(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
幼児を座らせる座席部と該座席部の少なくとも左右両側部及び前方を囲む壁部とを有する幼児用座席装置に対して前記座席部に座った幼児が握るように設けられるハンドル装置において、
ハンドルバーと、このハンドルバーの両端部を支持する一対のアームと、前記幼児用座席装置における左右両側の壁部に設けられて前記一対のアームをそれぞれ前後回動自在に保持する左右一対の支点部とを有し、
前記アームには、
アーム長手方向に沿って前記支点部に対するアームのスライドを自在に保持させるスライドガイド部と、
前記スライドガイド部の一端側に設けられて前記支点部に対するアームの前後回動を自在に保持させる被回動部と、
前記スライドガイド部の他端側に設けられて前記支点部に対してアームを非回動状態に保持させる回動規制部と、が設けられており、
前記支点部には、
前記アームが前方及び後方へ倒されたときにのみ前記スライドガイド部に係合することにより当該スライドガイド部に沿った前後方向のスライドを許容しつつもアームを非回動に保持させる切換カム部と、
前記アームが前方及び後方へ倒されたときにのみ前記回動規制部と係合してアームを非回動にする回り止め部と、が設けられている
ことを特徴とする幼児用座席装置のハンドル装置。
前記切換カム部は、前記被回動部及び前記回動規制部と合致したときに前記スライドガイド部を通過させる状態と非通過とする状態とに回動可能とされていることを特徴とする請求項1記載の幼児用座席装置のハンドル装置。
前記一対のアームにおいて、前記回動規制部は、前記スライドガイドを介して選択使用が可能となるように当該スライドガイドに沿って複数設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の幼児用座席装置のハンドル装置。
前記一対のアームにおいて、前記被回動部は前記ハンドルバーとの連結側とは反対側となる基端部に配置されており、前記回動規制部は前記被回動部からハンドルバーへ近接する方向へ離れて配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の幼児用座席装置のハンドル装置。
前記一対のアームにおいて、前記回動規制部は前記ハンドルバーとの連結側とは反対側となる基端部に配置されており、前記被回動部は前記回動規制部からハンドルバーへ近接する方向へ離れて配置されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の幼児用座席装置のハンドル装置。
前記一対のアームは、前記ハンドルバーを支持する先方アームとこの先方アームに対してアーム長手方向に沿って伸縮自在に連結された根本アームとを有していることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の幼児用座席装置のハンドル装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
[第1実施形態]
図2乃至
図4は、本発明に係るハンドル装置1の第1実施形態を示している。この第1
実施形態のハンドル装置1は、
図1に示すように、自転車の前輪上方などに装着する幼児用座席装置2に対して設けられるもので、この幼児用座席装置2の座席部3に座った幼児が必要に応じて使用できるようになっている。
【0015】
なお、幼児用座席装置2は座席部3の左右両側部に左側壁部3a及び右側壁部3bが設けられ、座席部3の前方に前壁部3cが設けられている。座席部3と前壁部3cとの前後間には足置き用のスペースが確保されており、このスペースは、足置き床3dによって上下方向が非貫通とされている。また、座席部3の後方にはヘッドレスト部材3eを備えた背面壁部3fが設けられている。
【0016】
本発明に係るハンドル装置1は、ハンドルバー6と、このハンドルバー6の両端部を支持する一対のアーム7,7と、これら一対のアーム7,7をそれぞれ前後回動自在に保持する左右一対の支点部8,8とを有している。
ハンドルバー6は、長手方向を左右方向へ向けた棒材であって、座席部3に座る幼児にとって握りやすい太さに形成されており、幼児用座席装置2における左右の側壁部3a,3bの各上部間を架け渡されるようになっている。
【0017】
アーム7は、ハンドルバー6の左右の各端部に対し、このハンドルバー6の長手方向と垂直に突出するようにして連結されており、これらハンドルバー6と一対のアーム7,7とによって全体が門型に形成されている。
図2に示すように、アーム7においてハンドルバー6と連結される側の端部(以下、「先端部」と言う)7a側は、薄い帯板状に形成されている。これに対し、アーム7において先端部7aとは反対側となる基端部7bは、左右方向の外側へ向けて膨出し、先端部7aに比べて分厚くなるように形成されている。
【0018】
このアーム7には、アーム長手方向に沿って設けられたスライドガイド部10と、このスライドガイド部10の一端側に設けられた被回動部11と、スライドガイド部10の他端側に設けられた回動規制部12とが設けられている。
本第1実施形態において、回動規制部12はアーム7の基端部7bに配置されたものとしてあり、また被回動部11は、アーム7の先端部7a(回動規制部12からハンドルバー6へ近接する方向へ向けて離れた位置)に配置されたものとしてある。
【0019】
スライドガイド部10は、アーム7を左右方向(板厚方向)へ貫通させた長孔を有して形成されており、被回動部11は、スライドガイド部10と連通しつつアーム7を左右方向へ貫通させた円形孔を有して形成されている。
また回動規制部12についても、スライドガイド部10と連通しつつアーム7を左右方向へ貫通させた円形孔12aを有している。この他、この回動規制部12は、アーム7における左右方向の外面側において円形孔12aの周方向三方をコ字状に取り囲んだ段差状の規制リブ12bをも有している。この規制リブ12bは、アーム7において、その基端部7bが先端部7aよりも分厚くされている増し厚tで形成されたものである。
【0020】
言い換えれば、回動規制部12における円形孔12aの開口周部(規制リブ12bの内方領域)と、スライドガイド部10における長孔部の開口周部と、被回動部11における円形孔の開口周部とは、互いに同じ厚さ(アーム7としての板厚)を有しており、従ってこれら三つの開口周部は表裏が面一状態で連続したものとなっている。
なお、回動規制部12の円形孔12aと被回動部11(円形孔)とは同じ内径(半径Rとしていずれも2R)に形成されており、スライドガイド部10は、回動規制部12の円形孔12aと被回動部11の各中心を結ぶように配置されている。また、スライドガイド部10は、回動規制部12の円形孔12aや被回動部11よりも小さな開口幅Hで形成されている。
【0021】
一方、支点部8は、幼児用座席装置2における左右の側壁部3a,3bに設けられたハウジング部17と、このハウジング部17に設けられる位置変更手段18と、この位置変更手段18と共にハウジング部17に対してアーム7を保持させるための支軸19とを有している。なお、後述するように、位置変更手段18は、支軸19に外挿されるプラグ部材30と、支軸19の軸先端側に結合される摘み部材31と、プラグ部材30に串刺しされるコマ部材32とを有している。
【0022】
ハウジング部17は、幼児用座席装置2における左右の側壁部3a,3bから上方突出
するように設けられたハウジングベース23に対し、左右方向の外方へ突出するように円形の囲みリブ24が設けられたもので、ハウジングベース23の中心部には支軸19を刺し通すための軸孔25が形成されている。
図3に示すように、このハウジング部17には、ハウジングベース23の裏面側、すなわち、左右方向の内側を向く面に、回り止め部27が設けられている。この回り止め部27は、軸孔25を取り囲んで左右方向の内方へ向けて突出しており、ハウジングベース23の裏面側から見た外郭形状は、少なくとも上下一対の対向辺部が平行する四角形状(本第1実施形態では平行四辺形とした)を呈したものとなっている。
【0023】
回り止め部27における上下一対の対向辺部は、それらの長手方向を幼児用座席装置2の前後方向に一致させて略水平に設けられている。これら上下一対の対向辺部における対向間隔Qは、アーム7に設けられた前記回動規制部12における規制リブ12bの内法(ウチノリ)寸法Pと同じか又は若干小さい程度(Q≦P)で形成されている。
また、この回り止め部27がハウジングベース23の裏面側で突出する寸法hは、回動規制部12の規制リブ12bが円形孔12aの開口周部で突出する寸法(アーム7の基端部7bが先端部7aよりも分厚くなった増し厚t)と同じか又は若干小さい程度(h≦t)で形成されている。
【0024】
そのため、アーム7をそのアーム長手方向が略水平になる向きにすれば、回り止め部27に対して規制リブ12bを嵌め合わせることが可能であり、このとき、規制リブ12bが回り止め部27における上下一対の対向辺部を挟持するように当接する。従って、規制リブ12b側(即ち、アーム7)をガタツキなく前後方向へスライドさせることができる。当然に、規制リブ12b側を回り止め部27のまわりで回転させることはできないために、アーム7も支点部8(支軸19)に対して回転不能に保持されることになる。
【0025】
このような構成のハウジング部17に設けられる位置変更手段18は、前記したようにプラグ部材30と摘み部材31とコマ部材32とを有している。
プラグ部材30は、スリーブ部30aと、このスリーブ部30aの一端側で径方向全周に張り出して設けられたフランジ部30bと、スリーブ部30aからフランジ部30bが張り出すネック部でボス状に膨出して設けられた長円形の切換カム部30cとを有している。
【0026】
スリーブ部30aの先端部は、コマ部材32との一体回動を可能にさせるために外周面が角軸状に形成されていると共に、摘み部材31との一体回動を可能にさせるために段違いの突出形状を有して形成されている。このようなスリーブ部30aに対し、支軸19はフランジ部30b側から差し込まれ、スリーブ部30aの先端部を突き抜けて突出するような長さとして形成されている。
【0027】
なお、フランジ部30bは、アーム7に設けられた回動規制部12の円形孔12aや被回動部11(円形孔)の内径よりも径大に形成されており、通り抜けることはない。そのため、スリーブ部30aが回動規制部12の円形孔12aや被回動部11へ挿入されて突き抜ける長さは一定とされる。従ってまた、スリーブ部30aの先端部から突出する支軸19の長さも一定とされる。この支軸19の先端突出長さは、ハウジング部17にコマ部材32を介して摘み部材31を保持させたときに、摘み部材31に届くようになる長さとして決められている。
【0028】
切換カム部30cは、長円形の長軸側寸法Lが、アーム7に設けられた回動規制部12の円形孔12aや被回動部11(円形孔)の内径(共に2R)と同じか又は若干小さい程度(L≦2R)で形成され、また短軸側寸法Wが、スライドガイド部10の開口幅Hと同じか又は若干小さい程度(W≦H)で形成されている。付言すれば、切換カム部30cの長軸側寸法Lは、スライドガイド部10の開口幅Hよりも大きく形成されている(L>H)。
【0029】
そのため、アーム7のアーム長手方向を切換カム部30cの長軸方向と一致させたときのみ、切換カム部30cの短軸側をスライドガイド部10の内側で挟持するような嵌め合わせ状態が得られる。従って、切換カム部30cを略水平状態にしたうえで、且つ、アーム7を同じく略水平状態にした場合に限り、切換カム部30cに対してスライドガイド部
10側(即ち、アーム7)を前後方向へスライドさせることができる。
【0030】
これに対し、上記のようなアーム7側のスライドにより、切換カム部30cに対して被回動部11が合致する(嵌る)配置にすると、切換カム部30cの短軸側が解放され、周方向で何ら拘束されることのない状態となる。従って、切換カム部30cのまわりでアーム7を回転させることができる。
コマ部材32は、プラグ部材30におけるスリーブ部30aの先端部(外周面が角軸状に形成された部分)に嵌る角孔を有したハブ部32aに対して、このハブ部32aのまわりで張り出す複数のクリック翼32b(図例では十文字配置で4枚)を有したものである。各クリック翼32bは翼面を曲げる方向で若干の可撓性を有している。
【0031】
なお、このコマ部材32は、ハウジング部17の囲みリブ24内に収納されて、ハウジングベース23に当接される。このハウジングベース23には、軸孔25を取り囲むように複数(図例では4つ)の位置決め突起35が周方向に等間隔(90°)で設けられている。このような位置決め突起35に対して、コマ部材32の各クリック翼32bが周方向に交互配置で係止するようになっている。
【0032】
すなわち、プラグ部材30を回転させると、これと一緒にコマ部材32も回転することによってクリック翼32bが撓み変形を起こし、位置決め突起35を乗り越えるようになる。クリック翼32bは、位置決め突起35を乗り越えた後に弾性復元するため、次位の位置決め突起35に引っ掛かりを生じ、このときに回転力を更に強めない限りは、この引っ掛かり(係合力)によって回転を停止するようになる。結果として、コマ部材32(即ち、プラグ部材30)の回転はクリック翼32bや位置決め突起35の周方向配置ピッチ(90°)ごとに停止規制を受けることになる。
【0033】
摘み部材31は、プラグ部材30におけるスリーブ部30aの差込孔36を有しており、この差込孔36内に、スリーブ部30aの先端部(段違いの突出形状に形成された部分)と噛み合って一体回転を可能にする係合部(図示略)が設けられている。また、このスリーブ部30aを突き抜けた支軸19と螺合するナット(図示略)用の収納凹部37が設けられている。なお、ナットは、摘み部材31中にインサート成形してもよいし、差込孔36内に雌ねじとして直接設けてもよい。
【0034】
前記したように、プラグ部材30のスリーブ部30aとコマ部材32とは一体回転するものであり、プラグ部材30のスリーブ部30aと摘み部材31とは一体回転するものであるので、結果として、コマ部材32と摘み部材31は一体回転する。ただ、本第1実施形態では、摘み部材31の裏面に設けた突起38(
図3参照)と、コマ部材32のハブ部32aに設けた凹部39(
図2参照)との係合によって、互いに一体回転する作用を直接的に補強する構造とした。
【0035】
次に、前記構成を具備する本発明のハンドル装置1について、その使用状況を説明する。
いま、
図4(A)に示すように、アーム7が支点部8の後方(
図4(A)の左方)へ倒されてそのアーム長手方向は略水平にされ、その結果としてハンドルバー6が使用位置に配置されているものとする。このようにハンドルバー6を使用位置へ配置することで、幼児用座席装置2の座席部3に幼児を乗せた際に、幼児がハンドルバー6を握り易い状態となる(この状態のハンドルバー6は
図1に二点鎖線で示した配置である)。
【0036】
この状態下の位置変更手段18(
図2参照)において、支点部8のハウジング部17に貫通保持されているプラグ部材30は、切換カム部30cがその長軸を縦方向に向けられている。またこの切換カム部30cに対して、アーム7は、回動規制部12の円形孔12aが合致する(嵌る)配置となっている。
すなわち、回動規制部12の円形孔12a内で切換カム部30cが縦方向を向いているので、アーム7は、スライドガイド部10が切換カム部30cを通過できず(アーム7は前方へ向けてスライド不能である)、従ってハンドルバー6が後方の使用位置で停止した状態を維持する。
【0037】
加えて、この状態下においてアーム7は、回動規制部12の規制リブ12bが支点部8のハウジング部17に設けられた回り止め部27(
図3参照)を外嵌しているので、アー
ム7は支点部8に対して回転不能とされている。これらのことから、ハンドルバー6は使用位置で固定されている。
幼児用座席装置2から幼児を降ろした後、この幼児用座席装置2を荷カゴとして使用するには、次のようにする。
【0038】
まず、位置変更手段18の摘み部材31を回動操作し、コマ部材32による角度規制にしたがってプラグ部材30を90°だけ回動させる。これにより、プラグ部材30の切換カム部30cがその長軸を略水平方向に向けるようになる。すなわち、アーム7において、回動規制部12の円形孔12a内で切換カム部30cが横向きになるので、円形孔12aに連通しているスライドガイド部10が切換カム部30cを通過できる状態となる。
【0039】
そこで、切換カム部30cに対して、回動規制部12の円形孔12aからスライドガイド部10、更には被回動部11が通過するようにして、
図4(B)に示すように、アーム7を略水平状態のままにして前方(
図4(B)の右方)へスライドさせる。このアーム7の前方向けスライドにより、切換カム部30cに対してアーム7の被回動部11が合致する(嵌る)状態となる。
【0040】
被回動部11における円形孔の開口周部には、回動規制部12の円形孔12aとは異なって規制リブ12bに相当するものはないので、アーム7は、この状態下において支点部8の回り止め部27に邪魔されることなく、支点部8(支軸19)を中心として回転自在となる。
そこで、前記のようにして支点部8の前方へとスライドさせたアーム7を、次に
図4(C)〜(D)に示すように回転(反転)させる。これによって、アーム7はハンドルバー6が支点部8の前方へ移動した状態での後方側への倒れ姿勢(アーム長手方向を略水平にした状態)となる。
【0041】
なお、このときのアーム7の回転方向は、図例では、ハンドルバー6が支点部8(支軸19)の下方を通過する方向としているが、これに限らず、ハンドルバー6が支点部8の上方を通過する方向としてもよい。要するに、ハンドルバー6等が幼児用座席装置2の左右の側壁部3a,3b等と接触干渉しない方向であれば、いずれでもよい。
アーム7を回転(反転)させたときも、プラグ部材30の切換カム部30cはアーム7の被回動部11(円形孔)内で横向きになっているので、この切換カム部30cに対して、被回動部11からスライドガイド部10、更には回動規制部12の円形孔12aを通過させるようにして、アーム7を略水平状態のままで前方(
図4(D)の右方)へスライドさせる。
【0042】
図4(E)に示すように、このようなアーム7の前方向けスライドにより、ハンドルバー6は幼児用座席装置2の前方側となる退避位置(幼児用座席装置2の前壁部3c近傍)へと配置されることになる。このようにハンドルバー6を退避位置へ配置することで、幼児用座席装置2を荷カゴとして使用するうえで、ハンドルバー6がカゴ上方を狭くして荷カゴとしての使い勝手を悪化させるおそれはない(この状態のハンドルバー6は
図1に実線で示した配置である)。
【0043】
なお、このときプラグ部材30の切換カム部30cに対しては、アーム7における回動規制部12の円形孔12aが合致しており、切換カム部30cは未だ、その長軸を横向きにしている。そこで、位置変更手段18の摘み部材31を回動操作し、コマ部材32による角度規制にしたがってプラグ部材30を90°(又は270°)回動させる。摘み部材31の回動方向はいずれの方向でもよい。
【0044】
摘み部材31の回動角度は、例えば、支点部8のハウジング部17に対し、囲みリブ24を切り欠く等して確認窓40(
図2及び
図3参照)を形成しておくと共に、摘み部材31の外周面に対して90°間隔で[ロック状態(切換カム部30cが縦向き)]と[アンロック状態(切換カム部30cが横向き)]とを表示させておく、といった対策を講じておくことで、明瞭にできる。
【0045】
摘み部材31の回動操作により、回動規制部12の円形孔12a内で切換カム部30cが縦方向を向くようになるので、アーム7は、スライドガイド部10が切換カム部30cを通過できず(アーム7が後方へ向けてスライド不能となり)、従ってハンドルバー6が
前方の退避位置で停止した状態を維持するものとなる。
加えて、この状態下においてアーム7は、回動規制部12の規制リブ12bが支点部8のハウジング部17に設けられた回り止め部27(
図3参照)に嵌っているので、アーム7は支点部8に対して回転不能とされている。これらのことから、ハンドルバー6は退避位置で固定されている。
【0046】
本第1実施形態において、ハンドルバー6の使用位置や退避位置はそれぞれ支点部8から遠ざかる配置となっているが、本第1実施形態は、幼児用座席装置2としてのサイズや形状に起因する要請でこのような配置が必要となる場合に適用すればよいものである。
なお、ハンドルバー6の使用位置や退避位置が支点部8から遠ざかっていても、アーム7の回転操作は、ハンドルバー6を支点部8にある程度、近接させた状態で(アーム7の回転半径を許容範囲で短くして)行うようにしてあるので、操作性が極端に低下するおそれはないものである。従って、本第1実施形態は、アーム7の回動半径が過大となることを原因としてハンドルバー6の移動量が大きくなりすぎるおそれがある場合に、好適に採用できる。
[第2実施形態]
図5は、本発明に係るハンドル装置1の第2実施形態を示している。この第2実施形態のハンドル装置1が、前記した第1実施形態のハンドル装置1(
図2乃至
図4参照)と最も異なるところは、アーム7の先端部7a及び基端部7bに対して、被回動部11と回動規制部12との配置が逆になっている点にある。
【0047】
詳しく言えば、この第2実施形態において、被回動部11はハンドルバー6との連結側とは反対側となるアーム7の基端部7bに配置されており、回動規制部12は被回動部11からハンドルバー6へ近接する方向へ離れて配置されている。なお、回動規制部12がアーム7の先端部7aに配置されていることから、アーム7は、その先端部7aが基端部7bよりも分厚くされており、その増し厚tによって回動規制部12の規制リブ12bが形成されたものとなっている。
【0048】
本第2実施形態における上記以外の構成は、前記した第1実施形態と同じである。そのため、同じ作用効果を奏する部位に第1実施形態と同じ符号を付することで、ここでの詳説は省略する。但し、本第2実施形態においては、前記構成の違いに起因して、使用状況に以下のような違いがある。
すなわち、まず、ハンドルバー6の使用位置は、
図5(A)に示すように、アーム7の先端部7aが支点部8に接近された配置となっている(第1実施形態では先端部7aが支点部8から遠い配置となっている)。
【0049】
とは言え、このハンドルバー6の使用位置において、アーム7における回動規制部12の円形孔12aが支点部8に貫通保持されたプラグ部材30の切換カム部30cに合致し(嵌り)、また回動規制部12の規制リブ12bが支点部8のハウジング部17に設けられた回り止め部27を外嵌している点は第1実施形態と同じである。従って、ハンドルバー6は前記した使用位置で固定されている。
【0050】
次に、幼児用座席装置2を荷カゴとして使用する場合にあって、
図5(B)に示すように、アーム7を略水平状態のままにして後方(
図5(B)の左方)へスライドさせる(第1実施形態ではアーム7を前方へスライドさせた)。また、続けて
図5(C)〜(D)に示すように、アーム7を支点部8(支軸19)のまわりに回転(反転)させて、支点部8の前方側へ倒した状態とさせた後、アーム7を略水平状態のままで後方(
図5(D)の左方)へスライドさせる(第1実施形態ではアーム7を後方へスライドさせた)。
【0051】
このようなアーム7の後方向けスライドにより、
図5(E)に示すように、ハンドルバー6が退避位置へ至り、幼児用座席装置2を荷カゴとして使用するうえで、ハンドルバー6がカゴ上方を狭くして荷カゴとしての使い勝手を悪化させるおそれはない。言うまでもなく、この作用は第1実施形態の場合と同じである。
前記のようにハンドルバー6の使用位置や退避位置はそれぞれ支点部8に近接しているが、本第2実施形態は、幼児用座席装置2としてのサイズや形状に起因する要請でこのような配置が必要となる場合に適用すればよいものである。
【0052】
なお、ハンドルバー6の使用位置や退避位置が支点部8に近接していても、アーム7の回転操作は、ハンドルバー6を支点部8からある程度、遠ざけた状態で(アーム7の回転半径を許容範囲で長くして)行うようにしてあるので、操作性が極端に低下するおそれはないものである。従って、本第2実施形態は、アーム7の回動半径が過小となることを原因としてハンドルバー6の移動量が小さくなりすぎるおそれがある場合に、好適に採用できる。
[第3実施形態]
図6は、本発明に係るハンドル装置1の第3実施形態を示している。この第3実施形態のハンドル装置1では、前記した第1実施形態のハンドル装置1(
図2乃至
図4参照)と基本的に同じであり、アーム7において、回動規制部12はハンドルバー6との連結側(先端部7a)とは反対側となる基端部7bに配置されており、被回動部11は回動規制部12からハンドルバー6へ近接する方向へ離れて配置されている。
【0053】
本第3実施形態のハンドル装置1が第1実施形態のハンドル装置1と最も異なるところは、アーム7において、基端部7bの回動規制部12とは別に、更に回動規制部43が設けられている点にある。すなわち、本第3実施形態では複数の回動規制部12,43が設けられたものであって、これら回動規制部12,43が、スライドガイド部10に沿って配置されたものとなっている。
【0054】
本第3実施形態において、新たに加えられた回動規制部43は、スライドガイド部10の中途部、更に言えば、被回動部11と回動規制部12との中間位置となるように配置されたものとしている。
スライドガイド部10の中途部に設けられた回動規制部43は、円形孔43aと、この円形孔43aの周方向二方を挟む段差状の規制リブ43bとを有している。規制リブ43bは、スライドガイド部10の端部に設けられた回動規制部12の規制リブ12bのうち、円形孔12aの周方向二方を挟む規制リブ12bを被回動部11へ向けて延長させることで形成してある。
【0055】
なお、回動規制部12,43が具備するそれぞれの円形孔12a,43aは、同じ内径(2R)で形成されている。また前記説明から明らかなように、両円形孔12a,43aはスライドガイド部10を介して互いに連通したものとなっている。
このようなことから、
図6(A)や(B)に示すように、幼児用座席装置2として使用するうえでハンドルバー6を使用位置に配置するに際しては、支点部8のハウジング部17に貫通保持されているプラグ部材30(切換カム部30c)やハウジング部17に設けられた回り止め部27に対して、いずれの回動規制部12,43を合致させるようにしてもよいことになる。
【0056】
当然のことながら、スライドガイド部10の端部に設けられた回動規制部12を選択してアーム7のスライド位置を固定すれば、
図6(A)に示すように、ハンドルバー6を支点部8の後方へ遠ざけて配置でき、それだけ幼児用座席装置2の座席部3に近接させることができる。
一方で、スライドガイド部10の中途部に設けられた回動規制部43を選択してアーム7のスライド位置を固定すれば、
図6(B)に示すように、ハンドルバー6をやや前方へ配置でき、それだけ幼児用座席装置2の座席部3から少しだけ遠ざけることができる。
【0057】
このようなハンドルバー6の位置変更が可能であるため、幼児用座席装置2の座席部3へ載せる幼児の年齢や体型に応じて、最適なハンドルバー6の位置決めが行えるものである。
なお、言うまでもなく、スライドガイド部10の中途部に設ける回動規制部43の個数は、特に限定されるものではなく、2個以上としてもよい。また、必要に応じてアーム7の長さやスライドガイド部10の長さを延長させることで、回動規制部43の増加に対応させるようにしてもよい。
【0058】
本第3実施形態においては、
図6(D)に示すように、ハンドルバー6を前方の退避位置へ配置するに際して、必要に応じて、その退避位置を前後方向で選択することも可能となる。
[第4実施形態]
図7乃至
図9は、本発明に係るハンドル装置1の第4実施形態を示している。この第4実施形態のハンドル装置1は、前記した第2実施形態のハンドル装置1(
図5参照)を基礎として更に発展させたものである。
【0059】
本第4実施形態が第2実施形態と最も異なるところは、アーム7が、ハンドルバー6を支持する先方アーム7Xと、この先方アーム7Xに連結された根本アーム7Yとを有している点にある。
図7に示すように、先方アーム7Xと根本アーム7Yとは、それらのアーム長手方向に沿って互いに伸縮自在に連結されている。本第4実施形態では、先方アーム7Xが一対のレール部材45を対向配置させた構造とされ、根本アーム7Yが、先方アーム7Xのレール間に差し込まれる板状に形成されたものとすることで、互いの伸縮を可能にしている。但し、根本アーム7Yが一対のレール部材45を対向配置させた構造とされ、先方アーム7Xが、根本アーム7Yのレール間に差し込まれる板状に形成されたものとすることも可能である。
【0060】
先方アーム7Xと根本アーム7Yとの伸縮ストロークは、例えば、先方アーム7Xのレール部材45に長孔46を形成し、この長孔46内をスライド可能となるネジピン47を根本アーム7Yに設けたネジ孔48へ螺合によって植え付ける構造などを採用して、制限すればよい。
先方アーム7Xには、その先端部7a寄りに、円形孔12aと規制リブ12bとを有した回動規制部12が設けられている。また、根本アーム7Yには、その基端部7b寄りに、円形孔を有した被回動部11が設けられている。これら、回動規制部12や被回動部11については、第2実施形態などと同じである。
【0061】
加えて、先方アーム7Xには、回動規制部12からアーム長手方向へ離れた位置に第2回動規制部50が設けられ、且つ、これら回動規制部12と第2回動規制部50とが先方側スライドガイド部10Xによって連通されている。
第2回動規制部50は、回動規制部12の円形孔12aと同径の円形孔50aと、回動規制部12の規制リブ12bのうち、円形孔12aの周方向二方を挟む規制リブ12bを延長させることで形成した第2規制リブ50bとを有している。
【0062】
また、根本アーム7Yには、被回動部11からアーム長手方向へ離れた位置に第2被回動部51が設けられ、且つ、これら被回動部11と第2被回動部51とが根本側スライドガイド10Yによって連通されている。
本第4実施形態においては、先方アーム7Xにおける回動規制部12と第2回動規制部50との孔ピッチと、根本アーム7Yにおける被回動部11と第2被回動部51との孔ピッチとを、同じとしている。但し、これらの孔ピッチは異なるものとしてもよい。
【0063】
このような構成を具備する第4実施形態では、次のように使用することができる。
すなわち、
図8(A)に示すように、支点部8のハウジング部17に貫通保持されているプラグ部材30(図示略)やハウジング部17に設けられた回り止め部27(以下単に「回り止め部27等」と言う)に対して、根本アーム7Yの被回動部11のみを合致させて、アーム7の全体を支点部8の後方(
図8(A)の左方)へ倒し、そのアーム長手方向を略水平にしたとする。
【0064】
この状態で、アーム7を全体として(先方アーム7Xと根本アーム7Yとの連結長さを一体として)、
図8(B)に示すように、根本側スライドガイド10Yに沿わせつつ前方へスライドさせ、回り止め部27等に第2被回動部51が合致するようにする。
このときのアーム7のスライドにより、回り止め部27等には、第2被回動部51と一緒に先方アーム7Xの第2回動規制部50(円形孔50a)が合致するようになる。第2回動規制部50は第2規制リブ50bを有しているため、この第2規制リブ50bが回り止め部27と係合することになり、結果としてアーム7が全体として、支点部8に対して回転不能の状態とされる。
【0065】
このときのハンドルバー6が、幼児用座席装置2の座席部3に乗る幼児にとっての使用位置となる。そのため、この状態で位置変更手段18の摘み部材31を回動操作すれば、
アーム7が前方だけでなく後方へもスライド不能となり、従ってハンドルバー6が前方の使用位置で停止した状態を維持するものとなる。
先方アーム7Xは、第2回動規制部50とは別に回動規制部12を具備しているので、
図8(C)に示すように、この回動規制部12を回り止め部27等に合致させるように、先方側スライドガイド部10Xに沿わせつつ前方へスライドさせることができる。当然に、回動規制部12は規制リブ12bを有しているため、この規制リブ12bが回り止め部27と係合すればアーム7は支点部8に対して回転不能の状態を維持する。
【0066】
このように先方アーム7Xを前方へスライドさせることで、ハンドルバー6をやや前方へ配置でき、幼児用座席装置2の座席部3から少しだけ遠ざけることができる。このようなハンドルバー6の位置変更が可能であるため、幼児用座席装置2の座席部3へ載せる幼児の年齢や体型に応じて、最適なハンドルバー6の位置決めが行えるものである。
加えて、アーム7は、先方アーム7Xと根本アーム7Yとが伸縮自在に連結されたものであるので、
図8(C)に示すように、先方アーム7Xを前方へスライドさせたとき(ハンドルバー6をやや前方へ配置させたとき)には、先方アーム7Xと根本アーム7Yとの連結長さを収縮させることができる。従って、ハンドルバー6の前方移動をしてもアーム7の基端部7bが前方へ突出することがない、という利点が得られる。
【0067】
なお、
図8(B)に示した状態から、
図8(D)に示すように、先方アーム7Xの第2回動規制部50と根本アーム7Yの被回動部11とを回り止め部27等に合致させるように、根本アーム7Yを根本側スライドガイド部10Yに沿わせつつ後方へスライドさせることもできる。このときも、先方アーム7Xの第2規制リブ50bが支点部8の回り止め部27と係合する状態が継続されるため、結果としてアーム7が全体として、支点部8に対して回転不能の状態とされる。
【0068】
このようにすれば、ハンドルバー6をやや後方へ配置でき、幼児用座席装置2の座席部3に近接させることができるうえに、アーム7の基端部7bが前方へ突出することがない、という利点が得られる。
一方で、本第4実施形態においては、
図9(A)〜(D)に示すように、ハンドルバー6を退避位置とさせる場合も、既に説明した使用位置にする場合と略同様の使い分けができるものである(その詳細については省略する)。
【0069】
なお、本第4実施形態においては、先方アーム7Xの先端部7a寄りに回動規制部12が設けられ、根本アーム7Yの基端部7b寄りに被回動部11が設けられたものとしたが、先方アーム7Xの先端部7a寄りに被回動部11が設けられ、根本アーム7Yの基端部7b寄りに回動規制部12が設けられたものとしてもよい。
ところで、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0070】
例えば、幼児用座席装置2に対して設ける支点部8は、左右の側壁部3a,3bから上方へ突出するように設けることが限定されるものではなく、左右の側壁部3a,3bに対して非突出の配置で設けるようにしてもよい。また、左右の側壁部3a,3bに対して一体的に設けることも限定されるものではなく、別部材を結合することで支点部8を形成させるようにしてもよい。
【0071】
幼児用座席装置2は、自転車の前輪上方へ装着するものの他、後輪上方へ装着するものとしてもよい。また、ベビーカーなどとして採用されるものであってもよい。