(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のシステムおよび方法は、予測された位相値に基づいて組織に適用されている実際の電力および/または組織部位における実際のインピーダンスを正確に決定する。位相値を予測する開示された方法は単純であり、少ない計算の複雑さを必要とし、普通に入手可能であるマイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、またはデジタル信号プロセッサ(DSP)を使用して実行され得る。
【0008】
一局面において、本開示は、電気外科用デバイスにおいて損失を補償する方法を特徴とする。この方法に従って、電気外科用デバイスによって発生させられ、組織部位に適用される電気外科信号の電圧および電流は、感知された電圧および感知された電流を取得するために感知される。次に、位相値は、予測された位相値を取得するために、感知された電圧および感知された電流に基づいて予測される。そして、組織部位における少なくとも1つのメトリックは、感知された電圧と、感知された電流と、予測された位相値と、電気外科用デバイスに関連する少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータとに基づいて計算される。
【0009】
組織における少なくとも1つのメトリックは、(1)予測された位相値に基づいて、感知された電圧を複素電圧値に変換することと、(2)予測された位相値に基づいて、感知された電流を複素電流値に変換することと、(3)複素電圧値と、複素電流値と、少なくとも1つの損失モデルパラメータとに基づいて組織における少なくとも1つのメトリックを計算することとによって計算され得る。少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータは、ソースインピーダンスパラメータおよび漏れインピーダンスパラメータを含み得る。
【0010】
位相値は、感知された電圧および感知された電流に基づいて、感知されたインピーダンス値を計算することと、感知されたインピーダンス値に基づいて位相値を予測することとによって予測され得る。位相値は、感知されたインピーダンス値の多項式関数(例えば、三次多項式関数)に基づいて予測され得る。
【0011】
組織部位における少なくとも1つのメトリックは、負荷電流であり、(1)感知された電流にソースインピーダンスパラメータを掛け、ソースインピーダンス電圧値を取得することと、(2)感知された電圧からソースインピーダンス電圧値を差し引き、負荷電圧値を取得することと、(3)負荷電圧値を漏れインピーダンスパラメータで割り、漏れ電流値を取得することと、(4)感知された電流から漏れ電流値を差し引き、負荷電流値を取得することとによって計算され得る。少なくとも1つのメトリックは、負荷電流、負荷電圧、電力、負荷インピーダンス、またはそれらのメトリックの任意の組み合わせを含み得る。
【0012】
別の局面において、本開示は、電気外科用デバイスを特徴とする。電気外科用デバイスは、電気外科用エネルギーを組織に適用する少なくとも1つの電極と、送信ラインを介して少なくとも1つの電極に電気的に接続された電気外科用エネルギー出力ステージとを含む。電気外科用エネルギー出力ステージは、電気外科用エネルギーを発生させる。電気外科用デバイスは、電気外科用エネルギー出力ステージに接続された電圧センサおよび電流センサも含む。電圧センサは、電気外科用エネルギーの電圧を感知し、感知された電圧を取得するように構成されており、電流センサは、電気外科用エネルギーの電流を感知し、感知された電流を取得するように構成されている。
【0013】
電気外科用デバイスは、送信ラインに関連する少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータを格納するメモリと、電圧センサ、電流センサ、およびメモリとに接続されたプロセッサとも含む。プロセッサは、(1)感知された電圧および感知された電流に基づいて、センサインピーダンス値を計算し、(2)センサインピーダンス値に基づいて位相値を予測することにより、予測された位相値を取得し、(3)少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータを取り出し、(4)感知された電圧の値と、感知された電流の値と、予測された位相値と、少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータとに基づいて、組織における少なくとも1つのメトリックを計算する。
【0014】
少なくとも1つのメトリックは、負荷電圧、負荷電流、電力、負荷インピーダンス、またはそれらのメトリックの任意の組み合わせを含み得る。プロセッサは、感知されたインピーダンス値の多項式関数(例えば、三次多項式関数)に基づいて、位相値を予測し得る。少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータは、ソースインピーダンスパラメータおよび漏れインピーダンスパラメータを含み得る。
【0015】
例えば、本発明は以下を提供する。
(項目1)
電気外科用デバイスにおいて損失を補償する方法であって、該方法は、
該電気外科用デバイスによって発生させられ、組織部位に適用される電気外科信号の電圧および電流を感知することにより、感知された電圧および感知された電流を取得することと、
該感知された電圧および該感知された電流に基づいて位相値を予測することにより、予測された位相値を取得することと、
該感知された電圧と、該感知された電流と、該予測された位相値と、該電気外科用デバイスに関連する少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータとに基づいて、該組織部位における少なくとも1つのメトリックを計算することと
を含む、方法。
(項目2)
上記組織における少なくとも1つのメトリックを計算することは、
上記予測された位相値に基づいて、上記感知された電圧を複素電圧値に変換することと、
該予測された位相値に基づいて、上記感知された電流を複素電流値に変換することと、
該複素電圧値と、該複素電流値と、上記少なくとも1つの損失モデルパラメータとに基づいて該組織における少なくとも1つのメトリックを計算することと
を含む、上記項目に記載の方法。
(項目3)
上記位相値を予測することは、
上記感知された電圧および上記感知された電流に基づいて、感知されたインピーダンス値を計算することと、
該感知されたインピーダンス値に基づいて該位相値を予測することと
を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目4)
上記位相値を予測することは、上記感知されたインピーダンス値の多項式関数に基づいて、該位相値を予測することを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目5)
上記多項式関数は、三次多項式関数である、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
上記少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータは、ソースインピーダンスパラメータおよび漏れインピーダンスパラメータを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目7)
上記組織部位における少なくとも1つのメトリックを計算することは、
上記感知された電流に上記ソースインピーダンスパラメータを掛け、ソースインピーダンス電圧値を取得することと、
上記感知された電圧から該ソースインピーダンス電圧値を差し引き、負荷電圧値を取得することと、
該負荷電圧値を上記漏れインピーダンスパラメータで割り、漏れ電流値を取得することと、
該感知された電流から該漏れ電流値を差し引き、負荷電流値を取得することと
を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
上記少なくとも1つのメトリックは、負荷電圧および負荷電流を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目9)
上記少なくとも1つのメトリックは、電力を含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目10)
上記少なくとも1つのメトリックは、負荷インピーダンスを含む、上記項目のいずれかに記載の方法。
(項目11)
電気外科用デバイスであって、該電気外科用デバイスは、
電気外科用エネルギーを組織に適用する少なくとも1つの電極と、
送信ラインを介して該少なくとも1つの電極に電気的に接続された電気外科用エネルギー出力ステージであって、該電気外科用エネルギー出力ステージは、電気外科用エネルギーを発生させるように構成されている、電気外科用エネルギー出力ステージと、
該電気外科用エネルギー出力ステージに接続された電圧センサおよび電流センサであって、該電圧センサは、該電気外科用エネルギーの電圧を感知し、感知された電圧を取得するように構成されており、該電流センサは、該電気外科用エネルギーの電流を感知し、感知された電流を取得するように構成されている、電圧センサおよび電流センサと、
該送信ラインに関連する少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータを格納するメモリと、
該電圧センサと、該電流センサと、該メモリとに接続されたプロセッサと
を含み、
該プロセッサは、
該感知された電圧および該感知された電流に基づいて、センサインピーダンス値を計算することと、
該センサインピーダンス値に基づいて位相値を予測することにより、予測された位相値を取得することと、
該少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータを取り出すことと、
該感知された電圧の値と、該感知された電流の値と、該予測された位相値と、該少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータとに基づいて、該組織における少なくとも1つのメトリックを計算することと
を行うように構成されている、電気外科用デバイス。
(項目12)
上記少なくとも1つのメトリックは、負荷電圧および負荷電流を含む、上記項目のいずれかに記載の電気外科用デバイス。
(項目13)
上記少なくとも1つのメトリックは、電力を含む、上記項目のいずれかに記載の電気外科用デバイス。
(項目14)
上記少なくとも1つのメトリックは、負荷インピーダンスを含む、上記項目のいずれかに記載の電気外科用デバイス。
(項目15)
上記プロセッサは、上記感知されたインピーダンス値の多項式関数に基づいて、上記位相値を予測するように構成されている、上記項目のいずれかに記載の電気外科用デバイス。
(項目16)
上記多項式関数は、三次多項式関数である、上記項目のいずれかに記載の電気外科用デバイス。
(項目17)
上記少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータは、ソースインピーダンスパラメータおよび漏れインピーダンスパラメータを含む、上記項目のいずれかに記載の電気外科用デバイス。
【0016】
(摘要)
本開示のシステムおよび方法は、固定されているか、もしくは既知のリアクタンスを備えている外部のケーブル布線を有していないか、または有している電気外科システムに関連するインピーダンス損失モデルパラメータを較正し、較正されたインピーダンス損失モデルパラメータを使用して電気外科用デバイスの送信ラインに関連するインピーダンス損失を補償することによって、組織部位の正確な電気的測定値を取得する。コンピュータシステムは、ある範囲の様々なテスト用負荷に対する電圧および電流センサデータを格納し、各テスト負荷に対する感知されたインピーダンス値を計算する。次に、コンピュータシステムは、それぞれの負荷インピーダンス値を使用して各負荷に対する位相値を予測する。コンピュータシステムは、電圧および電流センサデータ、予測された位相値、およびテスト用負荷のインピーダンス値に基づいて、ソースインピーダンスパラメータおよび漏れインピーダンスパラメータを含むインピーダンス損失モデルパラメータを逆算する。動作中において、電気外科用デバイスは、電圧および電流を感知し、感知された電圧および電流に基づいて位相値を予測し、感知された電圧および電流、予測された位相値、ソースインピーダンスパラメータ、および漏れインピーダンスパラメータに基づいて組織部位におけるメトリック(metric)を計算する。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(詳細な説明)
本開示のシステムおよび方法は、電気外科システム内の送信ラインに関連するインピーダンス損失モデルを較正する。これらのシステムおよび方法は、電気外科システムの出力部に結合されているテスト用負荷に適用されている電圧および電流を感知することと、感知されたインピーダンスを計算することと、該感知されたインピーダンスに基づいて電圧と電流との間の位相を予測することと、測定された電圧および電流、電圧と電流との間の予測された位相、およびテスト用負荷の所定のインピーダンスに基づいて少なくとも1つの内部インピーダンス値を計算することとを含む。
【0019】
本開示のシステムおよび方法はまた、較正されたインピーダンス損失モデルを使用して電気外科システムの送信ラインにおけるインピーダンス損失を補償する。これらのシステムおよび方法は、電気外科システムによって発生させられ、組織部位に適用されている電気外科信号の電圧および電流を感知することと、感知された電圧および感知された電流に基づいて位相値を予測することと、感知された電圧、感知された電流、予測された位相値、および電気外科システムの送信ラインまたはケーブルに関連する少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータに基づいて組織部位における少なくとも1つのメトリック(metric)を計算することとを含む。
【0020】
図1は、電気外科システム100の斜視図であり、電気外科システム100は、本開示の実施形態による較正および補償のシステムならびに方法を組み込む。電気外科システム100は、電気外科用エネルギーを発生させるための電気外科用ジェネレータ102と、ジェネレータ102に電気的に接続し、外科処置中に組織に電気外科用エネルギーを送達する様々な電気外科用器具112、114とを含む。以下にさらに詳細に記述されるように、ジェネレータ102は、電子回路網(例えば、アナログおよびデジタル回路網)を含み、この電子回路網は、インピーダンスを測定し、組織に送達される電力を計算する。
【0021】
電気外科用ジェネレータ102は、様々な電気外科用器具、例えばリターンパッド110、単極アクティブ電極112、および双極電気外科用鉗子114とインターフェースするための複数の出力部、例えば端子104および106を含む。リターンパッド110および単極アクティブ電極112は、単極電気外科処置を実行するために使用され、双極電気外科用鉗子は、双極電気外科処置を実行するために使用される。電気外科用ジェネレータ102は電子回路網を含み、この電子回路網は、様々な電気外科モード(例えば、切断、凝固、または切除)および処置(例えば、単極、双極、または脈管密封)に対する無線周波電力を発生させる。
【0022】
電気外科用器具112、114は、患者の組織を治療するための1つ以上の電極(例えば、電気外科用切断プローブまたは切除電極(図示されず))を含む。電気外科用エネルギー、例えば無線周波数(RF)電流は、電気外科用ジェネレータ102のアクティブ端子104に接続されている供給ライン116を介して電気外科用ジェネレータ102によって単極アクティブ電極112に供給され、単極アクティブ電極112が、組織を凝固し、密封し、切除し、かつ/または他の方法で組織を治療することを可能にする。電気外科用電流は、電気外科用ジェネレータ102のリターン端子106へ繋がっているリターンパッド110のリターンライン118を介して、組織からジェネレータ102へ戻る。アクティブ端子104およびリターン端子106はコネクタ(図示されず)を含み得、これらコネクタは、単極アクティブ電極112の供給ライン116の端末およびリターンパッド110のリターンライン118の端末に配置されているプラグ(これらも図示されず)とインターフェースするように構成されている。
【0023】
リターンパッド110はリターン電極120および122を含み、リターン電極120および122は、患者の組織との全体的な接触面積を最大にすることによって、組織への損傷のリスクを最小にするように配列されている。さらに、電気外科用ジェネレータ102およびリターンパッド110は、組織と患者との接触をモニタするように構成され、リターンパッド110と患者との間に十分な接触が存在することを確実にすることにより、組織への損傷のリスクを最小にする。
【0024】
電気外科システム100は、患者の組織を治療するための電極124、126を有する双極電気外科用鉗子114も含む。双極電気外科用鉗子114は、対向する顎部材134、136を含む。第1の顎部材134はアクティブ電極124を含み、第2の顎部材136はリターン電極126を含む。アクティブ電極124およびリターン電極126は、ケーブル128を介して電気外科用ジェネレータ102に接続可能であり、ケーブル128は、供給ライン130およびリターンライン132を含む。供給ライン130はアクティブ端子104に接続可能であり、リターンライン132はリターン端子106に接続可能である。双極電気外科用鉗子114は、ケーブル128の端末に配置されているプラグ(明確には示されず)を介して、電気外科用ジェネレータ102のアクティブ端子104およびリターン端子106に接続されている。
【0025】
電気外科用ジェネレータ102は、様々なタイプの電気外科用器具(例えば、単極アクティブ電極112および双極電気外科用鉗子114)に適合するための複数のコネクタを含み得る。電気外科用ジェネレータ102はまた、コネクタ間でRFエネルギーの供給を切り換えるための切り替えメカニズム(例えば、中継器)を含み得る。例えば、単極アクティブ電極112が電気外科用ジェネレータ102に接続されているとき、切り替えメカニズムは、RFエネルギーの供給を単極プラグにだけ切り換える。アクティブ端子104およびリターン端子106は、電気外科用ジェネレータ102の複数のコネクタ(例えば、入力部および出力部)に結合されることにより、様々な器具に電力を供給し得る。
【0026】
電気外科用ジェネレータ102は、電気外科用ジェネレータ102を制御するための適切な入力制御部(例えば、ボタン、アクティベータ、スイッチ、またはタッチスクリーン)を含む。さらに、電気外科用ジェネレータ102は、ユーザに様々な出力情報(例えば、強度設定および治療完了インジケータ)を提供するための1つ以上のディスプレイスクリーンを含み得る。制御部は、RF電気エネルギーのパラメータ(例えば、電力または波形)が特定のタスク(例えば、凝固すること、組織を密封すること、または切断すること)に適するように、ユーザがRF電気エネルギーのパラメータを調整することを可能にする。電気外科用器具112および114はまた、複数の入力制御部を含み得、これら複数の入力制御部は、電気外科用ジェネレータ102の特定の入力制御部と重複し得る。入力制御部を電気外科用器具112および114に配置することは、電気外科用ジェネレータ102と相互作用する必要なく、外科処置中におけるRFエネルギーパラメータのより容易かつより速い変更を可能にする。
【0027】
図2は、電気外科システム200のブロック図であり、電気外科システム200は、
図1のジェネレータ102と較正コンピュータシステム240とを含む。電気外科システム100のジェネレータ102は、コントローラ220と、高圧電源202と、無線周波出力ステージ206とを含み、これらコントローラ220と、高圧電源202と、無線周波出力ステージ206とは共に動作し、電気外科用器具230の電極209、210を介して組織に適用される電気外科信号を発生させる。コントローラ220は、デジタル信号プロセッサ(DSP)222と、メインプロセッサ224と、メモリ226とを含む。コントローラ220は、任意の適切なマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ(例えば、HarvardまたはVon Neumannアーキテクチャ)、PLD、PLA、または他のデジタルロジックであり得る。メモリ226は、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ソリッドステートメモリ、磁性メモリ、または他の適切な格納メモリであり得る。
【0028】
コントローラ220はまた、メインプロセッサ224と電気外科用ジェネレータ102内の他の回路網(例えば、増幅器およびバッファ)との間のインターフェースとして役立つ様々な回路網を含み得る。コントローラ220は、メインプロセッサ224および/またはDSP222によって使用される様々なフィードバック信号を受信し、HVPS202およびRF出力ステージ206を含むジェネレータ102の様々なサブシステムを制御するための制御信号を発生させる。これらのサブシステムは、
図2において負荷234(Z
負荷)によって表されている組織に対して外科処置を実行するために所望される特性を有する電気外科用エネルギーを発生させるように制御される。
【0029】
ジェネレータ102は、交流(AC)電源203から電力を受け取るAC/DC電力供給装置205を含む。AC/DC電力供給装置は、ACを直流(DC)に変換し、DCをエネルギー変換回路204に提供する。次に、エネルギー変換回路204は、コントローラ220から受信した制御信号に基づいて、第1のエネルギーレベルでのDC電力を第2の異なるエネルギーレベルでのDC電力に変換する。エネルギー変換回路204は、第2の異なるエネルギーレベルでのDC電力をRF出力ステージ206に供給する。RF出力ステージ206は、DC電力を逆転させ、高周波交流(例えば、RF AC)を生成し、高周波交流(例えば、RF AC)は、組織に適用される。例えば、RF出力ステージ206は、RF出力ステージ206内に含まれている昇圧変圧器(図示されず)の一次側結合されているプッシュプルトランジスタを使用して、高周波電流を発生させ得る。
【0030】
電気外科用ジェネレータ102は測定回路網を含み、この測定回路網は、組織部位における電圧、電流、インピーダンス、および電力を正確に決定することにより、コントローラ220が、このフィードバックを使用して電気外科出力の特性を正確に制御することができるように構成されている。この測定回路網は、RF出力ステージ206の出力部に結合されている電圧センサ211と電流センサ212とを含む。電圧センサ211は、RF出力ステージ206の出力部にまたがる電圧を感知し、感知された電圧213(V
感知)を表すアナログ信号をアナログデジタル変換器(ADC)215に提供し、アナログデジタル変換器(ADC)215は、アナログ信号をデジタル形式に変換する。同様に、電流センサ212は、RF出力ステージ206の出力部における電流を感知し、感知された電流214(I
感知)を表すアナログ信号を別のADC215に提供し、別のADC215は、アナログ信号をデジタル形式に変換する。
【0031】
DSP222は、感知された電圧および感知された電流のデータを受信し、それを使用して、組織部位におけるインピーダンスおよび/または電力を計算する。コントローラ220のメインプロセッサ224は、感知された電圧、感知された電流、インピーダンス、および/または電力を使用するアルゴリズムを実行し、HVPS202および/またはRF出力ステージ206を制御する。例えば、メインプロセッサ224は、計算された電力およびユーザによって選択され得る所望の電力レベルに基づいてPID制御アルゴリズムを実行し、組織部位における所望の電力レベルを達成および維持するためにRF出力ステージ206によって供給されるべき電流の量を決定する。
【0032】
組織に適用される電気外科用エネルギーを正確に制御するために、コントローラ220は、組織における電圧および電流を正確に感知する必要がある。しかしながら、電圧センサ211によって感知される電圧および電流センサ212によって感知される電流は、RF出力ステージ206と電極209、210との間に接続されている第1の送信ライン221および第2の送信ライン223に関連するRFインピーダンス損失により不正確であり得る。換言すれば、電圧センサ211および電流センサ212によりRF出力ステージ206において測定される電圧および電流は、RFインピーダンス損失により、負荷(すなわち組織)における実際の電圧および電流231、232と等しくないことがあり得る。
【0033】
これらのRFインピーダンス損失は、第1の送信ライン221と直列に接続されているソースインピーダンス252および第1の送信ライン221と第2の送信ライン223との間に接続されている漏れインピーダンス254としてモデル化され得る。ソースインピーダンス252および漏れインピーダンス254のこの配列は、インピーダンス損失モデル250を形成する。RF出力ステージ206から出力される(かつ、電圧センサ211および電流センサ212によって感知される)電圧および電流は、それぞれ、インピーダンス損失モデル250に適用される入力電圧255(V
入)および入力電流256(I
入)を表す。さらに、ジェネレータ102から出力され、かつ負荷234(Z
負荷)に供給される電圧および電流は、インピーダンス損失モデル250から出力される出力電圧257(V
出)および出力電流258(I
出)を表す。
【0034】
センサデータにエラーを導入するインピーダンス損失を補償するために、電気外科システム200は、インピーダンス損失モデル250のソースインピーダンス252および漏れインピーダンス254に関連するソースおよび漏れインピーダンス損失モデルパラメータを較正し、次に、これらのパラメータに基づいて新規の感知された電圧および電流を計算する。新規の感知された電圧および電流は、組織における電圧および電流の正確な測定値を表す。
【0035】
較正プロセスは、電気外科システムの出力部に結合されているテスト用負荷に適用されている電気外科信号の電圧および電流を感知することと、この電圧と電流との間の位相を感知することと、感知された電圧、感知された電流、感知された位相、およびテスト用負荷の所定のインピーダンスに基づいて、ソースインピーダンス損失モデルパラメータおよび漏れインピーダンス損失モデルパラメータを計算することとを含む。テスト用負荷の所定のインピーダンスは、インピーダンスメータによって測定される。
【0036】
インピーダンス損失モデルパラメータは、ジェネレータ102のコントローラ220に接続可能である外部の較正コンピュータシステム240によって計算される。較正コンピュータシステム240は、プロセッサ242と、メモリ244と、通信インターフェース245とを含む。プロセッサ242は、通信インターフェース245を介して、センサ電圧値と、センサ電流値と、予測される位相値とを含む測定データにアクセスし、その測定データをメモリ244に格納する。次に、プロセッサ242は、測定データに基づいて、較正プロセスを実行し、インピーダンス損失モデルパラメータを計算する。較正プロセスを実行した後、プロセッサ242は、コントローラ220のメモリ226にインピーダンス損失モデルパラメータをロードする。一部の実施形態において、較正コンピュータシステム240の機能は、ジェネレータ102のコントローラ220によって実行される。
【0037】
動作中に、メインプロセッサ224は、メモリ226にアクセスし、較正されたインピーダンス損失モデルパラメータを取り出し、それらをDSP222に提供する。DSP222は、較正されたインピーダンス損失モデルパラメータと、電圧、電流、および位相測定データとを使用し、組織部位における正確な電圧、電流、インピーダンス、および/または電力を計算する。
【0038】
較正および補償プロセスの精度は、部分的に、位相の精度に依存する。位相は、感知された電圧および感知された電流をサンプリングすること、および感知された電圧と感知された電流との間の位相を計算することにより決定されることができる。しかしながら、この方法は、複雑なアルゴリズムと、高価で、電力消費が多く、かつ高速度のハードウエアとを必要とする。
【0039】
本開示の実施形態によると、電気外科システム200の内部の送信ライン221、223および外部のケーブル207、208は、組織に適用される電圧と電流との間の位相が単純な方程式と、安価で、低電力、かつ低速のハードウエアとを使用して予測され得るように物理的に配列および配置される。特に、内部の送信ライン221、223および外部のケーブル207、208は、固定された既知のリアクタンス(すなわち、インピーダンスの虚数部分)を有するように構成される。例えば、内部の送信ライン221、223の巻きは、固定された既知のリアクタンスを有するように特定される。
【0040】
従って、外部のインピーダンスの変化(例えば、組織のインピーダンスの変化)が、リアクタンスではなく抵抗の変化によって支配される場合、感知された電圧と感知された電流との間の位相は、次の方程式、
【0041】
【数1】
に示されるとおり、感知された外部のインピーダンスに基づいて予測されることができる。ここで、Xは、既知のリアクタンスであり、|Z|は、感知されたインピーダンスの絶対値である。感知されたインピーダンスの絶対値は、測定された電圧を測定された電流で割ることによって計算される。
【0042】
図3は、本開示の他の実施形態による電気外科システム300のブロック図である。電気外科システム300は、
図2のジェネレータ102および電気外科用器具230が両方とも携帯用ハンドヘルド電気外科用デバイス301の中に組み込まれている点を除いて、
図2の電気外科システムと同様である。ハンドヘルド電気外科用デバイス301は、ハンドヘルド電気外科用デバイス301の様々な回路網に電力を提供するバッテリパック320を組み込み得る。
【0043】
図2の電気外科システム200と同様に、電気外科システム300における電圧センサ211によって感知される電圧および電流センサ212によって感知される電流は、RF出力ステージ206と電極303、304との間に接続されている送信ライン305、306に関連するRFインピーダンス損失により、組織部位における実際の電圧および電流と等しくないことがあり得る。RFインピーダンス損失は、
図2のものと同じインピーダンス損失モデル250を使用することによってモデル化および補償され得る。
【0044】
上述のように、較正および補償プロセスの精度は、部分的に、位相の精度に依存する。位相は、感知された電圧および感知された電流をサンプリングすること、および感知された電圧と感知された電流との間の位相を計算することにより決定されることができる。しかしながら、この方法は、複雑なアルゴリズムと、高価で、電力消費が多く、かつ高速のハードウエアとを必要とする。
【0045】
電気外科システム300の内部の送信ライン305、306は、組織に適用されている電圧と電流との間の位相が
図2の電気外科システム200に関して上述された態様と同様の態様で予測され得るように物理的に配列および配置される。例えば、内部の送信ライン305、306は、固定された既知のリアクタンス(すなわち、インピーダンスの虚数部)を有するように構成される。特に、内部の送信ライン305、306の巻きは、固定された既知のリアクタンスを有するように特定される。
【0046】
図4は、本開示の実施形態によるインピーダンス損失モデル較正手順を示す。ハンドヘルド電気外科用デバイス301が外科処置を実行するために使用される前に、較正手順が、インピーダンス損失モデルパラメータ(ケーブル補償値とも称される)を決定するために実行される。
図4に示されるように、較正手順は、電気外科用デバイス301の電極に結合されているテスト用負荷に適用されている電圧および電流を感知すること(ステップ402)と、感知された電圧および感知された電流に基づいて感知されたインピーダンス値を計算すること(ステップ404)と、感知されたインピーダンス値に基づいて感知された電圧と感知された電流との間の位相を予測すること(ステップ406)と、予測された位相値、感知された電圧、感知された電流、およびテスト用負荷の所望のインピーダンスに基づいて少なくとも1つのインピーダンス値(例えば、ソースインピーダンスZ
ソース210の値および/または漏れインピーダンスZ
漏れ210の値)を計算すること(ステップ408)とを含む。
【0047】
較正手順に対して、テスト用負荷は、組織のインピーダンスを表す電力抵抗器、負荷抵抗器、または他の抵抗素子であり得る。一部の実施形態において、テスト用負荷の所望のインピーダンスは、周波数を電気外科用デバイスの動作周波数、例えば470kHzに設定した状態で、インピーダンスメータ、例えばLCRメータを使用して測定されたインピーダンスである。
【0048】
図5は、
図4のインピーダンス損失モデルパラメータを計算する方法の流れ図である。最初に、感知された電圧は、予測された位相値に基づいてピーク電圧値に変換される(ステップ502)。同様に、感知された電流は、予測された位相値に基づいてピーク電流値に変換される(ステップ504)。次に、損失モデルパラメータが、ピーク電圧値、ピーク電流値、および所望の負荷インピーダンス値に基づいて逆算される。
【0049】
図6は、本開示の他の実施形態による、インピーダンス損失モデルパラメータ、すなわちソースインピーダンスパラメータおよび漏れインピーダンスパラメータを較正する方法の流れ図である。この較正方法は、ある範囲の定格抵抗値またはインピーダンス値を有する複数のテスト用負荷を使用する。なぜなら、電気外科システムの送信ラインまたはケーブルのリアクタンスは、組織のインピーダンスに基づいて変化するからである。例えば、低い抵抗負荷に対しては、ソースインピーダンス損失が支配的であり、高い抵抗負荷に対しては、漏れインピーダンス損失が支配的である。
【0050】
一部の実施形態において、電力抵抗器の抵抗は、0オームから5000オームに及び得る。他の実施形態において、電力抵抗器の抵抗は、0オームから1500オームに及び得る。
【0051】
最初に、電圧および電流が、複数のテスト用負荷、例えば電力抵抗器の各々にわたり感知または測定され、これら複数のテスト用負荷は、電気外科システムの出力部に別々に結合され、複数の感知された電圧および複数の感知された電流を取得する(ステップ602)。電圧および電流測定値は、動作モード(例えば双極の規格)と、もし存在する場合は、電気外科システムの出力ポートとが選択された後に取られる。さらに、双極の規格に対して、制御は、閉ループ制御に設定され、出力電力は、所望のレベル、例えば50Wに設定される。一部の実施形態において、テスト用負荷の各々に適用されているrms電圧およびrms電流(V
感知およびI
感知)は、
図1および
図2に示されるように電気外科用ジェネレータ内に配置されたADC215を使用して測定される。
【0052】
次に、感知された電圧および電流は、テスト用負荷の各々に対するセンサインピーダンス値を計算するために使用される(ステップ604)。例えば、センサインピーダンス値は、次の方程式、
【0053】
【数2】
により計算される。次に、これらのセンサインピーダンス値は、テスト用負荷の各々に対する感知された電圧と感知された電流との間の位相を予測するために使用される(ステップ606)。予測される位相値は、センサインピーダンス値の多項式関数により計算され得る。そのような多項式関数の例は、
【0054】
【数3】
であり、ここで、多項式係数は、
【0056】
多項式関数は、公知の曲線の当てはめ技術を使用して決定され得る。曲線の当てはめ技術は、固定された内部のソースインピーダンスおよび固定された内部の漏れインピーダンスを条件に、最小の負荷(例えば、0オーム)から最大の負荷(例えば、1500または5000オーム)まで変化する外部の負荷にわたって測定された絶対インピーダンスに基づいて位相の変化を近似するために使用される。換言すれば、実際のインピーダンス(すなわち、組織の抵抗)が、最小値から最大値へ変化し、虚数インピーダンス(すなわち、リアクタンス)が、固定されたままであるとき、絶対インピーダンスと実際のインピーダンスとの間には関係がある。曲線の当てはめ技術は、考えられる実際のインピーダンス値(例えば、0〜1500オーム)の範囲にわたって多項式関数をこの関係に当てはめるために適用され得る。
【0057】
曲線の当てはめ技術によって決定される多項式関数の多項式係数は、各特定のジェネレータに対して一意的である。一部の実施形態において、虚数インピーダンス(すなわち、リアクタンス)は、ジェネレータの内部にあるRF送信ワイヤの巻き数を特定することによって、特定のタイプのジェネレータの様々な製造例にわたって固定され得る。これらの実施形態において、共通の一組の多項式係数が、その特定のタイプの全てのジェネレータに対して使用されることができる。
【0058】
較正手順の前に、または較正手順中に、テスト用負荷が、インピーダンスメータ、例えばLCRメータのリードに、テスト用ケーブル、例えば短いバナナケーブルを介して、別々に接続され、各テスト用負荷のインピーダンスを測定する。例えば、以下のそれぞれの定格抵抗値を有する以下の電力抵抗器が測定され得、以下のそれぞれの実測インピーダンス値を取得する。
【0060】
【表1-1】
一部の実施形態において、電力抵抗器は、0オームの定格抵抗値を有する電力抵抗器をさらに含み得る。テスト用ケーブル、例えば短いバナナケーブルのインピーダンス、およびテスト用負荷、例えば電力抵抗器のインピーダンスが、一緒に測定される場合、テスト用ケーブルのインピーダンスは、較正の計算に含まれない。一方、テスト用ケーブルのインピーダンスが、電力抵抗器のインピーダンスとは別個に測定される場合、テスト用ケーブルのインピーダンスは、較正の計算に含まれる。例えば、第1のテスト用ケーブル(ケーブル1)の測定されたインピーダンスは、0.0533+2.12iオームであり得、第2のテスト用ケーブル(ケーブル2)の測定されたインピーダンスは、0.0305+1.62iオームであり得る。
【0061】
一部の実施形態において、測定されたrms電圧、測定されたrms電流、計算された位相、およびテスト用負荷およびテスト用ケーブルの実測インピーダンスは、例えば、
【0062】
【表2】
のような入力アレイを形成する。この入力アレイは、較正コンピュータシステム240のメモリ244に格納され得、プロセッサ242は、入力アレイの中の測定データを取り出し、測定データに基づいて損失モデルパラメータを計算することができる。
【0063】
図6を再度参照すると、ステップ608において、ソースインピーダンスパラメータは、第1の負荷に対応する第1の予測された位相値、第1の感知された電圧、第1の感知された電流、および第1の所定の負荷インピーダンス値に基づいて計算される。次に、ステップ610において、漏れインピーダンスパラメータは、第2の負荷に対応する第2の予測された位相値、第2の感知された電圧、第2の感知された電流、および第2の所定の負荷インピーダンス値に基づいて計算される。第1および第2の所定の負荷インピーダンス値は、それぞれ、インピーダンスメータを使用して第1および第2の負荷のインピーダンスを測定することによって取得される。一部の実施形態において、第1および第2の所定の負荷インピーダンス値は、インピーダンスメータを使用して複数の負荷のインピーダンスを測定することによって取得される複数の所定の負荷インピーダンス値から選択される。
【0064】
一部の実施形態において、インピーダンス損失モデルパラメータは、逆算技術を使用して計算される。逆算技術によると、ある範囲の負荷にわたって測定精度を最適化するために、適切なテスト用負荷のデータが最初に選択される。例えば、低いインピーダンスのデータ、例えば5オームの負荷に対するデータが、ソースインピーダンス損失モデルパラメータを決定するために使用され得、高いインピーダンスのデータ、例えば1500オームの負荷に対するデータが、漏れインピーダンス損失モデルパラメータを決定するために使用され得る。次に、インピーダンス損失モデルパラメータが、異なるテスト用負荷に対する測定データ(例えば、感知された電圧、感知された電流、感知された位相、および所定のインピーダンス)に基づいて計算される。例えば、より詳細に以下に記述されるように、ソースインピーダンス損失モデルパラメータは、低いインピーダンス負荷に対する測定データに基づいて計算され、漏れインピーダンス損失モデルパラメータは、高いインピーダンス負荷に対する測定データに基づいて計算される。
【0065】
図7は、
図6のソースインピーダンス損失モデルパラメータを計算する方法の流れ図である。ステップ702において、第1の感知された電圧(例えば、低いインピーダンスのテスト用負荷が電極303、304にまたがって配置されている状態で、電圧センサ211によって感知された第1の電圧)は、第1のピーク電圧値に変換され、第1の感知された電流(例えば、低いインピーダンスのテスト用負荷が電極303、304にまたがって配置されている状態で、電流センサ212によって感知された第1の電流)は、第1の予測された位相値に基づいて第1のピーク電流値に変換される。例えば、第1の感知された電圧および第1の感知された電流は、次の方程式、
【0066】
【数5】
により矩形のピーク値に変換される。ここで、I
ピーク,1は、第1のピーク電流値を表し、I
感知,1は、第1の感知された電流を表し、
【0067】
【数6】
は、第1の予測された位相値を表し、V
ピーク,1は、第1のピーク電圧値を表し、そして、V
感知,1は、第1の感知された電圧を表す。
【0068】
次に、第1の出力電圧値が、第1のピーク電圧値、第1のピーク電流値、および前のソースインピーダンス損失モデルパラメータ(本明細書では、前のソースインピーダンスパラメータとも称される)に基づいて計算される(ステップ704)。例えば、第1の出力電圧値は、次の方程式、
【0069】
【数7】
により、第1のソース電圧(V
ソース,1)、すなわち前のソースインピーダンス損失モデルパラメータ(Z
ソース(n−1))にまたがる電圧降下を最初に計算することによって計算される。一部の実施形態において、前のソースインピーダンスパラメータおよび前の漏れインピーダンスパラメータは、損失モデル較正手順の第1回目の反復の前の初期値に設定される。次に、第1の出力電圧(V
出,1)は、次の方程式、
【0071】
次に、第1の出力電流値は、第1の出力電圧値、ピーク電流値、および前の漏れインピーダンス損失モデルパラメータ(本明細書では、前の漏れインピーダンスパラメータとも称される)に基づいて計算される(ステップ706)。例えば、第1の出力電流値(I
出,1)は、次の方程式、
【0072】
【数9】
により、第1の漏れ電流、すなわち前の漏れインピーダンス損失モデルパラメータ(Z
漏れ(n−1))を通って流れる電流を最初に計算することによって計算される。一部の実施形態において、次に、第1の出力電流値は、次の方程式、
【0074】
最後に、ソースインピーダンス損失モデルパラメータが、第1の出力電流値、第1の所定の負荷インピーダンス値(例えば、第1のテスト用負荷の予め測定されたインピーダンス値)、第1のピーク電圧値、および第1のピーク電流値に基づき逆算される(ステップ708)。
【0075】
ソースインピーダンス損失モデルパラメータを逆算する方法が、
図10に示されている。最初に、所望の出力電圧値(V
出(所望))が、第1の出力電流値に第1の所定の負荷インピーダンス値(Z
負荷,1)を掛けること、すなわち、
【0076】
【数11】
によって逆算される。
次に、所望のソース電圧V
ソース(所望)が、第1のピーク電圧値から所望の出力電圧値を差し引くこと、すなわち、
【0077】
【数12】
によって逆算される。
最後に、電流ソースインピーダンス損失モデルパラメータZ
ソース(n)が、所望のソース電圧値を第1のピーク電流値で割ること、すなわち、
【0079】
図8は、
図6の漏れインピーダンス損失モデルパラメータを計算する方法の流れ図である。ステップ802において、第2の感知された電圧(例えば、高いインピーダンスのテスト用負荷が電極303、304にまたがって配置されている状態で、電圧センサ211によって感知された第2の電圧)が、第2のピーク電圧値に変換され、第2の感知された電流(例えば、高いインピーダンスのテスト用負荷が電極303、304にまたがって配置されている状態で、電流センサ212によって感知された第2の電流)が、第2の予測された位相値に基づき第2のピーク電流値に変換される。
【0080】
例えば、第2の感知された電圧および第2の感知された電流は、次の方程式、
【0081】
【数14】
により矩形のピーク値に変換される。ここで、I
ピーク,2は、第2のピーク電流値を表し、I
感知,2は、第2の感知された電流を表し、
【0082】
【数15】
は、第2の予測された位相値を表し、V
ピーク,2は、第2のピーク電圧値を表し、そして、V
感知,2は、第2の感知された電圧を表す。
【0083】
次に、第2の出力電圧値は、第2のピーク電圧値、第2のピーク電流値、および前のソースインピーダンス損失モデルパラメータに基づいて計算される(ステップ804)。例えば、第2の出力電圧値は、次の方程式、
【0084】
【数16】
により、第2のソース電圧(V
ソース,2)、すなわち前のソースインピーダンス損失モデルパラメータ(Z
ソース(n−1))にまたがる電圧降下を最初に計算することによって計算される。次に、第2の出力電圧(V
出,2)は、次の方程式、
【0086】
最後に、漏れインピーダンス損失モデルパラメータが、第2の出力電圧値、第2の所定の負荷インピーダンス値(例えば、第2のテスト用負荷の予め測定されたインピーダンス値)、および第2のピーク電流値に基づき逆算される(ステップ806)。
【0087】
漏れインピーダンス損失モデルパラメータを逆算する方法が、
図11に示されている。最初に、所望の出力電流値(I
出(所望))が、第2の出力電圧値を第2の所定の負荷インピーダンス値(Z
負荷,2)で割ること、すなわち、
【0088】
【数18】
によって逆算される。
次に、所望の漏れ電流I
漏れ(所望)が、第2のピーク電流値から所望の出力電流値を差し引くこと、すなわち、
【0089】
【数19】
によって逆算される。
最後に、電流漏れインピーダンス損失モデルパラメータZ
漏れ(n)が、第2の出力電圧値を所望の漏れ電流値で割ること、すなわち、
【0091】
一部の実施形態において、ソースインピーダンス損失モデルパラメータおよび漏れインピーダンス損失モデルパラメータは、反復の態様で一緒に計算される。インピーダンス損失モデルパラメータを反復計算する例示的な方法が、
図9の流れ図に示されている。ステップ902において、第1および第2の感知された電圧が、第1および第2のピーク電圧値に変換され、第1および第2の感知された電流値が、第1および第2の予測された位相値に基づいて第1および第2のピーク電流値に変換される。次に、
図7のステップ704〜708と同一であるステップ904〜908において、ソースインピーダンス損失モデルパラメータが計算される。次に、
図8のステップ804〜806と同一であるステップ910〜912において、漏れインピーダンス損失モデルパラメータが計算される。
【0092】
最後に、ステップ914において、反復の数が所定の値よりも大きいかどうかが決定される。反復の数が所定の値よりも大きいと決定された場合、インピーダンス損失モデルパラメータを計算する方法は、ステップ917において終了する。そうではない場合、反復の数はステップ916において(例えば、1だけ)増加され、ステップ904〜912が繰り返される。一部の実施形態において、所定の値は、正確なインピーダンス損失モデルパラメータを生成する反復の数に設定される。
【0093】
一部の実施形態において、複数の冗長なDSPがインピーダンス損失モデルパラメータを決定するために使用され、精度を確保する。例えば、
図3に示されるように、較正コンピュータシステム340は、第1のDSP341と第2のDSP342とを含む。第1のDSP341は、上述の様々な方法に従ってソースおよび漏れインピーダンス損失モデルパラメータを計算し、第2のDSP342は、同じ計算を実行する。次に、DSP341、342によって計算されたインピーダンス損失モデルパラメータは平均され、平均ソースインピーダンスパラメータおよび平均漏れインピーダンスパラメータを取得する。プロセッサ242は、平均ソースインピーダンスパラメータおよび平均漏れインピーダンスパラメータを受信し、通信インターフェース245を介してそれらをコントローラ220に送信する。他の実施形態において、較正コンピュータシステム340は、
図3のコントローラ220または携帯用電気外科用デバイス301の中に実装される。
【0094】
電気外科システム200、300が、外科処置を実行するために使用されるとき、較正されたインピーダンス損失モデルパラメータは、負荷における電力および/またはインピーダンス測定の精度に対するインピーダンス損失の影響を補償するために使用される。
図12に示されるように、補償プロセスは、電気外科用デバイスによって発生させられ、組織部位に適用されている電気外科信号の電圧および電流を感知すること(ステップ1202)と、感知された電圧および感知された電流に基づき位相値を予測すること(ステップ1204)と、感知された電圧、感知された電流、予測された位相値、および電気外科システムに関連する少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータに基づき組織部位における少なくとも1つのメトリックを計算すること(ステップ1206)とを含む。組織部位における少なくとも1つのメトリックは、電圧、電流、電力、および/またはインピーダンスを含む。さらに、少なくとも1つのインピーダンス損失モデルパラメータは、ソースインピーダンスパラメータおよび/または漏れインピーダンスパラメータを含む。
【0095】
図13に示されるように、組織部位における少なくとも1つのメトリックを計算することは、予測された位相値に基づき、感知された電圧を複素電圧値に変換すること(ステップ1302)と、予測された位相値に基づき、感知された電流を複素電流値に変換すること(ステップ1302)と、複素電圧値、複素電流値、および少なくとも1つの損失モデルパラメータに基づき組織部位における少なくとも1つのメトリックを計算すること(ステップ1304)とを含む。
【0096】
図14に示されるように、位相値を予測することは、感知された電圧および感知された電流に基づき、感知されたインピーダンス値を計算すること(1402)と、感知されたインピーダンス値に基づき位相値を予測すること(1404)とを含む。一部の実施形態において、位相値を予測することは、感知されたインピーダンス値の多項式関数に基づく。多項式関数は、三次多項式関数であり得る。
【0097】
図15に示されるように、組織部位における少なくとも1つのメトリックを計算することは、ネットワークソリューション計算を実行し、組織部位におけるインピーダンスを決定することを含む。これらの計算は、感知された電流(I
感知)にソースインピーダンスパラメータ(Z
ソース)を掛け、ソースインピーダンス電圧値(Vz
ソース)を取得することを最初に含む(1502)。ステップ1504において、感知された電圧(V
感知)からソースインピーダンス電圧値(Vz
ソース)が差し引かれ、負荷電圧値(V
負荷)を取得する。ステップ1506において、負荷電圧値(V
負荷)が、漏れインピーダンスパラメータ(Z
漏れ)によって割られ、漏れ電流値(I
漏れ)を取得する。ステップ1508において、感知された電流(I
感知)から漏れ電流値(I
漏れ)が差し引かれ、負荷電流値(I
負荷)を取得する。最後に、ステップ1510において、負荷電圧値(V
負荷)が、負荷電流値(I
負荷)によって割られ、負荷インピーダンス値(Z
負荷)を取得する。負荷電圧値(V
負荷)および負荷電流値(I
負荷)は、組織部位における電力を計算するためにも使用されることができる。
【0098】
本開示の例示的な実施形態が、添付の図面を参照して本明細書に記述されたが、しかし、本開示はそれら正確な実施形態に限定されないこと、ならびに様々な他の変更および改変が本開示の範囲または精神から逸脱することなく当業者によってそれらの中でなされ得ることが理解されるべきである。