(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記基準発振器は、カルシウム、マグネシウム、水銀、ルビジウム、セシウム、アルミニウム、ストロンチウム、又はイッテルビウム、の原子の遷移によって安定化された光学基準発振器である、請求項1のシステム。
前記1つ以上の遠隔ノードのうちの少なくとも1つの遠隔ノードに結合された1つ以上の追加のノードにおいて、前記転送レーザの周波数基準から直接又は間接に、前記基準タイミング信号に関連付けられている複数の追加のタイミングシーケンスを発生すること、を更に含む、請求項10の方法。
前記基準発振器は、カルシウム、マグネシウム、水銀、ルビジウム、セシウム、アルミニウム、ストロンチウム、又はイッテルビウム、の原子遷移によって安定させた光学基準発振器である、請求項16のクロック。
【背景技術】
【0002】
初期の時計は、時間の経過を示すために、物体の一定の動きを利用していた。このような動きは、空を横切る太陽の運動(又は、それによって生成される影)、或いは比較的に一定の速さの水又は砂の流れを含むことができる。しかしながら、現代の時計は、2つのコンポーネント、即ち、発振器(oscillator)とタイムインターバルカウンタ(time interval counter)とからなる製造物(product)である。発振器は、タイムインターバルを精密に区分し、一方で、タイムインターバルカウンタは、決められた数の発振(oscillation)が完了したことに基づいて、タイムインターバルを進める。日常使用する現代の時計に利用されている水晶振動子(quartz crystal)の振動(vibration)は、1年に1分以内の正確度(accuracy)を可能にするが、更に一層より高い正確度が重要になる状況がある。
【0003】
原子時計(atomic clock)は、マイクロ波によって精査されるときに、原子のエネルギー準位間における発振に依存する。原子時計は、過去50年において計時(timekeeping)を大きく進歩させた。例えば、1秒の標準的な定義は、およそ9.192×10
9Hzの周波数のマイクロ波を用いて、セシウム−133の発振を精査することを利用している。最初の原子時計は、熱いセシウム原子のビームを利用していた。最初の原子時計は、約10
10分の1で安定していた。一方で、冷たいセシウム原子のファウンテン(fountain)への発達のような更なる開発は、約10
13分の1の平均安定度を可能にした。しかしながら、セシウム原子を冷却することによって与えられるより大きな安定度は、ファウンテン中の原子間の衝突の可能性によって制限される。原子間の衝突は、原子が遷移する周波数を変えることがある。到達水準(state of the art)は、ファウンテン時計から更に一層発達した。マイクロ波と対照的に、光を利用することによって、光学時計(optical clock)は、原子の遷移を測定するために、はるかにより大きな周波数を可能にした。例えば、マイクロ波の10
10Hzの周波数の代わりに、光は10
15Hzの周波数を有し、潜在的により大きなクロック安定度を可能にした。
【0004】
遠隔要素の通信とデータ転送とを扱う場合に、光学時計のような進歩した時計の精密なタイミング信号の配信と同期化が、増々重要になる。例えば、衛星ネットワークと、配電網(electrical grid)と、飛行機の異なるサブシステムと、世界中の科学研究所は、高度に同期したマスタクロック(master clock)、又はマスタクロックから精密なタイミングを受信する能力を必要とし得る。1つの非制限的な例として、衛星対衛星と衛星対地上との両者の状況において、衛星通信を扱う場合に、同期クロックが利用されている。軌道を描いて回る機体の速度は非常に速いので、第1のシステムにおける特定の動作が、遠隔の第2のシステムにおける動作と調和するように厳密にいつ行われるべきかを知ることがより望ましい。精密なタイミングは、ある状況では、衛星のような特定のシステムが送信機に対する通信の範囲内にいつ存在するかを知ることに関連し、一方で、他の状況では、例えば、配置又は配列された衛星間、或いは衛星と地上との間において、同期データの転送のために通信を遅延させることに関連し得る。同期誤差の影響は、全地球測位システム(global positioning system, GPS)の航法(navigation)の正確度の制限と、異なる源間の精度の劣ったデータの相関関係と、配電網における不安定性とを含む。
【0005】
クロックシステムからの精密な信号の向上した配信と、クロックシステム間の向上した同期とを可能にするシステムと方法が、必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、クロック100についての全体的なシステムレベルの概要を表している。示されているように、クロック100は、基準発振器110を含んでいる。実施形態では、基準発振器110は、任意の適切な構造又は構成の光学システムであり得る。実施形態では、基準発振器110は、原子系(atomic system)120の構成によって特徴付けられ得る。原子系120は、イオン又は格子ベースの構成を含む任意の構成を有し得るが、これに制限されない。原子系120がイオンベースである実施形態では、青色から紫外線(ultraviolet, UV)のレーザは、1つのイオンと相互に作用し、標準の基準発振を提供及び検出し得る。他の実施形態では、
図1に示されているように、原子系120は中性原子ベースである。原子系120が中性原子ベースである実施形態では、中性原子トラップ(neutral atom trap)は、可視及び/又は短波赤外線(short wave infrared, SWIR)レーザを利用し得る。これは、原子における遷移を精査するために、磁気光学トラップ(magneto-optical trap, MOT)でレーザ冷却され得る。様々な実施形態では、原子系120は、任意の適切な原子の遷移を利用し得る。任意の適切な原子の遷移は、クロック100の構成に応じて、セシウム、カルシウム、マグネシウム、水銀、ルビジウム、アルミニウム、ストロンチウム、イッテルビウム、等において見られるものを含むが、これらに制限されない。
【0013】
例示されている実施形態に示されているように、基準発振器110は持続波レーザ(continuous wave laser)130を具備する。これは、超低膨張キャビティ140によって、安定化されたキャビティ(cavity stabilized)であリ得る。持続波(CW)レーザ130は、ファイバレーザと、ダイオードレーザと、ガスレーザと、固体レーザとを含むが、これらに制限されない、任意の適切な構造又は構成を有し得る。同様に、光学超低膨張(ultra-low expansion, ULE)キャビティ140は、例えば、CWレーザ130の周波数を安定化するためにULEガラスのブロックを具備する任意の適切な構造又は構成を有し得る。検出器150によりレーザの出力を検出し、サーボ160によるフィードバックでCWレーザ130を調節することによって、CWレーザ130は調整され得る。更に示されているように、CWレーザ130は、原子系120に関係付けられ、CWレーザ130は、サーボ170を通して原子系120によって更に調節され得る。
【0014】
次に、CWレーザ130の安定度は、光分岐器(optical divider)180に転送され得る。これは、基準発振器110の発振を、間隔を置いて(at intervals)カウントし得る。示されているように、フェムト秒(femtosecond, fs)レーザ190は、フェムト秒周波数コーム(femtosecond frequency comb)200を発生するように構成されている。これは、共通の検出器210を通して、基準発振器110にロックされる。共通の検出器210は、サーボ220を通してフェムト秒レーザ190を調節し得る。更に、示されているように、f−2f自己参照方式(f-2f self referencing scheme)230をフェムト秒周波数コーム200に適用することによって、フェムト秒レーザ190は更に調節される。更なる調節は、サーボ240によって行われ得る。実施形態では、フェムト秒レーザ190を更に安定化するために、f−2f自己参照方式230は、コームスペクトルの中の低い方の周波数端(frequency end)の2倍の周波数と高い方の周波数端との間におけるうなりノート(beat note)をロックすることを含み得る。
【0015】
局部的に、クロック100では、フェムト秒レーザ190は、光分岐器180によって調節されると、マイクロ波変換器250によって検出され得る。次に、マイクロ波変換器250は、基準発振器110に基づいて時間の経過を正確に示すために、タイムインターバルカウンタによって使用され得る。示されているように、マイクロ波変換器250は検出器260を含み得る。検出器260は、フェムト秒周波数コーム200からの幾つかのコームラインを一緒に混ぜ、マイクロ波周波数コーム270を生成し得る。検出器260は、フェムト秒レーザ190によって放出されたフェムト秒周波数コーム200を検出できる任意の適切な構造又は構成を有し得る。実施形態では、マイクロ波周波数コーム270の出力は、光フェムト秒周波数コーム200を発生するフェムト秒レーザ190の基本繰り返し率(fundamental repetition rate)の整数倍であり得る。示されているように、実施形態では、検出器260は、高速低雑音検出器である。幾つかの実施形態では、検出器260は、インジウムガリウムひ素(Indium Gallium Arsenide, InGaAs)又はアンチモン化インジウム(Indium Antimonide, InSb)の構成を有し得る。
【0016】
マイクロ波変換器250は、タイムインターバルカウンタ(示されていない)を含み得る。タイムインターバルカウンタは、光分岐器180を通った発振をカウントし得る。所定数の発振が通った後で、タイマは、1秒ずつインクリメントする。発振数は、フェムト秒周波数コーム200から分けられたマイクロ波周波数コーム270の周波数によって決まる。実施形態では、タイムインターバルカウンタは、マイクロ波コームから得られる周波数のうちの1つが負電圧から正電圧に移るときに、そのゼロ交差を利用し得る。実施形態では、タイムインターバルカウンタによって必要とされる入力周波数を得るために、光分岐器180の光周波数を分けてもよい。これは、高分解能のタイムインターバルカウンタに必要なものを無くし得る。タイムインターバルカウンタによる時間のインクリメントは、任意の適切な機構又はシステムによって表示され得る。例えば、現在の時間、基準時間点からの経過時間、等を示す、アナログ又はディジタルのクロック出力によって、時間が表示され得る。表示は、コンピュータ読出し可能媒体を利用してもよく、様々な実施形態では、電波、コンピュータネットワーク、又は他の何等かの非一時記憶機構(non-transitory storage mechanism)によって配信されてもよい。幾つかの実施形態では、表示は、タイムインターバルカウンタに与えられる基準の周波数を更に出力し得る。
【0017】
クロック100が更に示しているように、光分岐器180からのフェムト秒レーザパルスのうちの幾つかを、配信システム290及び/又は同期システム300にリダイレクトするために、ビームスプリッタ280を設けてもよく、後述でより詳しく記載する。
【0018】
図2は、分散ネットワーク310の実施形態についてのシステムのアーキテクチャを示している。分散ネットワーク310は、配信システム290を利用している。実施形態では、クロック100(基準発振器110のためにカルシウム標準(calcium standard)を利用するように図に示されている)は、中心のハブとして与えられ得る。ここでは、光分岐器180からのレーザパルスの精度が、多くのクロックに同時に配給される。実施形態では、配信システム290は、1つ以上のビームスプリッタ又はマルチプレクサを含み得る。1つ以上のビームスプリッタ又はマルチプレクサは、クロック100から複数のノード330(個々に関連付けられているノード330a−h)に達する様々な分配ビーム320(個々の分配ビーム320a−h)を形成するように構成されている。分配ビーム320は、任意の適切な機構によってノード330に伝搬され得る。例えば、ビームの転送は、自由空間において、又は光ファイバケーブルをわたって行われ得る。実施形態では、ノード330の各々はマイクロ波変換器250を具備し得る。マイクロ波変換器250は、フェムト秒レーザパルスの安定したフェムト秒周波数コーム200を検出し、マイクロ波周波数コーム270に分けることができる。各ノード330は、自身のタイムインターバルカウンタと時間の出力(即ち、ディスプレイ、電子タイミング信号、等)を更に有し得るので、基準発振器110からの精度が、分散ネットワーク310の全体に適切に配給される。実施形態では、ノード330のうちの1つ以上に配給される精密な周波数は、フェムト秒周波数コーム200からの代わりに、マイクロ波周波数コーム270からであってもよい。変換器250から得られるマイクロ波周波数は、同軸ケーブル又は自由空間をわたって転送され得る。実施形態では、分散ネットワーク310は、基準発振器110とノード330との間における遅延オフセット、例えば分配ビーム320に存在し得る遅延オフセットを補うように構成され得る。実施形態では、各ノード330は、クロック100とほぼ同じ僅かな周波数不安定度を有し得る。実施形態では、各ノード330は、ローカルタイミングシーケンスに適したマイクロ波又は無線周波数(radio frequency, RF)に分けてもよい。
【0019】
ノード330のうちの幾つか、例えば、
図2におけるノード330hは、ビームスプリッタ又はマルチプレクサを更に含み、フェムト秒ビームを更に細分し、追加の分配ビーム340から追加のノード350に配信することができる。例示されている実施形態では、追加の分配ビーム340a−cは、ノード330hから伸びており、基準発振器110の精度を追加のノード350a−cに配給する。幾つかの実施形態では、ノード330のうちの1つ以上から追加のノード350のうちの1つ以上への追加の配信は、ノード330における関連付けられているマイクロ波変換器250からであり得る。従って、追加の分配ビーム340によって配給される精度は、ノード330のうちの1つに関連付けられているマイクロ波周波数コーム270からである。
【0020】
幾つかの実施形態では、光学ULEキャビティ140によって安定化された、基準発振器110から出力されたレーザは、分散ネットワーク310の全体にわたって送信され得る。従って、ノード330及び/又は追加のノード350のうちの1つ以上は、自身の関連付けられている光分岐器180を有し、これを用いて、遠隔ノード330又は追加のノード350において基準発振器110の安定度を分ける。配信システム290の1つの実施形態は、
図3に示されている。ここでは、配信システム290は、転送レーザ360を利用するように構成されている。実施形態では、これは、CWレーザ130に似た持続波レーザであってもよく、基準発振器110のそれに似ている安定化されたキャビティであってもよい。実施形態では、光学ULEキャビティ370によって安定化された転送レーザ360は、基準発振器110に関連付けられているフェムト秒周波数コームの光学ラインのうちの1つにロックされた周波数基準ビームを発生するように構成され得る。示されているように、マルチプレクサ(multiplexer)380は、分配ビーム385(即ち、示されている実施形態における分配ビーム385a−d)の全体に転送するレーザビームを、複数の関連付けられている遠隔フェムト秒周波数コーム390a−dに分割する。ここで、各遠隔フェムト秒周波数コーム390は、異なる遠隔ノードに関連付けられている。4つの遠隔フェムト秒周波数コーム390a−dが示されているが、マルチプレクサ380は、ビームをN個のノードに分配し得る。各ノードは、自身の遠隔フェムト秒周波数コーム390を有する。様々な実施形態では、分配ビーム385は、空中を通って、光ファイバケーブルによって、又は他の何等かの送信機構によって、ビームを送信し得る。実施形態では、転送レーザ360によって放出された分配ビーム385は、
図1における基準発振器110からのビームの役割をし得る。例えば、実施形態では、各遠隔ノード330又は追加のノード350は各々、遠隔光分岐器及び/又は遠隔マイクロ波変換器を含み得る。幾つかの実施形態では、遠隔光分岐器及び/又は遠隔マイクロ波変換器は、クロック100の光分岐器180とマイクロ波変換器250とに似ていてもよい。このような実施形態では、各遠隔フェムト秒周波数コーム390は、光分岐器180のフェムト秒周波数コーム200に似ていてもよく、基準発振器110からのビームの代わりに、転送レーザ360からのビームのみによって安定化される。
【0021】
実施形態では、マルチプレクサ380によって分配されたレーザビームを使用して、各遠隔フェムト秒周波数コーム390をロックするので、コーム間隔は、主基準(primary reference)(即ち、フェムト秒周波数コーム200)と同じ間隔を有する。実施形態では、転送レーザ360により送信されるフェムト秒周波数コーム200と、遠隔フェムト秒周波数コーム390との、コームライン間のうなりノートにおいて、マイクロ波信号を発生させる。各遠隔フェムト秒周波数コーム390が、フェムト秒周波数コーム200と同じ間隔を有すると、分散ネットワーク310における全てのクロックは、同じ周波数を共有し、従って、分散ネットワークのリンク全体にわたる各遠隔サイトにおいて、フェムト周波数コーム200に対する周波数を定めるカルシウムの磁気光学トラップ(MOT)のような異なる基準発振器110を必要とすることなく、関連付けられているタイムインターバルカウンタは、周波数において見出された発振をカウントし得る。実施形態では、200に含まれている異なるコームラインにロックされた、異なる周波数における別の転送レーザ360を追加して、追加のビーム385を供給してもよい。
【0022】
マルチプレクサ380の実施形態の例は、
図4に示されている。示されているように、キャビティ安定化レーザ(cavity stabilized laser)(例えば、転送レーザ360)からのビームは、ビームスプリッタ381のアレイの方へ向かう。最初に、ビームは、ビームスプリッタ381aに当たり得る。ビームスプリッタ381aにおいて、ビームは、ビームスプリッタ381bと381cとの方へリダイレクトされる。示されているように、これらの2つのビームスプリッタの各々は、ビームを、分配ビーム385(特に、例示されている実施形態において、分配ビーム385a−d)として、光学基準ポートの方へ更に分割する。追加の遠隔フェムト秒周波数コーム390が利用される場合は、追加のビームスプリッタ381がマルチプレクサ380に存在し得る。その代わりに、1つ以上の追加のマルチプレクサ380を配置し、1つ以上の分配ビーム385に関連付けてもよい。1つの実施形態では、別の転送レーザ360を与えてもよく、この場合も同様に、異なるコームラインにロックされる。
【0023】
図5は、実施形態において、マルチプレクサ380から生じた各分配ビームが、雑音抑制システム395を介して、どのように雑音抑制又は消去をされ得るかを示している。雑音抑制システム395による雑音抑制は、マルチプレクサ380から分配された分配ビーム385のような各ビームの経路に適用され得る。例示されている実施形態では、光学基準(示されていない)からのビームの分配に続いて、マルチプレクサ380内で、分配ビーム385の各経路に対して、雑音の消去が適用され得る。フェムト秒周波数コーム200(即ち、光学基準)にロックされている、転送レーザ360からのビームは、マルチプレクサ380を通ると、ビームスプリッタ400に出会い得る。ビームスプリッタ400は、ミラー410と、音響光学変調器(acousto-optical modulator)420と、検出器430との間で、ビームを更に分割する。ビームが検出器430によって分析されると、ビーム385が遠隔フェムト秒周波数コーム390の方へ向かうことを含めて、ビームが分配手段(distribution medium)を通過するときに、ビームを更に安定させるために、位相ロックループ440は、音響光学変調器420における位相のずれを調節する。
【0024】
分散ネットワーク310は基準発振器110から安定度を得るので、分配ビーム385は遠隔フェムト秒周波数コーム390に対する基準になる。遠隔マイクロ波信号を発生するために、更なるマイクロ波変換器250を遠隔フェムト秒周波数コーム390に関連付けてもよい。このような光学的に発生させたマイクロ波信号の安定度は、光学基準(即ち、基準発振器110からの光学基準)と同じ安定度を有し得る。これは、現在のセシウム標準の安定度よりもかなり良いかもしれない。
【0025】
幾つかの実施形態では、分散ネットワークのアーキテクチャは、基準発振器110から、およそ数百キロメートルまで離れた遠隔ノードへの、タイミング信号の送信を可能にするのに十分であり得る。幾つかのこのような実施形態では、伝搬媒体(即ち、ファイバ又は自由空間)に関わらず、遠隔コーム390から雑音抑制システム395への往復時間にわたってビームにおける位相歪みを変化なく保つために、
図5に記載されている雑音抑制技術の能力によって、基準発振器110と遠隔ノード/コーム(即ち、330、350、390)との分離は制限され得る。
【0026】
既に記載したように、幾つかの実施形態では、分散ネットワーク310は、何百キロメートル離れていてもよく、他の実施形態では、全体的にローカルスケール(local scale)で分散され得る。例えば、
図6に示されているように、クロック100は、多数のローカルサブシステムを含んでいるローカルシステム450の一部である。図において、クロック100は、少なくとも、基準発振器110とフェムト秒レーザ190とを含み、ローカルシステム450を通してクロックの安定度と正確度とを配信するように構成されている。ローカルシステム450は、軍用プラットフォーム、他の商用ネットワーク、又は遠隔通信システムに基づいて、陸、海、大気、又は空間を含むが、これらに制限されない、任意の構造又は構成を有し得る。幾つかの実施形態では、ローカルシステム450は、1つの乗り物(vehicle)であってもよく、一方で、他の実施形態では、ローカルシステム450は、複数の乗り物又はシステムであって、同期して位相コヒーレントし、分離したローカルサブシステムの位相及び周波数整列の断続的又は連続的な更新のために光学的にリンクできる、複数の乗り物又はシステムであってもよい。例示されている実施形態では、ローカルシステム450は、データプロセッサ460と、ナビゲーションシステム470と、兵器システム(weapon system)480とを含んでいる。更に、電気光学/赤外線(electro-optical/infrared, EO/IR)システム490と、受動RFシステム500と、レーダシステム510と、通信システム520が示されている。このような遠隔要素は、幾つかの目的のために、基準発振器110からの超安定信号を利用し得る。一例として、進路を決めるために、ナビゲーションシステム470は、全地球測位システムと協調して、クロックの発振を利用し、ローカルシステム450の位置、又はローカルシステム450の要素を正確に決定し得る。
【0027】
幾つかの実施形態では、クロック100は、マイクロ波変換器250を通して光からマイクロ波に変換し、マイクロ波信号をローカルシステム450中の各サブシステムに配信し得る。他の実施形態では、クロック100は、フェムト秒周波数コームを光学的に配信し、各サブシステムにおいてマイクロ波に変換する。各サブシステムは、ローカルマイクロ波変換器250を有している。幾つかの実施形態では、配信の組み合わせを行なってもよく、それによって、幾つかのサブシステム(即ち、レーダシステム510)はマイクロ波信号を受信し、一方で、他のサブシステム(即ち、EO/IRシステム490)は、EOシステムレーザへの光学リンクを利用し得る。ローカルシステム450中の、クロック100につながれているサブシステムの各々は、別の遠隔コームを利用してもよい。別の遠隔コームは、光ベースの信号を受け入れる遠隔コーム(即ち、遠隔フェムト秒周波数コーム390)、又はマイクロ波ベースの信号を受け入れる別の遠隔コームである。既に記載したように、幾つかの実施形態では、ローカルシステム450の各サブシステムは、自身の雑音抑制システム395を含み得る。
【0028】
幾つかの実施形態では、配信システム290を通じてリンクすることが不可能であるほど十分な距離が遠隔ノード間にある場合に、個々の遠隔ノードを利用し、個々の分散ネットワーク310を形成してもよい。ここでは、各遠隔ノードは、(基準発振器110を備えた)自身のクロック100を有している。
図7には、分散ネットワーク310Aと分散ネットワーク310Bが示されており、各々は、自身のクロック100(即ち、マスタクロック(master clock)100Aとスレーブクロック(salve clock)100B)を有している(マスタ/スレーブ構成は、後述でより詳しく説明する)。クロック100の正確な発振は、関連付けられている基準発振器110から複数の遠隔ノード330に配信される。例示されている実施形態では、分散ネットワーク310Aに対する遠隔ノードは、遠隔ノード330Aa−330Ahと呼ばれ、一方で、分散ネットワーク310Bに対する遠隔ノードは、遠隔ノード330Ba−Bhと呼ばれる。分散ネットワーク310Aと分散ネットワーク310Bとのノード間において整合性のある時間を保証するために、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとを同期させることが望ましいかもしれない。
図7に示されているように、クロック100は、関連付けられている同期システム300間でリンクされ得る。後述でより詳しく説明するように、マスタクロック100Aに関連付けられている同期システム300Aと、スレーブクロック100Bに関連付けられている同期システム300Bは、任意の適切な距離によって離れていてもよい。
【0029】
図8は、伝搬媒体530を渡した、同期システム300Aと同期システム300Bとのリンクの概略図を示している。概略的に記載されているように、各クロック100は、送信機540とタイムインターバルカウンタ550とに接続されている。更に、タイムインターバルカウンタ550は、受信機560に接続され、実施形態では、マイクロ波信号を受信機560とクロック100とから受信し、時間のインクリメントをカウントする。送信機540A/Bと受信機560A/Bとの両者は、関連付けられているミキサ570A/Bに接続され得る。関連付けられているミキサ570A/Bは、ビームスプリッタ又は他の光学素子を含み、伝搬媒体530をわたってビームの送信と受信とを容易にし得る。実施形態では、伝搬媒体530によって送信される接続は、大気、空間、光ファイバケーブル、等のうちの1つ以上を通る光ビームであり得る。後述で更に詳しく説明するように、マスタクロック100A及びスレーブクロック100Bからの出力、又はタイムインターバルカウンタ550A及びタイムインターバルカウンタ550Bからの出力は、データケーブル又は他の何等かのデータ転送機構によって接続され、これは、マスタクロック100A及びスレーブクロック100Bに関する情報を各々に与え得る。実施形態では、伝搬媒体530によるこのようなデータ接続が含まれ得る。
【0030】
マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとを同期させるために、最初に、スレーブクロック100Bの時間を、マスタクロック100Aと一致するように調節することが分かる。同期の正確度は、伝搬媒体530上の、同期システム300Aと同期システム300Bとの間における転送信号の周波数帯域幅によって決まり得る。幾つかの実施形態では、どちらのクロックがマスタであり、どちらのクロックがスレーブであるかという指定は、変わってもよく、従って、割り当てられた指定を示す信号がクロック間で送信され得る。後述でより詳しく説明されるように、実施形態では、伝搬媒体530上の転送信号は、分光器で識別可能な超短光パルス又は近光パルスである。実施形態では、ミキサ570は、光学素子とビームスプリッタとを含み、光パルス(即ち、超短光パルス)を各受信機560に送ってもよく、その結果、各タイムインターバルカウンタ550は、遠隔送信機から遠隔パルスRを受信したときと、ローカルパルスLのそれとの時間差を測定し得る。幾つかの実施形態では、遠隔光パルスは、受信機560によって検出され得る。他の実施形態では、遠隔光パルス及びローカル光パルスは、制御装置(示されていない)においてデータに変換されてもよく、スレーブクロック100Bに対してマスタクロック100Aによって定められる調節オフセットのデータは、他の手段によって通信され、それに応じて、スレーブクロック100Bを調節する。
【0031】
実施形態では、スレーブクロック100Bの時間調節は、パルスの到着時間(time-of arrival)及び/又は飛行時間(time-of-flight)の測定に基づき得る。マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bが同期すると、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとの間における同期の正確さと距離計測の実行を可能にし得る。このようなクロック同期を行なうために、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとから、同時であると考えられるときに、超短光パルスが送信され得る。伝搬媒体530による超短光パルスのこの送信の前に、例えば、マスタクロック100Aからスレーブクロック100Bに「現在の」時間のデータを送信することによって、クロック100Aと100Bをおおよそ同期させ、その結果、それに応じて、スレーブタイムインターバルカウンタ550Bを調節する。
【0032】
図9では、受信機560のうちの1つの実施形態の一部分が、概略的に示されている。示されているように、受信機560は、遠隔クロック100からの遠隔パルスRを安定化するように構成されている安定化ミラー580を含み得る。安定化ミラー580は、遠隔パルスRが通過した距離に関連する幾つかの問題を修正するように構成され得る。問題は、例えば、大気中のシンチレーション(scintillation)、マスタクロック100A及び/又はスレーブクロック100Bのプラットフォームにおける振動、或いは遠隔パルスRの整列及び安定度に影響を及ぼす他の何等かの動きに起因する、空間ジッタを含む。例示されている実施形態では、遠隔パルスRがローカルパルスLと空間的に整列し得るように、安定化ミラー580が回転(pivot)することが示されている。
図1に示されている実施形態では、ローカルパルスLは、ローカルクロック100に関する、フェムト秒レーザ190からの、ビームスプリッタ280によって分割されたビームであり得る。同様に、遠隔パルスRは、遠隔クロック100に関する、関連するフェムト秒レーザ190からの、関連するビームスプリッタ280によって分割されたビームであり得る。受信機560は、第1のビームスプリッタ590と第2のビームスプリッタ600とを含んでいるように示されている。遠隔パルスRは、安定化ミラー580に反射し、第1のビームスプリッタ590に当たるように示されている。整列アレイ610の方へある角度で屈折するものもあり、レンズ620の方へ前方に進むものもある。後述で更に詳しく説明するように、ローカルパルスLは、第2のビームスプリッタ600に遮断されるものもあり、第1のビームスプリッタ590の方へある角度で屈折するものもあり、更に、第2のビームスプリッタ600を通り抜け、遅延ミラー630の方へ前方に進むものもある。第1のビームスプリッタ590の方へ反射したローカルパルスLの一部分は、平面ミラー640の方へ向かってある角度で反射し、次に、第1のビームスプリッタ590を通り抜け、更に、整列アレイ(alignment array)610に投影される(image)。遅延ミラー630から反射したローカルパルスLの一部分は、次に、第2のビームスプリッタ600からある角度で、レンズ620の方へ反射する。
【0033】
整列アレイ610における遠隔パルスRとローカルパルスLとの遮断は、パルスの粗整列を可能にする。遠隔パルスRをローカルパルスLのそれへの空間的に整列させるように、安定化ミラー580は回転し得る。例えば、安定化ミラー580は、遠隔パルスRの角度をローカルパルスLの角度に統一し得る。同様に、パルスの粗整列を可能にするために、ローカルパルスLと遠隔パルスRの経路に、他の光学素子が存在していてもよい。ローカルパルスLと遠隔パルスRとを空間的に整列させるために安定化ミラー580を調節するように構成された安定化制御装置に、整列アレイ610を接続してもよい。実施形態では、安定化制御装置は、同期システム300に関連付けられた、プロセッサ、コンピュータ、又は他の電子機器の一部分であってもよい。例示されている実施形態では、遅延ミラー630は、整列アレイ610の方へ向かうパルスの何れかではなく、レンズ620の方へ向かうローカルパルスLの位相を調節するように構成され得るが、幾つかの実施形態では、パルスのうちの何れかの少なくとも一部分は、整列アレイ610に反射する前に、遅延ミラー630、又は別の遅延ミラーに当たり、縞(fringe)が、整列アレイ610において遠隔パルスRとローカルパルスLとの間に干渉縞を形成することを可能にする。このような実施形態では、パルスのより粗い位相調節のために、整列アレイ610と遅延ミラー630とに関連付けられているプロセッサ又は制御装置が利用され得る。幾つかの実施形態では、ローカルパルスLと遠隔パルスRは、粗整列の像をもたらし得る。整列アレイ610で行われる測定と、安定化ミラー580、遅延ミラー630、及び/又は他の光学素子によって行われる調節とを通して、ローカルパルスLと遠隔パルスRの周波数を配列し、その結果、位相差が確認され得る。
【0034】
例示されている実施形態では、レンズ620を通ったローカルパルスLと遠隔パルスRとの量が、干渉計650に向かう。干渉計650は、パルスを細かく整列させるように構成され得る。粗調節と微調節の概念は関連しているが、実施形態では、粗い整列は受信機560の外部で行なわれ、細かい整列は整列アレイ610で行なわれ、超微細な整列は干渉計650で行なわれ得る。干渉計650は、フィールド(field)又は線形干渉計(例えば、スペクトル干渉計、ファブリーペロー干渉計、等)を含むが、これに制限されない、任意の適切な構造又は構成を有し得る。幾つかの実施形態では、干渉計650は、非線形干渉計、例えば、周波数分解光ゲート(frequency resolved optical gating, FROG)を使用するものであってもよい。例示されている実施形態では、干渉計650は、3つのミラー「反射トリプレット(reflective triplet)」の設計形式で配置されたスペクトル干渉計である。これは、干渉計650によって形成される像の面(image plane)におけるスペクトル分解能を高め得る。
【0035】
例示されている実施形態では、レンズ620は、パルスを干渉計650のピンホール660上に集束させる。これは像の面670に配置され得る。パルスは、ピンホール660から一次ミラー680に発散する。一次ミラー680に当たった後で、パルスは、二次ミラー690、次に、三次ミラー700に反射される。パルスは、三次ミラー700から反射すると、分散素子(dispersive element)710に当たる。例示されている実施形態では、分散素子710は、三次ミラー700に再び向かうスペクトルに、パルスを分散させるように構成された、回析格子である。他の同様の実施形態では、分散素子710は、プリズムであり得る(更に、背面反射(rear surface reflection)のためにミラーに映された側(mirrored side)、又は最小偏角構成(minimum deviation configuration)で間隔が置かれているミラーと結合され得る)。分散スペクトルは、三次ミラー700と、二次ミラー690と、一次ミラー680とによって後方に反射されると、これらは干渉計イメージャ(interferometer imager)720に到達し得る。例示されている実施形態では、干渉計イメージャ720は、ピンホール660から間隔を置いて、像の面670に置かれている。実施形態では、示されているように、干渉計イメージャ720は、遅延ミラー630に関連付けられているプロセッサに読み出され、その結果、干渉計イメージャ720に形成されている縞を向上させるように、位相ローカルパルスLが調整され得る。既に記載したように、プロセッサは、同期システム300に関連付けられている、任意のプロセッサ、コンピュータ、又は電子機器であってもよく、幾つかの実施形態では、安定化ミラー580を調節するように構成された安定化制御装置を含むか、安定化制御装置に関連付けられていてもよい。干渉計650の1つの非制限的な実施形態に対する規定は、
図10に与えられている。干渉計イメージャ720は、線形焦点面アレイ、電荷結合素子、相補形金属酸化膜半導体(complementary metal-oxide semiconductor, CMOS)、等を含むが、これらに制限されない、任意の構造又は構成を有し得る。
【0036】
干渉計650の出力の分析を通して、遠隔パルスRとローカルパルスLとの間のタイミングの差が確認され得る。このような計算では、ローカルパルスLと遠隔パルスRとのスペクトル特性の知識を利用し、遠隔パルスRとローカルパルスLとの間の時間遅延t
0を求める。実施形態では、パルスは、次の式によって特徴付けられ得る。
【数1】
【0037】
ここで、tは、パルス幅(例えば、フェムト秒レーザ190から35fsecのFWHM)であり、f
0=c/λ(例えば、フェムト秒レーザ190からλ=840nm)である。従って、ローカルパルスLのスペクトルは、次のように特徴付けられ得る。
【数2】
【0038】
ここで、正の周波数のみがコサインの項から得られる。BWは、次のように定義され得る。
【数3】
【0039】
次に、遠隔パルスRのスペクトルは、次のように定義され得る。
【数4】
【0040】
ここで、定数「b」は、ローカルパルスLと遠隔パルスRとの間における振幅の差を示すために含まれている。ここでも、t
0は、遅延ミラー630に関連付けられている余分な距離を移動する遠隔パルスRに対する時間遅延である。
【0041】
遠隔パルスRとローカルパルスLとを干渉する場合に、干渉Wは、次のように特徴付けられ得る。
【数5】
【0042】
例えばパルスの周波数とパルスの振幅とを含む、パルスのスペクトル特性が分かっているので、遠隔パルスRとローカルパルスLとの間における未知の位相成分に対応するパルス間の時間遅延t
0を求めることができる。干渉計650の出力(例えば、干渉計イメージャ720によって受信されるデータ)の処理は、任意の機構によって達成され得る。例えば、実施形態では、受信機560、クロック100、又はタイムインターバルカウンタ550、のうちの1つ以上の一部分に関連付けられている制御装置によって、データが自動的に処理され得る。更に、制御装置は、補償され得る任意の既知の雑音又は誤差を補い得る。同期システム300A及び/又は同期システム300Bに対する移動プラットフォームであることが原因のドップラシフトの評価(evaluation)も求められる。このような結果は、ごく僅かであると考えられる。1つの評価は、移動プラットフォームが、静止プラットフォーム又は別の移動プラットフォームの何れかと同期することであると考えられる。実施形態では、7km/秒の2つのプラットフォーム間の相対速度は、0.01%の変化を生じる。7km/秒未満の速度は、更により小さな変化を生じる。従って、一般に、軌道速度まで上昇するプラットフォームは、測定における重大な誤差を生じない。しかしながら、雑音、及び遅延例えば計算時間の、これらの及び他の源が、制御装置によって考慮に入れられ得る。
【0043】
干渉計650がスペクトル干渉計である場合に、干渉計イメージャ720における出力は、赤外線パルスの波長にわたる放射束密度(irradiance)として通常プロットされるが、受信データは周波数領域に容易に変換され得る。この出力の一例は、
図11に示されている。
図11は、およそ330乃至390THzのパルス周波数にわたる放射束密度を示している。フーリエ変換を利用し、出力を処理し、パルスの変調周波数を測定してもよい。
図12に示されているように、パルスの式におけるコサインの項は、正と負のローブを生成し、その位置は、時間遅延t
0に対応している。示されている例に見られるように、パルスt
0間の遅延を、およそ1.6ピコ秒として計算することができる。実施形態では、システムは、干渉計のスペクトル帯域幅によって制限されるパルス幅の何分の1かに下がった正確度を有する。幾つかの実施形態では、数学的解析において、更に又は代わりに他の変換を利用してもよい。他の変換は、ヒルベルト(Hilbert)又はローレンツ(Lorentzian)変換を含むが、これに制限されない。ローブの更なる分析を行なって、例えば、波形関数の実数成分と虚数成分とを比較することによって、パルスの位相差をより精密に決定できるが、時間遅延t
0を確認するには、ローブのピークを決定することで十分であるかもしれない。
【0044】
実施形態では、時間遅延t
0を利用して、遠隔パルスRと一致させるためにローカルパルスLを進ませなければならない又は遅らせなければならない量、或いは、ローカルパルスLと一致させるために遠隔パルスRを進ませなければならない又は遅らせなければならない量を決定し得る。時間遅延t
0は、2つのクロックを同期させることができる正確度、分解能、又は誤差(即ち、システムによって測定される最短時間)であり得る。実施形態では、進ませる又は遅らせる量は、正確度/分解能の値t
0よりもかなり大きいかもしれない。遠隔パルスRを与える遠隔クロック100がマスタクロック100Aである実施形態では、スレーブクロック100BからのローカルパルスLを進ませて又は遅らせて(或いは、スレーブタイムインターバルカウンタ550Bによって、オフセット量を補償して)、その結果、マスタクロック100Aと一致するように、スレーブクロック100Bの時間を調節する。ローカルクロックがマスタクロック100Aである別の実施形態では、十分な時間オフセットの測定値を遠隔のスレーブクロック100Bに伝え、その結果、ローカルマスタクロック100Aと一致するように、遠隔クロックを進ませ又は遅らせ得る。
【0045】
幾つかの場合、例えば双方向時刻伝送(two-way time transfer)では、時間オフセットは、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとの両者において計算され、その後で、精密なクロック同期のために、各クロックによって他方に送信され得る。
図8に示されているように、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bが伝搬媒体530によってリンクされている場合に、マスタクロック100Aからスレーブクロック100Bへの方向における伝搬遅延時間は、D
ABとして示され、一方で、スレーブクロック100Bからマスタクロック100Aへの方向における伝搬遅延時間は、D
BAとして示され得る。マスタクロックの信号送信時間はT
Aであり、一方で、スレーブクロックの信号送信時間はT
Bである。従って、マスタクロック100Aにおける測定値は、T
means(A)=T
A−T
B+D
ABである。ここでも、これは、t
0の正確度/分解能まで測定され得る。従って、スレーブクロック100Bにおける測定値は、T
means(B)=T
B−T
A+D
BAである。スレーブクロック100Bをマスタクロック100Aに同期させるために、マスタ/スレーブプロトコルに応じて、T
means(A)とT
means(B)が、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとのうちの何れか又は両者に送信される。次に、マスタクロック100Aに合わせるためにスレーブクロック100Bを操作する時間遅延は、次のように計算することができる。
【数6】
【0046】
従って、方向に関わらず(D
AB=D
BA)、伝搬時間が同じであるとすれば、次の結果が得られる。
【数7】
【0047】
その結果、マスタクロック100Aと適合するように、スレーブクロック100Bが操作される。
【0048】
実施形態では、同時であると考えられるときにこのような双方向時刻伝送を行なうために、両者のクロックに分かっているパルス繰り返し周波数で動作している、各ローカルフェムト秒レーザ(即ち、フェムト秒レーザ190)からのパルスが、それぞれの遠隔クロックに送信される。送信時に、各ローカルタイムインターバルカウンタは、送信パルスと、遠隔クロックからのパルスの到達との間の時間を測定し始める。遠隔パルスが到達すると、タイムインターバルカウンタは、粗いタイムインターバルを測定し、システムは、遠隔クロックからの次のパルスの到達を予想するときが分かる。この情報を使って、同期システム300は、遠隔パルスの予測される到達に対して、ローカルパルスを遅らせなければならないか又は進ませなければならないかを決定し、スペクトル干渉計650を使って、干渉縞を測定し始める。実施形態では、パルスが移動する距離を増やす又は減らすために、物理的に動かされ得る可変遅延線(例えば、機械的に動かすことができるミラーを含むが、これに制限されない)を使って、この微調節が達成され得る。ここで、1ミリメートルは、およそ3.33ピコ秒の時間の変化に等しい。この機械的な調節の合計遅延は、フェムト秒レーザのパルス繰り返し周波数の逆数に相当し、ミリメートル未満の分解能を有し得る。干渉縞が検出されると、ローカル同期システム300は、更なる調節を行って、干渉縞を最適化させ、より精密な時間測定値を取得し得る。実施形態では、タイムインターバルカウンタは粗い時間測定を行ない、可変遅延ミラー630を動かす結果、細かい時間測定を行ない、干渉縞(interference fringe)を計算し、精密な時間測定を行ない得る。実施形態では、合計オフセット時間は、3つの全ての組み合わせを含み得る。実施形態では、更に、可変遅延線の移動の測定及び/又は上述の計算の実行は、同期システム300に関連付けられている、任意のプロセッサ、コンピュータ、又は電子機器によって測定され得る。
【0049】
上述の計算の例として、マスタクロック100Aに関連付けられているタイムインターバルカウンタが、100万インターバルを測定する場合であって、各インターバルが100ピコ秒に等しく(即ち、100万インターバルの全体で100マイクロ秒であり)、可変遅延が212.1mm(706.99ピコ秒又は706,990フェムト秒に相当する)ずつ進む必要があると決定され、縞の測定値が37フェムト秒の分離を決定する場合に、マスタクロック100Aにおいて、測定される遅延は、100.000707027マイクロ秒である。パルスが100.032550123マイクロ秒であり、それが送信される時と受信される時との間の差を、スレーブクロック100Bが測定した場合に、クロック間における測定差は、0.031843096マイクロ秒又は31.843096ナノ秒である。上述の双方向伝送の式を使用すると、2つのクロックのオフセットは、この値の2分の1であると決定され得る。従って、スレーブクロック100Bは、マスタクロック100Aと同期するように、15.921548ナノ秒ずつ動かされる。
【0050】
上述の結果は、雑音を考慮していない。転送システムにおける雑音と、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとにおける基準発振器110と、信号の周波数が、同期を実現する積分時間を決定するが、方法は同じままである。上述のように、マスタクロック100Aへのスレーブクロック100Bの同期は、一旦達成又は明らかにされると、基準発振器110の安定度によって決まる期間にわたる所定の正確度に維持され得る。
【0051】
フェムト秒パルスの転送を利用する、ここに開示されている同期技術は、幾つかのプラットフォームにおいて統合され得る。例えば、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bは、示されているマスタ/スレーブ構成を有する1対の衛星に配置され得る。マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとの間の距離は、各々におけるフェムト秒レーザ190から安定度を正確に転送する距離を超えているかもしれず、一方で、パルスの干渉縞は、干渉計によって引き続き測定され、マスタクロック100Aとスレーブクロック100Bとの間の時間遅延を計算するために使用され得る。クロック間の時間のオフセットを計算するために、各衛星において時差測定を使用してもよく、一旦クロックを同期させると、連続的なパルス交換で、衛星間の距離を決定することができる。実施形態では、この決定は、光速の数倍で、パルス幅の正確度を有し得る。例えば、100フェムト秒のパルスを使って、衛星間の見通し線(line of sight)の距離を、30ミクロン以内まで把握できる。このことから、スレーブ衛星は、スレーブ衛星のクロックをマスタのクロックに合わせて、そのオフセットを、光パルス幅の何分の1かの測定システムの誤差以内まで低減し得る。
【0052】
ある特定の実施形態が示され記載されているが、請求項によって表現されている発明の概念の意図及び範囲内で変更及び修正が可能であることは明らかである。開示されている実施形態は、単に発明の概念の原理を例示するために提供されており、何らかのやり方で制限していると見なされるべきではない。