特許第5718429号(P5718429)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5718429端子接続装置及び端子付き電線の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5718429
(24)【登録日】2015年3月27日
(45)【発行日】2015年5月13日
(54)【発明の名称】端子接続装置及び端子付き電線の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 43/048 20060101AFI20150423BHJP
【FI】
   H01R43/048 Z
   H01R43/048 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-220203(P2013-220203)
(22)【出願日】2013年10月23日
(65)【公開番号】特開2015-82429(P2015-82429A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2014年8月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】大崎 卓也
【審査官】 山田 康孝
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−021543(JP,A)
【文献】 特開2011−171057(JP,A)
【文献】 特開2012−048833(JP,A)
【文献】 特公昭37−013629(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 43/048
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に外嵌された端子の電線接続部を断面多角形状にかしめ、電線に端子を接続するための端子接続装置において、
相互に突き合わされる一対のダイス本体に、これらダイス本体の突合せ面から断面多角形を二分した形状の成形用切欠きがそれぞれ形成され、
前記各成形用切欠きの内周面は、前記成形用切欠きの底部に延在する圧縮面と、前記圧縮面の一端から前記突合せ面に向かって延びる第1の斜面と、前記圧縮面の他端から前記突合せ面に向かって延びる第2の斜面と、前記圧縮面に形成された第1の押圧突起と、前記第1及び第2の斜面にそれぞれ形成された第2の押圧突起とを有し、
前記一対のダイス本体を突き合わせたときに、前記成形用切欠き内に配置された前記電線接続部の外周面に、前記第2の押圧突起が前記第1の押圧突起よりも先に当接するように、前記第1及び第2の押圧突起が形成されている
ことを特徴とする端子接続装置。
【請求項2】
前記各成形用切欠きの内周面には、内周面の軸方向に沿って長尺状に延びる第1及び第2の押圧突起が形成されると共に、前記第2の押圧突起の前記軸方向の長さが、前記第1の押圧突起よりも長いことを特徴とする請求項1記載の端子接続装置。
【請求項3】
電線の導体露出部に端子の筒状の電線接続部を外嵌する工程と、
相互に突き合わされる一対のダイス本体の間に前記電線接続部を配置する工程と、
前記各ダイス本体の突合せ面から断面多角形を二分した形状の成形用切欠きがそれぞれ形成された一対のダイス本体を突き合わせることによって、前記電線接続部を成形用切欠きの形状に合わせてかしめ、電線に端子を接続する工程とを含み、
前記各成形用切欠きの内周面は、成形用切欠きの底部に延在する圧縮面と、前記圧縮面の一端からダイス本体の突合せ面に向かって延びる第1の斜面と、前記圧縮面の他端からダイス本体の突合せ面に向かって延びる第2の斜面と、前記圧縮面に形成された第1の押圧突起と、前記第1及び第2の斜面にそれぞれ形成された第2の押圧突起とを有し、
前記一対のダイス本体を突き合わせて前記電線接続部を前記成形用切欠きの形状に合わせてかしめるときに、前記第2の押圧突起が前記第1の押圧突起よりも先に前記電線接続部に当接する
ことを特徴とする端子付き電線の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電線の導体露出部に端子を接続するための端子接続装置及び端子付き電線の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
略円筒形状の電線接続部を有する端子を電線の導体露出部に取り付けるための端子接続装置として、相互に突き合わされる一対のダイス本体に、これらダイス本体の突合せ面から断面六角形を二等分した形状の切欠き(凹部)をそれぞれ形成し、さらに各切欠きの内壁面にそれぞれ押圧突起を形成したものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、電線の導体露出部に外嵌された端子の電線接続部を、ダイス本体の切欠き内にセットし、一対のダイス本体を突き合わせて、電線接続部を断面六角形状にかしめることによって、電線に端子を接続する。そして、電線接続部の外周面と押圧突起の当接部分に、かしめに加わる外力を集中させ、端子と電線の接続強度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−21543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のように、切欠き内壁面に押圧突起を形成したダイス本体を用いて電線接続部をかしめることによって、電線と端子の接続強度を向上させることができるが、一対のダイス本体を突き合わせたときに、押圧突起によって電線接続部が押し潰された部位がダイス本体の突合せ面の隙間に向かって押し出され、大きなバリが発生するおそれがある。
【0006】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消し、バリの発生を極力抑えて電線と端子とを接続することができる端子接続装置及び端子付き電線の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る端子接続装置は、電線に外嵌された端子の電線接続部を断面多角形状にかしめ、電線に端子を接続するための端子接続装置において、相互に突き合わされる一対のダイス本体に、これらダイス本体の突合せ面から断面多角形を二分した形状の成形用切欠きがそれぞれ形成され、前記各成形用切欠きの内周面は、前記成形用切欠きの底部に延在する圧縮面と、前記圧縮面の一端から前記突合せ面に向かって延びる第1の斜面と、前記圧縮面の他端から前記突合せ面に向かって延びる第2の斜面と、前記圧縮面に形成された第1の押圧突起と、前記第1及び第2の斜面にそれぞれ形成された第2の押圧突起とを有し、前記一対のダイス本体を突き合わせたときに、前記成形用切欠き内に配置された前記電線接続部の外周面に、前記第2の押圧突起が前記第1の押圧突起よりも先に当接するように、前記第1及び第2の押圧突起が形成されていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る端子接続装置によれば、電線接続部がかしめられるときに、成形用切欠きの圧縮面に形成された第1の押圧突起が電線接続部の外周面に当接するよりも先に、第1及び第2の斜面に形成された第2の押圧突起が電線接続部の外周面に当接する。これによって、第1の押圧突起に押し潰された部位がダイス本体の突合せ面に向かって押し出されるのが、第2の押圧突起との当接部分で規制され、バリの発生を低減することができる。
【0009】
また、上記の端子接続装置は、各成形用切欠きの内周面に、内周面の軸方向に沿って長尺状に延びる第1及び第2の押圧突起が形成されると共に、前記第2の押圧突起の前記軸方向の長さが、前記第1の押圧突起よりも長くてもよい。
【0010】
前記第2の押圧突起の前記軸方向の長さを、前記第1の押圧突起よりも長くすることによって、電線接続部全体に亘って、バリの発生を抑制することが可能である。
【0011】
本発明に係る端子付き電線の製造方法は、電線の導体露出部に端子の筒状の電線接続部を外嵌する工程と、相互に突き合わされる一対のダイス本体の間に前記電線接続部を配置する工程と、前記各ダイス本体の突合せ面から断面多角形を二分した形状の成形用切欠きがそれぞれ形成された一対のダイス本体を突き合わせることによって、前記電線接続部を成形用切欠きの形状に合わせてかしめ、電線に端子を接続する工程とを含み、前記各成形用切欠きの内周面は、成形用切欠きの底部に延在する圧縮面と、前記圧縮面の一端からダイス本体の突合せ面に向かって延びる第1の斜面と、前記圧縮面の他端からダイス本体の突合せ面に向かって延びる第2の斜面と、前記圧縮面に形成された第1の押圧突起と、前記第1及び第2の斜面にそれぞれ形成された第2の押圧突起とを有し、前記一対のダイス本体を突き合わせて前記電線接続部を前記成形用切欠きの形状に合わせてかしめるときに、前記第2の押圧突起が前記第1の押圧突起よりも先に前記電線接続部に当接することを特徴とする。
【0012】
本発明に係る端子付き電線の製造方法によれば、第1の押圧突起に押し潰された部位がダイス本体の突合せ面に向かって押し込まれるのが、第2の押圧突起との当接部分で規制され、バリの発生が抑えられた端子付き電線を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バリの発生を極力抑えて電線と端子とを接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る端子接続装置を用いて製造された端子付き電線を示す斜視図及び断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る端子接続装置のダイス本体の断面図である。
図3】端子付き電線の他の例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る端子接続装置及び端子付き電線の製造方法について説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る端子接続装置を用いて製造された端子付き電線を示す図で、図1(a)は外観斜視図、図1(b)は図1(a)のA−A’線断面図である。
図1(a)に示すように、端子10は略円筒形状の金属部材からなり、先端側に、相手方接続端子と接続するための筒状の端子接続部11が形成され、後端側に、電線と接続するための筒状の電線接続部12が形成されている。
【0017】
図1(b)に示すように、端子10の電線接続部12が、電線13の先端で露出している導体露出部14に外嵌される。そして、導体露出部14に外嵌された電線接続部12が、断面六角形状となるようにかしめられることにより、電線13と端子10とが結合されている。
なお、断面六角形状にかしめられた電線接続部12の各6面には、曲線状に凹む第1及び第2の凹部15,16が圧縮形成されている。
【0018】
図2は、本発明の一実施形態に係る端子接続装置及びこれを用いた端子付き電線の製造方法を説明する図であり、電線の導体露出部14に外嵌された端子の電線接続部12をかしめる一対のダイス本体の断面図である。図2(a)〜(b)は、一対のダイス本体を突き合わせて端子の電線接続部をかしめる状態を経時的に示すものである。
【0019】
図2(a)に示すように、本発明の一実施形態に係る端子接続装置は、相互に突き合わされる上下一対のダイス本体21,22に、これらダイス本体の突合せ面21a,22aから断面六角形を二等分した形状の成形用切欠き21b,22bが形成されている。
各成形用切欠き21b,22bの内周面は、成形用切欠きの底部に位置し、上下ダイス本体21,22を突き合わせたときに互いに対向するように延在する圧縮面31,34と、圧縮面の一端から突合せ面に向かって延びる第1の斜面32,35と、圧縮面の他端から突合せ面に向かって延びる第2の斜面33,36とからなる。
また、各圧縮面31,34には、その中央部に、断面円弧状に突出する第1の押圧突起18が形成され、各第1及び第2の斜面32,33,35,36には、中央より僅かに突合せ面21a,22aよりの箇所に断面円弧状に突出する第2の押圧突起19が形成されている。
【0020】
第1の押圧突起18は、突起の高さ(各圧縮面31,34から突起頂部までの高さ)L1が、第2の押圧突起19の突起の高さ(各斜面32,33,35,36から突起頂部までの高さ)L2よりも高くなるように形成されている。
また、図2(b)に示すように、第1及び第2の押圧突起18,19は、上下一対のダイス本体21,22を突き合わせて電線接続部12をかしめる際に、第1の押圧突起18よりも先に第2の押圧突起19が電線接続部12の外周と接触するように形成されている。
【0021】
このため、図2(b)の状態から更に圧縮を進めると、図2(c)に示すように、まず第2の押圧突起19との接触箇所が押し潰されて内側に凹むように変形することで、電線接続部12に第2の凹部16が形成されつつ、各圧縮面31に形成された第1の押圧突起18が電線接続部12の外周面と接触する状態となる。
【0022】
そして、この状態から更に圧縮を進めると、第1の押圧突起18によって電線接続部12が押し潰されてその外周面に第1の凹部15が形成されると共に、図2(d)に示すような断面略六角形状にかしめられる。このとき、各圧縮面31,34に形成された第1の押圧突起18によって押し潰されて変形した部位が突合せ面21a,22aに向かって押し込まれようとするのが、既に電線接続部12の外周面に接触している第2の押圧突起19によって、突合せ面21a,22aに向かう変形が規制され、第1の押圧突起18と第2の押圧突起19との間の領域に押し込まれるように変形して断面六角形状に圧縮されるので、図2(d)に示すように、上下一対のダイス本体21,22を突き合わせて圧縮したときに、電線接続部12のバリの発生を抑制できる。
【0023】
図3は、他の実施形態で製造された端子付き電線の例を示す斜視図である。
図3に示す端子付き電線では、図1に示す端子付き電線と同様に、電線13の先端で露出する導体露出部14に外嵌された端子10の電線接続部12が断面六角形状にかしめられている。
そして、断面六角形状を構成する電線接続部12の外周面の6つの平面上にそれぞれ第1及び第2の凹部15’,16’が形成されているが、第1の凹部15’の軸方向の長さが、第2の凹部16’の軸方向の長さよりも短くなっている。
【0024】
すなわち、図3に示す端子付き電線を製造するための端子接続装置では、上下一対のダイス本体21,22について、各成形用切欠き21b,22bの内周面の圧縮面31,34に形成された第1の押圧突起18と、第1及び第2の斜面32,35,33,36に形成された第2の押圧突起19を、例えば第1の押圧突起18の軸方向長さが、第2の押圧突起19の軸方向長さよりも短くなるように構成してある。
【0025】
このようにすれば、電線の導体露出部14に外嵌された端子10の電線接続部12をかしめる際に、第1の押圧突起18によって押し潰される電線接続部12の軸方向の範囲よりも、第2の押圧突起19が接触している電線接続部12の軸方向の範囲の方が大きいため、第1の押圧突起18によって押し潰された部位が突合せ面21a,22aに向かって押し出されるのが確実に規制され、電線接続部12全体に亘ってバリの発生を抑制できる。
なお、図1及び図3に示す端子付き電線は、いずれも電線接続部12が断面六角形状にかしめられたものであるが、電線接続部12のかしめ形状は、六角形に限定されるものではなく、八角形等、他の多角形であっても良い。
【符号の説明】
【0026】
10 端子
11 端子接続部
12 電線接続部
13 電線
14 導体露出部
15,15’ 第1の凹部
16,16’ 第2の凹部
18 第1の押圧突起
19 第2の押圧突起
21,22 ダイス本体
21a,22a 突合せ面
21b,22b 成形用切欠き
31,34 圧縮面
32,35 第1の斜面
33,36 第2の斜面
図1
図2
図3