造層が一方向繊維であって、前記の減衰プリプレグ又はセミプレグ層中の構造繊維が一方向繊維である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消音性を有する、硬化性複合ラミネートのビークルボディシェル構成材と、そのような複合ラミネートを形成するための方法と、形成された剛性硬化ラミネートに関する。
【背景技術】
【0002】
複合材料は、特に、非常に低い材料密度の優れた機械的性質を提供するに当たり、伝統的な構造材料にも勝る十分裏付けされた利点を有する。その結果、そのような材料の使用は益々広まるようになり、その適用例は、「工業的」及び「スポーツ及びレジャー」から高性能の航空宇宙用構成材にまで及ぶ。
【0003】
エポキシ樹脂などの樹脂を含浸させた繊維配置を含むプリプレグは、そのような複合材料の生成に広く使用される。典型的には、そのようなプリプレグのいくつかのプライは望み通りに「重ね合わされ」、得られるアセンブリ又はラミネートは型の内部に配置され、典型的には高温に曝すことによって硬化され、その結果、硬化された複合ラミネートが生成される。
【0004】
しかしながら、そのような複合材料、特に薄い、低密度の、高剛性複合体は、その表面を通して流体、典型的には気体を通過させる適用例において、共鳴振動する傾向を有する。そのような振動は、複合体の耐用年数を短縮する可能性があり、旅客機の適用例に特有な課題であるかなりの量の騒音を発生させる可能性もある。
【0005】
最新のジェットエンジン航空機において、巡航中の客室内での騒音に対する主な要因は、高速で機体を通過する乱流境界層の励起である。表面の圧力変動は、胴体で振動を開始させ、これらの振動は広帯域騒音として客室内に伝達される。
【0006】
航空機の構造で複合材料の使用が増すにつれ、騒音発生の問題がより深刻になる。この問題に対処するいくつかの方法があるが、最も一般的には、振動エネルギーが熱に変換される振動の減衰がある。
【0007】
複合材料を減衰する既知の方法は、振動中に複合構造と共に変形するように、一旦形成された構造に粘弾性層を付着させることである。粘弾性層の粘性は、振動を熱に変換することによってその振動を散逸させる。この技法の開発では、拘束層として知られる剛性層を、粘弾性層の上面に配置する。これには、粘弾性層が剪断により変形し、そのエネルギー吸収能を増大させるという効果がある。ゴム及びアルミニウム層を含む、市販のいわゆる拘束層減衰製品がある。
【0008】
US2006/0208135では、それ自体が複合体に取着される構造部材に、拘束粘弾性ラミネートを取着させる。
【0009】
しかしながら、拘束層減衰の技法が騒音を低減するのに非常に有効である一方で、この技法では、複合体の重量を大幅に増加させ、典型的には、旅客機で非常に一般的であるように、下にある複合体の厚さが数ミリメートルしかない場合に重量が2倍になる。また、付着させた層は、ボディ構造に一致しなければならず、これは高度に湾曲した又は凸状の領域では不可能と考えられる。
【0010】
複合構造の内部部品として、減衰層を導入する試みがなされてきた。米国特許第5,487,928号は、構造層の間に粘弾性層を挟んで交互に重ねられた層を含む、繊維強化ラミネートを開示する。
【0011】
米国特許第6,764,754号は、多数の減衰層と多数の構造層とを交互に重ねた積層体を有する硬化可能なラミネートが生成される、特定のタイプの挟み込みを提示する。
【0012】
しかしながら、そのような構造は、多数の層があるため非常に厚くなる傾向があり、硬化したラミネートの機械的強度は、減衰層が存在しない場合に考えられるよりもはるかに低くなる。
【0013】
US2008/0277057は、構造胴体の一部を、構造要素で取り囲まれた粘弾性減衰要素で置き換えることを開示する。
【0014】
したがって、騒音減衰のためのいわゆる受動的アプローチでは、著しい重量増加を必然的に引き起こさなければならず、拘束層の減衰が、旅客機に関する唯一の現実的な解決策と考えられる。
【0015】
検出された振動を取り消すために圧電アクチベータを作動させる圧電センサを含む、より精巧なシステムが提示されている。このシステムは、航空機の、ある限局領域で有効にすることができるが、そのコスト及び関連ある補助電子機器及び将来のメンテナンス問題を考えると、広い面積のボディ被覆範囲には不適切である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、公知の手法に関わる著しい欠点を考えると、特に広い面積にわたって使用するための、騒音減衰を導入するさらに都合の良い方法が、当技術分野で求められている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様では、本発明は、熱硬化性樹脂、少なくとも3層の繊維強化構造層、及び少なくとも1層の減衰層を含み、構造層と減衰層との数の比が少なくとも3:1であり、したがって、高温に曝すことによって硬化したときに剛性ボディシェル(rigid body shell)になる、硬化性ラミネートビークルのボディシェル構成材(curable laminate vehicle body shell component)に関する。
【0018】
多数の構造層をごく少数の減衰層と共に含む、硬化可能なラミネートで作製されたボディシェルを提供することによって、ごくわずかな重量増加でポストキュア拘束層減衰技法と同様に良好な騒音減衰特性を有することができる、硬化された構造が提供されることがわかった。さらに、広範なボディシェル配置構成は、ラミネートが未硬化であるときに、その曲率とは無関係に覆うことができる。さらに、機械的完全性の減損に関する公知の問題は、少数の減衰層を有するだけで最小限に抑えられ又は排除される。
【0019】
隣接する構造層の存在により、減衰層用に拘束層が有効に設けられると考えられる。したがって本発明は、上述の利点の全てを保持するプリキュアラミネート(pre−cure laminate)に組み込まれた拘束層減衰溶液を、提供すると見なすことができる。
【0020】
減衰層(単数又は複数)は、ラミネートが硬化された場合、下記の性質、即ち:−100℃から100℃、好ましくは−80℃から0℃のガラス転移温度(Tg);−60℃から100℃、好ましくは−30℃から50℃の範囲のtanδピーク;及び少なくとも30℃の温度範囲に及ぶ、好ましくは少なくとも60℃の範囲に及ぶ損失率ピーク(E”)の、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全てを有する材料であると特徴付けることができる。
【0021】
対照的に、構造層は、ラミネートが硬化された場合、下記の性質、即ち:100℃から300℃のTg;100℃から400℃、好ましくは150℃から300℃の範囲のtan δピーク;及び30℃未満の温度範囲に及ぶ損失率ピークの、少なくとも1つ、好ましくは少なくとも2つ、より好ましくは3つ全て又はそれ以上を有する材料であると特徴付けることができる。
【0022】
減衰特性は、ラミネートの機械的完全性が保存される、非常に少ない減衰層だけで有効である。したがって、構造層と減衰層との比は、好ましくは3:1から50:1であり、より好ましくは5:1から20:1である。
【0023】
別の態様では、本発明は、熱硬化性樹脂と、少なくとも1層の繊維強化構造層と、少なくとも1層の減衰層とを含む硬化性ラミネートのビークルボディシェルの構成材であって、構造層と減衰層との厚さの比が少なくとも3:1であり、したがって、高温に曝すことによって硬化した場合には剛性ボディシェルになる、上記構成材に関する。
【0024】
この態様では、構造層と減衰層との厚さの比は、好ましくは3:1から50:1であり、好ましくは5:1から20:1である。
【0025】
広く様々な状況に適用可能であるが、本発明は、ラミネートが比較的薄い場合、即ちそのような複合体は振動し易く且つ比較的軽量であるので、特に適している。したがって、構造層の、好ましくは少なくとも50%は、0.1から1.0mmの厚さを有し、好ましくは0.15から0.5mmの厚さを有する。理想的には少なくとも80%、又はさらに実質的に全ての構造層が、この厚さを有する。
【0026】
したがってラミネートは、好ましくは1.0から10.0mmの厚さを有し、好ましくは1.0から5.0mm、より好ましくは1.5から3.0mmの厚さを有する。
【0027】
ラミネートは、様々なタイプ及び形の熱硬化樹脂を含んでいてもよい。例えば、樹脂は、繊維層同士の間に個別の層として存在していてもよい。しかし、典型的には、樹脂は繊維層の構造内にプリプレグされるが、いくつかの繊維層は、いわゆるセミプレグ配置構成において望まれるように、場合によっては「乾燥」したままにされる可能性がある。樹脂は、パターン内に又は層として存在してもよく、どのデザインを選択するかは当業者の裁量による。
【0028】
構造層の、硬化可能な熱硬化性樹脂は、フェノールホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリアミン(メラミン)、ビスマレイミド、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、ベンゾキサジン樹脂、ポリエステル、不飽和ポリエステル、シアン酸エステル樹脂、又はこれらの混合物の樹脂など、当技術分野で従来より公知のものから選択してもよい。エポキシ樹脂が特に好ましい。硬化剤及び任意選択で促進剤を、望みに応じて含めてもよい。
【0029】
構造層の繊維は、広く様々な形をとることができ、広範にわたる適切な材料から作製することができる。繊維は、意図される適用例の要件に応じて望み通りに、一方向であってもよく、又は多方向の配置構成に織られていてもよく、又は不織布であってもよい。好ましい配置構成は、一方向の繊維を使用し、その繊維方向が交互になるように構造層を配置して、擬似等方性アセンブリを形成することである。その他のプライ積層配置構成は、構成要素の特定の適用例に応じて採用することができる。
【0030】
繊維は、炭素繊維、ガラス繊維、又はアラミドなどの有機繊維から作製してもよい。
【0031】
減衰層は、典型的には、他の熱硬化性材料を含み、減衰を引き起こすのに十分な物理的性質を有することを条件に様々な適切な形をとることができる。減衰層は、好ましくは、実質的に又は完全に未硬化である。これは好ましくは、他の熱硬化性材料が実質的に又はさらに完全に未硬化である。好ましい実施形態では、減衰層は、ゴム、特にモノマー単位のブチル、クロロブチル、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、スチレン、及びアクリロニトリルをベースにしたものを含む。ニトリルゴムは好ましいゴムである。
【0032】
或いは、又はさらに、減衰層は、上述の構造層で使用したものと同じ又は類似のものにすることができる硬化性樹脂材料を含んでいてもよい。典型的には、樹脂は、減衰層として機能するために添加剤を必要とすることになる。
【0033】
減衰層は、充填剤、その他のポリマー、可塑剤、軟化剤、増量剤、柔軟剤、及び粘着付与剤を含めた、広く様々な添加剤を含んでいてもよい。雲母などの層状構造を有する充填剤は、層の減衰特性を強化するので有益である。
【0034】
減衰層は、取扱いを支援するために、上述の繊維状強化構造を含んでいてもよい。しかし、そのような構造は、その減衰特性を妨げる可能性があると考えられ、したがって理想的には最小限に保持される。したがって好ましくは、減衰層は0から50重量%の繊維を含み、好ましくは5重量%から35重量%、より好ましくは20重量%まで含む。しかし、繊維強化材のない減衰層が、最も好ましいと考えられる。
【0035】
減衰層の存在は、ラミネートの機械的性質に有害であると考えられるので、多数の減衰層が存在する場合には、これらの層は互いに接触していないことが好ましい。したがって好ましくは、ラミネートは、互いに隣接する減衰層を4層以下、好ましくは3層以下、より好ましくは2層以下含み、最も好ましくは、互いに隣接する減衰層はないことが好ましい。
【0036】
さらに、ラミネートは、好ましくは合計で5層以下の減衰層を有し、好ましくは4層以下、より好ましくは3層以下、最も好ましくは2層以下を有する。好ましい実施形態では、ラミネートは、単一の減衰層を含有する。
【0037】
本発明によるラミネートは、不要な重みの導入を回避するので、このラミネートは、ビークルボディのかなりの領域に広げることができる。したがって、硬化性ラミネートは、好ましくは少なくとも1.0mの表面積を、より好ましくは少なくとも2.0mの、最も好ましくは少なくとも5.0mの表面積を有する。
【0038】
さらにラミネートは、この軽量という性質を考慮すると、理想的には、航空機ボディのシェル構成材として使用するのに適している。
【0039】
本発明のラミネートは、ラミネート構造を配置するために、当技術分野で公知の任意の適切な方法によって製造してもよい。しかし好ましくは、この方法は、そこに緊密に結合した減衰層を有するプリプレグ又はセミプレグを配置するステップを含む。このように、硬化性ラミネートは、型に接触させて配置することができる。
【0040】
したがって、第2の態様において、本発明は、ラミネートビークルボディシェル構成材を構成する方法であって、熱硬化性樹脂及び構造繊維を含んだシート状プリプレグ又はセミプレグ層を、そこに減衰層を緊密に接触させた状態で配置し、減衰プレプレグ又はセミプレグをボディシェル構成材の最終的な形状に形成するステップ;その前又は後に、硬化性ラミネートのビークルボディシェル構成材が形成されるよう追加の繊維構造層を配置し、次いでラミネートを高温及び任意選択で高圧に曝し、それによってラミネートを硬化することにより、ラミネートビークルボディシェル構成材を生成するステップを含む、上記方法に関する。
【0041】
好ましくは、追加の繊維構造層は、減衰プリプレグ又はセミプレグの後に配置される。
【0042】
本発明の方法により生成されたラミネートは、硬化性ラミネートのビークルボディシェル用に、上述の物理的、構造的、又は化学的性質のいずれかを有することができる。
【0043】
第3の態様では、本発明は、実質的に又は完全に未硬化の硬化性減衰層を緊密に接触させている、樹脂及び構造繊維を含むシート状硬化性プリプレグ又はセミプレグに関する。
【0044】
プリプレグ又はセミプレグに接触した減衰層は、硬化性ラミネートビークルボディシェル用に、上述の物理的、構造的、又は化学的性質のいずれかを有することができる。特に、減衰層は、繊維強化材がないことが好ましい。
【0045】
ラミネート又は硬化性プリプレグ若しくはセミプレグは、剛性ボディシェルを生成するために、真空バッグ、オートクレーブ、又はプレス硬化などの任意の適切な公知の方法を用いて、高温及び任意選択で高圧に曝すことによって硬化してもよい。
【0046】
第4の態様では、本発明は、そこに減衰層を緊密に接触させている、樹脂及び構造繊維を含むシート状硬化性プリプレグ又はセミプレグを製造する方法であって、減衰層は、繊維シートを減衰材料の溶液に浸漬し、溶媒を蒸発によって除去することにより形成される、上記方法に関する。
【0047】
次に本発明について、下記の図を参照しながら、例として示す。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明によるプリキュアラミネートを、分解組立ての形で示した概略図である。
図2】本発明による硬化したラミネートを示す概略図である。
図3】本発明による減衰プリプレグを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
図を参照すると、図1は、2層の上部構造層12と、減衰層14と、8層の下部構造層16を含むラミネート10を示す。
【0050】
構造層12、16は、硬化性エポキシ樹脂をプリプレグした一方向炭素繊維強化層を含む。繊維の配向は、0°/90°のレイアップが得られるよう、交互になるようにする。各構造層は、0.2mmの厚さを有する。
【0051】
減衰層14は、炭素繊維織布に含浸させた、硬化可能な及び未硬化のニトリルゴムを含み、0.4mmの厚さを有する。
【0052】
したがってラミネート10は、2.4mmの厚さを有する。
【0053】
図2は、2層の上部構造22と、減衰層24と、6層の構造層26とを含む、硬化したラミネート20を示す。ラミネート20は、ビークルボディシェルの構成材を形成し、騒音減衰特性並びに適切な材料特性を提供する。
【0054】
図3は、減衰層34を緊密に接触させた状態の1枚のプリプレグ32を含む、減衰プリプレグ30を示す。プリプレグ32は、エポキシ樹脂をプリプレグした一方向炭素繊維強化材を含む。繊維の方向は、図3に見ることができ、これは単なる例示を目的としたもので、減衰層34をプリプレグ32から剥離した状態を示す。
【0055】
減衰プリプレグは、ロール表面に供給してもよく、又は公知の手法で展開してビークルボディシェル又はその他の構成世上尾を形成してもよい。典型的には、他の構造層が配置され、例えば、追加のプリプレグ又はセミプレグ層が配置されて、硬化したときに適切に強力なラミネートが得られるようにする。
【実施例】
【0056】
ここで、例1は実施例であり、例2と3は参照例である。
(例1)
未硬化のニトリルゴム化合物(E10956NBR Black、Berwin、UK)を、液圧プレスで、室温でプレスすることにより、面積重量が約310g/mのシートを得た。次いでこのゴム層を、一方向航空宇宙グレードプリプレグM21E/34%/268/IMA(Hexcel、UK)のプライに付着させ、アセンブリのプライ(ply)2及び3の間にゴム層を挟んだ8プライUDラミネートにアセンブルした。プリプレグ積層体は、プリプレグ製造業者が推奨する硬化サイクル−真空バッグ、180℃で2時間という最終的な硬化時間によるオートクレーブ硬化を使用して、ラミネートに硬化した。形成されたラミネートは、良好な寸法安定性を有するように見えた。このラミネートを切断して、120mm×42.5mmと測定される試験片を形成した。試験片を、強力な紙クリップを利用することによって2つの隣り合う角から吊り下げた。綿の紐をこのクリップに取着し、次いで試験片を試験チャンバ内に吊るした。小型の加速度計(モデル352C22、PCB Piezoelectronics)を、パネルの後部の中心にしっかりと固定し、これを、アナログ・デジタル変換器を介して、シグナル解析ソフトウェア(SignalCalc Ace(商標)、Data Physics)を実行するPCに接続した。
【0057】
再び、PCに接続された計装ハンマー(モデル086C01、PCB Piezoelectronics)を使用して、パネルの正面の中心に直接打ち付けた。試験を室温で実施した。パネルの初期励起及びその連続する共鳴を記録して解析した。
【0058】
周波数領域プロットを、試験片上に位置付けられた加速度計からの時間領域シグナルの、高速フーリエ変換を介して作成した。パネルの第1の主要な共鳴モードを、この周波数応答関数から決定した。このパネルの第1の主要な共鳴モードは、約1300Hzで見出された。引き続き行われる減衰処理は、この共鳴の正確な周波数を変化させたが、この値は、毎回分析ごとに特定することが容易であった。
【0059】
この周波数でのラミネートの減衰を報告するのに、動的シグナル解析ソフトウェアを使用した。このソフトウェアは、帯域幅(電力半値)法を使用して計算した。各試験を3回繰り返し、シグナルを平均した。結果を、減衰層要素を持たない対照ラミネートと比較した。
【表1】
【0060】
結果を、市販の減衰処理、Smac(Toulon、フランス)製のSmacsonic(商標)とも比較した。試験片は、上述の場合に類似したサイズの試験片を、アルミニウムで裏打ちされたSmacsonic(登録商標)拘束層減衰要素で覆うことによって生成した。
【0061】
約1300Hzでの減衰値を、重量及び厚さのデータと共に表1に示す。本発明によるラミネートは、重量及び厚さのわずかな増大だけで、優れた減衰応答を提供することがわかる。
【0062】
(例2)
未硬化ゴム化合物(E10956NBR Black、Berwin、UK)の溶液/分散体を、固形分濃度約7.5%としてメチルエチルケトンで生成した。本発明による減衰層は、面積重量が約190g/mの支持された未硬化のエラストマー要素を得るために、20g/mのランダムカーボンベール(Technical Fibre Products製のOptimat 203)にこの溶液/分散体を含浸させることにより生成した。この構造を、例1で使用したようなプリプレグ上に層状化し且つこのプリプレグに緊密に接触させ、例1のようなプリプレグのラミネート構造内に含ませ、次いで前述のように硬化し試験をした。
【0063】
このラミネートの厚さ及び面積重量は、それぞれ2.29mm及び3.47kg/mであり、約1300Hzで2.64%の減衰値をもたらした。上記結果との比較によってわかるように、重量又は厚さに有意な変化のない対照ラミネートに対し、減衰が210%改善されたことが示されている。
【0064】
(例3)
未硬化ゴム化合物(E10956NBR Black、Berwin、UK)の溶液/分散体を、約7.5%の濃度でMEKで生成した。拘束層減衰要素は、面積重量が約50g/mの支持された未硬化のエラストマー要素を得るために、4g/mのポリエステルベール(Technical Fibre Products、UK製のT2570/01)にこの溶液/分散体を含浸させることによって生成した。軽い圧力及び中程度の温度を使用して、この軽量の支持された減衰層を、M21E UDカーボンプリプレグ(Hexcel、UK)のプライに緊密に固定した。この完全に一体化した構造を、ラミネート構造に含め、上述のように硬化し試験をした。硬化したラミネートは、厚さ2.21mm及び重量3.33kg/mであり、約1300Hzで1.39%の減衰値をもたらした。未硬化のプリプレグに緊密に結合させることにより、この例は、自動テープ配置(ATL)などの現在利用可能な技術を使用した処理に特に適切であるべきである。
図1
図2
図3