(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718254
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】ラクトフェリンの製造方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/79 20060101AFI20150423BHJP
A23J 1/20 20060101ALI20150423BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20150423BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20150423BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20150423BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20150423BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20150423BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20150423BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20150423BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20150423BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20150423BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20150423BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20150423BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20150423BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20150423BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
C07K14/79
A23J1/20
A61K37/14
A61P1/00
A61P1/04
A61P1/16
A61P43/00 107
A61P35/00
A61P29/00
A61P31/04
A61P1/02
A61P17/02
A61P27/16
A61P27/02
A61P7/06
A61P11/00
【請求項の数】17
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2011-546988(P2011-546988)
(86)(22)【出願日】2010年1月28日
(65)【公表番号】特表2012-516319(P2012-516319A)
(43)【公表日】2012年7月19日
(86)【国際出願番号】IB2010000149
(87)【国際公開番号】WO2010112988
(87)【国際公開日】20101007
【審査請求日】2013年1月28日
(31)【優先権主張番号】61/202,088
(32)【優先日】2009年1月28日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511182574
【氏名又は名称】ペローデイン,ジヤン−ポール
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100088236
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 輝一
(72)【発明者】
【氏名】ペローデイン,ジヤン−ポール
【審査官】
櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】
特開平03−109400(JP,A)
【文献】
特開平10−059864(JP,A)
【文献】
特開2008−214265(JP,A)
【文献】
国際公開第2009/009706(WO,A1)
【文献】
特表平09−509165(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/119644(WO,A1)
【文献】
国際公開第2005/075500(WO,A1)
【文献】
特開2002−326950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記の段階:
a)55℃を超える温度で処理されていない原料を準備する段階、
b)該原料を塩化ナトリウム濃縮溶液を用いてカチオン交換樹脂上で抽出して、ラクテニン(LN)又はミルクベーシックプロテイン(MBP)の溶液を得る段階、
c)該LN又はMBP溶液を、pH4ないし9の酢酸塩緩衝液を用いて平衡化したカチオン交換樹脂上で精製し、そして種々の溶質濃度の種々の緩衝溶液を用いて溶出する段階、及び
d)95%を超える純度を有し、ポリマーを有しておらず、且つ実質的にLPS、内毒素及びアンギオゲニンを含有しないラクトフェリンを含有するフラクションを収集する段階、
から成る、ラクトフェリンの製造方法。
【請求項2】
濃縮及び膜分離段階がb)段階の後に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記c)段階は、少なくとも4つの溶出段階、汚染物を収集する段階、ラクトペルオキシダーゼを収集する段階、LPS、内毒素、プロテアーゼ及びアンギオゲニンを収集する段階、及びラクトフェリンを収集する段階から成る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ラクトペルオキシダーゼ、LPS、内毒素、プロテアーゼ及びアンギオゲニンを収集する段階は、pH4ないし7にて行われる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ラクトフェリンを収集する段階は、pH7ないし9にて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記精製段階において、溶質は、0.02ないし1.5Mの濃度の塩化ナトリウムである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
95%を超える純度を有し、ポリマーを有しておらず、9%ないし15%の鉄飽和度を有し、LPS、内毒素及びアンギオゲニンを実質的に含有しない請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【請求項8】
50pg/mgよりも少ないLPS、内毒素及びアンギオゲニンを含有する、請求項7に記載のラクトフェリン。
【請求項9】
新生児の消化管の成熟、又は胃腸炎の回復状態にある腸粘膜の組織修復を促進するための、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【請求項10】
新生児の肝合成を向上させるための、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【請求項11】
単球のナチュラルキラー(NK)活性を高めるための、且つ該NK及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の細胞毒性機能を高めるための、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【請求項12】
マクロファージ、T及びB−リンパ球及び白血病細胞上の特定の受容体を介した潜在的な抗腫瘍剤としての、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【請求項13】
幾つかの炎症性サイトカインの発現を低下させるための、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【請求項14】
細菌を阻害するか又は殺すための、或いは、バイオフィルム細菌に関連した疾患を治療するための、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【請求項15】
前記バイオフィルム細菌に関連した疾患は、嚢胞性線維症又は口内炎である、請求項14に記載のラクトフェリン。
【請求項16】
創傷ケア溶液、複数の創傷のケア溶液、耳ケア液、創傷治療用の軟膏又は眼ケア溶液を調製するための、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【請求項17】
呼吸器感染疾患(URTI及びLRTI)を治療するための、請求項1ないし6のうちいずれか1項に記載の方法により得られたラクトフェリン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、全ての活性が最適であって、且つ如何なる二次的影響も無い品質のラクトフェリン(Lf)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
65年以上も前、牛乳中に“レッド プロテイン(red protein)”として最初に同定され、そして1960年に精製されて以降、ラクトフェリンは、研究者の興味を惹きつけ、そして当惑させてきた。アミノ酸配列、三次元構造及び詳細な鉄結合特性のその後の決定によって厳密に確立されたラクトフェリンは、トランスフェリン属の一員としての糖タンパク質であり、且つその生物学的機能は鉄結合に関連するという自然な推測が強かった。
【0003】
種々の研究センターが、該タンパク質の幾つかの生物学的な鍵となる機能に迫るのに重要な役割を果たしてきた。ラクトフェリンは、炎症応答の増幅において重要な役割を有する多形核白血球の特定の顆粒中の主要成分として単離された。Masson及びベルギー人グループによる広範な研究によって、細胞性免疫におけるラクトフェリンの明確な役割が確立され、そして内毒素性ショック及び低鉄血症の仲介物であるマクロファージ上の特定のラクトフェリン−受容体の同定が可能となった。Montreuil及び彼のフランス人グループによる先駆的努力によって、ラクトフェリンの生物化学特性が明らかとなった。Lonnerdalは、腸管内での金属イオンの吸収におけるラクトフェリンの栄養的な役割を明らかにした。Broxmeyer及び彼の共同研究者等は、骨髄造血におけるラクトフェリンの調節機能を報告している。彼の側から、Reiterは、幾つかの微生物の生育を阻害する牛乳ラクトフェリンの能力を報告し、そして細菌からの栄養的な鉄の喪失が抗菌活性の要因であることを見出した。Arnold及び彼の共同研究者等は、種々の微生物に対するラクトフェリンの殺菌活性を報告した。日本国の森永乳業株式会社の富田及び彼の研究グループは、ラクトフェリンの酸/ペプシン加水分解物が、カチオン性抗菌ペプチド“ラクトフェリシン(lactoferricin)”を生成し得ることを見出した。
【0004】
幾つかの研究が、ラクトフェリン補給が非常に優れた健康効果及び幾つかの疾患に対する強力な保護を与え得ることを確立している。機能的な特徴付け技術が、ラクトフェリンが介在する多機能活性の分子機構を解明した。さらには、世界中の研究室の研究者等が、無作為選抜されたヒト試験及び生体内実験モデルにおけるラクトフェリン補給による機能的成果を立証している。
【0005】
しかし、環境上の損傷に対する哺乳類の免疫防御の第一ラインの鍵となる成分として機能するこの細胞外糖タンパク質の多機能活性が、実験室で生成された良好な品質のラクトフェリンを用いて証明されたとしても、我々は、市販のラクトフェリンについてもそうであるとは限らないことを見出した。
【0006】
工業的過程の間に、Lfは、ラクトペルオキシダーゼのような他の
ミルクベーシックプロテイン(MBP)、幾つかの免疫グロブリン、及び濃度がカチオンイオン交換樹脂の特異性に依存する他の汚染物の存在下、牛乳又は乳清から抽出される。Lfを抽出しそして精製するために構成するのは容易な工程である。実際、我々は、MBPに含有される殆どの部分のタンパク質及び酵素が着色されるという利点を有している。樹脂に結合する種々の成分の溶出は、種々のNaCl濃度を含有する溶液を用いて行われる。そのような手順を用いると、生産者は、90ないし92%の純度が、種々の用途に使用されるのに十分純粋なLfに対応するものと考えている。
【0007】
しかしながら、これら工程のいずれも、及び商業規模の純度のラクトフェリンのための他のいずれの工程も、ラクトフェリンの安定性及び活性に影響する汚染物を除去できていない。
【0008】
汚染物酵素は、現在存在する市販のラクトフェリン製剤に存在することが明らかである。これら酵素は、牛乳又は乳清からのラクトフェリン精製の間に共精製される。
【0009】
汚染物に関し、下記に示されるとおり、我々はまた、アンギオゲニンがLfの精製の間に精製され得ることを見出した。該分子は、Lfに非常に近似する15kDaの分子量及び9.5の等電点pHを有している。
【0010】
該分子は、癌細胞を捕食するための血管の形成に関連しており、血管新生が腫瘍の成長及び転移の発達に必須である。Lfの精製の間に、該分子は少なくとも4倍に濃縮され、これは消費者の健康に確実に有益でない。
【0011】
アンギオゲニンは、損傷部位に侵入するために基底膜を通って内皮及び平滑筋細胞が移動することを可能にする炎症プロセスに寄与する。アンギオゲニンは、腫瘍細胞の新生血管を促進し、そして癌細胞の転移の拡散を促進する。
【0012】
アンギオゲニンは、Lfと非常に近似する9.5の等電点pHを有する15kDaのタンパク質である。1997年にStrydom等により記載されるように(非特許文献1)、アンギオゲニンは、CM−52(カチオン交換クロマトグラフィー樹脂)に適用され、そしてpH6.6の、50mMリン酸ナトリウム中の1M NaCl溶液にて溶出された。そして該分子がLfと共に共精製され、そして市販のLf全ての存在におけるSDS−PAGEゲル中に検出されたことは、驚くことではない。
【0013】
他の問題は、我々もまた示すLfポリマーの熱処理による生成であり、これは以下を参照されたい。
【0014】
それ故、汚染物、タンパク質分解物及びLPSを除去し、細菌生育に対する作用を高め、そして長期のタンパク質安定性を保持するために、ラクトフェリン製剤の新規精製及び安定化方法が非常に必要とされている。
【0015】
牛乳分泌物中の豊富なタンパク質としてもともと同定されたが、ラクトフェリンは、表面上皮において優先的に発現し、そして粘膜環境中に分泌される。記載されるように、ラクトフェリンは、牛乳中だけでなく、鼻腔内及び気管内、及び胃、生殖器、及び眼の分泌部位においてもまた高濃度で生成される。ラクトフェリンはまた、好中球中に高濃度で生成され、そこでは第二顆粒中に貯蔵され、そして炎症中に放出され、そしてそれらの抗菌活性に貢献する。
【0016】
ラクトフェリンは、利用できる鉄を捕捉し、そしてこの不可欠な成長要素を細菌の鉄要求ドメインから奪い得る2つの相同性の鉄結合ドメインを有している。この場合、該タンパク質は、広範な微生物及び特定の酵母に対して静菌効果を与える。さらには、該タンパク質のアミノ末端近くに位置するカチオン性ペプチドの存在によって、ラクトフェリンは、該タンパク質の鉄結合機能には依存せずに抗菌及び抗内毒活性を有することを示している。かかる部位は、細菌のメンブランを崩壊させることにより、そして内毒素とも呼ばれる脂質−Aを含有する細菌のリポ多糖類に結合し且つ失活させることによって、作用する(
図1参照)。
【0017】
ラクトフェリンはまた、炎症の緩和、骨成長の促進及び発癌抑制のような活性に影響する細胞内シグナル伝達経路を調節し得る。
【0018】
このように、その抗炎症活性は、炎症性サイトカインの生成を阻害する能力に関連するが、幾つかの独特の機構、及びマイトジェン活性化されたタンパク質キナーゼ経路を通して生じる骨成長の調節による。多数の研究が、ラクトフェロンが癌の成長を阻害する抗癌特性を有し、このことが、細胞周期に影響するか、又はインターロイキン−18のようなサイトカインの発現の上方調節に帰する経路を調節する能力に起因することを示している。
【0019】
さらには、ラクトフェリンの抗菌機能性は、そのタンパク質の立体構造的、金属結合及び環境条件に依存している(非特許文献2)。抗菌活性は、ラクトフェリンが細菌表面に結合すると高まる。特定のラクトフェリンが結合する細菌の標的は、種々のグラム陽性及びグラム陰性の細菌性病原菌に同定されている(非特許文献3)。大腸菌を包含するグラム陰性の腸内細菌の小孔形成外膜タンパク質に対するラクトフェリンの高親和的な相互作用は、ラクトフェリンの抗菌結果にとって重要である(非特許文献4)。このように、変更された外膜透過を引き起こすことによる、ラクトフェリンが媒介するグラム陰性菌の外膜損傷及びラクトフェリンが引き起こす抗菌相乗作用は、そのような抗菌結果の典型例である(非特許文献5)。細菌表面、特に外膜とのラクトフェリンの相互作用は、腸管上皮に対する細菌の付着防止及び腸粘膜からの病原菌の分離のような別の抗菌機構をもたらす。ラクトフェリンの特異的な結合は、細菌の外膜保護機能を瞬時に破壊し、そして病原菌コロニー化因子及びエンテロトキシン生成の停止をもたらす。
【0020】
他の側面から、Appelmelk及び彼の共同研究者等(非特許文献6)は、LfがLPSの一部である脂質Aに結合することを見出し、そしてElass(非特許文献7)は、この結合部位が、Lfの活性の主要部に位置づけられるラクトフェリンのN−末端(ペプチド1ないし52)に位置することを示した。これら結果から、ラクトフェリンの活性と、ラクトフェリンの分子構造に結合するLPSの存在との間に存在する関係を理解することは容易である。
【0021】
腸管腔から血流へのLPS及び内毒素の連続移動が存在している。健康な個人においては、血漿がLPS及び内毒素の腸内流入を失活させ、そして損傷から内器官を保護している。しかしながら、腸の浸透性のいかなる乱れも、血流へのLPS及び内毒素の移動を増加させてしまう。そのような大量の流れは、LPS及び内毒素を失活させるために血漿の能力を消尽させてしまい、そして最終的に臨床的内毒素血症を引き起こす(非特許文献8)。実験的な証拠が、巨大分子損傷の結果として、或いは細胞外及び細胞内調節過程を妨げることによって、反応性酸素種が内毒素血症の間の細胞損傷の重要な媒介物であることを示唆している。生理的内毒素血症を防止する重要な機構は、腸管腔からリポ多糖類(LPS)を減らすことである。
【0022】
N−末端(ラクトフェリシンペプチド)上で、Lfは、高親和性を有するLPSの毒性部分である脂質−Aに結合し、そしてLPS及び内毒素の効果を中和するために治療薬として作用する(非特許文献6)。Lfは、血流へのLPS及び内毒素流入を効果的に減少させる一方で、毒素は腸管腔内にとどまってそのような結果に到達し、LfがLPS及び内毒素を含まず作られることが重要である。さらには、健康人によるLf食事がLPSによって被覆されている場合、これらLPSは分子から除去され、そして血流に移動してしまう。
【0023】
しかしながら、このプロセスにおいて、LPS及び内毒素が連続して多量に放出される場合、Lfは急速に消耗し、そしてこの機能を発揮するのに十分な量で存在しなくなる(非特許文献9)。静脈内投与された内毒素により誘発された致命的ショックに対するLfの保護効果が報告されている。内毒素(該分子それ自体がその生成の間に内毒素を含まない場合に)の攻撃に対するLfにより媒介される保護は、低体温症の誘発に対する及び健康の全般的向上に対する2つの耐性と関連している。流れのサイトメトリ測定についての生体外研究が、投与依存的手法において、Lfが、内毒素が単球に結合するのを阻害することを示しており、このことは、生体内でのLf作用の機構が単球/マクロファージにより誘発される炎症−毒性サイトカインの誘発の防止によることを示唆している(非特許文献10)。
【0024】
ヒトの治療の試みがまた、宿主防御の初期活性におけるLf消費の正の影響を示している(非特許文献11)。健康人は、高い食作用活性及び超酸化物保護を包含する血清好中球機能の改善を示した。さらには、Lfと、肺胞マクロファージ、単球、クッパー細胞(kupfer cell)、肝内皮細胞、好中球、血小板、及びT−リンパ球との特異的な相互作用は、粘膜及び細胞免疫におけるLfの役割を高める(非特許文献12)。そうでなければ、Lfとこれら細胞との相互作用による全てのこの活性は、Lf構造上のLPSの存在によって、及び製造工程の間の高すぎる温度(15秒後に>550℃)に使用による、及び分子の乾燥のための高すぎる温度によるLfのグリカン鎖の損傷により、そしてまた、分子の熱処理の間に現れるLfポリマーの存在により、低下する。
【0025】
腸成熟及び粘膜修復に関連して、経口Lf投与が腸粘膜の免疫刺激因子として機能し得ることが示されている。
【0026】
消化管は、授乳の間の新生児においてより急速に成熟する。この作用は、腸管上皮に結合するLfに依存している。Lfは、生体内のクリプト細胞DNAへのチミジン組み込みを促進し得る。この栄養作用は、胃腸炎のような状態にある腸粘膜の細胞調節及び組織修復に貢献している(非特許文献13)。Lf構造上のLPSの存在は、腸管上皮に結合するLfが、LPSと同じ場所にあることを意味するペプチド(1−52)に位置しているという事実により、Lfのかかる活性を低下させる。
【0027】
Lfはまた、鉄、及び、亜鉛、銅のような他の微量必須元素の腸内吸収において重要な役割を果たしている(非特許文献14)。Lfはまた、重金属イオンの過剰摂取から腸粘膜を保護する。ヒト十二指腸刷子縁中の特定のLf結合受容体が、鉄吸収に関与する(非特許文献15)。腸内Lf受容体が同定された。腸刷子縁膜からのこのLf受容体を介した鉄吸収の増大が報告されており(非特許文献16及び非特許文献17)、そこではまた、特定の受容体に対する分子の結合に応答し得るLfペプチドが、LPSの結合にまた応答し得るペプチド1−52上に位置している。
【0028】
その抗腫瘍活性に関して、Lfは、投与依存的手法における単球のナチュラルキラー(NK)活性を高めることを示している。Lfは、NK及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の細胞毒性機能の両方を強く高める。LPSがLf構造に結合せず、且つ、Lfがアンギオゲニンにより汚染されていない場合には、Lfは、細胞が媒介する免疫応答及び低投与量での血清細胞毒性因子の効果的なモジュレータである。しかしながら、高濃度において、Lfが媒介する誘発は、免疫細胞集団の密度及び部分集合だけでなく、Lf構造上のLPSの存在に従い、正又は負のフィードバックをもたらし得る。
【0029】
マクロファージ、T及びBリンパ球及び白血病細胞上の特定のLf受容体の発見は、その構造上のLPSの存在により消去され得るLfの潜在的な抗腫瘍能力を確立する(非特許文献18)。
【0030】
Lfの抗炎症活性は第一に、鉄を捕捉する能力に関連している。炎症した組織中の鉄の蓄積は、高毒性の遊離ラジカルの触媒生成をもたらしてしまう。炎症応答の間、好中球は、攻撃部位まで移動して、それらのLf含有酸性顆粒を放出する。このことは、炎症した組織部位において強い酸環境を作り、Lfの鉄捕捉及び解毒能力を増幅することとなる。炎症の間の鉄ホメオスタシスを調節する他に、Lfが種々の炎症応答を直接に調節し得るという強い証拠がある。かかる鉄に依存しない様式の作用は、細菌感染及び敗血症性ショックの間の主要な炎症性媒介者である細菌性LPSに結合するLfに基づいている(非特許文献19)。Lfはまた、胃粘膜中に発現され、そして胃腸上皮細胞上に位置する受容体と相互作用するため、胃炎の調節に重要な役割を果たし得る。Lfのこの活性は、LPSがLf構造を被覆した場合には、完全に低下してしまうか、又は消滅同然となる。幾つかの生体内研究が、Lfの経口投与が、ヘリコバクターピロリ菌により誘発される胃腸障害を低減させ得、且つ、内毒素血症の間の腸粘膜統合を防止し得ることを示している。ここでまた、Lfのそのような活性は、LPSがLf構造に結合される場合には非常に乏しい。
【0031】
Lfの鉄に依存しない活性は、下記に記載され得るとおりである。内皮細胞の中心的な炎症性機能の一つは、炎症組織部位における循環白血球の補充である。リポ多糖類(LPS)又は内毒素は、グラム陰性菌の外膜中の主たる糖脂質である。LPSは、直接的に、又は、サイトカインの中間段階、内皮性白血球付着分子(E−セレクチン)及び細胞内付着分子(ICAM−1)のような付着分子の発現を通して引き起こす炎症の潜在的な刺激剤である。内皮細胞の内毒素刺激は、特定の受容体である、可溶性タンパク質を基礎としたCD14(sCD14)により媒介される。CD14は、血清中に、そして単球−マクロファージの表面上の結合タンパク質(mCD14)として存在する55kDaの糖タンパク質である。LPS(内毒素)の濃度に依存するこの機構において、LPS−結合タンパク質(LBP)と呼ばれ、凝集体からCD14へのLPSモノマーの移動を触媒してsCD14−LPS複合体を形成する中間体が存在する。従って、sCD14−LPS複合体による、又はLPS単独による内皮細胞の活性化は、発熱及び低血圧症を包含する種々の病態生理学的反応を引き起こし、白血球湿潤及び微小血管血栓症を促進し、そして敗血症性ショックの間に広まった血管内炎症の原因に貢献する。
【0032】
そうでなければ、哺乳類の外分泌液中に見られ、そして炎症の間に好中球の顆粒から放出されるラクトフェリンは、細胞の活性化を調節し得、そしてLPSの存在により引き起こされる重大な損傷を回避し得る。
【0033】
感染後に、20μgr/mLよりも高い濃度のラクトフェリンが血中に検出され得る。ラクトフェリンは、炎症に対する初期防御システムの一部である。生物内のいかなる細菌の存在も、炎症、癌及び他の疾病を引き起こす。この誘発は、サイトカイン生成、細胞付着分子の発現の増加、並びに、全身性LPS曝露により特定の宿主組織に入る、単球、マクロファージ及び好中球による炎症性媒介体分泌を包含する免疫応答を刺激する。LPSに対する宿主の応答は、腫瘍壊死因子α(TNF−α)、インターロイキン(IL)属のもの、反応性酸素種、及び脂質のような免疫調節分子により媒介される。これら調節剤の過剰生成は、多臓器不全を進行させる組織損傷を引き起こす。
【0034】
ラクトフェリンは、mCD14に対するLBPが媒介するLPSの結合を防止し、そしてLPSが刺激する単球からのサイトカインの放出を低減させる。ラクトフェリンはまた、炎症プロセスを調節し得る。実際に、マウスにおけるLPSの亜致死量に対するラクトフェリンの保護機能が研究により報告されている。結論として、遊離LPSに結合するラクトフェリンの能力は、部分的には、分子の抗炎症活性に起因している。
【0035】
ヒト及び動物が、初期防御システムの欠陥を強化するか回避するためにラクトフェリンを経口により又は注射により摂取する場合には、ラクトフェリンの品質が、微生物の侵入を再度防止しなければならない健康人における内因的経路から生成されるものと同一であることが根本である。老化プロセスの間は、内生ラクトフェリン生成が非常に乏しいことを考えると、患者は、経口的に又は注射により、外生ラクトフェリンを摂取せざるを得ない。
【0036】
原料の汚染は、Lfのヒトの健康への適用を危うくしてしまう。原料のもと、タンパク質精製、乾燥プロセス及び収穫方法、製造環境及び貯蔵条件を包含する幾つかの要因は、全て累積的にLfタンパク質の生物学的含有量(bioburden;バイオバーデン)に寄与している。従って、原料として使用される場合には、牛乳、乳清(whey)又は乳清(milk serum)は発酵性連鎖球菌(サーモフィルス菌)を有しており、そして酸性環境を有する培地は幾つかの酵母及びカビを選択的に豊富にしてしまう。ちなみに、これら微生物集団は、幾つかのプロバイオティクスの生育を増加し及び競争的に制限することが一般に知られている。
【0037】
乳房炎源からの貯蔵乳の汚染した乳由来のLfは、ストレプトコッカス ウベリス(Streptococcus uberis)、黄色ブドウ球菌及びコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を包含するグラム陽性菌由来のLPSの存在を許してしまう。他方、胞子形成バチルス種、アシネトバクター カルコアセチカス(Acinetobacter calcoaceticus)、クレブシエラ オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、シュードモナス(Pseudomonas)種、及び、E.coli.を包含する大腸菌のような環境汚染、並びにそのような微生物のLPSは、溶出緩衝液、生物付着装置、エアダクト等を通してLf材料中に入り込んでしまう。同様の微生物学的質の問題点が、GMOを由来とした、そして、コメ、タバコ、酵母、細胞培地又は遺伝子組み換え動物のような種々の発現体由来の組換え体Lfタンパク質について存在する。それ故、そのようなLPSの微生物汚染の消失または有意な低減が、一般に、市販のLfのヒトの健康への適用について非常に望ましい。
【0038】
上記説明したように、原料中のLPS及び内毒素含量は、Lf適用に不利に影響してしまう。グラム陰性菌の外膜中のリポ多糖類(LPS)は典型的に、脂質−A(又は内毒素)、非循環コアオリゴ多糖類、及び遠位多糖類(distal polysaccharide)(又はO−抗原)として既知である疎水性ドメインから成る(非特許文献20)。LPS及び内毒素は、広範囲の有害な生理学的応答の引き金となる、サイトカイン及び炎症の他の調節剤の誘発を刺激する(非特許文献21)。タンパク質単離に使用される牛乳又はその誘導体のグラム陰性菌のバイオバーデン、加工プラント環境及び条件が、Lf原料中のLPS及び内毒素濃度に対して累積的に影響している。タンパク質材料の単離中の内毒素汚染のための潜在的な貯蔵庫が明らかになっている(非特許文献22)。リランダーはまた、種々の環境条件での内毒素濃度の発生を明らかにし、そしてさらには、カビの細胞壁由来の非細菌性の内毒素、特に1−3−β−D−グルカンに関連した危険性を指摘した。従って、クロマトグラフィー樹脂の微生物保有規格、加工装置の衛生実践、さらに重要なことには、Lf精製に使用される水の品質が、精製されたLf材料のLPS及び内毒素濃度に累積的に影響し得、それ故、市販のLfの生体内適用を限定してしまう。Lf−LPS及び内毒素の複合体の先在が、腸上皮とのLf相互作用の能力を低下させ、そしてLPS及び内毒素の腸内流入を制御する能力を低下させてしまう。
【0039】
従って、全ての市販のラクトフェリンは、その分子構造に結合するLPSが回避されていなければならない。例えば、Ward,Loren及びその協力者らは、特許文献1において、Lfに結合した内毒素を除去するために、及び内毒素を含有しないラクトフェリン製品(EFL)を製造するための方法を記載している。貴方がリムルス試験を使用したLPS濃度を解析するならば、当てはまらない。ラクトフェリン構造に結合したLPSのこの濃度がとても重要である場合に、LPS−Lf複合体は、LPS活性を総じて阻害するよりもむしろある程度、マクロファージ中の炎症媒介物の生成を誘発し得るということがまた示されている。それは、主として、LPS濃度がとても重要である場合に、LPS結合→LPSなし の間に平衡が存在し、そしてそれが、炎症媒介物の生成を誘発するLPSなしの存在という事実による。安全性のために、Lf生産者が該分子を余儀なく精製させられる理由は、Lf分子構造の表面に結合したLPSを除外している。
【0040】
牛乳及び/又は乳清から製造される場合、ラクトフェリンは、牛乳中に存在する細菌性LPSによりその分子構造上で被覆されており、そしてそのような牛乳貯蔵液が乳房炎牛に基づいた細菌により汚染された牛乳により汚染されている場合には危険となり得るのが通常である。我々は、ラクトフェリン活性の一部が、牛乳中に存在する細菌がLPSに結合する抗菌的な役割により表されるということを知っている。そのことは、抗酸化、抗菌、及び細菌のバイオフィルム形成を阻害する能力及びそのプレバイオティック活性それぞれに関するその生物学的活性の重要な部分を喪失するLPSにより完全に被覆されたラクトフェリンが牛乳から抽出されることが驚くことではないということを意味している。
【0041】
さらには、Lfは、熱処理により変性してしまう。ラクトフェリンの熱安定性を研究するのに使用され得る種々のパラメータが存在する。熱処理変性は、一次速度則に従う。該変性は、温度とともに増加する。鉄を有していないラクトフェリン(アポ−ラクトフェリン)は、鉄で飽和したラクトフェリン(ホロ−ラクトフェリン)よりも急速な変性を示す。それは、ラクトフェリンが鉄に結合したときの、より安定な立体構造を反映している。熱変性の間中、幾つかの結合の破壊はLf構造の重要な変化を引き起こす。熱安定性は、ラクトフェリン及びカゼイン塩及び他の牛乳タンパク質の間の相互作用により、他の牛乳成分の存在中で増加する。
【0042】
牛乳から抽出されるラクトフェリンは、鉄で飽和されたラクトフェリンの9ないし20%の鉄飽和度を有する。しかしながら、牛乳又はチーズ乳清の殺菌後に抽出されるタンパク質は、牛乳又はチーズ乳清のいずれの熱処理前に抽出されたラクトフェリンと比較しても、同様の活性度及び同様の数値を有していない。
【0043】
実際には、熱処理は、胃に存在するタンパク質分解酵素に対してラクトフェリンを保護するのに重要である分子のグリカン鎖を破壊し得、そしてまた、Lfポリマーを生成し得る。この効果はまた、ラクトフェリンが熱処理されると、該分子が280nmにてより高い吸光度を有しているという事実により示されている(表1)。
【0044】
熱処理に感知するグリカン鎖の破壊はまた、細胞上のラクトフェリンの非特異的結合を増加させるだろう。細胞成長を促進するにもかかわらず、ラクトフェリンの非特異的結合は、細胞の窒息をむしろ引き起こす。実際に、Lfの純度がアセトニトリル勾配を使用した逆相HPLCにより決定されるということが、市販のLfの生産者により確立されている。幾つかの市販のLfの純度を解析すると、我々は、タンパク質汚染物がLfピークに対しておよそ8ないし9%を表すことを観察した。同量の市販Lfを希釈して、灰分及び水分含量により調節したにもかかわらず、我々は、280nmにて同様の光学濃度を見出せなかった。このことは、Lfとして溶出する幾つかのタンパク質が光学濃度を向上し得ることを意味している。
図2、、、において、我々は、イオン交換クロマトグラフィーFPLC(モノ−S樹脂−スルホプロピル)により解析されたLfが、熱処理Lf表面と比較してより小さい表面を示していることを観察し得る。該表面の高さの低下は、FPLC解析を用いて観察されたショルダー部分に相当し、且つクロマトグラムの記載を簡素化するために我々がピークCと呼ぶ新規表面の存在に依存している。我々はまた、Lf表面が2つのピーク:ピークA及びピークBに分割されることを観察し得た。
【0045】
ピークAについて、シアル酸を含有しない天然のものと比較して、より低い塩基性能力しか分子に与えない1つのシアル酸含量の存在について、互いに非常に近接しており、且つ対応している。Lf−NFQの場合には、Lf表面はまた、2つの表面(表面A及び表面B)から成る。ショルダー部分(表面C)は、市販のLf中にのみ観察される。ショルダー部分又は表面Cは、下記表1に見られるように、天然Lfと比較して280nmにてより高い吸光度を有する。
【0046】
とにかく、我々は、ピークA及びピークBは純粋なLfの一部であると考えることが出来る。ピークCの存在は、逆相クロマトグラフィーの使用によっては検出され得ない。このピークCの存在を理解するために、我々は、280nmないし800nmの完全な吸収スペクトルを行い、そして我々は、Lf中の鉄含量に依存しない410nmでのソレーバンドを観察した(
図2)、なぜなら、このソレーバンドは465nm付近の波長に存在すべきものだからである。さらには、280nmでのこのピークCの吸収は、Lfのほぼ2倍である。
【0047】
ピークA及びBのみを収集し、そしてモノS樹脂上に再度適用すると、我々は、ピークA及びピークBのみが、ピークCにより汚染されることのないクロマトグラム中に存在することに気づき得、もし我々がピークA及びBを含有する溶液を5分間72℃の温度にし、そして我々がこの溶液をモノS樹脂上で解析した場合、我々は、もとのクロマトグラムと比べてピークAの表面の及びピークBの表面の重要な低減だけでなく、ピークCの存在を観察する(
図2)。さらに長期間、我々がLfを熱処理すれば、さらに多くのピークA及びBがより低い表面を有し、そしてより多くのピークCが重要となる。
【0048】
もし我々が逆相上で比較した場合、熱処理しないLfのクロマトグラム及び5分間熱処理(72℃)にかけた同様のLfのクロマトグラムについて、我々は、熱処理しないLfの表面が、熱処理を受けたLfの表面よりも低いことに気づき得る(
図3)。ピークCは、ずっと高い吸光度を有するLfポリマーとして特徴付けられる。
【0049】
問題は、製造者により精製されるラクトフェリンが、より高濃度の分子の添加によって埋め合わされる生物活性のパーセンテージを失うという事実だけでなく、我々がある水準の活性まで到達するような高いLf濃度の使用を助言する、さらには我々が高いLPS濃度の使用を推奨するという事実に基づいている。そのことは、患者を保護するのではなく、炎症プロセスを引き起こしてしまう(表3)。
【0050】
幾つかのLf製品は現在、健康食品市場において広く利用されている。そのような製品の大部分は、初乳、牛乳又はチーズ乳清から部分的に単離されたLf由来のものである。さらには、微生物的及び毒性的な品質問題は、潜在的な食品材料としてのLfの生体内能力規格を危うくする。
【0051】
ラクトフェリンは大抵、イオン交換、とりわけカチオン交換、アフィニティ(固定化ヘパリン、一本鎖DNA、リシン又はアルギニン)、染色性及びサイズ排除のような、1つ以上の種々の型のクロマトグラフィー樹脂により、牛乳又は乳清(乳清又はチーズ乳清)から精製される。限外濾過膜がまた、牛乳又は乳清からラクトフェリンを分離するために使用され得る。富田及び彼の共同研究者等(非特許文献23)は、カチオン交換クロマトグラフィー及び接線流メンブラン濾過(tangential−flow membrane filtration)の双方を使用する工業的プロセスの例を与えている。カチオン交換クロマトグラフィーを使用する他の精製が、Okonogi及び彼の共同研究者により(特許文献2)、Ulberにより(非特許文献24)並びにZhang及び彼の共同研究者により(非特許文献25)記載されている。何人かの研究者等は、疎水性相互作用クロマトグラフィーを使用してラクトフェリンを精製するための分子の疎水的性質を利用した。Macholdは、塩濃度の範囲下で、幾つかの疎水性相互作用樹脂上のラクトフェリンの保持挙動を記載している(非特許文献26)。
【0052】
種々の方法が、特許文献3においてDr Denis Petitclercqにより広く記載されており、そしてその発明の目的は、ラクトフェリン分解に応答し得る酵素汚染物を除去するための方法を提供することであった。これら酵素の除去及び特異的な阻害剤の添加は、ラクトフェリン製剤の分解及びラクトフェリンの活性の損失を防止する。彼は、ラクトフェリンの安定性及び活性を改良することが可能であるということを示すため、全ての市販のラクトフェリンに彼の方法を適用した。彼は、結合及び溶出モード及び吸収様式において、界面活性剤の存在中、排除された溶質の双方の存在において、ラクトフェリンの溶液を、親水性吸収剤及び疎水性吸収剤と接触させる段階、及び実質的に汚染物酵素及び/又はラクトフェリン阻害剤の無いラクトフェリンを含有するフラクションを収集する段階から成る、ラクトフェリンを精製する方法を提供している。
【0053】
彼は、その方法を使用して精製したラクトフェリンと比較して、市場で入手できる同様の供給者並びに他の供給者から製造された市販のラクトフェリンが、同様の活性を示さなかったことを示した。抗菌活性に関して、精製されたラクトフェリンは、培地中でラクトフェリンのより高い濃度でその活性を失った(
図4)。市場で入手できる市販のラクトフェリン製剤のいずれも、最少の阻害濃度を示すことが出来ず、そして彼は、牛乳又は乳清から抽出されたこれら市販のラクトフェリンが、高い濃度で成長阻害活性を失ったことを示した。にもかかわらず、Dr Petitclercは、そのような現象がプロテアーゼ又は分解したペプチドLfの存在によるものであると結論したが、彼はアンギオゲニンの存在に決して言及していない。
【0054】
ラクトフェリンは我々の異なった分泌液中に存在するので、全ての研究にもかかわらず、工業プロセスも、業務用規模の精製のためのいずれの他の存在するプロセスも、ラクトフェリンを精製し得ていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0055】
【特許文献1】国際公開第2009/009706号
【特許文献2】ニュージーランド国特許第N°221082号
【特許文献3】国際公開第2006/119644号
【非特許文献】
【0056】
【非特許文献1】Eur.J.Biochem,247,535−544
【非特許文献2】Naidu AS 及びArnold RR.,1995,Lactoferrin interactions and biological Functions 第259頁ないし第275頁 Totowa,ニュージャージー州,Humana Press
【非特許文献3】Naidu SS他,1991,APMIS,99,1142−1150
【非特許文献4】Erdei他,1994,Infect Immun,62,1236−1240
【非特許文献5】Naidu他,Diagn Microbial Infect,1988,Infect Immun,56,2774−2781
【非特許文献6】Appelmelk BJ,他,1994,Infection and Immunity,62,2628−2632
【非特許文献7】Elass−Rochart E,他,1995,Biochem J.312,839−845
【非特許文献8】OPALSM,2002,J.Endotoxin Res,8,473−476
【非特許文献9】Cacavo 他,2002,J.Endotoxin Res,8,403−417
【非特許文献10】Lee WJ他,1998,Infect Immun,66,1421−1421
【非特許文献11】山口他,1998,Adv Exp Med Biol,443,261−265
【非特許文献12】Hanson LA,1988,Biology ofhuman milk.Nestle Nutrition Workshop series,15,New−York,Raven Press
【非特許文献13】Nichols他,1990,Pediatr Res.,27,525−528
【非特許文献14】Lonnerdal B.,1989,J.Nutr.Suppl,119,1839−1844
【非特許文献15】Cox他1979,Biochem Biophy Acta,588,120−128
【非特許文献16】Kawakami H他,1991,Am.J.Physiol,261,G841−G846
【非特許文献17】Rosa G他,J.Med Biol.Res,27,1527−1531
【非特許文献18】Shau他,1992,L.Leukoc Biol,51,343−349
【非特許文献19】宮沢他,1991,J.Immunol,146,723−729
【非特許文献20】Erridge他,2002,Microbes Infect,4,837−851
【非特許文献21】Raetz他,2002,Annu Rev Biochem,71,635−700
【非特許文献22】Majde他,1993,Peptides 14,629−632
【非特許文献23】富田他,2002,biochem Cell Biol,80,109−112
【非特許文献24】Ulber他,2001,Acta Biotechnol,21,27−34
【非特許文献25】Zhang他,Milchwissenschaft 2002,57,614−617
【非特許文献26】Machold他,2002,J.Chromatogr.A972,3−19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0057】
これら問題を回避することが本発明の目的であり、そして、生体にて生成されるのと同様の品質のLfが、タンパク質分解酵素及びアンギオゲニンのような汚染物の存在を回避することが、細菌性リポ多糖類(内毒素を含む)の存在を回避することが、55℃を超える温度を使用したいかなる熱処理によるグリカン鎖の破壊及びLfポリマーの出現も回避することが、その生物活性の少なくとも90%を有し得るそのような市販のLfを製造し得る新規技術を用いて、開発された。
【課題を解決するための手段】
【0058】
本発明の目的は、
ラクトフェリンの安定性及び活性に影響を与える汚染物を効率的に除去し、そして健康に対する悪影響を有する汚染物を除去すること、
プロテアーゼのタンパク質分解に対して分子を保護するグリカン鎖の熱感応性について解決し、そしてまた重要なことに、ある細胞に対する該分子の結合を改良し、且つLfポリマーの出現を回避すること、
該分子の活性に影響し得るだけでなくそれらの存在により炎症プロセスを誘発し得るラクトフェリンの分子構造に結合した細菌のLPS及び内毒素の存在を回避すること
である。
【0059】
本発明に従うと、少なくとも下記の段階:
a)55℃を超える温度で処理されていない原料を準備する段階、
b)該原料を処理して、ラクテニン(LN)又は
ミルクベーシックプロテイン(Milk Basic Protein)(MBP)の溶液を得る段階、
c)該LN又はMBP溶液を、pH4ないし9の酢酸塩緩衝液を用いて平衡化したカチオン交換樹脂上で精製し、そして種々の溶質濃度の種々の緩衝溶液を用いて溶出する段階、及び
d)95%を超える純度を有し、且つ実質的にLPS、内毒素及びアンギオゲニンを含有しないラクトフェリンを含有するフラクションを収集する段階、
から成る、ラクトフェリンの製造方法が提供される。
【0060】
一の態様において、b)段階は、原料を、排出された溶質濃縮溶液を用いてカチオン交換樹脂上で抽出して、ラクテニン(LN)の溶液を得る段階である(
図5a)。
【0061】
一の態様において、カチオン交換樹脂上の抽出又は精製の段階は、流入又は結合及び溶出モードで行われる。
【0062】
一の態様において、排出された溶質は、塩化ナトリウムである。別の態様において、濃縮及び膜分離段階は、b)段階の後に行われる。
【0063】
他の態様において、c)段階は、汚染物を収集する段階、ラクトペルオキシダーゼを収集する段階、LPS、内毒素、プロテアーゼ及びアンギオゲニンを収集する段階、及びラクトフェリンを収集する段階から成る(
図5b)。
【0064】
一の態様において、汚染物、ラクトペルオキシダーゼ、LPS、内毒素及びアンギオゲニンを収集する段階は、pH4ないし8、好ましくは6ないし7にて行われる。
【0065】
一の態様において、ラクトフェリンを収集する段階は、7ないし9のpHにて行われる。
【0066】
一の態様において、精製段階において、溶質は、0.02ないし1.5Mの濃度の塩化ナトリウムである。
【0067】
本発明に従うと、95%を超える純度を有し、実質的にLPS及び内毒素を含有せず、且つ9ないし20%の鉄飽和度を有するラクトフェリンが提供される。
【0068】
他の態様において、ラクトフェリンは、50pg/mgよりも少ないLPS、内毒素及びアンギオゲニンを含有する。
【0069】
他の態様において、ラクトフェリンは、9%ないし20%の鉄分飽和度を有する。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【
図1】
図1は、グラム陰性菌の細胞壁のLPS及び脂質A(内毒素)の位置を示す。
【
図2】
図2は、熱処理を受けなかったLfのイオン交換FPLCクロマトグラフィー上のクロマトグラム(緑色)、及び熱処理を受けた同様のLfのクロマトグラム(赤色)である。
【
図3】
図3は、熱処理を受けなかったLf、及び熱処理を受けた同様のLfによる逆相HPLC上のクロマトグラムである。
【
図4】
図4は、種々の市販のLf製剤と比較した、Lf−NFQと呼ばれる、SP−セファロースファストフロー(SP−Sepharose Fast Flow)上で精製したウシLfの微量液体希釈法を使用した最小発育阻止濃度の測定を示す。
【
図5】
図5は、ラクトペルオキシダーゼ及びラクトフェリンの生成のフローチャートを示す。
【
図6】
図6は、Lf精製の一般的なダイアグラムを示す。
【
図7】
図7は、一定分量の第二鉄溶液の逐次添加により段階的に完全飽和されたラクトフェリンの光学濃度による鉄結合能力の測定を示す。
【
図8】
図8は、殺菌牛乳から抽出されたラクトフェリン、UHT牛乳からのラクトフェリン、精密濾過された牛乳からのラクトフェリン及び本発明のラクトフェリン(Lf−NFQ)の鉄結合活性を示す。
【
図9】
図9は、抗菌活性を示す。遊離のLPS Lf(Lf−NFQ)と比較して、Lf構造(Lf)上のLPSの存在は、大腸菌に対する抗菌活性を低下させている。
【
図10】
図10は抗菌活性を示す。遊離のLPS Lf(Lf−NFQ)と比較して、Lf構造(Lf)上のLPSの存在は、ヘリコバクターピロリ菌に対する抗菌活性を低下させている。
【
図11】
図11は、動態検査により測定され、そしてウシ牛乳から抽出されたLf(12000pg LPS/mg Lf)及びウシ乳清から抽出されたLf(30000pg LPS/mg Lf)と比較した、Lf−NFQの抗菌活性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0071】
好ましい態様の詳細な記載
Lfは、種々の条件下に依存した熱処理により変性されるため、ウシ初乳、牛乳及びチーズ乳清のような殺菌された原料は、bLf(ウシラクトフェリン)精製のための原料としては適していない。それ故、厳格な加熱を受けていない脱脂粉乳、チーズ乳清及び初乳が、bLf源となり得る。Lfは、そのアミノ酸組成に従いカチオン性天然物であるため、カルボキシメチル(CM)−セファデックス(Sephadex)のようなカチオン交換クロマトグラフィーにより精製され得(Law他,1977;吉田他,2000)、そしてこの精製法は、bLf供給会社のbLf精製のための最もポピュラーな手順である。例えば、脱脂粉乳(pH6.7)又はチーズ乳清(pH6.4)は濾過され、そしてpH調節なしにカチオン交換クロマトグラフィーカラムに適用される。
【0072】
図5に記載されるように、高NaCl濃縮液(8%)を使用したカチオン交換樹脂(抽出樹脂)から溶出される材料が、ラクテニン(LN)又は
ミルクベーシックプロテイン(MBP)と呼ばれる。LNは、ラクトフェリン、ラクトペルオキシダーゼ及び幾つかの他の分子(+/−5%)を含有する溶液である。
【0073】
このLNは、pH5.5のアセテート緩衝液にて平衡化された、我々が精製樹脂(Purification Resin)と呼ぶ別のカチオン交換樹脂に適用される前に、精密濾過され、濃縮され、そして膜分離される。実際に、かかる第二のクロマトグラフィーの間に、LN中に含有される種々の分子は、種々のNaCl濃度を含有する種々の緩衝液の適用により溶出される。かかる第二のクロマトグラフィーは、特許請求されるラクトフェリンを得るのに非常に重要である(
図6)。
【0074】
ラクトフェリンは、限外濾過により濃縮され、そして膜分離によりNaClから分離される。その後、Lf溶液は、低温にて且つ真空下で(凍結乾燥技術)乾燥され、そして食品等級のアルミニウム小袋に貯蔵される。
【0075】
特許請求された方法により得られたラクトフェリンは、下記のとおりLf−NFQと呼ばれる。
【0076】
ラクトフェリンの熱安定性及び化学的安定性
ラクトフェリンの熱安定性を研究するのに必要とされる種々のパラメータが存在する。熱処理変性は一次速度則に従う。変性は温度とともに増加する。鉄を含有しないラクトフェリン(アポ−ラクトフェリン)は、鉄で飽和されたラクトフェリン(ホロ−ラクトフェリン)よりもより急速な変性を示す。このことは、ラクトフェリンが鉄に結合した場合に、より安定な立体構造となることを反映している。熱変性の間に、幾つかの結合の破壊が、Lf構造の重大な変化を誘発する。熱安定性は、ラクトフェリン及びカゼイン塩及び他の牛乳タンパク質の間の相互作用により、他の牛乳成分の存在中で向上する。
【0077】
牛乳から抽出されたラクトフェリンは、鉄飽和されたラクトフェリンの9ないし20%の鉄飽和度を有する。しかしながら、牛乳又はチーズ乳清の殺菌後は、抽出されるタンパク質は、牛乳又はチーズ乳清のいかなる熱処理前に抽出されたラクトフェリンと比較しても、同様の活性度及び同様の数値を有していない。
【0078】
実際に、熱処理は、胃内に存在するタンパク質分解酵素に対してラクトフェリンを保護するのに重要である分子のグリカン鎖を破壊し、そしてLfポリマーを生成してしまう。この結果はまた、ラクトフェリンが熱処理を受けると、該分子が280nmにてより高い吸光度を有する、という事実により示されている。
【0079】
ラクトフェリンの鉄結合活性
精密濾過された牛乳から抽出されたラクトフェリンの活性は、その鉄結合活性について試験される。ラクトフェリンは、一定分量の第二鉄溶液の連続的な添加により、段階的に完全に飽和される。鉄飽和の速度は、465nmにて分光光度的に従う。
【0080】
測定される光学濃度がもうこれ以上変化しない場合に、飽和は達成される(
図7)。図において、ネイティブタンパク質(b1)及び飽和されたタンパク質(b2)についての465nmで測定された吸光度の比を算出する上で、鉄飽和の初期速度を評価する2つの方法が存在する。
b1-----×100=%初期飽和度b2
又はa1/a
ここで、a1:=ネイティブタンパク質に結合した第二鉄のμmol
a =飽和されたタンパク質に結合した第二鉄のμmol
a1-----×100=%初期飽和度
を算出する。
【0081】
ラクトフェリンが手を加えられたものでなく、且つ活性である場合には、その鉄に結合する能力は維持される。他方、タンパク質がUHT処理により変性されるか、又は殺菌処理により部分的に失われるその鉄結合能力を失う(
図8)。
【0082】
ウシラクトフェリンは、9ないし20%の鉄飽和度を有している。鉄の収容力は、精密濾過された牛乳から抽出されたラクトフェリンと本発明のラクトフェリンとの間で同様である、という結果が示されている。2つの結果の間の相違は有意ではない。
【0083】
抗菌活性
上記説明したように、抗菌活性官能性は、そのタンパク質立体構造、金属結合及び媒体条件に依存する(Naidu他,1995)。抗菌活性は、Lfが細菌の細胞表面に結合すると、高められる(Naidu他,1993)。大腸菌を包含するグラム陰性の腸内細菌の孔形成外膜タンパク質とのLfの高い親和性相互作用は、Lfの抗菌効果に対して重大である(Ellison他,1988)。
【0084】
従って、我々がウシ牛乳又はチーズ乳清からLfを生成する場合には、Lf構造に結合した細菌のリポ多糖類が存在していないことを確認することが重要である。
【0085】
ラクトフェリンは、2つの微生物、大腸菌及びヘリコバクターピロリ菌について試験され、その結果は、
図9及び10にそれぞれ与えられる。
【0086】
大腸菌手順
生物材料
BCCM/LMG細菌コレクションからの大腸菌K99:ベルギー国9000 K.L.レデダンクシュトラート35B ベルギーミクロバイオロジー大学の実験室 選択培地SCC Coli/Coliform 色素寒天 ペプトン水 蒸留水
複数ロットのラクトフェリン
【0087】
細菌溶液の調製
0.5mLペプトン中に凍結乾燥した菌を溶解して入れる。
該溶液の100μLを噴霧する
複製する
同時に、9mLペプトン中に100μLを入れる。
3つのチューブを作り、37℃にて24時間インキュベートする。
細菌溶液の1mLを採り、ODを測定する。
細菌溶液のODを測定し、10
4ないし10
5CFU/mLの濃度であった。
【0088】
Lf溶液の調製
各々のロットのLfの500mgrを採る。
蒸留水の100mLを加える。
50mg/mLの溶液。
溶液の濾過。
各々のチューブのペプトン水(9mL)中から400μLを採って8.6mL容量とし、そして0.4mLを添加して、解析する各々のLf粉末について2mgr/mLとする。
10
5ないし10
6CFU/mLの細菌溶液の1mLを添加する。
チューブ対照のため、ペプトン溶液0.0mLを採り、そして細菌溶液の1mLを添加する。
【0089】
操作
種々の溶液を作る:10
−1,−2,−3,−4,−5,−6,−7
【0090】
ペトリ皿での培養
ペトリ皿の中央に、種々の希釈溶液の100μLを置く。
ペトリ皿を37℃にて24時間さらす。
【0091】
講義
24時間後、我々は、大腸菌のCFUを評価する。
【0092】
ヘリコバクターピロリ菌手順
生物材料
ヘリコバクターピロリ菌株:BCCM/LMG細菌コレクション中のLMG8775:3 凍結BCCM(登録商標)培地:ベルギー国9000 K.L.レデダンクシュトラート35B ベルギーミクロバイオロジー大学の実験室
ペトリ皿中のヒツジ血液を有するトリプトン大豆寒天培地
ペプトン水
蒸留水
複数ロットのラクトフェリン
【0093】
細菌溶液の調製
0.5mLペプトン中に乾燥菌株を入れる。
該溶液の100μLを噴霧する。
複製する
同時に、9mLペプトン中に100μLを入れる。
3つのチューブを作り、嫌気条件下にて2日間インキュベートする。
細菌溶液の1mLを採り、ODを測定する。
細菌溶液のODを測定し、10
5ないし10
6CFU/mLの濃度であった。
【0094】
Lf溶液の調製
各々のロットのLfの500mgrを採る。
蒸留水の10mLを加える。
50mg/mLの溶液。
溶液の濾過。
各々のチューブのペプトン水(9mL)中から400μLを採って8.6mL容量とし、そして0.4mLを添加して、解析する各々のLf粉末について2mgr/mLとする。
10
5ないし10
6CFU/mLの細菌溶液の1mLを添加する。
チューブ対照のため、ペプトン溶液9.0mLを採り、そして細菌溶液の1mLを添加する。
【0095】
操作
種々の希釈溶液を作る:10
−1,−2,−3,−4,−5,−6,−7
【0096】
ペトリ皿での培養
ペトリ皿の中央に、種々の希釈溶液の100μLを置く。
嫌気条件下にて、ペトリ皿を37℃にて2日間さらす。
【0097】
講義
2日後、我々は、ヘリコバクターピロリ菌のCFUを評価する。
【0098】
プレバイオティクス増殖及び腸の健康
2つの可能性:
成長インピーダンス検出アッセイ及びマイクロスケール光学濃度アッセイが存在する。
【0099】
1)成長インピーダンス検出アッセイ
培地中のインピーダンス信号(静電容量及び伝導性の機能)を測定することによって乳酸菌又はビフィズス菌のいずれかのプロバイオティクスの成長を観測するのに、バクトメーター微生物観察システムを使用した。
【0100】
0.9%生理食塩水中に調製したLf−NFQの0.25mL及び細菌懸濁液(104細胞/mL)の0.25mLを、ウェルに加えた。0.5mL細菌懸濁液の添加を対照として供給した。植菌したモジュールを32℃にてインキュベートし、そして、6分間隔で48時間、バクトメーターによって、培地中のインピーダンス変化を継続して観察した。細菌成長曲線を、インピーダンス信号のパーセント変化対インキュベーション時間として図示した。基準となるインピーダンス値からの一連の重要な偏差を生じるのに必要とされる時間を、検出時間として定義した。かかる検出時間が対照よりも短い場合には、試験試料は“プレバイオティクス効果”を生じたと考えられる。
【0101】
2)マイクロスケール光学濃度アッセイ
この生体外の細菌成長を測定する方法は、濁度アッセイに基づいている。単純には、滅菌培地の0.1mLをウェルに加えた。試験試料の0.05mL容量を指定されたウェルに加え、続いて+:−105細胞/mL(660nmにて1のO.D.=109細胞/mL から希釈)を含有する細菌細胞懸濁液を用いて植菌した。植菌後、ウェルを37℃にてインキュベートし、そしてマイクロプレートリーダーを用いた660nmでのO.D.を測定することによって培地中の濁度変化として種々の時間にて、細菌成長を観察した。細菌の接種材料の無い培養液を包含するウェルを、滅菌対照として提供した。細菌を植菌した培地を含有するが、試験化合物を含有していないウェルを、正の成長対照として提供した。成長対照と比較して、薬剤が細菌増殖を高めた場合には、プレバイオティクス効果である。
【0102】
LPSを含有していないラクトフェリンは、対照と比較して、検出時間が30%だけ短くなるべきである。通常、プロバイオティクスの検出時間は、15時間と見積もられ、LPSを含有していないラクトフェリンは、この検出時間よりも4ないし5時間だけ短くなるべきである。さらには、プロバイオティクスの試験菌株の増殖度は、LPSを含有していないラクトフェリンよりも>100%だけ高く、これは、リポ多糖類により被覆されたラクトフェリンの少なくとも2倍効果的である。
【0103】
Lf−NFQとして考慮すると、Lf溶液は、対照と比較して検出時間が25ないし30%だけ短くなるべきであり、そしてインキュベーションの48時間後に、対照と比較して最低100%増加すべきである。
【0104】
我々が前述したように、Lfは、鉄剥奪機構によって細菌の成長阻害を引き起こす。シトクローム依存の電子輸送系によりATPを生じる腸内病原菌を包含する多数の生命体にとって、鉄は重要である。しかしながら、腸内プロバイオティクスABL(ABL=アシドフィルス菌、ビフィズス菌、乳酸菌)は、細胞内エネルギー合成のためのシトクローム経路とは独立しており、それ故に、Lfによる鉄剥奪抗菌状態から選択的に逃れている。この腸内環境内のLfによるプレバイオティクス効果は、有益なプロバイオティクス微生物叢を増やし、そして静菌による有害な病原菌の競合的排除に影響する自然淘汰の現象である。乳幼児の長い腸が、腸内病原菌に対する保護効果を有するビフィズス菌種によって優先的にコロニー形成されていることが良く知られている。Lf表面上のLPS及び内毒素の存在は、該分子のこのプレバイオティクス効果を低下させる(表2)。
【0105】
表2:プレバイオティクス活性:乳清から又は牛乳から抽出された市販のLfは、Lf−NFQと比較してより低いプレバイオティクス活性しか有していない。
【0106】
“抗酸化活性”
後述の鉄還元/抗酸化力(FRAP BENZIE I.F.F.and STRAIN J.J.in Methods in Enzymology,Vol299,1990,p15)アッセイを、Lf−NFQの抗酸化活性を測定するために使用した。0.3Mアセテート緩衝液(pH3.6)の40mL、20mM塩化第二鉄の4mL、及び10mM TPTZ(2,4,6−トリス(2−ピリジル−s−トリアジン))の4mLを混合することによって、FRAP剤を調製した。6−OH−2,5,7,8−テトラメチルクロマン−2−カルボン酸の一連の溶液(0.1ないし1.0mM)を、FRAPスタンダードとして使用した。アッセイ前に全ての薬剤を37℃にした。FRAPアッセイは、蒸留水の20μL、Lf−NFQ試料の10μL、及びFRAP剤の150μLを混合することによって、96ウェルのマイクロプレート内で行った。組み合わせ実験において、10μL蒸留水及びLf−NFQの20μLを、FRAP剤の150μLと混合した。37℃での5分間の即時的なインキュベーション(アスコルビン酸について)、及び5分ないし24時間の時間差(Lf−NFQについて)の後、反応混合物の吸光度を593nmにて測定した。アスコルビン酸のFRAP値と比較した試験化合物の抗酸化(FRAP)スコアを与えた。
【0107】
LPSを含有していないラクトフェリン(Lf−NFQ)は、6時間で0.660mMの数値に到達し、そして24時間で0.994mMのピークに達した(
図11)。
【0108】
Lfは、この数値が90ないし100%の数値に到達することを可能にすると考えられ得る。
【0109】
Lfへの細菌性リポ多糖類(LPS)の結合は、幾つかのグラム陰性菌に対するタンパク質の殺菌機構に関連している(Ellison他,1991)。宮沢及び彼の共同研究者は、ラクトフェリンへのLPSの結合が、骨髄細胞株へのラクトフェリン結合の機構を変えるということを示した(1991)。Lfがグラム陰性菌の部位にて相当量のLPSに遭遇する非常に高い可能性があったため、我々は、デオキシリボース酸化アッセイ(Cohen他,1992)によって評価された鉄が供給されるキサンチン/キサンチンオキシダーゼ系から生じる、OH°形成を阻害する能力に対する、LfへのLPS結合の影響を試験した。
【0110】
ラクトフェリンに結合するLPSが好中球へのプライミング効果を低下させる機構は、種々の仮定に組み込まれ得る。LPS受容体に対する親和性の低下、或いはプライミングを生じる情報伝達機構における同時変化の可能性がある。にもかかわらず、データは、ラクトフェリンへのLPSの結合が、敗血症性ショックの状況において生じる炎症性の事象を低下させる手段を提供し得る、という可能性を示唆している。可能性に合致して、ラクトフェリンは、大腸菌が誘発する敗血症性ショックのマウスモデルの死亡率を低下させると報告されている(Zagulski他,1989)。結果的に、我々が
図10において観察し得たように、Lf構造上のLPSの存在は、その抗酸化活性を強く制限している。
【0111】
図11に図示されるように、LPS及び内毒素を含有していないLf(Lf−NFQ)が、その元のLf−乳清又はLf−牛乳と比較して、優れた抗酸化活性を有していることが示されている。
【0112】
表3に示されるように、LPS−Lfが、腫瘍壊死因子(TNF−α)、インターロイキン6(IL−6)及びインターロイキン8(IL−8)の生成を誘発し得ることが示されている。
【0113】
Lfのこの活性を解析するため、我々は、大腸菌HB101(pRI203)に感染した炎症性サイトカインの発現に対するその制御的な役割及び感染していない腸上皮細胞について研究した。この経験のため、我々は、Caco−2細胞、並びに、それぞれ1.650pg LP/mg Lf、22.000pg LPS/mg Lf及び105.000pg/mg Lfを有する試料Lf−A、Lf−B、及びLf−Cを使用して、Berluttiにより記載されるプロトコル(Berlutti他,2006)に従い、そして我々は、Lf−NFQ(39pg LPS/mg Lf)を用いた結果と比較した。Lfの存在なしにCaco−2細胞に感染した場合には、我々は、感染していない細胞と比較して、IL−6、IL−8及びTNF−αのような炎症性サイトカインの発現の有意な増加を観察した(表3)。Lfの存在においては、Lf−NFQの場合だけでなく他のLf試料の場合においてもサイトカインの発現が減少した(表3)。我々は、Lf構造上のLPSの存在が、感染した細胞によってサイトカインの発現を抑制する能力を阻害すると結論付け得る。驚いたことは、構造上に結合した特定量のLPSを含有するLfの存在下で感染していない細胞の場合に、細胞は、サイトカインの発現を誘発し得、そしてこの発現は、39pg LPS/mg Lfしか有していないLf−NFQの場合はそうではないが、Lf構造上に結合したLPSの濃度に依存していることが観察されたことである。この発現は、あるLPSが、細胞培養のために使用される培地に依存してLf構造から引き離され、そして感染していない細胞に対して炎症剤としての役割を果たすことが可能であるという事実に依存し得る。この役割は、Lfの抑制的な役割よりも重要であるように見える。
【0114】
そのような試験に使用されたプロトコルは下記のとおりである。
細胞培養
ヒト大腸癌Caco−2細胞を、NaHCO3/リットルの1.2gr、2mmolグルタミン/リットル、100Uペニシリン/mL,ストレプトマイシン/mLの0.1mg及び20%の熱不活性化されたウシ胎児の血清にて補った、ダルベッコス変性されたイーグルス培地(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)中で、37℃の5%CO2インキュベーター中で、半融合単層として成長させた。感染12時間前に、単層を、Ca2+及びMg2+を含有していないPBSを用いて洗浄し、そしてその後、感染中のトランスフェリンの存在を回避するために、ウシ胎児の血清を含有していない新鮮な培地中で培養した。
【0115】
大腸菌HB101(pRI203)を用いた宿主細胞の感染
該方法は、Berutti他2006により記載されている。半融合Caco−2細胞単層を、LPSを含有していないLfの無い又はその存在下で、或いは、異なった濃度のLPSを含有するLfの存在下で(100μgタンパク質/mL)、大腸菌HB101(pRI203)を用いて細胞当り100の細菌の感染割合で感染させた。4時間のインキュベーション後、細胞を、Ca2+及びMg2+を含有していないPBSを用いて全体的に洗浄した。洗浄後、ゲンタマイシン/mLの100μgを含有する新鮮な培地を、細胞外細菌を殺すために大腸菌HB101(pRI203)を用いて感染させた単層に添加し、そして細胞を37℃にて2時間インキュベートし、そして全体的に洗浄した。単層を、0.3mLトリプシン−EDTA混合物(0.05%トリプシン(1/250)及び0.02%EDTA)を用いて37℃にて5分間処理し、そして1%デオキシコール酸の0.5mLの添加によって溶解させた。細胞溶解液を、Ca2+及びMg2+を含有しないPBS中に希釈し、そして生存している細胞内大腸菌HB101(pRI203)の数を同定するために、アンピシリン(100μg/mL)とともに寒天上に撒いた。
【0116】
ELISAによるCaco−2上澄み中のIL−6、IL−8及び腫瘍壊死因子α(TNF−α)の検出
Berlutti他2006により記載されるように、半融合Caco−2細胞単層を、LPSを含有しないLfの無い又はその存在中で、或いは、種々の濃度のLPSを含有するLfの存在中で(100μgタンパク質/mL)、上記のとおり感染させた。4時間のインキュベーション後、細胞を、PBS中で全体的に洗浄し、単層に、ゲンタマイシン/mLの100μgを含有する新鮮な培地を添加し、そして細胞を37℃にてさらに24時間インキュベートした。最後に、各々のウェルの上澄みを収集し、そしてIL−6、IL−8及びTNF−αの濃度を、標準ELISA定量キット(P&D システムス(P&D Systems,ウィースバーデン,ドイツ国)及びHBTキット(ホランド バイオテクノロジー BV(Holland Biotechnology BV),Firma Bierman,バートナイハイム,ドイツ国)を用いて決定した。
【0117】
表3:大腸菌HB101(pRI203)に感染していないCaco−2細胞又は感染したCaco−2細胞を、Lf−NFQ、Lf−A、Lf−B、Lf−C(100μg/mL)の存在中で、又は存在しない中で、インキュベートした。分泌されたサイトカインの濃度を、ELISAにより決定した。P値<0.01が有意であると考えられる。
【0118】
リムルス試験
我々が上述したように、LPS及び内毒素の存在は、Lfの活性能力の低下に最も重大な汚染物の一つと考えられる。汚染物の種類及び濃度、並びにLfの工場規模製造における良好な製造法のための細菌の質の保証に基づいて、精製工程は、種々の段階の工程の間に除染剤として特定の緩衝液を使用して開発されている。科学技術は、Lfの多機能的性質を高めるために、汚染低下のための処理の範囲を体系的に広げ得、それ故、強力な生理系を創造し得た。
【0119】
さらには、精製工程の間に、全ての緩衝液を調製するのに使用される水は、希釈され、そして精密濾過、オゾン(O3)及びUV254nmにより処理される。この水はピロゲンを含有していない。
【0120】
種々の市販のLf製剤のバイオバーデンは、米国食品医薬品局(FDA)の細菌解析マニュアルに従う標準的アッセイによって測定した。市販のLf製剤中のLPS及び内毒素汚染量を、カンブレックス バイオサイエンス(Cambrex Bioscience),ウォーカーバイル(Walkerville),MDによって開発された試験用キットを用いたリムルス変形細胞ライセートアッセイによって定量した。市販のLfの解析によって、乳清由来のLfは、牛乳由来のLfよりも高いバイオバーデンを有していることが明らかとなった。有意な割合の乳清由来のLfの好気性生菌数が、ペニシリン属及びアスペルギルス属のようなグラム陽性菌として同定された。双方の市販のLf製剤のLPS及び内毒素濃度は、それらの大腸菌及びグラム陰性菌量を反映している。乳清由来のLf中のLPSと内毒素の平均値は、牛乳由来のLf中のそれよりもおよそ3倍高かった。双方のLf製剤中のLPS及び内毒素汚染物は生物的に活性であり、そして刺激された単層及び腸細胞(Caco−2細胞)中のTNF−α(腫瘍壊死細胞)生成を引き起こした(表3)。
【0121】
そのような問題を回避するためには、ラクトフェリン構造を被覆し得るLPS及び内毒素の量は、ラクトフェリンの、50ないし100pg/mgr(
図13)であり、好ましくはLfの、<50pg/mgであるべきである。
【0122】
腸細胞粘膜に対する活性
幾つかの研究によって、実験室内のLfは、腸粘膜細胞再生に対して活性を有し得ることが示されている。我々は、腸炎により入院した生後5ないし9カ月の子供に対して、特定の食事療法を与えた場合の、対照、標準の市販のLf及びLf−NFQと比較した活性を研究した。Lfの濃度は、母乳により与えられたLfと同様であった(15mg/kg/日)。処理開始2日後及び4日後及びまた5日後に、生体試験を行った。細胞再生を、免疫着色技術(PCNA−サイクリン免疫染色−Galand及びDegraef,Cell tissue Kinet,1989,22,383−392)を用いて評価した。20人の被験者がLfなしの特定の食事療法を受け、17人の被験者が、市販のLfを含有する特定の食事療法を受け、そして18人の被験者がLf−NFQを含有する特定の食事療法を受けた。S−相有糸分裂細胞のパーセンテージは、処理後最初の4日間で3つのグループ全てにおいて有意には相違しなかった。(6ないし15%)。
【0123】
5日後、S−相有糸分裂にある細胞のパーセンテージは有意に相違し、我々は、対照グループが5ないし8%であったのに対して、双方のLfグループにおいて、市販のLfを受けた幼児について12ないし15%、そしてLf−NFQを受けた幼児について18ないし21%の急速な増加を観察した。
【0124】
さらには、双方のLfグループについて増加した刷子縁腸細胞のジッサッカリダーゼ活性が表4に記載されており、対照グループについては低いままであった。これら結果は、Lfがひどい腸炎の回復段階における腸細胞再生に対して有利な作用を有していることを示唆している。かかる作用は、市販のLfと比較してLf−NFQの場合において優れていた。
【0125】
表4
研究:栄養補給食事療法に対するLfの添加の、ひどい腸炎の間の増加した腸細胞再生。
試験:17人の幼児−年齢:5ないし10カ月−市販Lf:15mg/kg/日
18人の幼児−年齢:5ないし9カ月−Lf−NFQ:15mg/kg/日
対照:20人の幼児−年齢5ないし15カ月−Lfなし
2ないし4日後及び5日後の腸内生体試験
腸細胞再生(サイクリン/PCNA)
刷子縁ジサッカリダーゼ
【0126】
例:
原料
説明したとおり、熱処理による、ラクトフェリンの変性及び/又はグリカン鎖の破壊及び/又はLfポリマーの出現を回避するために、殺菌前の脱脂粉乳又はカゼイナーゼを含有しない牛乳、又はチーズ乳清又は初乳上澄のような未殺菌の原料からLfを抽出することが重要である。
【0127】
まず第一に、原料は、AFSCA(フードチェーン安全庁;Federal Agency of the Security of the Food Chain)から管理安全番号を受けた農場において、最大10℃にて採集される。
【0128】
原料を50℃にてその上澄みをすくい取り、そしてLfを含有するLNを抽出前に精密濾過する必要がない。にもかかわらず、幾つかの牛乳協同組合は、殺菌の代わりにそれらを構成する1.4μmセラミック製メンブラン上で原料を精密濾過することを好む。
【0129】
ラクトフェリンの抽出
活性部位が12m
3の容量を有する抽出カラムクロマトグラフィーは、2.000リットル(流動床)又はそれ以上の抽出樹脂(処理される原料の量に依存する)を有する。原料を、かかるカチオン交換樹脂に通して適用し、そしてpH6.6のカチオンイオンの下で分子を樹脂に結合させ、そして該樹脂によりLNを抽出し得た。LNは、塩基性タンパク質/酵素により主として構成された混合物である。分子の色彩を考慮すると、樹脂へのそれらの結合を観察することは容易である。我々は、塩基性分子の結合によって、そして主としてラクトペルオキシダーゼによって、白色から黒色へと変化するのを観察するであろう(緑色の強い暗緑色により特徴付けされる)。流速は、原料及びその元の品質、量に応じて、1時間当り25.000リットルないし50.000リットルであり得る。
【0130】
樹脂の結合能力が飽和されるまで、我々は原料を適用し続け(65%Lf、30%LP及び5%汚染物)、そして樹脂の色彩が黒色のままであることを観察した。該分子、最高の等電点pHを表すLfの等電点pHに基づき、我々は、原料をカラムに通して適用し続けることができ、そしてLfが、樹脂に結合したLNの他の分子を移動させ、且つ樹脂上のその位置をとることが可能となることを観察した。飽和した樹脂に必要な容量の2.5倍に相当する特定の時間後、我々は、樹脂が赤色となったことを観察し得、それは、樹脂がその支持体に結合した殆どLfのみを有することを意味している。そのような条件下で、ラクトフェリンは、88%Lf、10%LP及び2%汚染物から成る。
【0131】
組成の濃度が、原料源、適用される時間又は容量に依存するLNは、1.35M NaCl溶液(8%)の適用により溶出されるであろう。溶液は収集されて、我々がラクテニン(LN)又は
ミルクベーシックプロテイン(Milk Basic Protein)(MBP)と呼ぶものが濃縮され、そして30kDメンブランを用いて透析濾過される。我々が精製工程(第二段階)を開始する時間を考慮し、MBP溶液を0.8μmセラミック製メンブランに通して精密濾過した。
【0132】
ラクトフェリンの精製
別のカチオン交換樹脂に適用する前に、LNを4℃にて貯蔵した。LN溶液を、カチオン交換樹脂に適用した。適用する容量は、LN中のラクトフェリンの濃度に関連して樹脂の容量に依存する。この精製樹脂は、アマシャム社(Amersham)製のセファロース ファースト フロー(Sepharose Fast Flow)である。
【0133】
精製樹脂の容量に応じた特定容量のLN溶液を毎日、pH4ないし8.8の50mM酢酸ナトリウム緩衝液及び0.02Mないし1.5Mの濃度のNaCl溶液を用いて平衡化したカチオン交換樹脂に適用した。
【0134】
精製工程は、以下:
−不純物A:pH6.5酢酸ナトリウム緩衝液、0.05M NaClを用いて溶出、
−ラクトペルオキシダーゼ:pH6.5酢酸ナトリウム緩衝液、0.3M NaClを用いて溶出、
−LPS、内毒素、プロテアーゼ及びアンギオゲニン:pH8酢酸ナトリウム緩衝液、0.5M NaClを用いて溶出
−ラクトフェリン:pH8酢酸アンモニウム緩衝液、1M NaClを用いて溶出
のとおり行った。
【0135】
溶出したLfを、層流クリ−ンルームのようなクリーンルーム内で収集する。
【0136】
限外濾過−透析濾過
ラクトフェリン溶液を、30kD有機メンブランを用いた限外濾過(接線限外濾過(tangential ultrafiltration))により濃縮し、そして透析濾過して、3Mの最終溶液を得た。
【0137】
濃度
低伝導率ラクトフェリン溶液を濃縮して、15ないし16%の濃度とした。
【0138】
精密濾過
ラクトフェリンを、0.22μmメンブランを用いた最終的な精密濾過にかけた。
【0139】
凍結乾燥
ラクトフェリン溶液を、真空下、45℃にて凍結乾燥した。
【0140】
粉砕
幾つかの用途のため、ラクトフェリン粉末を粉砕し、そしてミクロ化して80メッシュ寸法の粉末を得た。
【0141】
混合
ラクトフェリンの種々の生成物を混合して、200kgを得た。50grと10grの試料を実現した。
【0142】
充填
ラクトフェリン粉末を、食品等級のアルミニウム−ポリエチレン袋に充填した。
【0143】
精製されたラクトフェリンを操作するか又はコントロールする全ての段階は、精製したラクトフェリンの汚染を回避するために、環境的に制御された閉じられた空間内で、例えば無菌クリーンルーム内で、行われる。
【0144】
本発明はまた、新生児の消化管の成熟、又は胃腸炎の回復状態にある腸粘膜の組織修復を促進するための、上記方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。
【0145】
本発明はまた、新生児の肝合成を向上させるための、上記の方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。
【0146】
本発明はまた、単球のナチュラルキラー(NK)活性を高めるための、且つ該NK及びリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の細胞毒性機能を高めるための、上記の方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。
【0147】
本発明はまた、マクロファージ、T及びB−リンパ球及び白血病細胞上の特定の受容体を介した潜在的な抗腫瘍剤としての、上記の方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。
【0148】
本発明はまた、幾つかの炎症性サイトカインの発現を低下させるための、上記の方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。
【0149】
本発明はまた、細菌を阻害するか又は殺すための、或いは、嚢胞性線維症又は口内炎のようなバイオフィルム細菌に関連した疾患を治療するための、上記の方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。
【0150】
本発明はまた、創傷ケア溶液、複数の創傷のケア溶液、耳ケア液、創傷治療用の軟膏又は眼ケア溶液を調製するための、上記の方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。
【0151】
本発明はまた、鉄不足の場合の上皮細胞を通した鉄吸収のための、及び鉄欠乏性貧血患者のための、並びにまた妊娠女性のための、上記の方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。
【0152】
本発明はまた、呼吸器感染疾患(URTI及びLRTI)を治療するための、上記に記載の方法により得られたラクトフェリンの使用にも関する。