特許第5718267号(P5718267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.の特許一覧

特許5718267流体動圧ベアリング用潤滑油組成物及びこれを用いたHDD用モータ
<>
  • 特許5718267-流体動圧ベアリング用潤滑油組成物及びこれを用いたHDD用モータ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718267
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】流体動圧ベアリング用潤滑油組成物及びこれを用いたHDD用モータ
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20150423BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20150423BHJP
   C10M 129/10 20060101ALI20150423BHJP
   C10M 135/10 20060101ALI20150423BHJP
   C10M 137/04 20060101ALI20150423BHJP
   F16C 17/10 20060101ALI20150423BHJP
   H02K 7/08 20060101ALI20150423BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20150423BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20150423BHJP
【FI】
   C10M169/04
   C10M105/32
   C10M129/10
   C10M135/10
   C10M137/04
   F16C17/10 A
   H02K7/08 A
   C10N20:00 C
   C10N20:02
   C10N30:00 Z
   C10N30:02
   C10N30:06
   C10N40:02
【請求項の数】12
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-84457(P2012-84457)
(22)【出願日】2012年4月3日
(65)【公開番号】特開2013-133470(P2013-133470A)
(43)【公開日】2013年7月8日
【審査請求日】2013年9月5日
(31)【優先権主張番号】10-2011-0140025
(32)【優先日】2011年12月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ハ・ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ヒュン・キュ
【審査官】 ▲吉▼澤 英一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−146374(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125842(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/125819(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/096600(WO,A1)
【文献】 特開2010−180970(JP,A)
【文献】 特開2009−242547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 169/04
C10M 105/32
C10M 129/10
C10M 135/10
C10M 137/04
F16C 17/10
H02K 7/08
C10N 20/00
C10N 20/02
C10N 30/00
C10N 30/02
C10N 30/06
C10N 40/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル系ベースオイル(base oil)と、前記ベースオイル100重量部に対して0.01〜3.00重量部の含量を有する添加剤と、を含み、15℃において密度が0.866g/cm〜0.900g/cmであり、40℃において動粘度が9.50センチストークス(cSt)以下である、流体動圧ベアリング用潤滑油組成物。
【請求項2】
前記ベースオイルの粘度は、100℃において2.30センチポアズ(cP)以下である、請求項1に記載の流体動圧ベアリング用潤滑油組成物。
【請求項3】
前記添加剤は、酸化防止剤、磨耗防止剤、腐食防止剤、極圧添加剤、粘度指数向上剤、静電気防止剤及び不活性剤からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項1に記載の流体動圧ベアリング用潤滑油組成物。
【請求項4】
前記添加剤は、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(2,2’−methylene−bis(4−methyl−6−tert−butylphenol))の酸化防止剤を含む、請求項1に記載の流体動圧ベアリング用潤滑油組成物。
【請求項5】
前記添加剤は、バリウムジフェニルアミン−4−スルホネート(Barium diphenylamine−4−sulfonate)の金属酸化防止剤を含む、請求項1に記載の流体動圧ベアリング用潤滑油組成物。
【請求項6】
前記添加剤は、トリクレジルホスフェート(Tricresyl Phosphate)の耐圧防止剤を含む、請求項1に記載の流体動圧ベアリング用潤滑油組成物。
【請求項7】
エステル系ベースオイル(base oil)と前記ベースオイル100重量部に対して0.01〜3.00重量部の含量を有する添加剤とを含み15℃において密度が0.866g/cm〜0.900g/cmであり40℃において動粘度が9.50センチストークス(cSt)以下である流体動圧ベアリング用潤滑油組成物を含む、HDD用モータ。
【請求項8】
前記ベースオイルの粘度は、100℃において2.30センチポアズ(cP)以下である、請求項に記載のHDD用モータ。
【請求項9】
前記添加剤は、酸化防止剤、磨耗防止剤、腐食防止剤、極圧添加剤、粘度指数向上剤、静電気防止剤及び不活性剤からなる群から選択された一つ以上を含む、請求項に記載のHDD用モータ。
【請求項10】
前記添加剤は、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(2,2’−methylene−bis(4−methyl−6−tert−butylphenol))の酸化防止剤を含む、請求項に記載のHDD用モータ。
【請求項11】
前記添加剤は、バリウムジフェニルアミン−4−スルホネート(Barium diphenylamine−4−sulfonate)の金属酸化防止剤を含む、請求項に記載のHDD用モータ。
【請求項12】
前記添加剤は、トリクレジルホスフェート(Tricresyl Phosphate)の耐圧防止剤を含む、請求項に記載のHDD用モータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性と低温動作安定性のための低密度特性の流体動圧ベアリング用潤滑油組成物及びこれを用いたHDD用モータに関する。
【背景技術】
【0002】
情報保存装置の一つであるハードディスクドライブ(HDD;Hard Disk Drive)は、記録再生ヘッド(read/write head)を用いてディスクに保存されたデータを再生したりディスクにデータを記録したりする装置である。
【0003】
このようなハードディスクドライブはディスクを駆動させることができるディスク駆動装置を必要とし、上記ディスク駆動装置には小型のスピンドルモータが用いられる。
【0004】
このような小型のスピンドルモータには流体動圧ベアリングアセンブリが用いられており、上記流体動圧ベアリングアセンブリのシャフトとスリーブとの間には潤滑流体が介在されて上記潤滑流体で生じる流体圧力でシャフトを支持するようになる。
【0005】
スピンドルモータの回転時、潤滑流体が低温で粘度が高いと、モータの回転時に生じる動力発生溝に対する潤滑流体の粘性抵抗が大きくなり、結果的にモータの電力損失が大きくなる。
【0006】
逆に、モータの回転時、潤滑流体が高温領域で熱膨張し粘度が低下すると、支持役割を十分に行うことができないという問題がある。
【0007】
このことから、潤滑流体は、低温領域では低い粘度で維持され高温領域では粘度が低下しない相反する粘度の挙動特性が求められる。
【0008】
このような粘度特性を満足させるために、特定のエステル(Ester)化合物を主成分とする基油に酸化防止剤や極圧添加剤等の物質を添加する等の様々な開発がなされている。
【0009】
しかしながら、上記の様々な添加剤を用いた潤滑流体は、初期には効果を示すが、長期間使用時には潤滑剤が蒸発し粘度特性が変わるため、このような効果を継続して維持することが困難になる。
【0010】
また、モータが小型化、高精密化、高速回転化、低消費電力化されていくにつれ、潤滑流体も耐熱性、酸化安定性、低蒸発性及び磨耗防止性等の特性が求められてきている。
【0011】
なお、流体動圧モータの耐衝撃性を向上させることができる潤滑油が求められる実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】日本公開特許公報2011−111463号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性と低温動作安定性のための低密度特性の流体動圧ベアリング用潤滑油組成物及びこれを用いたHDD用モータに関する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明による流体動圧ベアリング用潤滑油組成物は、エステル系ベースオイル(base oil)と、上記ベースオイル100重量部に対して0.01〜3.00重量部の含量を有する添加剤と、を含み、15℃において密度が0.900g/cm以下であり、40℃において動粘度が9.50センチストークス(cSt)以下であることを特徴とする。
【0015】
上記組成物は、15℃において密度が0.866g/cm〜0.900g/cmであることができる。
【0016】
上記ベースオイルの粘度は、100℃において2.30センチポアズ(cP)以下であることができる。
【0017】
上記添加剤は、酸化防止剤、磨耗防止剤、腐食防止剤、極圧添加剤、粘度指数向上剤、静電気防止剤及び不活性剤からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0018】
上記添加剤は、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(2,2’−methylene−bis(4−methyl−6−tert−butylphenol))の酸化防止剤を含むことができる。
【0019】
上記添加剤は、バリウムジフェニルアミン−4−スルホネート(Barium diphenylamine−4−sulfonate)の金属酸化防止剤を含むことができる。
【0020】
上記添加剤は、トリクレジルホスフェート(Tricresyl Phosphate)の耐圧防止剤を含むことができる。
【0021】
本発明によるHDD用モータは、エステル系ベースオイル(base oil)と上記ベースオイル100重量部に対して0.01〜3.00重量部の含量を有する添加剤とを含み15℃において密度が0.900g/cm以下であり40℃において動粘度が9.50センチストークス(cSt)以下である流体動圧ベアリング用潤滑油組成物を含むことができる。
【0022】
上記組成物は、15℃において密度が0.866g/cm〜0.900g/cmであることができる。
【0023】
上記ベースオイルの粘度は、100℃において2.30センチポアズ(cP)以下であることができる。
【0024】
上記添加剤は、酸化防止剤、磨耗防止剤、腐食防止剤、極圧添加剤、粘度指数向上剤、静電気防止剤及び不活性剤からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0025】
上記添加剤は、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(2,2’−methylene−bis(4−methyl−6−tert−butylphenol))の酸化防止剤を含むことができる。
【0026】
上記添加剤は、バリウムジフェニルアミン−4−スルホネート(Barium diphenylamine−4−sulfonate)の金属酸化防止剤を含むことができる。
【0027】
上記添加剤は、トリクレジルホスフェート(Tricresyl Phosphate)の耐圧防止剤を含むことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によると、実用温度で粘度が低く、蒸発損失が少なく、酸化安定性も向上した流体動圧ベアリング用潤滑油組成物を含んでHDD用モータを製作することにより、流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性と低温動作安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態による流体動圧ベアリングアセンブリを含むHDD用モータを示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の実施形態は、多様な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲が後述する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、当業界における通常の知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及びサイズなどは、より明確な説明のために誇張されることがある。なお、図面上において同一符号で表示される要素は、同一の要素である。
【0031】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0032】
本発明の一実施形態による流体動圧ベアリング用潤滑油組成物は、エステル系ベースオイル(base oil)と、上記ベースオイル100重量部に対して0.01〜3.00重量部の含量を有する添加剤と、を含み、15℃において密度が0.900g/cm以下であり、40℃において動粘度が9.50センチストークス(cSt)以下であることができる。
【0033】
以下、上記構成に関して詳細に説明する。
【0034】
上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物は、エステル系ベースオイル(base oil)を含むことができる。
【0035】
上記ベースオイル(base oil)は、一般に流体動圧ベアリング用に用いることができるものであれば特に制限されず、例えば、エステル系化合物であることができる。
【0036】
一方、本発明の一実施形態によると、上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物は、上記ベースオイル100重量部に対して0.01〜3.00重量部の含量を有する添加剤を含むことができる。
【0037】
上記添加剤は、酸化防止剤、磨耗防止剤、腐食防止剤、極圧添加剤、粘度指数向上剤、静電気防止剤及び不活性剤からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0038】
上記添加剤は、上記流体動圧ベアリング用潤滑油に微量添加されることにより、潤滑油の長期高温信頼性向上のための特定の役割を行うことができる。
【0039】
上記添加剤は、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(2,2’−methylene−bis(4−methyl−6−tert−butylphenol))の酸化防止剤を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0040】
また、上記添加剤は、バリウムジフェニルアミン−4−スルホネート(Barium diphenylamine−4−sulfonate)の金属酸化防止剤を含むことができるが、これに制限されるものではない。
【0041】
また、上記添加剤は、耐圧防止剤を含むことができ、特に制限されるものではないが、例えば、トリクレジルホスフェート(Tricresyl Phosphate)を含むことができる。
【0042】
上記添加剤は、上記ベースオイル100重量部に対して0.01〜3.00重量部の含量を有することにより、潤滑油が低温領域では低い粘度を維持し高温領域では粘度を低下させないことができる。
【0043】
上記添加剤が上記ベースオイル100重量部に対して0.01重量部未満添加される場合は、添加剤の量が少なくて添加剤による効果が十分に発揮されることができない。
【0044】
また、上記添加剤が上記ベースオイル100重量部に対して3.00重量部を超えて添加される場合は、流体動圧ベアリング用潤滑油の物性低下が発生することがある。
【0045】
一方、本発明の一実施形態による流体動圧ベアリング用潤滑油組成物は、15℃において密度が0.900g/cm以下であり、40℃において動粘度が9.50センチストークス(cSt)以下であることができる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物の密度を15℃において0.900g/cm以下に調節することにより、流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性と低温動作安定性を向上させることができる。
【0047】
現在、潤滑油の選定は、動粘度(Kinetic Viscosity)を基礎としているが、実際に流体動圧ベアリングモータの駆動と直接的な関連があるものは、粘度(Dynamic Viscosity)である。
【0048】
この場合、粘度は動粘度×密度の関数であるため、密度の低い潤滑油を用いるほど潤滑油の粘度は低くなり、特に粘度が急激に上昇する低温区間ではその効果がさらに大きくなることができる。
【0049】
即ち、上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物の密度を15℃において0.900g/cm以下に調節することにより、低温領域で低粘度を維持することができ、低温動作安定性を向上させることができる。
【0050】
また、密度の低い潤滑油を用いることにより、流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性を向上させることができる。
【0051】
上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物の密度が15℃において0.900g/cmを超える場合は、低温動作安定性及び流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性に問題が生じることがある。
【0052】
一方、本発明の一実施形態によると、上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物の動粘度を40℃において9.50センチストークス(cSt)以下に調節することにより、低温動作安定性及び流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性を向上させることができる。
【0053】
即ち、上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物の密度を15℃において0.900g/cm以下に調節し且つ動粘度を40℃において9.50センチストークス(cSt)以下に調節することにより、粘度(Dynamic Viscosity)が低くなり、低温動作安定性の効果に優れることができる。
【0054】
上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物の動粘度が40℃において9.50センチストークス(cSt)を超える場合は、密度を0.900g/cm以下に調節しても、粘度(Dynamic Viscosity)を低く維持することができないため、低温動作安定性及び流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性に問題が発生することがある。
【0055】
本発明の一実施形態による流体動圧ベアリング用潤滑油組成物の粘度は、0℃、25℃、40℃及び100℃で測定することができる。
【0056】
上記粘度は、Brookfield DB−III Rheometer粘度計を用いて測定することができ、温度による傾向を確認するために四つの温度区間(0℃、25℃、40℃及び100℃)で測定することができる。
【0057】
上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物は、特に制限されないが、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disc Drive、HDD)用モータの流体ベアリングに用いるのに適することができる。
【0058】
小型ハードディスクドライブの場合、電力消耗量が少なくなければならず、低温動作安定性及びモータの耐衝撃性が非常に重要な要素であることができる。
【0059】
本発明の一実施形態による上記潤滑油組成物は、摩擦損失が少なく低温動作安定性を有するため、小型ハードディスクの上記条件を満足させることができる。
【0060】
図1は、本発明の一実施形態による流体動圧ベアリングアセンブリを含むHDD用モータを示す概略断面図である。
【0061】
図1を参照すると、本発明の他の実施形態によるHDD用モータは、エステル系ベースオイル(base oil)と上記ベースオイル100重量部に対して0.01〜3.00重量部の含量を有する添加剤とを含み15℃において密度が0.900g/cm以下であり40℃において動粘度が9.50センチストークス(cSt)以下である流体動圧ベアリング用潤滑油組成物を含むことができる。
【0062】
以下、本発明の他の実施形態によるHDD用モータに関して詳細に説明するが、上述した本発明の一実施形態と重複する説明は省略する。
【0063】
本発明の一実施形態によるモータ用ベースアセンブリ100(以下、「ベースアセンブリ」という)を含むモータ10は、モータ用ベース110(以下、「ベース」という)を含むベースアセンブリ100と、回転部材の回転を支持するスリーブ220と、コイル230が巻線されるコア240と、を含むことができる。
【0064】
まず、方向に対する用語を定義すると、軸方向は、図1から見てシャフト210を基準に上下方向を意味し、半径方向外側又は内側方向は、上記シャフト210を基準にハブ250の外側端方向又は上記ハブ250の外側端を基準に上記シャフト210の中心方向を意味することができる。
【0065】
また、周方向は、シャフト210の回転方向、即ち、上記シャフト210の外周面に沿って回転される方向を意味することができる。
【0066】
ベースアセンブリ100は、ベース110とプリングプレート120とを含み、上記ベース110にはコイル230が巻線されるコア240が結合されることができる。
【0067】
即ち、上記ベース110は、ハブ250を含む回転部材を支持する固定部材であることができ、電源印加時に一定の大きさの電磁気力を発生させるコイル230及び上記コイル230が巻線されるコア240が結合される固定構造物であることができる。
【0068】
ここで、上記ベース110は、突出部112と本体部114とを備えることができ、上記突出部112の内周面は、シャフト210を支持するスリーブ220の外周面と結合して上記スリーブ220を支持することができる。
【0069】
即ち、上記突出部112は、中空を有し軸方向上側に突出形成されることができ、上記中空にはシャフト210を支持するスリーブ220が挿入されて溶接、ボンディング又は圧入等の方式で結合されることができる。
【0070】
また、上記突出部112の外周面にはコイル230が巻線されるコア240が結合されることができ、本発明によるモータ10の回転安定性を確保するために剛性が確保されなければならない。
【0071】
ここで、上記ベース110の本体部114にはプリングプレート120が結合されることができ、上記プリングプレート120によってシャフト210及びハブ250を含む回転部材の過浮上を防止することができる。
【0072】
具体的には、上記プリングプレート120は、ハブ250に結合されたマグネット260の底面と対応する本体部114にボンディング等の結合方式により結合されることができ、上記マグネット260と磁気的引力が作用するように磁性を備えることができる。
【0073】
本発明によるモータ10の回転部材であるシャフト210とハブ250は、安定的な回転のために所定高さに浮上しなければならないが、既設計された浮上高さ以上に過浮上する場合、性能に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0074】
この場合、回転部材である上記シャフト210とハブ250の過浮上を防止するために上記ベース110に上記プリングプレート120が結合されることができ、上記プリングプレート120と上記マグネット260との間に作用する磁気的引力によって上記回転部材の過浮上を防止することができる。
【0075】
シャフト210は、ハブ250と結合して上記ハブ250と連動して回転する回転部材で、スリーブ220によって支持されることができる。
【0076】
スリーブ220は、回転部材であるシャフト210及びハブ250の回転を支持する構成要素で、上記シャフト210の上端が軸方向上側に突出されるように上記シャフト210を支持することができ、Cu又はAlを鍛造するか又はCu−Fe系合金粉末やSUS系粉末を焼結して形成されることができる。
【0077】
また、上記スリーブ220は、シャフト210が挿入されて上記シャフト210と微小間隙を有する軸穴を備えることができ、上記微小間隙にはオイルOが充填されて上記オイルOを媒介としたラジアル動圧によって上記シャフト210を安定的に支持することができる。
【0078】
ハブ250はベース110を含む固定部材に対して回転可能に備えられる回転構造物であることができ、前述した環状のマグネット260がコア240と一定の間隔を置いて対応するように備えられることができる。
【0079】
ここで、上記マグネット260は、コア240に巻線されるコイル230との相互作用によって本発明によるモータ10の回転駆動力が得られる。
【0080】
本発明の他の実施形態によるHDD用モータは、上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物170を含むことにより、低い粘度を有し且つ装置の摩擦損失をより効果的に減らし、低温での動作安定性に非常に優れ、モータの耐衝撃性にも優れることができる。
【0081】
また、実用温度で粘度が低く、蒸発損失が少なく、酸化安定性も向上した流体動圧ベアリング用潤滑油組成物を含んでHDD用モータを製作することにより、モータの長期間使用による信頼性品質を向上させることができる。
【0082】
上記HDD用モータ10の製造方法は、上記流体動圧ベアリング用潤滑油組成物170を含むことを除いては一般的な製造方法と同一であることができる。
【0083】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明がこれによって制限されるものではない。
【0084】
<実施例1〜3>
実施例1は、ジオクチルアジペート(Dioctyladipate)と2−ヘキシルデシルドデカノアート(2−Hexyldecyl dodecanoate)とを1:1の比率で混合したオイルをベースオイルとして97重量部用いた。
【0085】
上記ジオクチルアジペート(Dioctyladipate)と2−ヘキシルデシルドデカノアート(2−Hexyldecyl dodecanoate)はそれぞれ下記化学式1及び2で表されることができ、ジオクチルアジペート(Dioctyladipate)は15℃において密度が0.927g/cmであり、2−ヘキシルデシルドデカノアート(2−Hexyldecyl dodecanoate)は15℃において密度が0.859g/cmであった。
【0086】
【化1】
【0087】
【化2】
【0088】
そして、酸化防止剤、磨耗防止剤、腐食防止剤、極圧添加剤、粘度指数向上剤、静電気防止剤及び不活性剤からなる群から選択された一つ以上の添加剤を総量3重量部の比率で混合して流体動圧ベアリング用潤滑油を製造した。
【0089】
上記流体動圧ベアリング用潤滑油は、15℃において密度が0.895g/cmであった。
【0090】
実施例2は、エチルヘキシルオレアート(Ethylhexyl oleate)をベースオイルとして97重量部用いた。
【0091】
上記エチルヘキシルオレアート(Ethylhexyl oleate)は、下記化学式3で表されることができ、15℃において密度が0.866g/cmであった。
【0092】
【化3】
【0093】
そして、実施例1と同一の添加剤を総量3重量部の比率で混合して流体動圧ベアリング用潤滑油を製造した。上記潤滑油は、15℃において密度が0.870g/cmであった。
【0094】
実施例3は、低密度の2−ヘキシルデシルドデカノアート(2−Hexyldecyl dodecanoate)をベースオイルとして97重量部用いた。
【0095】
上記2−ヘキシルデシルドデカノアート(2−Hexyldecyl dodecanoate)は、下記化学式4で表されることができ、15℃において密度が0.859g/cmであった。
【0096】
【化4】
【0097】
そして、実施例1と同一の添加剤を総量3重量部の比率で混合して流体動圧ベアリング用潤滑油を製造した。上記潤滑油は、15℃において密度が0.866g/cmであった。
【0098】
<比較例1及び2>
比較例1は、ネオペンチルグリコール(Neopentyl glycol)系列のエステル潤滑油をベースオイルとして97重量部用いた。
【0099】
上記ネオペンチルグリコール(Neopentyl glycol)系列のエステル潤滑油は、下記化学式5で表されることができ、15℃において密度が0.939g/cmであった。
【0100】
【化5】
【0101】
それ以外の添加剤の種類及び含量は、実施例と同一であった。上記流体動圧ベアリング用潤滑油は、15℃において密度が0.944g/cmであった。
【0102】
比較例2は、3−メチル−1,5−ペンタンジオール(3−Methyl−1,5−pentanediol)系列のエステル潤滑油をベースオイルとして97重量部用いた。
【0103】
上記3−メチル−1,5−ペンタンジオール(3−Methyl−1,5−pentanediol)系列のエステル潤滑油は、下記化学式6で表されることができ、15℃において密度が0.928g/cmであった。
【0104】
【化6】
【0105】
それ以外の添加剤の種類及び含量は、実施例と同一であった。上記流体動圧ベアリング用潤滑油は、15℃において密度が0.944g/cmであった。
【0106】
下記表1は、上記実施例及び比較例による潤滑油組成物の密度、動粘度、粘度、及びこれらのそれぞれの低温動作性及び耐衝撃テスト結果を測定して比較したものである。
【0107】
上記粘度は、Brookfield DB−III Rheometer粘度計を用いて測定し、温度による傾向を確認するためにそれぞれの成分に対して四つの温度区間(0℃、25℃、40℃及び100℃)で測定した。
【0108】
低温動作性テストは0℃を基準に行われ、これに対する結果を下記表1に示した。
【0109】
耐衝撃テストでは、方法に応じて重力定数の350倍から1000倍の過酷な衝撃を与えて潤滑油の特性に異常があるか否かで比較した。
【0110】
【表1】
【0111】
上記表1を参照すると、本発明による潤滑油組成物(実施例1〜3)は、低温動作性に優れ、モータの耐衝撃テスト結果、不良率が非常に減少するため、耐衝撃向上の効果に優れることが分かる。
【0112】
これに反し、比較例1及び2は、15℃において密度が0.900g/cmを超え40℃において動粘度が9.50センチストークス(cSt)を超え、低温動作性及び耐衝撃テストで問題があることが分かる。
【0113】
したがって、本発明の一実施例によると、実用温度で粘度が低く、蒸発損失が少なく、酸化安定性も向上した流体動圧ベアリング用潤滑油組成物を含んでHDD用モータを製作することにより、流体動圧ベアリングモータの耐衝撃性と低温動作安定性を向上させることができる。
【0114】
本発明は、上述した実施形態及び添付の図面によって限定されることなく添付の特許請求の範囲によって限定される。したがって、特許請求の範囲に記載の本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で当該技術分野における通常の知識を有する者による多様な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これもまた本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0115】
10 モータ
100 モータ用ベースアセンブリ
110 モータ用ベース
112 突出部
114 本体部
120 プリングプレート
210 シャフト
220 スリーブ
230 コイル
240 コア
250 ハブ
260 マグネット
図1