(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718327
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】シール用回転出力ユニットおよびシール用モータアセンブリ
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20150423BHJP
F16J 15/43 20060101ALI20150423BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20150423BHJP
F16C 33/82 20060101ALI20150423BHJP
H02K 5/124 20060101ALI20150423BHJP
【FI】
H02K5/10 Z
F16J15/40 A
F16J15/10 C
F16C33/82
H02K5/124
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-515739(P2012-515739)
(86)(22)【出願日】2011年5月12日
(86)【国際出願番号】JP2011002654
(87)【国際公開番号】WO2011145302
(87)【国際公開日】20111124
【審査請求日】2014年3月5日
(31)【優先権主張番号】特願2010-117740(P2010-117740)
(32)【優先日】2010年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390040051
【氏名又は名称】株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ
(74)【代理人】
【識別番号】100090170
【弁理士】
【氏名又は名称】横沢 志郎
(72)【発明者】
【氏名】木野 学
【審査官】
莊司 英史
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭59−51216(JP,U)
【文献】
実開平7−4964(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 5/10
F16C 33/82
F16J 15/10
F16J 15/43
H02K 5/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のユニットケース(11)と、
前記ユニットケース(11)の内側に同軸状態に配置されている円筒軸(12)と、
前記ユニットケース(11)の内周面(11c)および前記円筒軸(12)の外周面(12c)の間において、これらの軸線方向に離れた位置に配置され、これらを相対回転自在の状態に保持している第1軸受(15)および第2軸受(16)と、
前記ユニットケース(11)の内周面(11c)、前記第1軸受(15)、前記第2軸受(16)および前記円筒軸(12)の外周面(12c)によって囲まれた円筒状空間に配置され、前記ユニットケース(11)および前記円筒軸(12)の間を気密状態に保持している磁性流体シール(13)と、
前記円筒軸(12)の中空部を同軸状態に貫通して延びている回転出力軸(14)とを有し、
前記回転出力軸(14)の外周面(14c)および前記円筒軸(12)の内周面(12d)の間には微小な円環状隙間が形成されており、
前記円環状隙間は、前記回転出力軸(14)の外周面(14c)および前記円筒軸(12)の内周面(12d)の間に配置した弾性シール部材(17、18)によってシールされており、
前記弾性シール部材(17、18)の弾性変形によって前記回転出力軸(14)と前記円筒軸(12)の間の芯ずれが吸収されるようになっており、
前記回転出力軸(14)の軸後端部(14b)に同軸状態に締結固定される後端フランジ(24)を有し、
前記回転出力軸(14)と前記後端フランジ(24)は、それぞれに形成した合わせ面(14e、24c)を備えており、
前記回転出力軸(14)と前記後端フランジ(24)の締結固定位置は、前記合わせ面(14e、24c)に沿って、前記軸線に直交する方向に所定量だけ変更可能となっていることを特徴とするシール用回転出力ユニット(3)。
【請求項2】
請求項1において、
前記弾性シール部材はOリング(17、18)であることを特徴とするシール用回転出力ユニット(3)。
【請求項3】
請求項1において、
前記ユニットケース(11)における前記軸線方向の先端部に締結固定された円盤状の先端フランジ(21)と、
前記ユニットケース(11)および前記先端フランジ(21)の相互の接合面(11e、21b)の間を気密状態に保持している接合面間シール部材(23)とを有し、
前記先端フランジ(21)は、前記回転出力軸(14)の軸先端部(14a)が貫通して延びているフランジ軸穴(21a)を備えていることを特徴とするシール用回転出力ユニット(3)。
【請求項4】
中心に軸線(4)方向に中空部(5)が貫通して延びている中空モータ(2)と、
前記中空部(5)に同軸状態に配置された請求項1に記載のシール用回転出力ユニット(3)とを有し、
前記シール用回転出力ユニット(3)の前記ユニットケース(11)は、前記中空モータ(2)の前記モータケースに締結固定されており、
前記シール用回転出力ユニット(3)の前記回転出力軸(14)は、前記後端フランジ(24)を介して、前記中空モータ(2)の前記モータケースによって回転自在の状態で支持されている中空モータ軸(9)に、同軸状態に締結固定されていることを特徴とするシール用モータアセンブリ(1)。
【請求項5】
請求項4において、
前記シール用回転出力ユニット(3)は、
前記ユニットケース(11)における前記軸線方向の先端部に締結固定された円盤状の先端フランジ(21)と、
前記ユニットケース(11)および前記先端フランジ(21)の相互の接合面(11e、21b)の間を気密状態に保持している接合面間シール部材(23)とを有し、
前記先端フランジ(21)は、前記回転出力軸(14)の軸先端部(14a)が貫通して延びているフランジ軸穴(21a)を備えており、
前記先端フランジ(21)は、前記中空モータ(2)のモータケースに締結固定されていることを特徴とするシール用モータアセンブリ(1)。
【請求項6】
請求項5において、
前記中空モータ(2)の前記モータケースは、その軸線方向における先端側に位置する固定側モータケース(6a)と、その後端側に位置する回転側モータケース(7b)とを備え、当該回転側モータケース(7b)は前記中空モータ軸(9)に一体形成あるいは連結固定されており、
前記固定側モータケース(6a)によって前記中空モータ軸(9)は回転自在の状態で支持されており、
前記シール用回転出力ユニット(3)の前記先端フランジ(21)は前記固定側モータケース(6a)に締結固定されており、
前記シール用回転出力ユニット(3)の前記後端フランジ(24)は前記回転側モータケース(7b)に締結固定されていることを特徴とするシール用モータアセンブリ(1)。
【請求項7】
請求項4、5または6において、
前記シール用回転出力ユニット(3)の前記弾性シール部材はOリング(17、18)であることを特徴とするシール用モータアセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大気中に配置したACサーボモータなどのモータの回転出力を、真空室、クリーンルームなどのような大気側からシールされた区画室内に導入するために用いるシール用回転出力ユニット、および当該シール用回転出力ユニットが搭載されたシール用モータアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置などの分野では、真空状態あるいは所定の減圧状態に保持された区画室内において各種の処理が行われる。処理操作用の回転駆動力を区画室の外側の大気中に配置したモータから導入する場合には、区画室の仕切り壁を貫通して大気側から真空側に延びる回転出力軸のシールを確実に行う必要がある。このためのシール機構としては非接触型の磁性流体シールが知られている。
【0003】
非特許文献1には、磁性流体シール、および、ACサーボモータに磁性流体シールが組み込まれた構成の磁気シールユニットが掲載されている。このようなビルトイン方式の磁気シールユニットは、既存のACサーボモータのフランジなどの仕様を変更して新たに設計し直す必要がある。
【0004】
既存のACサーボモータをそのまま利用する場合、例えば、非特許文献2に掲載されている中空型の既存のACサーボモータをそのまま用いる場合には、磁性流体シールによってシールされた構成の継ぎ手を介して、真空側の回転部材と大気側のモータ軸を連結する必要がある。しかし、この場合には、継ぎ手の捩れ、滑りなどに起因して、回転出力軸の回転位置を高精度に制御することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“磁性流体を使用した真空シール”、理学メカトロニクス株式会社、[平成22年4月23日検索]、インターネット<URL:http://www.rigaku−mechatronics.com/old_product/customize.html>
【非特許文献2】“ダイレクトドライブ・モータkdu”、株式会社ハーモニック・ドライブ・システムズ、[平成22年4月23日検索]、インターネット<URL:http://hds.co.jp./products/ddm/kdu/index.html>
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、このような点に鑑みて、モータ、特に中空型のモータに連結して用いるのに適したシール用回転出力ユニット、および、当該シール用回転出力ユニットが中空モータに連結固定された構成のシール用モータアセンブリを提案することにある。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明のシール用回転出力ユニットは、
筒状のユニットケースと、
前記ユニットケースの内側に同軸状態に配置されている円筒軸と、
前記ユニットケースの内周面および前記円筒軸の外周面の間において、これらユニットケースおよび円筒軸の軸線方向に離れた位置に配置され、これらユニットケースおよび円筒軸を相対回転自在の状態に保持している第1軸受および第2軸受と、
前記ユニットケースの内周面、前記第1軸受、前記第2軸受および前記円筒軸の外周面によって囲まれた円筒状空間に配置され、前記ユニットケースおよび前記円筒軸の間を気密状態に保持している磁性流体シールと、
前記円筒軸の中空部を同軸状態に貫通して延びている回転出力軸と、
前記回転出力軸の外周面および前記円筒軸の内周面の間を気密状態に保持している弾性シール部材とを有していることを特徴としている。
【0008】
この構成のシール用回転出力ユニットでは、回転出力軸の一方の軸端が例えば真空側に突入した状態に配置され、反対側の軸端が、例えば大気側に配置されているモータ軸に締結固定される。回転出力軸は円筒軸の内側を貫通して延びており、これらの間は弾性シール部材によって気密状態に保持されている。円筒軸は第1、第2軸受を介してユニットケースによって回転自在の状態で支持されており、円筒軸とユニットケースの間は磁性流体シールによって気密状態に保持されている。
【0009】
回転出力軸はモータ軸に直接に締結固定することができる。よって、継ぎ手などを介して回転出力軸がモータ軸に連結されている場合とは異なり、回転出力軸の回転位置決め精度を確保することができる。モータ軸に直接に連結した回転出力軸に芯振れが発生したとしても、当該回転出力軸の芯振れは、回転出力軸と円筒軸の間をシールしている弾性シール部材の弾性変形によって吸収される。したがって、モータ軸の軸受の側、あるいは、回転出力軸が貫通している円筒軸を支持している第1、第2軸受の側に無理な応力が作用して、これらの軸受部分が過剰に摩耗して、寿命が低下するなどの弊害も発生しない。
【0010】
また、円筒軸は第1、第2軸受によって回転自在の状態で支持されているので、円筒軸は回転出力軸と共に回転し、これらの間をシールしている弾性シール部材も円筒軸および回転出力軸と共に回転する。したがって、弾性シール部材に摺動摩擦による摩耗が発生することがないので、弾性シール部材によるシール状態が確保されると共に、弾性シール部材の寿命が摺動摩耗によって低下してしまうことも防止できる。
【0011】
ここで、前記弾性シール部材としてはOリングを用いることができる。
【0012】
また、本発明のシール用回転出力ユニットは、上記構成に加えて、前記ユニットケースにおける前記軸線方向の先端部に締結固定された円盤状の先端フランジと、前記ユニットケースおよび前記先端フランジの相互の接合面の間を気密状態に保持している接合面間シール部材とを有し、前記先端フランジは、前記回転出力軸の軸先端部が貫通して延びているフランジ軸穴を備えていることを特徴としている。
【0013】
この構成のシール用回転出力ユニットでは、例えば、真空室を大気側から仕切っている仕切り壁に形成した軸穴にフランジ軸穴を位置決めし、この状態で、当該仕切り壁の大気側の側面に、ユニットケースの先端フランジが取り付けられる。仕切り壁にシール用回転出力ユニットを取り付けた状態では、真空側と大気側の間が、弾性シール部材、磁性流体シールおよび接合面間シールによって、確実にシールされる。
【0014】
次に、本発明のシール用回転出力ユニットは、上記構成に加えて、前記回転出力軸の軸後端部に同軸状態に締結固定された後端フランジを有し、前記回転出力軸と前記後端フランジの締結固定位置を前記軸線方向に直交する方向に所定量だけシフトさせることが可能となっていることを特徴としている。
【0015】
シール用回転出力ユニットの回転出力軸と、モータ軸に対して同軸状態に締結固定した後端フランジとの間の締結固定位置を、軸線方向に直交する方向に微調整することにより、回転出力軸をモータ軸に対して芯ずれの無い状態で連結でき、回転出力軸の芯振れを確実に防止できる。
【0016】
次に、本発明のシール用モータアセンブリは、
中心に軸線方向に中空部が貫通して延びている中空モータと、
前記中空部に同軸状態に配置された上記構成のシール用回転出力ユニットとを有し、
前記シール用回転出力ユニットの前記ユニットケースは、前記中空モータの前記モータケースに締結固定されており、
前記シール用回転出力ユニットの前記回転出力軸は、前記中空モータのモータケースによって回転自在の状態で支持されている中空モータ軸に、同軸状態に締結固定されていることを特徴としている。
【0017】
中空モータの中空部を利用して磁性流体シールを備えたシール用回転出力ユニットが配置されているので、寸法増加を招くことなく、シール用モータアセンブリを構築できる。また、中空モータ軸に対して回転出力軸が直接に連結されるので、継ぎ手を介して連結する場合とは異なり、回転出力軸の回転位置決め精度の低下を防止できる。
【0018】
ここで、前記シール用回転出力ユニットは、前記ユニットケースにおける前記軸線方向の先端部に締結固定された円盤状の先端フランジと、前記ユニットケースおよび前記先端フランジの相互の接合面の間を気密状態に保持している接合面間シール部材とを有し、前記先端フランジは、前記回転出力軸の軸先端部が貫通して延びているフランジ軸穴を備えている場合がある。この場合には、前記先端フランジは、前記中空モータのモータケースに締結固定される。
【0019】
また、前記シール用回転出力ユニットは、前記回転出力軸の軸後端部に同軸状態に締結固定される後端フランジを有し、前記回転出力軸と前記後端フランジの締結固定位置は、前記軸線に直交する方向に所定量だけ変更可能となっている場合がある。この場合には、前記後端フランジは、前記中空モータの前記中空モータ軸に、同軸状態に締結固定される。
【0020】
さらに、前記中空モータの前記モータケースは、その軸線方向における先端側に位置する固定側モータケースと、その後端側に位置する回転側モータケースとを備え、当該回転側モータケースは前記中空モータ軸に一体形成あるいは連結固定されており、前記固定側モータケースによって前記中空モータ軸は回転自在の状態で支持されている場合がある。この場合には、前記シール用回転出力ユニットの前記先端フランジは前記固定側モータケースに締結固定され、前記シール用回転出力ユニットの前記後端フランジは前記回転側モータケースに締結固定される。
【発明の効果】
【0021】
本発明では、磁性流体シールによって外周面がシールされている円筒軸の内側に、回転出力軸を貫通する状態に配置し、これら円筒軸と回転出力軸の間をOリングなどの弾性シール部材によってシールしている。この構成によれば、モータ軸に直結した場合の回転出力軸の芯振れが弾性シール部材によって吸収されるので、モータ軸の軸受側あるいは磁性流体シールの軸受側に無理な応力が発生することがない。また、円筒軸は回転出力軸と共に回転するので、これらの間をシールしている弾性シール部材が摺動摩耗してシール性が低下することもない。よって、本発明によれば、モータ、例えば既存のモータに、継ぎ手を介さずに直結して用いることのできる回転精度の高いシール用回転出力ユニットを実現できる。また、中空モータの中空部を利用して磁性流体シールを備えたシール用回転出力ユニットを配置することにより、寸法増加を招くことなく、回転精度の高いシール用モータアセンブリを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明を適用したシール用モータアセンブリを示す概略構成図であり、一部を縦断面で示し、残りを側面として示してある。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、図面を参照して本発明を適用したシール用モータアセンブリの実施の形態を説明する。
【0024】
図1を参照して説明すると、本実施の形態に係るシール用モータアセンブリ1は中空モータ2とシール用回転出力ユニット3を備えている。中空モータ2の中心部にはモータ軸線4の方向に延びる中空部5が貫通して延びており、ここにシール用回転出力ユニット3が同軸状態に装着されている。
【0025】
中空モータ2は、先端側の固定部6と後端側の回転部7から構成されている。固定部6は、その後端側から、円筒状の固定側モータケース6aと、円筒状のエンコーダカバー6bと、円盤状の取付用フランジ6cが同軸状に組み付けられた構成となっている。回転部7は、固定部6および回転部7の中心に沿って延びている中空モータ軸9を備えている。中空モータ軸9の後端部には半径方向の外方に広がる円盤状の後端側端板7aが一体形成されている。後端側端板7aの外周縁部には先端側に延びる円筒状の回転側モータケース7bが一体形成されている。固定側モータケース6aと回転側モータケース7bによって、中空モータ2のモータケースが構成されている。
【0026】
回転側モータケース7bと中空モータ軸9の間の円筒状空間には、固定側モータケース6aの内側に固定されたステータコアおよび当該ステータコアに巻き付けた駆動コイルからなるステータ部(図示せず)が配置されており、当該ステータ部は、一定のギャップを介して中空モータ軸9の外周に同軸状態に固定したロータマグネット7cに対峙している。また、固定部6と回転部7は、これらの間に配置したクロスローラベアリング8によって相対回転自在の状態に保持されている。エンコーダカバー6bによって覆われている中空モータ軸9の外周部分にはエンコーダユニット10が組み込まれており、中空モータ軸9の回転位置を検出可能となっている。
【0027】
(シール用回転出力ユニット)
次に、シール用回転出力ユニット3は円筒状のユニットケース11を備えている。ユニットケース11の先端部には半径方向の外方および内側に広がっている円環状の先端側端板11aが一体形成されており、ユニットケース11の後端部には半径方向の内側に延びる円環状の後端側端板11bが一体形成されている。
【0028】
この形状のユニットケース11の内側には同軸状態に円筒軸12が配置されており、この円筒軸12の軸先端部12aは先端側端板11aから先端側に僅かに突出しており、軸先端部12aの外周面部分と先端側端板11aの円形内周面の間には微小な円環状隙間が形成されている。同様に、円筒軸12の軸後端部12bは後端側端板11bから後端側に僅かに突出しており、軸後端部12bの外周面部分と後端側端板11bの円形内周面の間には微小な円環状隙間が形成されている。
【0029】
ユニットケース11の内側には、その先端側端板11aの後側位置および後端側端板11bの前側位置に、それぞれ先端側軸受15および後端側軸受16が組み込まれており、これらの軸受15、16を介して、円筒軸12はユニットケース11の円形内周面11cに回転自在の状態で支持されている。
【0030】
これらユニットケース11の円形内周面11c、軸受15、16および円筒軸12の円形外周面12cによって囲まれている円筒状空間には、磁性流体シール13が装着されている。磁性流体シール13は、永久磁石リングと磁性リングとが交互に円筒軸の軸線方向に積層配列され、各磁性リングの内周面と磁性材料からなる円筒軸12の円形外周面12cの間に、磁力によって磁性流体が保持された構成となっている。磁性流体シール13の構造は公知であるので図示を省略してある。磁性流体シール13によって、円筒軸12とユニットケース11の間が気密状態に保持されている。
【0031】
円筒軸12の中空部には回転出力軸14が同軸状態に貫通して延びている。円筒軸12の円形内周面12dと回転出力軸14の円形外周面14c間は微小な環状隙間が形成されている。また、円筒軸12の円形内周面12dにおいて、先端側軸受15に対峙する位置および後端側軸受16に対峙する位置には、それぞれ矩形断面の円環溝が形成されており、これらの円環溝には弾性シール部材としてOリング17、18が装着されている。Oリング17、18は弾性変形して押しつぶされた状態で、円筒軸12の円形内周面12dと回転出力軸14の円形外周面14cの間を気密状態に保持している。なお、場合によっては、Oリング17、18の代わりに、弾性変形可能な樹脂製あるいはゴム製のシールリングを用いることも可能である。
【0032】
次に、ユニットケース11の先端側端板11aの先端側の端面11eには、円盤状の先端フランジ21が締結ボルト22によって同軸状態に締結固定されている。先端フランジ21の中心に形成したフランジ軸穴21aは先端側が小径開口部となっており、後端側が大径開口部となっており、大径開口部に後側からユニットケース11の先端側端板11aが装着され、締結ボルト22によって締結固定されている。フランジ軸穴21aの円環状段面21bと、これに接触している先端側端板11aの先端側の端面11eとの間は、Oリング23によって気密状態に保持されている。先端フランジ21のフランジ軸穴21aを貫通して、回転出力軸14の軸先端部14aが先端側に向けて突出している。
【0033】
一方、回転出力軸14の軸後端部14bには同軸状態に円盤状の後端フランジ24が締結ボルト25によって締結固定されている。回転出力軸14の軸後端部14bには、大きな径の円盤状のボス14dが形成されており、ボス14dの後端面14eの中心からは後方に円柱状の凸部14fが突出している。これに対して、後端フランジ24は大径の円盤部分24aと、この円盤部分24aの先端側の端面の中心から先端側に突出している円柱状のボス24bとを備えている。ボス24bはボス14dと同一径のものであり、その先端面24cの中心には円形凹部24dが形成されている。
【0034】
回転出力軸14のボス14dの後端面14eと、後端フランジ24のボス24bの先端面24cは、回転出力軸14および後端フランジ24を連結する際の位置決め用の合わせ面となっている。また、円形凹部24dの内径はボス14dの外径よりも僅かに大きく、これらの間に遊びがあり、回転出力軸14と後端フランジ24は、それらの軸線に直交する方向に相対的に僅かに移動可能である。
【0035】
ここで、シール用回転出力ユニット3は、その先端フランジ21が締結ボルト26によって中空モータ2の固定部6の取付用フランジ6cに対して後側から締結固定されている。また、その後端フランジ24の円盤部分24aが、締結ボルト27によって、中空モータ2の中空モータ軸9の後端部に締結固定されている。
【0036】
この構成のシール用モータアセンブリ1は、例えば、真空室30における大気側との仕切り壁31の大気側側面32に、先端フランジ21の先端面21cが不図示の締結ボルトによって締結固定される。仕切り壁31の大気側側面32と先端フランジ21の先端面21cの間には弾性シール部材、例えばOリング33が装着され、これらの間が気密状態に保持される。回転出力軸14の軸先端部14aは仕切り壁31の軸穴35を通って真空室側に突出した状態になる。この状態において、真空側と大気側とは、Oリング33と、シール用回転出力ユニット3のOリング23、磁性流体シール13、および、Oリング17、18とによってシールされた状態が形成される。
【0037】
本実施の形態に係るシール用モータアセンブリ1では、磁性流体シール13を用いて、固定側のユニットケース11と回転側の円筒軸12の間をシールしている。非接触型の磁性流体シール13を用いているので、中空モータ2による回転出力軸14の回転に伴う摩擦力を低減できる。また、シール用回転出力ユニット3における先端フランジ21、後端フランジ24以外の部分、すなわち、磁性流体シール13が形成されている部分を中空モータ2の中空部5内に配置してある。したがって、既存の中空モータ2の軸長、外径の大幅な増加を伴うことなく、シール用回転出力ユニット3を取り付けることができる。よって、小型でコンパクトなシール用モータアセンブリ1を実現できる。
【0038】
また、回転出力軸14は継ぎ手を介さずに中空モータ軸9に締結固定されているので、捩れ、滑りなどが双方の部材の間に発生しない。よって、回転出力軸14の回転位置決め精度を確保することができる。
【0039】
さらに、磁性流体シール13の回転軸である円筒軸12と、この内側の回転出力軸14との間には微小な円環状隙間があり、この円環状隙間が前後に配置したOリング17、18によってシールされている。円筒軸12と回転出力軸14は連れ回りするので、これらの間のOリング17、18に摺動摩耗が発生せずに、確実なシール状態が維持される。
【0040】
さらには、円筒軸12と回転出力軸14の間に芯ずれが発生したとしても、これらの間に配置されているOリング17、18の弾性変形によって芯ずれが吸収される。
【0041】
一方、回転出力軸14と中空モータ軸9の間は後端フランジ24を介して連結固定されている。回転出力軸14と後端フランジ24は、精度良く形成されている相互の合わせ面(14e、24c)によって精度良く直角に組み付けられる。また、後端フランジ24は回転出力軸14に対して軸線に直交する方向に僅かに移動可能であるので、後端フランジ24を介して中空モータ軸9に対して回転出力軸14を芯ずれの無い状態で連結固定することができる。したがって、回転出力軸14と中空モータ軸9との間の芯ずれに起因して、磁性流体シール13側の軸受15、16、あるいは、中空モータ2側の軸受(図示せず)に過剰な応力が発生して、これらの寿命が低下するなどの弊害も回避できる。
【0042】
なお、上記の中空モータ2では、モータケースが固定側モータケース6aと回転側モータケース7bから構成されているが、単一の円筒状のモータケース内に同軸状態に中空モータ軸が回転自在の状態で配置されている一般的な構成の中空モータを用いることも可能である。この場合には、固定側のモータケースにユニットケース11を直接あるいは間接的に連結固定し、中空モータ軸に回転出力軸14を直接あるいは間接的に連結固定すればよい。