(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718352
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】トリクロロシランの製造システム及び方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/107 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
C01B33/107 Z
【請求項の数】34
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2012-537988(P2012-537988)
(86)(22)【出願日】2010年11月4日
(65)【公表番号】特表2013-510068(P2013-510068A)
(43)【公表日】2013年3月21日
(86)【国際出願番号】US2010055430
(87)【国際公開番号】WO2011056959
(87)【国際公開日】20110512
【審査請求日】2013年10月9日
(31)【優先権主張番号】12/614,269
(32)【優先日】2009年11月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508320321
【氏名又は名称】ジーティーエイティー・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100161595
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 梓
(72)【発明者】
【氏名】ファーレンブルック,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ヘイゼルティン,ブルース
【審査官】
廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−045919(JP,A)
【文献】
特開2008−137885(JP,A)
【文献】
特開2008−156209(JP,A)
【文献】
特表2002−533293(JP,A)
【文献】
特開2008−184378(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2004/0028593(US,A1)
【文献】
米国特許第06060021(US,A)
【文献】
国際公開第2008/056550(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00−33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリクロロシランの製造法であって、
四塩化ケイ素及び水素を含む反応混合物をリアクターに導入し;
リアクターから、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、水素、ケイ素、及び金属塩を含む第一の粗生成物を回収し;
第一の粗生成物からケイ素の少なくとも一部及び金属塩を分離して、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、及び水素を含む第二の粗生成物と、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、ケイ素、及び金属塩を含む第一の残渣とを製造し;そして
第一の残渣の少なくとも一部を接触ガスと接触させて、ケイ素及び金属塩を含む固体豊富残渣と、トリクロロシラン及び四塩化ケイ素を含む蒸気生成物とを製造する
ことを含み、
接触ガスは、トリクロロシラン、ジクロロシラン、及び四塩化ケイ素のうちの少なくとも1つの気化を促進し、接触又は気化に際して前記トリクロロシラン、ジクロロシラン、及び四塩化ケイ素のうちの少なくとも1つと反応しないガスである、上記方法。
【請求項2】
接触ガスが水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第二の粗生成物の少なくとも一部を凝縮して粗凝縮物を製造し;そして
粗凝縮物の少なくとも一部を第一の粗生成物と接触させる
ことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
粗凝縮物の少なくとも一部を蒸気生成物の少なくとも一部と接触させることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
第一の残渣の少なくとも一部を第一の粗生成物と接触させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
トリクロロシランの少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から分離し;
四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から回収し;
水素の少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から回収し;そして
回収された水素の少なくとも一部をリアクターに導入する
ことをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
接触ガスが、回収された水素を少なくとも部分的に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応混合物が、回収された水素及び回収された四塩化ケイ素を少なくとも部分的に含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
第一の粗生成物からのケイ素の少なくとも一部及び金属塩化物塩の分離が、
第一の粗生成物をクエンチカラムに導入し;
第二の粗生成物をクエンチカラムから回収し;そして
第一の残渣をクエンチカラムから回収する
ことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
第一の残渣の少なくとも一部と接触ガスとの接触が、
接触ガスをストリッパーカラムに導入し;
第一の残渣の少なくとも一部をストリッパーカラムに導入し;
蒸気生成物をストリッパーカラムから回収し;そして
固体豊富残渣をストリッパーカラムから回収する
ことを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
第一の粗生成物からのケイ素の少なくとも一部及び金属塩の分離が、第一の粗生成物の少なくとも一部をストリッパーカラムからの蒸気生成物の少なくとも一部と接触させることを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物から分離して、回収四塩化ケイ素と、トリクロロシラン及びジクロロシランを含む第三の粗生成物とを製造し;そして
回収四塩化ケイ素の少なくとも一部をリアクターに導入する
ことをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
回収四塩化ケイ素の濃度を増大して濃縮四塩化ケイ素生成物を製造し;そして
濃縮四塩化ケイ素生成物をリアクターに導入する
ことをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第二の粗生成物中の水素の少なくとも一部を回収し;そして
回収水素の少なくとも一部を濃縮四塩化ケイ素生成物と共にリアクターに導入する
ことをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
トリクロロシランを第三の粗生成物から分離してトリクロロシラン豊富生成物を製造することをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
リアクターに導入される反応混合物の少なくとも一部を、リアクターからの第一の粗生成物の少なくとも一部で加熱することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
金属種を有する金属グレードのケイ素をリアクターに導入することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
トリクロロシランの合成システムであって、
四塩化ケイ素の供給源;
水素の供給源;
四塩化ケイ素の供給源及び水素の供給源に流体接続されており、リアクター出口を有するリアクター;
リアクター出口の下流に流体接続されている粗蒸気入口、第二の蒸気入口、粗蒸気生成物出口、及び残渣出口を有するクエンチカラム;そして、
クエンチカラムの残渣出口の下流に流体接続されているオーバーヘッド液体入口、接触ガス入口、及びクエンチカラムの第二の蒸気入口に流体接続されているオーバーヘッド蒸気出口を有するストリッパーカラム
を含むシステム。
【請求項19】
粗蒸気生成物出口の下流に流体接続されている凝縮器入口、クエンチカラムのオーバーヘッド凝縮物入口の上流に流体接続されている凝縮物出口、及びトリクロロシラン、ジクロロシラン、四塩化ケイ素分離装置列の上流に流体接続されている凝縮器出口を有する凝縮器をさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
クエンチカラムの残渣出口の下流に流体接続されているポンプ入口と、ストリッパーカラムのオーバーヘッド液体入口の上流及びクエンチカラムの残渣リサイクル入口の上流に流体接続されているポンプ出口とを有する残渣ポンプをさらに含む、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
回収水素出口を有する水素回収システムをさらに含み、前記水素回収システムは凝縮器出口の下流に流体接続されている、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
ストリッパーカラムの接触ガス入口が、回収水素出口の下流に流体接続されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
ストリッパーカラムの接触ガス入口の上流に流体接続されている、水素を含む接触ガスストリームの供給源をさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項24】
水素の供給源及び四塩化ケイ素の供給源の少なくとも一つをリアクターに流体接続する第一の流体側と、第一の流体側と熱連絡しており、リアクター出口をクエンチカラムの粗蒸気入口に流体接続する第二の流体側とを有する熱交換器をさらに含む、請求項18に記載のシステム。
【請求項25】
トリクロロシランの合成法であって、
流動床リアクター中で四塩化ケイ素を水素化して、四塩化ケイ素、水素、ケイ素、及び少なくとも一つの金属塩を含む第一の粗生成物ストリーム中にトリクロロシランを製造し;
第一の分離カラムで第一の粗生成物ストリームからケイ素の少なくとも一部及び少なくとも一つの金属塩を分離して、トリクロロシラン及び四塩化ケイ素をさらに含む第一の残渣ストリームと第二の粗生成物ストリームとを製造し;そして
第一の残渣ストリームの少なくとも一部から、トリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二のカラムで接触ストリームを用いて気化させて、気化トリクロロシラン及び気化四塩化ケイ素を含む蒸気生成物ストリームと、少なくとも一つの金属塩及びケイ素を含む固体豊富スラリーストリームとを製造する
ことを含み、
接触ストリームは、水素及び非凝縮性ガスのうちの少なくとも1つを含む、上記方法。
【請求項26】
接触ストリームを用いた、第一の残渣ストリームの少なくとも一部からのトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部の気化が、第一の残渣ストリームの少なくとも一部を、水素を含む接触ストリームと接触させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
第一の粗生成物ストリームからのケイ素の少なくとも一部及び少なくとも一つの金属塩の分離が、第一の粗生成物ストリームを第一の残渣ストリームの少なくとも一部と接触させることを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
第二の粗生成物ストリームの少なくとも一部を凝縮して粗凝縮物ストリームを製造し;そして、
第一の粗生成物ストリームを粗凝縮物ストリームと接触させる
ことをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
水素の少なくとも一部を第二の粗生成物ストリームから回収することをさらに含み、第一の残渣ストリームの少なくとも一部からのトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部の気化は、回収水素の少なくとも一部を用いて気化させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
四塩化ケイ素の水素化が、四塩化ケイ素を回収水素の少なくとも一部を用いて水素化することを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物ストリームから回収することをさらに含み、四塩化ケイ素の水素化は、回収された四塩化ケイ素の少なくとも一部を回収水素の少なくとも一部を用いて水素化することを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
四塩化ケイ素の水素化の前に、四塩化ケイ素と水素の反応混合物を第一の粗生成物ストリームで加熱することをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
トリクロロシランの製造法であって、
四塩化ケイ素と水素を含む反応混合物を供給し;
反応混合物を、四塩化ケイ素の少なくとも一部を水素化してトリクロロシランにする反応条件を有するリアクターに導入し;
四塩化ケイ素、水素、トリクロロシラン、及び金属塩を含む粗生成物を回収し;
反応混合物の少なくとも一部を粗生成物の少なくとも一部で加熱し;
粗生成物を残渣と粗蒸気生成物に分離し;
水素を粗蒸気生成物の少なくとも一部から回収し;そして
残渣の少なくとも一部を回収した水素の少なくとも一部と接触させて、蒸気生成物と、金属塩を含む固体豊富残渣とを製造する
ことを含む方法。
【請求項34】
粗生成物を蒸気生成物と接触させる
ことをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2009年11月6日出願の米国特許出願第12/614,269号、発明の名称「トリクロロシランの製造システム及び方法」の利益を主張し、その全文をあらゆる目的のために引用によって本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、トリクロロシランの製造システム及び方法に関し、特に、気化技術を利用して金属塩などの固体副産物の除去を促進し、下流ユニット操作(単位操作)でのその付着可能性を削減するトリクロロシランの合成システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
Wagnerらは、米国特許第2,595,620号に、一つ又は複数のケイ素結合塩素原子を水素原子で置換することを含む水素化法を開示している。
Bakayは、米国特許第3,968,199号に、トリクロロシランHSiCl
3の不均化又は再分配によるシランSiH
4の製造法を開示している。
【0004】
Taranconは、米国特許第4,099,936号に、不純物を有するシランの混合物を多孔質粒状炭及び多孔質粒状ケイ酸マグネシウムに通すこと及び蒸留を含むシランの精製法を開示している。
【0005】
Colemanは、米国特許第4,340,574号に、分離カラムからのリサイクル(再循環)を用いる超高純度シランの製造法を開示している。
Brenemanは、米国特許第4,676,967号に、高純度シラン及びケイ素の製造法を開示している。
【0006】
Burgieらは、米国特許第5,118,486号に、副産物ストリームの噴霧化による粒状ケイ素及びシランへの分離を開示している。
Brinkらは、米国特許第5,232,602号に、活性炭との接触によってリンの微量不純物を除去することを含む、エレクトロニクスグレードのシリコンを製造するためのテトラクロロシランの精製法を開示している。
【0007】
Tzouは、米国特許第5,723,644号に、リン混入物を有するクロロシランを含む混合物を、銅又は銅化合物の吸着剤と接触させることによるクロロシランの精製法を開示している。
【0008】
Odaは、米国特許第6,060,021号に、封止ガスとして水素ガス下でトリクロロシラン及び四塩化ケイ素を貯蔵する方法を開示している。
Kleinらは、米国特許第6,843,972 B2号に、固体塩基との接触によるトリクロロシランの精製法を開示している。
【0009】
Blockらは、米国特許第6,852,301 B2号に、金属ケイ素を四塩化ケイ素SiCl
4及び水素と反応させてトリクロロシランSiHCl
3と四塩化ケイ素の粗ガスストリームを形成し;凝縮クロロシランで洗浄することにより粗ガスストリームから不純物を除去し;蒸留によって精製粗ガスストリームを凝縮及び分離し;四塩化ケイ素の部分ストリームを金属ケイ素と四塩化ケイ素及び水素との反応に戻し;部分ストリームを不均化して四塩化ケイ素とシランを形成し;そして不均化によって形成されたシランを金属グレードのケイ素と四塩化ケイ素及び水素との反応に戻すことによるシランの製造法を開示している。
【0010】
Blockらは、米国特許第6,887,448 B2号に、高純度ケイ素の製造法を開示している。
Blockらは、米国特許第6,905,576 B1号に、触媒床でのトリクロロシランの接触不均化によるシランの製造法及びシステムを開示している。
【0011】
Bulanらは、米国特許第7,056,484 B2号に、ケイ素を水素、四塩化ケイ素と反応させることによるトリクロロシランの製造法を開示している。ケイ素は触媒と混合された粉砕形である。
【0012】
Bulanらは、米国特許出願公開第2002/0044904 A1号に、触媒を用いて、ケイ素を四塩化ケイ素、水素、及び所望により塩化水素と反応させることによるトリクロロシランの製造法を開示している。
【0013】
Bulanらは、米国特許出願公開第2004/0022713 A1号に、触媒を用いて、ケイ素を水素、四塩化ケイ素、及び所望により塩化水素と反応させることによるトリクロロシランの製造法を開示している。触媒は、使用されるケイ素の平均粒度より30〜100倍小さい平均粒度を有する。
【0014】
Kajimotoらは、米国特許出願公開第2007/0231236 A1号に、ハロシランの製造法及び固体画分の精製法を開示している。
Bohmhammelらは、米国特許出願公開第2009/0035205 A1号に、元素の周期表第2族の少なくとも一つの金属又は金属塩である触媒を用いた四塩化ケイ素の接触水素化脱ハロゲンによる四塩化ケイ素の製造法を開示している。
【0015】
Hsiehらは、欧州特許明細書公開第0 444 190 B1号に、半透膜によるガス分離を開示している。
Allenは、欧州特許明細書公開第0 450 393 A2号に、改良された多結晶シリコン及びそのためのプロセスを開示している。
【0016】
Ghettiは、国際公開第2006/054325 A2号に、トリクロロシラン及び四塩化ケイ素の精製法及びプラントを開示している。
Andersenらは、国際公開第2007/035108 A1号に、トリクロロシランの製造法、及びトリクロロシランの製造に使用するためのケイ素の製造法を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第2,595,620号
【特許文献2】米国特許第3,968,199号
【特許文献3】米国特許第4,099,936号
【特許文献4】米国特許第4,340,574号
【特許文献5】米国特許第4,676,967号
【特許文献6】米国特許第5,118,486号
【特許文献7】米国特許第5,232,602号
【特許文献8】米国特許第5,723,644号
【特許文献9】米国特許第6,060,021号
【特許文献10】米国特許第6,843,972 B2号
【特許文献11】米国特許第6,852,301 B2号
【特許文献12】米国特許第6,887,448 B2号
【特許文献13】米国特許第6,905,576 B1号
【特許文献14】米国特許第7,056,484 B2号
【特許文献15】米国特許出願公開第2002/0044904 A1号
【特許文献16】米国特許出願公開第2004/0022713 A1号
【特許文献17】米国特許出願公開第2007/0231236 A1号
【特許文献18】米国特許出願公開第2009/0035205 A1号
【特許文献19】欧州特許明細書公開第0 444 190 B1号
【特許文献20】欧州特許明細書公開第0 450 393 A2号
【特許文献21】国際公開第2006/054325 A2号
【特許文献22】国際公開第2007/035108 A1号
【発明の概要】
【0018】
本発明の一つ又は複数の側面はトリクロロシランの製造法に関する。一つ又は複数の態様に従って、該方法は、反応混合物をリアクターに導入し(反応混合物は四塩化ケイ素及び水素を含む);リアクターから第一の粗生成物を回収し(第一の粗生成物は、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、水素、ケイ素、及び金属塩を含む);第一の粗生成物からケイ素の少なくとも一部及び金属塩を分離して第二の粗生成物と第一の残渣を製造し(第二の粗生成物は、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、及び水素を含み、第一の残渣は、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、ケイ素、及び金属塩を含む);そして第一の残渣の少なくとも一部を接触ガスと接触させて固体豊富残渣と蒸気生成物を製造する(蒸気生成物は、トリクロロシラン及び四塩化ケイ素を含み、固体豊富残渣はケイ素及び金属塩を含む)ことを含みうる。
【0019】
接触ガスは、水素及び非凝縮性ガスの少なくとも一つを含みうる。本発明の一つ又は複数の態様の少なくとも一つの変形に従って、方法はさらに、第二の粗生成物の少なくとも一部を凝縮して粗凝縮物を製造し、そして好ましくは粗凝縮物の少なくとも一部を第一の粗生成物と接触させることを含みうる。少なくとも一つの更なる変形に従って、方法はさらに、粗凝縮物の少なくとも一部を蒸気生成物の少なくとも一部と接触させることを含みうる。少なくとも一つのなお更なる変形に従って、方法は、第一の残渣の少なくとも一部を第一の粗生成物と接触させることを含みうる。方法はさらに、トリクロロシランの少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から分離し、四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から回収し、水素の少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から回収し、そして回収された水素の少なくとも一部をリアクターに導入することを含みうる。好都合な場合、接触ガスは回収された水素を少なくとも部分的に含みうる。さらに、反応混合物も回収された水素を少なくとも部分的に含むことができ、好ましくは、回収された四塩化ケイ素を含むこともできる。ケイ素の少なくとも一部及び金属塩化物塩を第一の粗生成物から分離することに関する本発明の一つ又は複数の特定の態様は、第一の粗生成物をクエンチカラムに導入し、第二の粗生成物をクエンチカラムから回収し、そして第一の残渣をクエンチカラムから回収することを含みうる。第一の残渣の少なくとも一部と接触ガスとの接触は、接触ガスをストリッパーカラムに導入し、第一の残渣の少なくとも一部をストリッパーカラムに導入し、蒸気生成物をストリッパーカラムから回収し、そして固体豊富残渣をストリッパーカラムから回収することを含みうる。さらに、第一の粗生成物からのケイ素の少なくとも一部及び金属塩の分離は、第一の粗生成物の少なくとも一部をストリッパーカラムからの蒸気生成物の少なくとも一部と接触させることを含みうる。
【0020】
本発明の一つ又は複数の更なる態様において、方法はさらに、四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物から分離して、回収四塩化ケイ素と、トリクロロシラン及びジクロロシランを含む第三の粗生成物とを製造し、そして回収四塩化ケイ素の少なくとも一部をリアクターに導入することを含みうる。方法はさらに、生成物中の回収四塩化ケイ素の濃度を増大して濃縮STC生成物を製造し、そして濃縮STC生成物をリアクターに導入することを含みうる。本発明の一つ又は複数のなお更なる態様において、方法はさらに、第二の粗生成物中の水素の少なくとも一部を回収し、そして回収水素の少なくとも一部を濃縮STC生成物と共にリアクターに導入することを含みうる。本発明の一つ又は複数のなお更なる態様において、方法は、トリクロロシランを第三の粗生成物から分離してトリクロロシラン豊富生成物を製造し、場合によっては、リアクターに導入される反応混合物の少なくとも一部をリアクターからの第一の粗生成物の少なくとも一部で加熱することを含みうる。
【0021】
本発明の一つ又は複数の側面はトリクロロシランを合成するためのシステムに関する。一つ又は複数の態様に従って、該システムは、四塩化ケイ素の供給源;水素の供給源;四塩化ケイ素の供給源及び水素の供給源に流体接続されているリアクター(リアクターはリアクター出口を有する);粗蒸気入口、第二の蒸気入口、粗蒸気生成物出口、及び残渣出口を有するクエンチカラム(粗蒸気入口はリアクター出口の下流に流体接続されている);そして、オーバーヘッド液体入口、接触ガス入口、及びオーバーヘッド蒸気出口を有するストリッパーカラム(オーバーヘッド液体入口はクエンチカラムの残渣出口の下流に流体接続されており、オーバーヘッド蒸気出口はクエンチカラムの第二の蒸気入口の上流に流体接続されている)を含みうる。システムはさらに、凝縮器入口、凝縮物出口、及び凝縮器出口を有する凝縮器を含みうる。凝縮器入口は粗蒸気生成物出口の下流に流体接続されており、凝縮器出口は、トリクロロシラン、ジクロロシラン、四塩化ケイ素の分離装置列(separation train)の上流に流体接続されており、凝縮物出口はクエンチカラムのオーバーヘッド凝縮物入口の上流に流体接続されている。さらに、本発明的システムの構成は、ポンプ入口及びポンプ出口を有する残渣ポンプを含みうる。ポンプ入口はクエンチカラムの残渣出口の下流に流体接続されており、ポンプ出口はストリッパーカラムのオーバーヘッド液体入口の上流、及びクエンチカラムの残渣リサイクル入口の上流に流体接続されている。
【0022】
システムはさらに、回収水素出口を有する水素回収システムを含みうる。水素回収システムは典型的には凝縮器出口の下流に流体接続されている。なお更なる態様において、ストリッパーカラムの接触ガス入口は、回収水素出口の下流に流体接続されている。トリクロロシラン合成システムはさらに、ストリッパーカラムの接触ガス入口の上流に流体接続されている接触ガスストリームの供給源も含みうる。接触ガスストリームは典型的には水素を含む。
【0023】
システムはさらに、第一の流体側と、第一の流体側と熱連絡(thermal communication)している第二の流体側とを有する熱交換器を含みうる。第一の流体側は水素の供給源及び四塩化ケイ素の供給源の少なくとも一つをリアクターに流体接続しており、第二の流体側は、リアクター出口をクエンチカラムの粗蒸気入口に流体接続している。従って、熱交換器は、第一の入口と、水素の供給源及び四塩化ケイ素の供給源をリアクターの入口に流体接続している第一の出口を有しうる。熱交換器は、第二の入口と、リアクターの出口をクエンチカラムの入口に流体接続している第二の出口も含みうる。
【0024】
本発明のトリクロロシラン合成法に関する一つ又は複数の態様は、流動床リアクター中で四塩化ケイ素を水素化して第一の粗生成物ストリーム中にトリクロロシランを製造し(第一の粗生成物ストリームはさらに、四塩化ケイ素、水素、ケイ素、及び少なくとも一つの金属塩を含みうる);第一の分離カラムで第一の粗生成物ストリームからケイ素の少なくとも一部及び少なくとも一つの金属塩を分離して第一の残渣ストリームと第二の粗生成物ストリームを製造し(第一の残渣ストリームはさらにトリクロロシラン及び四塩化ケイ素を含みうる);そして第一の残渣ストリームの少なくとも一部からトリクロロシランの少なくとも一部と四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二のカラムで接触ストリームを用いて気化させて蒸気生成物ストリーム及び固体豊富スラリーストリームを製造する(固体豊富スラリーストリームは少なくとも一つの金属塩及び典型的にはケイ素を含みうる、及び蒸気生成物ストリームは気化トリクロロシラン及び気化四塩化ケイ素を含みうる)ことを含みうる。接触ストリームを用いた、第一の残渣ストリームの少なくとも一部からのトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部の気化は、本発明の一つ又は複数の変形又は態様においては、第一の残渣ストリームの少なくとも一部を、水素及び一つ又は複数の非凝縮性ガスの少なくとも一つを含む接触ストリームと接触させることを含みうる。さらに、第一の粗生成物ストリームからのケイ素の少なくとも一部及び少なくとも一つの金属塩の分離は、トリクロロシラン合成法のさらに他の変形又は態様においては、第一の粗生成物ストリームの少なくとも一部を第一の残渣ストリームと接触させることを含みうる。トリクロロシラン合成法のさらに他の変形は、第二の粗生成物ストリームの少なくとも一部を凝縮して粗凝縮物ストリームを製造し、そして第一の粗生成物ストリームを粗凝縮物ストリームと接触させることを含みうる。トリクロロシラン合成法の本明細書中に記載の変形のいずれかと共に、又はその代わりに、方法はさらに、水素の少なくとも一部を第二の粗生成物ストリームから回収し、そしてトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部を第一の残渣ストリームの少なくとも一部から、回収水素の少なくとも一部を用いて気化させることを含みうる。トリクロロシラン合成法のさらに追加の又は代替の変形において、四塩化ケイ素の水素化は、四塩化ケイ素を回収水素の少なくとも一部を用いて水素化することを含みうる。トリクロロシランの合成法は、上記態様の一つ又は複数の変形において、さらに、四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物ストリームから回収することを含みうる。四塩化ケイ素の水素化は、回収された四塩化ケイ素の少なくとも一部を回収水素の少なくとも一部で水素化することを含みうる。方法はさらに、四塩化ケイ素の水素化の前に、四塩化ケイ素と水素の反応混合物の少なくとも一部を第一の粗生成物ストリームの少なくとも一部で加熱することを含みうる。
【0025】
トリクロロシランの製造法に関する本発明の一つ又は複数の態様は、四塩化ケイ素と水素を含む反応混合物を供給し;反応混合物を、四塩化ケイ素の少なくとも一部を水素化してトリクロロシランにする反応条件を有するリアクターに導入し;四塩化ケイ素、水素、トリクロロシラン、及び金属塩を含む粗生成物を回収し;反応混合物の少なくとも一部を粗生成物の少なくとも一部で加熱し;そしてトリクロロシランを粗生成物の少なくとも一部から分離してトリクロロシラン生成物を製造することを含みうる。方法はさらに、粗生成物を残渣と粗蒸気生成物に分離し;水素を粗蒸気生成物の少なくとも一部から回収し;残渣の少なくとも一部を回収水素の少なくとも一部と接触させて蒸気生成物と金属塩を含む固体豊富残渣とを製造し;そして粗生成物を蒸気生成物と接触させることを含みうる。
【0026】
添付の図面は正確な縮尺ではない。図面中、様々な図面に示されている同一又は同一に近い構成要素は同様の数字で表されている。明確化のために、どの図面にもすべての構成要素が標識されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、本発明の一つ又は複数の側面に従うシステムの一部のプロセスフロー図を示す概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の一つ又は複数の側面に従うシステムの一部のプロセスフロー図を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
トリクロロシランは、リアクター内で四塩化ケイ素を金属グレードのケイ素及び水素と反応させることを含む塩化水素処理(hydrochlorination)によって製造できる。製造されたクロロシランは、典型的には、金属ケイ素細粒を含有するスラリーとして、気化された金属塩化物塩などの金属塩と共にリアクターから回収される。
【0029】
金属塩は、遷移金属塩化物及びアルカリ土類金属塩化物でありうる。金属塩の非制限的例は、塩化鉄、塩化カルシウム、及び塩化アルミニウムなどである。金属塩の前駆体としての役割を果たしうる金属は、トリクロロシラン合成プロセスに、一つ又は複数の反応物の不純物又は混入物として導入されうる。例えば、金属グレードのケイ素は、典型的には約1wt%〜約5wt%の金属成分を有しうる。塩の金属前駆体は、鉄、アルミニウム、及びカルシウムのいずれか一つ又は複数でありうる。金属塩の前駆体の更なる供給源は、銅を含有しているような触媒などである。他の金属不純物供給源は、トリクロロシラン合成に関与又は関連するユニット操作の湿潤成分などである。
【0030】
本発明の一部の側面は、気化された金属塩を回収して下流操作で金属塩の凝固によって生じる閉塞を削減するために、スラリー中の固形分濃度を増大するシステム及び技術に向けられる。加熱して温度を上げてクロロシラン化合物を気化し、その後気化クロロシラン化合物を凝縮するのではなく、本発明は、非凝縮性ガス(これは不活性ガスでありうる)を利用してクロロシラン成分の少なくとも一部を気化することによって、スラリーストリーム中の固形分濃度の増大を提供する。この方法は、結果的に、スラリー部分の温度を引き下げる条件を促進できる。従って、本発明は、実際、スラリー温度を下げることによって金属塩の揮発性を抑制でき、このことがひいては分離を促進し、下流のユニット操作へのそのキャリーオーバーの可能性を削減できる。従って、本発明は、下流の分離操作における固体付着の可能性を削減できるシステム及びプロセスを含みうる。
【0031】
本発明の一つ又は複数の側面は、トリクロロシランを製造するためのシステム及び技術に向けることができる。本発明の一部の側面は、選択的気化、又は水素化反応の粗生成物の成分の選択的気化を促進するユニット操作に関する。本発明の更なる側面は、水素化反応の一つ又は複数の未使用反応物を回収し、そのような一つ又は複数の回収された未使用反応物を一つ又は複数の気化ユニット操作に利用して、水素化操作の副産物である固体又は付着性成分の分離を実行することを含みうる。本発明のなお更なる側面は、トリクロロシラン合成を促進するために、エネルギーの回収、又はエネルギー回収を促進するユニット操作を含む。本発明のなお更なる側面は、凝縮、又は水素化生成物の一つ又は複数の成分の少なくとも一部の凝縮を促進するユニット操作、及び凝縮された一つ又は複数の成分の少なくとも一部を利用して水素化反応の一つ又は複数の副産物の少なくとも一部の分離を実行することを含みうる。
【0032】
本開示の一部は、一つの流れ(ストリーム)又は複数の流れに関して提供されている。しかしながら、本発明は連続的又は継続的な運転システム及び技術に限定されず、当業者によってバッチ式又は半バッチ式運転又は運転システムで実施又は実行されてもよい。従って、一つの流れ又は複数の流れへの言及は、体積(volume)、質量(mass)又はその他の不連続の構成単位に関するものであってもよい。
【0033】
本発明の一つ又は複数の側面は、トリクロロシランを製造又は合成するための方法及び技術に関する。
図1に、本発明の一つ又は複数の態様に従って、トリクロロシランなどのシランを合成するためのシステム100を例示する。システム100は、四塩化ケイ素の供給源102;水素の供給源103;四塩化ケイ素の供給源102及び水素の供給源103に流体接続されている一つのリアクター104、又は複数のリアクターを含みうる。リアクター104は、供給源102及び103の一つ又は複数に流体接続されている複数の入口を有しうる。しかしながら、一部の構成において、リアクター104は、四塩化ケイ素及び水素を含む反応混合物又は反応物ストリーム用として、供給源102及び103の両方に流体接続されている単一の入口105を有しうる。リアクター104はさらに、典型的には一つ又は複数のリアクター出口106を有する。
【0034】
システム100はさらに、クエンチカラム108のような第一のカラムを含みうる。これは、図示されているように、リアクター104の出口106に流体接続された、第一の粗生成物入口又は粗蒸気入口となりうる第一の入口109を有しうる。カラム108はさらに、粗蒸気生成物出口110となりうる第一の出口を含む。
【0035】
システムはさらに、第一の入口、第一の出口、第二の入口、及び第二の出口を有する一つ又は複数の熱交換器を含みうる。第一の入口は、水素の供給源及び四塩化ケイ素の供給源の少なくとも一つに流体接続され得、第一の出口はリアクターの上流に流体接続されうる。一部の構成においては、熱交換器は、第二の流体側と熱連絡している第一の流体側を有しうる。第一の流体側は、水素の供給源及び四塩化ケイ素の供給源の少なくとも一つをリアクターに流体接続しており、第二の流体側は、熱媒体源に流体接続されている。例えば、
図1に示されているように、システム100は、供給源102及び103のいずれか一つ又は複数からの反応混合物の少なくとも一部をリアクター104への導入前に加熱するために配置された一つ又は複数のヒーター112を有しうる。システムの他の構成も、リアクター104に導入される四塩化ケイ素及び水素の反応混合物の温度を上げるためにヒーター又は熱交換ユニット操作の利用を考えている。例えば、熱交換器111は、水素の供給源及び四塩化ケイ素の供給源をリアクター104の入口に流体接続する第一の入口及び第一の出口を有しうる。熱交換器111は、リアクター104の出口106をカラム108の入口109に流体接続する第二の入口及び第二の出口も有しうる。
【0036】
ケイ素の供給源107は、例えば、リアクター104に金属グレードのケイ素金属を供給するために利用できる。
システム100はさらに、カラム108に流体接続されている冷却ユニット操作又は凝縮器113を含みうる。典型的には、凝縮器113は、カラム108から第二の粗生成物を受け取るために、出口110の下流に流体接続されている凝縮器入口114を有する。冷却システムCWからの冷却水を凝縮器113で利用し、カラム108を出た第二の粗生成物ストリームから熱交換を実行して、その成分を少なくとも部分的に凝縮し、粗凝縮物にすることができる。凝縮を促進するために他の構成を利用することもできる。例えば、凝縮器113は、冷媒として周囲空気を利用する空気交換器であってもよい。凝縮器113は典型的にはさらに、凝縮器113からカラム108への回収粗凝縮物の送りを促進するために、カラム108の第二の入口116のようなオーバーヘッド凝縮物入口に流体接続された凝縮物出口115を有する。
【0037】
凝縮器113はさらに、典型的には凝縮器で凝縮されなかった成分を含む第二の粗生成物の部分の回収又は流出を促進するための第二の出口又は凝縮器出口117を有しうる。
カラム108はさらに、カラム108からの第一の残渣の回収又は流出を促進するための残渣出口118を含む。ポンプ119は、第一の残渣の移動と、第一の残渣の一部をカラム108にその残渣リサイクル入口120を通じて送る又は戻すのを促進するために利用できる。
【0038】
他の構成では、リアクター104からの第一の粗生成物の抜取りとカラム108への導入を促進するために、ベンチュリ管を利用することができる。例えば、ポンプ119の出口はベンチュリ管の先細入口部の上流に流体接続できる。ベンチュリ管の出口は、カラム108の入口120の上流に接続されうるが、スロート(throat)部に近いベンチュリ管の第二の入口は、リアクター104の粗生成物出口106の下流に、典型的には熱交換器111を通って流体接続されうる。
【0039】
本発明の一部の側面による好適な構成において、システム100はさらに、第二のカラム又はストリッパーカラム121を含む。これは、カラム108からの第一の残渣ストリームの少なくとも一部の送り又は導入を促進するために、ポンプ119の出口に流体接続されたオーバーヘッド液体入口123を有している。従って、一部の場合には、オーバーヘッド液体入口123は、クエンチカラム108の残渣出口118の下流に流体接続されている。
【0040】
システム100は、接触ガスの一つ又は複数の供給源125A及び125Bも含みうる。供給源125A及び125Bのいずれか又は両方が利用される場合、それぞれは、接触ガスをカラム121に、少なくとも一つの入口、例えばその接触入口127を通じて供給するために流体接続されている。典型的には、カラム121は、蒸気生成物回収用の少なくとも一つのオーバーヘッド蒸気出口129を有する。この蒸気生成物は、好ましくは、クエンチカラムの第二の蒸気入口131を通ってカラム108に導入又は移送される。従って、クエンチカラムの第二の蒸気入口は、ストリッパーカラムのオーバーヘッド蒸気出口に流体接続されうる。
【0041】
用語“非凝縮性ガス”とは、塩化水素処理及び固体副産物分離に向けられた条件下において、各種の主要ユニット操作中に気体状態のままである任意のガスのことを言う。例えば、非凝縮性ガスは、ユニット104、108、121、及び113のいずれにおいても凝縮しない任意のガスでありうる。接触ガスは、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、及びジクロロシランのいずれかの気化を少なくとも部分的に実行できる水素、不活性ガス、又はその両方を含みうる。
【0042】
カラム121は、ストリッパーカラムからの固体豊富ストリーム回収用の底部出口又は固体豊富残渣出口122も有しうる。固体豊富ストリームは、固体塩を廃棄物として処分する前に、クロロシランなどの有用成分を取り戻す最終回収システム124に送達されうる。
【0043】
本発明の一つ又は複数の態様の少なくとも一つの変形に従って、システム100はさらに、第二の粗生成物の成分の精製又は分離を実行する一つ又は複数の分離装置列150を含む。例えば、システム100は、カラム108からの第二の粗生成物の成分としてトリクロロシラン、ジクロロシラン、四塩化ケイ素を分離する複数のユニット操作を含む一つ又は複数の装置列を含みうる。従って、粗生成物分離装置列及び水素回収システムは、第一の装置列入口153を通じて凝縮器出口117の下流に流体接続されうる。場合によっては、凝縮器113からの粗凝縮物の一部も、粗凝縮物中のトリクロロシラン、ジクロロシラン、四塩化ケイ素成分のいずれかを回収するために、第二の装置列入口155を通じて装置列150に向かわせることができる。従って、第二の装置列入口155は、凝縮器の凝縮物出口115の下流に流体接続されうる。
【0044】
水素回収システムは、典型的には、カラム108の第二の粗生成物から、そして場合によっては凝縮器113の粗凝縮物から、シランタイプの化合物(例えばトリクロロシラン及びジクロロシランであるが、これらに限定されない)並びに四塩化ケイ素のそれぞれの少なくとも一部を凝縮することによって、水素ガスを分離する。水素ガスの分離又は回収を実行する他の技術も利用することができる。
【0045】
本発明の一部の態様において,システム100は、水素回収システムから回収された水素の少なくとも一部を利用する構成を含むことができる。例えば、回収水素は、四塩化ケイ素水素化反応の反応物として利用できる。回収水素は、リアクター104に、別のストリームとして、又は四塩化ケイ素と共に導入できる。他の構成では、回収水素は、例えば、水素回収システムの回収水素出口157からのものでありうる。水素回収システムは、装置列150のサブシステムとして例示されているが、必ずしもそうでなくてもよい。接触ガスは、少なくとも部分的には、リアクターからの回収水素を含みうる。
【0046】
図2は、装置列150で利用できるユニット操作を例示している。例えば、装置列150は、凝縮器113からの粗凝縮物を受け取るように配置されたタンクを含みうる。装置列150はさらに、タンク202の出口に流体接続され、混合液(mixed liquor)を受け取る分離カラム210を含みうる。タンク202からの混合液は、四塩化ケイ素、トリクロロシラン、及び上流のユニット操作の運転条件によってはジクロロシランを含みうる。カラム210は、混合液からトリクロロシランを少なくとも部分的に分離して、トリクロロシランを含む生成物ストリームを、典型的にはカラム210のオーバーヘッドストリームとして製造するために運転されうる。このストリームは貯蔵庫に送られうる。しかしながら、他の場合では、生成物ストリームを一つ又は複数の操作で(図示せず)さらに精製して、ジクロロシランのような不純物を除去し、トリクロロシランを回収することもできる。
【0047】
カラム210からの副産物ストリームは、それから四塩化ケイ素の分離を促進するためにカラム220に導入できる。典型的には、カラム220からのオーバーヘッドストリームは回収された四塩化ケイ素を含む。これは、リアクター104に送られる反応混合物の成分として、例えばヒーター112を通って導入されうる。
【0048】
上述の通り、装置列150は水素回収サブシステムを含みうる。このサブシステムは、水素以外の第二の粗生成物の実質的にすべての成分を凝縮するユニット操作を含みうる。例えば、水素回収は、カラム108及び凝縮器113からの第二の粗生成物を、一つ又は複数の冷却器(chiller)160及び165で冷却することによって実行できる。第二の粗生成物の凝縮性成分の凝縮を実行する冷媒は、冷却器(cooler)CHSによって供給されうる。冷却器160及び165からの回収ストリーム(典型的には四塩化ケイ素及びトリクロロシランを含む)は、蓄積タンク202に直接導入されるか、又はタンク170に回収されうる。次に、冷却器160及び165からの回収水素は、前述のように、カラム121に導入される接触ガスを構成するため、リアクター104に導入される反応混合物を構成するため、又はその両方のために利用されうる。
【0049】
本発明の一つ又は複数の側面はトリクロロシランの合成法に向けられうる。該方法は、本明細書中で一つ又は複数の態様に示したように、反応混合物をリアクター104に導入することを含みうる。反応混合物は、典型的には四塩化ケイ素と水素を含む。方法はさらに、リアクター104から第一の粗生成物を回収し、第一の粗生成物から金属塩の少なくとも一部を分離して第二の粗生成物と第一の残渣を製造し、そして第一の残渣の少なくとも一部を接触ガスと接触させて固体豊富残渣と蒸気生成物を製造することを含みうる。トリクロロシラン合成法に関する本発明の一つ又は複数の態様は、ユニット104のような流動床リアクター中で四塩化ケイ素を水素化して第一の粗生成物ストリーム中にトリクロロシランを製造し;ユニット108のような第一の分離カラムで第一の粗生成物ストリームからケイ素の少なくとも一部及び少なくとも一つの金属塩を分離して第一の残渣ストリームと第二の粗生成物ストリームを製造し;そして第一の残渣ストリームの少なくとも一部からトリクロロシランの少なくとも一部と四塩化ケイ素の少なくとも一部を、ユニット121のような第二のカラムで接触ストリームを用いて気化させて蒸気生成物ストリームと固体豊富スラリーストリームを製造することを含みうる。ここで、固体豊富スラリーストリームは少なくとも一つの金属塩及びはケイ素を含み、蒸気生成物ストリームは気化トリクロロシラン及び気化四塩化ケイ素を含む。
【0050】
第一の粗生成物は典型的には、少なくとも、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、水素、ケイ素、及び金属塩を含む。第二の粗生成物は典型的には、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、及び水素を含み;第一の残渣は典型的には、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、ケイ素、及び金属塩を含む。蒸気生成物は典型的には、トリクロロシラン及び四塩化ケイ素を含み;固体豊富残渣は典型的には、ケイ素及び金属塩を含む。接触ガスは、回収水素などの水素を含みうる。
【0051】
本発明の一つ又は複数の態様の少なくとも一つの変形に従って、方法はさらに、第二の粗生成物の少なくとも一部を凝縮して粗凝縮物を製造し、そして好ましくは粗凝縮物の少なくとも一部を第一の粗生成物と接触させることを含みうる。
【0052】
少なくとも一つの更なる変形に従って、方法はさらに、粗凝縮物の少なくとも一部を蒸気生成物の少なくとも一部と接触させることを含みうる。少なくとも一つのなお更なる変形に従って、方法はさらに、第一の残渣の少なくとも一部を第一の粗生成物と接触させることを含みうる。
【0053】
少なくとも一つのなお更なる変形に従って、方法はさらに、トリクロロシランの少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から分離し、四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から回収し、水素の少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から回収し、そして回収水素の少なくとも一部をリアクターに導入することを含みうる。
【0054】
本発明の方法の好適な態様は、接触ガスを少なくとも部分的に構成するものとして回収水素を利用することを含みうる。場合によっては、反応混合物は回収水素を少なくとも部分的に含み、好ましくは回収四塩化ケイ素も含む。従って、方法はさらに、第二の粗生成物から四塩化ケイ素の少なくとも一部を分離して、回収四塩化ケイ素と、トリクロロシラン及びジクロロシランを含む第三の粗生成物とを製造し、回収四塩化ケイ素の少なくとも一部をリアクター104に導入することを含みうる。
【0055】
第一の粗生成物から金属塩化物塩の少なくとも一部を分離することに関する本発明の一つ又は複数の特別の態様は、第一の粗生成物をクエンチカラム108に導入し、クエンチカラム108から第二の粗生成物を回収し、そしてクエンチカラム108から第一の残渣を回収することを含む。第一の残渣の少なくとも一部と接触ガスとの接触は、接触ガスをストリッパーカラム121に導入し、第一の残渣の少なくとも一部をストリッパーカラム121に導入し、ストリッパーカラム121から蒸気生成物を回収し、そしてストリッパーカラム121から固体豊富残渣を回収することを含みうる。第一の粗生成物からの金属塩の少なくとも一部の分離は、第一の粗生成物の少なくとも一部をストリッパーカラム121からの蒸気生成物の少なくとも一部と接触させることを含みうる。
【0056】
本発明の一つ又は複数のなお更なる態様において、方法はさらに、生成物中の回収四塩化ケイ素の濃度を増大して濃縮STC生成物を製造し、そしてその濃縮STC生成物をリアクター104に導入することを含みうる。本発明の一つ又は複数のなお更なる態様において、方法はさらに、第二の粗生成物中の水素の少なくとも一部を回収し、そして回収水素の少なくとも一部を濃縮STC生成物と共にリアクター104に導入することを含みうる。
【0057】
本発明の一つ又は複数のなお更なる態様において、方法はさらに、第三の粗生成物からトリクロロシランを分離してトリクロロシラン豊富生成物を製造することを含みうる。
方法はさらに、リアクター104に導入される反応混合物の少なくとも一部を、リアクター104からの第一の粗生成物で加熱することを含みうる。
【0058】
接触ストリームを用いて第一の残渣ストリームの少なくとも一部からトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部を気化させることは、例えば、第一の残渣ストリームの少なくとも一部を、水素及び非凝縮性ガスの少なくとも一つを含みうる接触ストリームと接触させることを含みうる。さらに、第一の粗生成物ストリームからのケイ素の少なくとも一部及び少なくとも一つの金属塩の分離は、トリクロロシラン合成法のさらに他の変形又は態様では、第一の粗生成物ストリームの少なくとも一部を第一の残渣ストリームと接触させることを含みうる。
【0059】
トリクロロシランの合成法はさらに、第二の粗生成物ストリームの少なくとも一部を凝縮して粗凝縮物ストリームを製造し、そして第一の粗生成物ストリームを粗凝縮物ストリームと接触させることを含みうる。
【0060】
トリクロロシラン合成法の上記変形のいずれかと組み合わせて、又はその代わりに、方法はさらに、第二の粗生成物ストリームから水素の少なくとも一部を回収することを含みうる。第一の残渣ストリームの少なくとも一部からトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部を気化させることは、回収水素の少なくとも一部を用いて四塩化ケイ素、トリクロロシラン、及びジクロロシランのいずれかを気化させることを含みうる。
【0061】
なお更なる側面は、シラン又はトリクロロシランを合成する既存システムを変更する方法に関しうる。変更法は、既存の合成システムに一つ又は複数のユニット操作を組み込む又は据え付けることを含みうる。既存のユニット操作に応じて、方法は、合成システムのリアクターの反応生成物の一つ又は複数の成分の気化を促進する一つ又は複数のユニット操作を提供することを含みうる。例えば、既存のシステムが、シラン前駆体化合物を含有する生成物ストリームの合成を促進する少なくとも一つのリアクターを含む場合、既存システムの変更法は、一つ又は複数のクエンチカラムを、生成物ストリームを提供するリアクターの出口に流体接続することを含みうる。方法は、場合によってはさらに、リアクターの下流に一つ又は複数の接触ストリッパーカラムを流体接続することを含みうる。
【0062】
接触ガスは、トリクロロシラン、ジクロロシラン、及び四塩化ケイ素の少なくとも一つの気化を促進し、好ましくは接触又は気化条件でそれらと反応しない任意のガスを含みうる。例えば、接触ガスは、窒素、アルゴン、及びヘリウムのいずれかを含みうる。一つ又は複数の非凝縮性ガスが利用される場合、本発明の好適な側面は、システムから非凝縮性ガスの少なくとも一部を分離又は回収することを含みうる。ガスの回収は、例えば、冷却によりガス含有ストリームの温度を下げて凝縮性部分を液化し、それによって非凝縮性ガス部分をそこから回収することによって実行できる。
【0063】
リアクター104は、典型的には、例えば水素化によって四塩化ケイ素のトリクロロシランへの変換を促進する条件で運転される。リアクター104は、金属グレードのケイ素をその中に有するリアクターを含みうる。好適な構成において、リアクター104は、流動床リアクターであり得、流動床は金属グレードのケイ素を含む。反応は、流動床で約300℃〜約600℃の範囲の温度、及び約100psig〜約600psigの範囲、典型的には約325psigの圧力で、反応:
3SiCl
4 + 2H
2 + Si → 4HSiCl
3
に従って実施できる。
【0064】
リアクター104に導入される反応混合物は、化学量論比の四塩化ケイ素と水素を有しうるが、モル比は約1:1でもよい。
反応混合物は、熱力学的に反応に有利な条件下でリアクターに導入できる。例えば、約325psigの圧力の反応混合物は、ヒーター111及び112で約500℃に加熱されうる。
【0065】
クエンチカラム108は、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、ジクロロシラン、及び水素を含む第一の粗生成物のような供給ストリームの大量分離を促進する分留塔又は蒸留塔でありうる。典型的には、カラム108での分離は、第二の粗生成物ストリームでありうる留出物画分と、第一の残渣ストリームでありうるボトム画分とを生み出す。しかしながら、一部の構成では、カラムから多種類の生成物を取り出せるように、カラム沿いに間隔をあけて複数の出口を有する分留塔を利用することもできる。ストリッパーカラム121も、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、及びジクロロシランのいずれかの少なくとも一部を気化することによって第一の残渣ストリームの分別を実行する分留塔でありうる。
【0066】
運転時、カラム108は、典型的には第一の粗生成物ストリーム由来の上昇流の蒸気に逆流し、かつ接触する、粗凝縮物及び第一の残渣ストリームでありうる下降流の液体通行(liquid traffic)と、ストリッパーカラム121からのオーバーヘッド蒸気生成物ストリームとを有しうる。
【0067】
接触構造をカラムの中に利用することができる。例えば、バブルキャップトレイ又はプレートを使用して、カラム中の上昇する蒸気通行と下降する液体通行間の接触を促進することができる。特にカラムの圧力降下を小さくしたい場合、トレイの代わりに充填材料を使用することもできる。材料は、ランダムに投入されたラッシヒリング(Raschig ring)の充填物又は構造化シート金属のいずれかでありうる。
【0068】
分留塔及びその他の補助ユニットの設計及び運転は、供給材料の組成及び所望生成物の組成に依存する。多成分供給材料の場合、カラムの設計及び運転のためにシミュレーションモデルを使用することができる。例えば、カラム108は、約90℃〜約180℃の範囲、典型的には約135℃の温度、及び約100psig〜約600psigの範囲、典型的には約325psigの圧力で運転されうる。カラム121は、約35℃〜約180℃の範囲、例えば約115℃の温度、及び約100psig〜約600psigの範囲の圧力で運転されうる。
【0069】
凝縮器113は、カラム108からの粗蒸気の成分の少なくとも一部を凝縮して約80℃〜約40℃の範囲の温度にするために運転されうる。
本発明は、システムのあらゆるユニット操作の一つ又は複数のパラメーター操作をモニター及び調整するために一つ又は複数の制御システム(図示せず)の利用を含んでいてもよい。例えば、制御システムを利用して、システム100のいずれかのユニット操作の運転条件、例えばリアクター104の温度及び圧力、及びリアクター104中の反応混合物の流速を、それぞれの標的値にモニター及び調整することができる。場合によっては、同じ又は異なる制御システムが、カラム108及び121のいずれかにおける運転条件をモニター及び調整するために利用できる。例えば、接触ガスストリームの流速を、一つ又は複数の予定値、標的値、又はセットポイント値が提供されるように、又はストリッパーカラム、さらにはクエンチカラムの他の運転条件に依存するように、モニター及び制御することができる。モニター又は制御される他のパラメーターは、カラム108及び121、凝縮器113、ポンプ119、及びヒーター112に出入りするいずれかのストリームの温度、圧力、及び流速でありうる。さらに、システム100中のいずれかのストリームの組成も、制御ずみ又は制御中のパラメーターでありうる。
【0070】
制御装置は、一つ又は複数のコンピューターシステム(図示せず)を使用して実行できる。例えば汎用コンピューター又は特殊コンピューターシステムなどでありうる。本発明のシステム又はサブシステムの一つ又は複数のプロセスを実行するのに利用又は実施できる制御システムの非制限的例は、Emerson Electric Co.社のDELTA V デジタルオートメーションシステムなどの分散制御システム、及びウィスコンシン州ミルウォーキーのAllen−Bradley又はRockwell Automation社から入手できるようなプログラマブル論理制御装置などである。
【0071】
本発明のこれら及びその他の態様の機能及び利点は、以下の実施例からさらに理解することができる。下記実施例は、本発明の一つ又は複数のシステム及び技術の利益及び/又は有利性を示しているが、本発明の全範囲を例示しているのではない。
【実施例】
【0072】
実施例1
本実施例は、本発明の一つ又は複数の態様による模擬システムを記載する。この模擬システムは、実質的に
図1及び2として表され、上記の通りである。ストリッパーカラム121で気化を促進するために利用された接触ガスは水素であった。
【0073】
表1は、リアクター104を出入りする一部のストリームの組成(近似重量パーセント)及び運転パラメーターを示す。
表2は、クエンチカラム108及び凝縮器113を出入りする一部のストリームの組成(近似重量パーセント)及び運転パラメーターを示す。
【0074】
表3は、ストリッパーカラム121を出入りする一部のストリームの組成(近似重量パーセント)及び運転パラメーターを示す。
不純物は、典型的には、シラン類、例えば、これらに限定されないが、シラン、ジシラン、モノクロロシラン、ヘキサクロロシラン及びメチルジクロロシラン;塩化物類、例えば、これらに限定されないが、五塩化リン(phosphoric chloride)、三塩化ホウ素、及び三塩化リン(phosphorus trichloride);ジボラン;メタン;ホスフィン;及び水などである。
【0075】
金属は、典型的には、鉄、カルシウム、及びアルミニウムなどであり;金属塩は、典型的には、塩化鉄、塩化カルシウム、及び塩化アルミニウムなどである。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
本発明の一部の例示的態様を記載してきたが、当業者には、前述の記載は単に例示であって制限ではなく、ほんの一例として示されているだけであることは明白なはずである。多数の変形及びその他の態様が当業者の範囲内であり、本発明の範囲に含まれると考えられる。特に、本明細書中に示された実施例の多くは、方法の行為又はシステムの構成要素の特定の組合せを含んでいるが、当然のことながら、そのような行為及びそのような構成要素は、同じ目的を達成するために他の方法で組み合わせることもできる。
【0080】
当業者であれば、本明細書中に記載されたパラメーター及び構成は例示であり、実際のパラメーター及び/又は構成は、本発明のシステム及び技術が使用される特定の用途に依存することは分かるはずである。また、当業者は、日常の実験程度のことを用いて本発明の特定の態様の等価物を認識するか又は確認できるはずである。従って、当然のことながら、本明細書中に記載された態様はほんの一例として示されているだけであって、添付の特許請求の範囲及びその等価物の範囲内で、本発明は具体的に記載された以外の方法で実施することもできる。
【0081】
さらに、本発明は、本明細書中に記載された各特徴、システム、サブシステム、又は技術に向けられており、本明細書中に記載された二つ以上の特徴、システム、サブシステム、又は技術の任意の組合せも、そのような特徴、システム、サブシステム、及び技術が相互に矛盾していなければ、特許請求の範囲で具体化された本発明の範囲内であるとみなされることも理解されるべきである。さらに、一態様との関連でのみ議論された行為、構成要素、及び特徴は、他の態様において同様の役割から除外されないものとする。
【0082】
本明細書では、“複数”という用語は、二つ以上の事項又は要素(成分、部品)のことを言う。“含む(comprising)”、“含む(including)”、“持つ(carrying)”、“有する(having)”、“含有する(containing)”、及び“含む(involving)”という用語は、明細書中であれ特許請求の範囲などにおいてであれ、オープンエンドな用語(open-ended term)である、すなわち“含むが、限定されない”ことを意味する。従って、そのような用語の使用は、その後に列挙される事項、及びその等価物のほか、追加的事項も包含することを意味する。“からなる(consisting of)”及び“本質的に〜からなる(consisting essentially of)”という移行句のみが、特許請求の範囲に関してそれぞれ閉鎖的(closed)又は半閉鎖的(semi-closed)移行句である。特許請求の範囲においてクレームの要素を修飾するための“第一”、“第二”、“第三”などの序数用語の使用は、それ自体、一つのクレームの要素が別のに優る何らかの優先、先行、又は順序や、方法の行為が実施される時間的順序を暗示しているのではなく、そういった用語は、単に、クレームの要素を区別するための序数用語の使用を別にすれば、ある名称を有する一つのクレームの要素を、同じ名称を有する別の要素と区別するための標識として使用されているに過ぎない。
本願出願時の特許請求の範囲の記載を以下に転記する。
(1)トリクロロシランの製造法であって、
反応混合物をリアクターに導入し(反応混合物は四塩化ケイ素及び水素を含む);
リアクターから第一の粗生成物を回収し(第一の粗生成物は、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、水素、ケイ素、及び金属塩を含む);
第一の粗生成物からケイ素の少なくとも一部及び金属塩を分離して第二の粗生成物と第一の残渣を製造し(第二の粗生成物は、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、及び水素を含み、第一の残渣は、トリクロロシラン、四塩化ケイ素、ケイ素、及び金属塩を含む);そして
第一の残渣の少なくとも一部を接触ガスと接触させて固体豊富残渣と蒸気生成物を製造する(蒸気生成物は、トリクロロシラン及び四塩化ケイ素を含み、固体豊富残渣はケイ素及び金属塩を含む)
ことを含む方法。
(2)接触ガスが水素を含む、上記(1)に記載の方法。
(3)第二の粗生成物の少なくとも一部を凝縮して粗凝縮物を製造し;そして
粗凝縮物の少なくとも一部を第一の粗生成物と接触させる
ことをさらに含む、上記(2)に記載の方法。
(4)粗凝縮物の少なくとも一部を蒸気生成物の少なくとも一部と接触させることをさらに含む、上記(3)に記載の方法。
(5)第一の残渣の少なくとも一部を第一の粗生成物と接触させることをさらに含む、上記(4)に記載の方法。
(6)トリクロロシランの少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から分離し;
四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から回収し;
水素の少なくとも一部を第二の粗生成物の少なくとも一部から回収し;そして
回収された水素の少なくとも一部をリアクターに導入する
ことをさらに含む、上記(5)に記載の方法。
(7)接触ガスが、回収された水素を少なくとも部分的に含む、上記(6)に記載の方法。
(8)反応混合物が、回収された水素及び回収された四塩化ケイ素を少なくとも部分的に含む、上記(6)に記載の方法。
(9)第一の粗生成物からのケイ素の少なくとも一部及び金属塩化物塩の分離が、
第一の粗生成物をクエンチカラムに導入し;
第二の粗生成物をクエンチカラムから回収し;そして
第一の残渣をクエンチカラムから回収する
ことを含む、上記(4)に記載の方法。
(10)第一の残渣の少なくとも一部と接触ガスとの接触が、
接触ガスをストリッパーカラムに導入し;
第一の残渣の少なくとも一部をストリッパーカラムに導入し;
蒸気生成物をストリッパーカラムから回収し;そして
固体豊富残渣をストリッパーカラムから回収する
ことを含む、上記(9)に記載の方法。
(11)第一の粗生成物からのケイ素の少なくとも一部及び金属塩の分離が、第一の粗生成物の少なくとも一部をストリッパーカラムからの蒸気生成物の少なくとも一部と接触させること
を含む、上記(10)に記載の方法。
(12)四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物から分離して、回収四塩化ケイ素と、トリクロロシラン及びジクロロシランを含む第三の粗生成物とを製造し;そして
回収四塩化ケイ素の少なくとも一部をリアクターに導入する
ことをさらに含む、上記(11)に記載の方法。
(13)回収四塩化ケイ素の濃度を増大して濃縮STC生成物を製造し;そして
濃縮STC生成物をリアクターに導入する
ことをさらに含む、上記(12)に記載の方法。
(14)第二の粗生成物中の水素の少なくとも一部を回収し;そして
回収水素の少なくとも一部を濃縮STC生成物と共にリアクターに導入する
ことをさらに含む、上記(13)に記載の方法。
(15)トリクロロシランを第三の粗生成物から分離してトリクロロシラン豊富生成物を製造することをさらに含む、上記(14)に記載の方法。
(16)リアクターに導入される反応混合物の少なくとも一部を、リアクターからの第一の粗生成物の少なくとも一部で加熱することをさらに含む、上記(15)に記載の方法。
(17)金属種を有する金属グレードのケイ素をリアクターに導入することをさらに含む、上記(1)に記載の方法。
(18)トリクロロシランの合成システムであって、
四塩化ケイ素の供給源;
水素の供給源;
四塩化ケイ素の供給源及び水素の供給源に流体接続されているリアクター(リアクターはリアクター出口を有する);
粗蒸気入口、第二の蒸気入口、粗蒸気生成物出口、及び残渣出口を有するクエンチカラム(粗蒸気入口はリアクター出口の下流に流体接続されている);そして、
オーバーヘッド液体入口、接触ガス入口、及びオーバーヘッド蒸気出口を有するストリッパーカラム(オーバーヘッド液体入口はクエンチカラムの残渣出口の下流に流体接続されており、オーバーヘッド蒸気出口はクエンチカラムの第二の蒸気入口に流体接続されている)
を含むシステム。
(19)凝縮器入口、凝縮物出口、及び凝縮器出口を有する凝縮器(凝縮器入口は粗蒸気生成物出口の下流に流体接続されており、凝縮器出口は、トリクロロシラン、ジクロロシラン、四塩化ケイ素分離装置列の上流に流体接続されており、凝縮物出口はクエンチカラムのオーバーヘッド凝縮物入口の上流に流体接続されている)をさらに含む、上記(18)に記載のシステム。
(20)ポンプ入口及びポンプ出口を有する残渣ポンプ(ポンプ入口はクエンチカラムの残渣出口の下流に流体接続されており、ポンプ出口はストリッパーカラムのオーバーヘッド液体入口の上流、及びクエンチカラムの残渣リサイクル入口の上流に流体接続されている)をさらに含む、上記(19)に記載のシステム。
(21)回収水素出口を有する水素回収システムをさらに含み、前記水素回収システムは凝縮器出口の下流に流体接続されている、上記(20)に記載のシステム。
(22)ストリッパーカラムの接触ガス入口が、回収水素出口の下流に流体接続されている、上記(21)に記載のシステム。
(23)ストリッパーカラムの接触ガス入口の上流に流体接続されている接触ガスストリームの供給源(接触ガスストリームは水素を含む)をさらに含む、上記(18)に記載のシステム。
(24)第一の流体側と、第一の流体側と熱連絡している第二の流体側とを有する熱交換器(第一の流体側は水素の供給源及び四塩化ケイ素の供給源の少なくとも一つをリアクターに流体接続しており、第二の流体側は、リアクター出口をクエンチカラムの粗蒸気入口に流体接続している)をさらに含む、上記(18)に記載のシステム。
(25)トリクロロシランの合成法であって、
流動床リアクター中で四塩化ケイ素を水素化して第一の粗生成物ストリーム中にトリクロロシランを製造し(第一の粗生成物ストリームはさらに、四塩化ケイ素、水素、ケイ素、及び少なくとも一つの金属塩を含む);
第一の分離カラムで第一の粗生成物ストリームからケイ素の少なくとも一部及び少なくとも一つの金属塩を分離して第一の残渣ストリームと第二の粗生成物ストリームを製造し(第一の残渣ストリームはさらにトリクロロシラン及び四塩化ケイ素を含む);そして
第一の残渣ストリームの少なくとも一部からトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二のカラムで接触ストリームを用いて気化させて蒸気生成物ストリーム及び固体豊富スラリーストリームを製造する(固体豊富スラリーストリームは少なくとも一つの金属塩及びケイ素を含み、蒸気生成物ストリームは気化トリクロロシラン及び気化四塩化ケイ素を含む)
ことを含む方法。
(26)接触ストリームを用いた、第一の残渣ストリームの少なくとも一部からのトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部の気化が、第一の残渣ストリームの少なくとも一部を、水素を含む接触ストリームと接触させることを含む、上記(25)に記載の方法。
(27)第一の粗生成物ストリームからのケイ素の少なくとも一部及び少なくとも一つの金属塩の分離が、第一の粗生成物ストリームを第一の残渣ストリームの少なくとも一部と接触させることを含む、上記(26)に記載の方法。
(28)第二の粗生成物ストリームの少なくとも一部を凝縮して粗凝縮物ストリームを製造し;そして、
第一の粗生成物ストリームを粗凝縮物ストリームと接触させる
ことをさらに含む、上記(27)に記載の方法。
(29)水素の少なくとも一部を第二の粗生成物ストリームから回収することをさらに含み、第一の残渣ストリームの少なくとも一部からのトリクロロシランの少なくとも一部及び四塩化ケイ素の少なくとも一部の気化は、回収水素の少なくとも一部を用いて気化させることを含む、上記(28)に記載の方法。
(30)四塩化ケイ素の水素化が、四塩化ケイ素を回収水素の少なくとも一部を用いて水素化することを含む、上記(29)に記載の方法。
(31)四塩化ケイ素の少なくとも一部を第二の粗生成物ストリームから回収することをさらに含み、四塩化ケイ素の水素化は、回収された四塩化ケイ素の少なくとも一部を回収水素の少なくとも一部を用いて水素化することを含む、上記(30)に記載の方法。
(32)四塩化ケイ素の水素化の前に、四塩化ケイ素と水素の反応混合物を第一の粗生成物ストリームで加熱することをさらに含む、上記(25)に記載の方法。
(33)トリクロロシランの製造法であって、
四塩化ケイ素と水素を含む反応混合物を供給し;
反応混合物を、四塩化ケイ素の少なくとも一部を水素化してトリクロロシランにする反応条件を有するリアクターに導入し;
四塩化ケイ素、水素、トリクロロシラン、及び金属塩を含む粗生成物を回収し;
反応混合物の少なくとも一部を粗生成物の少なくとも一部で加熱し;そして
トリクロロシランを粗生成物の少なくとも一部から分離してトリクロロシラン生成物を製造する
ことを含む方法。
(34)粗生成物を残渣と粗蒸気生成物に分離し;
水素を粗蒸気生成物の少なくとも一部から回収し;
残渣の少なくとも一部を回収水素の少なくとも一部と接触させて蒸気生成物と金属塩を含む固体豊富残渣とを製造し;そして
粗生成物を蒸気生成物と接触させる
ことをさらに含む、上記(33)に記載の方法。
【符号の説明】
【0083】
100 システム
102 四塩化ケイ素供給源
103 水素供給源
104 リアクター
105 入口
106 出口
107 ケイ素供給源
108 クエンチカラム
109 第一の入口(粗生成物入口又は粗蒸気入口)
110 第一の出口(粗蒸気生成物出口)
111 熱交換器
112 ヒーター
113 凝縮器
114 凝縮器入口
115 凝縮物出口
116 第二の入口(オーバーヘッド凝縮物入口)
117 凝縮器出口
118 残渣出口
119 ポンプ
120 残渣リサイクル入口
121 ストリッパーカラム
122 固体豊富残渣出口
123 オーバーヘッド液体入口
124 最終回収システム
125A 接触ガス供給源
125B 接触ガス供給源
127 接触ガス入口
129 オーバーヘッド蒸気出口
131 第二の蒸気入口
150 分離装置列
153 第一の装置列入口
155 第二の装置列入口
157 回収水素出口
160 冷却器
165 冷却器
170 タンク
202 タンク
210 分離カラム
212
220 カラム
CW 冷却システム
CHS 冷却器